ある日の夜、丸山彩はスマホの画面をじっと見つめていた。
「・・・・・・・・」
画面に映し出されたソレを見る度に胸が高鳴り、気持ちを抑えるだけでも手一杯になってしまう。
しかし、それと同時に罪悪感にも駆られてしまう。本人の許可なく写し取ってしまったことを。いくら仲がいいからとはいっても限度があるんじゃないかと思いつつもその時の彼女は本能には逆らえなかった。
それでもその写真をみると後悔という感情を別の感情が打ち消してしまっていた。
「はあ…」
思わず溜息をこぼしてしまう。
会いたい…。気がつけばその想いが胸の中にいっぱいになってしまった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「おつかれ〜。」
「お疲れ様です!」
レッスンを終え、スタジオを出る日菜にイヴが笑顔でそう答えた。
今日は千聖と麻弥が他の仕事のために途中でレッスンを抜け、残りの時間は彩、日菜、イヴの3人で音を合わせたり、それぞれで出来る練習を精一杯やっていた。
そして時間は経ち、今日の練習は終了。彩は急ぎの用事があったらしく急いでスタジオを後にした。日菜も終わり次第その場を後にし、イヴは次の仕事の準備をしていた。
「あれ?これは…」
イヴはテーブルの上に置かれた桃色のスマートフォンを見つけた。いつも練習の合間にエゴサーチをしていた為、これは彩のものだと見た瞬間に理解出来た。
早く彩に届けないとと思いつつも、彼女はスマホをここに忘れているため連絡の付けようがない。それに今から追いかけて間に合うのか…。そう考えていた時、彼女のスマホに着信が入り、画面がついた。
そして…イヴは見てしまった。
「……これは」
その瞬間、部屋の扉が勢いよく開かれた。そして、そこには息を切らしながら膝に手をついていた彩がいた。
「あ…アヤさん!?何事ですか!?」
「イヴ……ちゃん…。」
「もしや…曲者!?」
「ち…違うよ!?と…とりあえずおいつ…いて…」
イヴは彩を椅子に座らせ、水を渡す。それによって呼吸が次第と整った彩は一息をついて話を戻した。
「それでどうしたのですか?」
「うん…イヴちゃん…」
「私のスマホ見なかった?」
イヴはポカーンとしていた。
まあ、あれだけ何か大事でも起きたのかと言わんがばかりに戻ってきたのに要件が要件だったので仕方ないといえば仕方ない。
しかし、エゴサーチ命の彩にとってはそれは死活問題とも言えることなのだ。
「それでしたらこちらに…」
「良かったぁ…。見つかって良かったぁ…。」
まるで宝物を発掘したかのように喜ぶ彩を見てイヴも安心と嬉しさを同時に感じていた。
「ところでアヤさん、画面の方は?」
「………へ?」
「もしかして、アヤさんのコイビトというものですか?」
そしてイヴの発した一言で彩は一瞬、石のように思考も動きも固まってしまった。
「すみません、スマホを取った時に通知が入って画面が着いてしまいつい…」
「え?ぜ…全然大丈夫だよ!」
「そうですか?」
「…う…うん。」
一先ずスマホを返してもらったのだが、彩の顔は赤くなったままだった。
「アヤさん、大丈夫ですか?」
「へっ!?大丈夫だよ!!あ、じゃあ私先に帰るね?お疲れ様!」
「はい!お疲れ様です!」
1度の呼吸もなくイヴにそう告げると彩は駆け足でスタジオから立ち去ってしまった。
それを見ていたイヴは彩の行動に違和感を感じながら、もしかしたら自分が何かやってしまったのかと考え自分の先程までの行動を振り返っていた。
「もしかして…さっきの方と何か関係が…?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その次の日、イヴはある人物の元に向かっていた。先日のことを色々と考えたのだが、やはり自分一人では解決出来ないと思い、第3者に助言を求めた方がいいと考えた。
「チサトさん!少しいいですか?」
「イヴちゃん?どうしたの?」
突然現れるや否や千聖に声をかけた。チサトは少し戸惑いながらも真剣な表情のイヴを見てそのまま彼女を連れて別の場所へと向かった。
2人が移動した先は中庭の自動販売機の前。2人はそれぞれ飲み物を買ってベンチに座り、本題に入った。
「それで…私に話って何かしら?」
「ハイ!アヤさんの事なんですが…」
「彩ちゃんがどうかしたの?」
千聖に聞かれ、イヴは昨日のことを話した。それを聞いた千聖は「なるほどね」と言いつつも、慌てることは無かった。
「まあこれは本人がどう動くかってところかしらね。」
「……どういうことですか?」
「そうね…詳しいことは本人から聞いた方がいいと思うけど、…彩ちゃんは本当に女の子なのね。」
ふわりと微笑みながらそう返されるもその言葉の意味はイヴにはまだ理解出来なかった。
「それは一体…」
「あれ?千聖ちゃんにイヴちゃん?」
「アヤさん!」
噂をすればなんとやら。そこに話題の人物が現れた。
「こんな所でどうしたの?何かお話?」
「ええ。ちょうど彩ちゃんのことを話していたところよ。ね?」
千聖はイヴにそう投げかけるが当の本人はその事でまだ整理が出来てない為か困惑気味だった。
「その…アヤさん!お伺いしたいことがあります!」
「えっ?どうしたの?突然畏まっちゃって…。」
「先日のことなんですが…私、何かアヤさんの気に触ることをしてしまいましたか?」
それを聞かれた彩は目をパチクリし、返答に困っていた。その様子を見ていた千聖は溜息を着きながらも彩に一言告げた。
「彩ちゃん、大丈夫よ?だから素直になってみたら?」
そう言われた彩は胸に当てていた手をギュッと握り、イヴに話をするのだった。
「イヴちゃん、あの画面見たんだよね?」
「はい。あの方は…」
「イヴちゃんはこの間行ったKINGDOMのライブに出てたRealizeってグループの人達を覚えてる?」
「はい。……そういえば…」
「うん。彼はそのグループのメンバーなんだ。それと多分イヴちゃんはあまり話をした事が無かったから分からないと思うけど、CiRCLEで音響とかしれくれたんだよ?」
「なるほど!その方だったんですね!それで、その方とはどういう関係なのですか?」
「それは………」
イヴに質問を返されて口ごもってしまったが、勇気を振り絞り口を開いた。
「私の……片想い…かな?」
それを聞いたイヴは若干驚いていた。
「片想い…ですか?」
「うん。」
「なるほど。そうだったのですね!」
ようやく理解したイヴはスッキリしたかのように晴れやかな表情をしていた。
「ところでアヤさんはその方に告白するのですか?」
「えっ!?こ、告白!?」
告白という単語を聞いて彩は思わず大きな声を出してしまった。
これまで彼を想うことはあったが、告白ということは考えたことがなかった。
「(告白かぁ…。もし告白して上手くいったらやっぱりお付き合いして恋人らしいこと色々とするのかな…。でも私、アイドルだし…大丈夫なのかな?もしイサムくんに何かあったら…)」
いざそうなるとどうすればいいのかわからず彩の頭の中はその事でいっぱいになっていた。
「迷っているのかしら?」
そんな彩を見た千聖は見ていられなかったのか、2人の会話に口を挟んでいた。
「えっ?」
「まあ大方、イサムくんのことかしらね?」
「よ…よくわかったね…。」
「彩ちゃんは顔に出るからわかりやすいのよ。」
そう言われて何も言い返せず、彩は口ごもってしまった。そんなことは気にせず千聖はペットボトルの蓋を閉めて話を続けた。
「確かに色々と大変なことはあるでしょうね。事務所からの恋愛NGはないとはいえど、私たちは普通の人のような恋愛は出来ないわ。
でもあなたは諦めたくないんでしょ?」
「……うん。」
「そう。じゃあ答えは出たわね。後はあなた次第よ。」
千聖はふわりと微笑むと、空になったペットボトルをゴミ箱に捨てそのまま立ち去って行った。
「そうですアヤさん!私には詳しいことはよく分かりませんがアヤさんが本気なら私は全力で応援します!」
「イヴちゃん……ありがとう!」
千聖だけでなくイヴにも背中を押された彩は気持ちが前向きになり、気分も戻ってきたようだ。
「それでなのですが、良ければその方について色々とお話を聞かせてくださいませんか?」
「うん!まずイサムくんはね…」
それから、2人の話は次の授業の予鈴がなるまで続いたという。
そして彩は心の中で決意を決めた。
「私の新しい夢を叶えよう」と。
「へっくちっ!」
余談ではあるがそんな中、少し離れた場所では1人の青年がくしゃみをしていたらしい。
今回サブタイ詐欺じゃないか少し不安です汗
クライマックス近いけどまだ後残り何話かはわかっておりません。
というか最近色々とあってマジで更新遅れて申し訳ない。決して他の小説サイトで投稿して燃え尽きて編集に疲れてゲームしてた訳では無いです
それでは次回もごゆるりとお待ちください。
良ければ評価やコメントよろしくお願いします(o_ _)o