あれから数日。俺の心は完全に上の空だった。
理由は2つ。
1つは丸山さん改め彩と完全に友達になったこと。RINE越しではあるがやり取りをするためにこのアプリを開く事が多くなった。RINEに友達登録してる人はいくらかいるものの基本的にグループワークで各自調べたことを纏める為に作られたグループトークに招待する為に交換しただけで個人的なやり取りは一切無かった。ゆえに連絡が来るのはあいつか公式アカウントからだけ。
こんな人が突然女の子と連絡先交換してやり取りを初めてみろ。無い知恵振り絞ってどんな内容を返信しようか、この表現で大丈夫なのか等悩みまくることは目に見えてる。馬鹿な話だが内容を考えいるだけで2時間経過したこともある。しかも彩は積極的に他愛もないことで連絡をくれるので尚更返信に気を使ってしまう。
〈こんな時間にごめんね? 今日またオーディション受けたんだけどやっぱり駄目だったみたい……。でも前より良い評価貰えたんだ! 〉
こんな感じで日常のことに関してお互い話し合ってる。でもメールだと相手の表情がわからないから失礼の無い表現探しが必要になるというのが悩みどころだ。
そして2つ目なんだけど……。
「結局……どうするのが正解なんだろ」
あれから色々と考えたけどやっぱり俺が何をやりたいのかまだわかっていない。
とりあえず小・中時代の卒業アルバム引っ張り出して何かヒントを見つけようと思ったけど書いてることは純粋過ぎて今の俺にはそうそう直視出来ないぐらいホワイトだった。今の俺はその夢を目指しても「現実的じゃない」って感じでそのまま終わってしまう。何度努力して挑んだとしても砕け散るという結末だった。
いつからこんな屁理屈だらけの人間になったのだろうか。
「はあー……」
「何白けた面してんだよ」
突然俺の前の席に座り話かけた男がいた。
藤代アキラ
俺の数少ない友達……というかまともに絡んでる人はアキラしかいないと思う。ぶっきらぼうだけど単純でとにかくまっすぐな性格だし結構情に厚い。俺と絡んでるのも入学時からの腐れ縁ってところだけど、それでも友達でいてくれている。
「ねえアキラ、1つ質問していい?」
「大体お前の悩みなんか検討つくが聞くだけ聞いといてやる」
「アキラって何かなりたい自分とかあったりするの?」
俺の質問にアキラは「またか」とため息をつく。
「特に無いが」
「そっかー」
「とりあえず無理に見つけようとすると逆にめんどくさくなるからな」
「すみませんねめんどくさくて」
相変わらず言い方に難はあるけどこれだから俺たちは成り立ってるようなものだ。
「そもそもなんでお前はそこまで焦るんだ」
「焦ってる……って言うか……」
「夢ってのは無理に見つけようとするものじゃないと思うが?」
確かにそうだ。無理に見つけた夢なんてその場しのぎに過ぎないのかも知れない。でも……。
「とにかく、お前は1度その事から離れろ。いずれ自分を壊すことになるぞ」
「……そうだね。じゃあさ、もう1つ質問いい?」
「またか……。今度似たようなこと聞いても……」
「女の子とのRINEってどういったこと話せば良いのかな?」
「だからお前は…………ん?」
「え?」
俺たちの間に暫しの沈黙が続く。
若干衝撃を受けたアキラに俺は昨日までの出来事を簡単に説明した。
「なるほどな。でもそれをなんで俺に聞く?」
「だってアキラって女の子の幼なじみいたでしょ? だからそういうのに慣れてるかな? って」
「そういう事か……。というか別に普通で良いだろ」
「その普通がわからないんだよ」
アキラは本日2度目のため息をつきながら「やっぱり
お前めんどくさいな」と呟いた。それでもきっちり話を聞いてくれるアキラはやっぱりなんだかんだ言って優しいよねと思ったのだった。
────────────────────
アキラとあの話をした3日後。
土曜日でバイトのシフトも入って無いしやることも無いので久しぶりに銭湯に行ってひと風呂浴びて色々とさっぱりしてこようと思い財布とタオルを持ち家を出た。向かう先は行きつけの「旭湯」と呼ばれる銭湯。
「おや、イサムくんいらっしゃい」
「おばちゃん久しぶり。ちょっと風呂入りに来たよ」
「そうかい、ちょうど今いい感じに沸いてるからゆっくりして行くといいよ」
おばちゃんの案内で風呂場に入った俺は体を洗い、かけ湯をして湯船に浸かる。やっぱり風呂はいい。今までごちゃごちゃ考えていたことを忘れることが出来るしなにより心が落ち着く。
「あ、そう言えば彩あれ以来何も音沙汰無いけどどうしたんだろ」
心に余裕が出来たことによりふと思い出した。連絡先を交換してから頻繁に……というか1日に1回はRINEが来ていた彩から3日前から全然来なくなった。向こうも忙しいのかな? と思いあまり気にして無かったけど……。
「…………ってなんでこんな時まで彩のこと考えてんだろ」
天井を見上げながらそう呟いた。
なんせかたやアイドルになるかもしれない女の子、かたやなんの取り柄の無い一般人。本来交わることの無い2人がこうやって友達になれたことすら奇跡かもしれない。それにアイドルとなると男友達と一緒にいただけで恋愛報道とか言われることもあるため失礼な言い方だが中々面倒くさい世界だと思う。そのことを承知の上で付き合ってくれているのだと考えると彼女には感謝しかない。
だがもし本当にアイドルになった場合彼女との関係はこのまま続くのだろうか? さっきも言ったけど芸能界というのは少しのスキャンダルが命取りになることがある。よって上からもなるべく外部との不用意な接触は控えるように言われるかもしれない。そうなった場合、彼女は俺の手の届かないところに行ってしまうのかも。それでも俺と彩は友達でいられるのだろうか。
「…………って考えすぎかな?」
そう呟いた俺は両手で軽く頬を叩き再び無心に帰るのだった。
───────────────────
1時間の間お風呂を楽しんだ後でコーヒー牛乳を飲み、銭湯を後にする。そのまま帰宅した俺はベッドで横になりスマホを開いた。しばらく確認してなかったからわからなかったが彩から着信が入っていた。
「えっ?」
その着信に俺はなんとも言えない思いになった。
この思いは喜びか。
または彼女に対する祝福か。
それともこれからの不安なのか。
「…………とりあえず一旦落ち着こうか俺」
深呼吸をして再びスマホを見る。そこにはこう記されていた。
『イサムくん! 私アイドルデビューすることになったんだ!』
何故だ。
本当は嬉しいのに。彼女を祝福してあげたいのに。それなのに……。
「なんで俺素直に喜べ無いの……?」
俺はこの時程自分が嫌いになったことは無かった。
申し訳ごさいません、初のサービスシーンがこのような野郎の物で(^U^)
新しくコメントをくださった水色(^ω^)さん、リュウティス王子さん、ありがとうございました。
コメントや高評価よろしくお願いします!