皆さんは徹夜というものをしたことがあるだろうか?
睡眠というのはとても大事なものである。現に徹夜をした次の日の授業はかなり眠くて、その睡魔に耐えられそうになくなり、休み時間にエナジードリンクを買いに行った人もいるくらいだ。
しかし、どうしても徹夜をしないといけないこともある。例えば次の日の課題だったり、プレゼンの資料だったり……
期限ギリギリの作曲だったり。
「起きとるか〜?」
机に突っ伏してるアキラと椅子で伸びているイサムをつつきながらミチルは声をかけていた。机の上には洗っていない珈琲のカップや追加で買ってきたであろう缶コーヒーなどが散乱していた。それを見たミチルは仕方ないとは思いながらもよくここまで人の家で散らかせるなと思いながら溜息を着いていた。
「アキラ〜。生きとるか〜?」
「……ん。ミチルか?」
「まいどどーもミチルです。」
ようやくアキラが目を覚ました。どうやらまだ寝ぼけているらしく、思考も定まっていないようだったので顔を洗うべく洗面台へと向かった。
「そんで次は……イサムかぁ…。」
ミチルはイサムの方を見るが、まるで気絶するかのように伸びていてどうやって起こそうかと思考を巡らせていた。
「イサム〜?もう朝やで〜?」
「…………今度からキーボードいれようかなぁ…」
「……しゃーない。」
そうしてミチルはどこから取り出したのかわからないがおたまとフライパンを取り出した。それで何をするのか…
次の瞬間、ミチルは2つを思いっきり叩き合わせ大きな金属音を鳴らした。漫画などでよく見かける光景と思われがちだが、実際にやられるとかなり耳に響くし、早朝だと近所迷惑にもなりかねないのでこれをお家でやる人はくれぐれもボリュームの加減には注意しよう。あんまりうるさくすると家族からも怒られるぞ。
「……」
「あ、起きた。」
「………」
「5×5は?」
「午後の紅茶」
「よし大丈夫やな。」
一体何が大丈夫なのかはよく分からないが、とりあえず話を進めよう。
アキラが顔を洗い終え、朝食を済ませると3人は客間に集まった。
「とりあえずこれが俺たちが作った曲のデータだ。」
ミチルはアキラからヘッドホンを受け取るとその曲を通しで聴いてみた。
「「・・・・・」」
「うん、ええと思うで。」
ミチルからOKサインを貰い、テンションが上がったイサムはアキラとハイタッチをしようと手をあげるが、アキラはそれを見ておらず完全にスルーされてしまった。
「それでそっちは出来たのか?」
「こっちもとりあえずは大丈夫や。」
ミチルの衣装デザインも完成し、今彼女の父の知り合いのお店に頼んで作成してもらっているらしい。後2週間もすれば完成するのだとか。
「で、今日はどうするの?」
「とりあえず今日は昼から音を合わせておく位はするか。俺も新曲のパートの確認もしなきゃならんからな。」
「そんじゃあ今日は一旦みんな家に帰るか。」
「ウチは元から家おるけどな。」
支度を済ませ、イサムとアキラは1度帰宅。昼過ぎに再度KINGDOMで集合ということでその後の予定は決定したのだった。
「ふぁぁ…。眠っ。」
ついつい大きな欠伸をしてしまう。何しろ昨日…いや、今日は朝まで夜通しで作業をしていて終わった瞬間にアキラ共々意識が飛んでしまったのだ。無理もないだろう。
「(とりあえずコンビニで何か買おう…)」
時刻は既に9時を越えていた。目を擦りながら、近くのコンビニに入ると店員さんが「いらっしゃいませー」と明るい声で迎えてくれた。こんな朝早くから元気だなと思いつつもドリンク売り場でペットボトルのアイスコーヒーを手に取り、速やかにレジに向かった。
「お?イサムじゃん、朝早いね〜。」
目の前のギャルみたいな店員に声をかけられた。対してイサムは「誰?」とでも言いたいような顔をした。
「えっ!?アタシのこと覚えてないの!?」
そんなイサムの態度に店員は「信じられない!」と抗議するかのように声をあげたが、イサムはただ首を傾げていた。
「もー!リサだよ!今井リサ!CiRCLEでよく会うでしょ!?Roseliaの!!!」
「Roselia……あ。」
そういえば過去に何度か会話を交わした記憶がある。普段は業務関係の会話しかしないし、基本的にそういった話や会議はまりなさんが担当してるからあまり関わりがなかった故だろう。
「……忘れてたよね。」
「……ごめんなさい…」
ジト目で責め立てるリサにイサムは申し訳なさそうにしゅんとしていた。
「それはそうと目の下凄いクマだけど何かあったの?」
「ん?いや〜、ちょっと夜通しで作業してて。」
「へえ〜。何か大事なことでもあったの?」
「いや、そんなんじゃないけどさ。」
あまり深くは語れないが故にイサムは話をはぐらかしていた。
「今井さんってここでバイトしてたんだ。」
「うん。モカもここでやってるよ〜。」
「・・・・・・」
「モカはAfterglowのギターの「あ、大丈夫です知ってます」……ホントに?」
疑うような目でイサムを見るのだが、当の本人はしらばっくれていた。
「まあ良いけどさ…イサムはもうちょっと他の人にも興味持った方がいいんじゃない?そのうち痛い目にあうかもよ?」
「……善処します」
そんな会話を進めているうちにリサは作業を終わらせて、ペットボトルにテープを貼っていた。
「とりあえず今度アタシが色々と教えてあげるよ〜。レジ袋どうしますか?」
「大丈夫です。」
リサからペットボトルを受け取り、挨拶を交わした後にコンビニを後にしたイサムは1度コンビニ前で大きく背伸びをし、珈琲を空けて喉に流し込んだ。乾いた喉に程よく冷えた珈琲が応え、眠気もだいぶ軽減されたように感じた。
「さて、とりあえず家に帰ってギターのチューニングでも……」
今度の予定を練っているとイサムのスマートフォンから着信音が鳴った。ポケットから取り出し、画面を確認した。
「彩から?」
すぐに緑色のメッセージアプリを開き内容を確認した。
『久しぶり!最近元気?』
在り来りな文章から始まるメッセージは普通と言ってしまえばそれまでかもしれないが、それはそれで彩らしいなぁと思いながらイサムは画面をスクロールし、続きを読んだ。
『それで突然なんだけどさ、イサムくんは今度の日曜日の夜って予定あるかな?
もし予定が無かったら……これ一緒にいかない?』
そのメッセージの下に映っていたのは隣町の花火大会のポスターだった。
「…………ゑ?」
しばらく思考が停止したイサムは、我に返った途端変な声を出したという。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
それから1週間が経った。
7月後半にもなると多くの学校が終業式を終え、夏休みを迎えていた。もちろん、イサムの通う風島高校や彩が通う花咲川女子学園も例外ではない。
2人は夏休みに入ってからも忙しい日々を送っており、バンドの活動や夏課題を終わらせたりなどとやるべき事は山積みなのだがそれぞれが協力者(主にアキラや千聖)がいたおかげか死に物狂いで予定をこなしていた。
そして今は日曜日の夕方の6時。
彩と約束していた祭りの日だ。生憎、彼はこういった日の為の浴衣を買っていなかったので普段の私服で来ていた。
待ち合わせ場所に到着したイサムは近くの石に腰を掛け、彩が来るのを待っていた。
「イサムくんっ!」
声のした方を向くと彼は思わず目を奪われた。
それもそのはず、彩は髪を1つに纏めた上で自身のイメージカラーとも言えるピンクの浴衣に身を包み、イサムからしたら何時もとは違う彼女の魅力に惹かれてしまう程だったのだ。
「遅れてごめんね?浴衣だと思ったよりも歩きにくくて……」
「いや、全然大丈夫なんだけど…」
そう言いつつもイサムは再度彩の姿を見直していた。
……やっぱり可愛い。
心の中でそう思いながら見ていると彩はその事に気づいたのか顔を赤くしてしまった。
「ねえ……そんなに見られると…恥ずかしいんだけど…」
「あ、ごめんごめん。」
「と、とりあえず行こっ!せっかく来たんだし楽しまなきゃ!」
「それは良いんだけどさ…彩、変装は?」
イサムが指摘したことにより彩はその足を止め、固まってしまった。その様子を見たイサムは「これ忘れていたパターンだな。」と瞬時に理解した。
「もーしょうが無いなぁ…。」
とりあえず急場凌ぎではあるが、自分が被っていた帽子を彩に被せることにした。帽子を身につけた彩は「へっ?」と困惑していたが…
「後でなんかいい変装道具見つけて買ってくるから暫くはそれで我慢しててよ。無いよりはマシでしょ。」
「う…うん。」
じゃあ行きますか。イサムは彩の方を向きながらそう言って先を促した。
一方の彩は被ったイサムの帽子を大切そうに深く被り、そのまま彼の後を着いて行った。
花火の時間まで…後80分。
次回予告
花火大会に来たイサムと彩。
彩は一世一代の覚悟を胸に抱き、その時を待つ。
しかし、そんな彼女らに予想もしないハプニングが発生する。
果たして彩の告白は成功するのだろうか。
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さて、残り何話になるのかこの小説。
しかし、間違いなくクライマックスは近づいている。
Realize……実現を意味するこの言葉はイサムの願い、そして、イサムと彩が前に進む為に必要となる筈の言葉だと作者は考えています。
それぞれの夢、理想、そして現実が交差する中でその未来はどうなるのでしょうか。
と、なんかすごく盛り上がりそうなことを言ってみましたけどそろそろ遊びたくて限界が来てますので今回はこの辺で。←おいコラ
コメントや評価をしてくれると死ぬ程喜ぶと思いますので良ければよろしくお願いします。