白鷺千聖のご乱心
「何か言い分はあるかしら?」
「その前にこの状況についての説明を求めたいのですが?」
皆さんどうもご機嫌麗しゅう。佐倉イサムです。
現在久しぶりの休日早々に千聖さんに『今度の土曜日にCiRCLEに来なさい。』とメールを受け言葉通りに行ったところ、大女優の目の前で正座をさせられています。まさに『ご清聴しなさい、我が説教』ってところです。
え?なんでこうなってるのかって?
もちろん、理由は知らないけどね〜。
「………本当に気付いてないの?」
「………はい。」
千聖さんはため息をつきながら俺をジト目で見てきた。
「彩ちゃんから聞いたわよ?」
「え?何を?」
「この間、彩ちゃんのお家に遊びに行ったそうね?」
「ああ〜。それね〜……」
「その事で私は貴方に言わなきゃいけないことがあるのよ。」
「え? だってただ遊びに行っただけですし、ちゃんとパパラッチには気をつけましたし、何なら俺も変装しましたし……何かダメだった?」
俺の返答に再びため息をつく千聖さん。
俺自身も思考をめぐらせて考えてみるものの、特に彩の逆鱗に触れることをした記憶はない。
「じゃあハッキリと言わせてもらうわね。」
果たして千聖さんはなぜ俺に対して怒っていたのか。そして……彩は何が不満だったのか。
千聖さんの口が開かれる時、その答えが明かされた。
「貴方、誰もいない彩ちゃんの家に1日いながら彩ちゃんに手を出さなかったそうね?」
「……は?」
一瞬、俺の思考は固まった。というか千聖さんの言っていることが理解できなかった。
というのも千聖さんが怒っている理由は「俺が彩に手を出さなかったこと」らしい。いや、ドユコト?
「手を出さなかったって……
そんな暴力なんてする訳ないじゃないですか。」
「なんでそっちの思考に回るのかしら?」
「え? それ以外に何かあります?」
何気なく思ったことを口にすると、千聖さんは黙って溜息をついていた。
「はあ……。あなたって想像以上にヘタレなのね……。」
「え? これヘタレの内に入るの?」
一体俺は何が悪かったのか……。思考を巡らせても全くわからない。
「イサムくん……あなた、本当に付き合っているの?」
「付き合ってますよ?」
「じゃあ、その日は彩ちゃんと何してたか教えて貰ってもいいかしら?」
「えーっと………とりあえず部屋に案内してもらってお茶して、お話したりゲームしたり……」
「………る」
「へ?」
「普通すぎるわ!!」
その時、周りの空気がいっせいに震えた気がした。例えるなら……周囲に電気が走ったような……そんな感じだ。
「あなたね! 男の子と女の子が同じ部屋で半日もいたらたどり着く結論はわかってるんじゃないの!? 今どき貴方みたいな人の方が珍しいわよ!?」
「えーっと……何言ってるのか理解できないのですが……」
そーっと手を挙げながらそう発言すると、千聖は少々頬を赤らめながらも、何かを決意したかのように口を開いた。
「…………でしょ」
「へ?」
「普通やりたくなるでしょ!![ピーーーッ!]とか[ピーーーーッ!]とか!!」
「はあ!?」
等々に千聖さんがキャラ崩壊を始め、セリフには、よく動画であるようにピー音を入れなければ流せないような状況になっていた。これが映像ならばカラフルな画面に「しばらくお待ちください」と入れなければならないほどに酷い状況だ。
「ちょちょちょ!! 千聖さん!? なんか凄くキャラ崩壊してるけど!?」
「でも貴方は彩ちゃんを泣かせたじゃない? その落とし前はどうつけてくれるのかしら?」
あーもうダメだこりゃ。
そう確信した俺は、半分希望を失いながらも何とか千聖さんの怒りを沈めることに全集ty……否、集中する事にした。
〇 〇 〇 〇 〇
「……ごめんなさい……。少しカッなってしまったわ……。」
「いえ……」
何とか千聖さんを落ち着かせることに成功した俺は、胸を撫で下ろすながら椅子に腰を掛けた。
「ホント……一時はどうなるかと思ったよ……。」
「面目ないわ……。
でも……彩ちゃんのあの表情を見ちゃうと……つい……。」
「え? ……ちょっと……一体彩なんて言ってたの……?」
流石に気になりすぎた俺は千聖さんにその詳細を聞いてみた。
一呼吸置いた千聖さんは、ゆっくりと口を開け、そのことについて語り始めた。
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それは、ある日のこと。
何気ない朝、千聖はいつも通りにスタジオに仕事に向かっていた。
「おはようございます」とすれ違うスタッフ達と挨拶を交わしながら、いつまのレッスンスタジオに向かっていった。
「おはようございま………彩……ちゃん……?」
レッスンスタジオには既に彩が着替えを済ませて、準備をして…………はなく、スタジオの片隅で体育館座りをして蹲っていた。
「あ……彩ちゃん……? どうしたの?」
「千聖ちゃん……」
千聖に気がついた彩は、千聖を見るなり目をうるうるさせながら彼女の方に近づき、泣きつき始めた。
「うえええええ〜〜〜〜〜!!!千聖ちゃぁ〜〜〜〜ん!!!」
「ちょ……ちょっと彩ちゃん!?」
「私って……私って魅力無いのかな〜〜!?」
「え?ちょっとどうしたの?」
「やっぱり胸!? 胸がダメなの!? もっと大きくしないとダメなの!?」
「お、落ち着いて彩ちゃん!!」
まるで赤ちゃんのように泣きじゃくる彩に戸惑いながらも、何とか彩を宥めることに成功した千聖は詳しい事情を彩から聞くことにした。
そうしてわかったことは、彩はイサムを家に誘い、家族がいない間……夕暮れまでずっと彩の自宅で談笑したり、遊んだりしていた………。
そして、問題はここからだ。
日暮れになり、彩の「両親は仕事で、妹は友達の家に泊まることになってるから……」というお願いにより、イサムは彩の家に1晩泊まることに。
そんな中で、彩は自分なりに頑張ってイサムに迫っていき、色々とアピール的なものをしていたらしい。………その目的がナニとは言わないが、そこは皆様の想像で補って頂きたい。
しかし……イサムはそんな彩のアピールが全く靡いてないというか………気づいてなかったというか………。
まあ簡単に言うと、イサムが彩のアピールの意味を理解できてなかったが故に、彩のアピールはほぼ無意味になった。
その話を聞いた千聖は決意した。
彩を……大切なメンバーを悲しませた、かの無知なイサムを懲らしめねばなるまいと……。
思い立ったが吉日とはよく言ったもの。千聖は早速スマホを取り出し、イサムにメッセージを送ったのだった……。
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「と、言うことなのよ。」
「いや、どういうことだってばよ。」
千聖から話を聞いたイサムであったが、やはり半分理解し、半分理解してないといった状態だった。何かの歌詞でこんな言葉があるが「知らないという罪と知りすぎる罠」とはよく言ったものだ。本気でこの展開は前者そのものだ。
「つ・ま・り! 貴方はもうちょっと乙女心を理解すべきなのよ!」
「とは言いましても……」
「そもそも、なんでわざわざ一緒のベッドで寝るように誘ったのにそれより進展しないのよ!! 普通察するでしょ!!」
俺らまだ高校生だし……と言葉を零すイサムを見て、千聖はまたため息をついた。
「彩ちゃんはなんだか苦労する相手を選んじゃったみたいね……」
「なんか言いました?」
「いいえ?」
これ以上は何を言っても無駄かと思った千聖は、それ以上の言葉は何も言わなかった。
「……とりあえずさ……彩、大丈夫なの?」
「……大丈夫とは言い難いわ。だいぶ凹んでるみたいだから。………誰かのお陰様で。」
若干嫌味にも聞こえる声量で千聖は呟いた。
「………どうしよ……。」
とりあえず、何とか彩のご機嫌を取り戻したいイサムは必死で思考をフルスロットル状態にして考えるが、いい案は思いつかなかった。
頭を抱えながら悩んでいる彼を見て、流石に言いすぎたかと思った千聖は、ある事をイサムに提案した。
「彩ちゃんが喜びそうな所にでも連れて行ってあげたら?」
「……彩が喜びそうなところ……?」
「そうね、話題のテーマパークとかどうかしら?」
「なるほど……。あ、でもそういうところって整理券とか取れるのかな……?」
イサムが再び考え込んでいると、千聖は一通の封筒をイサムに差し出した。
「……これは?」
「とあるテーマパークの招待券よ。マネージャーから頂いたのだけど、2枚しか無かったからどうしようか悩んでたのよね。
せっかくだし、彩ちゃんのご機嫌取りも兼ねて誘ってみたら? イサムくんと一緒だし、とても喜んでくれると思うわよ?」
「いいの!?」
「ま、ひとつ貸しね。」
ありがとう!!と、封筒を受け取るイサムを見ながら、千聖はどこか嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ、そろそろ出ましょうか。そろそろスタジオの時間も来ることだし。」
「あれ? ちょっと待って?」
「あら?何かしら?」
「………もしかして、この説教の為だけにスタジオの部屋借りたの?」
イサムの質問に対して千聖は涼しい顔をしたまま「そうよ?」と返答した。
そして、イサムはこう思ったのだった。
あけましておめでとうございます!!
さて、新年一発目の作品として……かねてよりお伝えしていたドリパレのOVA編を始動させました!!いきなり千聖がキャラ崩壊してると言うね汗
因みに現実は冬なのに、この回の季節感はまだ夏です。本当はお正月編を書いてたんだけど途中から投げ出したことは内緒です。
まあ、それはさておき……今年はより良い作品をお届け出来るように頑張っていくので是非応援の程よろしくお願い致します(〃・д・) -д-))ペコリン
お正月ですし……良ければお年玉代わりにコメント高評価をお願いします。|ω•๑`)