「次は〜〇〇〜〇〇〜。お降りのお客様は乗り過ごしのないようにご注意ください」
ガタンゴトン……と電車に揺らされながら俺は窓の外を眺めていた。最近は特にこういった公共交通機関を利用することが無かったので、車窓から見える景色が少々物珍しいものに感じられたのだろう。
「ていっ」
その声が聞こえた途端、俺の膝に軽い衝撃が走った。目の前を見ると、そこには頬をぷっくりと膨らませて不機嫌ですと顔に書いてある彩がいた。
「……どしたの?」
「もう! なんでさっきから外ばっかり見てるの?」
「いや、なんか電車乗るのも久しぶりだな〜って思うとついつい……」
「まあわかるけど……」と煮え切らないような態度で彩は呟いていた。
頬を膨らませたままの彩を見てると当然彩は立ち上がり、そのまま俺が座っている隣に座った。
「……あの?」
「………………」
突然過ぎて、その行動の意味を彩に問いかけるが当の本人は俺の肩に頭を乗せたまま何も答えない。
「(…………って……このアングルから見ると彩ってホント美少女だな……。流石アイドル……。あ、写真撮りたい)」
そんな感じでボケっと彼女の方を眺めていたが……
「(…………って、寝てる!? この流れで!?)」
気がつけば彩はその体制のまま、その瞳を閉じて夢の世界に行っていた。
やれやれ……と思いつつ、眠り姫の可愛らしい寝顔を眺めていると、俺もだんだん眠くなりそのまま彼女の後を追うように俺も眠りについた。
「△△~。△△です。お降りのお客さまは扉から離れてお待ちください」
「「………………」」
その十数分後、俺たちは駅のホームに立ち唖然としていた。というのも……
「「(やっちまったーーーー!!!)」」
2人揃ってすっかり寝過ごしてしまい、3つ先の駅に辿り着いてしまったのだ。
みんなも電車の乗り過ごしには気をつけるんだZE☆
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こうして何とか俺たちは目的地へと辿り着いた。
今回の目的地は…………
「海だーーーー!!!」
そう。海である。
いや、元々は大人気な水のテーマパーク『トコナッツパーク』に行く予定だったんだけど、昨日トコナッツパークについて調べようとホームページを見たら…………
『トコナッツパークは機械の故障により、当面の間臨時休業致します。
楽しみにしていた皆様には御迷惑をお掛けしますが、何卒ご理解をよろしくお願いします』
この1文が残されていた。
これに慌てた俺は彩に連絡。電話越しにも楽しみにしていた彩もこの事実を聞いてすごく落胆していた。
その後、プランの変更を余儀なくされた俺たちはそこからどうするかを考え直した。まあ、そのタイミングが2日前だったのが不幸中の幸いってところか。
そしてその次の日、千聖さんに相談した所……
『それならこの間トコナッツパークの取材に行った時に近くで海を見かけたの。そこに行ってみたら?』
そう提案を受けた。そして調べた所、千聖さんの言ってた通り、近くに海があった。
そうして俺たちはトコナッツパークをまたの機会に行くことにし、今回の行き先をその海へと変更した。
「イサムくん! 海だよ! 海!」
隣にいる彩は海を指差しながらはしゃいでいた。トコナッツパーク休業の事を伝えた時のリアクションが嘘のようだ。
「にしても本当に穴場だったな……。人もあんまり居ないし」
辺りを見渡しても人なんて所々にしかいなかった。まあ千聖さんからも『知る人ぞ知る穴場スポット』って言われたからなぁ。今回ばかりは彼女に感謝するしかない。
「よーし! 早速泳ぐぞぉ〜!」
持ってきたビニールシートを敷いてそこに荷物を置くと、彩は早速背伸びをしていた。それ程までに今日を楽しみにしてたのだろう。
「とりあえず着替えて来たら? 少し先に着替える場所あるみたいだし」
俺の目線の先には海の名物…………なのかは知らないけど海の家みたいな場所があった。恐らくだけどあそこが更衣室だろう。
と言っていた矢先、彩は俺の背中をちょんちょんとつついてきた。
「実はね……」
「もう下に着てるんだ♪」
そっと耳元で彩はそう呟いた。
「うん」
「あ、もしかして信じてない? じゃあ……ほら」
Tシャツの裾を捲るようにお腹を見せてきた。言葉通り、その下は彩の臍が見えた。
「って、そういうことしなくていいから!」
若干頬を紅くしていた彩が色っぽかった為か、思わず見とれていたが咄嗟に目を逸らした。
危ない、あと少し反応が遅れていたらどうなっていたことか……
「えー! 千聖ちゃんがこうしたら男の子なんてイチコロだって言ってたのにー!」
おいあの女優一体何考えてんだ。純粋なこの子にそんな大人の階段登らせちゃいけません!
「じゃあ脱いちゃお〜っと」
そのまま彩は勢いよく自分の服を脱ぎ捨てた。
服の下にはフリルの着いた白色を基調とし、胸の縁とパンツに小さなピンク色のフリル、そして中心には同色の小さなリボンがついたものになっていた。
「はいっ! どうかなイサムくん!」
見せびらかすように胸を張りながら彩は聞いてきた。
「…………うん、可愛い……と、思う……」
「えへへ〜。そうかなそうかな?」
その答えを聞くと仔犬のように嬉しそうにしていた。その光景に見とれていると彩も段々と恥ずかしくなったのか少しずつその頬が紅くなっていた。
「……ね……ねえ……、そんなに見られると……」
「あ……ごめん……。……ちょっと俺、着替えてくるよ」
「うん……」
お互いなんだか気まずくなり、俺は更衣所に向かった。
「(…………ホント、可愛すぎるんだよなぁ……)」
先程の光景が脳裏から離れず、俺は思わず心の中でそう呟いた。
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その後、俺も水着に着替え彩の元に戻ってきた。
「………………」
「…………どしたの」
と、戻ってくるや否や今度は彩が俺の方をじっと見ていた。
「イサムくん…………意外と身体引き締まってるんだ……」
「ま……まあ……割とバイトで力仕事とか多いし、ライブでも肺活量とか必要だから俺なりに運動はしてるんだよ……」
そんな感じでさっきとは逆の状況になった。なんかさっきの彩の気持ちが分かるような分からないような……
「……なんか……そんなに見られたら恥ずかしいんだけど……」
「あ、ごめん」
そうして暫く見つめあっているとなんだか変な気持ちになり、2人ともクスッと笑いあっていた。
「なんか照れてるイサムくん、可愛いね」
「可愛いって……」
なんだか照れくさい気分になっていたのだが、そんな中で俺はある事に気がついた。
「ねえ彩」
「どうしたの?」
「その麦わら帽子って……」
そう、俺が気になったのは彩が持ってきたピンクと白のリボンがあしらわれた麦わら帽子だった。
それは……
「うん。夏祭りの時、イサムくんがプレゼントしてくれた麦わら帽子だよ」
予想通りだった。
あの時、変装のつもりで彩に買った麦わら帽子を彼女は今も大切にしてくれていたのだ。
「せっかくの海だし、気に入っていたから持ってきちゃった」
「そっか。それは良かったよ」
自分が大切な人にプレゼントした物を、ここまで大切にしてくれている。これ程嬉しいことがあるだろうか。
「今日の水着も麦わら帽子に合わせてみたんだ」
「あ、確かにイメージ似てる」
そんな他愛もない話をしながら俺たちは海での2人の時間の始まりをゆっくりと楽しんでいた。
今日はきっと、忘れられない思い出になるだろう。
「そうだ! イサムくん、背中に日焼け止め塗ってくれない?」
「あ、そう来ます?」
大変ご無沙汰しております。
こっちの作品忘れてたわけでは無いんですけど色々とやってたらね、個人的な事情もあるんですがこんなに間が開いちゃいましたよ。
もうどのキャプションでも謝罪しかしてませんが本当にお待たせしてしまい申し訳ない。
次はどのくらい開くのかは分かりませんが、ブラキオサウルスのように首を長くして待って頂けると幸いでございます。
それではまた次回や別の作品でお会いしましょう。
p.s.私も彩ちゃんと海でデートしたかったです
つったかたー↓
https://twitter.com/kizukana_est?s=09