Dream Palette   作:キズカナ

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これからの未来を、君と築きたい

 

 

 その後、俺と彩は今井さんたちと別れ残りの時間も海を満喫した。この時点で時刻は既に3時を回っていた。

 ちなみに今はさっき約束した通り彩にアイスクリームを奢っていた。

 

「甘くて美味し〜い!」

 

 さっきまでの不機嫌は何処へやら……と言わんばかりに幸せそうにアイスを頬張る彼女を見つつ俺も自分のアイスを食べ進めていた。

 こんなに甘やかしていたら千聖さんに怒られるかもしれないけど今回ばかりは多目に見て貰おう。いや、この場に千聖さんはいないから言わなきゃバレないのでは?と思っていたら俺のカバンから「ピコン」という音が聞こえた。

 

『イサムくん、彩ちゃんとの海デートはどうかしら? 言い忘れていたけどあまり彩ちゃんのおねだりに負けて甘いものを与え過ぎちゃ駄目よ? そのうちライブ前の衣装合わせもあるからその辺り頭に入れててね』

 

 その画面にはこんな文章が綴られていた。いや、あの人はエスパー能力でもあるのだろうかと聞きたくなるほどタイムリーな話題に唖然としつつ今の現状に悪寒がし始めてきた。

 

「どうしたのイサムくん?」

 

 頬っぺにアイスをつけた彩が首を傾げながらこっちの表情を伺ってきた。

 

「いや、なんでもない。………あ、でも後でもうちょっと体動かそうな」

「うん! まだまだ時間はあるしせっかく来たんだから楽しまなくちゃね!」

 

 なんとか摂取カロリーと消費カロリーをプラスマイナスゼロにしなければと思い彩をそっちの気分へと持っていくことには成功……というかその辺は彩も最初から楽しむたつもりだったからそれを運動に繋げれば問題はなかったのかもしれない。

 

「ねえ、イサムくんのアイスひと口頂戴!」

 

 と、いつもの時間がやって来たようだ。

 アイスやらかき氷やら食べる時はそれぞれで好きなフレーバーを選ぶので同じ物を選ぶ時もあれば違うものを選ぶ時もある。今回は彩はストロベリー、俺はバニラを選んだ。こういう場合はよくお互いにひと口ずつ食べ比べをするという時が多い……というか基本的に彩が食べてみたいという思いからかそう提案する事が殆どなんだけど。

 

「はいはい、来ると思ってたよ」

 

 そう言って彩に俺のバニラアイスを向けた。そこからバニラアイスをひと口食べた彩は「美味し〜い」とわかりやすい反応をしていた。

 

「じゃあ私の分もどうぞ!」

 

 その後は俺の番になるというのかいつもの流れ。彩の持つストロベリーアイスをひと口食べると口の中に苺の酸味が効いた甘い風味が広がった。

 

「イサムくん、頬っぺにアイスついてるよ」

 

 そう言うと俺の頬に着いたアイスを指で拭い、彼女はそのままその指を舐めた。そんな仕草に思わず可愛いと思ってしまい照れそうになった。

 

「……い。……厶く〜ん?」

 

 少しだけボケっとしていると彩が俺の顔の前で手を振っていた。

 

「大丈夫? もしかして……疲れてる?」

「あ、いや大丈夫。ちょっと考え事してただけ」

「考え事?」

「あーえっと……彩って可愛いなぁって……」

「ふぇ!?」

 

 嘘を言っている訳では無いのだが、それっぽくを言ってみたところ彩は少しだけ頬を赤くしていた。

 

「もう……急に真顔でそんな事言わないでよ……。でも………ありがと」

 

 照れながらもお礼を言われてしまい、なんだかこちらもこそばゆい気持ちになった。どうにもお互い、こんな事を言われるのは不慣れみたいらしい。

 

「イサムくん! まだまだ時間はあるから目いっぱい楽しもっ!」

 

 アイスクリームを食べ終わり、再び彩に手を引かれて海へと向かう。

 残り数時間だが、ここは思う存分彩に付き合ってひと時の夏の思い出を作るとするか。

 

 

     ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 楽しい時間はあっという間と最初に言ったのは一体誰なんだろうか。

 海で遊んでいると気が付かないうちに時は経っていて、名残惜しいがそろそろ帰り支度をしなければという頃合になった。

 今はシャワーで海水や足に付着した砂を洗って着替え終わり、一足早く海の家の外れで彩を待っていた。男子と女子では服の着方や髪の手入れなども違うため時間がかかるのは仕方ない。

 

「お待たせ〜!」

 

 彩の着替えが完了し、忘れ物が無いことを確認した上で俺たちは海を後にした。彩はまだ名残惜しいのか歩いている時もチラチラと海の方を見ていた。

 

「あ……」

 

 気がつけば空は茜色に変わり始め、青かった海も夕日によって紅く染まっていた。

 

「綺麗……」

「ホントだ」

 

 少しだけ足を止めてその光景を目に焼き付けていた。

 本当に1日と言うのはあっという間だ。楽しい時間にもいつか終わりが来てしまう。始まりがあるから終わりもある。そんな事は理解しているつもりだけど、やはり楽しいものは終わって欲しくないという願いが心のどこかに生まれてしまうものだ。

 

「さて! 行きますか! そろそろ電車来ちゃうし」

「うん!」

 

 しんみりとした思いを振り払いそのまま海を背に駅へと向かった。

 その後は到着した電車に乗って自分たちが住む街へと電車に揺られながら進んだ。車窓から見える海を眺めると今日過ごしてきたひと時がふとした時に浮かび上がった。

 

「楽しかったね〜。来年もまた来たいなぁ」

「来る?」

「行く!」

「即答ですか」

「それに今度はトコナッツパークも!」

「確かにね」

 

 相変わらずこういう時は返事が早い。

 

「あ、そういえば今日色々と写真撮ったんだ〜。見る?」

「おお〜、見たい見たい」

 

 彩のスマホに今日の出来事の一コマが色々と残されていた。自分の水着の自撮りとか一緒に食べたアイスクリームとかいつの間に撮ったのかわからない俺の写真とか見れば見る程思い出が溢れていた。

 

「こうやってまた思い出、作りたいね」

「そーだね」

「ねえ、今度はどこに行く?」

「そうだな……、温泉とかどう? 近場でいい銭湯知ってるんだけどさ」

「イサムくん……お風呂好きなの?」

「うん。良く通ってる」

「へぇ……。なんか意外」

 

 彩にとっては意外だったらしい俺の趣味を語っていた時、俺のスマホから着信音が鳴った。

 

「今井さん……?」

「リサちゃん? いつの間にLI〇E交換してたの?」

「今日会った時」

 

 トーク画面を開くとそこには1つの短い文章が書かれていた。

 

『イサム〜、今日は色々とごめんね〜。お詫びに彩の可愛い写真あげるよ〜』

 

 その下に送られていたのは、彩が頬を膨らませている姿……恐らく俺が羽沢さんや上原さんと話していた時の彩が映されたものと自分の胸に手を当てて何かを思い悩む彩の写真があった。

 

「えっ!? リサちゃんこんなのいつの間に撮ってたの!?」

 

 動揺する彩を余所に俺は無言で全ての写真をフォルダに保存し今井さんには「恩に着ります」とお礼を言っておいた。

 

「ちょっと消して! イサムくん今すぐ消して!」

「ヤダ」

「もー! イサムくんとリサちゃんの意地悪ー!」

 

 さっきまでの俺の中のしんみりした雰囲気は何処へやら。気がつけばそんなものは忘れていつもの笑顔が戻っていた。

 

 楽しい時間にも終わりが来る。それでもまた楽しい時間を新しく作るという楽しみを噛み締めたそんなひと時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 後日……

 

「彩ちゃん、凄く嬉しそうにしてたわよ」

「あ、そうですか」

 

 俺は千聖さんに呼ばれてその時の話を聞かれつつ最近の彩の様子を教えて貰っていた。何しろ最近の彩はいつもより気合いが入っている様でバンド練習にも身が入ってるらしい。ただ相変わらず肝心な所で噛んじゃう「丸山とちった」は健在な模様。

 

「よっぽど嬉しかったのね。私と話す時良く惚れ気話を聞かされるわ」

「へえ〜…………もしかして羨ましいの?」

「そう見えるのかしら?」

 

 千聖は笑みを浮かべながらそう語った。最後の笑みは何処と無く恐怖を感じるまであったけど。

 大丈夫ですよ千聖さん。きっと貴方にもそのうち運命の人が見つかりますよ。………まあ、何となくその人を尻に敷いてるんじゃと思わなくもないけど。

 

「何か今失礼な事を考えなかったかしら?」

「いえ何も」

「そう? ならいいのだけど」

 

 相変わらず怖い笑みを崩さずに話を続ける千聖さん。やっぱり女優って凄いわ。

 

「ところで1つ俺からも質問いい?」

「何かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんでまた会話をするのがCiRCLEのスタジオ(ここ)なの?」

 

 ようやく永らくの疑問を口にした。そう、今俺たちがいるのはかつて千聖さんが暴走してその口から放送禁止用語を放ったスタジオである。

 

「そうそう、1つ貴方に聞きたいことがあったの」

 

 そうして、千聖さんが放った言葉とは……

 

 

 

 

 

 

 

「胸ってどうしたら大きくなるのかしら?」

「は?」

「彩ちゃんが最近そう聞いてくるのよ。何か心当たりあるかしら?」

 

 再び素敵な笑顔で問いただしてくる千聖さんに俺は命の危険を感じた。

 

「……いや、それ他の人に聞いた方が良いのでは?」

「他に聞ける人がいないから貴方に聞いてるのよ?」

「…………もしかして千聖さん自身も知りたいんじゃ「お説教が必要かしら?」……スミマセン」

 

 何となくこの部屋が選ばれた意味がわかった様な気がした。確かにこれはカフェとかで話題のアイドル兼女優が発言しちゃいけない奴ですね。

 

 何となくだけど白鷺千聖という1人の女の子の側面を見れたような気がした今日この頃でした。

 

「大体貴方は発言の半分は原石そのままぶつけるの自覚してるのかしら? それに彩ちゃんがそこまで考えているのだからちゃんと彩ちゃんのアピールに気づいてあげなさいよ? ほら前も言ったでしょ? 『ピーーーッ!』の合図「あの? 水や風の流れのレベルでしれっと暴走するの止めてください?! 貴方は彩の母親かなんかなの!?」」

 

 時々こうやって暴走するのはどうにかしていただきたいものではあるけれどね?

 

 

 




これにてOVA:海編完結でございます。
永らくのご精読ありがとうございました。

一応これで完結ではなくまだやらなきゃいけないストーリーあるので気が向いた時に更新していこうと思いますので気長にお待ちください。
この小説の第2章もそのうちやr…………おっと、少し先の未来の予定まで語りすぎてしまいました。

最後に千聖推しの皆さんホント千聖さんの扱いがこんなですみません。反省や後悔はしてませんけど。

最後に良ければ小説への評価、コメント、作者のTwitterの方もよろしくお願いします。
https://twitter.com/kizukana_est?t=NnQvXZ7tbKf4oYiJ7vIa5w&s=09


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