Dream Palette   作:キズカナ

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夢迷喪談(ゆめものがたり)『My Go!!!!!参戦記念作品』

 

 ライブハウス「RiNG」。

 ライブハウスと言うには割かしデカく、建物内にはカフェスペースまである。

 今日はRiNGにMy Go!!!!!というガールズバンドが練習に来ていた。

 

「………遅い」

 

 ドラム……椎名立希は腕を組みながら苛立ちを露わにしていた。

 

「りっきー、そんなにイラついてても仕方なくない?」

「は? 別にイラついてないけど?」

「うわー、今日は一段と怖。ともりんどうする?」

「た……立希ちゃん、落ち着いて……」

「ごめん、ちょっとイライラしすぎてた」

「うっわ、わっかりやすく態度変えた」

「何? 文句あんの?」

 

 そんな立希に睨まれながらも臆さないギター……千早愛音と2人の様子をオロオロしながら見ているボーカル……高松燈。そしてそんな脇でベースの長崎そよは静かにアールグレイの紅茶を飲んでいた。

 

「はあ……、私も何か頼も〜。あ、すみませーん! この抹茶シナモンラテくださーい!」

「かしこまりました」

 

 カウンターで当番をしていたのは……佐倉イサム。普段はライブハウス「CiRCLE」でスタッフをしているのだが、現在はこちらに派遣されている。

 

「それにしても……最近メニュー増えたよね。

 アップルパイとか……チョコレートルネードパンケーキとか……。吉備団子もある。しかも『時価』だって……

 あ、この大豆粉のホロクッキーなんてそよりん好きそう。頼んであげよっか?」

「いらない」

 

 興味本位で発された愛音の言葉はあっさりと切り捨てられてしまった。

 

「お待たせしました。抹茶シナモンラテです」

「ありがとうございまーす。あっ、吉備団子ってありますか?」

「あるよ」

「じゃあそれお願いします!」

「……違うの頼んでるじゃない」

「いや〜、気になっちゃって……」

「この後練習なの、わかってんの?」

「はいはい、その為の栄養補給ですよ〜。ともりんは? なにか頼む?」

「あ、えと……金平糖……」

「えーと、金平糖……金平糖……メニューにないけど……」

「あるよ」

「あるんだ……」

 

 注文を取り終えたイサムは。奥へと入っていった。

 

「……未だに既読もつかない。野良猫の奴、どこで道草食ってるわけ?」

 

 先程から立希がイラついている理由……それはこのバンドのもう1人のギター……要楽奈が来ないこと。

 新曲の音合わせもあり『今日だけは絶対に来い』と予め釘を刺していたのだが……案の定これだと言わんばかりの結果に。

 

 そして吉備団子と金平糖が届いてから数分後、遂にその時は訪れた。

 

「来た」

「野良猫! お前一体何処で何やって……」

 

 楽奈の声を聞くとすぐさま不満をぶつけようとした立希。しかし、その声は徐々に小さくなった。

 何故なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肝心の楽奈はでっぷりと肥えていたからだ。

 これには流石の立希も開いた口が塞がらない状態である。

 

「ライブやろ」

「いやいやいやいや! それどころじゃ無いだろ! お前それどうした!?」

「それ?」

「それはそれだ!」

「どれ?」

「だからこれだ!」

「あれ?」

「違うそれだ!」

「あーもう! こそあど言葉だけで会話しないで!!」

 

 遂に立希も思考が回らなくなったのかまともな会話すら繰り広げられず、見かねた愛音が止めに入った。

 

「で、楽奈ちゃん何があったの? この間見た時そんなに太ってなかったよね?」

「まっちゃ」

「え?」

「まっちゃお腹いっぱい食べた」

 

 ここまでは埒が明かないので、とりあえず愛音たちは楽奈の話を聞くことに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日前(時を戻そう)

 

「抹茶食べたい」

「仕方ないねぇ……」

 

 祖母に抹茶をねだる楽奈。

 この世のおじいちゃんおばあちゃんは孫に弱いとはよく言ったものだ。ただ一言言うと直ぐに楽奈にプレゼントしていた。

 

 数分後

 

「食べきったかい?」

「まだ」

「仕方ないねぇ……」

 

 そして数行前に戻る。

 これが何度か繰り返された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 以上

 

 

 

「うわ〜、身も蓋もない……」

「いや、お前ホント何なの? 自分の体重管理も出来ないわけ?」

「この世の抹茶は美味すぎる」

「話逸らさないでくれる?」

「あー、ほらほら落ち着いてりっきー。はいどーどーどー」

「人を馬扱いしないで欲しいんだけど」

 

 回想を聞いて尚ご立腹な立希。仲裁に入った愛音にすら噛みつきかける勢いである。

 

「でもどうするの? 楽奈ちゃんがこんなんじゃ衣装も入らないしライブ出来ないんじゃない?」

 

 そんな中、そよは冷静に現状を口にする。

 見た目がどうこうもあるが、ライブに出るには皆事前に作成した衣装に身を包むわけであり今の状態の楽奈ではそれに腕すら通らないという事だ。

 まあ、その他にも問題は山のようにあるのだがここでは割愛させて頂こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あるよ」

 

 そんな重い空気を破ったのは……注文の品を持ってきた佐倉イサムだった。

 

「え?」

「短期ダイエットの方法、あるよ」

 

 その言葉に一同は目を張った。

 

「そ……それってなんですか!?」

 

 そして真っ先に立希はイサムに質問を続けた。

 

「とにかく摂取カロリーを抑えて消費カロリーを増やす。でも、単純に食べる量を減らせば良いってものでも無い。低糖質高タンパクなものを多く摂る必要がある。代表的な物で言えば鶏のささみや大豆がそれだね。それによく炭水化物も食べない方が良いって言われるけど筋肉をつけるためならある程度は食べた方が良いとも言われて「あの……もーちょっと分かりやすくして貰っても良いですか?」

 

 突如始まったイサムの解説。長くなると踏んだ愛音は話を止めて纏めるように要求した。

 

「要するに『糖質減らせ。タンパク質食べろ。運動しろ』って事だね」

「うわー、簡潔にすると身も蓋もない……」

「ま、それが出来たら誰も苦労しないんだけどね」

「……イサムさん、ダイエットしてるんですか?」

「ああ、俺の………、友人がね」

 

 愛音の問いにイサムは答えたが、謎の間に彼女は首を傾げていた。

 

「で、野良猫どうにか出来ないんですか?」

「とりあえず……その抹茶食べるのを止めさせようか」

「……ってそれ私の抹茶シナモンラテ!!」

 

 少し目を離した隙に楽奈は愛音が注文していた抹茶シナモンラテを飲み干していた。流石の野良猫っぷりである。

 

「……これじゃ1ヶ月かかっても無理そうね」

 

 そんな情景を見てそよは静かにため息をついた。

 

「よし野良猫、今日から毎朝ランニングだ」

「ヤダ。運動疲れる」

「拒否権は無いんだけど? 誰の為だと思ってんの?」

 

 一方で立希は楽奈を外に連れ出そうとするが、当の本人はてこでも動かないと言わんばかりの踏ん張りを見せていた。

 

「あ、あのちゃん……どうしよう……」

「いや私に言われても……。というか私たちだけじゃ楽奈ちゃんに運動させるの無理があるんじゃ……」

 

「優秀な助っ人がいれば良いんだけど……」と愛音が零した時、またしても口開いたのは

 

「いるよ」

 

 佐倉イサム(この男)だった。

 

「え?」

「俺の知り合いにこの手のプロがいる」

「まじですか?」

「……その人と連絡とれませんか?」

「どうだろうね。向こうも色々あるからなぁ……。一応話をつけてはみるよ」

 

 立希の要望により、イサムは謎の人物への連絡を試みた。

 果たして、上手くいくのだろうか……。

 

 

 

 

 

 2日後

 

「えっと……ここに集合で良いんだよね?」

 

 燈たちMy Go!!!!!のメンバーはRiNGに集まっていた。前日、イサムから「アポが取れた」と報告を受けその人物を呼び出す為にここに集まって欲しいと言われていたのだ。

 

「この手のプロって言ってたけど……どんな人なんだろ……」

「ていうか……立希ちゃんと肝心の楽奈ちゃんがまだ来てないんだけどどういう事?」

「りっきーなら『力ずくでも野良猫連れてくる』ってどっか行ったよ?」

 

「全く……」とそよが溜息を零していると立希が楽奈を担ぎながら現れた。噂をすれば何とやらだ。

 

「りっきーお疲れ様〜」

「……よく楽奈ちゃん担げたわね。重くないの?」

「そんな事今どうでもいいから。佐倉さんまだ来てないの?」

「いるよ」

 

 その声に振り向くと、一体どこから現れたのか既にイサムが立っていた。

 

「さて、これで全員揃った訳だが」

「佐倉さん、本当に信じても良いんですよね?」

「それに関しては問題ない。知る人ぞ知るプロだからね。彼ももうすぐ到着するみたいだし」

 

 そんな話をしていると、RiNGの扉が開いた。

 

「来たね。じゃあ早速だけど紹介するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今話題の筋トレ系Y〇u Tu〇erのマキシマム牧羽さんだ」

「「いや誰!?!?」」

 

 そこに現れたのは何故かお面を被り、白のタンクトップに黒の短パンで現れた身長190cmはある筋肉質の大男だった。そしてそんな彼を見るや立希とそよは声を大にして驚いていた。

 

「ドーモ、マキシマム牧羽デス」

「なんでカタコト……?」

「……ていうか、この人誰なんですか?」

「え? りっきー知らないの? 今テレビでも度々取り上げられる程人気になってるマキシマム牧羽さんだよ!」

「いやだから誰だよ!?」

「私も詳しくは知らないんだけど、クラスの子が『ダイエットから筋トレまで幅広くの体づくりを取り上げてる筋肉系動画配信者』って言ってた」

「いや知らないんだけど」

「それとなんかボディビルの大きな大会で3冠取ったって噂」

「だから知らないんだけど?!」

 

 愛音の解説が入る度に立希の声は大きくなっていった。

 

「ていうか噂で聞いただけなんですけどこの人って結構な有名人ですよね!? イサムさんなんで知り合いなんですか!?」

「……昔色々あってね」

「佐倉さん、たしかまだ未成年ですよね……?」

 

 イサムの人脈に愛音とそよは疑念を抱き始めたが当の本人は何を聞かれてものらりくらりとした状態である。

 

「それじゃあ牧羽さん、後はよろしくお願いします」

「マーカセナサーイ」

 

 牧羽に後を託すとイサムはそのまま仕事に帰っていった。

 

「サテ、問題ノ楽奈チャンはドノ子カナ?」

 

 牧羽がMy Go!!!!!メンバーに尋ねるが、楽奈がいない。しかし、直ぐさま立希が引っ張ることで物陰に隠れていた楽奈がズルズルと引きずり出された。

 

「コイツです」

「りっきー、はくじょうもの 」

 

 遂に首根っこを掴まれて牧羽へと受け渡された。

 

「サテ……、ジャア早速始メチャオウカネ……」

 

 お面で素顔が見えない相手。

 しかも自分よりも遥かに図体が大きく、その圧だけで楽奈は感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『逃げられない』と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トコロデ君タチはドウスルノ? 一緒二トレーニングヤル?」

「「いえ! 大丈夫です!」」

「アラソウ? まあ、ヤリタクナッタラ何時デモ言イ二来テネ」

 

 そう言うと牧羽は楽奈を連れて何処かに行ってしまった……。

 

「……楽奈ちゃん、大丈夫かな……?」

「……知らない」

 

 その様子を愛音たちはただ傍観するしか無かったという。

 

 

 

 

〇 〇 〇 〇 〇

 

 

 

 

 2週間後

 

 何時ものようにRiNGに集まったMy Go!!!!!のメンバー。

 そこには抹茶パフェを頬張る楽奈の姿もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あったのだが……

 

「ね……。ねえ、楽奈ちゃん……元に戻ってる……よね……?」

「うん……」

 

 楽奈はこの2週間で普段の姿へと戻っていた。

 ダイエット成功を素直に喜ぶべきなのだろうがこんなにも早く結果は出るものなのだろうか……と一同は困惑していたのだ。

 

「だからってまた抹茶パフェ食べてたらリバウンドするんじゃないの?」

「大丈夫。プロテインたっぷりで糖質大幅カットして貰った」

 

 カウンターを見るとイサムは静かに本を読んでいた。愛音とそよは「まあ……間違いなくこの人がやったよなぁ」と視線を向けていたが当の本人はお構い無しだった。

 

「それにしても……なんか楽奈ちゃんお肌のツヤ良くなってない?」

 

 楽奈の肌が綺麗になった事に気がついた愛音。聞かれた楽奈は首を傾げていたが、愛音はその事に興味津々になっていた。

 

 

 

 

 

 それから数日……

 

「愛音ちゃんは?」

「野良猫の肌ツヤが良くなった理由が牧羽って人のトレーニングなんじゃないかって一緒に行った」

 

 

 

 

 

 

 それからさらに数日……

 

「……燈ちゃんは?」

「筋トレしたらもっといい歌が歌えるかもって愛音たちの方に行った……」

 

 

 

 

 

 

 

 それからさらに数日……

 

「……遂に立希ちゃんも……。さしずめ燈ちゃんが心配で着いて行ったってところか……。

 どうなっても知らないわよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ライブ当日になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅い」

 

 そよは1人控え室でメンバーの到着を待っていた。

 衣装にも着替え、楽器のチューニングも終わった。しかし、燈たちが来ないことに苛立っていた。

 

 

 全く……一体どこで何をしているのだか。今度会ったら盛大に文句を言ってやらないと。

 

 

 そんな事を考えていると、控え室の扉が開いた。

 

「ちょっと! 今まで何やってた……の……」

 

 そして、そよは言葉を失っていた。

 

 

 理由は明白。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく来た燈たちはムキムキで筋肉質になり、身体は全体的に1回り大きくなっていたからだ。

 

 

 

 

 

 

「ライブ……やろう!」

「やろうじゃ無いでしょ!? え?! 何それ!? 何があったの!?」

「いや〜、牧羽さんのトレーニングって凄いね〜! 短期間でここまで成長するなんて。お陰でお肌スベスベだよ」

「いやお肌より気にするべき所あるでしょ!! 愛音ちゃんはそれで良いの!?」

「ライブやろ」

「楽奈ちゃんは黙ってて!! 立希ちゃん! 目を覚まして!!」

「ハア……ハア……燈の筋肉……凄い……」

「うわぁ、変態だ」

 

 あまりの変わりようにそよはドン引きしていた。今の彼女たちに相応しい言葉があるとしたらまさに「筋肉モリモリマッチョマンの変態」が適切だろうか……。

 

「(いや……これは流石に不味いんじゃ)」

「おーいMy Go!!!!!のみんな〜」

 

 そんな中、スタッフの1人である山吹沙綾が入ってきた。そよは「あ、終わった……」と絶望に満ちた表情を浮かべた。

 

 しかし……

 

「もうすぐライブだからスタンバイよろしくね〜」

 

 沙綾はそう言うと帰っていった。

 しかも、これまでと何も変わらない様子で……。

 

「(え?)」

「行こ」

「よーし! 今日も最高のライブにしちゃうぞ〜!」

「燈、大丈夫?」

「うん……! 大丈夫……!」

 

 何故か何時もよりやる気に満ちているメンバー達はそのままステージへと向かっていった。

 

「え? ちょ……みんな待って! それ大丈夫なの!? ねえ!!」

 

 

 

 

 

 そして、ライブ本番。

 

 それぞれが配置につき、楽器のチューニングや最終確認を終わらせて始まるのを待つ。

 

「(いや……勢いで来ちゃったけどこれ絶対ダメでしょ! お客さん皆ドン引きするに決まってるって! というかなんで皆普段の以上着れるのよ!? そもそもなんか楽器まで大きくなってる気がするし! 何!? 超常現象!? ていくかなんで立希ちゃんはドラムスティックじゃなくてギターとベースを両手に持ってるの!? まさかそれでドラム叩く訳じゃないよね!?)」

 

 暗闇の中、そよの不安は更に加速する。

 

 しかし、時間というのは無情にも過ぎていく。

 

 ライトがつき、My Go!!!!!の現状が顕になってしまった。

 

「(あっ……終わった……)」

 

 そよはバンドの終焉、いや死すら覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇえええ!!!」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い筋肉だぁぁぁぁ!!」

「愛音ちゃんの筋肉サイコー!」

「燈ちゃんのも控えめで可愛いぃぃ!!」

「肩にちっちゃい戦車乗せてんのかい!」

「腹筋6LDK!」

「三角筋がチョモランマ!」

「ハムストリングがダイナマイト!」

「キレてるよー!」

「ちくわ大明神」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然湧き上がった歓声にそよは唖然とした。

 

 そしてこう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ? おかしいのって私の方だっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ1曲目行きます……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筋肉詩(マッチョソング)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして突然始まる自分の知らない曲。しかし、他のメンバーは「前からありましたけど何か?」という感じで演奏を始める。致し方なく自分もベースから音を奏でるが、何故この曲を自分が弾けるのかすら分からない。

 

 ただ、この訳の分からない状況に関して考える事は無意味だという事だけは理解したのだった。

 

 

 

 普通とか当たり前って……なんだろう。

 

 

 

 この言葉を最後にそよは考える事を止めた。

 

 

 

 

〇 〇 〇 〇 〇

 

 

 

 

「ねえ! 大成功じゃない!? 大成功でしょ!?」

「うるっさい! 大っ成功だよ!」

「言い方だけじゃん!」

 

 ライブが終わり、舞台袖で成功の余韻に浸っていた。

 ところでこのシーンどっかで見たなと思ったそこの貴方。君のような勘のいいガキは嫌いだよ

 

 

 そしてそよは思考がこんがらがっているのか、凄い顔をしていた。

 聞いた事ない歌は出てくるわ、立希はあのままギターとベースでドラム叩いてたわ、観客もノリが迷子になってるわ、最早このバンドの方向性が1番迷子になってるわ………もう文面だけでも頭が破裂しそうな勢いである。

 

 

 

 

 そして……遂に

 

 

「なんでよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで筋トレやったの!?」

 

 そよの怒りが爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!」

「うわっ! ビックリした!」

「……あ、あれ?」

 

 そよが勢いよく目を覚ますと、そこはRiNGだった。

 

「そ……そよりん大丈夫? なんか魘されてたけど……」

「あ……愛音ちゃん? もしかして私寝てた……?」

「長崎さんは1番最初に来てたからね。待ってる間に寝ちゃったんだろうね」

 

 イサムはアールグレイの紅茶をそよに提供するとそのままカウンターへと戻って行った。

 

「そよちゃん……大丈夫……?」

「え……ええ」

「全く……体調管理くらいしっかりして欲しいんだけど」

 

 3者3様の言葉が行き交う中、そよはある事が気がかりだった。

 

「ね……ねえ、楽奈ちゃんは?」

「そうだ! 野良猫の奴、一体どこで道草食ってるんだよ……」

 

 夢の諸悪の根源……にも近い存在を探した。

 まさかとは思うが……夢のようにでっぷりとしていたら悪夢が現実になる。

 彼女はそれを危惧した。

 

「ライブ、やろ」

 

 そして、遂にその人が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、当の本人は至って普通だった。

 

「野良猫! お前何処で何してたんだよ!」

「?」

 

 そして繰り広げられる何時の会話に思わず胸を撫で下ろした。

 

「ね……ねえ楽奈ちゃん、1つ聞くけど抹茶を食べ過ぎたりして無いよね?」

「……? してない」

「……その割には既に食べてるんだけど」

 

 楽奈は現在、抹茶のスティックお菓子の様なものを齧っていた。その為、そよの不安は留まることを知らない。

 

「あれ? 楽奈ちゃん、その抹茶バーってもしかして……今話題のすっごく美味しいやつ?」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかプロテインバーって書いてた」

 

 その言葉にそよは目を見開いた。

 

「あ、それ知ってる! 確か……マキシマム牧羽って人が監修しててタンパク質豊富な上に糖質も大幅カット、でも味はすっごく美味しいやつだよね!」

 

 マキシマム牧羽……その名前で更にそよは頭を抱えた。

 

「その人……すごい人なの……?」

「うん! ダイエットや筋トレだけじゃなくて美容についてや発声についても詳しいんだよ! ともりんも見てみたら?」

「う、うん!」

「あのさ! もう練習始まるんだけど! さっさと準備……」

 

 立希が愛音たちに物申そうとした時、そよは勢いよく立ち上がった。そして、その光景に4人は振り向いた。

 

「ねえ……皆……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い い 加 減 に し て く れ な い か な ?」

 

 突如としてそよの怒りが爆発。

 その身体は何故か1回り大きくなり、ムキムキの筋肉質の肉体へと変貌した。

 

 

 しかも何故か虹色に輝くゲーミング仕様で。

 

 

 誰もが言葉を失うこの現象。

 ただこの様子を……そよの心を一言で代弁すると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぶちまけちゃおうか迷星(まよいぼし)に。

 

 

 こういう事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程〜。確かにこの身体漲るね〜。

 今ならベース二刀流も出来そうだよ」

 

 顔はとてもいい笑顔なのだが……ムキムキでゲーミングな状態で言われると恐怖しかない。

 

 

 

 

 そして4人はある結論へ至った。

 

 

 

 

「逃げるぞ」

 

 立希の号令と共に燈たちはRiNGからダッシュで逃走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやいやいや! あれ何!? そよりんに何があったの!?」

「そんなの私が知るわけ無いでしょ! とにかく今は走るしか無い!」

「ていうか楽奈ちゃんどっか行ったんだけど!?」

「アイツは多分大丈夫だ! どっかで生きてる!」

 

 燈、愛音、立希はただひたすらにRiNGの方角とは真反対に走っていた。

 

「皆〜どこ行くのかな〜?」

 

 しかし、暴走したそよがそれを見逃す訳もない。その強靭な肉体で追いかけてきたのだ。

 

「ちょっとなんかすごい勢いで追いかけてきてない!?」

「馬鹿! 後ろを向くな!」

「……それにしてもこの情景どっかで見たような……

 あ!」

「こんな時に何!?」

「あれじゃない! 動画サイトでよく見るヤツ! ほら、Afterglowさんもカバーしてた楽曲で有名な!」

「それ止まらないヤツじゃ無くて反省を促すヤツだよ!」

「……って、りっきー大変!」

「くだらない事だったらお前囮に使うけど何!?」

「ともりんがそろそろ体力切れしそう!」

「それを先に言え!! ……はっ! とにかくあそこのトンネルに逃げるよ!」

 

 燈をおんぶして走る愛音。それを見た立希は慌てつつも冷静に現状を分析。トンネルの暗がりに紛れてやり過ごす計画に出た。

 

 

 それからトンネルに入った3人は息を潜めてそよをやり過ごそうとしていた。

 トンネルに入って暫く走った後、燈を休憩させようと立希は振り向いた。

 

「ここまで来れば……。燈、大丈……ぶ……」

 

 しかし、振り向くと燈も愛音もいなかった。

 

「……え? 燈……? 燈! 何処にいるの!? 愛音も! いるなら何か言え!」

 

 立希は必死になって2人の名前を呼んだ。

 普段はムカつく愛音の発言ですら、こんなに欲したのは初めてだった。

 

 そして、遂にはポーン、ポーン、ポーンと奇妙な音まで聞こえてきた。

 まるで誰かがボールを弾ませてるような音。今の立希にとってはとても恐怖を駆り立てる音。

 

 ウヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!

 

 奇妙な笑い声と共に何かが背中を通った様な気がした。しかし、振り向いてとんでもない化け物がいるのでは……と思うと体が竦んだ。

 

 それから1分が経過。呼吸を整えた立希が振り向くとそこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立希ちゃん、みーつけた」

 

 そよがいた。

 

「そ……そよ……」

「も〜、どうして皆逃げるのかな〜?」

「何……? さっきのボールの音もお前が?」

「ボール? ……あ〜、さっき変なワンちゃんが通ったね。その子が遊んでたんじゃ無いかな?」

「燈と愛音……どうした?」

「あの2人ね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「捕まえちゃった☆」

 

 その言葉に立希の背筋に悪寒が走った。

 

「い、今何処にいるの!?」

「そんなに心配しなくても大丈夫。ちゃんと生きてるよ。ただ……

 ちゃんとお仕置しなきゃだけどね?」

「……っ! ふざけないで!」

「ふざけてないよ〜。これ以上勝手なことされても困るし〜。それに心配しなくても……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立希ちゃんも直ぐに同じところに連れて行ってあげるから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そよの手が徐々に立希へと伸びていく。

 そして、立希は……自分が助からないと悟り目を閉じた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っき………りっきー……」

「ハッ!!」

 

 立希が目を覚ますと、そこはRiNGだった。

 

「どうしたのりっきー!? 凄く魘されてたけど……」

「……苦し……そうだった……」

 

 寝てたのか……今のは夢……?

 立希は思わず頭を振った。随分と怖い夢を見ていたようだ。

 

「ごめん燈。心配かけた」

「ちょっと〜私を蔑ろにしてませんか〜?」

 

 愛音は不満を露わにしていたが立希は何時ものように軽くあしらった。

 

「昨日作曲に時間かけすぎて寝不足だったのかな……? ……そう言えばそよは?」

「あ〜、そよりんなら楽奈ちゃん探しに行ったけど……」

「そ……」

 

 こうして再び彼女たちの迷子な日々は続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、この光景はもしかしたら誰かが見てる夢かもしれないし、現実かもしれない。

 

 

 この光景が現実か、それとも夢か。

 

 どちらを信じるかはあなた次第。

 

 

 

 

 

 

 

 





キャラ紹介

佐倉イサム
この作品の主人公……だった。
My Go!!!!!のメンバーが利用するライブハウス『RiNG』のスタッフ。Dream Paletteの主人公に酷似してるが違うキャラ。My Go!!!!!をサポートする。

……という感じだが、同一人物です。多分、きっと、めいびー。順当に行けばこのタイミングで大学生か専門学生かになってる……筈(キャラ固まってないとか言わないで)。
が、若干キャラ変わってたり凄い人と知り合いだったり……ホントお前何があった。
1つ言えるのは丸山彩との熱い交際は密かに続けている。これだけは確実に言える。

高松燈
My Go!!!!!の主人公。小動物。可愛い。ペットとして飼いたい。
なんで100連以上したのに星5出てくれんかったん?←推しに嫌われた男の末路

千早愛音
押しの強い陽キャ。ネーミングセンスが斜め上過ぎて立希とそよをしょっちゅうピキらせる。ANON TOKYOは怒られてもしゃーない。ただ本人鋼メンタルだから何とかなってる。
多分次の被害者はこの子。

要楽奈
自由すぎる野良猫。まさかのやりきったかいおばあさんのお孫さんだった。
というかよく考えると春日陰に関しては滅茶苦茶戦犯。
登場から間も無いのに伝説残しすぎてお前がおもしれー女の子だよ。

椎名立希
燈のALS〇K。燈に近づく奴絶対〇すマン。
正直、この子の方がMy Go!!!!!のママなんじゃと思ったり思わなかったり。
今回、ギターとベースでドラムを叩くシーンを作っていたがよく考えるとよく分からない光景。彼女がゲーミング状態になれば完璧だったが尺の都合でカットされた。???「アタシモギタートベースカッチャオッカナー」

長崎そよ
My Go!!!!!のママだと思ったらMy Go!!!!!やべーやつだった。
今作に関してはほぼ被害者。遂に精神まで崩壊した。
立希がなるはずだったゲーミング枠は彼女にやってもらいました。虹色に光りながら笑顔で追いかけてくるそよさんはさしずめ「止まらないそよさん」
可哀想なそよさん。でもこうして立派に作品は完成しました。
結論「そうか、寂しかったのか」

マキシマム牧羽
今をときめくお面系筋肉動画配信者。年収1億あるかどうかは不明だが相当稼いでることは確か。何故かイサムと仲が良い。ハッキリ言うがダリナンダアンタイッタイ。
まあ、気が向けばまた出てくるかも。

山吹沙綾
既存メンバーからの唯一の登場。皆のお姉ちゃん。
甘やかして欲しいキャラNo.1。



以上です。
最後に一言

『My Go!!!!!、ガルパ参戦おめでとう!』(今更)


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それでは次回も掴め、最高のガッチャ!


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