【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
おまたせしました。
あらすじ
悪人に対し過剰な制裁を繰り返すビルドオリジオンを止めるべく、瞬は仮面ライダーアクロスとして戦う。しかし、そこに転生狩者も乱入してきて泥沼と化す。
その時、一人の男が戦場に現れる。
彼の名は ——-
ビルドと名乗った仮面ライダー。その唐突な登場に呆然とする瞬。向こうはというと、瞬の方に歩み寄ってきて、
「苦戦してるみたいだが……手を貸すぞ」
こう切り出してきた。
「は……?あ、はい」
なんだかよくわからないままうなずくアクロス。突然現れた目の前の仮面ライダー —— ビルドをまじまじと見つめながら、瞬は思考する。コイツは一体なんなんだ?コイツも自分と同じ仮面ライダーなのか?そもそも味方と認識していいのか?疑問はつきないが、ともかく考えていても仕方がない。手を貸してくれるというならば、喜んで手を借りようではないか。
釈然としないながらも、差し出された手をとった。目の前の脅威をなんとかするのが最優先だ。
「とにかく奴を無力化するぞ!」
「分かってる!」
ビルドに諭されながら、アクロスも戦いの場に復帰する。チェイサーに変身して戦っている転生者狩りは、手に持ったシンゴウアックスで問答無用でビルドオリジオンをぶった斬る。大振りな分ダメージはかなり与えられているようで、ビルドオリジオンの動きも先程以上に鈍っているように見える。そこにすかさずビルドが急接近しながらオリジオンの顔面にパンチを喰らわせ、続いて瞬が走りながらツインズバスターでオリジオンの胴体を斬りつけた。
「がっ……」
3ライダーの猛攻を受けながらも、尚も執拗に彼らにくらいつこうと立ち上がるビルドオリジオン。一体何が彼をそうまでさせるのだろう。そこに、またまた乱入者がやってくる。
「置いていくんじゃねぇよ!」
青いジャージを着た茶髪の青年が此方に走ってきている。なんかキレてるようだし怖いなー、と志村は思わず身構えてしまうが、青年は志村なんぞ眼中にないようで、彼の横を走り去りながら、何処からかビルドと同じベルトを取り出して腰に巻きつけ、ドラゴンを模した……ように見える四角い物体にボトルを差し込み、更にそれをベルトにセットする。
すると、ビルドと同じように、プラモデルの型みたいなものが彼の前後に出現する。
「変身っ!」
《wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》
「仮面ライダークローズ、見参だぁっ!」
ビルドと同じようなシークエンスを辿り、ドラゴンをモチーフにしたと思わしき仮面の戦士が戦いの場に現れた。立て続けに新たなライダーが現れたことに、瞬はもちろん唯達も混乱の極みにあった。
「ビルド……クローズぅ……何故お前達が居るんだぁ!」
「ぶつぶつ煩えんだよコンチクショウ!」
ビルドとクローズの乱入はビルドオリジオンにとっても想定外だったようで、転生者狩りの変身するチェイサーにボコられながら狼狽える。そこにクローズが飛び蹴りをかましながら割って入り、ビルドオリジオンはフェンスに身体を打ちつけられ、ずるずるとその場に崩れ落ちた。
「何だお前らは!いきなり乱入しやがって!」
「いやアンタも同じでしょ……」
チェイサーは乱入してきたクローズにキレるが、唯が突っ込んだとおり、そもそも彼自身も乱入者であるからブーメラン感が否めない。
「お前ら!僕は正義だぞ!邪魔をするなぁ!」
「だとしてもやり過ぎなんだよ!少し頭冷やせ馬鹿!」
「がはぁ!」
冷静さを失いながら、尚も立ち上がって攻撃してくるビルドオリジオン。それに対し、アクロスは渾身の頭突きでオリジオンを退け反らせる。続いてチェイサーのシンゴウアックスの一閃と、ビルドとクローズのダブルライダーパンチがヒットし、ビルドオリジオンは大きく吹っ飛んでいった。
「うがあっ……はぁ……」
ゴロゴロと硬いアスファルトの地面を転がりながら、オリジオンの変身が解かれてゆく。うつ伏せに倒れたその人物は、瞬達の学校の制服を着ている。まさか同級生だったりするのだろうか。
「何をしやがるんだ……なんで邪魔をするんだよ……!」
恨み言を吐きながら立ち上がったその人物の正体は。
「高山くん?」
「高山……お前だったのか」
そう、ビルドオリジオンの正体は、今日学校でも何度か顔を合わせた高山だったのだ。その姿に、離れた場所で唯や湖森と共に戦いを見ていた志村も驚いている。口元からは血が流れ、それ以外のところも満身創痍である高山だが、それでもまだ立ち上がってくる。
「お前らもヒーローだろう⁉︎ なら何故その悪人を庇う⁉︎ 犯罪犯すような奴を守って何になる⁉︎ ヒーローなら裁かなきゃダメだろうが!」
「ヒーローが救う人間選り好みしちゃダメだろ。どんな悪人でも、守るべき人間なんじゃ無いのか」
「愛と平和を守るためだ……僕は間違っていない」
「だったら!なんでこの人を殺そうとした⁉︎ 確かにこの人のやったことは犯罪だけど、殺す必要があったのか?明らかにやり過ぎだろ……!」
アクロスは、意識を失って倒れたままの万引き犯を指差して反論する。そう、本来ならこうして戦う必要など無かった。逃げる彼を捕まえて警察に突き出せば済む話だったのだ。しかし、高山は明らかに殺す気でやっていた。
高山は、アクロスの言葉に対し掠れた声で答える。
「悪を倒す……これはその為の力だ。僕は、間違ってはいない」
「おい高山 —— 」
高山はフェンスに手を掛けながら再びビルドオリジオンに変身し、身体中から白い蒸気のようなものを物凄い勢いで噴出し、一同の視界を奪う。
「待ちやがれ!」
白く染められた視界の中、チェイサーの怒号が聞こえた。それと共に遠ざかる足音。まずい、逃げられる。瞬は蒸気の中を掻き分けながら足を進める。が。
「いなくなった……の?」
「みたいだけど……何だったんだ、今の」
また逃げられた。
蒸気を抜けた先には何もなく、ただ夕日に照らされた線路沿いの住宅街が広がっているだけであった。瞬は辺りを見たわして高山を探すが、
ふとその足から力が抜け、地面に膝をついてアクロスの変身を解いてしまう。
「無茶はよしたまえ、今日は結構戦ったから疲労が溜まっているはずだよ」
頭の上から、聞き覚えのある声がする。顔をあげると、いつの間にか瞬の横にフィフティが立っていた。ついさっきまでいなかったのに。
「フィフティ……ッ⁉︎ 」
「驚いたみたいだね。君のいるところに私あり、という訳さ」
「なんか気持ち悪いからやめてくれ」
「それはともかく、あのオリジオンについてだけど、今日のところは引いたほうがいい。さっきも言った通り、君は疲れているだろう。そんな状態で行ったって勝てっこ無いさ。ここは一つ、そこの彼に任せようじゃないか、ねぇ?」
フィフティがにんまりと笑みを浮かべながらチェイサーの方を向く。チェイサーはフィフティと顔を合わせたくないらしく、そっぽを向いて側に止めてあったバイクに跨ると、
「俺は勝手にやらせてもらう。お前らの出る幕はない」
「わあ辛辣ぅ。もう少し他人に優しくした方が生きやすいと思うけどね」
「お前が言うな、この厄病神が」
転生者狩りは悪態をつきながらバイクを動かし、何処かへと去ってしまった。フィフティはつまらなそうな顔でそれを見送った後、瞬に手を差し伸べる。
「立てるかい?」
「大丈夫だよ。それよりも……」
瞬は立ち上がりながら、2人の仮面ライダーに目を向ける。
ビルドとクローズ。まずは彼らから話を聞かなくてはならない。
場所は移って近場の公園。瞬達以外には誰もいないこの場所で話を聞くことになった。
「俺は桐生戦兎。てぇっんさい物理学者だ!で、横のが万丈龍我。馬鹿だ」
「筋肉つけろよ筋肉!」
「……変わった人達だね」
2人の自己紹介を聞き、ぽつりと呟いた志村。同感だ。2人とも悪い人では無さそうなのだが、これまた変わり者と遭遇しちゃったなぁと思う瞬。
戦兎は缶コーヒーを一気に飲み干すと、ビルドドライバーを手に持って話し始めた。
「元々この仮面ライダービルドは、俺が作ったモノだった。本当はこんなモノ、もう使う機会がない方がいいんだけどなぁ……アレを見たからにはそういうわけにはいかないんだよな」
「自分で作ったとかすげー!私にも使えたりする?」
「無理だし出来たとしても使わせられない。コイツは危険なモノだからな」
戦兎の返答に対し、不貞腐れたようにそっぽを向く唯。だだをこねる唯を無視して戦兎はドライバーをしまう。
そして、フィフティが2人に問う。
「しかし、なんでまた君達が現れたんだい?」
「なんせテレビの向こう側でビルドが暴れてんだ。俺じゃなくても、自分の偽者が迷惑かけてるってのは見過ごせないさ」
「だからって置いていくなっつーの。お前俺のことどう思ってんだよ」
「それにしても、お前も仮面ライダーだったとはな。システム周りとか色々興味深いなぁ。ちょっと見せてくれないか」
「無視すんな!てか話がいきなりずれてねーか⁉︎」
どうやら戦兎はアクロスの変身ベルトであるクロスドライバーに興味があるようで、瞬は戦兎に言われるがままクロスドライバーを手渡すと、色々な角度からそれを観察し始めた。万丈は思わず突っ込むが、戦兎はさも当然といった感じにこう返答する。
「いや気になるでしょ?ビルドドライバーの開発者として、科学者として、未知の技術というのは心踊るモノなんだって」
「そもそもビルド作ったのお前じゃなくて葛城巧だろ」
「俺元々葛城巧だったし、俺が作ったようなもんじゃ?」
「そーゆーもんか?」
「盛り上がっているところ悪いけど、クロスドライバーに無闇に触らないで欲しい。それは他の人間が触るべきでない代物だからね」
フィフティはそう言って戦兎からクロスドライバーを取り上げると、戦兎と万丈の漫才フェイズに呆気にとられていた瞬に投げ渡す。
すると、先程まで蚊帳の外だった志村がおずおずと手を挙げる。
「あのさぁ……僕、理解が追いついてないんだけど……高山くんが昼間の怪物で、それを倒さなきゃいけないってのが目標でいいのかな?」
「ちゃんとわかってるじゃないか。巻き込んでしまったことについては私から詫びよう。今日の事は早く忘れて帰りたまえ。知っててもろくな事にならないからね」
「はぁ……」
フィフティに促され、部外者である志村はなんか釈然としない気分のまま帰ってゆく。瞬達に手を振って曲がり角の向こうへと消えていく志村を見ながら、ふとあることを思った瞬。
「ちゃんと謝れたんだな、お前」
「逢瀬君は私をなんだと思ってるんだい?これでも君ほどでは無いが善性は持ち合わせているつもりなんだけど」
「説得力ないなぁ」
一応初対面である湖森にまでこう言われる始末。まあこれまで散々勝手な理由で瞬を振り回してきたのだから、こう言われるのも無理はない。
一方、戦兎と万丈は暗くなった空をみあげながら、
「暗くなってきたな……」
「あんまり遅くなるとなぁ……」
と、困り気味の様子。
「ねえねえ」
「どした」
今日の所は引き上げるしか無いか、と帰ろうとする戦兎の服の裾を引っ張り、呼び止める唯。そして、ちょっと小悪魔めいた笑みを浮かべて、ある提案をする。
「晩飯、食べてかない?」
力無き正義は、無駄だ。
前世から、清く正しくあろうとしてきた。不正を憎み、善を尊ぶのが理想の生き方であると信じていた。そうすれば正義のヒーローになれると思っていた。
しかし現実は非情。どんなに自分が正しかろうと、どんなに相手が間違っていろうと、力が全てだった。暴力、権力、知力 ——— それらが優っていれば、正しさなど些細なことに過ぎなかったのだ。
(力が無ければ駄目なのか……?弱い奴には正義を語る資格すらないってのかよ……!)
高山幸生は、自らの無力さ故に折れた。転生特典に選んだのは、とあるヒーローの力。これならばいける、正義のヒーローになれる。
しかしながら。それは甘い妄想だった。
『ご覧下さい、この凄惨な現場を。犯人は未だ逃走中の模様 —— 』
『被害者は襲われる直前に近隣の飲食店で無銭飲食をしていた模様。意識不明の重体 —— 』
『悪人ばかりを狙い、凄惨な制裁を加える赤と青の謎の通り魔に対し、人々の間には不安が蔓延している模様 —— 』
ニュースでは赤と青の通り魔という烙印を貼られ。助けた筈の人がインタビューで恐怖におののいている。自分は正しいことをしているのに。間違っちゃいないのに。対価は称賛とは程遠い恐怖のみ。
「なんで……」
何故だ。何故だ。
前世とは違って力がある筈なのに。悪人を懲らしめる自分は正しい筈なのに。それなのにどうして恐れられる?自分は仮面ライダー、正義のヒーローなのに、どうして?
今日だってそうだ。見たことのない仮面ライダーっぽい何かに変身したクラスメイトに、悉く邪魔をされてしまった。何故悪人を庇って自分の邪魔をする?悪いのはあいつらなのに。
少年は一人、恨みの篭った声で呟いた。
「僕は……間違っていない」
そして今。
「悪は、悪だ。悪は、滅ぼさなくてはならない。誰もやろうとしないなら、僕がやらなくてはならないんだ」
譫言のように繰り返しながら、ふらふらと高架下の闇から顔を出す。辺りはすっかり夕暮れとなっており、夕焼けは憔悴したような顔の高山を紅く染めている。
「昔みたいに弱い自分じゃ無いんだ。その筈なんだ」
うわごとのように繰り返す。そうでもしないと、拠り所がなくなってしまうから。
「そうだ。お前は変わった」
カツンと、渇いた足音が響いた。高山が振りかえると、そこにはベージュ色のトレンチコートを見に纏った中年男性が立っていた。彼こそ、高山少年を転生させた張本人 —— ギフトメイカー・ティーダである。彼は煙草を吸いながら高山の肩に手を掛け、彼にある提案を持ちかけてきた。
「お前は正しい。お前に逆らう奴は皆悪だ。だから —— アクロスを殺せ。お前が正しく在るためにも、あの邪魔な似非ヒーローを始末しろ。
そうすれば、更なる力を与えてやろう。お前も欲しいんだろう?」
「……」
「力無き正義は正義に有らず、正義とは強者だけに許された特権。それは貴様が一番理解している筈だぞ?」
容赦のない力の誘惑に苛まれる高山。ティーダはその様子を見ながらほくそ笑む。
「欲しいです。力を……僕が正しくあるための力を……」
「いい心意気だ。その調子で頼むぞ」
その先は地獄だぞ、と。
少年に声を掛ける者はまだいない。
瞬達と別れ、一人で帰る志村。その顔は、何やら思い詰めたように見える。
「高山くんは……なんかおかしいよ……」
志村は先程、ソレを目の当たりにしてして理解していた。あれは正義を建前にした、ただの暴力だと。罪を犯した者が悪とされるのには納得がいく。だが、正義とは、一方的に悪をいたぶるモノであっただろうか?
「……なんか我ながら哲学的なこと考えてるよなぁ」
ただの高校生が考えるにはデカすぎるよなぁ、と呆れながら歩いていたのだが、ふと目をやった横の路地に見覚えのある人物の後姿を見た。その正体をはっきりと認識した時、志村はぎょっとした。
「高山くん……⁉︎」
そう、先程まで仮面ライダー達と交戦し、命からがら逃げ延びたビルドオリジオンこと高山少年であった。
あの姿は嫌でも鮮明に分かる。さっきまで見ていたのだから。
どうやら彼は志村には気付いていないようで、暗い路地のさらに奥へと入っていく。志村は気づかれないように後を追う。正直言ってめちゃくちゃ怖いのだが、それ以上に好奇心がまさっていたのだ。
それに、彼の言う正義に、志村は引っ掛かりを感じていた。もしかしたら、それがわかれば、高山の心を揺さぶれるのではないか。そう思っていた。
(無謀なのはわかってる……僕なんかじゃ何もできないのはわかってる……でも、あれは明らかにおかしい。あのままだと、皆も傷付くし、高山くんだってきっとまともでいられなくなる……そんなの、嫌だ)
特別親しい仲というわけではないのだが、目の前で道を間違えている人間を見過ごすような非情さを、志村は持ち合わせていない。自分の苦悩にケリをつけるべく、志村は足を進めた。
何かを殴りつけるような、鈍い音が聞こえる。路地の曲がり角から、恐る恐る覗いてみる。そこには。
「や、やめてくれ……しにたくねえよお……」
「お前たちを裁く……あっははははははははははは!」
グシャァ!
顔をパンパンに腫らし、額から血を流している男が、高山の変身するビルドオリジオンに殴られ、倒れる様子が見えた。よく見ると、周囲にも同じように全身あざだらけで気を失っている人が複数人いるのが確認できる。
「なんだあれ……あんなのが、正義?」
ビルドオリジオンの作り出す凄惨なる光景に思考が混乱し、怯えながら後退りする志村。決心しても、いざリアルに見てしまうと中々にキツいものだった。
「違う……こんなの、違う……!」
怯えながらも、志村は確信した。彼は正義の味方なんかじゃない。あれをそう呼んではならないと。
そんな志村に見られていたとはつゆ知らず、悪人を制裁し終えたビルドオリジオンは次の獲物を求め、路地から出ようと動き出す。その時。
「見つけたぞ!」
「またお前か!」
上から声がしたと思いきや、次の瞬間、ビルドオリジオンの立っていた場所に焦げ跡のようなものが発生した。近くに薬莢が転がっているのを見るに、どうやら銃的な何かを撃ってきた模様。
ビルドオリジオンが空を見上げると、どうやっているのかは知らないが、そこには壁に張り付いた仮面ライダーG4が存在していた。もちろん、転生者狩りの変身したものである。
「さっきあれ程やられておいてまだやるとはな。余程この行為に執着してるようだな」
「煩い!僕の邪魔をしないでくれ……!」
「するさ。お前みたいな傍迷惑なエゴイストを生かしたら、世界が滅ぶ」
転生者狩りは、懲りないオリジオンに呆れながら、地面に着地する。
両者とも、互いが邪魔だ。そう判断してからは、早かった。ガッ!と、一瞬の内に互いの拳がぶつかる。初撃は相殺。すぐに互いに拳を引っ込め、次の一手をくりだそうとする。
(やばい!逃げなきゃ巻き込まれる!)
唐突に始まった転生者狩りとビルドオリジオンの戦い。志村は巻き込まれないように、背後でした爆音に耳を塞ぎながら慌ててその場から逃げ出した。
きっかけはなんだったか。
多分、唯のこんな発言だった気がする。
「すっかり日が暮れちゃいましたし、今日は瞬のおうちで夕飯戴きませんか?」
それに対し、困惑気味な反応の戦兎と万丈。というか人の家に招待するというのはどうなんだろうか。
「いいのか……?」
「いいんですよ〜。叔父さんも多分喜びますからねぇ」
「いやお前家族じゃないし!何勝手に人の家に他人招待してんだ!」
こんな感じのやりとりがあった気がする。誰か止めて欲しかった。しかしもう時は遅し、家の前まで来てしまった。ちなみに志村とはもう別れた。アクロスの事とかは隠しようがなかったのでなんとか黙っててもらえるように話はつけたが、はたして大丈夫だろうか。そして何故かフィフティもついてきている。まさかコイツも飯タカるつもりなのではないだろうか。
そんなことを考えながら、玄関の鍵を開ける。ヒビキとネプテューヌはちゃんと留守番していただろうか。年齢的には一人でお留守番できる年頃なのだが、それでも心配にはなる。親の気持ちってこんな感じなのだろうか。
「ただいまー、お前らちゃんと留守番してたかー?」
「してましたよぅ!私もバチりんとね!」
—— いや待て。誰だ、今の声。
今さっき瞬の声に反応したのは、明らかに大人の女性の声だった。しかもなんか聞き覚えがある。嫌な予感に身を包まされながら、灯りのついたリビングの扉を開ける。
「
何かを頬張るような声で出迎えられた一同。そこには、コーヒー入りのマグカップ片手に惣菜パンを頬張る成人女性の姿が。不審者・港トモリ、再来である。瞬は側に立てかけてあった箒を構えてトモリを睨みつける。
「お前は今朝の……!何勝手に上がり込んでんだ!しかも本日2度目ぇ!」
「誤解だよ誤解ぃ!私は教授にここで待ってるように言われただけだしぃ!今朝も今回も教授にアポ取ったし!」
「アポ取った……?」
「後で本人に訊けばわかるよ」
本当かよ……と、トモリに疑いの目を向ける瞬。なんでここまで疑心暗鬼にならにゃあかんのだ。ホントここ最近は心身が疲れるような事ばかり続くものだ。
一方、馬鹿こと唯は、瞬よりも親交が深いこともあってか、特に気にする事なくトモリに駆け寄っていく。
「あ、トモリさん来てたんだぁ。退院おめでとー!」
「唯ちゃんもヒビキちゃんもコンバンハー!私、港トモリ完全復活なーのよう!」
「イェーイ」
「うるさい馬鹿が増えた……」
はしゃぐトモリと唯に呆れる瞬。ほんと何なんだこの人。なんで自分の周りはこんな感じのテンションの奴ばっかなのだろうか。
「なんだこの人。てかさっき教授って……」
「叔父さん、大学の先生やってんだ。確か考古学かなんかだったような……俺達にはあまり研究とかについては話さねーからよく知らないんだよ」
「そそ。私、教授のゼミに入ってんのよ。いやー世間って狭いんだなぁ。君教授のお子さんだったんだね」
肩に手を回しながら瞬に擦り寄ってくる瞬。トモリさんや、貴女の無駄にでかい胸が当たってます、とは言いだせず、思わず顔を赤くする瞬と、それを見て不満そうな顔をする唯。
しかしそんな幼馴染みの様子には気づかず、瞬はトモリに言葉を否定する。
「いや違いますよ」
「え」
「俺と湖森は小さい頃に親を亡くしてな。それで叔父さんの所に今いるってわけなんだよ」
「お前も色々苦労してんだな……」
「あー、なんかごめん。空気悪くしちゃった?」
瞬の唐突なカミングアウトに対し、自分達も過去に色々と苦労してきた事を思い返し同情する戦兎と万丈の2人と、なんか踏み込んじゃいけない領域に踏み込んでしまい申し訳なく思うトモリ。だが瞬は笑いながら、
「まあ気にしてないさ。昔のことはあんま覚えてないし」
と水に流す発言をする。事実として叔父の元に来る前の記憶については朧げにしか覚えていないのだからそうとしか言えない。
一連の会話で部屋がなんだか気まずい雰囲気になってしまった。一同がこれはどうしましょうかと悩んでいた所、その沈黙を打ち破ったのは唯だった。
「気まずい話はやめやめ!そろそろ叔父さんも帰ってくる時間じゃないの?」
「そうだね。晩御飯の支度しなくちゃ。ヒビキちゃんも手伝ってほら」
「ガッテン承知!もりもりいかせてもらうよ!」
小一時間後、皆で逢瀬家の食卓を囲んでいた。今晩のメニューは手巻き寿司。選りすぐりの特売品の魚介類を買ってきた甲斐があってか、かかった値段の割にはかなりたくさんの刺身が大皿に盛り付けられていた。
戦兎や万丈はともかく、トモリまで当然のように参加しているが、環四郎はそこのところはあまり突っ込まないようだ。
「悪いな、晩飯までご馳走してもらって」
「良いってもんよ。ここで会ったのも何かの縁だよ、縁」
「お前余所者の癖に何言ってるんだ」
なんでこの幼馴染みは当たり前のように逢瀬家の一員を気取っているのか。もう慣れたことなのであまり強くは言わないが、少しは遠慮してほしいものだ。
「瞬くんが世話になったようだね。うん、君も食べていきなさい」
「世話になったのはこちらですけどね……ではお言葉に甘えて」
「うん、それと、いくらアポ取ったといえど平日の早朝に来るもんじゃないよ。ゼミの課題については覚悟すること」
「職権濫用反対!」
流石に温厚な環四郎でも、非常識判定を下さざるを得なかったようだ。泣きついても意味ないだろう。というかそこはちゃんと指摘するんだな、と瞬は失笑していた。
「手巻き寿司かぁ。普通の寿司が良かったなぁ」
「勝手にタカリに来といて文句言わないの」
図々しくも文句を言う唯を批判する瞬。一方、ネプテューヌは環四郎にある事を聞いてくる。
「そういえば叔父さん、例のアレ買ってきてくれた?」
「もちろん。ほら、あそこにあるだろう?週刊少年ジャパジン最新号」
「ありがとうございます!私、感無量!」
部屋の入り口あたりにあるビニール袋を指差した環四郎に、ネプテューヌはオーバーリアクション気味な礼をする。
「おいお前、まさか叔父さんをパシってたのか?」
「いや本人快諾してるからパシリじゃないかも」
だからといって家主をパシるんじゃない。ああ見えて叔父も忙しいのだ。そこにヒビキからのいたーい援護射撃が容赦なくやってくる。
「だってねぷねぷ金銭感覚ゆるキャラだし……好きあらばゲームとプリンにつぎ込みかねないもん」
「小学生からこんなこと言われてて恥ずかしくないんですか自称女神さん?」
瞬のその言葉に思わずネプテューヌも痛いところを突かれたような顔にかる。そう、こいつは現在居候の身。瞬からすれば、女神を自称するイタいロリでしかないのだ。だって女神らしい所一度も見てないし。
とはいえネプテューヌも黙って聞いていられるような奴ではない。彼女なりの主人公と女神の矜持にかけて、すかさず反論する。
「いや女神だし!主人公ですしおすし!いや待って、この作品だと私は主人公じゃない可能性が微レ存……?」
「寝言は寝て言うもんだ。それよりお前、さっきからシーチキンばっかとるんじゃねえよ」
「太いシーチキンが美味しい……」
「そこにナスをドバーっと出してやったぜ」
「ナスらめえええええええええええええええええ!てか寿司に入れるモノじゃないよねコレ⁉︎」
「好き嫌いを克服する為だ。やむを得ん」
「あんた……オニだよ」
口論の結果、ネプテューヌの苦手な茄子を利用した瞬に軍配が上がった。横で一部始終を見ていた唯からブーイングが飛んでくるが知らない知らない。
「いやー、瞬ってばひどいよねー。いたいけな幼女にそんな非道な行いをするなんて、非常識にも程があるよ!」
「お前もだ。人の家で好き勝手するんじゃねえ」
「びぎゃああああああ!」
物のついでに、人の家で好き勝手やってた唯に軽くお灸を据えるべく、瞬は近くにあったワサビのチューブを手に取り、唯の取り皿に置いていた巻き寿司にコレでもかというほどの量のワサビをぶっかけた。
「少しは遠慮というものを覚えろってんだ」
「許さねえ……!」
キレた唯は自分の指にワサビを塗ると、その指を瞬の鼻の穴にがしっと突っ込んだ。つんとくる衝撃が瞬を襲い、思わずのたうちまわってしまう。
「ぬぎゃああああああああああああ!何してんだぁ⁉︎」
「仕返しだよ」
「醤油かけるぞ醤油!」
「2人とも食べ物で遊ぶなよ。高校生だろ」
戦兎のごもっともな指摘で鎮静化したようだ。その後は瞬も唯も小さくなり、黙々と食事をするのであった。
その後は万丈がチビ2人の遊びに付き合わされてたじたじになったり、環四郎のオヤジギャグ260連発が全部大スベリして場の空気が凍えたりと色々あったのだが、今夜はそろそろお開きという雰囲気になりつつあった。
寝ているヒビキとネプテューヌの2人に挟まれて寝落ちしている万丈に、片付けをしている瞬と湖森、ソファーで眠たそうに目を擦る唯といった具合に、結構ぐだぐだしてきていた。
「おーい唯、寝るなよー。早く帰らないと学校に連絡入れられて面倒なことになるぞ?」
「無断外泊がなんのもんだい。うちの親も瞬の家なら安心だって言ってるのは知ってるでしょ」
「駄目だこりゃ」
普段よりも明らかに間の抜けたような唯の声に、あれは近いうちに寝落ちするなと確信する。とはいえ、本日は2回も戦闘を行い、瞬もだいぶ疲れているのも事実。気を抜くと皿を落として割ってしまいそうになるのを、なんとか堪えている状態だ。
そかに、手持ち無沙汰だったトモリが声を掛けてきた。
「おーい瞬くん」
「なんすかトモリさん。何なんですか一体」
「なんでそんなに嫌そうな顔するのさ。酷いなぁお姉さん傷ついたぞぅ」
「水の音であんま聞こえないんで後にしてくれませんかね?」
「お兄ちゃん行ってきたら?この量なら私一人でなんとかなるからさ」
妹の言葉に甘え、一旦台所から離脱する瞬。座布団にあぐらかいているトモリは、隣の誰も座っていない座布団をポンポンと叩いて瞬を誘う。瞬は誘われるがままトモリの隣に座り、欠伸を一つする。
「なんすか、一体」
「今朝のアレ、ちゃんと伝わってなかったみたいで。もう一度言っておこうかなって」
「そもそも俺とアンタはほぼ接点ないんですよ?単に知り合いの知り合いという程度でしか無いんだけど……」
「それでもさ、私は君に感謝してるんだよ」
唐突な感謝の言葉にハテナマークを浮かべる瞬。かれからすれば心当たりが無いので仕方ないのだが、トモリからすれば結構大事な事らしい。トモリは、頭を掻きながら話を続ける。
「いや、あのさ。君は知らないだろうけど、春に出くわした児童誘拐犯の怪物、私の友達だったんだ。私は何度も止めようとしたんだけど、普通の人間だったから無理だった。出来たのは、連れて行かれそうになっていたヒビキちゃんの救出だけ」
「あんただったんだな、ヒビキを助けたのって」
「目の前で友達が間違った道を進んでるのに、私は何もできなかった。だから、代わりに止めてくれた君に礼を言わなくちゃいけないんだ。そう思ってたら、居ても立っても居られなくてね。ありがとう、ね」
面と向かって伝えられた、明確な感謝の言葉。その言葉には、嘘偽りはなかった。
あの時はアクロスになったばかりで周囲に流されてばかりだったし(今も大概だが)、無我夢中で湖森達を守ろうとしていただけで、そこまでは知らなかったのだが、こうして改めて感謝されると、なんだかむず痒い気分になる。
「俺はただ、俺の大事なものを守ろうとしただけだって。あの時はがむしゃらだったし……」
「それでも、救われた人間は確かに居たよ。なんにせよ、君は私の恩人だよ」
トモリはそう言うと、立ち上がって自分の鞄を手に持つ。
「ごめんね、おしかけちゃって。私はそろそろおいとまさせてもらうよ。グッバイ」
「トモリさん、帰り道気をつけてねー」
帰っていくトモリを台所から見送る2人。丁度皿洗いも終わったので、トイレにでも行こうと瞬は廊下にでる。
すると、廊下に戦兎がいた。まるでずっと瞬を待っていたかのように、腕を組み、壁に背中を預けた状態で立っていた。瞬は少し考えて、こう切り出した。
「戦兎、少し話がしたい」
自宅から近くの公園。夜遅くということもあり、誰もいない静まりかえったこの場所に、2人はいた。
「で、話って?」
「……アンタも仮面ライダーなんだろ?アンタは……戦兎は、そこの所をどう思っているんだ?」
そう。瞬は、先輩ライダーとしての桐生戦兎と話したかったのだ。瞬はまだ仮面ライダーになって日が浅い。まだ悩んまり迷ったりを繰り返すひよっこといっても過言ではない。他のライダーといっても、あの転生者狩りはあまり話し合える様子ではないし、こうして他のライダーとまともに話せる機会というものは初めてであった。
それに、昼間のオリジオンとして戦う高山の姿を見て、瞬はあることが気になっていた。戦兎は、仮面ライダーというものを、ヒーローというものをどう考えているのか。高山は、正義という一言の為だけに戦なっていたが、瞬からすれば、あれは正義とは名ばかりの蹂躙にしか見えなかった。そんな彼の様子を見ていたからこそ、瞬はこの問いを投げかけたのかもしれない。
「そうだなー。どう思っているか……って言われてもなぁ」
戦兎は暫く考えた後、こう言った。
「俺は愛と平和のために、それを信じて戦った。辛い事だって数え切れないほどあったし、救えずに取りこぼした事だってあった。それでもさ、俺は信じてたんだ。愛と平和を胸に生きていける世界を創れるってさ」
「愛と平和……かぁ」
「そ。愛と平和のヒーロー、それが仮面ライダービルドなのさ。俺にとっての仮面ライダーとは何か、と訊かれたらこれが答えになるのかもしれないな。ならさ、お前にとってのアクロスってどんなのだ?」
戦兎にとってのビルドとは、そういうものなのだろう。では、自分にとってのアクロスとはなんなのだろうか?瞬はそう考えていた。まだ瞬はアクロスになって短く、半ば無理矢理巻き込まれたようなものであるために、そういった確固たるものはまだない。
戦兎に問いかけに頭を悩ませている瞬の様子を見た戦兎が、瞬に助け舟を出す。
「初めて変身した時のことを思い出してみろよ。その時どう思い、何を考えていたか。きっとそれがヒントになるだろうさ」
「……」
初めて変身したあの日を思い出す。
炎の中、怪人達に囲まれて命の危機に晒された唯を助けたいという一心で、変身し無我夢中で戦った。あれが一体何だったのかは未だによく分からないが、戦いが終わり、無事だった唯を見てホッとしていたのはたしかに覚えている。
春休みに湖森達が攫われた時も、同じだった。状況が自分を置いてけぼりにしていく中で、その思いだけが瞬にとって確かなモノであった。そして、湖森やヒビキ、まだ面識のなかったトモリを救うことができた。
「守りたい……あの時、唯や他の皆を守りたいって、その一心でがむしゃらに走ってたんだ」
「なら今はそれでいい。焦って考えなくていいんだよ。その気持ちを忘れずにいれば、自ずと分かるって」
「なーにこそこそ語り合ってんだ。俺も混ぜろや」
2人に声がかけられる。振り向くと、公園の入り口に寝落ちしていたはずの万丈が立っていた。よっ、と手をあげて挨拶し、彼は公園に入ってくる。
「万丈……」
「あれ、寝てたんじゃ」
「悪いな、途中から聞いてた」
笑いながら此方に歩いてくる万丈。その顔は何故かしみじみとしているように感じられる。
「お前らの話聞いてたら、随分と懐かしいこと思い出しちまったよ」
「?」
「前に戦兎が言ってたんだよ。誰かの力になれたら、心の底から嬉しくなって顔がくしゃっとなるってな。最初に聞いた時はそんな余裕なくて、なんか……アレだったけど、俺も今ならそれが分かるんだ」
「万丈、ちょっとそれ言われるの恥ずかしいんだけど。てかアレって何。語彙力仕事してちょ」
「元々お前から言い出したんだからいいだろ。それに語彙力は関係ないだろ!」
「この会話の流れで馬鹿丸出しな台詞聞かされる俺の気持ちをだな」
「筋肉つけろよ本日2度目ぇ!」
やいのやいのと騒ぎ始める2人を見ながら、瞬は考えていた。
誰かのために。それが桐生戦兎の、仮面ライダービルドの原動力であるのだ。青臭く感じたが、それでも瞬にとっては輝いてるように感じられた。
「それが戦兎の原動力、ってコトか?」
「……まあそんな感じだ。例えこれから先も戦うことになっても、この理由は忘れたくない。お前にもきっと、わかる時が来るはずさ」
戦兎は照れ臭そうに笑いながら、自分の掌を見つめる。
「帰るぞ」
「もうかよ?」
「長居しちゃあ瞬達に悪いだろ」
「そうか、なら気をつけて」
「ああ。あのオリジオンとかいう奴を見つけたら連絡をくれると助かる。こっちも見つけたら知らせるからな」
戦兎はそう言うと、スマホとフルボトルをコートのポケットから取り出して、そのボトルをスマホに差し込む。すると、スマホがガシャンガシャンと変形し、一台のバイクに変化した。
呆気に取られる瞬の前で、戦兎はヘルメットを被りバイクに跨る。万丈も同じようにヘルメットを被って戦兎の後ろに座る。
「夕飯、美味かったぜ。ご馳走様」
「それじゃあまたなぁ!」
エンジン音を夜空に響かせながら、2人の乗ったバイクが去っていく。瞬は闇夜に溶け込みながら小さくなっていく2人の後ろ姿を見つめながら、戦兎や万丈から聞いたヒーローの流儀を、頭の中で反芻させるのであった。
翌朝。ティーダに連れられ、高山は駅前にやって来ていた。休日だが、相変わらず人の往来は盛んであり、2人も完璧に雑踏に溶け込んでいる。
「さあやれ。あそこに裁くべき悪がいる」
ティーダが指差す先には、髭の濃い小太りの中年男性が、ベンチに座ってスマホで電話している。ティーダは、力を振るうことを促すように高山の耳元で囁く。
「奴は極悪詐欺師だ。金を騙し取って何人もの人生を破滅に追い込んでいる……許せないだろう?」
「……」
「何を戸惑う必要がある?悪人に情けを掛けるのが、お前の強さだというのか?転生者は神に選ばれた者だ。選ばれし者が、そうでない者を気にかける必要は無い。好きなだけ暴れろ」
ティーダは半ば強引に高山の背中を押し、詐欺師の前に行かせる。当然ながら、詐欺師は突然自分の目の前で立ち止まった見ず知らずに少年に対し、怪訝そうな顔をする。
そんな彼に対し、高山はぼそりと宣告する。
「……お前を裁く」
「なんて?」
《KAKUSEI BUILD》
高山は、公衆の面前でビルドオリジオンに変身し、詐欺師に掴みかかった。首を掴まれた彼は大きな悲鳴をあげながら足をバタバタと動かすが、当然ながら何の効果もない。何気ない日常風景が一気に戦場に塗り替えられ、取り乱した周囲の人々が一斉に逃げ出す。
「悪は、滅べ」
ビルドオリジオンの手の力が強くなり、詐欺師の顔が青くなっていく。
「よせ高山ぁ!」
「これ以上力を振るうのはやめろ!」
その時、彼に呼びかける声がした。何処か聞き覚えのある声に振りかえると、そこには2人の仮面ライダーがいた。逢瀬瞬と桐生戦兎。昨日と同じように、またまた邪魔者が現れた。
「これ以上手を汚したら……きっと、お前は後悔する」
「悪を裁けばヒーローって訳じゃないんだ!考えなおせ!」
2人は必死に呼びかけるが、高山はそれを無視して詐欺師の首を更に強く締め上げる。高山の元へと駆け出そうとする瞬達だが、彼らの前にある人物が現れ、2人の足を止めさせる。
「あら、また会ったわねアクロス」
「お前は前に……」
瞬達の前に立ちはだかったのは、偽者の赤龍帝を相手取った際に乱入してきたゴスロリ少女、リイラ。ボリューム溢れる紫髪を触手のように靡かせ、太陽を背に微笑を浮かべる姿は、妖艶さと不気味さを漂わせている。
「……何、貴女」
「ん?もしかして私に言ってる?」
瞬達について来ていた唯は、震える声で呟く。リイラは、一瞬眉をひそめながら唯の方を見るが、気の所為か、と言った感じにすぐに視線を瞬の方に合わせる。
(何故なの……?なんなの、この既視感……初めて出逢うはずなのに、なぜかこの子を他人とは思えない……!)
これまでに感じたことの無いような、理解し難い感覚が唯の全身に纏わりつく。なんなのだ、これは。相手が何かをしているわけでも無いのに、自分の奥底から何かが湧き上がって膨れ上がるような、混ざり合って拡散するような、気持ち悪い感覚に、唯の思考が侵されてゆく。
そのまま倒れそうになる唯だったが、すかさず瞬が唯を受け止める。
「大丈夫か……?お前、気分でも悪いのか?凄い汗だぞ」
「大丈夫!大丈夫だから……うん」
「だからついてくるなって言ったのに。危ないから離れていろ」
瞬と戦兎の心配を振り切り、唯は自分の足で立ち上がる。慣れたのか、あの感覚はさっきよりはマシになったようだ。リイラを見ると、変わらず妖艶な笑みを浮かべている。
「邪魔しないで欲しいのよね……そこの役立たずの駄女神はともかく、仮面ライダーにこれ以上邪魔されたくないのよね」
「私をみくびらないで欲しいなぁ!いくら体が鈍ってるといえど、ちょっと酷くない⁉︎ ねぷはーとは繊細なんだから!」
「お前の何処が繊細なんだよ。めっちゃ図太いよ」
繊細な奴は居候先の家主をパシッたりしねーよ、と心の中で突っ込む瞬。なんかネプテューヌと話していると、ちょくちょくシリアスがシリアルになるのだが、何故なのだろうか。
「前のオリジオンは欲まみれで暴走してたからねぇ……その分、今回のは扱いやすいわ。正義だのなんだの言いながら、本心では力を奮いたいだけの子供。憧れのヒーローの力を貰ったのに、結局はただの醜いバケモノ……最高に無様だと思わない?」
高山の様子を見て、心底くだらないと言わんばかりに嘲笑するリイラ。彼女はこの状況を楽しんでいるのだ。高山が暴れることで傷つく人が出ることも全く気に留めていないのだ。まるでテレビの中の出来事のようにこの事を見ているリイラに、瞬達は異常さを感じていた。
リイラのいかにも他人事です、といった態度に怒りを感じた唯は、リイラを問いただそうとする。
「貴女達は一体何者なの、答えて!」
「ギフトメイカー。転生者を統べるすごーい人よ?」
「ギフトメイカー……何よそれ」
聞き慣れない単語に、生粋のオタクである唯も流石に困惑する。いきなり何を言い出しやがるんだこいつは?
「転生者は皆私達の下僕なの。彼もそう、私達の為に働く兵隊さんでしかないのよ」
「転生者……?兵隊……?何を言ってるんだ?」
心底嬉しそうに笑うリイラだが、瞬には彼女の言っていることがさっぱりわからない。一瞬妄言の類かと思ったが、どうやらそうではないらしい。困惑する瞬の様子を見たリイラは、先程とはうってかわって心底呆れたと言わんばかりの顔を見せる。
「モブキャラ風情には理解出来ないでしょう。お喋りはここまで、さあ死んで!ここでヒーローごっこを終わりにして!ガングニール、出番よ!」
リイラがそう叫んだ瞬間、背後から何者かが瞬に飛びかかってきた。瞬はそのまま殴り飛ばされ、近くの街路樹に身体を打ち付けられる。痛みに悶えながら襲撃者を見上げると、そこには見覚えのある姿が。
「HAaaaaaaaaaa……っ!」
「またお前かよっ……!」
全体的にゴツいフォルム。オレンジと白が混じりあったような鋼鉄の鎧を見に纏った姿。春休みに学校でネプテューヌと出逢う直前に戦ったあのオリジオンであった。オリジオンは獣の如く低い唸り声を上げながら、リイラを守るかのように立ちはだかる。
リイラは倒れ伏した瞬を鼻で笑い、オリジオンに追撃を命じる。
「コイツは俺に任 —— 」
《GAO FORM》
ガングニールオリジオンに立ち向かおうと、万丈がビルドドライバーを装着したその時、オリジオンの背後から電子音声が聞こえるとともに、何者かがオリジオンをその背後から思いきり斬り付けた。火花を散らしながらよろめくガングニールオリジオンは、キレ散らかしたかのように腕を振り回すが、その襲撃者は剣でその攻撃を受け止める。
「のこのこ顔を出してくるとは、随分と余裕があるじゃねぇか。シャクに触る」
「次は牙王……ほんと、転生者狩りもネタが尽きないわね」
「手数は多いに越した事はないだろ」
仮面ライダーガオウに変身した転生者狩りは、鼻で笑いながら、リイラに殴りかかろうと地面を強く蹴って動き出す。そこにすかさずガングニールが割って入り、そのパンチを身体全体で受け止める。
転生者狩りはすぐさま拳を引き、ガングニールの脇腹にハイキックを叩き込もうと脚を振り上げるが、それもガングニールの腕で阻まれる。どうやら一筋縄ではいかないらしい。立て続けに攻撃を防がれた転生者狩りは、一旦距離を取って立て直そうとする。
「俺と瞬でビルドオリジオンをなんとかするから万丈はあの怪人を!」
「わかってらぁ!変身っ!」
《wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》
ビルドの指示を受けながら、万丈はクローズドラゴンにドラゴンボトルを挿し、それをビルドドライバーにセットする。そして走りながらベルトのレバーを回し、クローズに変身しガオウに加勢する。
「おらぁ!」
「iaaaaaaaaaaaawaaaaaaa!」
ガングニールオリジオンはクローズに変身した万丈の飛び蹴りを受けて数歩退くが、あまり効いていないのか、すぐ様対応して地面にその剛腕を叩きつけ、地面を大きく揺らしてきた。ガオウも万丈も揺れでよろけたのを好機と捉えたのか、ガングニールオリジオンは首元の黒いマフラーのような部位を触手のように伸ばし、それで2人に追撃を加えてきた。
「パワーだけじゃない、か。前よりは賢くなっているようだな」
「なんかいやらしい戦い方だなこいつ……」
起きあがろうとする2人に再び触手攻撃が迫る。しかし、クローズは横に転がって回避し、ガオウは逆に触手を掴みとってガングニールを引っ張り始めた。
「Aa⁉︎ 」
「2度も同じ手は食らわねえよ」
ずるずるとガングニールオリジオンは転生者狩りの足元まで引き摺られると、その腹を思い切り踏みつけられた。触手をがっちりと掴んだまま、ガングニールはガシガシと蹴られたり踏みつけられたりと好き放題にされる。これではどちらが仮面ライダーなのやら、と言いたくなるような戦い方である。
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa‼︎ 」
身動きのできなくなったガングニールは、けたたましい雄叫びを上げた。それは空気や大地はおろか空間そのものを震わせるが如くの衝撃だった。爆音に包まれる中、ガオウは何かに気づいたように足を止めるが、次の瞬間、ガングニールを中心として小規模な爆発が起きた。
そして爆煙の中、ガングニールは立ち上がる。時間差で爆発を起こす音波攻撃。奇襲性は抜群、それをモロに食らったガオウはただでは済むまい。理性を殆ど失いながらも、僅かに残った理性でそう確信していた。
しかし。
「おらあああああっ!」
敵はもう一人いるのだ。
爆風の中を突っ切り、クローズが突っ込んできた。手には片手剣・ビートクローザーを構え、雄叫びを上げながらそれをガングニールに対して振り下ろしてきた。
「がっ」
火花を散らして小さくのけぞるガングニール。そこに背後から、
《デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビ!》
「ぬうん!」
「Gyaaっ⁉︎ 」
聞いた事のない変身音がした直後、爆煙の中からガングニールの首目掛けて肘鉄が炸裂した。
煙が晴れると、そこには黒いトゲトゲした頭部に、マンガのような瞳、黒い体躯に骨を連想させる白い装甲 —— 仮面ライダーゲンム・ゾンビゲーマーに変身した転生者狩りがいた。
「ハンティングゲームの始まりだ。覚悟しろよ?」
一方、リイラを引きつけることになったネプテューヌ。何処からか木刀を取り出して構え、ドヤ顔をしながら自信満々な台詞を吐く。
「君の相手はこの私だよ!女神モードじゃ無くても割といけるんだからね!」
「出しゃばるなよ女神の出涸らし風情が。女神化出来ない貴女なんか敵じゃないわ」
リイラは辛辣な言葉を吐き返し、ネプテューヌを指差す。すると、リイラの指先から紫色のビームのようなものが瞬時に発射され、一瞬のうちにネプテューヌの頬を掠め、地面を焦がした。
ビームが命中し、ぷすぷすと煙を立てる地面をチラリとみて、ネプテューヌはかなり冷や汗をかいていた。コレは油断出来ない。ゲイムギョウ界を何度も救ってきた歴戦の女神だけあって、いやでも理解できてしまう。
と、目つきが鋭くなったネプテューヌに対し、リイラがある質問をする。
「そういえば気になってたんだけどさ」
「?」
「女神って食べたら美味しいの?」
「……それは性的な意味?それとも物理的な意味?」
あまりに唐突で、突拍子もない質問に、流石のネプテューヌも若干引き気味に質問で返す。某殺人鬼だったら質問を質問で返すなとブチ切れてるところであるのだが、リイラは、
「この姿を見たら分かるでしょう?」
と、不敵に笑いながら髪を結んでいたゴムを外す。すると、彼女の背中を突き破るかのように、触手やら蜘蛛の脚のようなものが一斉に生えてきた。リイラの額には触覚のようなものも生えており、全体的に気持ち悪い雰囲気がダダ漏れである。
ぽけーっとその様子を見ていたネプテューヌだったが、我に帰って一言。
「何?貴女って蠱惑魔のカードの精霊だったりするの?私決闘者じゃないんだけどなー困っちゃうn」
リイラの変わりように驚きながら感想をベラベラ述べてるネプテューヌだが、それを言い終わる前にリイラの触手攻撃が無慈悲に彼女を襲った。ネプテューヌを足元の地面ごと抉るような一撃だった。触手の先端には食虫植物の花弁を思わせるような部位があり、そこから垂れる液体で触手の通過したルートはドロドロに溶けていた。しかしながら、地面の腐食によって発生した煙の中にネプテューヌの姿は無い。
そのことに対し意外そうな反応を見せるリイラだったが、直後に背中にガキンッ!と硬いものがぶつかるような音がした。振り返ると、無傷のネプテューヌがリイラの背中から木刀を振り下ろしていた。リイラは咄嗟に触覚で防いでいたが、不意打ちを仕掛けられたことに対し苛ついたので、背中の蜘蛛の脚でそのままネプテューヌをがっしりと捕らえてしまう。
「ぬぁっ!コレは……」
「飛んで火に入る夏の虫、ね。自分から皿の上に乗っかってくれるなんて、随分とサービス精神旺盛な食材よねえ?」
「へっ!生憎これで終わるようなら何作品もゲーム作られないのだよ!ドヤァ!」
嬉しそうに舌舐めずりをするリイラだったが、ネプテューヌはメタさと自信に溢れた台詞を吐く。すると、ネプテューヌの持っていた木刀にパキリとヒビが入る。それは次第に広がっていき、しまいにはバキバキに折れてしまった。
「あらあら、威勢のわりには情けなくてよ?」
唯一の武器を失った自称女神を笑うリイラであったが、直後、背中の蜘蛛の脚と触手が全て同時にズバァッ!と焼き斬られた。またまた意外そうな顔をするリイラ。拘束を抜け出したネプテューヌは、リイラから離れた位置に着地する。その手には先程までは無かったビームサーベルのようなモノが握られている。
「木刀の中にビームサーベルねぇ……女神らしからぬ卑怯な手を使うのね。親近感湧いちゃうわ」
「そりゃあ我がプラネテューヌが誇る最新のブツですし?中からビームサーベルの5、6本はで、出ますよ」
そう威勢よく切り返すネプテューヌだったが、内心は、
(マズイよこれ……女神の力無しで行ける気しないんですけどぉ!)
結構ピンチだった。
色々と事情があって、彼女は現在女神としての力が使えない状態にある。雑魚モンスター相手ならともかく、目の前のリイラは女神の力無しでは勝てそうにない。というか、あっても自分一人では正直言ってキツイかもしれない。
そんなネプテューヌの心情も梅雨知らず、リイラは不敵な笑みをこぼす事なく着実にネプテューヌに歩み寄ってくる。
「さあ、私を楽しませて。食事は楽しむモノだから、ね?」
アクロスとビルドがビルドオリジオンと交戦を始めて少し経った頃。
(ああ……本当に僕はついてないなぁ)
戦場から少し離れた、駅の入り口。そこに志村優始は座り込んで身を隠していた。
休日だからと出かけてみたのが運の尽き、また仮面ライダーと怪人の戦いに巻き込まれてしまったのだ。志村も逃げようとしたのだが、躓いて転んだり他の人達に突き飛ばされたりして逃げ遅れ、こうして建物の影に隠れる他無くなったのだ。
(てか……逢瀬くんが戦ってる相手って、高山くんだよね?)
しかもよくよくみてみると、怪人の方は昨日と同じ —— すなわち、高山であった。彼が怪物になったことについても、仮面ライダーのあれこれについてだのと色々と理解が追いついていないのだが、こうして目の前の戦いを見ていると、アレは現実だったのだと改めて思い知らされる。
しかし、そんなことよりも志村にとって重要なことがあった。戦場からの離脱である。逃げ遅れた今になって動いたらどんな目にあうか、志村の鈍い頭でも充分想像できる。だからここから動きようもないし、出来ることといえば観察だけ。このような理由から柱の影に隠れて戦いを見守っていた。
が。
「邪魔をしないでくれっ……この力がなきゃ……ヒーローじゃなくなる!僕は僕じゃなくなるんだよ……!」
「そこまでして固執するのかよ……!考えて直せたかやぐはあっ!」
必死に抵抗してくるビルドオリジオンに尚も言葉をかけるアクロスであったが、オリジオンに腹を蹴られ、志村の隠れている駅舎の方へと吹っ飛ばされる。そして、ゴロゴロと地面を転がって此方まで飛んできたアクロスと目が合う。
「うわあああああああああっ⁉︎ 」
「っ!まだ逃げ遅れた人が —— って志村ぁ⁉︎ 」
「は、はいドーモ志村デス……」
申し訳なさそうにちぢこまる志村。邪魔になっているのは重々承知なのだが、仕方ないのだ。
「ごめん、逃げ遅れた……」
「お前なぁ……」
溜息をつくが、今更逃げるのは厳しい。アクロスは志村に、その場から動かないように念を押して言うと、再び戦闘に戻ろうとする。
が、志村はそんなアクロスを呼び止める。
「ねえ」
「?」
「あれって、やっぱり高山くんなんだよね?」
「ああ……俺も初めは驚いていたけどな」
「ずっと考えていたんだ。高山くんがやってることが本当に正しいかって。でも……やっぱりおかしいよ。あれが正義の行いだって、僕はどうしても思えないんだ」
「そこで何をしている?」
「「⁉︎」」
二人の会話に割って入ってくる声。同時に、一人奮戦していたビルドが吹っ飛ばされて転がってくる。見ると、ビルドオリジオンが息を切らしながら此方に歩いてくるのが見える。
「戦兎!」
「大丈夫だ。こいつ、昨日よりも容赦が無くなっている」
「何で僕の邪魔をするのさ!僕は正義のヒーローの筈だ!僕の行いは、賞賛されるべきものなんだぞ……ああ、僕は正義のヒーロー、正義のヒーロー正義のヒーロー……」
切羽詰まったような声で、まるで自分に言い聞かせるように叫ぶビルドオリジオン。正義のヒーローだ、とうわごとの様に繰り返し呟きながら歩み寄ってくる様は、とてもじゃないが正気の沙汰とは思えない。
だが、瞬は、明確にそれを否定する。
「お前なんかが正義のヒーローのわけ無いだろ、自己中野朗!」
「なん、だと」
「根本的な事を言うぞ。
戦兎は「誰かの力になれたら、心の底から嬉しくなって顔がくしゃっとなるんだよ」と言っていた。たとえ力が無かろうと、そう言った思いやりの心を持ち、それを実践出来るからこそ、ヒーローはヒーローたり得るし、憧れの対象にもなる。だが、自分勝手な正義に酔ってはならない。ましてや、悪人だからと言って容赦なく叩きのめす様な奴が善人である訳がない。罪を憎んで人を憎まず。それが出来ておらず、ヒーローの力に溺れる高山を、瞬は否定する。
ビルドオリジオンは動揺したかに見えたが、それを否定するかの様に、自らの正義を否定する瞬を排除しようと拳を振り上げる。
「だって君、悪い奴を叩きのめしてる時、どんな気持ちだった?」
そこに、志村が口を出した。ビルドオリジオンは、振り上げた拳を止め、志村を見つめる。足は震え、歯はガチガチと鳴っており、全身から恐怖が溢れ出ている。それでも、言わなくてはならない。そう決心し、なけなしの勇気を振り絞って志村は続ける。
「昨日、見たんだ。逢瀬くん達と別れた後で、君が人を襲っているところを」
「……」
「その時の君は、笑ってた。人を痛めつけながら、笑ってた。僕は怖かった……あんなの、ただ暴力を振るってるのを楽しんでるだけじゃないか!」
志村の言葉に、ビルドオリジオンは怒りを露わにする。否定したい事実を口にする目の前に少年を排除しなければならないと、焦りがどんどん大きくなる。
そして志村は、その言葉を口にする。高山を否定する、鋭い言葉の刃を。
「ヒーローって、あんなことするかな?僕は……あれを見て、君を正しいなんて到底思えない」
「このっ……何も知らない、力もない弱虫の分際で!」
ビルドオリジオンは激昂し、志村に殴りかかろうとする。が、間一髪、アクロスがその拳を掴んで止める。
「志村の言う通りだ。今のお前は悪を捌いてるんじゃない。力を振るう相手に悪人を選んでるだけなんじゃないのか?お前も薄々気づいてるんだろ?」
「今のような行いをする奴を、ヒーローとは言えない」
「煩い……!おまえらに何が分かる!」
「正義を力を振るう言い訳にするな!本当に正義の味方になりたいなら!まず心で示さなきゃ駄目なんだ!」
「目を覚ませ!お前が向かう先にあるのは善悪の関係ない無だ。力を振るわずともできる正義はある!それでも駄目な時に代わりに戦うのが、ヒーローだ!」
2人の“仮面ライダー”の言葉に動揺したような素振りを見せるビルドオリジオン。その一瞬の隙を突き、ビルドとアクロス、2人のライダーのパンチが彼の胴体に滑り込むようにして突き刺さる。膝をつき、ビルドオリジオンから高山の姿に戻る。オリジオンとしての姿を維持できなくなる程に消耗したのだ。
傷つき倒れた高山。しかし、彼は尚もうわ言のようにこう繰り返す。
「僕は……ヒーローだ。でなければ、僕のこの正義感は無意味になってしまうじゃないか……」
正義を成すための力が、いつしか目的と手段が反転し、力を振るうための言い訳としての正義という形になってしまった。正義のヒーローとしては、最高に皮肉なものである。
これで本当に終わったのか。それを確かめるべく、瞬はその場に座り込んだ高山に近づく。しかし、
「お前の妄執はその程度か?」
「⁉︎」
そこに、ずっと傍観していたティーダが割って入る。ティーダは仮面ライダー達には目もくれず、座り込んでいる高山の腕を掴んで無理やり立ち上がらせ、発破をかけはじめた。
「正義のヒーローになりたいのだろう?なら、邪魔する悪を討て。その為の力を与えてやったのは誰だと思ってるんだ?」
「ティーダ様……僕は……」
「つまらん事で迷うな。拒否権などあると思っているのか阿呆め」
「がふっ」
突然苦しそうに呻く高山。よく見ると、ティーダの腕が高山の腹部に深々と突き刺さっていた。しかしながら、血は一滴も流れておらず、ティーダの腕は高山の体を貫通するほど深々と突き刺さっている筈なのに、腕の先が背中から見える、といったこともない。まるで、亜空間かなにかに突っ込まれているようだ。
「くだらん正義など放り出し、俺達のために暴れろ。貴様ら転生者の存在意義はそれだけだ」
「あ……がああああああああああっ!」
苦悶の表情を浮かべながら苦しそうに呻く高山。彼の身体中にジッパーが出現し、彼を覆い尽くしていく。そして、それが一斉に開く。そこには、瞬達の知るオリジオンとはかけ離れたものがあった。
最初に見えたのは青黒い砲身。そして赤黒い目玉。歪に歪んだ車体にキャタピラー。戦車の上に人間の上半身のような物が乗っかったフォルム。そこにあったのは、原点のビルドから遠くかけ離れた、ウサギと戦車が混じり合ったかのような異業の化物だった。ティーダはそれを見て声高らかに笑う。
「ふはははははははははははは!所詮は紛い物、少し力を注入しただけで暴走するとはなぁ!だが好都合だ。暴れてやれ!」
そう吐き捨てると、彼はその場を立ち去っていった。一体何しに来たのやら、と言った感じだったが、高山の様子は明らかにヤバくなっていた。
「Auoooooooooooooooooon‼︎ 」
自我も人の形も失い、もはやただの兵器に成り果てたビルドオリジオンは、雄叫びをあげながら瞬達の方へと突っ込んできた。間にあったベンチやら街路樹やらを薙ぎ倒しながら突っ込んでくる姿は、まんま戦車だ。
その巨体による体当たりは、ビルドとアクロスを最も容易く吹き飛ばしてしまう。
「うわああああああああっ!」
「があああああああああっ!」
これまでとは比べ物にならない程の強い衝撃が2人を襲う。倒れ伏した二人に、暴走を続けるビルドオリジオンは左手につけられるアームキャノンから、幾つものミサイルを放ってくる。それはアクロスとビルドはおろか、離れた位置で戦っていたクローズや転生者狩り、ネプテューヌに加え、リイラやガングニールオリジオンさえも巻き添えに爆発を起こした。もはや敵味方の区別さえもつかなくなっているらしい。
全身を襲う痛みに耐えながら、爆炎の中、アクロスとビルドは立ち上がる。他の面々も立ち上がり、それぞれの戦いを続行する。ビルドオリジオンは雄叫びを上げながら、地面を強く叩く。
「勝てるのか、あれに……」
ぽつりと瞬が呟いたその時だった。
急に、アクロスの視界の端が少し眩しくなったのだ。炎の光ではない。どこか優しく、それでいて力強く感じられる、白い光だった。光源はすぐそばだ。アクロスはビルドの方をみるが、そこには驚きの光景が存在していた。
「おい、戦兎……身体が」
「え……な、なんじゃこりゃ!」
びっくり仰天。なんと、唐突にビルドの身体が淡く輝き出した。
「コレは……何が起きている⁉︎」
「俺もわかんないけど……前にもあったなこれ」
その光は、次第に一点に集中していく。アクロスの掌に。
そして光は、一つの鍵のようなモノに変化する。赤と青のカラーリングが何処となくビルドを連想させるそれは、紛れも無くアクロスが使用するライドアーツそのものであった。
「ネプテューヌや一誠の時と同じ……まさか!」
起動してみる。
《BUILD》
これまでの時と同じようにして、ドライバーの中央部を横に回転させてライドアーツ挿入口を上に向け、クロスドライバーにライドアーツを差し込み、再び横に倒す。すると、
《LEGEND LINK……ラビットアンドタンク!アクロスアンドビルド!ベストマッチ・リンクオン!》
ビルドドライバーの変身音のように喧しくハイテンションな音がクロスドライバーから流れる。それと同時に、アクロスの左右に兎を模した膝丈ほどの大きさの赤いメカと、同じ大きさの青い戦車が出現し、左右それぞれから瞬の身体に引っ付いていく。
兎の頭部が左肩のアーマーに、前脚が伸長して左腕の装甲になる。戦車の砲台が右肩アーマーに、右キャタピラが右腕の装甲になる。残ったパーツが脚部と胸部にひっついていき、アクロスの複眼が赤と青のオッドアイに変化する。そして触覚のような部位、リンゲージコントローラーは左右それぞれが兎の耳と戦車の砲身を模した形状に変化する。
「これは……ビルドの力?」
「その通りだとも!これこそ仮面ライダーアクロス・リンクビルド。仮面ライダービルドとの絆の結晶、紡がれし新たなる力だとも!」
「フィフティ⁉︎ いつの間に……!」
横から胡散臭いイケメンボイスが聞こえてきたと思ったら、いつの間にかアクロスとビルドの真後ろにフィフティが立っていた。何しにきた。まさか今の台詞を言うためだけに現れたとでもいうのだろうか。
「英雄との繋がりで進化する、それこそがアクロスの真骨頂。行きなさい、君の行く道は確かな繋がりに満ちているさ」
「絆の力、か」
レジェンドリンクは絆の結晶。フィフティの言葉を聞いて、アクロスは自分の手のひらを見つめる。僅かな間ながらも、ビルドとアクロスは仮面ライダー同士繋がり合えた。その結果が今のアクロスの姿なのだ。アクロスは拳を強く握りしめ、戦兎の顔を見て言う。
これで終わらせる。
「一発で行くぞ」
「ああ」
《VOLTAGE FINISH》
《VOLTAGE CROSS BRAKE》
2人のライダーが必殺技を発動する。両者とも高く跳び、空中で飛び蹴りの姿勢を取る。すると、ビルドの突き出した左足から曲線グラフが現れ、オリジオンの胴体まで伸びていく。アクロスの足からも同様にグラフが現れるが、ビルドとは違い下に凸の放物線を描いている。
しかし、グラフの形は違えど、終点は同じ。2人のグラフの交点は、オリジオンの胴体のど真ん中。
「せえいやあああああああああああ‼︎ 」
「はああああああああああああああ‼︎ 」
叫びながら、それぞれのグラフをなぞる形の軌道を描き、2人のライダーキックがオリジオンに胴体目掛けて解き放たれる。ビルドオリジオンは必死に暴れるが、2つのグラフによって体は縛られ満足に身動きできない。
(僕の……正義の力がなくなる!これがなきゃ、僕は何もできない!)
焦る。焦る。焦る。
この力が無くなれば、正義のヒーローではなくなってしまう。何の力もない、正義を為せない弱い自分に成り下がってしまう ——
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎ 」
その叫び声は届かなかった。
2人のライダーのライダーキックによって、ビルドオリジオンの力は爆発と共にかき消えることとなった。
「あれ、終わったの?呆気ないわねぇ」
ゴスロリ衣装をボロボロにしながらも、ネプテューヌを触手で甚振っていたリイラは、ビルドオリジオンの敗北を目の当たりにし、興が削がれたと言った感じの顔をした。
「貴女と戦うのも飽きちゃった☆そろそろ食べちゃおうかしら」
リイラの背中から生えた昆虫の脚が不気味に蠢く。そして、彼女の腹のあたりから、なんらかの食虫植物の花弁のような物が浮かび上がってくる。ネプテューヌを食わんとばかりに、花弁から消化液とおぼしき液体が滴り落ちる。
終わった —— 既に反逆できるほどの余力はない。
らしくもない後悔に、ネプテューヌの思考が埋め尽くされそうになっていたその時。
「
「はひぇえ⁉︎」
「⁉︎」
突然、リイラの触手が飛んできたサーベルによって切断され、ネプテューヌは縛られた状態のまま地面に落とされた。縛られているので受け身は取れず、鈍い痛みが全身を襲った。
リイラは、不満そうに舌打ちをして、サーベルが飛んできたであろう方角を睨みつけて言う。
「何のつもりよ……レイラ?」
そこには、長い銀髪をツインテールにした豪華な軍服姿の少女が、ライフルの銃口をリイラに向けた状態で立っていた。リイラの姉であり、同じギフトメイカーの一員、レイラである。レイラは、邪魔されたことに対する怒りをあらわにリイラに対し、淡々と告げる。
「こんな奴に構ってる場合か?あのオリジオンがやられた以上、ここに留まる意味はない」
「食事の邪魔しないでよ。たとえ実の姉だろうと、私の邪魔する奴には容赦はしないわよ」
「ティーダからの命令だ。今すぐ帰還しろ、とな」
その言葉に、苦虫を潰したような顔をするリイラ。乱暴な手つきで、レイラに投げられ地面に刺さっていたサーベルを引き抜くと、踵を返して歩き出す。
「……帰るわ。退屈しのぎにはちょっと足りなかったかしら。女神化できない貴女なら無理もないでしょうけど」
「なら帰るぞ」
縛られたままのネプテューヌに背を向けたリイラは、昆虫の足や触手や食虫植物の花弁を全部仕舞うと、代わりに蝶の羽根のようなものを背中から生やし、その羽根で宙に浮かび上がる。一体どんな身体しているのか、不思議なものだ。
羽根で空を飛んでいった妹を仰ぎながら、レイラは去り際にこう言った。
「妹が迷惑をかけた。すまない」
「え……」
そしてレイラは一瞬の内に姿を消した。まるで瞬間移動でもしたかのように。
結局、レイラの言動の意図は殆ど分からずじまいだし、リイラには惨敗してしまったネプテューヌであったが、ひとつだけ、理解していることがあった。
自分は今、あの少女に庇われたのだと。
一方、此方も決着が着こうとしていた。
「があっ!」
「おらぁ!」
万丈のストレートパンチで吹っ飛び、地面を転がるガングニールオリジオン。いくら頑丈でも、長きにわたる戦いで体力が減ってきているのだ。
その隙にガングニールオリジオンを挟み込むように移動したクローズとゲンムは、それぞれのベルトを操作し、必殺技を発動する。空高く跳び上がる2人を見て、ガングニールは大きな手甲のように肥大化した腕部装甲を突き出し、それを以てキックを受け止めようとする。
「おらぁ!」
「せぇい!」
《キメワザ!クリティカルストライク!》
《VOLTAGE FINISH》
2人のライダーキックがガングニールに接触した瞬間、爆発が起きた。炎が巻き上がるとともに、ガングニールの苦悶の声がする。
「やったか⁉︎ 」
爆炎の中、クローズが立ち上がる。しかし、辺りを見渡してもガングニールオリジオンに変身していたであろう人物の姿は何処にも見当たらない。ただ、燃える装甲の残骸が一部残っているだけであった。
「逃したか……ギフトメイカーの奴らも相変わらず逃げ足が早いな」
ゲンムは溜息をつきながら、ある一点に目をやる。そこには、オリジオンの姿から戻り、その場に座り込む高山の姿があった。見ると、変身を解いた瞬と戦兎が彼に近寄っていっている所であった。
「……」
「高山」
瞬の呼びかけを、高山は無視する。
ゲンムは、背後から高山にゆっくりと近づいていき、座り込んで肩を落としている彼の背中に弓型の武装、ガシャコンスパロウを突きつける。
「何をする気だ!」
「……」
殺す気なのか。そう問いかけようとしたが、ゲンムは「邪魔をするな」とでも言うかのように瞬達に殺気を飛ばして威圧してくる。市街地の駅前という場所には似合わないような静寂が辺りを支配する。
幾らか経った頃。ゲンムはおもむろに武器をおろす。
「斬る必要はなくなった」
「へ?」
「こいつにはもう何の力もない。もう2度とオリジオンになる事もないし、転生特典も使用できない。ならば、殺そうが生かそうがどの道俺には意味がない。だから、テメェらが後始末をしろ」
んな勝手な……と思ったが、兎に角高山の命も保証されたようだ。いくらあんな事をしでかしたとはいえ、クラスメイトを目の前で殺されるのは瞬にとってもいただけないことであった。そんな事したら、高山と同じになってしまう。
転生者狩りは、ゲンムに変身したまま瞬達に背を向けて歩き出す。そして、
「道を違えるな。次にまた堕ちたら、その時は殺す」
そう高山に言った。
これは執行猶予みたいなモノなのだ。高山自身も、本能的に理解していた。その身体は、恐怖で震えていた。
(こんな気分だったのか……僕にやられていた人達は、僕をこんな風に見ていたのか)
身に沁みてわかった。オリジオンとして力を振るい悪を裁く自分が、周りからどう思われていたのかを。これが真っ当な反応だったのだ。それを認めずに自分はヒートアップしてしまった。結果的に、憧れだったヒーローに全部否定され、迷惑をかけてしまった。
—— なんて身勝手な奴だ。結局のところ、自分が一番の悪だったんだ。
傷だらけの身体で項垂れる高山を、瞬達は見つめていた。彼は過ちに気づいた。ならば、それを機にしっかり反省し、罪を償ってほしい。それが間違いを犯した人間の義務なのだ。そう思っていた。
「……」
転生者狩りの耳に、高山の嗚咽が入ってくる。彼はそれを聞いて足を止め、振り向く事なく瞬に言葉を投げかける。
「お前もだアクロス」
「⁉︎」
「お前はコイツを否定したんだ。なら、せいぜい口だけの馬鹿にならないようにしろ」
転生者狩りはそう言うと、いつの間にか止まっていたバイクに跨り、たちまち走り去ってしまった。幾人ものライダーに変身しその力を自在に操り、敵か味方か、それに正体も分からない転生者狩り。あいつはやはり一筋縄ではいけないものだと再認識する瞬であった。
「なーによあいつ!感じ悪すぎじゃない?」
「彼も素直じゃないねぇ。まあ、それも仕方ないのかもしれない」
唯とフィフティが、転生者狩りの陰口で盛り上がる中、ずっと項垂れていた高山は、顔をあげて瞬に問いかけてきた。
「……心で示せって言ったよな。なら、君はどうなんだ?」
「正直出来てるかどうかは自信がないな。でも、それを忘れずにいたいし、できるようにならなくちゃいけない。それが、この力を手に入れた俺の義務だと思ってるから」
「……今からでも、できるかな」
「出来るよ。命がある限り、なんどでも」
志村が高山に発破をかける。
転生者狩りも、乱暴な言い方だが瞬に忠告したのだ。目の前の失敗した者と同じ轍を踏むなと。自分も気を付けねばなるまい。それが仮面ライダーになった自分の義務だから。
そしてもう一つ。半ば押しつけられたような力でも。心に宿しているのが誰かの受け売りの理想でも。こうして誰かを助けられた事が、瞬はなんだかとても嬉しく思えた。
「戦兎の気持ち、少し分かったかもしれない」
—— 誰かを助けた後って、なんか他とは違った達成感……爽快感?まあそんな感じのヤツ?があるよね。それで感謝されたら余計に心が熱くなるような、バクバクするような……兎に角!人助けっていいよね!ってコトよ。
唯と出逢って間もない頃、彼女がこんな事を言っていたのを思い出した。結構フワフワした言い方だけど、案外“やり切った”後のヒーローの気持ちとしては的を射ているのかもしれない、と瞬は考えていた。今の自分の気持ちは、まさしくこれだったのだ。きっと、あの時の唯も似たような気持ちだったのかもしれない。
色々と考えを巡らせる瞬に、戦兎が声を掛ける。
「これからはお前の番だ、瞬」
「え?」
「力が必要になったら、いつでも呼んでくれ。力を貸すぜ」
「頑張れよ、後輩」
ポンと瞬の肩に置かれる、2人の先輩の手。
ラブアンドピースを掲げて戦い続けた
ビルドとアクロス。
今確かに、縁は結ばれた。
最初のレジェンドライダー回、終わりました。
序章の後日談やら正義アレコレだの、たった2話に色々詰め込み過ぎました。きっつ。30000文字近くいくとは思わなかった。
リンクビルドについては、ビルドのラビットラビットとタンクタンクが混ざったようなデザイン+ジオウビルドアーマーを想像してみるとわかりやすいかと。前者についてはそれっぽいコラ画像見かけたような気がする。
今回は敵役である高山くんがちゃんとやり直す、というコンセプトで話を作ってました。前3人の転生者よりもまだまともな感じです。ええ、まともです。次回くらいからはまた屑転生者がうじゃうじゃ湧いてきます。
次回以降は2〜3話完結の話を連発しながらまだまだ新キャラを出していきます。その後から本格的に転生者狩り周りを掘り下げてくつもりです。先は長いなぁ!
ちょいと気になってるのですが、本作ではライダーに変身しているシーンでも、地の分では変身者の人名で表記してるんですが、やっぱ変身中は仮面ライダーの名前で表記した方がいいんでしょうかね?
一応次回の戦闘から書き方は変えてみるつもりですが、意見があれば言っていただけると幸いです。
次回、総員抜錨せよ!