【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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後編です。

初めに言っておきますが、私は遊戯王ARC-Vは好きな作品です。ARC-Vのおかげで遊戯王熱が再燃しましたし、今ではデュエルリンクスにうつつを抜かす日々を送ってます。見て分かる通り、本作にも多大な影響を与えている作品でもあります。

結構難産でした(いつもの)



第21話 交差するオッドアイズ

 榊遊矢は嫌われ者である。

 彼の軌跡を描いた物語は皆が嫌っている。主人公である彼を皆が憎んでいる。

 あんなもの無ければいいのに。あんなもの作りやがって。後悔と嫌悪は止まることを知らない。誰もが仕方ないとその現状を諦める。批判されるようなことをした奴が悪い。

 

 ギフトメイカーはその怨嗟を拾う。それを解放しろ、暴れさせよと囁く。

 何故なら、どうでもいいから。彼らは目的以外に興味を見出さない。

 

 

 原作主人公の一人や二人、殺されようが知ったこっちゃないだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼方からの号哭が、微かな嘆きが、朦朧とした意識を繋ぎ止める。

 

(……これは)

 

 傷つき、倒れた遊矢は、啜り泣くような吠え声に反応し、閉じかけていた目を開ける。ぼやけた視界の先には、こちらを見下ろす対戦相手と、彼の背後に立つ一体のドラゴン。先程から聞こえる嘆くような咆哮は、このドラゴンがだしているのだ。

 そして、それを見た遊矢は、自身の置かれていた状況を思い出した。

 

(そうか、俺……オッドアイズ・ファントム・ドラゴンにやられて……)

 

 オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの効果によって大ダメージを受けた遊矢は、ソリッドビジョンの砂浜に倒れていた。指を動かすことさえもままならない程の激痛が全身を襲ってくる。息を吸っている感覚さえもあやふやになり、視界もぼやけている。

 リアルソリッドビジョンはダメージの衝撃をも具現化するが、今の衝撃は普通の比ではない。恐らく、マサルが装置を弄ってソリッドビジョンの出力を大幅に高めているのだ。それも、常人ならやらないレベルで。

 マサルは、痛みで中々起き上がれない遊矢の前へと歩いていくと、その頭を鷲掴みにして自分に向けさせ、その顔面に比喩でもなんでもなく、唾を吐く。

 

「情けねえなぁ……やっぱりお前にゃ遊戯王の主人公なんぞ合わねーよ。大人しくサーカス団に入ってピエロでもやってればいいんだ」

「……」

 

 その言葉には、この世の決闘者(デュエリスト)に求められるものであろう、対戦相手への敬意なぞ微塵もなかった。純度100%の嫌悪をどストレートにぶつけ、あまさつえ文字通り唾を吐く様からして、コイツはもう決闘者云々以前に人として終わっていた。

 遊矢は、マサルの暴言に対し、言い返すだけの体力も無かった。負けたら皆殺しにされる。それだけは避けたいという一心で、なんとか立ち上がったはいいものの、こうして立っているだけで精一杯なのだ。その体力もいつまで持つか分からないのだ。

 よろよろと立ち上がった遊矢を見て、マサルは不快そうに顔を歪めると、プレイを続行する。

 

「“オッドアイズ・レムナント・ドラゴン”の効果発動!自分の“オッドアイズ”モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時、自分フィールドのカードを1枚選んで破壊することで、自分はデッキから1枚ドローする!俺は“オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン”を破壊し、ドロー!」

 

 アークペンデュラム・ドラゴンが光の粒子となってフィールドから消え去り、マサルがカードをドローする。そしてマサルは引いたカードを見てニヤリと笑うと、そのカードを即座に使用した。

 

「速攻魔法、揺れる眼差しを発動!お互いの(ペンデュラム)ゾーンのカードを全て破壊し、破壊した数に応じて効果を適用する!」

 

 マサルがカードを発動すると、二人を取り囲むようにして突風が吹き荒れ、お互いのフィールド上で、ペンデュラムスケールとして宙に浮いていたモンスター達が、光の粒子となって霧散する。アクションフィールドも突風により大きく荒らされ、砂や海水、設置されたアクションカードが風によって巻き上げられてゆく。

 

「1枚破壊した時の効果により、貴様に500ダメージ」

「うがぁっ⁉︎ 」

遊矢:600LP→100LP

 

 不意に発生した、小さな竜巻が遊矢にぶつかり、ハンマーで頭をかち割られる衝撃が遊矢に襲いかかる。たった500のダメージなのに、この威力。そしてもうライフは風前の灯火。微弱なバーンカード一枚で吹き飛ぶほどの危機的状況である。

 

「2枚破壊により、デッキからPモンスターをサーチ。俺は”オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン”を手札に加える」

 

 手札に加えられるは、新たなオッドアイズ。それに驚く時間も与えられずに、更なる脅威が押し寄せる。

 

「3枚破壊により、フィールドのカード1枚を除外する。その目障りなAカードを消し去ってやる!」

 

 遊矢が伏せていたアクションカードが風で飛ばされ、空の彼方へと飛んでいってしまった。

 

「4枚破壊により、デッキから2枚目の揺れる眼差しを手札に加える」

 

 同名カードのサーチまでやって来やがった。これで遊矢の場はガラ空き同然になってしまった。手札や墓地にも、攻撃を捌く防御札はない。万事休すだ。

 マサルはガラ空きになった遊矢のフィールドを見て鼻で笑うと、見下したような言い方で攻撃宣言をする。

 

「トドメだ。“オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン”で“EMペンデュラム・マジシャン”を攻撃!死ね榊遊矢!神聖なるデュエルモンスターズを汚す大罪人めええええええええええええええええええ!! 」

 

 怨嗟と憎悪の塊のような声で、マサルはトドメの宣言をする。遊矢の場にはモンスターは居ない。間違いなく遊矢は負ける。そして殺されるのだ。

 ギャラリーは皆絶望の表情になり、柚子は耐えられずに目を閉じてしまう。ああ無情かな。これで彼らも殺されてしまうのだ。

 

 

 

 

 

 だが忘れちゃいけない。これはアクションデュエル。起死回生の手段なんて、いくらでも転がっているのだから。

 

「アクションマジック、回避!攻撃を無効にする!」

 

 遊矢が手札からアクションカードを発動すると、オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンの攻撃は遊矢からそれ、あらぬ方向へと飛んでいってしまった。

 しかし、遊矢は先程からその場を動いてはいない。一体いつ、アクションカードを入手していたのだろうか。

 

「アクションマジック……いつの間に⁉︎ 」

「さっきの突風で、未取得のカードが飛んでいってるのを見たんだ。偶然近くに飛んできた時に、それをちょっとね」

 

 そう。先程の揺れる眼差しの発動時の突風で、アクションフィールドはめちゃくちゃに荒らされた。その際、砂に紛れて飛んできたアクションカードがあったのだ。痛みでまともに動けなかった遊矢にとっては、まさしく渡に船だった。自分の方に飛んできたそれを掴み取り、首の皮一枚で繋がったというわけだ。

 

「ああ苛々するぜ!そんなものに頼ってんじゃねえぞゴミカス!ったくこれだからスタンダード次元は雑魚なんだよ……恥ずかしくねえのかよ!おとなしくくたばれよぉ!」

 

 アクションカードを使った遊矢に対して、ボロクソに非難するマサル。アクションデュエルで構わないと言った以上、相手が使おうが文句を言われる筋合いは無いはずなのだが、遊矢憎しで思考するマサルはそんな事は考えちゃいなかった。ただ、遊矢を糾弾したいがためだけの発言なのだから。

 

「糞が!俺はスケール0の“オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン”をPゾーンにセット。そしてP効果発動。手札を一枚捨てて、EXデッキに表側表示で存在するドラゴン族Pモンスター1体を手札に加える。“揺れる眼差し”を捨てて、アークペンデュラム・ドラゴンを回収し、Pゾーンにセッティング」

 

 先程居なくなったアークペンデュラム・ドラゴンが、今度はPゾーンに出現する。アークペンデュラム・ドラゴンのPスケールは8。これでマサルは次のターン、レベル1〜7のモンスターをペンデュラム召喚できる、という訳だ。

 

「次のターンで必ず仕留めてやる……!」

 

 マサルが忌々しそうにターンエンドを宣言する。

 彼の背後に立つオッドアイズ・ファントム・ドラゴンは、心なしか、悲しそうな眼差しで主人(マサル)を見ていた。その視線に気づいたのは遊矢のみ。観客席にいるアラタ達も、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンを従えているマサルも、それに気づいてはいない。

 先程から、しきりに嘆くように吠えるファントム・ドラゴン。そして今の眼差し。そこから遊矢は、ある推測を立てはじめる。

 

「あれは……」

 

 が、そこで遊矢の思考は止まった。受けたダメージに耐えきれずに、遊矢はその場に膝を突き、そのまま倒れる。

 

「遊矢ぁ!」

「おい……これガチでまずいやつだろ!このデュエルを続けたらまずいっての!」

 

 柚子の叫び声が聞こえるが、もう既に、応えるだけの力も無い。

 そのまま、意識が闇に溶け込んでゆく ——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュエルコート外部

 

「あ……ああ……」

「逢瀬くん……!」

 

 アクロスの戦闘を物陰から見ていたヒビキとフィフティ。彼らの目の前に広がる光景は、まさに悪夢そのものだった。

 プスプスと煙を上げながら、力なく地面に横たわるアクロス。対して、イガリマオリジオン、レイラ、ガングニールオリジオン、タロットオリジオンの4人は未だピンピンしており、アクロスを始末する気満々である。このままほっとけば、間違いなくアクロスは死ぬ。

 

「出てこいフィフティ。そこに居るのは分かってるんだ」

「っ……」

 

 レイラがこちらに気づいたのか、フィフティの隠れている木の方に向かって声をかける。これは下手に逆らわない方がいいと踏んだフィフティは、ヒビキをその場に待たせ、しぶしぶと物陰から姿を現す。

 

「脅威とは思っていないと豪語するくせに、随分と私達の始末に御執心のようだね。ティーダの差金かい?」

「減らず口を……部屋に害虫がいたら始末するだろ?それと同じだ。単純に鬱陶しいんだよ、お前達は」

 

 フィフティの発言に対し、面倒くさそうに答えるイガリマオリジオン。

 

「なぜお前はアクロスに加担する?お前はただの死に損ないだ。俺達と敵対する意味など無いはずだろ?」

「……確かにその通りだ。だがしかし、私にはやらねばならない事がある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ね。個人的にはギフトメイカーと敵対する意味はないんだけども、君達のやってる事は私も看過できない。だから全力で邪魔をする」

「へえ、やっぱお前も腹にイチモツ抱えてるタイプ?いいねぇ、親近感湧くなぁ」

 

 イガリマオリジオンは、ニタニタと笑いながらフィフティに話しかけるが、フィフティはそれに対し、露骨に嫌そうな顔をする。フィフティ自身、ロクでもない人間性なのは確かだが、それでもまだ良識は持ち合わせていると自負している。しかし、イガリマオリジオン —— バルジは違う。こいつは明らかに自分の快楽しか頭に無い。良心が通用しないタチの人間だ。

 そんなフィフティからの嫌悪もつゆ知らず、イガリマオリジオンは鎌を構え、倒れたまま動かないアクロスの元へと歩み寄る。

 

「でも残念だったな。お前がアクロスを利用して何をするつもりかは知らねーが、たった今から俺達がアクロスをブチ殺す。それだけでお前も自動的にご退場だ」

 

 イガリマオリジオンはそう吐き捨てると、倒れたままのアクロスの首筋目掛け、鎌を勢いよく振り下ろす。そう、これで邪魔な仮面ライダーの首はすっぱりと斬れ ——

 

 

 

 

 —— なかった。

 振り下ろした刃が、アクロスの首筋まで後1センチの所でとまっている。

 

「まだ……終わっちゃいねえ……」

「瞬……!」

 

 見ると、アクロスが、自分に向かって振り下ろされた刃をがしりと掴んでいた。幾ら変身しているとしても、刃物を素手で掴むのは正気の沙汰ではないはずだ。

 

「ってぇ……っ!手ぇ切れる……っ!」

「今だ!そぅれぃっ!」

 

 すかさずフィフティが、落ちていたツインズバスターをイガリマオリジオン目掛けてぶん投げる。ツインズバスターは、イガリマの鎌を弾き飛ばしながら、近くの木にぶっ刺さる。

 フィフティの肩を借りながら立ち上がるアクロスに、レイラはサーベルの刃先を向けながら悪態をつく。

 

「意外としぶとい……いや、悪運があるのか?よくもまあ懲りずに立ち上がれるものだな」

「ここで俺が倒れたら、誰が暴れるオリジオンを止めるんだ……!あんな奴らを……のさばらせはしない!お前達に……好き勝手させるかよ……!」

 

 アクロスは、完膚なきまでに叩き潰されながらも尚、立ち上がる。

 気に入らないやつを消したい。好きな子を独り占めしたい。自分の思うように周囲を変えたい。そんな身勝手な欲望を抱えたオリジオンに、多くの人が傷付けられたのを見てきた。彼らの身勝手な理由で、関係ない人が傷付くのは許せない。身近な人が傷つくのも許せない。アクロスの力は、その為に使う。

 こんな人でなしどもに、自分達の生きる世界をめちゃくちゃにされてたまるものか。その憤りが、アクロスの身体をまだ動かすのだ。

 

「転生者だのなんだの、ごちゃごちゃうるせぇよ……皆生きてるんだよ……背景でもなく、端役でもない。俺みたいな木偶の坊なんかと比べたら!よっぽど!皆の方が!立派に生きてるんだよ!」

 

 アクロスは啖呵を切る。立っているだけでもやっとだが、それでも倒れるわけにはいかない。

 しかし。

 

「何です?もう話は終わりましたか?なら結構。生憎貴方の言葉は我々には届きません。いくら綺麗事をほざこうが、彼らは転生者には叶わない。次元が文字通り違いますので」

「トドメを刺すぞ。確実に殺れるタイミングでやらなければ、やられるのは此方だからな」

「心配すんなってのレイラちゃんよぉ。こぉんな雑魚、瞬殺に決まってんじゃん!」

 

 タロットはアクロスの発言をあっさりと否定した。そして、4人は満身創痍のアクロスにトドメを刺すべく、その足を動かす。

 アクロスを殺す事しか考えていないレイラに、彼女の言葉に軽い調子で答えるイガリマ。ハナから対話する気のないタロットに、言葉すら通じないガングニール。全員。完全にアクロスを舐めてかかっている。自分達の優位は揺るがないと思っている。

 先陣をきって、イガリマオリジオンが鎌を構えて突っ込んできた。アクロスは思わず身構える。イガリマは、楽しそうに笑いながら鎌を振り下ろす。

 

「さあもっとだ!お楽しみはこれからなんだからさぁ!」

 

 その時だった。キイイイイインッ‼︎ と、何かが凄まじい速度で向かってくるような音がした。イガリマはそれを聞いて刃を止め、空を見上げる。そして、先程よりもさらに楽しそうな笑みを浮かべながら、空に向かって声をかける。

 

「へえ、やっぱ来んのなお前。いいぜ、中々愉快な展開じゃんか!」

「あれは……」

 

 アクロスもつられて空を見上げる。

 空を飛ぶ、あの純白の姿には見覚えがある。確か、初めて会ったときもあの姿だったか。

 

「ようバルジ。この間の続きをしようぜ?」

 

 仮面ライダーサイガ。無論変身しているのは転生者狩りだ。

 背中のフライングアタッカーで飛来してきたサイガは、イガリマオリジオンを見下ろしながらそう言い、フライングアタッカーの砲口を向ける。

 

「今度は逃がさねぇ!ここでケリをつける!」

 

 そう叫びながら、地上にいるギフトメイカー達に向けて機銃で攻撃を仕掛けてきた。当然ながら、近くにいたアクロスも巻き込んで。

 

「ちょわあああああああああっ⁉︎ 」

 

 とばっちりで攻撃を受けたアクロスは、数発程喰らいながら吹っ飛んでゆく。その際に腰のクロスドライバーも外れ、変身が解除される。

 

「ってぇ……なんだよ⁉︎ 」

 

 アクロスの変身が解かれた瞬は、降りしきる弾丸の雨の中、落ちたクロスドライバーをなんとか拾い上げ、フィフティ達がいる方へと走ってゆく。このままだと瞬まで巻き添えで殺さねかねないし、何より他の皆が心配だ。

一方、三度合間見えたイガリマオリジオン —— バルジとサイガ —— 転生者狩り。サイガは、ベルトのサイガフォンに付いているミッションメモリーを外し、背中のフライングアタッカーの操縦桿に取り付け、操縦桿を引き抜く。すると操縦桿は、フォトンブラッドの刀身をもつ二振りのトンファー型武装、トンファーエッジへと変化する。

 そして、トンファーエッジをイガリマオリジオンに突きつけ、ドスの効いた声を投げつける。その手は怒りで震えていた。

 

「また会ったなぁ……バルジィ……!」

「へえ、懲りないなあお前。それ程俺が憎い?」

「当たり前だ!家族を……俺の世界を滅ぼしたお前を!決して許しはしない!」

「世界を滅ぼした……⁉︎ 」

 

 サイガの発言に、瞬は驚きの声をあげる。

 が、イガリマオリジオンは、サイガの発言を否定する事なく、それどころか、全く悪びれていない様子で、ヘラヘラと笑いながら開き直る。

 

「人聞きの悪い事言うなよガキンチョ。俺はただ、やりたいようにやっただけ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。俺は悪くねぇ!ってな!」

「っ……このクソ野郎がっ!」

 

 イガリマの発言にブチ切れ、サイガは目にも留まらぬ速度でトンファーエッジを振り抜く。しかし、イガリマオリジオンは、それ以上の速さで大鎌を振るい、サイガの手からトンファーエッジを弾き飛ばす。

 瞬は、物陰に隠れながら2人の様子を伺う。果たしてサイガの言ってることが事実か否か、瞬には知る由はないのだが、転生者狩りがバルジに向けている尋常じゃない憎しみと怒りが、両者の間に因縁らしきものが存在していることを証明している。

 

「その表情たまんねぇなぁ!仮面越しにだって分かるぜ。俺が憎くて憎くて堪らないですって顔してんのがよぉ!それくらいの勢いで歯向かってくれなきゃつまらねーだろぉがよぉ!」

「俺の命はテメェを殺す為だけにある!テメェみたいな腐れ外道は!俺が!殺す!」

 

 なんだが、瞬そっちのけで殺し合いが始まってしまった。対話を放棄した斬り合いを傍観しながら、いったいどうすべきかと考えている瞬に、フィフティが声をかける。

 

「……どうする?今ならギフトメイカーを彼に任せて先に進めるけど」

「でも……置いていくってのもなぁ……」

「その必要はない」

 

 後から来た奴に全部押しつけてしまうのは凄い迷惑なんじゃ無いのかと考えていた瞬。その考えを、ばっさりとサイガは切り捨てた。

 

「大方助太刀するかどうかを話し合ってたんだろうが……悪いがお前らの助けはいらねぇ。コイツだけは俺が殺さなきゃならないからな!」

 

 因縁のある者同士の戦い。そこに赤の他人が介入するのはあまり良く無いだろう。それに今のアクロスの実力では、この戦いにはついてこられない。足手纏いになるだけだろう。

 

「行けよ!そこにいられたら邪魔なんだよ!」

 

 サイガは苛立ちながら、瞬達にそう吐き捨てる。ここまで言われてしまっては、ここに居座る意味はない。

 

「……じゃあ任せる!」

「恩に着るよ」

 

 瞬はヒビキを抱き抱えると、フィフティと共に戦場から離脱しようとする。いつまでも足止めを食らっているわけには行かない。こうしている今も、デュエルコートの中では皆がオリジオンの脅威に晒されているのだ。早く向かわなくては。

 傷ついた身体を引き摺るように、瞬は走る。想像してしまう最悪の未来を振り切るように、皆の元を目指す。

 が、ここで忘れかけていた脅威が牙を向く。

 

「行かせるか!」

「始末します」

「UUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUッ‼︎ 」

 

 イガリマとサイガのタイマンが勃発して手持ち無沙汰になっていたレイラをはじめとする他のギフトメイカー達が、一斉に瞬達に襲いかかってきた。

 マズイ。ヒビキを抱き抱えているせいで、アクロスに変身しようにも、両手が塞がっていてドライバーを取り出せない。ガングニールオリジオンの凶拳が、瞬に迫る。

 その時だった。

 

「行け、DDD烈火王テムジン!」

「uAu⁉︎ 」

 

 鋭い声と共に、炎を纏った人型モンスターが、瞬とガングニールオリジオンの間に割り込むと共に、ガングニールの攻撃を打ち払い、地上に叩き落とした。

 モンスターは、ガングニールの動きが止まったのを確認すると、光の粒子となって霧散する。いったい何が起きたのだと周囲を警戒する瞬やギフトメイカー達のもとに、ある人物が現れる。

 

「リアルソリッドビジョンを荒事に使うのは避けたいのだが……人命がかかっていては仕方がない。大丈夫か?」

 

 声の主は、デュエルディスクをつけた、銀髪眼鏡の青年だった。4月も終わりだというのに、赤いマフラーを首に巻いており、なぜか靴下は履いておらず、素足に直接スニーカーを履いている。青年のズボンの裾が捲られているので、どうしても目につくのだ。

 

「邪魔するな。死ね」

 

 青年の姿を見るなり、レイラは躊躇なくライフルの引金を引いた。余りの迷いのなさに、瞬は思わず縮み上がってしまう。

 しかし、青年は、なんと着けていたデュエルディスクのプレート部分で弾丸を叩き落とした。弾かれた弾丸が、瞬の足元に転がってゆくのを見て、瞬はその常識外れの行動に、思わず笑ってしまう。

 

「誰だお前は」

赤馬零児(あかばれいじ)。ただの決闘者だ」

「なら引っ込んでろ。お前とアクロスは面識がない。赤の他人のはずだろう。何故邪魔をする」

「私もこの中に用がある。だがお前達はここに誰かが入られたら困るのだろう?」

「困る、と言ったら?」

「私が全力で押し通してあげよう」

 

 赤馬零児と名乗った青年とギフトメイカー達の押し問答に、フィフティが割ってはいる。それを見てタロットは、信じられないといったような反応を見せる。

 フィフティは瞬達を庇うように、その前に立つと、いつになく真剣な表情をギフトメイカー達に向ける。

 

「行きなさい。いい加減、口だけじゃ無いって所見せないとね」

「……大丈夫、なんだな?」

「いいから。君は君のやるべきことを」

 

 その力強い言葉に、瞬は黙るしかなかった。心配そうにフィフティの方を見ながら、瞬達はその場を離れる。

 フィフティは半ば強引に瞬達を先に行かせ、改めてタロットと相対する。そして、瞬達が建物の中に入っていったのを確認すると、

 

「という訳で、君達の相手は私なのーだ☆」

 

 と、ノリノリでウインクを決めながらタロット達の方を振り返る。一方、ギフトメイカー達は、フィフティが自分達に相対すると知って、あからさまに嘲笑してくる。

 

「まさか貴方が戦うつもりですか?冗談は口だけにした方がいいですよ。かつてはどうだったかは知りませんが、今の貴方はクロスドライバーを扱えない程までに落ちぶれている。そんななりで我々と勝負になる訳がないでしょう?」

「そうだね。今の私ではクロスドライバーが使えない。だからこうして逢瀬くんをアクロスにした。その歯痒さは私が一番わかっているとも」

 

 フィフティはそう言いながら、何処からか杖を取り出し、その柄で地面をトンと軽く叩く。

 

「だから、往生際悪く足掻かせてもらうよ。それくらいしなきゃ釣り合わない」

 

 

 

 

 

 フィフティのおかげで、なんとかデュエルコートに入ることができた一行は、皆の元へと走っていた。時折壁越しに聞こえてくる轟音が、瞬を容赦なく焦らせる。あれからどうなった。皆はまだ無事なのか。最悪の展開にならないことを祈りながら、瞬は通路を走る。

 一方で、瞬に抱き抱えられているヒビキは、いきなり現れた零児に不信感を抱いているようだった。

 

「いきなり出てきたけど、貴方は一体何者?」

「安心しろ、私は敵ではない。たまたま君達と目的地が同じだったので手を貸しただけだ」

「んなこと言われても信用できないよ……」

「出会って数分の人間を信用しろというのも無理な話だろう。だが疑っている時間はないぞ。急がなければ、死人が出る」

 

 零児の言う通り、事態は一刻を争う。兎に角今は先を急ぐべきだ。他のことはそれから考える。

 タロットオリジオンとの戦いでボコボコになった通路を走り抜け、瞬達は観客席に通じる扉の前にたどり着いた。抱っこ状態から降ろされたヒビキが、ドアノブに手を掛けるが、ドアノブはびくともしなかった。

 

「うそ、開かない!」

「どうやらソリッドビジョンを使って塞いでいるようだ……こうなったら操作室に行き、システムを落とすしか無い」

 

 零児の提案を受け、瞬達はリアルソリッドビジョンの操作室に向かう。あそこからならコートのソリッドビジョンを自由に弄ることが可能だし、コートに通じる扉もある。

 再び廊下を駆け抜けて、操作室に入る。

 

「なっ……」

 

 室内に踏み込んで、瞬は絶句した。

 木製の扉はバキバキに砕かれた状態で床に放置されており、室内はこれでもかというほど荒らされていた。椅子や机は倒れ、壁や床には引っ掻いたような傷や血痕が散見される。確かここでは、湖森と志村がソリッドビジョンの操作をしていたはず。という事は、恐らく2人はここでオリジオンに襲われたのだろう。

 妹が襲われていながら何もできなかった自分に苛立ち、瞬は拳を強く握りしめる。またしても彼女を危険な目に遭わせてしまったのだ。

 

「見て!あれ!」

「……!」

 

 その時、ヒビキが前方を指差しながら叫んだ。瞬ははっとして顔をあげる。前方には、ソリッドビジョンの操作盤と、デュエルコートを確認できるモニターが確認できる。

 モニター越しにコート内の様子を見て、瞬は絶句した。そこには、まるで喧嘩にでも巻き込まれたのかと思うほど、満身創痍で横たわる遊矢と、それを踏みつける対戦相手 —— マサルの姿が。

 

「なんだよこれ……何をどうやったらカードゲームでこんなに傷つくんだよ⁉︎ 」

「これ、カードゲームなんだよね……なんであの人、あんなにボロボロに……」

「アクションデュエルに怪我は付き物だが、これは明らかに度を越している……ダメージ設定を弄っているのか!」

 

 自分の想像するカードゲームとはかけ離れた惨状に驚愕する瞬とヒビキの横で、零児が操作盤を弄りながら毒づく。

 アクションデュエルはその性質上、モンスターの攻撃などによりプレイヤーが怪我を負うこともある。その危険性をなるべく減らすために、小さい子供などのことも考慮して、リアルソリッドビジョンの出力を調整できるようになっている。

 しかし、現在の状態はLV.MAX。普段は使わないレベルにまで引き上げられている。こんな状況でダメージを何度も喰らえば、大事故は避けられないだろう。

 

「っ!封鎖は解除出来たが、ダメージ設定の変更が出来ない!誰かがコートの外から邪魔をしているのか?」

「中に入れるだけでも万々歳だ!行こう!」

 

 零児のおかげで、なんとか中に入ることができた瞬。扉を開け放ち、アクションフィールドの中へと飛び込んでゆく。

 

「皆!無事か⁉︎ 」

「瞬!」

 

 観客席の方から、皆が顔を出して瞬の方を見てくる。ボコられていた志村や湖森の様態が心配だが、とりあえずその他の皆は無事らしい。

 一方、デュエルコートを見下ろした柚子は、瞬の隣に立つ零児を見て、思わず声をあげていた。

 

「赤馬零児……⁉︎ どうしてここに⁉︎ 」

「柚子ちゃん、あの眼鏡の人知り合い?」

「知ってるも何も、デュエル業界の最大手、レオ・コーポレーションの社長!決闘者なら知らない人はいないレベルの有名人だよ⁉︎ 」

「あー、そんなに凄い人だったのかこの人……」

 

 観客席での唯とハルの会話を聞いて、思わず感心してしまう瞬。ちらりと零児のほうを見ると、彼は気恥ずかしそうに咳払いをし、眼鏡のレンズを光らせていた。

 遊矢を踏みつけているマサルは、ギフトメイカーの手を借りて事前に締め出したはずの瞬が戻ってきたことに苛立ちを露わにし、遊矢を踏みつける足に力を込めながら、忌々しそうに瞬を睨みつけてくる。

 

「おいおい、部外者が入ってくんじゃねーよ。今はデュエル中だぜ?」

「んな事言ってる場合かよ……こんなになるまで痛めつけるのがデュエルだと?」

「生半可な考えで割り込んでんじゃねーよ素人(トーシロ)が!それに仮面ライダーが今更来たって遅い!もうすぐ榊遊矢は死んじまうんだからよ!」

 

 マサルは苛立ちながら、気絶している遊矢を強く蹴り飛ばす。頭から砂をかぶりながら、意識のない遊矢の身体は地面を転がってゆく。思わず瞬は遊矢に駆け寄る。

 

「何でこんな事を……」

遊矢(コイツ)が嫌いだからに決まってんだろ。決闘者ならこいつの身勝手さには虫唾が走って当然だろ?憎まれる奴が全部悪いんだよ、なあ?」

「んな訳ないだろ……」

 

 瞬は、反射的にマサルの言葉を否定していた。怒りからなのか恐怖からなのかは分からないが、その声は震えていた。

 

「嫌いだから、邪魔だから消します殺しますって……そんな事やってなんになるんだよ!そんな事繰り返してたら、何もかも無くなってしまう!それでお前はいいのかよ⁉︎ 」

 

 そう。基本的に、()()()()()()()()()()()()。大多数の人間は、嫌いな奴がどうなろうが知ったこっちゃないのだから。誰もが少なからず、こう言った感情は持っているだろう。

 しかし、それを制御せずに思いのままに振るう事は許されない。不快感のままにあらゆるものに攻撃をした末に残るものは無い。他者の介在を許さない自分だけの世界のみ。

 が、瞬の言葉は通じなかった。

 

「嫌いな奴殺せるなら万々歳だよ。俺達は人生半ばで一度死んだ可哀想な身分。だからなんでもしていいんだ。いや、そうでなきゃ釣り合わないんだよ。だから邪魔するな。俺達の幸せを邪魔するな」

 

 きっぱりと、そう言い放つマサルに、瞬は唖然としていた。今言葉を交わしている存在が、本当に自分と同じ人間(いきもの)なのか。本当に同じ言語で話しているのか。まるで得体の知れない化け物と会話しているような気持ちになってくる。

 マサルが何かを喋るために、ドス黒い何かが、瞬の心の中に注がれていくような感じがする。

 

(ああ……どうして)

 

 —— 何故転生者(こいつら)は、こんなにも容易く人間の心を捨てられるんだ?なんでこんなにも、他人を人間として見ずにいられるんだ?

 一誠を執拗に狙ったオリジオンも、鎮守府を襲撃したオリジオン達も、今目の前にいるマサルも。今まで戦ってきた転生者は、どいつもコイツも自分の欲望のままに好き勝手やっていた。そして、それを悪びれる奴は1人もいなかった。

 瞬にはさっぱりわからない。いや、無意識に拒絶しているのだ。何かに対する嫌悪感自体は、誰だって大なり小なり持っている。それを直視するのが怖いのだ。分かってしまえば、自分を嫌いになってしまいそうだから。

 

(コイツらは……駄目だ)

 

 だが、拒絶するには、あまりにも醜いものを見過ぎた。転生者はどうしようもない存在だと、一瞬だけでも思ってしまった。

 一度抱いた嫌悪感は自力では拭えない。そのまま、瞬の心が闇に ——

 

 

 

「瞬……瞬!」

「っ‼︎ 」

 

 強く名前を呼ばれながら身体を揺すられて、瞬は我に帰った。ばっと振り返ると、入り口に放置していた筈のヒビキが、瞬の肩を掴んでいる。

 

「ヒビキ……俺は……」

 

 呆けたような顔のまま、瞬は正面を向く。両手は、気絶している遊矢の身体に添えられている。それを見て、瞬はドキリとした。—— 嫌悪感を武器にしようとしていた自分に。

 ()()()()()()()()()()()()()()。嫌悪を嫌悪で返すな。負の感情の倍々ゲームに足を踏み入れようとするな。そもそもそんな事をしている場合じゃないだろう。そう言い聞かせ、瞬は顔を上げてマサルを見つめる。

 それは嫌悪ではなく、理不尽に対する怒りだった。

 たとえ今日出会ったばかりの人間だとしても、目の前で踏み躙られるのは許せない。ごく普通の正義感を以って、瞬はマサルの前に立ちはだかる。

 

「お前がなんと言おうが、俺はお前の行動を認めないし許さない。お前が何かを嫌うのは勝手だが、それを理由に誰かを傷つけようとするなら、俺は全力でお前を止める!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 果てしない闇の中、何処からか聞こえる咆哮。

 

 

 それは嘆きの唄。

 望まぬ蹂躙を強いられる悲しみと、それから逃れられない苦しみ。

 

(あ……)

 

 潮騒の様に幾度となく繰り返されるその嘆きの声が、闇に沈んでいた遊矢の意識を引きずりあげる。

 身体の感覚が無くなってから、幾ら経ったのだろうか。光源のない闇の中では、目を開けているかすら怪しくなって来る。頼れるのは己が耳のみ。咆哮を繰り返し聞いているうちに、少しずつ、身体の感覚が戻ってきた様な気がしてきた。全身を覆うやけつく様な痛みに顔を顰めながら、遊矢は闇の中を泳ぐ。

 咆哮の主はすぐに見つかった。それは、光なき闇の中であるにも関わらず、はっきりと姿を視認できた。

 

「オッドアイズ・ファントム・ドラゴン……」

 

 本来なら邂逅するはずのない存在。遊矢の知らない、どこか遠くの世界の決闘者のエース。札道マサルというイレギュラーによって持ち込まれた異物。そして、遊矢を焼き払った存在。

 それが、二色の眼で遊矢を見つめている。敵意は感じられない。その目を見て、遊矢は確信した。

 

(勘違いなんかじゃない……コイツは、泣いている)

 

 一度目に気絶した後、目が覚めた遊矢は、嘆くオッドアイズ・ファントム・ドラゴンを見た。あの時は意識が朦朧としていたのもあって、気のせいかと思っていたが、あれは間違いではなかったのだ。

 では、何故泣いているのか。遊矢は既にその答えを知っていた。

 

(多分、コイツは他人を無闇に傷つけたくはないんだ)

 

 それは一種の共感(シンパシー)からだった。遊矢も元来、他人を傷つけるのは好まない性格だ。デュエルを戦いの道具として使うのも好まない。しかし、ある事情からデュエルを戦いの手段に使わざるを得ない状況に追い込まれていった。

 エンタメデュエルと、勝敗が生死に直結する次元戦争下のデュエル。戦いの道具としてのデュエルを繰り返さざるを得ない状況。その板挟みに苦悩し続けた遊矢だからこそ、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの苦しみがよく分かる。

 

「お前もこんな事、続けたくないんだよな。分かるよ、その気持ち」

 

 遊矢は、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの額に手を置く。ファントム・ドラゴンは、黙ってそれに身を委ねる。こうして触れ合うだけでも、その言葉にならない悲痛の叫びがひしひしと伝わって来る様に感じられる。

 だが悲しいかな。その苦悩は自らの主人には通じない。榊遊矢への嫌悪と憎悪に駆られ、遊矢を全否定しようと躍起になっているマサルには、届かない。

 ならば一体どうすべきか。

 それはもう分かっている。

 

「そうだ……観客も、相手も、そしてモンスターも笑顔にするのが、俺の目指すデュエル……エンタメ……」

 

 父親から受け継いだエンタメデュエル。かつて世界を滅ぼしたとある決闘者の信じた理想のデュエル。そして、今自分が目指しているもの。今目の前に、泣いているモンスターがいるならば、それをも笑顔に変えて見せる。それが真のエンタメデュエル。

 答えは決まった。後は覚醒するだけ。遊矢はオッドアイズ・ファントム・ドラゴンに暫しの別れを告げ、闇の中を上へ向かって泳ぎ始める。こういう時は、上に行けば何とかなるのがセオリーなのだ。

 

 

 

 さあ、お楽しみはこれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 視点は現実に切り替わる。

 倒れたまま動かない遊矢と、それを見下ろすマサル。そして両者を固唾を飲んで見守る唯達。

 

「湖森……志村……」

 

 そして、観客席に寝かされた、満身創痍の湖森と志村を、心配そうに見つめる唯。マサル —— オッドアイズ・オリジオンに理不尽にも襲われた2人の意識はまだ戻らない。瞬達が来てくれたはいいものの、状況は変わらない。遊矢は気絶したままだし、怪我人を抱えてこの場から逃げられるかというと、それは無理なものだ。

 ただ、傍観しているだけ。それがなによりももどかしい。友達が傷つけられても、立ち向かうことができない自分に、唯は嫌気がさしてきそうだった。

 その時だった。湖森の瞼が不意に開いたのだ。意識を取り戻した湖森の顔を見て、唯は安堵する。

 

「ゆい……さん?」

「湖森ちゃん!大丈夫なの⁉︎ 」

「ギリ大丈夫……背中とか顔とかめっちゃ痛いけど」

「よかったぁ……ホント無事で良かったあぁ……」

 

 涙ぐみながら、唯は湖森を抱きしめる。

 同時に、隣で取り巻き達と共に気絶していた沢渡も目を覚ましたらしく、観客席の背もたれに背中を預けながら、嫌みたらしく声をかけてくる。

 

「俺を忘れんなよ……一応俺様もボコられた側の人間なんだぜ?」

「その調子なら大丈夫でしょアンタは」

 

 が、柚子が一蹴。沢渡さんは今日も扱いが雑だった。

 一方、潮原提督達は、コート内で倒れたまま動かない遊矢を見下ろしていた。

 

「遊矢くん、目覚めないね」

「あれマズイんじゃねーか?もう封鎖は解かれたんだし、さっさと逃げて病院に担ぎ込まなきゃならねーだろ?」

「確かにマズイし、あのままだとデュエルもタイムアウトで強制敗北よ。でも札道マサルが、素直に私達を逃すと思う?提督も分かってるはずよ」

 

 瑞鶴の言う通り、あの少年が自分達を逃すタマとは考えられない。というか、アレは躊躇や情けなどという言葉が通じないタイプだ。

 マサルが周囲に向ける、あの眼には見覚えがある。他者を自分と同じ生き物として見ていない、背筋が凍てつきそうな眼。先日、鎮守府を襲撃したオリジオン。彼もまた、同じ眼をしていた。

 

(何が起きてんだよ……なんでこうも、人を人と見れない様な奴がウヨウヨいんだよ……)

 

 そんな潮原提督の懸念なぞ知る由もないマサルは、自分に真っ向から歯向かってくる瞬を罵倒し始めた。

 

「先に気分を害されたのは俺だ!ヒーローならさぁ、そんな屑守る価値ないって分かれよ!何原作主人公守ってんだよ、優等生気取りか!」

「んな理屈通るわけないだろ⁉︎ 」

「黙れ邪魔するな消え失せろ!榊遊矢を早く殺させろよ!」

 

 あくまで自分を正当化し続けるマサルだが、そんな理屈は転生者ではない瞬には通じない。というかただでさえ支離滅裂な理屈だというのに、転生者以外には通じないシロモノなのだから当然だ。

 その時。

 

「まだ、だ」

「⁉︎ 」

 

 下から声がした。

 瞬が頭を下げると、気絶していた遊矢が、目を覚ましていた。

 

「チッ、しぶといな。腐っても主人公補正は健在かよ」

 

 マサルは息を吹き返した遊矢を見て、忌々しそうに舌打ちをするが、誰も耳を貸すことは無かった。

 零児も遊矢の元に駆け寄り、声をかける。

 

「榊遊矢。その怪我でアクションデュエルは無理があるだろう。それでもやるというのか?」

「零児、心配しなくてもいいさ。コイツだけは、俺がなんとかしなきゃ駄目なんだ。この憎しみは俺一人で受け止めなきゃいけない。それを他の人に負わせることはできない。それに、こんなところで膝をついちゃエンタメデュエリストの名折れだ!デュエルはまだ終わってない!まだ笑顔になっていない人がいるなら、俺のエンタメで笑顔にしてみせる!それが対戦相手や、モンスターであっても!」

 

 側から見れば空元気に映るだろう。マサルからすれば噴飯物だろう。しかし、遊矢は本気だった。

 遊矢は、まっすぐにオッドアイズ・ファントム・ドラゴンを見つめる。目の前の、望まぬ戦いを強いられる竜をも笑顔にしてみせると、そう決意を固めていた。

 瞬は、傷だらけになりながらも立ち上がる遊矢を心配し、声をかける。

 

「お前、いけるのか?」

「二人とも、心配してくれてありがとう。だけど、これは初めから俺がやらなきゃいけないことだ。だから、せめて最後まで見ていてくれないか?まだ皆にデュエルの楽しさ、見せきってないし」

 

 きっぱりとそう返し、瞬の肩を借りながら立ち上がる遊矢。その眼には、確かに闘志が宿っていた。ちょっとやそっとじゃびくともしない、固い決意。それを確かに、瞬は感じ取っていた。

 ならば、瞬から言えることは何もない。決断した後の人間に、外野が出来ることはないものだし、そもそもこれははじめから遊矢とマサルの戦いだ。そこにアクロスという異物が介在する余地は無いのだ。だから、瞬は背中を押す。

 

「じゃあ見せてくれ、お前のエンタメデュエルを!」

「分かった!」

 

 遊矢は瞬の肩から手を離し、自分の足で立ち上がる。気を抜けば崩れ落ちそうになるが、ここまで啖呵を切ったからにはそうはいかない。最後まで舞台に立ち続けてみせる。

 瞬達が観客席に移動し終えたのを確認すると、遊矢は微かに笑みを浮かべながら、デッキトップに指をかける。

 

「お楽しみは……これからだ!」

遊矢:手札2→3

 

 そして、なけなしの力を振り絞り、遊矢はカードをドローする。

 

「魔法発動!“スケールアウト・ドロー”!自分のフィールドに存在するカードが、スケール3以下のPモンスター1体のみの場合、そのモンスターををリリースすることで、リリースしたPモンスターのスケールの数だけデッキからカードをドローする!俺はスケール2の“EMペンデュラム・マジシャン”をリリースし、2枚ドロー!」

 

 手札を補充しながら、アクションカードを求め、遊矢はフィールドを駆ける。しかし、先程のダメージが堪えているのか、その足取りはかなり重い。

 

「行かせるかぁ!」

 

 しかし、マサルがそんな行為を許すはずもなく、遊矢の背中に、マサルの飛び蹴りが炸裂し、遊矢は顔面から石畳の地面に向かってはっ倒される。ここまでくると、最早ゲームの体裁をかなぐり捨てた暴力だ。

 だが遊矢は止まらない。鼻血を出しながら、遊矢は立ち上がって大地を駆ける。砂浜の端に鎮座する、一戸建て住宅程の大きさはありそうな巨大な巻貝の殻。その中に、アクションカードが確認できた。それを見ると、遊矢はまっしぐらにそれを目掛けて走る。

 

「やれ!あのカスにアクションカードを取らせるな!」

「くっ……そぉ!」

 

 マサルの命令を受けて、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンが、哀しげに鳴きながら尻尾を振りかざしてくる。遊矢は傷だらけの身体に鞭打ち、無理やり前方に飛び込んで尻尾を躱し、アクションカードを掴み取る。

 

「アクション魔法、“アクション・エナジー”発動!自分墓地のアクション魔法の数×500LPを回復する!」

遊矢:100LP→1100LP

 

 遊矢の墓地には使用済みのアクション魔法が2枚。よって遊矢は500×2=1000LPを回復する。ギリギリの状態だった先程までと比べると、わずからながら余裕が出てきた。これが絶望の先送りか、希望の兆し、どちらに転ぶかはこれからの展開次第だろう。

 遊矢はマサルを真っ直ぐ見据えると、手札から新たに2枚のカードを選択し、Pゾーンに発動する。

 

「俺はスケール8の“竜穴の魔術師”と、スケール1の“龍脈の魔術師”で、Pスケールをセッティング!これでレベル2~7のモンスターが同時に召喚可能!今一度揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!EXデッキから舞い戻れ、“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”、“EMドラミング・コング”、“EMパートナーガ”、“EMペンデュラム・マジシャン”!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK2500

EMドラミング・コング:DFE900

EMパートナ-ガ:DFE2100

EMペンデュラム・マジシャン:DFE800

 

 破壊されたモンスター達が、一斉にフィールドに舞い戻ってくる。これがペンデュラム召喚の脅威でもあり、強みでもある。

 召喚されたオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが、遊矢に「乗れ」と言うかのように、その頭を下げる。遊矢は、重い身体をなんとか動かし、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの背中にもたれかかる様に跨る。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動!“竜穴の魔術師”と“龍脈の魔術師”を破壊し、“EMセカンドンキー”、“EM小判竜”を手札に!同時にパートナーガの効果発動!パートナーガが召喚・特殊召喚に成功した時、自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を。自分フィールドの“EM”の数×300アップさせる!俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを選択!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK2500→3400

 

 Pゾーンの魔術師が消え、入れ替わりに、遊矢の手札に2体のEMが舞い込んでくる。しかし、遊矢はそれらのモンスターを召喚はせずに、バトルフェイズ突入を宣言する。

 

「リベンジだ!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンを攻撃!螺旋のストライクバースト!」

 

 遊矢の攻撃命令に合わせ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが光線を放つ。

 

「この時、EMドラミング・コングのモンスター効果発動!1ターンに1度、自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時、その自分のモンスター1体の攻撃力をバトルフェイズ終了時まで600アップさせる!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK3400→4000

 

 パートナーガの隣にいた、ゴリラのようなモンスターが、自身の胸を激しく叩く。すると、ドラミング・コングの身体からオーラのようなものが放出され、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンへと注ぎ込まれてゆく。

 攻撃力の差は1500。だがこれだけではない。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンにはまだ効果があるのだから。

 

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンがレベル5以上のモンスターとバトルするとき、戦闘ダメージを2倍にする!リアクションフォース!」

「無駄だ!オッドアイズ・レムナント・ドラゴンの効果発動!フィールド上のこのカードを除外することで、デュエル中に1度だけ、戦闘ダメージを半分にする!」

マサル:4000LP→2500LP

 

 攻撃が直撃する直前、フィールドにいたオッドアイズ・レムナント・ドラゴンがオッドアイズ・ファントム・ドラゴンの前に割って入り、その攻撃を身を挺して受け止め、爆散する。

 2倍からの半減で差し引きゼロ。だがダメージは通る。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃により、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンは爆散し、マサルにもダメージが与えられる。爆煙と砂煙で互いの姿が隠れ、視認が困難となる。

 

「やったか⁉ 」

「それで済めばいいけどね……」

 

 それを見た潮原提督は思わずガッツポーズをきめるが、対して初月は浮かない表情を見せている。

 

「ようやく反撃できたんだから、喜ぶべきでしょ」

「これはちょっと……いや駄目だ。明らかにマズイ」

「何がマズイの?」

「いやいや、よく考えてみなよ。見下してる奴に急に反撃されて平気でいられる人間が、この世にいると思うかい?」

 

 ネプテューヌの発言に、初月だけでなく、フィフティも浮かない表情で答える。遊矢の身を案じるような、はたまたマサルに呆れているかのような態度を見せる。

 マサルへのダメージ。フィフティ達の言う通り、それは虎の尾を踏み抜くに等しい行為であった。

 砂煙が晴れ、傷ついたマサルの姿が(あらわ)となる。

 

「やりやがったなテメエ……榊遊矢の分際でえええええええええええええええ!!許さねえ……殺してやる!このデュエルで息の根を止めてやる!」

 

 傷だらけになったマサルは、自らの喉を潰す勢いで遊矢を罵倒してきた。常軌を逸した、理解を拒みたくなる程の激しい怒りの声がぶちまけられる。

 見下している相手に傷を負わされたことで、マサルの怒りはあっさりと限界点を超えた。元来人間は、下に見ている存在に痛手を負わせられたら怒り散らすのが普通。特に沸点の低いマサルがこうなるのは必然だった。

 怒りのままに、マサルは反撃の一手を進める。

 

「オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンのP効果発動!“オッドアイズ”モンスターが破壊された場合、手札・デッキ・墓地から“オッドアイズ”モンスター1体を特殊召喚する!俺はデッキから二体目のアークペンデュラム・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 まさかの2体目のアークペンデュラム・ドラゴンの出現に、皆は驚愕する。

 

「1枚カードを伏せてターンエンド。この時、ドラミング・コングの効果が終了し、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力も元に戻る」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK4000→3400

 

 バトルが終わったことでEMドラミング・コングのP効果が切れて攻撃力が下がるが、パートナーガのモンスター効果は永続効果である為、オッドアイズの攻撃力は3400のままだ。

 

(ファントム・ドラゴン……)

 

 ターン終了の宣言をしながら、遊矢は、マサルのフィールドのオッドアイズ・ファントム・ドラゴンについて思考を巡らせていた。

 闇の中でオッドアイズ・ファントム・ドラゴンと対話をした時から、このデュエルは、ただマサルに勝てばいいというわけではなくなった。例えこのまま勝ったとしても、全員を笑顔にできていないのならば、エンタメデュエリストとしては負けたも同然。

 今フィールドにセットしたカード。これを発動できれば望みはある。しかしその前に、マサルに問わねばならないことがある。

 

「なあマサル」

「なんだ、サレンダーする気になったか?」

「お前には聞こえないのか?ドラゴン達の悲痛の叫びが」

 

 オッドアイズ・ファントム・ドラゴンについて聞くならば、今しかないだろう。そう思い、遊矢は質問した。馬鹿にした様に勝ち誇るマサルだったが、予想だにしなかった内容の遊矢の問いかけに、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。

 

「は?お前何言ってんの?お前そういうキャラじゃねーだろ、おい」

「俺にはずっと聴こえている。オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの嘆きが。お前の、他のドラゴン達もそうだよ」

「何が言いてえんだよ」

「きっとファントム・ドラゴンはこんな戦い方を望んでいないんだよ……人を傷つける様なデュエルを嫌がってるんだよ。さっきからしきりに、悲しそうにないてるだろ?」

 

 一方、観客席では、いきなり変なことを言いだした遊矢を心配する声が上がり始めていた。

 

「遊矢のやつ……いきなりスピリチュアルな事言い出したけど大丈夫か?打ちどころ悪かったんじゃ……」

「いや……分かるよ」

 

 頭でも打って可笑しくなったんじゃないのかと心配するアラタだったが、まさかの唯が遊矢に同意し始めたのでドン引きしてしまう。

 

「遊矢の言う通り、あのドラゴン達は人を傷つける事を嫌がってるんだ。だけど、カードは持ち主には逆らえないから、苦しんでいる。勘だけどね」

「勘、かぁ」

「案外馬鹿にできないかもよ?古来からデュエルとオカルトは密接なものとされているからね。モンスターが決闘者に不満を抱く可能性もゼロじゃない」

 

 初月の言葉に、アラタはきまりが悪そうに唸るしかなかった。そりゃあホビーアニメとかだとその類の話は良くあるが、それが実際にあるとはアラタには考えにくい。決闘者ではないアラタにはその真実を知る術がないのだから仕方ない。

 皆が話し合っている間に、遊矢は、自分が闇の中での対話を通して知った事をマサルに語り終えた。だが悲しいかな。マサルに遊矢の言葉は届かなかった。そもそも嫌いな奴の言葉を素直に聞けるほど、できた人間はそうそういないのだから当然だろう。

 

「カードとの絆だの決闘者としての誇りだの、テメーにだけは言われたくねーんだよクズ!アクションカードに頼らないと勝てない雑魚の癖してよぉ、一丁前の決闘者面すんな不快なんだよ!だからとっとと負けてくたばっちまえ!」

マサル:手札0枚→1枚

 

 捲し立てるように遊矢を罵倒すると、マサルはデッキからカードをドローする。

 その時、遊矢は掠れる様な声である疑問を投げかける。

 

「……どうしてなんだ?」

「あ?」

「俺をそんなに憎み嫌う理由はなんなんだ?はっきりと言ってくれ!でないと……納得できない」

「お前を見てるとムシャクシャして仕方がないんだ。笑顔になる事ばかりを押しつけて、デュエルを疎かにする!他人の気持ちも考えない人でなし!その態度が気に入らねーんだよ!」

「……」

 

 マサルの発言は、遊矢の掲げるエンタメデュエルを完全に否定するものだった。お前がやっているのはエンタメでもデュエルでもなんでもない。それに怒っているのだと。

 確かに、遊矢はエンターテイナーとしてはまだまだ未熟。それは重々承知の上だし、だからこそ日々更なるエンタメを目指している。マサルの言い分にも、正しい部分もあるのかもしれない。しかし、だ。それでも許せないことがある。

 

「だけど」

「?」

「お前のやってることは間違ってる。俺が悪いなら、俺が憎いなら、俺だけにそれをぶつけろ!関係ない人を巻き込むな!」

 

 沢渡、志村、湖森。たまたまこの場にいたという理由だけで、マサルに傷つけられた人達。マサルが語った内容の中に、彼らが傷つけられる理由など無いというのに。ただ遊矢が憎いならば、その憎しみは遊矢に対してのみぶつけられるべきなのだ。否定されることなら慣れているから。

 だが、マサルは違う。関係ない人を巻き込み過ぎた。遊矢はそれが何より許せないのだ。

 

「関係なくねえよ。お前みたいなクズを持ち上げてるんだから同罪だ」

「っ……」

 

 だがその反論は一蹴された。マサルは本気でそう言っているのだ。坊主が憎けりゃ袈裟まで憎いとはよく言うが、そんな理由で大量殺人を引き起こそうというのだから、もうどうしようもなかった。取り付く島もない。

 マサルは遊矢をより一層強く睨みつけると、高らかに笑い声を上げながら、ペンデュラム召喚を行う。

 

「お喋りは終わりだ。俺はセッティング済のPスケールを使い、ペンデュラム召喚!EXデッキから出でよ!“オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン”、“オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン”、“オッドアイズ・ファントム・ドラゴン”!」

オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン:ATK2800

オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン:ATK1200

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン:ATK1200

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン:ATK2500

 

 ペンデュラム召喚により、5体のオッドアイズがマサルのフィールドに集結する。その様は、敵ながら圧巻と言わざるを得ないだろう。ステータスの低いペルソナ・ドラゴンやミラージュ・ドラゴンも含め全て攻撃表示なのを見るに、どうやらこのターンでカタを付ける気マンマンのようだ。

 

「さあ死に損ないのクソトマト野郎!俺が引導を渡してやる!カードを1枚伏せてバトル!」

 

 下される死刑宣告。遊矢が負ければ、マサルはこの場にいる全員を殺しにかかる。それだけは避けなければならない。負けるわけにはいかない。

 力の限りを振り絞って、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンかな跨った遊矢は、再びフィールドを駆け回り始める。

 

(あのカードを使うには、今のままじゃ駄目だ……だが俺の今の盤面ではどうしようもない。ならば、アクションカードにかける方無い!)

 

 微かにだが、勝ち筋は見え始めている。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンは、遊矢を背中に乗せた状態で思い切り地を蹴り、大きく跳び上がる。遊矢はそれに合わせて手を伸ばし、宙に浮く形で設置されていたアクションカードをゲットする。

 入手したアクションカードを確認して、遊矢は確信した。これで条件は整った。後は発動を邪魔されなければいけるはずだ。

 

「アクション魔法、“アクション・エナジー”!墓地のアクション魔法の数×500LP回復する!」

遊矢:1100LP→2600LP

 

「ライフを増やしたところでもう遅いんだよ雑魚が!速攻魔法“星遺物を巡る戦い”を発動!オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンをエンドフェイズまで除外し、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力を除外したモンスターの攻撃力分ダウンさせる!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK3400→900

 

 せっかく強化されたオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンも、これでは返り討ちに遭ってしまう。それに、この攻撃を受ければ遊矢は負ける上、出力の上がったリアルソリッドビジョンにより、最悪命に関わる事態になりかねない。

 

「罠カード発動!“好敵手(とも)の記憶”!相手の攻撃モンスターを除外し、その攻撃力分のダメージを俺は受ける!」

「なっ、そのカードは⁉︎ 」

遊矢:2600LP→100LP

 

 攻撃を受ける直前で、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの目前で、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンがかき消えてしまった。

 どうやら、先程からちまちまとLPを回復していたのはこの為のようだ。しかし、せっかく増えたLPも、再び風前の灯に。その上、マサルの場にはまだモンスターが残っている。攻撃力の下がったオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが攻撃されれば、今度こそ遊矢のLPは尽きる。

 

「はぁ!どの道お前は死ぬんだよ!行け、オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを粉砕しろぉ!」

 

 マサルは遊矢を鼻で笑いながら、トドメを刺そうとする。が。

 

「アクション魔法“ディフェンス・シフト”!自分フィールドのモンスター1体を守備表示にする!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンATK900→DFE2000

 

 咄嗟にアクションカードを発動することで戦闘ダメージは防いだものの、先程まで跨っていたオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの破壊に伴う衝撃によって、遊矢の身体は宙を舞い、頭から波打ち際へと落下する。

 

「うわああああああああああっ‼︎ 」

「奴の場のモンスターはすべて守備表示……これではダメージは与えられない!糞が!奴のライフは風前の灯火だってのによお!お前ら、この目障りな雑技団共を一掃しろ!」

 

 またしても仕留め損なったことに苛立ち、マサルは自分のモンスターに当たり散らす。

 マサルのモンスター達が、残った遊矢の場のモンスターを蹴散らしていく。そうして後には、がら空きになった遊矢のモンスターゾーンが残された。しかし、マサルのモンスターはすでに攻撃し終えている。わずかなライフを残し、生き延びた遊矢の姿に、マサルは吐き気を催す。

 

「エンドフェイズに、“好敵手の記憶”によって除外されたオッドアイズ・ファントム・ドラゴンは俺の場に特殊召喚される」

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン:ATK2500

 

「奴のドラゴンが……遊矢の場に!」

「あのドラゴン……なんかさっきより生き生きとしてない?」

「いやいや、あれはソリッドビジョンだぞ。んな訳ないって……」

 

 唯の発言を、反射的に否定したアラタだったが、言われてみれば確かに、遊矢の場に現れたオッドアイズ・ファントム・ドラゴンは、マサルに使われていた先程までと比べると、どこか活力にみちたような佇まいになっている……ようにも見える。それに、あれほどしきりに聞こえていた、嘆き悲しむ様な咆哮が、ぴたりと止んでいるのだ。

 

「デュエルモンスターズのカードには、精霊が宿るという都市伝説がある。もしかすると、あのドラゴンもそうであるのかもしれないな」

「カードの精霊、ねぇ……」

 

 零児の言葉に、半信半疑になる瞬。ただ、仮に、彼の言うことが正しいとするならば、あのドラゴンは嫌がっていたのかもしれない。憎しみをぶつける道具として使われることに。

 

「返しやがれ!俺のカードだぞ!」

 

 マサルは当然のように怒り狂う。自分のカードを他人に使われるコントロール奪取系のカードは、使われた側はあまり気分が良いものでは無いのが普通である。しかし、マサルの場合は、誰よりも嫌う相手である遊矢に使われたことに、最大の恥辱を感じさせられていた。

 顔を真っ赤にしながら遊矢の方に駆け寄ってくるマサルだったが、その時、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンが、マサルに向かって思い切り吠えかかってきた。

 ビリビリと肌を焦すような衝撃が、フィールド中に広がってゆく。マサルは思わずビビって足を止めるが、即座に我に返り、怒りの声を漏らす。

 

「なんだよ……持ち主は俺だ!お前は榊遊矢を殺すための存在だ!そのために俺はこのデッキを転生特典に選んだんだぞ!それなのに、テメェは裏切るのかよ⁉︎ 榊遊矢に与するのかよ⁉︎ 」

「GUUUUUUUUUUUUUUU……!」

「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ‼︎ 」

 

「お前らまで……ふざけるな!お前らは俺のモンスター達だ!

 

「俺のターン!」

遊矢:手札3枚→4枚

 

 

「俺はスケール8の“黒牙の魔術師”とスケール3の“EMゴールド・ファング”をPゾーンにセッティング!」

 

 ガラ空きになったPゾーンに、新たに黒衣を纏った魔術師と、金色の毛の狼が浮かび上がってゆく。

 

「これでレベル4~7のモンスターが同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!三度現れよ、“オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”!そして手札から、”EM小判竜(ドラゴリモーラ)”、“EMセカンドンキー”!」

EM小判竜:ATK1700

EMセカンドンキー:ATK1000

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK2500→3000

 

「小判竜が場に存在する限り、小判竜以外の俺の場のドラゴン族モンスターは攻撃力が500アップし、効果で破壊されない。そして、俺のPゾーンにカードが2枚存在し、セカンドンキーの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから“EM”モンスター1体を手札に加えることができる!俺は“EMライフ・ソードマン”を手札に加え、通常召喚!」

EMライフ・ソードマン:ATK0

 

「そして、ライフ・ソードマンをリリースして効果発動!自分フィールドのモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで100アップする!」

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン:ATK2500→3000→4000

 

 小柄な剣士が現れたかと思えば瞬く間に退場し、それと引き換えに、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの攻撃力を大幅に引き上げる。

 

「黒牙の魔術師のP効果!相手モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで半分にし、このカードを破壊する!」

オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン:ATK3000→1500

 

 Pゾーンの黒牙の魔術師がその手に持った杖を振るうと、オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンに向かって電撃の様なものが飛んでゆき、その攻撃力をダウンさせる。それと引き換えに、黒牙の魔術師はフィールドから消えていく。

 

「“魔術師”PモンスターがPゾーンを離れたことで“星霜のペンデュラムグラフ”の効果が発動し、デッキから“魔術師”Pモンスター1体を手札に加えることができる!俺はスケール8の“調弦の魔術師”を手札に加え、セッティング済みのゴールドファングと合わせてPスケールをセッティング!」

 

 新たにPゾーンに上がったモンスターには、瞬は見覚えがある。沢渡とのデュエルで召喚されたモンスターだったか。ただし、既にペンデュラム召喚をした後である為、いくらスケールを揃えても、このターンはもうペンデュラム召喚はできない。

 

「調弦の魔術師がPゾーンに存在する場合、俺の場のモンスターの攻撃力は、EXデッキに表側表示で存在する“魔術師”Pモンスターの種類×100アップする。俺のEXデッキに魔術師は5種類。よって500アップ!」

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン;ATK4000→4500

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK3000→3500

EMセカンドンキー;ATK1000→1500

EM小判竜:ATK1700→2200

 

 遊矢のEXデッキには、龍穴の魔術師、龍脈の魔術師、黒牙の魔術師、星読みの魔術師、時読みの魔術師の、計5体の魔術師Pモンスターが存在する。遊矢の頭上に、フィールドから離れていった魔術師達の幻影が現れ、地上にいる遊矢のモンスター達に手をかざし、力を与える。

 盤面は揃った。いよいよ反撃の時だ。

 

「バトル!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで、オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンを攻撃!螺旋のストライクバースト!」

「と、罠カード“体力増強剤スーパーZ”を発動!自分が2000以上の戦闘ダメージを受ける際、ライフを4000回復する!」

 

 苦し紛れの罠カードで、ライフ回復を図るマサル。しかし、ダメージを無効にするわけでは無いので、戦闘ダメージは受けてしまう。それも、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果で、2倍の。

 

「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!! 」

マサル:2500LP→6500LP→2000LP

 

 回復分込みで500LPの損失。しかし、40000の戦闘ダメージは馬鹿にならならない。その上、現在はリアルソリッドビジョンの出力を、人を容易く負傷させるレベルにまで上げている。遊矢を心身ともに甚振るための仕掛けが、ここにきて牙を剥いてきた。

 全身の肉を削がれ、骨を砕かれるような衝撃が、マサルに襲い掛かる。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの、怒りの一発をモロに受けたマサルは、エースピッチャーが投げた豪速球のように飛んでゆき、コートの壁に叩きつけられる。

 

「ふざけんな……ふざけんなよ!貴様ごときが俺にこんな傷負わせてよぉ……!」

「EM小判竜で、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンを攻撃!」

「オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンの効果!Pゾーンにオッドアイズが存在する場合、1ターンに1度、オッドアイズ1体の破壊を無効にする!」

マサル;2000LP→1000LP

 

 調弦の魔術師のP効果で強化された小判竜の噛みつき攻撃を、オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンは、自身の効果で耐え切る。戦闘ダメージは受けるが、破壊は免れた。

 一見意味がないようにも思えるが、マサルはゴールドファングのP効果を警戒したのだ。EMゴールドファングには、1ターンに1度、EMが相手モンスター1体を戦闘破壊した際に1000ダメージを与える効果がある。なので、ここでミラージュ・ドラゴンの効果を使わなければマサルは負けていたのだ。

 —— 最も、それをしたところでどの道彼は敗北するのであるが。

 遊矢の場には、先程コントロールを奪われた、マサルのオッドアイズ・ファントム・ドラゴンが居る。ファントム・ドラゴンの攻撃を受ければ、マサルは負ける。

 

「こんなやつに……こんなクソ野郎に!俺が!負けるはずが無いんだああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 散々見下してきた榊遊矢(げんさくしゅじんこう)に、自分のモンスターでとどめを刺される。そんな、あまりにも屈辱的な現実を受け入れられず、マサルは発狂した。しかし、いくら発狂したところで、現実は変わらない。アクションカードを取ればまだ可能性はあったのだろうが、アクションデュエルを嫌悪する彼には、そんな行為を許せるはずもなく ——

 目の前に、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンが迫る。最後まで相手を侮辱し続け、望まぬ蹂躙に加担させられ、終ぞ決闘者としての魂を持ち合わせることの無かった主人に、裁きの牙を剥く。

 

「オッドアイズ・ファントム・ドラゴンで、オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンを攻撃!夢幻のスパイラルフレイム!」

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!! 」

マサル:1000LP→0LP(LOSE)

 

 マサルは、喉を潰すような悲鳴を上げながら、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンが放った光線に、真正面から呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、外。

 転生者狩りと交戦しているバルジ以外の3人を相手に、時間稼ぎに名乗り出たフィフティ。彼はなんやかんやで追い詰められていた。

 それはもう、完全にだ。なんせ彼には戦う術がないのだ。どちらかというと彼はサポート役。攻撃的なスキルといった類のものは持ち合わせてはいない。例えバフが使えても、元の肉体が貧弱なのでは効果も薄い。言うなれば、攻撃魔法が使えない魔道士が最前線にほっぽり出されているようなもの。ゲームで言えば無理ゲーの類だ。

 だが、彼はしぶとかった。彼の役目はあくまでも時間稼ぎ。勝つ必要は無いのだから。そして、レイラ、タロット、ガングニールの3人に追い詰められ、殺される寸前になっても尚、その態度は飄々としたものであった。

 

「いい加減くたばってくれないか、亡霊風情が」

「うーん、3対1でリンチしてる奴が言う台詞じゃないでしょそれ。弱く見えるぞ?」

「弱いのは貴方です。身の程を知りなさい。減らず口を叩くのをやめなさい」

 

 サブマシンガンと剣を突きつけられながらも、軽口を叩くフィフティに、レイラは苛つく。この男とは致命的に合わない。そう確信していた。

 フィフティはこの期に及んでもなお、口を閉じなかった。盛んにギフトメイカー達を挑発する。

 

「やだね。私は弁舌には自信があってね、怒らせた人間は数知れずなのさ。ほーら、私と無駄話をたくさんして時間を潰そう。殺し合うより話s

「やれ、ガングニール!奴の頭を潰せ!」

「グラァッ!」

 

 

 ぐしゃっ。

 

 

 次の瞬間。

 あっさりと、フィフティの頭が縦に潰れた。

 

 

 フィフティの背後に立っていた、ガングニールオリジオンの一撃だった。まるで蚊を殺すかの様に、フィフティの頭部はガングニールオリジオンの両の掌で叩き潰されていた。水風船を割ったかの様に、潰れたフィフティの頭から、血と潰れた脳組織が周囲に飛散する。軍服を返り血で汚したレイラは、間髪入れず、頭が潰れたフィフティの胸に、持っていたサーベルを突き刺した。完全なるオーバーキルだが、どうやら彼女も、短い間ながらもフィフティの言動に苛ついてたらしい。

 どちゃり、と地面に血肉をぶちまけて倒れる、フィフティの首無し死体。本能のままさらにぐちゃぐちゃにしてやろうと試みるガングニールを、タロットが制止する。

 

「ステイ、これ以上やっても無駄です。良くやりましたね貴方」

「呆気ない最後だったな、ったく」

 

 用は済んだとばかりに、死体を放置して立ち去ろうとするレイラ達。アクロスのアドバイザーは始末した。後はどうとでもなる。

 そこに。

 

 

「生存確認を怠る事勿れ。これ戦場の常識だよ?」

 

 

「⁉︎ 」

 

 もう聞こえるはずのない声に、レイラはマシンガンを構えながらばっと振り向く。

 そこには、先程頭を潰されて死んだはずのフィフティが、生きた状態で存在していた。身体は血塗れで、首筋からは尚も赤い血が流れている。これには流石にギフトメイカー達も驚きを隠せなかったようで、レイラは呼吸を荒げているし、タロットも目を丸くしている。

 フィフティは、彼らが何故驚いているのかが全く理解できない、といったようにとぼけたような顔をしており、足元に落ちていた、飛散した自分の脳組織を踏みつけ、呆れた様に言う。

 

「おいおい、驚く事じゃないだろう?だって君達、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「いや、だって……それはティーダやバルジが」

「ああそうか、君達はこれを知らなかったか。彼らが私をそう呼んでいたから、何も知らずに、考えずに私を死に損ないと呼んでいたのか。これはね、ちょっとした呪いだよ。不老不死のね」

 

 不老不死。これが本当とするならば、フィフティを始末することはまず不可能になった。なんせ死なないのだから。ならば異空間等に放逐して閉じ込めてやろうかと思ったが、生憎今すぐ実行できそうにない。

 これは予想外だった、とタロットは重要事項を開示しなかった上司(バルジ)を心の中で責め立てながら、すぐさま撤退に走る。しかし、レイラは違った。

 

「なら絶え間なく身体を吹き飛ばしてやれば済むだろう。怯える必要は皆無だ」

 

 なんという力押し。再生するならば、それが追いつかない速度で殺せばいい。レイラは両手に持った2丁のサブマシンガンの引き金を、躊躇いなく引いた。

 直後、耳を引き裂く様な銃撃音と硝煙が、瞬く間に周囲一帯を覆い尽くした。銃撃音に紛れ、びちゃりという、人間の血が辺りに散らばる音も聞こえてくる。その躊躇いのなさとレイラのゴリ押しっぷりに、退散しようとしていたタロットは、思わず頭を抱えてしまう。

 僅か十数秒で弾を撃ち尽くしたサブマシンガンを投げ捨て、レイラは硝煙の向こう側を真っ直ぐと見つめる。

 銃撃音と硝煙が辺りから消え、現れたもの。それは。

 

「酷いなぁ、服は再生しないんだ。これ一張羅なんだけど、弁償とかしてくれんの?」

 

 先程と同じく、ピンピンしているフィフティだった。ただし、服は銃撃によってズダボロになっており、半裸の状態になっていた。フィフティは、ボロボロになった上着を脱いでレイラに向かって投げ捨て、上半身は完全に裸になる。

 

「というか、スピードは関係ないんだよね。私はどうあっても死ねないから、君のプランは結実しないよ。言ったじゃ無いか、私は不死身だと」

「化け物め……」

「それ、君達が言う?」

 

 化け物をけしかけている側に化け物呼ばわりされたフィフティは、不機嫌そうにわざとらしいため息をつくと、レイラに背を向け、瞬達のいるデュエルコートに向かって歩き出す。

 そして、思い出したかの様に足を止め、一言。

 

「ああそうそう。この呪い、もう一つ効果があってねぇ……」

 

 フィフティがいい終わる直前、地面に伸びていたフィフティの影から、突如として無数のトゲの様なモノが飛び出し、タロット達を貫いた。

 余りにも突然の出来事に反応が遅れ、3人はなす術なく串刺しにされてしまう。複数のクラッカーを同時に鳴らしたかの様に、一斉に鮮血が舞い上がる。血の雨を浴びながら、フィフティは虫の息のレイラに種明かしをする。

 

「私が致命傷を負ったら、その時私が受けたダメージが、周囲に拡散しちゃうんだよね。一種のカウンター攻撃って奴さ」

「聞いてないぞ……」

「そりゃあ聞かされる訳無いじゃん。君達はティーダの捨て駒なんだからさ」

 

 きっぱりと、そう断言するフィフティ。

 

「じゃあね」

 

 ギフトメイカーの生死などどうでもいいのか、フィフティはそのまま別れの挨拶を告げると、ボロボロの服に返り血のボディペイントという、明らかにヤバい格好で瞬達の元へと歩いて行ってしまった。遠くなってゆくフィフティの背中を見届けるレイラの腕が、だらりと垂れ下がる。

 瞬間、串刺しにされていたタロット、レイラ、ガングニールの身体がぐにゃりと崩れ、血溜まりと共に地面に溶け込む様にして消えてしまった。

 そして、何もなかったはずの空間から、死んだはずのレイラ、タロット、ガングニールの3人が姿を現す。タロットの能力で、直前で幻影とすり替わったのだ。

 

法皇(Hierophant)……彼に錯誤をもたらしましょう」

「ほんと便利だなお前の能力は。しかし、法皇から幻覚能力はおかしいだろう」

「こじつけですよ。能力バトルというのは、自分のルールを如何にして世界に押し通すかの戦い。拡大解釈や捏造くらい、誰だってやってますよ」

「……ともかく、完敗だな」

 

 能力バトル論を語り出したタロットを軽くいなし、レイラは空を見上げた。

 タロットは瞬に対して、アクロスなんて自分達の敵と見なすレベルではないと言ったのだが、どうやらそれは向こう側 —— フィフティも同じだったらしい。お前達なんてさしたる障害じゃ無い。こうして自分達が生き延びていること自体が、フィフティに嘗められているということを暗に示していた。

 それが腹立たしかった。始末する価値もない、戦う価値はないと判断された、ぞんざいに扱われた怒りが、レイラの拳を震わせていた。

 

「覚えていろ……アクロス……フィフティ!」

 

 少女ね静かな怒りが、血の匂いが漂う昼下がりの公園に残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《WINNER YUYA》

 

 デュエル終了を告げるブザーが鳴り響き、今度こそ、ソリッドビジョンが解除されてゆく。無機質なコートが姿を現し、マサルは、その中央で膝をついて項垂れる様な体勢になっていた。

 

「もう、こんな事はやめないか」

 

 遊矢は、マサルに声をかける。誰かを傷つけるためのデュエルは、続けても誰の為にもなりはしない。ひとりぼっちになるだけだ。ならばそれをやめた方がよっぽどいい。そう思って、遊矢は声をかけた。

 が。

 その思いは最も容易く踏み躙られる。

 

「煩え卑怯者がぁ!」

「があっ⁉︎」

 

 歩み寄って来た遊矢を、マサルは敵意剥き出しの叫び声をあげながら殴り飛ばした。腹を抉られるような痛みに襲われながら、遊矢は地面に背中から倒れる。

 マサルはそのまま倒れた遊矢の胸を足で踏みつける。肺から空気が絞り出されるような衝撃が遊矢を襲う。マサルは、何度も足で遊矢の胸を踏みつけたり、反対の足で蹴飛ばしたりする。突然のことに理解が追いつかず困惑する遊矢に、マサルは罵倒しながら暴力を振るいつづける。

 

「調子こいてんじゃねーよクソが!次元戦争を経てすらこれっぽっちも成長しないクズにヨォ!お前如きが俺を見下すな!雑魚の癖に俺をそんな目で見るなぁ!くたばれ!」

「何やってんだ……お前、何やってんだよ⁉︎」

 

 この期に及んでまだ暴力に走るマサルを止める為、瞬は観客席を飛び出した。やめろ、こんなの決闘じゃない。ただの虐めじゃないか。この場にいる全員がそう思っていた。周囲のマサルを見る目が、侮蔑と恐怖に染まっていくが、本人は遊矢を甚振るのに夢中で気づかない。

 勝負がついたにも関わらず実力行使にまで出て遊矢を甚振るマサルに対し、柚子と権現坂も見かねて止めに入る。

 

「ちょっとあんた、これは無いでしょ⁉︎ 」

「理由も訊かずに一方的に襲いかかり、負けたら実力行使とは情け無い。お前には決闘者としてのプライドがないのか?」

「煩い煩い!お前らに何が分かる⁉︎ トマト野朗の信者どもが知った様な口を聞くな!」

「いい加減にしろ!」

「がっ……」

 

 柚子と権現坂に意識が集中し、遊矢を蹴飛ばすマサルの足が止まる。その隙をついて、瞬が横から回り込んでマサルの頬を思い切り殴り飛ばした。鈍い音とともに、マサルは地面にぶっ倒れる。普通の喧嘩ならば、誰かしらがマサルにも駆け寄ったりするのだろうが、この場合、それはなかった。

 瞬は遊矢を起こしながら、マサルから引き離そうと試みる。ただでさえデュエルで負傷しているというのに、これ以上やられたらたまったもんじゃない。

 

「大丈夫か⁉︎ しっかりしろ!」

「ああ……いてっ!」

 

 一方、瞬にぶん殴られたマサルはというと、まったく反省しておらず、ぶたれた頬を抑えながら、マサルは上体を起こし、逆ギレをかましてきた。

 

「お前達こそなんだ!アクションカードとかいう卑怯なモノに頼ってのデュエルなんて、恥ずかしいと思わないのか⁉︎ それともなんだ、お前らもこの腐れトマトのよいに頭沸いてんのか⁉︎」

「何よその言い方!遊矢があなたに一体何をしたってのよ⁉︎ 説明くらいしてくれたっていいじゃ無い!」

「気に食わないんだよ!此奴の掲げるエンタメデュエルがな!あんなのただウゼェだけの茶番だろうが!決闘ってのはなぁ、真剣勝負なんだよ!そこに笑顔とかいうゴミは要らねえんだってまだ解らねえのか馬鹿どもが!」

「だからって殴る蹴るは駄目だ。決闘者ならカードで語るべきだろう。こんな狼藉、この男、権現坂が断じて許さん!」

 

 傷だらけの遊矢を庇う様に、権現坂が仁王立ちをする。マサルが顔を上げると、権現坂や柚子だけではない。沢渡も、零児も、瞬も、唯も、アラタも —— 皆がマサルを睨んでいた。

 予定調和の四面楚歌。誰から見ても、マサルに味方が現れることはない。

 

「煩い黙れトマトシンパが!一体全体、そんな屑の何処を好いてるんだ⁉︎ エンターテイナーなら他人からの批判を受け入れよろ⁉︎ こうやって反対意見を潰すからコイツみたいな奴がつけあがるんだよ!」

「批判じゃねーだろ、どうみても」

 

 口を開いたのは、アラタだった。彼も怒っている。一誠の時といい、転生者に誰かがいたぶられる事に対し、同じ転生者として怒りを露わにしていた。

 

「例え遊矢がお前の言うような奴だとしても、お前の行いは許せるものじゃ無い。お前はただ、自分が気に食わないモノに当たり散らしているだけのガキだよ。そんな奴の言葉なんか、誰も聞いちゃくれない」

「煩えよカス!知った様な口を聞くな!」

「それは貴方の —— 」

「もうやめろ」

 

 柚子とマサルの言い争いを静止したのは、遊矢だった。

 

「遊矢……」

「俺のことを悪く言ったり、嫌ったりするのは構わない。けど、皆を巻き込むのはやめてくれ!俺が……俺のエンタメデュエルが憎いなら、俺だけにぶつけろよ!」

 

 それは切実な願いだった。

 遊矢は、父親の失踪を機とする世間からのバッシングや、次元戦争で心身共に幾度となく振り回されたことから、悪意に晒されるのは慣れている。だから傷つくのが自分だけなら許せる。だが、自分のせいで皆が傷つくのは間違っているし、許せない。

 ボロボロになりながらも、尚もマサルに抗う遊矢に、瞬も加勢する。

 

「俺は今日デュエルに出会ったばかりの素人だけどな、これだけは言える。遊矢をお前なんかと比べられてたまるか!お前のあからさまに人を傷つけるようなデュエルが、他のデュエルより優れているわけないだろ!」

 

 素人ながらも、瞬はそう判断していた。そもそもデュエル云々を抜きにして常識的に考えても、ゲームで他人を痛めつける様な奴が認められる訳がないのだ。

 だがマサルは、部外者である瞬に口出しされたこと自体にキレて、瞬にくってかかる。

 

「素人なら黙ってろ!

「……どうしてなんだ。嫌いな人がいるのは仕方ない。けど、お前達はなんでそんなに容赦なく人を甚振れるんだよ……お前ら転生者には、人の心がないのかよ……⁉︎ 」

 

 話は平行線のまま、ただひたすらにお互いの怒りだけが蓄積されてゆく。瞬の握りしめた拳が、プルプルと震えているのが一目瞭然だ。

 それに待ったをかける様に、今まで黙り込んでいた零児が割ってはいる。

 

「札道マサル、君の過去のデュエル映像は見させてもらった。デュエル中の対戦相手への誹謗中傷、ソリッドビジョンを利用したアクションデュエル中の対戦相手への加害行為……君のそれは明らかに度を越している。公式大会出禁も納得だ。それに今回も、無関係の人間をモンスターで襲った上、公共物であるここのソリッドビジョンシステムを改造し、危険なレベルまでソリッドビジョンの出力を上げた事……それは到底見逃せない。然るべき処罰を下さなければならない」

 

 零児の言うとおり、マサルは十分にやり過ぎている。他の皆とは異なり、ただ淡々とマサルの罪状を読み上げる零児に、マサルは恐れをなしたのか、狂った様に笑いながら後ずさる。

 そして、壁に背をつけたマサルは、腕に付けていたデュエルディスクを投げ捨てると、

 

「笑わせんなよ……間違ってるのはお前らの方だ!エンタメデュエルで負わされた俺の心の傷は、貴様らの絶望でしか満たされないんだよ……!」

《KAKUSEI ODDEYES》

 

 そう言うと、マサルは再びオリジオンの姿に変身し、怒りの限り叫んだ。完全に自分勝手な怒りなのだが、それ程までに嫌悪していたのだ。遊戯王ARC-V(げんさく)を。

 大地を揺らす程の咆哮を轟かせ、オッドアイズオリジオンの身体がさらに変化していく。ピエロの衣装を身に纏ったドラゴン、といった感じの見た目だったオリジオンの外見が、膨張してゆく。まるで蝶が蛹から羽化するかの様に、オッドアイズオリジオンの背中が裂けてゆき、中から全長10メートルは有りそうな、赤い体色のドラゴンが姿を現す。一体どうやって、こんな巨大な化け物が人型の殻に入っていたのかは分からない。だだ、コイツは放置したら駄目だと、この場にいる全員が思っていた。

 

「死んでしまえ……!ペンデュラム次元なんか、粉々に砕いてやる!こんな世界、生まれたことが間違ってるんだ!ははははははははは!」

 

 見下していた遊矢に負けてプライドが跡形もなく破壊された上に、身体の内側から溢れ出す力に呑まれてしまい、完全に正気を失ったマサルは、ただひたすらに、気に入らない周囲への八つ当たりを開始した。尻尾を一振りするだけで、デュエルコートの壁が砕け散り、瓦礫が周囲に拡散してゆく。

 瓦礫が降り注ぐ中、瞬は皆を必死に屋外へと逃がしながら、アクロスに変身し、単身オッドアイズオリジオンに立ち向かう。

 

「変身……っ!」

《CROSS OVER!思いを、力を、世界を繋げ!仮面ライダーアクロス!》

 

 皆と共に脱出した後、崩れゆくデュエルコートを見つめながら、皆の前で変身する。遊矢をはじめとする決闘者達は、初めて見る仮面ライダーに驚きを隠せない。

 

「お前……それは一体⁉︎ 」

「話は後!皆は逃げてくれ!」

 

 怪我人は唯達に任せて、瞬は暴れるオリジオンの元へと向かおうとする。

 しかし、遊矢は重症であるにもかかわらず、まだ動こうとする。

 

「あれは……俺が……」

「無理をするな遊矢!その怪我で何ができる?勇気と無謀は違うのだぞ」

「でもアイツは俺を憎んでいた。なら、俺が出なきゃ駄目だ。俺が対峙すべきなんだ」

 

 権現坂に止められるが、遊矢は諦めない。自分を憎悪する人のせいで皆が傷ついたという事実に負い目を感じているのだ。

 だが、アクロスはそれを許せなかった。

 

「あんな卑怯者のこと気にかける必要はねーよ」

「え……」

「お前が無駄に傷つく必要は無いって言ってんだよ。遊矢、これまで皆の為に頑張ってたんだろ?なら休んでろ。それにアイツを許せないのは皆同じだよ。だからその憤りは俺が持ってく。それが俺の役目だから」

 

 湖森を傷つけられたのもあるが、アクロスは、どうしてもマサルに共感ができなかった。マサルが遊矢にぶつける、常軌を逸した嫌悪。あんなものを他人に臆面もなくぶつけられる人間がいる事に、恐怖と悲しみを抱いていた。

 アクロスの力で倒しても解決出来るかはわからない。だが、ともかく現在進行形で暴れるオッドアイズオリジオンを止めなければ、街はパニック一直線なのは間違いない。

 嫌悪に呑まれるな。正義感を糧にして、戦え。自分にそう言い聞かせるように、仮面の下でなんとか笑顔を作り、遊矢に語りかける。

 

「楽しいデュエルを見せてもらったんだ。今度は俺のターンだ。怪人と殴り合うのは仮面ライダーの役回り……らしいからな」

《リンケイジゲーター!》

 

 アクロスは、紫色のライドアーツをドライバーに装填する。すると、手のひらサイズの鍵が、みるみるうちに一台のバイクへと変形してゆく。前にも使ったのだが、一体どうやったらバイクが小さな鍵の形に収まっているのかが不思議に思う。

 アクロスはバイクに跨り、エンジンをかける。前はエンストするという、仮面ライダーにあるまじき失態をやらかしたが、今回はちゃんとかかった。しっかりと整備していたおかげだ。

 

「いっちゃって、瞬!」

「おう!」

 

 唯の言葉に力強く答えながら、アクロスは勢いよくバイクを発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻

 

 

 サイガに変身している転生者狩りと、イガリマオリジオンに変身したバルジの戦いは、苛烈を極めていた。

 

「はあああああああああああああああああっ‼︎ 」

 

 空を飛ぶサイガは、背中のフライングアタッカーから、地上に居るイガリマオリジオンに向かってフォトンブラッドの光弾を連射する。イガリマは、それを巧みな鎌捌きで弾きながら、近くにあった、戦いの余波で折れ曲がった街灯を足場にし、サイガのいる位置めがけて跳躍する。

 

「オラオラどうしたぁ!ヌル過ぎるんじゃあねーの⁉︎ 」

「っ!」

 

 サイガは更に高度を上げてイマリガオリジオンを躱すが、イマリガは、背中から無数の鎖を伸ばし、サイガの足にそれを巻きつける。

 

「堕ちろよガキンチョ。テメェは地べたを這いつくばってるのがお似合いだよ」

「堕ちるのはテメェだけだ!地獄に……堕ちろおおおおおおおおっ!」

 

 しかし、サイガはフライングアタッカーの操縦桿を片方だけ引き抜き、腰のサイガフォンについていたミッションメモリーを操縦桿に差し込んでトンファーエッジに変えると、それで巻き付いた鎖をぶった斬り、イガリマの拘束から逃れる。

 イガリマは一人で、地上に落下する。しかし、これで終わる訳がなかった。綺麗に受け身をとって着地するなり、イガリマは鎌の刃を取り外し、サイガ目掛けてブーメランの様に投げつけてきた。

 

「その程度、撃ち落としてやる!」

 

 サイガは飛んできたそれを、難なく撃ち落とした。

 —— が、それで済むほど甘くは無い。撃ち落とされて地上に落下していく筈だった刃が、急に角度を変え、再びサイガ目掛けて飛んできた。

 

「ホーミング機能付きなんだぜ、それ。それに一枚だけだと思うなよ?」

 

 刃を失い、ただの棒切れって化した鎌を地面に突き立てながら、イガリマは空を見上げて嗤う。すると、鎌の柄の先端から、にょきっと新たな刃が生えてきて、バルジ目掛けてひとりでに飛んでいった。

 決して撃ち落とせない必中の一撃が、たったひとりを目掛けてとめどなく押し寄せる。サイガが撃ち落とされるのは、時間の問題だった。

 

「くっ……!フライングアタッカーが持たない……」

 

 繰り返し襲ってくる刃によって、サイガの主力武装であるフライングアタッカーもかなりの損傷を受けていた。何処かがショートしたのか、火花があちこちから飛び出る音がする。こうなったら、地上戦に切り替えだ。

 壊れかけたフライングアタッカーをパージし、サイガは地上に向けて一直線に落下してゆく。パージされたフライングアタッカーは、その直後、飛んできた鎌の刃に一刀両断され、爆発する。

 

「変身!」

 

 サイガドライバーを取り外し、別のベルトを装着する。すると、何処からかコウモリを模したロボットが飛来し、ベルトのバックルにひとりでに装填される。

 

「へえ……えらくバリエーション豊かだねぇ。拍手喝采がお望みかな?」

 

 転生者狩りを中心に、猛烈な吹雪が吹き荒れる様を地上から見ていたイガリマは、余裕たっぷりな笑みを浮かべている。

 転生者狩りが変身したのは、仮面ライダーレイ。王の鎧を模して作られた、冷血なる人造兵器。全てを凍てつかせる悪の仮面ライダー。レイは、変身時に放出した冷気で、飛んできた刃を根こそぎ凍りつかせて無力化しながら、レイは華麗に着地する。

 

「俺はまだやれるぞ。お前を殺すまで俺はやるぞ……!」

「じゃ、やろうや —— 」

 

 この程度で終わってはつまらない。まだまだやりたりない。イガリマは、懲りずに立ち向かってくる転生者狩りを見ながらほくそ笑む。

 

「ああ、これで終わらせてやる!」

 

 レイは、足に冷気を集め、イガリマに向かって飛び蹴りを放つ。イガリマオリジオンも、負けじと鎌を振りかざし、蹴りと鎌の刃が衝突する。

 瞬間、周囲に冷気と爆風が一気に拡散した。木々は凍りつき、街灯は折れかかった状態で固定され、バルジが立っていた箇所は土が抉れてクレーターができていた。両者の姿は確認できない。どうやら、両者とも衝撃で吹き飛んだらしい。

 

「くそっ……」

 

 凍りついた空き缶を踏み砕きながら、冷気の中から、変身が解けた転生者狩り —— 無束灰司が姿を現す。激しい戦いだったにもかかわらず、ライダーシステムが丈夫なのか、はたまた灰司が頑丈なのかはわからないが、それ程傷ついていないようにみえる。

 白い息を吐きながら、灰司はあたりを見渡してバルジの姿を探す。辺りには誰もいない。

 

(奴だけは俺が殺さなきゃならねぇんだ……出てこいよクソ野郎!)

 

 灰司の生まれた世界を遊び感覚で滅ぼした、憎き存在。それを生かしておくわけにはいかない。血眼になって辺りを探すが、見つからない。その時、バルジが見つからずに焦る灰司を嘲笑うかの様に、何処からか声が聞こえてきた。

 

「いやー、お前面倒くさい奴だよなー。なら俺ももうちょい本気出さなきゃならないか。でもなあ、結構久々に使ったから鈍っててヨォ、転生特典の調整しなきゃならねえんだわ。だから勝負は預けるぜ。また、遊ぼうや」

 

 間違いない。バルジの声だ。終始他人を小馬鹿にした様な物言いは、間違いなく奴だ。しかし、声のありかが見つからない。何処から声がしてるのかもわからない。

 氷漬けになった公園の一角を必死に走り回る灰司。しかし、すでにその時には、バルジの声はしなくなっていた。逃げられたのだ。

 

「ふざけるな!こっちは遊びでやってんじゃねぇんだよ……!」

 

 灰司は怒りのままに、近くに生えてた木の幹に拳を叩きつける。遊びで世界を滅ぼす様な輩を生かしてはならない。

 こうして、因縁の戦いの決着はまたの機会に持ち越しとなった。

 

 

 

  

 

 

 

 

 轟音。轟音。爆発を経て咆哮。

 おおよそ現代日本に似つかわしく無い音が、昼下がりの舞網市街に繰り返し響き渡る。

 

「くそっ……あいつ手当たり次第に街壊す気かよ⁉︎ 」

 

 混乱する街中にバイクを走らせながら、アクロスは悪態をつく。

 その前方には、巨大化したオッドアイズオリジオン。散々馬鹿にし、否定していた遊矢に負けたという事実が余程堪えたのか、もはや理性はわずかばかりしか残っていない。マサルの様なタイプの転生者にとって、原作主人公(あてうま)に敗北することは最大の恥辱なのだ。少なくとも、オリジオンとしての力を暴走させるくらいには。

 目の前に現れた車を蹴り飛ばし、ビルの壁面に文字通りの爪痕を残し、オッドアイズオリジオンは走る。そもそも彼は、遊戯王ARC-Vという作品自体が嫌いだった。元々この世界を蹂躙するために転生してきたのだ。だから、この破壊行為も彼からすれば、目的の一つなのだ。側から見れば、正気の沙汰ではないだろうが。

 

「やめろ!これ以上無茶苦茶なことは!」

「仮面ライダー……邪魔すんなよ……!」

「幾らだって邪魔してやるよ!お前が誰かを傷つけるのをやめない限りな!」

 

 オッドアイズオリジオンは、自分に呼びかけてきたアクロスを殺すべく、尻尾を叩きつけてきた。しかし、アクロスはバイクごと跳躍して回避し、尻尾に飛び移り、そのままバイクでオッドアイズオリジオンの尻尾を伝って頭部まで接近していく。

 

「乗りやがって……邪魔なんだよ!」

 

 苛立ちながら、オッドアイズオリジオンはアクロスを振り払う。バイクに乗っている状態では、踏んばることは到底叶わず、アクロスは近くの看板に叩きつけられ、地上に落とされる。

 ドスン、ドスン、と地面を大きく揺らす足音が、倒れたアクロスに接近してくる。顔を上げると、オッドアイズオリジオンがアクロスを凝視していた。彼は、邪魔をしてきたアクロスが気に入らないらしく、怒りの籠った唸り声をあげながら、前足でアクロスを摘み上げる。

 

「ウザいんだよ、お前。ぽっと出の癖に何邪魔してくれてんのさ。俺が間違ってるってのか?榊遊矢が正しいってのか?ああ⁉︎ 」

「少なくとも、お前は間違ってるよ」

 

 オリジオンの言葉に、アクロスは間髪入れずに答えた。

 

「だから止める。お前が何度繰り返そうが止める」

「黙れよ!何でわからねーんだ⁉︎ アイツはこれからもエンタメデュエルで洗脳を続ける!デュエルを汚し続ける!決闘者として許せるわけねーだろ!」

「だったら!暴力振るう必要も、他の人を巻き込む必要もないだろ!」

 

 誰かを嫌う事を否定はしない。しかし、その感情は免罪符にはなり得ない。無条件で嫌悪感を振りかざせる程、この世は単純にできてはいないのだから。湧き上がる嫌悪を抑えてこそ、人間社会は成り立つのだから。嫌いな奴には何をしてもいいという理屈が通るわけがない。マサルはそれにさえ気づかない。だからアクロスとは話し合えない。

 アクロスを掴んでいるオッドアイズオリジオンの前脚に、力がこもってゆく。怒りでアクロスを握り潰す勢いだ。しかし、アクロスは諦めない。これだけは言わなければ気が済まなかった。

 

「俺はお前の言ってることは理解できない。決闘者じゃないし、遊矢とは初対面だし。だが、お前の八つ当たりで傷ついたやつがいる。それが俺は許せないんだ!」

「御託はどーでもいい!死ねよアクロス!邪魔者は消え失せろ!」

 

 自分の意見に反対するアクロスにキレて余計に力を込めるオリジオン。ミシミシと、アクロスの身体中が軋み始める。このままだと、胴体が粉砕されてしまいそうだ。

 

(遊矢が皆の為に頑張ってくれたんだ。なら今度は俺がやらなきゃ筋が通らねえ!)

 

 リンクドライグなら力技でこの状況を打破できそうだが、がっしりと掴まれた状態ではライドアーツも使えない。しかしここでオリジオンを倒さなければ、皆は助からない。

 

「俺は諦めねえ……お前を止める……!」

 

 そんな言葉も、今となっては虚勢と見做されるが関の山。万事休すか。

 その時だった。

 デュエルコートの方角から、一筋の光が飛び立ったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何⁉︎ 」

 

 壁に寄りかかって座り込み、救急車を待つ遊矢。が、突如として彼の身体が淡い光を放ち始めた。当然ながら、唯や柚子も驚いて遊矢に駆け寄る。

 

「何なの⁉︎ 決闘者って光るの⁉︎ 」

「私達をなんだと思ってるのよ……」

「何これ⁉︎ 何がおきっ……痛っ!」

 

 突然光りだした自分の身体に驚いてたじろぐ遊矢だが、傷に触った様で顔をしかめてしまう。

 皆が皆、光りだした遊矢を困惑の眼差しで見つめる。そりゃあ誰だってそうするだろう。その中で、アラタはあることを思い出した。

 

「いや、この光はアレだ……めだかの時の」

 

 アラタに言われて唯も思い出した。これは新たなライドアーツが誕生する瞬間。ビルドの時と合わせて3回目の目撃となる唯は、一体今度は何が出てくるのか、と無意識ながらワクワクし始めていた。

 遊矢の全身を覆う形で存在していた光は、遊矢の胸元に集まってゆくと、そこからどこかに向かって一直線に飛んでいってしまった。おそらく、アクロスの元に向かっていったのだろう。一同はただ、青空を割くようにして飛んでいった一筋の光を呆然と見上げていた。

 

「おさまった……何だったのだ今のは」

「あんまり気にしなくていいよ。大丈夫、瞬はなんとかなる」

 

 答えにならない、根拠のない自信。

 

 

 

 

 

 

 

「なん、だあ……」

 

 あまりの眩しさでオッドアイズオリジオンの目が眩み、アクロスを握り潰さんとしていた手が緩み、アクロスは地面に落下する。

 

「いったぁ……」

 

 地面に落ちたアクロスは、地面にうちつけた尻をさすりながら立ち上がる。ご都合主義もここまであからさまだと、ご都合主義を起こした本人すらも失笑してしまいそうになる。

 その時、アクロスは自分の左手が何かを握りしめているのに気づいた。手を開くと、そこには、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンらしきモンスターの紋様が存在する、一つのライドアーツ。一体いつの間に握らされていたのだろうか。

 

「これでなんとかしろってことか?」

 

 アクロスは、なんだか釈然としない気分のまま、ライドアーツをバックル上部に装填し、側面部に向かって倒す。

 オッドアイズオリジオンは、トドメをさせなかった事でさらに機嫌を悪くする。息が一層荒くなり、ミシミシと足元のアスファルトにヒビが入るほどに地面を強く踏みしめる。

 

「くそ……小賢しい真似をしやがって……」

「待てよ。お楽しみはこれから、だろ?」

《LEGEND LINK!揺らせ揺られろSSSSOUL!ladies &gentlemen!LINK PENDLUM!》

 

 そう言いながら、アクロスはライドアーツを起動した。

 すると、アクロスの頭上に、ペンデュラム召喚の際に出た様な光帯が出現し、その中から一筋の光がアクロス目掛けて一直線に落ちて来た。

 

「なんだ⁉︎ 」

 

 再び、オリジオンの視界が閃光で染め上げられる。だが、この距離ならば見えずともやれる。そう判断し、アクロスがいるであろう場所を、前足で薙ぎ払う。

 しかし手応えがない。光がおさまり、オッドアイズオリジオンが目を開けると、そこにアクロスはいなかった。が、後ろに気配を感じる。

 

「ちょこまかと逃げやがって!」

 

 サイズ差の都合上仕方ないのだが、マサルは怒りながらばっと後ろを振り返る。だが、そこに居たのは、新たな姿となったアクロスだった。

 右肩は黒い法衣を、左肩は白い法衣を纏った人物を模しており、それは遊矢の持つPモンスター、時読みの魔術師と時読みの魔術師を想起させるデザインだ。胴体には青く巨大な宝玉が浮かび上がり、複眼は赤と緑のオッドアイ。奇しくもそれは、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと同じだった。

 仮面ライダーアクロス・リンクペンデュラムの爆誕である。

 

「んだよソレ……お前まであのクソ野郎のエンタメに洗脳されたってのかよ!堕ちたな仮面ライダー!」

 

 アクロスの新たな姿を見て、オッドアイズオリジオンはあからさまに嘲笑う。遊矢の力なんか得たところで意味なんてない、そんなの敵ではないと、一目見ただけでそう判断していた。

 自分の気に入らない奴の味方をする奴は「洗脳された可哀想な奴」と見下す。その傲慢さが仇になっている事に、オッドアイズオリジオンは気づかない。—— どの道気づいた所で、彼がそれを反省する機会はおそらく訪れないが。

 

「いくら外見が変わってもヨォ、図体の差は埋まらねえんだぜぇ⁉︎ 」

 

 オリジオンは意気揚々とアクロスに向かって突っ込んできた。アクロスはそれを走って避ける。ぶつかったコンクリート塀が木っ端微塵に砕け散る。

 

遊矢(ザコ)アクロス(ザコ)足しても雑魚なのは変わらねえ!惨めったらしくブチ殺してやんよぉ!」

 

 オッドアイズオリジオンはアクロスの方を向き直ると、アクロスを馬鹿にしながら口から光線をはいてきた。この距離では避けきれない。直撃すればこっちのもんだと、オリジオンは完全に勝ち誇っていた。

 しかし、アクロスに光線が当たる瞬間、アクロスの身体から煙が吹き出し、ポワンと、一瞬のうちにアクロスの姿が煙と共に消えてしまった。

 

「残念だな、俺はこっちだ!」

 

 背後からかけられた声に反応して振り向くが、その時にはすでに遅く、今まさにツインズバスターを振り下ろそうとするアクロスの姿が、オリジオンの瞳に入っていた。いつの間に後ろに回り込んだんだ、と考える間もなく、ツインズバスターの刃がオリジオンの頸を切り裂く。

 予想外のダメージで前足を地面につくオリジオンだが、地面に着地したアクロスを睨みながらブチ切れる。

 

「テメェ……ふざけんなぁ!」

 

 オリジオンは怒りのままに、目の前にいるアクロスを踏み潰そうとする。アクロスは動かない。

 

「死ねえええええええええええっ!」

 

 今度こそ終わらせてやる。そう意気込み、叫びながら足を下ろす。

 が、踏み潰される直前、再びアクロスは煙を吹き出した。そして、オリジオンの足が地面と接するが、何かを踏み潰したような手応えが感じられない。

 まさかまた逃げたのかと思いながら足元を見下ろすと、そこにはなんと、アクロスが2人いた。どうやらこれが、リンクペンデュラムの能力らしい。

 

「増えた⁉︎ 」

「「お返しだこんちくしょう!」」

 

 困惑するオリジオンだが、2人のアクロスはお構いなしにツインズバスターでオリジオンの両足を斬りつけ、転倒させる。ズシンと大きな音を立てて、尻餅をつくような形になるオリジオン。そこからアクロスはさらに分身し、続け様に立ちあがろうとするオリジオンを斬りつけ、最後は空高く飛び上がり、オリジオンを飛び越しながら頭部を斬りつけ、その背後に回り込む。

 着地際に1人に戻ったアクロスは、銃形態に変形させたツインズバスターを連射しながら、必殺技を発動させる。

 

《PENDLUM CROSS BLAKE!》

 

 すると、オッドアイズオリジオンを挟む様に、彼の左右に光の柱が立ち並ぶ。そして、その光の柱から、虹色のラインが伸び、オリジオンを縛り付けてゆく。

 満足に動けないオリジオンは、それでもなんとかギチギチと頭を後ろに向けようとする。そんな彼の視界の端に映ったのは、足に虹色のエネルギーを溜めたアクロスが、空高く跳び上がる姿だった。

 

「負けるのか……俺が?デュエルでも、コッチでも……?」

 

 現実を受け入れられないオリジオンは、迫るアクロスのキックに対して、ただ唸ることしかできなかった。

 アクロスは、虹色のエネルギーを纏った右足を突き出し、オリジオン目掛けて急降下する。その背後には、遊矢が身につけていたペンデュラムの幻影らしきものが重なっていた。

 

「虹彩のスパイラル・ストライク!」

 

 アクロスは技名を叫びながら、オッドアイズオリジオンの背中を蹴り抜いた。そして、硬い鱗で覆われていた身体を貫き、アクロスはオリジオンの前方へと出ていく。

 

「くそがああああああああああああああああああああああああっ‼︎ 」

 

 オリジオンは叫ぶ。もうどうにもならなかった。

 そして彼は、自分を貫いたアクロスの後ろ姿を、憤怒の表情で睨みながら、爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—— 何故、誰も受け入れない?

 

 

 マサルは、満身創痍になりながら地面に横たわっていた。

 手足は動かない。気力も体力もない。今の彼は、ただ恨み言を呟くことしかできない。

 

(皆遊矢の事嫌ってるじゃん……なら、同じ世界にいる俺がやらないで誰がやるんだ?俺は間違ってないだろ……あんな奴許しちゃダメなんだって皆言ってたじゃんか……なんで誰も味方してくれないんだよ……)

 

 彼は全く改心していなかった。自分の意見を受け入れない周囲を恨んでいた。

 そんな事は知る由もない瞬は、変身を解きながらマサルに近づく。

 

「やめとけ、話すだけ無駄だ」

 

 ふいに、瞬の肩に、手がかけられた。振り返ると、仮面ライダーレイ —— 転生者狩りがいた。

 

「トドメは俺だ。お前みたいな奴には人殺しは無理だ」

「殺すって……まさかコイツを?もう特典とやらもなくなってるんだし、警察にでも引き渡せば済むんじゃ……」

 

 瞬の言葉を無視し、転生者狩りは瞬を押し除け、倒れているマサルの間近に立つ。そして、上から顔を覗き込みながら、マサルに語りかける。

 

「最後に言い残す事は?」

「何故だ!何故俺を認めない⁉︎ 俺は正しいことをしてるんだ!皆榊遊矢を糾弾してただろ!嫌いなんだろ⁉︎ アイツが間違ってるからなんだろ⁉︎ 俺は代弁者なんだよ!」

 

 マサルは、この期に及んで尚態度を改めなかった。嫌いな奴、間違っている奴には何をしてもいい。これ程までに一人の人間を激しく憎み続けるその執念に、転生者狩りはかえって感心してしまう。

 だがいくら繰り返し叫ぼうが、彼に同調する者は現れない。転生者狩りは、心底見下げた奴だとでも言うかのようにマサルを鼻で笑うと、マサルの胸ぐらを掴み上げ、ドスの効いた声で説教する。

 

「だからどうした。お前が散々甚振ってたのはキャラじゃない、この世界に生きる一人の人間だ。いい加減前世気分は捨てろ。いつまで夢見てやがんだ」

「あんな人でなしを守って何になる⁉︎ まさかお前も榊遊矢に買収されて —— 」

 

 遊矢憎しのあまり、あらぬ妄言を吐き連ね始めたマサル。あまりの醜さに、瞬も転生者狩りも耐えきれず、彼の言葉に耳を貸す事をやめていた。悪意を隠しもしない目の前の存在を、どうしても受け入れられなかった。

 転生者狩りは苛立ち気味にマサルを投げ捨てると、瞬の方を向く。

 

「ほらな。俺は多くの転生者を狩ってきたから分かる。情けをかけるだけ無駄な奴ってのが世の中にはいるんだよ。コイツみたいにな」

 

 マサルを指差しながら、溜息混じりに転生者狩りは言った。仮面で表情は読み取れないが、その声は、まるで何かに失望したような、諦観が直に感じられるものだった。マサルの罵声をBGMにしながら、転生者狩りは続ける。

 

「これがお前が戦ってきた相手、転生者だ。厚顔無恥で傍若無人、自分以外は気にも留められない完全悪。世界の癌。まともな奴なんてほんのひと握りだ。口だけは達者でも、中身は屑。遍く全てを腐らせる。俺は仕事柄、そんな奴をごまんと見てきた」

「でも……命を奪うまでは……」

「殺さなきゃダメなんだ。改心するかどうかなんて本人次第、そんなギャンブルじみた事出来るわけないだろ。綺麗事じゃダメなんだよ。世界を確実に守るには、殺した方がいい」

 

 悪人が必ずしも改心するとは限らない。再び牙を剥くかもしれない。だから殺す。償いという行為を信用できないから、その機会を初めから与えない。そうすれば確実に安寧が訪れる。転生者狩りはそう言っている。瞬は、それに対して何も言えなかった。一理はあるが、納得できない。だがそれを言語化する事ができない。そのもどかしさに、瞬はただ、拳を強く握りしめる事しかできなかった。

 ぐるんぐるんと、思考を働かせる瞬だったが、ふとある事を思い出し、転生者狩りに問いかける。

 

「なあ」

「お前言ってたよな?ギフトメイカーに世界を滅ぼされたって。どういう事なんだよ?」

 

 それを聞いて、転生者狩りは「それ聞く?」とでも言うかのように、頭を抱えてため息をつく。

 

(しまったな……怒りのあまり余計な事を口走ってしまったか。だが話してしまったからには、いっそのことバラした方が邪魔されなくなる)

 

 バルジと相対した際に怒りのあまり、あの場にいた瞬の事を忘れて互いに因縁をぶつけ合っていた事を思い出す。できれば話したくないが、瞬みたいな人種には、中途半端に明かして混乱させるよりは、懇切丁寧に話した方が余計な真似をしなくなるだろうと考えたのだろう。転生者狩りは、そっぽを向きながら重たい口を開く。

 

「どうもこうも、文字通りだ。バルジは俺の世界を滅ぼした。遊びでな」

「遊びで……だと?」

「ああ。俺にはもう何もない。あるのは奴への復讐心だけだ。全て、奴が奪っていったんだ。だから俺は、奴を殺すために転生者狩りを始めた」

 

 それが彼の戦う理由。瞬の予想以上に壮絶な因縁があったのだ。何もかもを壊されて、元凶は懲りずに好き勝手やっている。これで怒らない方がおかしいだろう。転生者狩りの拳と声が、怒りで震えているのがわかる。彼が抱く、抑え切れないほどの怒りと憎しみは、瞬には計り知れないものだった。

 

「お前がギフトメイカーとやり合うのは勝手だ。だが、バルジだけは俺が殺す。分かったら邪魔はするな」

 

 釘を刺すように、転生者狩りは瞬に忠告した。

 瞬は何も言えなかった。否定する理由、邪魔する理由が無かったからだ。他人同士の因縁に、外野がとやかく言う資格はないのだから。

 ここで、ズダボロのまま放置されていたマサルが声を上げる。

 

「さっきから俺を無視してんじゃねえよ……クソッ……身体がうごかねぇ……動けりゃテメェらをぶち殺せるのにぃ……」

「ああ、忘れていた」

「がびぃっ⁉︎ 」

 

 散々無視されていたマサルがしつこく喚いていたので、転生者狩りはマサルの顔面を思い切り踏んづけて黙らせる。もがもがと足元でもがくマサルを意にも介さず、転生者狩りは瞬にここから立ち去るよう促す。

 

「立ち去れよ。俺は今からコイツを殺す」

「……どうしてもか?」

「ああ。あれだけ醜いものを見て尚、お前は生かそうというのか?」

「俺には殺す事なんて出来ない。それだけだ」

「仮面ライダーとして戦い続ける以上、それから逃げ続けることはできない。いずれお前にも、誰かを殺さなきゃならなくなる時が来る」

 

 瞬は、転生者狩りの言葉に、何一つまともに反論ができなかった。

 

「無理強いはしないがな。嫌ならここを去れ」

「お前、最近やけに当たりが緩くなってないか?最初は俺を容赦なくぶん殴ってきた癖に、どういう風の吹き回しだよ?」

「……いいから行け。それともなんだ、このクズが内臓ぶち撒けらて死ぬザマを間近で見たいってか?」

「……」

 

 幾ら悪人といえども、そんな惨い死に様を見届けらる程、瞬は強くはない。普通の人間にとっては、間近で人が死ぬのは結構ショッキングな話なのだ。転生者狩りは、瞬の精神衛生を考慮して、こんな事を言っているのだ。

 だが、目の前で人を殺しますのでどっか行ってくれ、と言われてのこのこと立ち去るような真似ができる奴はいないだろう。瞬はどうすべきが決めあぐねいていた。そこに、聞き覚えのある声が割り込んできた。

 

「彼の言う通りにするといいさ」

 

 振り向くと、服がボロボロになり半裸状態になったフィフティがいた。ギフトメイカー達を引きつける囮役を買って出てくれていた筈だが、身体中に血がついているあたり、相当激しい戦いだったのだろう。

 

「フィフティ……その格好……」

「いやあ派手にやられちゃった。色々あって君に追いつくのに手間取ってね。ああ、怪我なら大丈夫。もう治ったから」

 

 言われてみれば、フィフティは血だけらだが、その身体には傷は一つもなかった。という事は、これは返り血かなんかなのだろうか?というか、公園からここまでその格好で来た様だが、よく騒がれなかったものである。

 

「逢瀬くんは私が連れてくから安心して。それにしても、君にしては随分と優しくなったじゃないか。なんだい、彼を認めたのかい?」

「黙れ、とっとと失せろ」

「ならお言葉に甘えて。ほーら、皆が待ってるだろ。急いだ急いだ」

「ちょっと……」

 

 瞬は、フィフティにぐいぐいと押されるがまま、この場から引き離されてゆく。思ったよりもフィフティの力が強く、戦いで疲弊した瞬では押されてしまう。

 瞬とフィフティがいなくなったのを確認すると、仮面ライダーとしての変身をようやく解いた転生者狩り —— 無束灰司は、マサルを踏みつけたまま、拳銃を取りだして弾丸を込める。

 

「さて、と」

 

 銃口を突きつけられる。逃げ出したいが、満身創痍のマサルは既に、寝返りもうてないほどに疲弊していた。ガタガタと歯が震え、目には死の恐怖から涙が浮かんでくる。

 

「いやだ……こんなところで終わりたくない……せっかく転生したのにぃ……」

「転生してまで誰かを叩く、か。随分とまあ、無駄な人生だったな。あばよ、クソ野郎」

 

 マサルを蔑みながら、灰司は引き金を引いた。

 パン、と乾いた音が響いた。

 

「が……」

 

 マサルの撃たれた眉間から、血がドクドクと垂れ流される。最後まで抗おうと伸ばしていた腕は、力なく地面に倒れる。灰司は、マサルが死んだのを確認してから、彼から足を退ける。

 マサルの命は尽きた。

 最後まで他者を憎み、蔑むことしかできず、嫌悪で全てを棒に振った男は、誰にも憐れまれることなく、無様な最期を迎えた。

 その時、灰司のズボンのポケットから、バイブ音が聞こえてきた。スマホに着信が来ている。灰司はマサルの死体から離れながら、通話に応答する。

 

「無束灰司です。転生者を一人始末しました。事後処理は頼みます」

 

 転生者狩りとしての彼が所属する組織からだった。事後処理を任せ、灰司は足早にここから去ろうとする。事前に人払いをしていおいたとはいえ、瞬がいるということは、他の連中も来ているという事。灰司が転生者狩りである事を無闇にバラすわけにはいかない。

 

「次はない……バルジ……」

 

 その目には、激しい憎しみがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬は、フィフティに強引に腕を引っ張られながら移動していた。

 

「なんで無理やり離したんだよ」

「君も彼も、互いの考えに絶対納得しないだろ。あれじゃキリがないから、無理やり離したんだよ」

「なんか子供扱いされてる気分なんだが」

 

 瞬は、無理やり転生者狩りのところから引き離された事が不服の様だった。マサルは間違いなく悪人だし、やったことは許せないが、殺す意味はあったのか。転生者狩りは、悪人が改心するかなんて他人からすれば実質運次第であり、そんなものに委ねるよりは殺した方が確実に安全になる、ということだ。つまりは、性善説と性悪説の違い。それが、あのやりとりを生んでいた。

 フィフティは、その違いからくる意見の対立なんて不毛でしかないと踏んだのだ。互いに納得することが決してない対立なぞ、早めに断ち切るに限る。

 だが、フィフティが瞬を無理やり引き離したのは、それだけが理由ではなかった。

 

「それにだ。君に人殺しを見せる —— 死と向き合うのはまだ早い。幾ら屑でも、直接人の死を見ちゃうのは、結構キツいんだよ」

 

 真面目なトーンで、フィフティはそう言った。

 確かに、瞬はまだ死というものと向き合った事はない。だが、それを何故今更になって言い出すのだろう。こういうのは普通、もっと前に言うべき事なのではないだろうか。

 

「今君はアクロスとして戦いながらも、かろうじて誰も殺していない。だけど、これからの戦いはもっと厳しくなるかもしれない。敵を殺す —— 命を奪わなきゃならなくなるか時がくるかもしれない。アクロスの力を使えば、オリジオン化した転生者を生かしたまま無力化することができるけど、いつもそれが出来るとは限らないんだ」

 

 フィフティの言う事は間違ってはいない。戦いである以上、死からは逃れられない。戦場に死は付き物だからだ。

 転生者の持つ転生特典は、転生者の魂と強く繋がっている。だから、特典を消そうとすれば持ち主たる転生者自身の命に関わる。オリジオン化してしまえば、そのリスクはさらにあがる。だが、アクロスの力には、転生特典を転生者から安全に分離できる能力がある。だから、オリジオン化した転生者を生かしたまま、特典だけを破壊する事ができる。これを使えば、基本的には誰も死なない。

 だが、それが出来ない場合があるかもしれない。今まではたまたま手を汚す事なくうまくいってるが、いずれ手にかけなきゃらならなくなるかもしれない。はたまた、身近な誰かが死んでしまうかもしれない。その時に耐えられるのか。それをフィフティは危惧しているのだ。

 

「命を奪う、というのはかなりキツい事なんだ。特に君みたいな現代っ子にはね。戦い続けるには、それに耐えられる精神を育てるべきなんだ。特に君みたいな人間は、たった一つの死でも、立ち直れなくなるかもしれない」

「……」

「誰も死なない様に、殺す必要がなくなる様にするというのが一番だけども、万が一死に直面した時に備えて、心を鍛えておく。要は重圧からの逃げ方だ。それを知っているかどうかで、メンタルの耐久性が大きく変わるんだよ」

 

 綺麗事かもしれないが、それが一番。だが、万が一を考えて、回復の仕方を知っておく。ようは覚悟を決めろ、という事なのだ。ここから先は、死と向き合う機会が増えるかもしれない。それに耐えられるのか。それが問われているのだ。

 

「それにだ、あれは君の精神衛生を鑑みた上での、彼なりの気遣いだ。ならありがたく受け取るべきだよ。本当なら、殺しの現場なんか見ないに越した事が無いんだからね」

 

 瞬は、転生者狩りの人となりをよく知らない。出会い頭にぶん殴られた事もあるし、正直言って良い印象は持っていない。だが、彼にも他人を気遣う事はできるらしい。そのことを、瞬は意外に思っていた。

 そうこうしているうちに、皆がいる公園に戻ってきた。壁の崩れたデュエルコートの前に、救急車がやってきているのが見える。

 

「瞬!戻ってきた!」

 

 唯が瞬の顔を見るなり、こちらに駆け寄ってくる。

 

「ただいま、皆」

「妹さんなら安心してください。一週間もすれば完治するそうです」

「よかった……」

 

 ハルからその言葉を聞いて、瞬はほっと胸を撫で下ろす。あたりを見渡すと、丁度遊矢が救急隊員の肩を借りながら救急車に乗せられてゆくところだった。瞬は遊矢の元に駆け寄って行き、声をかける。

 

「遊矢、大丈夫か?」

「うん、まあね。アクションデュエルで普段から鍛えてるから大丈夫だよ」

 

 遊矢はそう言ってるものの、一番酷い怪我をしていることには変わりない。カタはついたが、傷跡はそれ以上に大きかった。

 遊矢はどうやら、マサルと最後まで話が通じなかった事に、心を痛めている様だった。

 

「俺、まだエンターテイナーには程遠いみたいだ。まだまだ俺を認めない人は居るんだって痛感した」

「だったらさ、わからせてやろうぜ。お前の決闘でさ。お前と沢渡の決闘、正直……素人目に見ててハラハラした。だから自信を持てよ。ここに一人、お前のデュエルに感化されたやつがいるんだからさ」

 

 瞬は、自分を指差して言う。味方ならここにいるさと、遊矢を元気付けるべく。遊矢はそれを聞いて、笑顔で応える。

 

「……ああ!次はもっと笑顔になれるデュエルを見せてやるさ!」

 

 互いに拳を突き合わせると、遊矢は救急車に乗せられて病院へと運ばれていった。何度失敗しても、更なる高みを目指す。その姿勢には見習うべきものがあると、瞬は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオ・コーポレーション 社長室

 

 舞網市の中心部に聳え立つ、中腹部分がややくびれたような形状の高層ビル。それが、デュエル業界の最大手である、レオ・コーポレーションの本社ビルである。

 その最上階に位置する社長室。街を一望する、一面ガラス張りの壁を背に置かれたデスクに、赤馬零児は座していた。

 

「……で、中島。要件はなんだ?」

 

 零児は、座っている椅子を、デスクの方から窓の方へと回転させながら、デュエルディスクを介して、部下からの通信に応答する。

 

「次元回廊に異常が?」

「はい、接続先が不安定で、此方から他の次元への移動ができないケースが多数報告されております。それに、エクシーズ次元とは1ヶ月近く通信が確認できず —— 」

「他はどうした?」

「融合、シンクロは今のところ接続は問題ないのですが、やはり、この次元と同様に、無秩序な改変現象が頻発しており ——」

「わかった。引き続き調査を頼む。必要に応じて現地民の協力を仰いでくれても構わない」

「は。承知しました」

 

 通信が終わり、室内に静寂が訪れる。灯りの灯ってない部屋の中で、零児は椅子から立ち上がり、月明かりの差し込む窓の方へと歩み寄る。

 街を見下ろしながら、零児は呟く。街を見下ろす零児の、眼鏡越しの眼光には、鋭くも強い信念らしき物が宿っていた。

 

「次元戦争の二の足は踏ませない。侵略者どもの好きにはさせない……」

 

 

 

 

 

 

 




EMってすぐ打点モリモリ森鴎外になるよな……ペンデュラムってすぐ手札がカツカツ勝海舟になるよね……
リンクスでも早速EM魔術師オッドアイズを組みましたが、カードプール少ないにも関わらず高ダメージ叩き出せるので気持ちがええんじゃ。

今回の転生者はど畜生でした。
決闘者独特の思考+転生者独特の屑思考が悪魔的フュージョンしてるので、瞬とはマジで話が通じ合わないんですよ。自分でも書いてて苦しかった……ただ露骨にやり過ぎたのは反省しなきゃいけませんね。


散々屑転生者を見てきて、いよいよ瞬も転生者に嫌悪感を抱き始めました。はてさてどうなるかなー?
そりゃあクズを散々見せられた挙句こんな劇物ぶち込まれたら怒るわ。


ここんとこ屑転生者続きだったんで、そろそろ嗜好を変えたやつに移ろうと思います。1章はやる事多すぎて絡め手を使った敵が中々だせないんだよなぁ。
次回はまたまた驚きのキャラが。それが過ぎたら1章後半戦がいよいよはじまります。

最後が若干適当な気がする。



オッドアイズオリジオン
本体:札道マサル
前世名:小野柘久(おのつみひさ)
転生特典:前世で使用していたカード

熱心な遊戯王ARC-Vアンチ。自分とは異なる意見を持つ奴には徹底して付き纏い糾弾する屑。OCGプレイヤーとしても態度は最悪で相手を煽ったり貶したりを繰り返して出禁になった大会は数知れず。転生後も同じような言動を繰り返していた為にユース資格取り消しもあわや、となっていた。アクションデュエルが嫌いなのでアクションカードは死んでも取らない。

遊矢を甚振ろうとし、決闘で返り討ちにあった。負けたくせに実力行使にでるリアリストの皮を被った人間の屑。遊矢を糾弾しながらそれ以下の存在に成り下がるというエンタメを皆に見せてくれた。
オッドアイズ・ファントム・ドラゴンに裏切られるなど、カードとの信頼はなかった模様。
正直言って決闘者の恥晒し。ルールとマナーを守って楽しく決闘しよう(提案)。




オリジナルカード





アクション・エナジー
通常(アクション)魔法
①自分の墓地のアクション魔法の数×500LP回復する


******


スケールアウト・ドロー
通常魔法
「スケールアウト・ドロー」は1ターンに1度しか発動できず、この効果を発動。するターン、自分はPモンスターしか特殊召喚できず、他のドロー効果を発動できない。
①自分のフィールドに存在するカードが、スケール3以下のPモンスター1体のみの場合、そのモンスターを対象として発動できる。対象のカードをリリースし、除外したPモンスターのスケールの数だけデッキからカードをドローする。


******



オッドアイズ・レムナント・ドラゴン
ATK2000/DFE1300
[★5]効果/ペンデュラム/ドラゴン族/闇属性
【Pスケール;青3/赤3】
①1ターンに1度、自分フィールド上のドラゴン族Pモンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、その攻撃宣言時に発動できる。ダメージステップ終了時までその自分モンスターの攻撃力は相手フィールド上のモンスターの数×300ポイントアップする。
【モンスター効果】
オッドアイズ・レムナント・ドラゴンの①の効果は1ターンに1度しか発動できず、②の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
①このカードが自分フィールド上に表側表示で存在し、自分の「オッドアイズ」モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できず、自分はエンドフェイズまで他のドロー効果を発動できない。
②自分が戦闘ダメージを受ける場合、そのダメージ計算時に発動できる。フィールドのこのカードを除外し、その戦闘で自分が受ける戦闘ダメージを半分にする。


******


オッドアイズ・ファング・ドラゴン
ATK2000/DFE1300
[★5]効果/ペンデュラム/ドラゴン族/闇属性
【Pスケール;青3/赤3】
①1ターンに1度、自分フィールド上のドラゴン族Pモンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、その攻撃宣言時に発動できる。ダメージステップ終了時までその自分モンスターの攻撃力は相手フィールド上のモンスターの数×300ポイントアップする。
【モンスター効果】
このカード名のカードの効果は、1ターンに1しか発動できない。
①このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分の墓地からPモンスター以外の「オッドアイズ」モンスター1体を手札に加える。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できず、Pモンスターしか特殊召喚できない。
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