【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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カブト編後編です。
全開から丸4ヶ月経ちました。大変申し訳ございません。これも全部50人クラフトばっか見てるせいです。恨むんならそちらを恨んで、どうぞ。

お前も遊戯王マスターデュエルやらないか?

●前回までのあらすじ

マスクドライダーを次々と襲撃するカブトオリジオン。
彼の目的はいったい何なのか。

さらにZECTに捕らえられた瞬に、拉致されたヒビキ……一体どうなる⁉


第23話 太陽に近づく飛翔(イカロス・ハイ)

 —— 嗚呼愚かなイカロス。

 —— 蝋の翼で空へと羽ばたいたイカロス。

 —— 太陽に翼を焼かれ、地に堕ちたイカロス。太陽に近づいたが故に、彼はその身を滅ぼした。

 

 

 ただそれだけの話だ。

 これは、太陽に焦がれて次元を超えた男の、破滅への道筋。

 

 


 

 

 カブトオリジオンと交戦を続けていたカブトとガタック。クロックアップが終了してもなお、3人は戦う。

 それを横目に、影山は乗ってきた装甲車へと瞬を連行する。自分をうちのめし馬鹿にしたカブトオリジオンは気に入らないが、それよりも任務が優先される。私怨をぐっとこらえ、抵抗する瞬を車内へと無理矢理押し込もうとする。

 が、ガタックがそれに気づいた。影山の行動は、傍から見れば民間人を無理やりどこかに連行しているようにしか見えなかった。

 

「おい⁉ なにやってるんだよ⁉ 」

 

 カブトオリジオンがカブトと殴り合っている隙をつき、ガタックが影山に詰め寄る。

 

「こいつは昨夜お前が目撃した未確認ライダーだ。こいつが何者であれ、詳しく調べるのは当然だろ?」

「だからって……」

「逃げんなよガタックゥ……!お前は俺の糧になるんだよ!」

 

 影山に反論しようとしたが、戦いの最中話し合いをしているのが気に食わなかったカブトオリジオンが、カブトの頭上を飛び越えてガタックの元へと着地し、横から飛び膝蹴りでどついて会話を終わらせる。頬に膝が直撃し、サッカーボールのように吹っ飛んでゆくガタック。カブトオリジオンは、影山の方を一瞥すると、

 

「負け犬に興味はない、とっとと失せろ」

 

 と、あからさまに影山を見下したような反応を示す。影山はそれに怒りをあらわにするが、

 

「お前との勝負は昨晩ので着いただろう?俺はお前より強い。お前は俺より弱い。その事実が変えられるとでも?」

「貴様あ……!一度勝ったくらいで調子に乗りやがって……!」

「俺とお前とでは勝負にならない。矢車ならまだまっとうな勝負になったかもしれんが……お前じゃどのみち無理だな。俺ははじめから結果が見えている勝負にかまけている暇はないんだ」

 

 全否定であった。言いたいだけ言うと、カブトオリジオンは影山の前から去り、立ち上がったガタックに再び攻撃を仕掛け始めた。

 それは、頭の傷口が開きそうなほどの屈辱だった。噛み締めた唇からは血が滲んでいた。しかし、本人の言う通り、カブトオリジオンは強い。ましてや今の影山はまだ怪我が完治していないため、彼の言う通り勝負にならないかもしれない。

 

「隊長、搭乗完了しました」

「あ、ああ……よし、この場を離脱する」

 

 部下からの報告で我に返った影山は、装甲車に乗り込みこの場から離脱を始める。

 

「待て!」

「戦いから逃げるな!」

「ぐふっ⁉ 」

 

 動き出した装甲車を追いかけようとするガタックだが、戦いから逃げることを許さないカブトオリジオンがその腹を蹴り上げて妨害する。

 その背後から、カブトのクナイ型武装・カブトクナイガンの刃が襲い掛かってくる。カブトオリジオンは、それを振り返ることなく片腕で防ぎ、身体を素早く捻って回し蹴りをくりだす。

 

「ふっ!」

 

 カブトオリジオンの回し蹴りに対し、カブトはハイキックで応戦する。両者の足がぶつかり合い、膠着状態に陥る。ぐぐぐ、と力を込めて、互いに互いの足を力で押し切ろうとするが、両者とも譲らない。

 

「今だ!」

 

 そこに、オリジオンに鳩尾を蹴られてダウンしていたガタックが、肩のガタックダブルカリバーを、オリジオンに向かって投擲した。オリジオンはそれを避けるべく、あげたままの足を素早く下ろし、上半身をマトリックスの如く大きく後ろに逸らしてそれを避ける。

 ガタックはすかさず残ったもう一振りのカリバーを投げる。オリジオンは上体を逸らした体制のまま地面に手をつくと、バク転をしながら飛んできたダブルカリバーを蹴って弾いた。

 

「なっ……」

 

 ブーメランの如くもどってきたダブルカリバーを肩に戻して、ガタックはオリジオンに向かって走る。そしてオリジオンに向かって飛び蹴りをかます。

 しかしオリジオンはそれをパンチ一つで返り討ちにした。ガタックが地面に落ちると同時に、今度はカブトの猛攻が始まる。

 

「来い、カブト!」

「 —— !」

 

 オリジオンの挑発を意に介さず、カブトはオリジオンの胸部を貫くような鋭いパンチを繰り出す。オリジオンはそれを防御する素振りも見せずにモロに喰らうが、あまり効いていないように見える。

 カブトはそれに動じる事なく、オリジオンの首元目掛けて反対側の腕を振り下ろす。オリジオンはそれも防ぐことなくそのままうける。

 

「どうした、お前の力はもっと上だろう!」

 

 オリジオンはそう叫びながら、カブトの腕を掴もうとするが、カブトは素早く腕を引き、逆にオリジオンが伸ばしてきた腕をへし折る勢いでチョップを振り下ろし、オリジオンの腕を叩き落とす。

 

「まだ隙が多いな」

「ああ、だが俺はまだ強くなる。あんたを倒せるほどにな!」

 

 何がこのオリジオンの、カブト打倒という執念を滾らせているのか、誰にも分らない。ただ、彼は本気でそれをやろうとしていること、その熱意だけはガタックにもカブトにも伝わってくる。

 オリジオンは雄叫びをあげながらカブトに殴りかかるが、カブトはその拳を容易く打ち払い、返しにオリジオンの脇腹に拳を叩き込み、オリジオンの頭を殴り倒す。

 

「はぁっ!」

「ぐあっ⁉︎ 」

 

 カブトのハイキックを腹に受け、オリジオンは大きく吹っ飛ばされる。カブトはオリジオンの方に悠々と歩を進める。

 

「トドメを刺す!ライダーキック!」

《1、2、3……RIDER KICK》

「ライダーキック」

《1、2、3……RIDER KICK》

 

 カブトとガタックは、それぞれゼクターに付いているボタンを押した後、ゼクターホーンを左に倒し、再度右に倒す。すると、ゼクターからタキオン粒子が、頭部の角を経由して右足に流れ込む。

 そして、ガタックはオリジオンの方に走りながら飛びかかり、跳び回し蹴りを、カブトはオリジオンの至近距離まで近づいて回し蹴りを、同時に叩き込む。

 ダブルライダーのキックが直撃し、オリジオンは膝をつく。流石にこれで倒れただろうとガタックは思っていたが、どうやら違うようだ。

 

「ぬう……ぐ、ぐうおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 渾身の雄叫びをあげながら、オリジオンは立ち上がった。その直後に人間の姿に戻ったが、彼は身体の随所から血を流している。満身創痍だが、まだ生きていた。

 

「なっ……まだ生きているのか⁉︎ 」

「当たり前だ……俺が負けるはずが無い!だがこれでハッキリしたよ……俺がまだ力不足だということがね……」

「まだやるのか」

「ガタックとあと1人、そいつを倒したら再戦とする。お前との決着を待っているぞ、カブト!」

「まっ……」

 

 オリジオンだった青年はそう吐き捨てると、常人離れした跳躍力で隣の線路を飛び越え、線路の向こう側へと逃げていってしまった。

 2人は変身を解く。そして加賀美は、オリジオンの捨て台詞で、ある事に気づく。

 

「あと1人……まさかアイツも⁉︎ 天道、俺は奴を追う。お前は影山を追ってほしい」

「まったく、ZECTも懲りないな。これではまるで悪役のする事だ」

 

 加賀美はそう言い残し、即座にバイクで走り出す。というか、陸橋の上まで投げ飛ばされていたはずだが、一体いつの間に近くに持ってきたのか、そしてよく壊れていなかったな、とか突っ込んではいけない、いいね?

 天道としても、先程のライダー —— アクロスについては多少ながら気になってはいるし、ZECTが組織外のライダーについてあまりよく思っていないことからも、影山に連れ去られた少年がロクな目に合いそうにないというのは容易に考えられる。後者については、果たしてそれがZECT製でないライダーにも適用されるのかどうか、些か疑問ではあるが。

 

「夕飯の仕込みでもしようと思ったが……これは忙しくなりそうだ」

 

 夕飯の事を考えながら、天道はバイクのエンジンをかける。

 そこに、

 

「あのさあ、ちょっと頼みごとがあるんだけどいいかい?天道総司くん」

 

 (フィフティ)からのコンタクトが、あった。

 

 


 

 

 

 

 

 

 一方、ZECTに捕らえられることとなった瞬。装甲車に無理やり押し込まれ、周囲の異様さにオドオドしているうちに、ZECT本部へと着いていた。

 手錠をはめられ、ゼクトルーパーに囲まれながら、瞬は車から降ろされる。場所は何処かの地下駐車場だろうか。ここまで外の景色を見る事が出来なかったため、ここがどのあたりに位置せるのか、瞬には見当もつかない。

 

「なんなんだよ、あんた達は……」

「話は中で聞く」

 

 瞬が思わずぼやいた言葉に、ゼクトルーパーにうちの1人が冷たく答える。まるで犯罪者みたいな扱われ方をされながら、瞬は建物の中へと連れていかれる。

 クロスドライバー含め、貴重品は全て取り上げられてしまった。唯は凪沙を連れてうまく逃げてくれただろうか。オリジオンに立ち向かっていった古城達は無事なのだろうか。ネプテューヌとヒビキはほったらかしにしてしまったがどうしているのだろうか。瞬は不安から、この場にいない皆の心配ばかりしてしまう。

 色々と考えているうちに、瞬は一つの扉の前に立たされる。ゼクトルーパーが扉を開くと、中には刑務所の面会室のような内装の部屋が広がっていた。

 

「入れ、尋問を行う」

 

 突き飛ばされるような形で、瞬は部屋の中に押し込まれる。瞬は強引に、部屋に置かれたパイプ椅子に座らされ、両脇にゼクトルーパーが佇む。

 瞬が着席すると同時に、ガラス窓の向こう側の扉が開く。扉を開けて中に入って来たのは、瞬を殴り飛ばしてここに連行して来た男 —— 影山であった。影山は、瞬からはガラス窓を挟んで反対側の椅子に座り、話し始める。

 

「さあ、話をしようか」

「……」

「お前の個人情報を調べさせてもらった。逢瀬瞬、16歳の高校生。両親は既に他界し、妹と共に叔父の手で育てられる —— 」

 

 影山は、手に持った書類の内容を読み上げ始める。瞬の生年月日、住所、家族構成、学歴ect……瞬はそれを延々と聞かされ続け、時折、読み上げられたものの確認を取らされる。こうして、自分の人生の足跡を赤裸々に読み上げられるというのは、なんだか恥ずかしい気分になる。

 一通り資料を読み終わった影山は、資料を乱雑にカウンターの上に置く。

 

「経歴上は何かしらの組織との関係性は見出せない、か。しかし、まだ秘密裏になんらかの組織と通じている可能性も否めない」

「俺怪しい者じゃないですよ」

「信用できるか!そういう台詞が出る時点で信用性は皆無なんだよ!」

「デスヨネー」

 

 どうにかこの場を切り抜けなければ、と思うが、緊張しすぎて思うような言葉が出ない。右も左も分からない状態に陥るのはもう何度目になるのかは分からないが、今回はまた違った方向にマズイように思える。

 自身に落ち着くように言い聞かせ、瞬は口を開く。ふと、気になったことがあるのだ。

 

「あの……ベルトの方はどうなってるんすか?」

「それならここだ」

 

 そう言うと、影山は机の下からクロスドライバーを瞬に見せつけ、机の上に置く。手を伸ばせば届きそうな距離だが、瞬と影山の間は一枚のガラスに隔てられている上、瞬は手錠をかけられているため、それは出来ない。

 

「言っておくがお前の元に返ってくることは二度とない。あれは後ほど解析班に回す。お前の使っているライダーシステムは、我々のモノとは大きく異なる。あれは何だ?あんなモノを持ってるお前は何者なんだ?」

 

 瞬に詰め寄る影山。さて、どうしたものか。強引なやり方だが、影山の行動は筋が通っている。アクロスという未知の存在に対し、その解明を試みる。向こうからすれば、アクロスが敵か味方かわからないのだから無理もない。

 だが、素直に話したところで、彼等は信じるのだろうか。瞬自身も含め、転生者だのオリジオンだの、そういった類の話を簡単に信じるような奴はいない。そもそも瞬もそこまでアクロスの力について詳しいわけではない。

 

「素直に話したら釈放されるんですよね……?」

「それは上が決めることだ」

 

 瞬は恐る恐る影山に聞いてみたが、その結果は御覧の通り。明らかに帰す気がない。

 

(やべえなコレ……俺これからどうなんの?何されんの?無事に帰れんの?)

 

 必死に考える。瞬には、このZECTとやらがどんな団体なのかわからない。だが、なんだかよく分からないうちに殴り倒されてここに連行されたもんだから、当然ながら信用はできない。それに、馬鹿正直に話した所で無事に帰してくれるとは到底思えない。良くて飼い殺し、最悪ベルトだけ手に入れて瞬は終了(ころ)されるのが関の山だ。

 —— 早い話、詰み(ゲームオーバー)だった。どう足掻いても、自力でここを切り抜けられるビジョンが浮かばない。

 どうせ助からないなら。いっその事こと全部話して ——

 

「……駄目だ」

 

 すんでのところで、瞬は踏み留まる。

 瞬を力ずくで拉致した組織だ。馬鹿正直に洗いざらい話せば、唯達も危険に晒されるのは想像に難くない。それはだめだ。ただでさえギフトメイカーとの戦いに巻き込まれているというのに、これ以上皆を危険に晒すわけにはいかない。

 瞬は顔を上げ、率直に述べる。

 

「お前達を信用できないし、皆を危険には晒せない。だから言えない」

「なんだと……?寝言は寝て言えよ餓鬼ィ……」

「馬鹿よせ!影山さんの前だぞ⁉︎ それに下手に傷を負わせたら面倒だろうが!」

 

 瞬の横にいたゼクトルーパーが、瞬の反抗的な態度に苛立ち、思わず瞬の胸ぐらを掴み上げ、それをもう一人のゼクトルーパーが静止する。

 

「くそっ!」

 

 ゼクトルーパーに乱雑に突き飛ばされ、瞬は椅子に身体を打ちつけられるようにして座らされる。思うようにいかない現状に苛立ち、影山の顔が歪む。

 が、いくら意地を張ろうがどのみち瞬は助からない。アクロス周りを除いて個人情報を握られている以上、もはやどうしようもなかった。その事実に影山はほくそ笑み、席を立って瞬に背を向ける。

 

「こうも臆せずZECTに歯向かうとは、相当な命知らずなのか馬鹿なのか……まあいい、ひとまずお前は独房行きだ。どうせ逃げられはしないんだ」

 

 ガラス越しにゼクトルーパーに、瞬を独房に連行するように指示を出す。

 さらに奥深くへ、連れて行かれる。

 


 

「……?」

 

 ネプテューヌは、一本の大木の下である存在と睨み合っていた。

 ここは先程までいた公園からそう遠く無い、寂れた神社。瞬がクロスドライバーを拾った場所でもあるのだが、その事は彼女は知らない。

 電波環境の良い場所求めて小旅行していたら、いつの間にやらヒビキがいなくなっていた。どこを探せど見つからず、あったのは買い物袋のみ。その後、いなくなったヒビキを探して近くを探し回っている最中に、この神社に立ち寄った彼女だったが、ある存在によってここで足止めを食らっていた。

 

「……」

 

 御神木らしき大木の根元。そこには一匹の猫。自分の髪色と同じ毛色の猫に、ネプテューヌは、妙な親近感を感じていた。こうして間近で相対しても微塵も逃げる気配を見せないのをみると、随分と人間慣れしているようだ。

 

「ま、私は女神なんですけどねー!ドヤァ!」

 

 一体誰に対してのドヤ顔なんだろうか。そしていきなり地の文に反応するなと言いたい。ネプテューヌにそう突っ込みをいれるかのように、猫の目がジト目に変わる。

 

「んー、困ったなー。今猫にあげられるようなもの、持ってないんだよなー」

「にゃーご」

 

 流れ的になんかあげたりした方がいいのかな、と思うネプテューヌだったが、生憎手持ちはゲーム機とチョコレートと玉葱のみ。後ろ2つは猫の体にはよろしくないものとされているものなので、あげたくてもあげられない。

 やばいな、折角主人公らしいシチュエーションが巡ってきたのに、これじゃ主人公らしいことなんも出来ないぞ。そう思って焦るネプテューヌ。はてさてどうしようかと考えていたのだが、

 

「いやいやいや!それよりもヒビキちゃん探し!一体どーこに行ったのやら……」

 

 本来の目的から外れることなかれと自分に言い聞かせて、ネプテューヌは自分の頬を叩き、気を取り直してヒビキ捜索を再開する。買い物袋をほっぽり出して一体何処に行ったのやら。

 まったく困った子だ、と呆れながら神社を後にする。がら

 

「……あのー?」

 

 鳥居をくぐり抜けてから数分歩いたあたりで、背後から猫の鳴き声が聞こえてきた。ネプテューヌはチラリと後ろを見る。そこには、先程神社にいた猫が鎮座していた。

 

「駄目だよ、着いてきても。あげられるもんは無いし、ウチじゃ多分ペット飼えないし。他の人にねだりなよー」

「ねーむぅ」

 

 振り返ってちょっと強めに言ってみたが、通じていないのか無視しているのかはわからないが、猫は逆にネプテューヌに近づいてくる。そして、凄い跳躍力を活かしてネプテューヌに飛びついてきた。

 

「ひゃうあっ⁉︎ 」

 

 両手が買い物袋で塞がっているネプテューヌは、猫の体当たりになす術なく押し倒されてしまう。なんか買い物袋から卵が割れる音がしたがそれは聞かなかったことにしたい。

 ネプテューヌを押し倒した猫は、甘えるような鳴き声をだしながら、のしのしと彼女のまな板な胸部を踏み締め、ネプテューヌの頭部に向かって歩いてくる。そして、首を伸ばしてネプテューヌの頬を舐め始めた。

 

「あれ……これ、懐かれちゃった?懐かれる要素あったかな……」

 

 なんか頬にザラザラした感触が伝わる中、凄まじいスピードで野良猫とフラグを立ててしまった事を疑問に感じるネプテューヌ。だが彼女は基本的に能天気なので、これも自分の主人公気質が成せる技だということで納得してしまった。

 だからといってこの猫を連れて帰るわけにはいかない。多分瞬が反対する。しかしこんなに懐かれては置いて帰るのには一苦労しそうだ。

 

「はあー、主人公は辛いなー」

 

 メタじみた台詞を吐きながら、ネプテューヌは起き上がる。先程から空模様が怪しくなってきている。これは一雨降るんじゃないだろうか。できればその前に見つけたいな、と思いながら、ネプテューヌは立ち上がる。

 

「……あれ?」

 

 そんな彼女の視界に、あるものが映る。

 明らかにじめじめとした廃工場。敷地を覆うコンクリートの隙間から雑草が茂っているあたり、かなり長い間放置されているのだろう。その建物の入り口から少し離れたあたり。古びたコンテナが積み上げられている箇所に、誰かがいる。

  ネプテューヌはその顔には見覚えがあった。なんせさっきも会ったのだから。

 彼の名は無束灰司。転生者狩りのエージェントだ。

 


 

 市内郊外 雑木林

 

 一方、2体のオリジオンと戦う羽目になった古城と雪菜。

 2人は、なるべく人気(ひとけ)のない場所を目指して移動していた。古城の眷獣は揃いも揃って破壊力の塊。そんなもんを街中で解放すればどうなるのかは言うまでもない。故に、周りへの被害が及ばない場所まで逃げていた。

 バルジは、実験がてらにアクロスにオリジオンをぶつける手筈が狂ったことを愚痴りながらも、移動する戦場について行っていた。最低でもデータが取れればいいらしい。だが逃げ回る2人については本気でつまらないと思っているようだ。

 

「おいおい、つまんねーのなお前ら。周りに気い使って逃げ回るとか……別にいいだろ、周りを巻き込んでもさ。それで死んだら本末転倒だろ?」

「お前はそうなんだろうが俺は違うんだよ!」

「良い子ぶるなよ。巻き込まれて死んだやつはそいつが悪い、それでいいってのに……」

「ふざけんなよテメェ……んな道理通る訳ねえだろ……!」

「俺と話している暇があるのかな?」

 

 バルジの自分勝手な考えに嫌悪感を示す古城だったが、突如として古城の足元の感覚が柔らかくなり、目線が下がる。下を見ると、古城の膝から下が地面に埋まっていた。慌てて足を引き抜くと、乾いた泥団子を潰したような感触がした。

 

「地面が柔らかく……⁉︎ 」

 

 ばっと後ろを振り向くと、古城のすぐ後ろまでタイアードオリジオンが迫ってきていた。タイアードの振り下ろされた拳を、咄嗟に腕でガードする古城。

 そして、劣化した足元の砂を蹴りながら後方に飛ぶ。砂で目眩しを狙ったのだが、劣化した砂粒はタイアードの顔に届く前に霧散する。

 

「……!」

 

 タイアードは無言で古城に飛びかかる。古城はタイアードの攻撃を、近くの木を盾にしてやり過ごそうとする。しかし、その木はタイアードの拳が触れた瞬間、まるで砂のように崩れ落ちてしまった。その拳は、崩れた木を貫通し、古城の胸元に突き刺さる。

 

「グッ……」

 

 殴られた瞬間、古城は肺から空気が放り出されているような感覚がした。助走をつけた渾身の一撃は、古城の身体を近くの木に猛スピードで叩きつける。

 咳き込みながら古城は立ち上がるが、先程からなんだか胸元に肌寒さを感じる。見ると、古城の着ていたパーカーの殴られた箇所に、虫に食われたように穴が空いていた。

 

「は……?」

「タイアードは触れるモノ全てを劣化させるのさ。お前の腕、はたして動くかな?」

「……あれ?」

 

 バルジに言われるがまま、古城は左腕に力を込める。しかし、左腕は動かない。だらんと垂れ下がったままだ。痛みも熱も感じ取れない。まるで神経が通っていないような感じだ。

 

「まさか、さっき攻撃を防いだ時に……」

「御明察。俺の邪魔をした罰だ。思う存分いたぶられてくれ!」

 

 バルジはタイアードにそう命じ、物陰に身を隠す。仮面ライダーが相手ではないからか、今回は自分は戦わないつもりらしい。

 タイアードオリジオンは、地面を指でなぞりながら古城に接近し、跳び蹴りを繰り出す。とにかくコイツに触れるのはやばいと判断した古城は、即座に避けようとするが、足がうまく動かない。足元を見ると、先ほどと同じように、古城の足が地面に沈んでいた。古城は急いで足を引き抜こうとするが、それよりも早く、タイアードオリジオンの足裏が古城の胴体に着弾した。

 

「いっ⁉ 」

 

 蹴とばされた古城は、雑木林を突き抜け、隣の遊水池のほとりまで転がっていく。吹っ飛んできた古城に驚いて、池にいた水鳥が一斉に飛び去ってゆく。

 

「クソ……満足に動けねえ……」

「HAHAHA……!」

 

 池に架かった橋を這う這うの体で渡る古城に、タイアードオリジオンが追い付く。この状態で逃げるのは非現実的な案だ。どうあがいても、撃破一択しかない。

 タイアードオリジオンは、追い詰められつつある古城を見て笑っている。それを見て、古城は怒りがこみ上げてきた。

 

「なめんなよ!いきなり戦う羽目になった俺達の気持ちも考えろっての!」

「FAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 古城の怒りに呼応するようにして迫るタイアード。両手を広げ、古城をホールドするような姿勢になる。どうやら能力で一気に古城の身体能力を奪う算段らしい。

 

「やられっぱなしで終わるかよ!」

 

 古城はキレ散らかしながら、迫るタイアードの額めがけて勢いよく頭を振り下ろす。両者の頭が衝突した瞬間、ゴチンという鈍い音が周囲に響き渡った。

 頭突きをくらったタイアードも、繰り出した古城も、双方が痛みに悶えながらのけぞる。しかし古城は痛みをこらえ、よろけたタイアードの顔面を右拳で容赦なく殴りつけ、その後、タイアードの顎を思いっきり蹴り上げて宙に浮かす。

 頭部に三発くらったタイアードは、犬のような悲鳴を上げながら、背中から橋の上に落ちる。このまま追撃を加えようとした古城だったが、その時、突如として古城の足元が大きく揺れる。

 

「BUUUUUUUUUUUUU……!」

「まさか……!」

 

 タイアードの手のひらは、橋桁に触れていた。それがどういう結果をもたらすのかは言うまでもない。なんせ先程まで散々味わされたのだから。

 バキバキと、橋の随所が音を立てはじめる。ガクンと、水平だった橋桁が、タイアードの方へと傾いてゆく。タイアードの能力で、橋全体が急速に劣化していっているのだ。早く止めなければ、と古城は駆け出すが、すでに遅し。池に架かっていた橋はバラバラになって崩壊し、タイアードと古城は池の中に落っこちていった。

 

「ぶはっ……!ぐおおお……!」

 

 藻や水草の生い茂る水中へと、古城の身体が沈んでゆく。諸説あるが、吸血鬼は水に弱い。それは古城も例外ではなく。一刻も早く水中から這い出なければ、古城が負ける。

 だが、これはチャンスだった。今ならば、最大級のダメージをタイアードにぶち込める。古城は素早く橋の残骸にしがみつき、いち早く岸に這い上がる。

 

疾く在れ、獅子の黄金(きやがれ レグルス・アウルム)!」

 

 古城はここにきて、ようやく眷獣を解放した。周囲に凄まじい稲妻を迸らせながら、稲妻の身体を持つ雷光の獅子が古城の背後に顕現する。古城が最初に開放した眷獣だ。その嵐のごとく荒れ狂う強大な力の塊は、ただ存在するだけで、周囲に雷を落としてゆく。

 タイアードはそれをみてマズいと判断したのか、慌てて池から這い上がろうとする。しかし、それよりも早く、雷光の獅子がタイアードに向かって水面に飛び込んでゆく。

 

「感電しやがれこの野郎!」

 

 池に背を向け、古城は走り出す。

 瞬間、池全体が黄金の稲妻に包まれた。

 


 

 灰司は、廃工場内の様子を伺っていた。

 

(司馬神真……ここが奴の根城か)

 

 組織からの命令で始末することになった転生者。そいつを追い続け、ようやくこの場に辿り着いたのだ。

 しかし、この廃工場内には無数の罠が仕掛けられている。唯一の入り口にも、巧妙に隠されてはいるが、赤外線センサーらしきものが設置されている。用意周到に張り巡らされた罠を確認しながら、灰司は、転生者にしては頭が回る奴だな、と感心していた。

 ともかく、この罠を解除しなければ侵入は厳しい。仮に侵入できたとしても、すぐに撮り逃してしまうだろう。まずは罠の位置を探る必要がある。灰司は、手持ちのダークライダーの力の中から、この状況に役立ちそうなやつがないかと探り始める。

 そこに、喧しい頭痛の種がやってきた。

 

「あれ、さっきの根暗そうな人だ」

(クソッタレ……邪魔しに来てんじゃねーよ)

 

 なんという事でしょう。猫を抱えたネプテューヌが、いつの間にか灰司の背後に立っていたではありませんか。あまりのタイミングの悪さに、灰司は思わず舌打ちをする。

 が、即座に猫をかぶって取り繕う。相手は子供だ、適当に言いくるめれば何とかなるはずだ。

 

「な、なんですか……?」

「いや、こんなところで何してるのかなーって思いまして」

 

 それはこっちの台詞だ、と灰司は思わず言いたくなった。先程は瞬と一緒にいたはずだが、一体どこにいったのやら。保護者ならばその責任を果たしてもらいたい。子供に仕事の邪魔をさせるな。

 らしくないとは思いながらも、穏便にネプテューヌをこの場から引き離そうと試みる。

 

「ほら、この辺は危ないですから……君は帰りなさい」

「いやーあのさぁ、帰りたいのはやまやまなんだけど……ヒビキちゃんがどっかに行っちゃってさぁ……見つけるまではどうしても帰れないんだよね……瞬も帰ってこないし」

「マジかよ……」

 

 できることならさっさと瞬に押しつけてやろうと考えていたのに、肝心の瞬が行方知れずになっているという事実に、思わず悪態をつく灰司。なんでこうも厄介事に巻き込まれるんだアイツは。

 アテが外れて頭を抱える灰司。ネプテューヌの好奇心が、容赦なく灰司の被った猫に損害を与えてくる。

 

「で、何してるの?」

「君には関係ないでしょう。君が探してる人は多分ここにはいませんよ……ほら行った行った」

「じゃあさ……瞬とヒビキちゃん探すの手伝ってくれない?」

「いや僕は忙しいんですよ」

「こんなところでじっとしているだけじゃないか」

「ああギタギタにしてぇ……」

「なんか急にキャラ変わった⁉︎ 」

「⁉︎ いやなんでもないなんでもないです!」

 

 危ない危ない。ネプテューヌのしつこさに若干心の声が漏れ出てしまっていたようだ。なんとか取り繕うが、灰司の胃痛メーターは上昇する一方。これだから子供は嫌なのだ。

 

「兎に角此処に瞬はいませんよ。ほらさっさと他の場所に探しにでも行ったらどうですか」

「手伝ってくれないの?友達なんでしょ?」

(誰が友達だ!あんな考えなしの馬鹿タレと友達になってたまるか!)

 

 ネプテューヌの発言に、思わずカチンときてしまう灰司。瞬はただ組織の命令で監視しているだけであり、灰司の転生者狩り業に無駄な首を突っ込む邪魔者でしかないのだ。

 それに灰司に友達なんてものはいない。既に皆世界ごと死んだのだから。灰司の全てはもう残ってはいないのだ。

 

「にゃぉう!」

「あっ!」

 

 その時だった。灰司の苛立ちを察知したのか、ネプテューヌの腕の中の猫が、この刺々しい雰囲気から逃れるかのように、ネプテューヌの腕からするりと抜け出し、工場内へと向かって走り出してしまった。

 

「待って!どこいくの⁉︎ 」

「馬鹿野郎お前何やって —— 」

 

 猫を追いかけるネプテューヌと、それを慌てて止めようとする灰司。先程灰司が調べたとおり、工場内には罠がたくさん張り巡らされている。そんな場所に不用意に踏み込めばどうなるか、言うまでもないだろう。

 ネプテューヌが工場内へと一歩足を踏み出したその瞬間。下にスイッチでもあったのだろう。彼女の足元で、カチリという音がした。

 

「ひゅ?」

 

 すると、どういう絡繰かは不明だが、壁の隙間から一本のナイフが、 ネプテューヌ目掛けて飛来してきた。ナイフの軌道は、一直線に彼女の側頭部を目指している。

 

「くそ!世話が焼ける!」

 

 兎に角、どうにかしなければならない。灰司は悪態をつきながら、地面を強く蹴り、一瞬のうちにネプテューヌの間近に接近し、飛来してきたナイフを素手で叩き落とした。少し手に傷がつき、少量の血が飛び散るが、大した事ではない。

 

「ったく、こんな馬鹿が女神だとは……ゲイムギョウ界ってやつは何考えてんだ、ったく……」

「なんかディスられた⁉︎ てか大丈夫⁉︎ 血出てるけど……」

「誰のせいだと思ってるんだ」

「あうっ」

 

 負傷を心配してくれるのはありがたいが、原因はネプテューヌである。灰司の中でのネプテューヌに対する評価は、右肩下がり一直線であった。散々振り回してくれた腹いせに、デコピンを一発彼女にくれてやる事にした。

 デコピンを食らったネプテューヌは、額を抑えながら唸る。その様子を見て、いい気味だと灰司は鼻で笑う。

 

「というか、なんか急にガラ悪くなったね?さっきと全然キャラ違うじゃん……てかそっちの方が自然体なんじゃ?」

「あ、やべ」

 

 思わず被ってた猫をかなぐり捨ててしまっていたようだ。ネプテューヌに指摘され、ようやく灰司はそれに気づいた。そして、こんな凡ミスを頻発するなんてらしくもない、と軽く自己嫌悪に陥る。

 不機嫌そうに舌打ちをしながら、あたりをぐるりと見渡す。巧妙に隠されてはいるが、そこかしこに罠が張り巡らされている。灰司一人ならなんとかなるが、さっきのような事を防ぐにも、ネプテューヌを不用意に行動させるわけにはいかない。

 

「……まあいい、兎に角お前は勝手に動くな」

「でも猫をほっとけないよ」

 

 その言葉に灰司はイラッときた。何我儘ほざいてんだクソガキ、と。

 しかしながら、ほんの少しの間といえ、ネプテューヌとあの猫の間には縁ができてしまっている。彼女の善性は、それを放っておくことを許さなかった。

 そして灰司は、人の善性の厄介さというものを知っている。それは時として、灰司のような人間にとっての1番の敵になる。理屈や大局をガン無視して、それらを打ち破ってしまう。転生者狩りとして幾人もの転生者を殺し、捕らえてきたが、そういった“善意”に邪魔をされたことは数えきれない。

 

「……」

「……」

 

 無理矢理にでも黙らせることは可能だが、敵のお膝元で騒ぎを起こすのは愚の骨頂。かと言って今更罠地帯のど真ん中からネプテューヌを帰すのは骨が折れるし、そもそも本人にその気はない。

 ぶっちゃけると、灰司に選択肢は既に無かった。頭が痛くなりそう(というかもうなっている)だが、本人の身の安全の為にも、彼女を連れていくしかない。ゲイムギョウ界ならともかく、この世界ではネプテューヌは基本的に無力な存在なのだ。

 

「ついて来い。怪我したくなければ、俺から決して離れんなよ」

「合点承知っ!」

「……駄目そうだなこれ」

 

 今日はきっと厄日なんだろう。灰司はそう思わずにはいられなかった。

 


 

 神代邸

 

 都心から少し離れた位置にある豪邸に、加賀美は来ていた。ヨーロッパとかその辺りにありそうな庭園を抜け、豪邸の玄関前までやってくる。

 庭先で待っていた加賀美のもとに、白いタキシードを着た茶髪の青年が姿を現す。彼の名は神代剣。名門貴族ディスカビル家の末裔にして、ZECTのマスクドライダーシステムの資格者の一人である。

 

 

「忠告はありがたいが、気持ちだけ受け取っておこう。心配は無用だ」

「奴は強敵だ。お前1人じゃ多分勝てない」

「随分と舐められたものだな。俺は全てにおいて頂点に立つ男、無論戦いにおいても同じことだ。それが分からないお前ではあるまい?」

「……」

 

 駄目だこれ、話聞いてくれそうにないぞ。元よりプライドの高い剣が素直に忠告を聞いてくれるとはあまり思っていなかった加賀美だが、案の定それが的中し、げんなりとしてしまう。

 

「まあせっかく来たんだ。茶でも飲んでゆくがいい」

「だからそんな場合じゃ……」

 

 もてなしてくれるのは有り難いが、今はそんな場合ではい。いつオリジオンがここにやってくるのか分からないのだ。しかし剣は加賀美の呼びかけにも応えず、屋敷の中へと入ってゆく。加賀美も剣を追い、中に入る。

 2人が着いたのは、客室だった。室内はいたるところに華美な装飾が施されているが、テラスに通じる窓にはカーテンがかかっており、部屋は若干暗く感じる。

 

「む、カーテンが閉じているではないか」

 

 剣がそれに気づいて、カーテンを開ける。

 

 

「よう……」

 

 カーテンを開いた窓の向こう側には、カブトオリジオンが佇んでいた。

 

 

 

「っ⁉︎ 」

「入るぜ」

 

 カブトオリジオンはそう言うと、容赦なく窓ガラスを蹴破って部屋の中に入って来た。大きな音を立ててガラスが砕け、破片が室内に散らばってゆく。剣は咄嗟に顔面を腕で覆いながら、部屋中に飛び散るガラスの破片から逃れる。

 

「俺の屋敷に土足で踏み入るとはいい度胸だな……!」

「そんなことどうだっていいだろう。どうせこれからここは戦場になるんだからな」

「お前の目的はなんだ⁉︎ 何故ライダーを襲う⁉︎ 」

「カブトだ。俺が用があるのはカブトだけだ」

 

 加賀美の問いかけに、オリジオンはそう答える。加賀美と剣は、それを聞いて訳が分からなかった。カブトが狙いならば何故、他のライダーを襲っているのだ?奴がライダー打倒にもやす信念はかなりのものだ。しかしそれならば、余計に訳が分からない。

 二人の疑問を察したのか、カブトオリジオンは、ガラスの破片を踏み砕きながら答える。

 

「レベリングだよ。俺が強くなってカブトに挑むための踏み台になれと言ってるんだ」

「貴様……この俺を踏み台呼ばわりとはいい度胸だな。ふざけるのも大概にしたらどうだ?」

 

 その答えを聞いて、剣が思わず反発する。

 すべては前哨戦。言うなればRPGで大ボスに挑むための経験値稼ぎ。カブト以外のライダーは、そのためだけに倒される存在だと言っているのだ。

 

「口だけならどうとでも言える。御宅を並べる暇があるなら俺と戦え、そして完膚なきまでに倒されろ。お前達を倒す事で俺は更なる高みにのぼるのだ……!」

「調子に乗るな……俺は全てにおいて頂点に立つ男だぞ?」

《STANDBY》

 

 その音声と共に、剣の足元に小さな穴が空き、そこからサソリ型のガジェット —— サソードゼクターが這い出てきて、剣の手のひらのなかめがけて跳躍する。

 

「変身」

《HENSHIN》

 

 剣は、剣型モジュール・サソードヤイバーの鍔の部分にゼクターをセットする。すると、ヤイバーを持っている右手を起点に剣の身体が装甲に包まれてゆく。紫を基調とする装甲に、随所にオレンジ色の管が繋がっている。これが剣のもう一つの姿、仮面ライダーサソードである。

 

「さあ挑んでくるが良い、俺が完膚なきまでに打ち倒してやろうじゃないか」

「そうはさせない!変身!」

《HENSHIN》

 

 カブトオリジオンを止めるべく、加賀美もガタックに変身しながら突っ込んでゆく。

 

「馬鹿の一つ覚えとはこのことか。お前の攻撃は既に見切った!」

「ぐあああっ!」

 

 カブトオリジオンはそう叫びながら、突っ込んできたガタックを軽く蹴り飛ばす。ガタックは壁際に置かれていたキャビネットにぶち当たり、キャビネットをぶち壊す。

 一撃で吹っ飛ばされたガタックと入れ替わりに、サソードがサソードヤイバーを構えて突っ込んでくる。カブトオリジオンは腕でガードするが、サソードはそのままカブトオリジオンを屋外へと押し出し、力任せにヤイバーを振り下ろす。

 

「俺を馬鹿にしているのか?ならとんだ命知らずだな!いいだろう、貴様をねじ伏せてやる!」

「そういう大言は勝ってから言えよ。そんなこと言って負けたら大恥ものだぞ?」

 

 サソードの剣撃をカブトオリジオンは素手で受け流すと、オリジオンはサソードの肩目掛けてハイキックをぶち込む。衝撃でサソードヤイバーを落とすサソード。オリジオンは続けて反対側の足でサソードを何度も蹴り付け、締めにドロップキックを浴びせ、サソードの身体をを庭の端の塀にぶつける。

 ぶっ飛ばされたサソードを鼻で笑いながら、オリジオンは更なる追撃をしようとするが、そこにガタックが後ろから奇襲を仕掛けらオリジオンを羽交い締めにする。

 

「無駄だと言っただろ!」

「ぐはっ⁉︎ 」

 

 カブトオリジオンは難なくそれを振り解き、ガタックの顔面を殴り飛ばす。よろけて塀に手をつきながら、ガタックはゼクターホーンを展開し、キャストオフをする。

 

「キャストオフ!」

《CAST OFF……CHANGE STAG BEETLE》

「キャストオフ!」

《CAST OFF……CHANGE SCORPION》

 

 ガタックに続いてサソードも、サソードヤイバーの鍔に取り付けていたサソードゼクターの尻尾を押し込み、キャストオフをする。サソードのバイザー型の装甲が一斉にパージされ、中から、紫色のサソリが巻き付いたようなデザインのライダーが姿を現す。

 ライダーフォームに変身した2人は、同時にオリジオンに攻撃を仕掛ける。カブトオリジオンの両サイドから、サソードヤイバーとガタックダブルカリバーの刃が迫る。

 

「ふん!」

 

 しかし、オリジオンは腕を軽く振るうだけでガタックダブルカリバーを振り払った。

 

「闇雲に突っ込んで勝てるとでも思ったか?」

《RIDER SLASH》

 

 ガタックを見下す発言をするカブトオリジオン。しかしその時、サソードが必殺技を発動させる。タキオン粒子とポイズンブラッドがサソードヤイバーの刀身に凝縮され、等身が紫色に輝く。振り払われるよりも早く、光子を纏った一撃が、ゼロ距離でオリジオンに解き放たれる。

 すかさずガタックも、振り払われた直後に、二振りのガタックダブルカリバーを合体させて鋏の形にし、オリジオンの胴体を挟み込む。挟み込んだ瞬間、周囲に凄まじい電流が迸る。

 

「ライダーカッティング!」

《RIDER CUTTING》

「ぐ……ぬうおお……ぐあああああああああああっ!」

 

 ダブルライダーの剣撃が、オリジオンの身体を貫く。オリジオンの口から、大量の血が流れ出て、足元の芝生や煉瓦を赤く染め上げる。

 

「やったか……?」

「いや……残念だったな……!俺はこんな場所では死なん……!俺は超えるんだ……ヤツを超える!折角転生して得たチャンスを、こんな前座で不意にしてたまるかあああああああああああああああ!」

 

 全身に染み込んだタキオン粒子により、身体中に電流のようなものを迸らせるカブトオリジオンは、満身創痍になりながらも、尚も倒れなかった。ついさっきカブト・ガタックと戦ってライダーキックをぶち込まれた上でこれなのだから恐ろしいにも程がある。

 ここまでくると、その執念は最早呪いに等しかった。曇天を吹き飛ばしそうな程の雄叫びを上げながら、カブトオリジオンはガタックとサソードの顔面を掴み、人形遊びをするかのように、両者の頭を衝突させる。

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!ライダーキック!」

 

 そしてそのまま、至近距離で回し蹴りをかまし、2人を吹き飛ばした。

 

「があああああああああああああああああああああああっ⁉︎ 」

「ぬぅああああああああああああああああああああああっ⁉︎ 」

 

 身体の随所から火花を散らしながら、2人は吹っ飛んでゆく。ゼクターが飛んでゆき、サソードとガタックの変身が解ける。カブトオリジオンも、変身を維持する体力が尽きたのか、変身を解除してその場に膝をつく。

 

「……連戦は……骨が折れる……」

 

 当初の想定を超えるダメージに、男は耐えきれずに座り込む。

 しかし、座り込んでいる時間はない。これで残るはカブトただ一人。彼との戦いに勝利すれば、男の悲願は叶うのだ。それまでは、倒れる訳にはいかない。たとえ幾ら血を吐き骨を折ろうとも、転生で得たチャンスを不意にしたくはないのだ。

 男は、傷だらけの身体を引きずるようにして、血の跡を作りながら神代邸を後にする。その身体に、ポツポツと雨が降りかかりだす。

 まるで血を洗い流すかのように、雨が降り出していた。

 


 

 あれからいくら経っただろうか。

 影山の手によって瞬は独房に放り込まれていた。

 

「……」

 

 ゼクトルーパー達に乱雑に独房に投げ込まれ、瞬は床に倒れ伏している。後ろ手に手錠がかけられている為になかなか立ち上がれず、這って移動するしかない。

 兎にも角にも、壁を利用して身体を起こすべく、壁際に移動を試みる。なんとか壁際まで移動すると、壁に背を預け、天井を見上げてため息をつく。

 

「なんだよ……今日は随分と厄日じゃねーか……」

 

 今日1日の出来事を振り返っていると、ザビーのライダースティングを喰らった箇所がズキンと痛むのを感じた。置いてきてしまったヒビキとネプテューヌ。オリジオンに立ち向かっていった古城と雪菜。なんとかレイラの魔の手から逃がせた唯と凪沙。彼らは大丈夫なんだろうか。

 これまでも、そして今日だって、自分の至らなさのせいで、見ず知らずの人達を戦いに巻き込んでしまっている。

 

「あーくそ……俺なんもできてねぇ……」

 

 瞬は思い返しているうちに、自分の情けなさにだんだんむかついてきた。ただただ周囲に巻き込まれるだけで、何にも変わっちゃいない。中身がすっからかんだから、こうして手も足も出ないような状況に勝手に流される。

 瞬がもっとちゃんとしていれば、少しはマシになっていただろうか。

 

「どうなるんだろう、俺」

 

 だんだんと気分が落ち込み始めていたその時。

 ガシャンと大きな音を立てて、天板の一部が外れ、床に落ちてきた。

 

「え、何……?」

 

 当然ながら、突然の出来事に戸惑う瞬。目の前に落ちてきた天板は、まるで誰かが蹴飛ばしたかのように凹んでいる。

 瞬が困惑していると、天井に空いた、人一人は通れそうな大きさの穴から、見覚えのある人物が独房内へと降りてきた。その人物は、イマイチ信用ならないが、有能な人物だった。

 瞬はその人物の名を口にする。

 

「フィフティ……!」

「ただいまお助けに参りました、てね。ちょっと手を上げてくれないかな?」

 

 そう言うとフィフティは天井裏から華麗に着地し、瞬を立たせると、なんと瞬の手錠を素手で引きちぎった。ビスケットを砕くかのように呆気なくバラバラになった手錠だったものが足元に落ちていくのを見て、瞬は思わず身震いしてしまう。

 が、その時、独房に近づいてくる複数の足音が聞こえた。先程の音で気づかれたらしい。瞬が何か言うよりも早く、天井の穴からもう一本の腕が伸びてきて、瞬の手を掴んで引っ張り上げる。

 

「なっ……」

「逃げ出した⁉︎ 」

 

 音を聞きつけてゼクトルーパー達がやって来るが、その時には既に独房内に瞬の姿はなく、凹んだ天板と手錠の残骸だけが残されていた。

 


 

 瞬の脱走により、各所が一斉に騒がしくなる。

 警報が鳴り響き、階下から大量の忙しない足音がしているあたり、そうとう焦っているのだろう。当然っちゃ当然だが。

 

「こっちだ」

「うわ暗っ!」

 

 フィフティに急かされるがまま、瞬はハッチを潜り梯子を降りてゆく。近づいてくる足音から逃げるように、ハッチを閉じて梯子を飛び降りる。

 ハッチの先は真っ暗でじめじめとした地下通路だった。相当古いのか、備え付けられた蛍光灯はほとんどが点灯しておらず、僅かに点灯しているものも、消えかかっていたり極度に光が弱かったりとしており、まるで心霊スポットかなんかのような雰囲気をだしていた。

 フィフティは壁に手をつきながら、先程からずっと先頭を走っていたもう一人の男 —— 天道総司に声を掛ける。

 

「君と接触できたのは僥倖だったよ、天道総司くん。君がいなかったらこんなにもスムーズにいかなかっただろうね」

「おばあちゃんが言っていた。人助けというのは義務だ。特に俺みたいな人間にとってはな」

「あんたは一体……?」

「俺は天の道を行き、総てを司る男 —— 天道……総司」

「はあ……?」

 

 よくわからない奴、それが瞬が天道に抱いた第一印象であった。天を指差しながら、なんだかよくわからないことを喋っている。そのくせ佇まいはやけに自信に溢れている。はっきり言ってとっつきにくい。瞬も引き気味に天道の後ろ姿を見つめるしか無かった。

 そんな瞬の背中をフィフティが押しながら、今後の展開について話し始める。

 

「まあ話は後だ。僕らのするべきことは二つ、クロスドライバーの奪還とここからの脱出だ。ドライバーの在処に心当たりは?」

「影山とかいう奴に盗られたままだ」

「だよねぇ……ひとまずここを離れよう。ドライバーなら最悪私一人でも取り戻せる……と思う」

「できるのか……」

 

 地下通路を歩きながら、盗られたベルトをどうするかについて話してゆく。あの後どこにやられてしまったのか、正直予想がつかない。ただ、じっとしていても戻ってはこない事だけは確かだ。壊されたりしないうちに取り返す算段を考えておかねばなるまい。

 そんなことを話していると、先頭を歩いていた天道が、思いだしたかのように口を開いた。

 

「お前もライダー……選ばれし者か」

「……?間違っては……ないのかな?」

 

 何をどう問われているのかよく分からないが、瞬は奇妙な緊張感に襲われた。天道から発せられる、まるで瞬の挙動の一つ一つを見定められているかのようなプレッシャーは、気のせいだと思いたい。

 緊張感に押しつぶされ、瞬は黙り込む。ただ水の跳ねる音の混じった足音だけが、地下通路内に響き渡る。瞬が黙り込んでいると、天道がさらに問いかけてきた。

 

「どうだ、なってみて」

「え」

「ライダーになってみて、どうだったと聞いている」

 

 その質問を受けて、瞬は黙り込む。

 そして、少し考えてから、吐き出した。

 

「俺なんかまだまだだ。守るべき人を巻き込んでばっかで、何かに振り回されるばかりで……今だってそうだ。まったくもって不甲斐ない」

「それも無理はない。俺が世界の中心だからな」

 

 ……何をいっているのだろうか、この人は。突拍子のなく理解のしがたい言動に、瞬は首をかしげる。ぽか~んという効果音が聞こえてきそうだ。

 

「世界からすれば、俺以外の全ては俺という中心点にに巻き込まれている端役にすぎない。地球が太陽の周りを回っている事を恥じるか?それと同じだ」

「スイマセンマッタクワカリマセン」

「要するにあれだよ、ほら。全ては自分中心に回っているから、自分以外の奴は振り回されるのは仕方ないって事……ああもう言語化しづらいなぁ。まあ私的な解釈を入れるとだね、いくらヒーローでも一人で全部を守るなんて至難の業さ。頼れる所は頼る、やれる所は妥協しない。それを続ければ次第に出来ること、守れる範囲も増えていくはずさ」

「それ本当にあってる?なんとなくいい感じに纏めようとして中身空っぽになってない?」

 

 フィフティの解釈違いか、はたまた天道がぶっとんでやがるかは定かではないが、とりあえず無茶苦茶な回答だということだけはわかった。こんな慰めかたがあってたまるか、と突っ込まずにはいられまい。

 

 その時、瞬とフィフティのやりとりを聞いていた天道が、僅かに微笑む。

 

「なんすか、急に笑ってさ」

「知り合いに似ててな。暑苦しい奴だが、あの正義感の強さは一目置けると思っている。それを忘れるな。それを無くさない限り、お前はいくら迷おうが何度でも走り出せる」

「まよっても、ねえ」

「そんなこんな話しているうちに、ほら見てみなよ」

 

 フィフティに促されるまま、瞬は前を見る。暗い地下通路の果てに、光があった。外が見えてきたのだ。そこから見えるそとのけしきは、あいつの間にやら雨になってはいたが、ここと比べれば遥かに明るい。もう少しで地上に到達できそうだ。

 しかし、

 

「おめでたいな。まさかZECTから逃げられるとでも?」

 

 そこに立ちはだかる人影が一つ。通路の終端から影が伸びている。雨に濡れ、満身創痍のその姿を、瞬は知っている。

 

「影山……」

「悪く思わないでくれたまえ、全て上からの命令でね。これ以上勝手な真似をするようならば命の保障はない」

「相変わらず乱暴だな」

「なんとでも言えよ。この際貴様も倒してやる」

 

 影山は天道を睨みつける。天道はそれを意にも介さず、涼しげな顔をしたままだった。

 すかさずフィフティが、クロスドライバーの在処を尋ねる。

 

「クロスドライバーの在処を言いたまえ。あれは凡人に扱える代物じゃない」

「ドライバーなら俺が持っている。他部署に渡す前にこんな事になったからな。ほんと迷惑にも程がある」

 

 そう言うと、影山はクロスドライバーを取り出して嫌味ったらしく見せびらかす。彼からすれば、ただでさえ面倒臭い仕事の途中だというのに、余計な仕事を増やされたのだから、当然ながら不機嫌にもなるだろう。

 影山はクロスドライバーをしまうと、こちらに近づいてきながら話を続ける。怪我のせいか、その足取りは若干重い。

 

「俺達の使命は人類の命運を左右している。その為にも、お前のような不確定要素を放置するわけにはいかない。それが我々に牙を剥く前に、手綱を握らなければならない」

「いや、でも俺は別にあんた達と敵対する気は無かったんだし……」

「そう、我々は別に君達と敵対する気は当初はなかった。少なくとも君が先に仕掛けてこなければこんな事にならなかったんじゃないかな?実力行使ではなく、対話の道を選べば穏当な結果になった筈だ」

「未知の存在相手に信用なんて、そんな博打じみた事ができるわけないんだよ。わずかな可能性に賭けちゃ駄目なんだ。盤石に、確実にやらなければならない。大人の世界ってのは基本的にそうできている。そこに感情を持ち込まれちゃあいい迷惑だ」

 

 影山の言うとおり、得体の知れないやつを信じるのというのは、一種の博打だ。ましてやZECTのように世界を守るという重大な役目を担う組織にとって、些細な決断一つが人類の命運を分けかねない。そんな状況下では、安全牌以外を選ぶことは至難の業だろう。

 双方とも言い分に一理はある。これはただ、考え方の相違の結果なのだ。そしてそれは、どうしようもない断絶でもある。

 

「黙って待っていればよかったんだ。そうすれば最低限命の保障がなされるルートに入ることだってできた。それが堅実だった。だがお前は、そのチャンスを自ら踏み躙った。だから殺されても文句は言えないんだよ……!」

「随分と短絡的だな。短気は損気という言葉を知らないのか?」

 

 影山と天道、両者の手の中に、それぞれゼクターが飛来してくる。

 対話は無用。否、初めからそんなものはなかった。

 

「「変身」」

《HENSHIN》

 

 両者ともライダーに変身し、互いに殴りかかる。拳と拳がぶつかり、火花が飛び散る。続いて蹴り同士がぶつかり合うが、ザビーの方が吹っ飛ばされ、地下通路の外に弾き出される。どうやら怪我で踏ん張りがあまり効かないようだ。しかしザビーは諦めることなくカブトに挑みかかる。

 カブトはザビーの攻撃を適宜受け流しながら前進し、ザビーに次いで地下通路の外に出る。カブトに殴り飛ばされたザビーは、雨を斬るかのように走り出し、カブトに迫る。

 

「カブト!今日こそお前を……!」

「やめておけ。お前まだ昨夜の傷が治っていないだろう」

「そんな事は関係ないだろ……!お前も大人しく投降しろ!」

 

 情けをかけられて怒るザビーのジャブを、カブトは悉く受け流してゆく。ザビーが突き出した拳を、カブトが片っ端から手で受け流している様は、まるでザビーがカブトに弄ばれているかのようだ。

 痺れを切らしたのか、ザビーは大きく跳び上がり、ジャンプパンチを繰り出してきた。しかし、ジャブでさえ全て防がれたにも関わらず、そんな隙の大きい攻撃がカブトに当たるはずもなく、簡単に避けられ、ザビーの拳は地面に激突する。

 

「フゥー……キャスト、オフ!」

《CAST OFF……CHANGE WASP》

 

 怪我のせいなのか、ザビーは息を切らしながら、ゼクターを回転させてキャストオフをする。瞬間、装甲が一斉にパージされ、周囲に散らばってゆく。瞬とフィフティは、咄嗟に物陰に隠れてやり過ごすことを余儀なくされる。

 

「キャストオフ」

《CAST OFF……CHANGE BEETLE》

 

 カブトもすかさずキャストオフで装甲を飛ばし、飛んできたザビーの装甲を弾き飛ばしつつ、装甲のパージと同時に攻め込んできたザビーに応戦する。

 

「うらあ!」

「っ」

 

 まずは、飛んできたザビーの拳を掴み、そのまま投げ飛ばす。地面に叩きつけられたザビーは、素早くカブトの手を振り解き、横に一回転しながら立ち上がりざまにカブトの顎目がけ、アッパーカットをくらわせようとする。

 しかし、カブトはそれを難なく叩き落とし、ザビーを蹴り飛ばす。地下道の壁に激突したザビーは、懲りずに殴りかかってくるが、それは片手で防がれ、逆にカブトのパンチを腹にくらい、大きく吹っ飛ばされてしまう。

 

「凄い……圧倒してる……」

「感心するのは後だ!今ならドライバーを奪い返せる!」

 

 フィフティに言われるがままザビーの方を見ると、彼の後方にクロスドライバーが転がっているのが見えた。どうやら、さっきの衝撃で落としたらしい。

 兎に角今がチャンスだ。瞬は雨の中走り出し、ドライバーを取り返そうとする。

 

「させるか!クロックアップ!」

《CLOCK UP》

 

 しかしそれを妨害すべく、ザビーがクロックアップを発動する。降り注ぐ雨水も、瞬の足も地に着く事なく静止しているかのようにスローモーションになる。

 普通の人間はクロックアップに対抗する手段を持たない。できるのはワームと、ZECT製のマスクドライダーシステムのみ。

 だからこの時点で、ザビーの最後の障害は自ずと決まっていた。静止した雨水を掻き分けるように、ソレはザビーに近づいてきていた。

 

「カブトォ……!お前は関係ないだろ!何故こいつを庇う!」

「巻き込んだのはお前だろうに。そんなに不穏分子を恐れているのか?」

 

 カブトはザビーの怒りを受け流しながら、ゼクターホーンを左に戻し、ゼクター側面のスイッチを順に押してゆく。ライダーキックで早々に蹴りをつけるつもりらしい。

 ザビーもそれを迎え撃つべく、ゼクターのスイッチを押す。

 

「いつもいつも俺達の邪魔を……!」

「何人たりとも、天の道を歩む俺を妨げることはできない」

《RIDER STING》

《RIDER KICK》

 

 カブトの右足と、ザビーゼクターの針の部分に、それぞれタキオン粒子がチャージされてゆく。そして、両者はほぼ同時に必殺技を繰り出した。

 ザビーの左腕はカブトの胸元を、カブトの右足はザビーの左脇腹を、それぞれ抉るような勢いで目掛けて動き出す。2人とも避けはせず、ただ相手より先に攻撃を当てて撃破することのみを考えている。先に倒せば、それで済む ——

 

《CLOCK OVER》

 

 クロックアップが終わると同時に、必殺技が命中し、周囲に衝撃波が拡散する。カブトは右足を上げたまま、ザビーは左腕を突き出したまま動かない。

 

「え?な、何が起きたんだ⁉︎ 」

 

 瞬はその様子を見て困惑しながら、クロスドライバーを拾い上げる。なんせ側から見れば、一瞬のうちにカブトとザビーが必殺技を打ち合ったような状況になったのだ。

 

「…………………………ぐふっ」

 

 長い沈黙の後、先に倒れたのはザビーの方だった。突き出した拳は、僅かにカブトに届いてはいなかった。やがて腕がだらんと下がり、がくりと膝をつき、カブトの足元へと倒れ込む。そして、腕のザビーゼクターがブレスレットから外れ、空の彼方へと飛んでゆき、変身が解除される。

 カブトは足を下ろすと、倒れた影山に目もくれずに、傍に停めてあったバイクに跨る。

 

「待て……貴様らぁ……!」

「感謝するよ天道総司。おかげで全て解決した」

「あ、ありがとうございます」

 

 瞬は呻き声を上げている影山の方をチラチラと見ながら、天道に礼を言う。天道は振り返ることなく、バイクのエンジンをかけながら、

 

「次からは気をつけるんだな。次はお前自身で切り抜けろ」

「ハイゼンショシマス」

「厳しいねえ君は。まあ今回は奇跡的に協力してくれたようなもんだし、当然か」

 

 フィフティよ、後半の内容を本人の前で言うんじゃない。多分それは心の中で思っておくだけで済ますべき内容だから。

 瞬は、バイクで雨を突っ切り走り去ってゆく天道を見送りながら、上記の意味を込めた拳骨をフィフティにくらわせた。やっぱりコイツは駄目な気がする。

 とりあえず、早いところこの場を離れなければ。ZECTの追手が来るし、色々ほったからかしてきたものをどうにかしなければならない。あれから皆はどうなったのだろうか。オリジオンと戦わされている古城達に、凪沙を任された唯、置いてけぼりにしてしまったヒビキ達。ここから一気に忙しくなりそうだ。

 

「……よし、行かねーと」

 

 瞬は、雨の中、拳を握りしめながらそうつぶやいたその時、手のひらに硬い感触があった。

 あり得ない。手には何も持ってはいない筈なのに。首を捻りながら、瞬は握りしめた拳を開く。開いたその手のひらの中には、どこか見覚えのあるものが。

 

「これって……」

 

 カブトのライドアーツ。

 いつの間にか、それが手の中にあった。

 


 

 ヒビキが最初に感じたのは、コンクリートの床の冷たさだった。

 じんじんと痛む頭をおさえながら、ヒビキは起き上がる。薄暗く、じめじめとした廃倉庫のような場所だった。光源は床から遥か高くにある天窓のみ。その天窓から見える空は、今にも雨が降り出しそうな曇天だった。

 

「あ、起きた」

「君は……」

 

 すぐ近くでした声に反応してばっと横を向くと、ヒビキと同い年くらいの、頬に傷のある銀髪の女の子がヒビキの顔を覗き込んでいた。

 

「ねえ、ここって……」

「ほかにもいるよ」

 

 少女がヒビキに、あたりを見るように促す。

 促れるままあたりを見渡してみると、そこかしこに10歳前後の子どもたちの姿が確認できた。何もわからず困惑する者、恐怖で泣き出す者、まだ気絶している者 ― あわせて20人前後いるだろうか。もしかして、彼等もヒビキと同じように、無理矢理連れてこられたのだろうか。

 意識を失う寸前に、ヒビキに話しかけてきた青年。彼はいったい何者で、何のために子どもたちをここに集めたのだろうか。

 

「なんなのこの状況?いったいどうして私達はこんなところに集められたの?」

「さあ……わたしたちもわかんないんだ。だけど一つだけわかる。わたしたちを連れてきたアイツはろくでもない奴だって、おかあさんが言ってるの」

「……うん?おかあさんも近くにいるみたいな言い方だけど……?」

「わたしたちのことは気にしないで。霧崎律刃(きりさきりつは)。そう呼んで」

 

 なんだか少女の話し方が変だぞ?と思ったヒビキだったが、あえて何も言わなかった。世の中にはいろんな人がいるのだ。これも個性なのかもしれない。

 

「私はヒビキ。こんなことを言うのも変だけどさ、ここで会ったのも何かの縁……だったりするのかな」

「縁……かあ……」

 

 その時、突如として、壁に設置されていたモニターが点灯し、1人の男の顔が映った。耳にピアスをジャラジャラつけた金髪の男。柔和そうな笑みを浮かべてはいるが、その顔に温かいモノなど微塵も感じない。

 その顔にヒビキは見覚えがある。間違いない、自分を連れ去ったヤツだ。

 男 —— 司馬神真は、口元だけを吊り上げた歪な笑みを浮かべながら、まるで学校の先生のように、あくまで友好的だと言わんばかりに振る舞いながら、モニター越しに声をかけてくる。

 

『やあ、皆元気そうで何よりだ。これからここにいる皆で楽しいことをしようじゃないか、ねえ?』

「なんなんだよ!いきなり連れてきといて!けーさつ呼ぶぞけーさつ!」

「ママァ〜!おねえちゃぁああああん!」

「気持ち悪い……」

 

 反発する者、泣き出す者、嫌悪する者。多種多様な反応を示す中、ヒビキと律刃は無言だった。困惑していたのもあるが、この異様な状況に警戒していたのもある。そんなふたりの態度が物珍しかったのか、司馬はモニター越しにヒビキ達に視線を向ける。

 

『おや、そこの2人。随分と大人しいね。俺の経験則からするに、こういう時は泣き叫んで暴れるのが普通の反応だと思うんだけどね』

「……」

『まあいいや。本題に入ろう』

 

 無言で睨み返すヒビキ。司馬は楽しさを抑えきれていない様子で、早速本題に入る。その態度は完全に場違いだった。

 

『突然だけど俺はね、君たちみたいな未来溢れる子供達が惨殺されるのを見るのが趣味でねぇ。ほら、好きな子が虐められる光景って興奮するだろ?』

「いや、何言って……」

『早速だけどいこうか。カモン』

 

 子供達が「何気持ち悪い事言ってるんだこいつ」と言いたげそうな顔になるが、待ちきれなくなった司馬は、屈託のない笑みを浮かべながら指を鳴らす。

 すると、ガラガラと大きな音を立てながら、奥のシャッターが上がり始めた。パシャリと、水溜りに踏み込む音がする。シャッターの向こう側の闇から、恐怖がやってくる。

 

「Guuuuuuuuuuu……」

「これってさっきの奴らと同じ……⁉︎ 」

 

 それはワームだった。サナギ態だけだが、その数は10は裕に超える。それは何の力もない子供達にとっては、絶望そのものでしか無かった。

 瞬く間に辺り一帯が悲鳴で埋め尽くされ、子供達は一目散に逃げ出す。その姿を嘲笑うかのように、モニター越しに司馬の声がかけられる。

 

『ほーらさっさと逃げなきゃ死んじゃうぞー?まあ俺的にはそっちの方が興奮するんだけどね。悲鳴を聞きたいなぁ!君達の純粋無垢な断末魔を聞かせてくれないかなぁ!』

「来ないで……こないでぇ……うあああああああああああああっ‼︎ 」

 

 腰を抜かして動けなくなった少年に、ワームが迫る。涙ながらに張り上げたその悲鳴が、少年の最後の言葉となる。血が飛び散り、少年の生命が終わる。ワームはその様子を見て、嬉しそうに鳴く。

 

「あああああ……ああああああああああっ!」

 

 そのショッキングな光景を見た別の少年が、その場にへたり込んでしまう。その背後には、ワームの姿。その後は言うまでもないだろう。次々と子供達が殺されていく。ヒビキと律刃も、ただ逃げるしか無かった。逃げ場なんてどこにもないのに。

 その頃、別の子供達の一団は、廃倉庫内のコンテナが迷路のように積まれた一角に逃げ込もうとしていた。あそこならば少しは目を誤魔化せる。そう考えた奴がいたのだろう。しかし、その目論見は潰える。

 

「あれ……どうしたんだよショータ」

「……」

「マリちゃん?」

 

 先頭を走っていた数人がふいに立ち止まり、集団全体を堰き止める。不審に思い、彼らの知り合いが声をかける。しかし返事はない。すると、

 

「ごめんね」

「え」

「俺達、実は人間じゃないんだ」

 

 彼らは振り返りながら、擬態を解く。

 —— 子供達の中に、既にワームが紛れ込んでいたのだ。

 

「死んでね、皆」

「ああああああああああああああああああああああっ⁉︎ 」

「きゃああああああああああああああああああああっ⁉︎ 」

 

 友達だと思っていたのが、全く別の存在だったことに対する絶望を感じながら、無惨にも彼らは殺された。小さな身体がバラバラに引き裂かれ、血肉が当たり一面に散らばってゆく。この光景を見れば、きっと生き延びても、トラウマモノ間違いなしだろう。

 その光景を横目に、ヒビキと律刃はコンテナの中に隠れる。運良くワームに見つからずにここまでくることが出来たが、それも時間の問題。既に半数以上の子供達が殺されている。そう遠くないうちに、自分達に魔の手が迫るのは避けられない。

 

「わたしたち、おしまいなのかもね」

「冗談じゃない……っ!こんな馬鹿げたことがあっちゃ駄目だ……!」

 

 コイツは狂っている。本当に彼は同じ人間なのだろうか。あの皮膚の下にはちゃんと赤い血が流れているのかと疑いたくなるような感性だ。少なくとも、ヒビキはあれを人間とは思いたくは無かった。

 ヒビキは、司馬への恐怖よりも怒りを覚えていた。殺されることは怖くない。それ以上に、無辜の人々が命を弄ばれるのを許せない。そして、ヒビキにはそれをどうにか出来るだけの力が ——

 

(……あれ?)

 

 そこまで考えて、ヒビキは戸惑いを感じた。今のは何だ?今湧き上がってきた感情(モノ)はなんだ?その原動力はどこなのだ?

 だが、それを堪えることが出来ない。立ち止まっていられない。この理不尽に対する怒りを止めてはいけないと、身体が叫んでいるのを感じる。

 そしてヒビキは気づいた。これは正義の心。自分が忘れていただけで、今なおそこにあるもの。かつての自分が一体どうやって、それと関わってきたのかは思い出せないが、一つだけわかったことがある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

 ヒビキは立ち上がる。瞬がこの場にいれば止めさせようとするだろうが、彼女はどうしても黙ってやり過ごすことが出来なかった。

 

「どこにいくの?」

「……ごめん、無理。ただ逃げるなんて出来ない」

 

 律刃の手を離し、ヒビキはコンテナの外の様子を伺う。辺りに子供達の死体が散らばっている。チラホラ生き残っている者の姿も見えるが、あれがワームの擬態という可能性もある。

 策はない。だがそれが足を止める理由にはならない。こんな悪趣味なショーに付き合ってなんかいられない。ヒビキは、殺戮の空間に足を踏み入れようとする。

 その時。

 

「待てよ」

 

 そう言って、コンテナから飛び出そうとしたヒビキの手を、律刃が掴んで引き止める。その声のトーンは明らかに低い。まるで別人のように顔付きが変わっているように見える。それでもヒビキは行こうとするが、律刃の手を振り解けない。

 律刃は前髪を上げ、ヒビキの両手を取って言う。その時、ヒビキには、律刃の顔の傷が光っているように見えた。

 

「いい加減(オレ)もこんな悪趣味なショーのせいで吐き気マシマシになってきたところなんだ。ここは(オレ)に任せろ。全部わたしたちがバラバラにしてやっから」

 


 

 その頃の唯はというと。

 

「……マジでこれどうすれば良いんだろうか」

 

 一向に起きない凪沙を前に、腕を組んで絶賛悩み中であった。

 とりあえず何処かの公園に適当に入り込み、ベンチの上に凪沙を寝かせてみたはいいものの、ここからどうすればいいんだろうか。というかこの子は誰なんだろうか。ギフトメイカーから逃すべく彼女を任されたというのは分かるが、これはあまりにも気まずい。

 外は絶賛雨真っ最中。この場には屋根があるからいいものの、あんまりここから動きたくはないというのが本音だ。

 

「ったくー、これ私が男だったら事案間違いなしの絵面だよなー」

 

 唯は空いているベンチに腰掛け、足をぶらぶらさせながら空を見上げ、口をこぼす。別に今の状況自体に不満があるわけではない。説明不足な点に文句垂れているのだ。

 

「にしても雨かぁ、雨降る前に帰れると思って傘持ってきてなかったんだよなー濡れたくないなー」

 

 一向に止まない雨に、若干ナイーブな気持ちになりかける唯。

 はあ、とため息をついたその時。

 

「そこから離れなさい!」

「びゃあああああああああああああっ⁉︎ 」

 

 なんかメカメカしい銀色の槍の穂先が突きつけられた。思わず唯は悲鳴をあげて距離をとる。一体何事か。

 見るからに鋭そうな槍にビビり散らしながらも、唯は槍の持ち主の方を見る。そこにいたのは、中学生くらいの女の子 —— 姫柊雪菜であった。彼女は警戒心バリバリで唯を睨みつけているし、なんか雪菜の後方には傷まみれのおねーさんが倒れていらっしゃる。一体全体なんなんだこれは。

 雪菜は銀槍 —— 雪霞狼を構えながら、唯に問いかける。

 

「貴女は一体何者で、凪沙ちゃんに何をしようとしているのですか?返答次第では刺しますがよろしいですね?」

「あのぅ経緯とか事情とかはちゃんと話すんで、その槍おろしてくれませんか?それになんか後ろに人倒れていない?あれ私の幻覚とかじゃないよね?」

「正当防衛ですのであしからず」

 

 雪菜はあっけらかんとしているが、これでは明らかに危ない人にしか見えない。やべえよこれどうしたらいいんだ。

 唯が冷や汗ドバドバ出しながら考えていると、近くの草むらからガサゴソと音がしだした。まるで何かが此方に向かってきているようだ。この状況でなんか来るのはさすがに勘弁いただきたいものだと辟易しだす唯。

 草むらを突っ切って現れたのは、暁古城であった。彼も彼で、ボロボロになっているし、背中になんかへんな男の人を背負っている。意識のない人を連れ回すのがトレンドになってたりしてないよね?と思わずにはいられないだろう。

 古城は冷や汗まみれの唯と雪霞狼を構えた雪菜を見て即座に状況を察したのか、慌てて二人の間に入って止めにかかる。

 

「ストップストーップ!いきなり襲い掛からない!お前そんなに血気盛んなやつだったか⁉︎ 」

「先輩……すみません、ついカッとなってしまって……で、その背中に背負ってらっしゃる人は?」

「ああこれ?さっきの怪物の正体だよ。ほっとくのもアレだし連れてきたんだけど……この人、未登録魔族みたいだぜ?大丈夫なのかな……」

 

 なんでこの場に要救助者が三人も集まっているんだ、と思わず頭が痛くなる三人。おまけに凪沙を任せたはずの瞬は、凪沙を唯に任せてどっかに行ってしまっているしで、まるで共通の知人が不在の時のような何とも言えない雰囲気があたりに漂っていた。

 頭を抱えて唸りながら、古城は素性の知れない唯に問いかける。

 

「で、アンタは何者で、なんで凪沙と一緒にいるんだ?」

「じつはかくかくしかじか」

 

 唯もすべてを理解しているわけではないが、ここまでに至る経緯をとりあえず説明し、自身が怪しいものでないということを証明しようとする。仮面ライダーやるのは良いけど、守るべき人をほっぽりだすのはよくないのだ。次会ったらそこんとこをきつく言わねばなるまい。

 とりあえず唯の説明のおかげで事情を理解したらしく、雪菜が頭を下げてきた。まあ、友人が見知らぬ人と一緒に居たら警戒したくなるのも無理はないだろう。

 ちなみに瞬が仮面ライダーであることは伏せている。普通の人は言っても眉唾物だと思うだろうし、本人以外の人がヒーローの正体をベラベラ喋るのもどうかと思ったからだ。

 

「で……その人は大丈夫なんですか?」

「多分大丈夫だよ。瞬はそう簡単に倒れるような奴じゃないよ」

「信頼してるんですね」

「おうよ、10年来の付き合いだよ?いい所も悪い所もだいたい把握済み、それが幼馴染の長所なのよ」

 

 そう強がる唯だったが、心配していないわけではない。仮面ライダーになって以降、自分の知らない所で、瞬は普通に生きていても巻き込まれないような出来事に巻き込まれている。それが不安でもあるし、不謹慎だが寂しくもある。

 なんだか瞬だけが、勝手に先に進んでしまっているような感じがする。今まで一緒にいただけあって、唯は他の誰よりもそれを感じている。

 今からでも追いかけなければ。瞬に会って色々と言ってやらねば。そう思いながら、唯はベンチから腰を上げる。

 

「じゃあ私はこれで……いつまでも部外者がいたらお互い気まずいでしょ?それに瞬のやつも探しに行かなきゃならないしさぁ」

「なんなら手伝おうか?元はといえば俺が凪沙を頼んだせいでもあるからさ」

「気持ちだけ受け取っておくから —— 」

 

 古城達も瞬を探すのを手伝おうと申し出てくれるが、唯はそれを断って公園の出口へと向かう。

 その時、唯が向かう先にあった公園の出口に、一台のバイクが停車する。雨の中、合羽も着ずにびしょ濡れの乗り手は、唯の顔を見るなり、被っていたヘルメットを脱ぐ。

 それは、よく知っている顔だった。

 

「あ、唯」

「おやおや、よもやこんなところで再開するとはね」

 

 バイクに乗っていたのは、瞬とフィフティだった。どこか間の抜けたような声を出す瞬に、先程まで色々と考えこんでいた唯は、雨の中一直線に瞬へと駆け寄り、瞬をぽこすか叩いたりバイクをゆさゆさと揺らし始めた。

 

「あ、じゃないが!あ、じゃないんだってば!」

「やめろやめろバイク倒れるぅ!」

「ばかばかおばかあ!幼馴染たる私を差し置いてどこほっつき歩いてたんだよぅ!」

「それは悪かった!でも追い回されたり尋問されたりでこっちも大変だったんだよ……ごめんな、いきなり巻き込んじまって」

「巻き込むのはいいよ⁉︎ でも人のこと巻き込んどいて途中下車とかマジありえないんだって!いっつも蚊帳の外とかホントモヤモヤするんだよ⁉︎ 」

「うぶぉあバイク倒れるぅ!」

 

 感情に任せてバイクを揺さぶりすぎたのか、バイクスタンドを下ろしていなかったのが仇となり、バイクは瞬を跨らせたまま横転してしまう。またもや雨で濡れた地面にぶったおれる瞬。足がバイクの下敷きにならなくてよかった、と胸を撫で下ろしながら、フィフティと共に倒れたバイクを起こしてゆく。

 そして、バイクを張り倒した唯の頭に、お仕置き代わりに軽くチョップを叩き込み、唯の両肩に手を置いて、改めて話を聞くことにした。

 

「で、お前の主張をもう一度聞かせてもらおうか」

「巻き込むのは構わないよ。でも、置いてけぼりは許さない」

「……やっぱりそう言うか」

「わかってたんならよし」

 

 瞬的には、唯を危険な目に合わせたら彼女の親と湖森に合わせる顔が無くなってしまうので、極力唯は巻き込みたくない。だが、唯はそんなのお構い無しに首を突っ込むと宣言しちゃっている。そして瞬は知っている。コイツを説得するのは無理だと。唯との10年来の付き合いがそう物語っている。

 ならば、唯に危害が及ばないように自分が頑張るしかあるまい。瞬にはその為の力があるのだから。前回のようなことは繰り返させない。

 そう決意しながら、瞬は再びバイクのエンジンをかける。当然のように唯がフィフティからヘルメットを奪い取って瞬の後ろに乗ってくるが、今更突っ込むのもあれだろう。

 そこに遅れて雪菜と古城もやってきた。

 

「無事だったんですね。良かったです」

「2人とも、巻き込んでしまってごめん」

「ま、まあ、とりあえず無事でよかったよ。凪沙のこともありがとう」

「途中でほっぽり出してたんだけどね」

「あのまま仲良く御陀仏よりはマシだろうに」

 

 周りへの被害に無頓着なレイラと戦うのだから、あの時は唯に任せるのが最善策だったと思う。まあ結果的に元の鞘にもどって一安心だ。

 

「フィフティ、ネプテューヌとヒビキの居場所は分かるか?あいつら、勝手にうろちょろしてなけりゃいいけど」

「勿論だとも。バイクの方にナビを付けておいたからね」

 

 そりゃあ良かった。このまま当てもなく街中を走り回るのは流石に無理があったので、フィフティに頼んでおいたのだ。本当ならスマホで電話を掛ければいいのだが、なぜか2人とも繋がらないし。

 2人について考えを巡らせていると、無性に不安になってきた。早く行かなくては。瞬はヘルメットを被り、バイクのアクセルを回そうとする。そこに、古城が声をかけてくる。

 

「自己紹介、まだだったよな?俺は暁古城」

「姫柊雪菜です」

 

 確かに、ここまで関わっておきながら、まだ互いに名前を知らなかった。一応互いに恩があるわけだし、名前を知らないというのは流石に失礼だろう。

 

「諸星唯だよ」

「逢瀬瞬だ。2人とも、ありがとな」

「どーも」

 

 互いに遅い自己紹介を交わし、瞬はバイクを走らせた。

 雨の中、瞬と唯を乗せたバイクが遠ざかってゆくのを、古城と雪菜は見送っていた。

 が。

 

「なんで貴方は此処に残ってるんですか?」

「いや今の流れ的に彼女が一緒に行くべきだと思ってね。それに流石に3人乗りは無理だよ。私は徒歩でゆくさ」

 

 何故かフィフティが置いてけぼりをくらっていた。というかコイツ、先程から半分居ないもの扱いされていたような気がする。

 雪菜の問いかけに、半笑いになりながら答えると、フィフティは雨に濡れながら、鼻歌混じりに瞬の後を追いかけていってしまった。古城は、フィフティのあのローブみたいな服装、絶対水含んで重くなってるよな、とか思っていた。

 ともかく役目は終わったので、凪沙を起こして帰ろうする古城。

 

「……ともかく帰ろうぜ。あんまり雨に濡れると風邪ひくし」

「いやでも、この人達どうすれば —— あれ?」

 

 雪菜が指差した先には、先程までオリジオンにされていた2人がいた筈だった。しかし今は、そこには誰もいなかった。

 


 

 神代邸近辺

 

 天道は、バイクを走らせている途中、ふと加賀美の事を思い出した。

たしか加賀美は、他のライダーの元へと向かうと言っていたような気がする。一時停止の標識に従い、天道はバイクを停車させる。ちょうど今、天道は神代邸の近くにいる。

 カブトオリジオンは、全てのライダーを倒すと豪語していた。ならば、神代剣 —— 仮面ライダーサソードも奴の襲撃を受けていてもおかしくない。そしてやつは、いずれ再び天道の元へとやってくる。何がしたいのかは不明だが、向こうがその気なら迎え撃ってやろうではないか。

 天道がそう考えていると、どこからか救急車のサイレンらしき音がこちらに近づいてくるのが聞こえてきた。

 

「まさか……」

 

 ある予想のもとに、天道は再びバイクを走らせる。

 そうして天道が神代邸にたどり着いた時には、神代邸の者の前に救急車が停車していた。そして、門の向こうから、担架に担がれた怪我人が運ばれてくる。それは、天道のよく知る人物達だった。

 

「加賀美……」

 

 神代剣と加賀美新。満身創痍の2人が、救急車の中へと運ばれていた。 —— 奴は、もう2人を撃ち破っていたのだ。

 救急車に担ぎ込まれる2人を眺めていると、救急隊員達に続いて、門から1人の老人が出てくる。彼は神代剣に使える使用人。剣からはじいやと呼ばれている。じいやは天道に気づいて、天道の元へと駆け寄ってくる。

 

「天道様。坊っちゃま達が何者かに襲われて……私は丁度家を離れておりまして、帰ってみればこのような……」

「ああ、一歩遅かったようだな」

「しかし坊っちゃま達をここまで痛めつけるとは……何者なんでしょうか」

「あんたはあいつらについて行くんだ。敵の狙いは俺だ」

「は、はい……気をつけてください」

 

 怪我人2人とじいやを乗せた救急車が遠ざかり、天道だけがこの場に残される。

 

「……」

 

 天道はバイクを降りて、神代邸の敷地へと足を踏み入れる。

 庭は、ひどい有様だった。そこかしこが荒らされ、あちこちに血痕が残されている。その中から、建物の裏手に一筋に伸びる血痕があった。こんな分かりやすい痕跡を残すような馬鹿はそうそういないだろう。十中八九、誘っている。

 だが、行くしかない。天道は、罠を承知の上で血痕を追うことにした。

 

「出てこい。狙いは俺だろう?」

 

 天道は、血痕を追いながら呼びかける。すると、天道の前方で物音がした。たしかこの先は裏門だった筈。

 天道は裏門に辿り着く。其処には、血痕の終点が居た。

 

「待っていたぞカブト。俺は4人のライダーを倒した……今こそ、決着をつけよう」

「望む所だ」

 

 今、カブトとカブトの再戦が始まろうとしていた。

 


 

「ここか……」

 

 ドアガラス越しに部屋の様子を伺いながら、灰司は呟いた。

 ここまで幾度となくトラップに襲われてきたが、その都度対処しながら、最深部まで辿り着くことができた。ネプテューヌを守りながらの道中だったので、いつも以上に灰司は疲弊している。

 部屋の中には、ずっと付け狙っていた転生者・司馬神真の姿が見える。彼は、モニター越しに子供達が殺されてゆく様を眺めながら、ゲラゲラと笑っている。どう考えてもまともじゃない光景に、灰司はぐっと歯を食いしばる。

 彼はゲーム感覚で子供達を殺していたのだ。それも何度も。血飛沫が飛び散る様を見てはしゃぐその姿は、人の姿をした化け物と形容しても差し支えない程の嫌悪感を出している。

 オマケに、どうやって手懐けたのかは知らないが、ワームまで使っている。これは厄介なことになりそうだ。

 

「皆を助けないと……あのままじゃ皆殺されるよ⁉︎ 」

「わかっている」

 

 灰司を急かすネプテューヌ。こんな時、女神の力が使えれば良かったのだが、あいにくこの世界では彼女は無力な存在。どうしようもない。

 灰司もネプテューヌの気持ちはわかってはいる。しかし、ワームへの対処と司馬の捕縛。両方をやり遂げなければならないが、それができない。戦闘要員があと一人いれば、何とかなりそうなのだが ——

 そう考えていたその時。

 

「ん、あれ……」

「どうした」

 

 ネプテューヌが、何かに気付いたように指をさす。その先 —— 司馬のいる部屋の隅、そこには金属製の縦長ロッカーが鎮座している。その半開きのロッカーの中から、何かが垂れ下がるようにして見えている。

 灰司達がロッカーに注目していると、ギイ……、と音を立てて、ロッカーの扉が開いてゆく。

 その中身を見て、二人は驚愕した。

 

「な、に……?」

「まさか……」

 

 中に入っていたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 今部屋の中でモニターを見てゲラゲラ笑っている彼と、全く同じ容貌をしたバラバラ死体が、ロッカーの中に詰め込まれていた。では今生きている司馬は一体なんなのか。灰司はその答えを既に知っている。ネプテューヌも、それを既に見ている。

 

「え、何、どゆこと?」

「どうもこうも無ぇ。コイツは多分 —— 」

「あーあ、バレちゃったかぁ」

 

 その時、今までモニターを見ており灰司達に気づくそぶりも見せていなかった司馬が、突然灰司達の方に顔をむけてきた。

 

「いやあ、中々いい趣味してるよなぁコイツ。成り代わってみてよーく分かったよ……」

 

 司馬はそう言いながら椅子から腰を上げ、眉一つ動かさずに一歩ずつ近寄ってくる。一歩ずつ前進するたびに、司馬の姿が揺らいでゆき、人間とは到底思えない姿へと変化してゆく。

 焦げ茶色の皮膚に、肥大化した複眼、背中から生える萎びた羽根。人間に擬態する地球外生命体・ワームた。それも、先程瞬に擬態していたものと同一の個体。時系列的には、どうやら灰司達がここにくる直前に、本物の司馬を殺して成り代わったようだ。

 

「せっかくだから仲間も呼んでみたんだけど、こりゃあ癖になる。弱い奴が死から逃れようと右往左往する様は最高に笑えるよ」

「理解できない……こんなのゲームでもなんでもないし、ゲーム呼ばわりすることが間違っている!少なくとも私は、人の命を弄ぶゲームなんて許せないんだから!」

「餓鬼がごちゃごちゃ煩えっての。お前らもすぐに殺してやる。そして俺達の中で生き続けるんだ」

 

 ネプテューヌの怒りを軽くあしらい、ワームは爪を立てながら歩み寄る。灰司はネプテューヌを庇うようにしてじりじりと退がるが、通路の奥の方から呻き声のようなものが近づいてくるのに気づく。おそらく、他のワームがこっちに来ているのだろう。

 早くやるしか無い。ワームに対抗するならば、クロップアップが可能なマスクドライダーシステムしかない。灰司はダークカブトに変身しようと考え、ライダーベルトを腰に巻く。

 その時だった。

 

『グギャアアアアアアッ!』

 

 司馬が付けっぱなしにしていたモニターから、人間のものとは思えない断末魔が響き渡った。

 おかしい。そんなはずはない。集めたのは何の力もないただの子供。そんな奴らにワームが負けるはずがないのに、今の悲鳴は一体なんだというのか。

 ありえざる事態に動揺しながら、司馬に擬態していたワームは、モニターを凝視する。灰司達もつられてモニターを見る。

 そこには。

 


 

 

「あはははははははっ!見せてよ!もっと見せてよ!じゃないとばらばらにしちゃうからね!」

 

 モニターの向こうでは、律刃が大勢のワーム相手に無双していた。

 

「ほらそこ!」

 

 華麗なバック宙でワームの突撃を躱しながら、律刃はワームの頭に足でしがみつき、ランドセルの中に入っていた2本の彫刻刀をワームの側頭部目掛けて振り下ろす。

 ワームは断末魔と体液の飛沫を上げながら、自分達が殺してきた子供達の血の海の中に倒れる。律刃はワームの上から降りると、陽気に鼻歌を歌いながら、血の滴る彫刻刀を指揮棒のように振り、周囲を取り囲むワーム達に言う。

 

「ねぇ、次は誰からばらばらになりたい?わたしたち的には誰からでも大歓迎だよ?宇宙人をばらばらにするのははじめてだから、わくわくしちゃうよね!」

(この子……一体なんなの?ただの彫刻刀であんな真似できる?てか身のこなし的に明らかに普通の小学生じゃないし……)

 

 コンテナの中に隠れながら様子を見ているヒビキも、律刃にドン引きしていた。彼女が一体何者なのかは分からないが、少なくとも普通じゃない。だかしかし、この状況を打破できるのは、律刃しかいない。だから今は、頼るしかない。

 律刃は鼻歌を歌い続けながら、ワーム達に近づいてゆく。想定外の犠牲にたじろぎながらも、ワームの中の一体が、律刃に無謀にも突っ込んでゆく。

 

「遅いよ」

 

 しかし、ワームの振り下ろされた爪は空を切る。律刃の姿が忽然と消えてしまったのだ。驚くワームだったが、次の瞬間、ワームの背中に激痛が走った。

 振り返ると、そこには、ワームの背中に彫刻刀を突き刺した状況の律刃がいた。

 

「宇宙人の開き、いっちょあがり」

 

 ワームが吠えるよりも早く、律刃はワームに刺した彫刻刀を素早く動かした。すると、まるで魚の開きを作るかの如く、ワームの背中が切開され、体液を撒き散らしながらワームはぶっ倒れた。

 

「グギャアアアアアア!」

「そこっ!」

 

 仲間の死に怒りを感じたワームが飛びかかってくるが、律刃はすかさず彫刻刀を投げつける。飛ばされた二振りの彫刻刀は、ワームの脳天と

胸部に突き刺さり、一瞬でその生体反応を奪い取る。

 律刃はワームに刺さった彫刻刀を回収しにいこうと、この血生臭い場に似合わない、可愛らしい足取りで歩き出すが、獲物を無くした敵が見逃されないはずがなく、2体のワームが丸腰の律刃に襲い掛かる。

 しかし、

 

「甘いんだよ。()()を倒そうってんなら少しは考えて立ち向かってこいよ化け物が」

 

 そう言うと律刃は、すかさずランドセルから彫刻刀の入っていたケースを取り出し、その中に入っていた別の彫刻刀を装備すると、両サイドから飛び掛かってきたワーム達にブッ刺した。

 ワームの死体から彫刻刀を引き抜くと、律刃はため息をつきながら、まるで誰かに語りかけるかのように言う。

 

「ったく油断すんなよな。今のお前がなんなのかちゃんとわかってんのか?……行くぜ、あっという間にばらばらにしてやるからな?」

 

 その瞬間、何かの合図でもするかのように、律刃の目が光った。

 ワーム達はそれにお構いなく突っ込んでくる。しかし、突如として律刃の周囲に濃い霧が立ち込めだし、ワーム達の視界が白一色に塗りつぶされてしまう。

 困惑するワーム達に、律刃からの死刑宣告が下される。

 

「さあお片付けの時間だ!擬・解体聖母(マリア・ザ・リッパー・オルタナティブ)!」

 

 そう叫んだかと思えば、次の瞬間、律刃が霧の中から姿を現した。いかにも必殺技らしい流れだったというのに、何もなかったというのか。ヒビキも、霧に囚われたままのワーム達も、同じ事を思っただろう。

 しかし、それは突然来た。

 何の前触れもなく、ワームの内の一体から血飛沫があがり、断末魔を上げながら床に倒れる。それを皮切りに、次々とワーム達はその身体から血飛沫ど断末魔を上げながら、その命を散らしていく。そして、全てのワームが死んだと同時に、霧が晴れる。

 後には、ヒビキと律刃と、僅かに生き残った子供達だけが残されていた。子供達は、たった一人でワームを殲滅した律刃に恐れを成して、部屋の隅でガタガタと震えている。そりゃあこんなものを見せられて怖がるなという方が無理だろう。

 ヒビキとてそれは同じだった。返り血に塗れた律刃は、最初に会話した時と変わらない調子で語りかけてくる。あんな事をやっておきながら、平然としている。ヒビキはそれが怖かった。

 

「さ、帰ろうか」

「君は一体……?」

 

 手を差し伸べる律刃に、ヒビキは震える声で問いかける。

 そう言われると、律刃は、無邪気にこう答えるのであった。

 

「霧崎律刃。ものをばらばらにするのが好きな、ただの女の子だよ?」

 


 

「ありえない……ありえない!ただの子供にこんな真似が!」

 

 律刃による虐殺の一部始終をモニター越しに目撃していた、司馬に擬態したワームは、机を叩きながら怒鳴り散らす。

 

(あのガキ……ひょっとして転生者か?)

 

 一方で、灰司は、律刃の正体にある程度気づき始めていた。

 転生者ならば、例え子供だろうとあんな事が出来てもおかしくはない。それに、律刃の外見に、彼は見覚えがある。彼女の言動からするに、あの転生者の転生特典は ——

 

「くそ!こうなればヤケだ!俺の手で皆殺しにしてやる!」

 

 そこまで考えた所で、司馬に擬態したワームが自棄になって灰司に牙を剥いてきた。灰司は思考を中断し、ネプテューヌの手を引いて素早く通路側に引き下がる。

 それと同時に、灰司達の背後の窓ガラスを突き破りながら、ダークカブトゼクターが灰司の元に飛来してくる。

 

「そうは行かせねえよ。変身!」

《HENSHIN》

 

 灰司はそう啖呵を切りながらゼクターをベルトにセットし、ダークカブトに変身してワームを迎え撃つ。ワームの鉤爪がマスクドフォームに重装甲と激突し、火花を散らす。

 ワームの初撃を難なく受け止めたダークカブトは、即座にワームを蹴り飛ばすと、ネプテューヌを抱え、ダークカブトゼクターが突き破った窓から地上に向かって飛び降りる。

 

「うおおっ⁉︎ 」

「たかが2階からの飛び降りだ、びびる必要なんざねえっての!」

 

 ダークカブトを追って、ワーム達も窓を突き破って飛び降りてくる。ガラスの破片が降り注ぐ中、ダークカブトはネプテューヌの背中を押して逃がそうとする。

 サナギ態のワームの群れを引き連れたコオロギ型のワームは、じりじりとダークカブトににじり寄ってくる。

 

「逃さないと言ったろ?安心しろ、お前達は俺達の中で生き続けるんだ。だから怖がらなくていいんだ」

「表面上はそうかもしれない。だが俺はそんなの真っ平御免だ。ったく反吐が出る。クソ野郎(てんせいしゃ)クソ野郎(ワーム)のブレンドなんざノーサンキューの極みだ。どの道お前を野放しにはできないしな、さっさと終わらせてやるよ」

《CAST OFF……CHANGE BEETLE》

 

 ダークカブトはゼクターホーンを動かし、ライダーフォームに移行する。パージされた装甲が容赦なくサナギ態のワームを蹴散らしてゆき、一部のワームはそのまま緑色の爆炎を上げながら木っ端微塵に砕け散る。

 同胞の死に憤りながら、コオロギ型ワームは背中の羽根を素早く動かして真空の刃を解き放ってくる。しかしダークカブトはそれを難なく飛び越え、そのままワームの懐まで潜り込み、肘鉄をぶち込む。

 

「ぐっ……」

「っはぁっ!」

 

 ダークカブトは仰け反ったワームの顔面に、続け様にパンチを叩き込み、さらに腹パン数発、脇腹へのハイキック3発、回し蹴り1発を続け様に命中させてゆく。反撃の隙など与えやしない。ただ速やかに標的を殲滅する戦い方だ。

 生き残っていたサナギ態のワーム達が、背後からダークカブトに飛びかかるが、ダークカブトはすかさずカブトクナイガン・アックスモードで振り向きざまにワームを一刀両断し、爆散させる。彼らは最早戦いの土俵にすら立っていなかった。

 

「コピーする相手を間違ったんじゃないのか?」

「黙れよ!ならお前を倒して俺がお前になってやる!」

 

 ダークカブトの言葉に苛立ち、ワームは殴りかかる。が、

 

「やめとけよ。お前如きに俺が務まってたまるか」

 

 ダークカブトはカブトクナイガンを素早く振り抜き、ワームの片腕を切り落としてしまう。血飛沫と悲鳴がワームから発せられ、片腕を失ったワームは地面に倒れる。ダークカブト的にはこれで殺せると思っていたのだが、案外相手もしぶといらしい。

 だがそれがどうした。それならまだまだ殴ればいい。斬れば済む話だ。ダークカブトは倒れたワームの胸ぐらを掴み上げ、そのまま何度もワームの顔面を殴りつける。その姿はまるで、カツアゲをする不良のようであった。一体どちらが悪なのだろうか。

 

「……勝手に動いちゃ駄目だからね。危ないんだよ?」

「なぁ」

 

 その戦いを廃工場の建物入り口付近の物陰から見ていたネプテューヌは、自身の腕の中に抱かれた猫にそう語りかける。

 なぜか妙にネプテューヌに懐いているらしく、呑気なのは、はたまた状況がわかっていないのかはわからないが、猫はのんびりと欠伸をしながらダークカブトの戦いを静観している。

 

「しかし、あの人も仮面ライダーだったなんて驚きだよねー。いいなぁ、私も女神モードになれたらなぁ。しばらくお仕事サボってたからレベル1になってるかもだけど」

 

 自分が戦えないことひ歯痒さを感じながらも、それを仕方なしに受け入れ、ネプテューヌは物陰でやり過ごそうとする。猫をぎゅっと抱きしめ、ぽつり。

 

「ごめんね、—— 。こんな不甲斐ないお姉ちゃんで……あれ?」

 

 そう言って、彼女は首を傾げた。はて、今変なことを口走ったような気がする。しかしながら、それがなんなのかさっぱりわからない。

 

「なんかおかしな事言っちゃった感半端ないんだけど……どゆことよこれ?」

「ぬーあ?」

 

 腕の中の猫と共に首を傾げるネプテューヌ。まだ物忘れに苦しむ年頃じゃないというのに。

 ネプテューヌがうんうんと唸っていると、ガコンと、彼女の近くにあった、廃工場の入り口である鉄扉が開く音がした。そして、扉の向こうから、数人の子供達が顔を見せる。律刃の活躍で生き延びた子供達だ。勿論、律刃も、そしてヒビキの姿もその中に確認できる。

 

「あ……ネプテューヌ!」

「ヒビキ!無事だったんだね!」

 

 お互いに気づき、再会を喜び合う。迷子同士がようやく合流できたのだ。

 そんな2人の様子を遠巻きに見ていた律刃は、保護者目線で言葉を送るが、

 

「良かったね再会できて。うん、わたしたちが頑張った甲斐があったよ」

「あー……うん……」

「怖がらなくていいよ」

「いや怖がる要素しかないよ……」

 

 あんな血みどろの惨状を作って子供達にトラウマ植えつけといてよく言うよ。ヒビキもネプテューヌも思わず律刃から距離を取る。よく見れば周りの子供達もガタガタ震えっぱなしである。これはメンタルケアに苦労しそうだ。

 が、そこでワームが逃げ出してきた子供達に気づいた。ダークカブトにボコボコにされてはいるが、それでも許せなかった。司馬(じぶん)の娯楽を台無しにした律刃を。

 

「貴様はさっきの —— 許さねえ!貴様も死ねぇ!」

 

 ワームは、自らの腕を掴んできたダークカブトの手を振り払うと、金切り声をあげながら、口から毒々しい色の液体を噴き出した。その液体は強い酸性を示しており、人体なぞ容易く溶かし尽くしてしまうシロモノだ。

 猛スピードで放たれたそれは、無防備な子供達目掛けて飛んでゆく。ダークカブトも、律刃も、アクションを起こそうとするも、圧倒的に時間が足りない。間に合わない。

 

「ハッハァ!1人たりとも生きて帰すわけねえだろ!死ねぇ!」

「させるかぁ!」

 

 ワームが上記の台詞を吐き捨てたその時。

 コンクリート塀を飛び越しながら、廃工場に隣接していた雑木林の中から、一台のバイクが飛び出してきた。そして、そのバイクの乗り手らしき人物が、銃らしきもので溶解液の弾を瞬時に打ち落としてしまった。

 一体この局面で、誰が邪魔しにきたというのだ。

 バイクの乗り手は、ヘルメットを外す。その顔は、ワームにとってもダークカブトにとっても見覚えのあるものだった。

 

「……またあったな虫野郎。こんな子供を手にかけようとは、腐った野郎だ」

「あのう……瞬、ここ何処?また戦場?」

 

 逢瀬瞬。一度退場した筈の彼が、舞い戻ってきたのだ。

 バイクの後ろに載っている唯は状況を飲み込めていないのか、辺りをキョロキョロと見渡している。

 

「瞬!」

「悪いな、お前らをほっぽりだしちまって」

 

 瞬の姿を見てネプテューヌとヒビキが駆け寄ってくる。瞬が離れていってしまったせいで、これまで散々な目に遭わされたのだ。彼女達には申し訳ないことをしたな、と瞬は2人の頭を撫でながら謝罪する。

 が、今は再会を喜び合うような場合ではない。邪魔をされて不機嫌そうなワームと、交戦中だったダークカブトがコチラを見ている。

 

「アクロス……!」

「はっ!誰かと思えばクロックアップのできない雑魚ライダーか!お前はお呼びでないんだよ!さっさと死ね!」

「そーいやぁお前とやり合うのはこれで3度目だったっけな。いい加減うんざりしてたんだ、ケリつけようぜ」

 

 ダークカブトと取っ組み合いながら、クロックアップのできないアクロスなぞ敵ではないと豪語するワームだが、瞬は不敵に笑いながら新たなライドアーツを取り出す。その赤いライドアーツには、こう書かれていた。

 —— KABUTO。

 それに気づいた瞬間、ワームの顔色が変わる。コピーした司馬の記憶から、とある可能性に辿り着いてしまう。それが正しければ、今ある優位性は無くなってしまう。

 

「唯、離れてろ」

「うん」

 

 唯達を安全な場所まで下がらせると、瞬はバイクから降りながら、あらかじめ巻いていたクロスドライバーに、アクロスライドアーツとカブトライドアーツを装填する。

 

「変身!」

《CROSS OVER!思いを、力を、世界を繋げ!仮面ライダーアクロス!LEGEND LINK!着いてきやがれ天の道!光速のオンリーワン!LINK KABUTO!》

 

 長ったらしい変身音声が流れ、いつもの様にアクロスに変身した後、アクロスの頭上に、何処からともなくアクロスと同じくらいの大きさのカブトゼクターに酷似したユニットが飛来してくる。

 飛来してきたそれはアクロスの頭上で羽ばたきながら、ワーム達を威嚇するかの様に数度複眼状の部位を光らせると、パーツ毎にバラバラになってアクロスに引っ付いていく。ゼクターホーン部分はアクロスの額にくっ付き、本物の仮面ライダーカブトのようなシルエットを作り出し、鉄の羽根はアクロスの背中にくっ付き、スイッチらしき部位はアクロスの腕にくっ付き、残りの部位は胸部や脚部にくっ付き、赤い装甲に変化する。

 これぞ天の道を行くライダーとの繋がりの結晶、仮面ライダーアクロス・リンクカブトである。繋がった時間は僅かなれど、その縁は確かに今結実したのだ。

 

「その姿……また新たなフォームか!」

「は!変にゴタゴタつけやがって!速攻で叩いてやる!」

 

 ワームはダークカブトのカブトクナイガンによる一閃を躱すと、クロックアップで即座にアクロスを叩き潰そうとする。ダークカブトも即座に反応し、ワームと同時にクロックアップ状態となる。

 例え片腕しか無かろうと、コイツを始末できるはずだ。最悪の予想が実現する前に終わらせて ——

 

「言っただろ、ケリをつけるってな」

「……あ、ああ!」

 

 その声を聞いた瞬間、胸に強い衝撃を受けると同時にワームは絶望した。

 ゴロゴロと地面を無様に転がったワームは、見上げる。そこには、クロックアップの世界でも、普通に活動しているアクロスの姿であった。彼もまた、クロックアップの世界に突入してきたのだ。

 

「情けねえな、たかがイーブンになっただけだろ?まさかお前、自分が完全有利じゃないと発狂するタチか?」

「前の様には行かないぞ……さあ、突っ走るぜ」

 

 クロックアップした2人のライダーは、狼狽えるワームに突っ込んでゆく。まずはアクロスの攻撃。鋭い右ストレートがワームの顔面を捉え、ワームを仰け反らせる。そこにすかさず、ダークカブトのカブトクナイガン・ガンモードによる射撃が命中し、ワームはなすすべなく撃ち抜かれてしまう。

 入れ替わりに、アクロスの連打がワームの腹部に食い込み、ワームはくの字に折れ曲がって吹っ飛んでゆく。ぶち当たったドラム缶の山がガラガラと音を立てて崩れ、ワームはその下敷きになってしまう。

 クロックアップならばそれは避けられた筈なのだが、ワームはそうしなかった。いや、できなかった。今やクロックアップの有無という圧倒的な優位性を崩されたワームは、みるみるうちに戦意を喪失していた。コピーしま司馬神真の性格に引き摺られ、対等な戦いに恐れを抱き始めていたのだ。

 

「ひいいっ!ああ!くそ、お、お、俺を守れよ!」

「逃すか!」

「おい待てそいつは俺の —— ああクソッタレ!また子守かよ!」

 

 サナギ態ワーム達に足止めを命じながら、司馬に擬態していたワームはクロックアップで逃げ出した。ダークカブトの制止を振り切り、アクロスはそれを追ってクロックアップで駆け出す。

 雨粒が地面に着くよりも速く、瞬きよりも速く、両者は駆ける。しかし、アクロスとワーム、双方のメンタル面での差異が、その距離差を埋めてゆく。

 双方は工場地帯を抜け出し、近場の河川敷にまで移動していた。雨が降り頻る中、必死でクロックアップしながら逃げるワーム。しかし、その足取りはだんだんと力無いものになってゆく。元より弱い者イジメしか出来ない小心者だった司馬神真の記憶の影響を受けて、どんどん弱気になっていっているのだ。

 

「来るなぁ!来るなって!」

「もう追いついてるんだよ!」

 

 叫ぶワームだが、それよりも早く、追いついたアクロスがワームを殴り飛ばした。びしゃびしゃと水飛沫を上げながら、濡れた地面に倒れるワーム。

 アクロスは、ライドアーツを一旦挿入口まで戻し、再度ドライバーにセットする事で、必殺技を発動させる。

 

《RIDER CROSS BLAKE》

「はあっ!」

 

 アクロスは雨を突っ切りながら、空高く飛び上がる。すると、アクロスの全身を覆っていたカブトゼクターに酷似したユニットがアクロスから分離し、アクロスの両足に新たな形でくっついてゆき、ちょうど、アクロスの下半身がカブトゼクターと一体化したかの様な形状となる。

 そして、アクロスはその状態のまま、ワームめがけて一直線に急降下する。足の先は、ちょうどゼクターホーンと一体化している。このまま突き刺す算段らしい。ワームは情けない悲鳴を上げながら逃げようとするが、これまでに食らったダメージが響いて上手く身体を動かせない。

 ワームは闇雲に腕を振るう。しかしそれはもはや悪あがきにもならず、アクロスの脚部のゼクターホーンが、ワームの身体を突き破った。

 

「うわっ……と?」

 

 通常フォームに戻りながら着地したアクロスは、胴体にでかい穴が空いたワームの姿を見る。ワームは、司馬の姿とワームの姿を交互に取りながら、アクロスに向かって恨めしそうに手を伸ばす。

 

「ふ、ざ、け、る —— 」

 

 言い終わる前に、終わりが来た。

 致命傷を負ったワームの身体は、赤い炎を撒き散らしながら爆散した。後には何も残らなかった。

 

「……ふう」

 

 戦いが終わり、雨に濡れながらほっと一息つく。

 ともかく、早く戻らなくては。さっきの二の舞はもう懲り懲りだ。アクロスはどっと押し寄せた疲労を押し殺して、皆の元に戻ろうと足を動かす。

 その時だった。

 何気なく目をやった、川の対岸。そこにアクロスは、あるものを見た。

 

「あれは —— 」

 


 

 川の対岸にある遊歩道。そこに、土砂降りの雨の中、2人の男が佇んでいる。

 一方は天道総司。雨に濡れながら、ただただ無言で目の前の人物を凝視している。その胸の内は誰にもわからない。もう一方はカブトオリジオンに変身していた青年。ライダー達との連戦で満身創痍であるにもかかわらず、その目は今なお闘志に燃えている。リベンジマッチが、幕開けようとしていた。

 

「待ってたんだぜ、天道ぉ……」

「……その執念にはほとほと呆れかえる。何故そこまで俺を倒したがるのかには興味はないが、いいだろう。乗ってやる」

 

 神代邸から場所を移し、雨降る川岸に2人は対峙する。雨は一層強まり、川の水位は更に増してゆく。他の人が見れば、間違いなく危険だと判断し、2人をこの場から引き離そうとするだろう。

 だが、そんなことは起こり得ない。2人は今か今かと戦いの時を待ち侘びるかのように、互いを凝視している。幾許かの静寂ののち、それを破るかのように、羽音を響かせながら、天道の元へとカブトゼクターが飛来し、天道の腰のライダーベルトにひとりでに収まる。

 

「変身」

「変身」

《HENSHIN》

《KAKUSEI KABUTO》

 

 天道がカブトに変身するのと同時に、青年の方もカブトオリジオンに変身する。

 そして、両者ともに一斉に駆け出して間合いを詰める。まずはカブトオリジオンの先攻、ひねりのない右ストレートが、カブトにむかって放たれる。しかし、カブトオリジオンの拳がマスクドフォームのカブトの腕装甲に阻まれ、ガキンッ!! と、大きな音を立てる。

 カブトは左腕で受け止めたオリジオンの拳を振り払うと、即座にカブトクナイガン・アックスモードを振りぬき、オリジオンの胸部を横一文字に斬りつける。しかし、カブトオリジオンは素早く身を引いたため、カブトクナイガンの刃はオリジオンの胸に浅い傷をつけるだけに終わり、たいしたダメージを与えることができずに終わった。

 

「ふううああああああああああっ!!」

 

 カブトオリジオンは地面を強く蹴って目にもとまらぬ速さでカブトの懐に潜り込み、装甲の薄いベルト周辺にパンチを叩き込もうとする。だがカブトがそれをみすみす食らうはずもなく、間合いを詰めすぎたのがあだとなり、オリジオンは横っ腹に蹴りを食らってごろごろと地面を転がってゆく。

 遊歩道と川を隔てる柵に身体をうちつけられ、あおむけに倒れるオリジオン。ぴくりとも動かない彼の姿に、対岸から見ていた瞬は「これで終わったのか」と思う。カブトは、あおむけに倒れたカブトオリジオンに問いかける。

 

「もう終わりか?あれほど俺達を倒すと豪語したのに」

「んなわけあるか……俺はあんたを倒すまで死ねないっ!! 」

 

 それに呼応するように、カブトオリジオンはばっと起き上がり、カブトの複眼めがけて肘鉄をかます。カブトは頭を捻って避けようとするが、先ほどまでよりも速かったその一撃は、流石のカブトも完全には避けきれず、側頭部にオリジオンの肘が食い込み、カブトの体制が崩れる。

 カブトオリジオンはその隙を見逃さなかった。立て続けにハイキックを数発叩き込み、カブトをじりじりと後退させてゆく。カブトは抵抗せずに、オリジオンの猛攻をただただその身に浴び続ける。そして、オリジオンは大きく飛び上がり、両足を使ったドロップキックをカブトにむかって放つ。

 だが、肘鉄を受けてから無抵抗だったカブトは、そこでカブトクナイガン・アックスモードを思いきり投げ、ドロップキックでこちらに飛び込んできたオリジオンに、その刃を叩きつける。オリジオンのキックはカブトの胸に、カブトが投げたクナイガンの刃はオリジオンの脇腹に突き刺さる。オリジオンは痛みに悶えながら地面にたたきおとされ、カブトはその場に膝をつく。

 戦いはまだ終わらない。カブトオリジオンは、突き刺さったカブトクナイガンを引き抜いてはその場に放り捨て、地面に膝をついているカブトを挑発する。

 

「クロックアップを使えよ。もっと本気で来い!」

「……iいいだろう」

《CAST OFF……CHANGE BEETLE!》

 

 その挑発に応えるように、カブトはベルトのカブトゼクターのホーンを右に動かし、クロックアップの可能なライダーフォームへと変身する。カブトオリジオンは、カブトのキャストオフによって周囲に弾き飛ばされたマスクドフォームの装甲を打ち払うと、歓喜の震えるような声で叫ぶ。

 

「そうだ……それだ……!もっといくぞお!クロックアップだ!」

「そちらがその気なら付き合ってやる。クロックアップ」

《CLOCK UP》

 

 両者ともにクロックアップ状態に入る。二人に降り注いでいた雨が、まるで空中で静止したと錯覚するほどに、その速度を遅くする。空に浮いた雨粒をかき分けながら、カブトオリジオンはカブトに向かって突っ込んでくる。

 カブトは跳んできたオリジオンの拳を片手で打ち払うと、身体を素早く捻って回し蹴りを叩き込む。オリジオンは回し蹴りをくらいながらもその場に踏みとどまり、カブトの両肩をがしりと掴むと、自身の頭部についている角を思いきり振りかざした。頭突きで一瞬だけ、カブトの体勢が崩れる。オリジオンは、そこに続けて両の拳を使ってカブトの頭をぶん殴ると、力任せにカブトを蹴り飛ばした。

 ずさささ……っ!!と後退するカブト。しかし彼はまだ倒れない。軽やかなステップを踏みながら、一瞬で開いた間合いを詰め、お返しと言わんばかりにオリジオンの顔面を容赦なくぶん殴る。オリジオンはカブトの腕をがしりと掴み、心の内を吐露する。

 

「あんたは俺の憧れだった……あらゆる意味で完璧な存在で!その生きざまは、多くの人を魅了してきた!」

「で?」

「だから超えたい!同じカブトになったのだから!全てのライダーを下し、最強である事を証明したい!憧れのあんたを超えたいんだよ!」

 

 それが理由。本来ならかなうはずのなかった、憧れのヒーローとの対峙。それが今かなっていることに対する歓喜が、カブトオリジオンに力を与える。強すぎた憧れは。「あの人のようになりたい」から「あの人を超えたい」の境地まで行き着いた。だから止まらない。止まれない。なぜなら、ゴールはすぐ目の前にいるのだから。

 カブトオリジオンは掴んだカブトの拳を下へと叩きおとすと、もう片方の拳でカブトの顎を抉るかの勢いでぶん殴った。しかしカブトは、アッパーカットで打ち上げられた勢いを利用して、そのままきれいなムーンサルトキックをカブトオリジオンに食らわせる。カブトは着地するなり、よろけるカブトオリジオンに向かってハイキックを食らわせてオリジオンを吹き飛ばす。

 そして、心境を吐露したオリジオンに問いかける。

 

「その先は?俺を超えて何をしたい?」

「先なんてない!憧れってのは昇華しなきゃ意味が無いんだ。燻らせ続けると、人を狂わせちまう。俺はそうなる前にチャンスを手にした。ならば、やるしかないだろ!」

 

 ただ超えるだけ。壁を超えた先にあるものにはさしたる興味はない。ただ超えたいから超える。根底にあったのは、生粋のチャレンジャー精神だった。彼からすれば、たとえどれほどの人を傷つけようとも、壁を超えることに比べれは些事たるものでしかない。他の転生者とはまた違った意味で、彼も狂っていた。

 そんなカブトオリジオンに、天道はこう告げる。 

 

「おばあちゃんが言っていた……他のものがいくら輝こうとも、太陽の輝きには届かない。お前は、俺にはなれない」

「なめるなあああああああああああああああああああああああああああああっ!! 」

 

 心の底からの叫びとともに、カブトオリジオンは天高く飛び上がる。そして、左足を突き出した姿勢のまま、一直線にカブトめがけて急降下してくる。―― ライダーキックだ。

 カブトオリジオンの跳び蹴りがカブトに迫る。しかし、カブトはオリジオンに背を向けたまま、一切動じない。いや、彼もまた、同じ技で迎え撃とうとしていた。

 

「ライダー……キック」

《RIDER KICK》

 

 すでに準備は済んでいた。

 カブトがそう呟きながらゼクターホーンを右に再度倒すと、電子音声とともに、ゼクターからタキオン粒子が放出され、カブト頭部の角を経由し、カブトの右足に粒子が集まってゆく。

 カブトオリジオンのキックが到達するまで、あと1,2秒か。

 

「はぁっ!」

 

 カブトは、目にもとまらぬ速さで振り返りながら、迫りくるカブトオリジオンめがけて回し蹴りを放った。振り回された右足は、遠心力でブーストしながら、突き出されたカブトオリジオンの左足と激突を起こす。瞬間、途轍もない衝撃があたりに巻き起こり、周囲の雨粒を根こそぎ吹き飛ばしてしまう。土砂降りの雨の中、二人の周囲だけがまるで晴れているかのような状態に変化する。

 激突から1秒ほど遅れて、二人のクロックアップが解除される。そしてその瞬間、ひとつの断末魔が雨の中に響き渡った。

 

「ぐ、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉︎ 」

 

 瞬の目には、その始動は見えなかった。

 断末魔の主は、カブトオリジオンだった。喉が張り裂けるような声量で叫びがらが、雨を突き破り、空に投げ出されてゆく。カブトは、足を振りぬいた姿勢のまま、ライダーキックを放つ前と同様に、オリジオンに背を向けたまま微動だにしていない。

 全身に激痛が走る。これまでのライダー達との連戦で負った傷が、今になってカブトオリジオンの意識を奪おうとしてくる。蹴り飛ばされた勢いのまま、がむしゃらに手足を動かすオリジオンの視界に、カブトの背中が映る。

 それを見て、彼は確信した。自分の思いは間違ってはいなかったのだ。あの日、画面越しに抱いた憧れは正しかったのだ。

 

(ああ、幸せだ —— )

 

 そう思いながら、カブトオリジオンは爆発した。生じた爆風は周囲の雨水と川の水を思いきり吹き飛ばし、カブトはおろか、対岸に居た瞬にまでそれを叩きつける。

 爆風の中から、カブトオリジオンの正体であった青年が、満身創痍の状態でとびだし、地面に叩きつけられる。きている服は原型をとどめない程にボロボロに敗れ、体中の傷から血が流れだしては雨水にとけこんでいく。

 次第に、雨がやんでゆく、カブトは、右手を空に掲げ、人差し指を天高くつきたてる。すると、まるで勝者を祝福するかのように雲が切れ、そこから顔をのぞかせた太陽が、カブトを照らし始めた。カブトは終始無言だったが、その佇まいは暗に告げていた。

 ――俺こそが太陽だ、と。

 

「…………」

 

 青年は、雲の隙間から覗いてきた日の光に包まれながら、意識を手放した。

 太陽を目指して飛んだイカロスは、翼を失い地に堕ちた。彼も天の道に焦がれ、目前で潰えた。

 

 

 だが ——

 その顔は、満足そうだった。

 

 


 

《RIDER KICK》

「せやぁ!」

 

 一方、此方も決着がついていた。

 灰司 ——ダークカブトの回し蹴りが、彼の周囲を取り囲んでいたワーム達に炸裂し、ワーム達は一斉に爆散する。

 

「終わったん……だよね?」

「なんかよくわかんなかったけど、これで一件落着って感じ?」

「あー、なんか終わった途端にどっと疲れが —— 」

 

 そう言いかけて、ヒビキは塀に寄りかかりながらずるずるとその場に崩れ落ちる。ヒビキだけでない。唯も、ネプテューヌも、子供達も、皆一斉にその場に倒れこんでゆく。

 そうして、全てが意識を喪失する。ただ一人平然としていたダークカブトは、皆が意識を失ったのを確認してから変身を解く。

 

「悪く思うな」

 

 灰司が撒いたのは催眠ガス。これから灰司は、皆から今回の事件についての記憶を消すのだ。

 アクロスの監視任務を受けている以上、瞬や彼に近しい人間に灰司の素性を知られるのは不都合なのだ。普段は細心の注意を払ってはいるが、今回はやむを得ずネプテューヌにバラしてしまったので、仕方なしに記憶処理を施す事にしたのだ。

 おまけに、今回の事件はかなりショッキングなものであった。生き残った子供達の精神的ダメージを和らげるべく、この処理は避けられないものであった。ちなみに唯やヒビキについては記憶処理をするまでもないのだが、この場にいたのでついでに受けてもらう事にしよう。

 ちなみに経費が結構かさむので、灰司的にはあまりこういう事はしたくないらしい。

 

「ああ面倒くせぇ。さっさと終わらせてやる」

「へえ、こんな事するんだな」

 

 しかし、ここでする筈のない、灰司以外の声が聞こえた。灰司は咄嗟に隠し持っていた拳銃を、声のした方に向けて構える。

 

「悪いな、俺息止めるのだけは得意なんだよ」

 

 声の主 —— 霧崎律刃は、得意げに笑いながらドラム缶の上に腰掛ける。コイツを始末すべきか、と一瞬考えた灰司だったが、即座にその考えを破棄する。

 AMOREは転生者そのものを憎む組織ではない。あくまで世界の秩序を維持するために、悪しき転生者と戦うのだ。転生者だからといってむやみやたらに殺していいわけではないのだ。灰司も転生者狩りの端くれ、その程度のことはちゃんとわきまえている。

 

「お前、転生者狩りなんだろ?」

「……やはりお前も転生者だったか」

「俺達を殺すのか?」

「いや、AMORE(おれたち)が裁くのはあくまで悪人だけだ。転生者なら誰彼構わず殺すなんて独裁者じみた事してたまるか。まあ……お前のこれから次第、だな」

「へえ意外。俺の経験上、お前みたいな奴は融通効かない奴ばっかだから、てっきり殺すのかと」

 

 偏見のこもった律刃の反応に、そんなの悪役と変わんないだろ、と灰司は吐き捨てる。

 

「俺の記憶は消さないのか?」

「記憶処理は金がかかる。俺みたいな一介のエージェントにゃ結構厳しいんだよ。だから言っておく。今回のことは口外するな。いいな?」

「安心しろ、口の堅さには自信があるんだ」

 

 軽口をたたき合いながら、灰司と律刃は別個にこの場から立ち去ってゆく。

 後には、巻き込まれた女子供のみが残されていた。

 

 


 

 その夜、逢瀬家では。

 

「……で?」

「だからさあ、この仔すっかり私に懐いちゃってさあ……全然離れてくれないんだけどどうしたらいいの?」

「黙りなさいこん畜生。うちにペット飼う余裕なんてないんだよ!ただでさえ居候二人増えて大変だってのに、これ以上叔父さんの負担増やそうとするな。悪魔かお前は」

「女神だよ!悪魔呼ばわりとは失敬な!」

 

 猫を膝に乗せながら、きらきらとしたおめめで懇願するネプテューヌを、容赦なく瞬は一蹴した。瞬の言うとおり、現在の逢瀬家の家計はほぼ全部環四郎おじさんが担っている。別に生活が苦しいわけではないのだが、それについてはわりと本気で申し訳ないと思っているので、これ以上の負担は増やさせまいと瞬は意固地になっているのだ。

 が、そんな瞬の思いを無碍にする一言が、

 

「まあいいんじゃないかな、その代わり世話はちゃんとするんだよ」

「叔父さんは楽観的すぎんだよ……」

 

 まさかの叔父さんからのOKサイン受領である。本人がOKしてしまった以上、もうどうしようもない。歓喜の雄たけびをあげる幼女二人を眺めながら、瞬は思わず頭を抱えるのだった。

 


 

 とある場所。廃病院のような場所の一室で、埃をかぶった患者用ベッドに腰掛けながら、バルジはつぶやいた。その手には、DISCのようなものが数枚。室内には彼以外に、窓の外に目を向けて佇んでいるレイラに、犬のように断続的に唸り声をあげるガングニールオリジオン、そして、ベッドの上に寝かされた二人の人影が存在している。

 

「実験は部分的に成功。しっかし、これを自前で調達できないのが難点だよなあ」

「ほんとお前はいつ見ても悪趣味だな。一体どんな教育受けたらそんな糞野郎になるんだ?」

 

 そんなバルジに対し、レイラは壁に身体を預けながら悪態をつく。その表情からするに、本気でバルジのことを嫌がっているように思われる。バルジはレイラの発言を意に介していない様子で、ケラケラと笑いながら、

 

「悪趣味とか言うなよ。お前らがそろいもそろって頭脳労働できねえから俺が一手に引き受けてんだぞ?」

 

 そう言って、持っていたDISCのうち1枚をレイラに投げ渡す。

 

「いい加減オリジオン化の一つや二つ、やってくれないかねえ?お前だけだぞ、ギフトメイカーの中でオリジオンになれてないの」

「黙れ。私は私のやり方で行く」

「あっそ」

 

 くだらない意地張りやがって、と言うかのように、バルジはレイラを突き放す。

 一方で、レイラは話を切り替える。

 

「お前が私を呼び寄せたのはこれが理由ではないはずだ」

「ああそうだが?」

 

 糞みたいな享楽主義者のバルジと生真面目なレイラとでは水と油。上記の会話で実るものは何もないということは、お互いに重々承知しているはず。それなのにわざわざレイラを呼んだというからには、それ以外に、バルジ側に何らかの事情があるはずなのだ。

 

「お前さ、最近頭痛が酷くなってきているだろ?」

「……ああ」

「それ、なくしてやろうか」

 

 バルジがそう言った瞬間、バルジの背後の壁が一斉に蠢いた。

 否、それは壁では無かった。何か無数の、小さいものが壁一面にうごめいている。

 レイラはそれに気づいた瞬間、ここから逃げ出そうとするが、それよりも早く、それらが一斉にレイラにとびかかっていった。

 

 

 

「不調はどうにかしてやるからさ。大人しくギフトメイカー続けていてくれや、哀れな負け犬ちゃん」

 

 ひどくなってゆく頭痛の中、少女は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 




オリジオン紹介

カブトオリジオン
人間態:???

元はただのカブトファンだったが、その憧れがゆがみまくり、ただ天道を超えるためだけに生きる修羅へと変貌を遂げた。
マスクドライダーとの連戦を繰り返しながらもカブトと接戦を繰り広げる正真正銘の人外。間違っても序盤の一般怪人が持ってていいタフネスでは無い。
まあ天道と戦うんだからこれくらいしてくれなきゃ困るってもんです。



イノケンティウスオリジオン
人間態(?):
元ネタ:とある魔術の禁書目録

とある魔術師が作り上げたルーン魔術の術式の名を持つオリジオン。本来ならルーン文字の刻まれたカードによって結界を築かなければ満足に力を発揮できないのだが、こいつにはそんな制約はない。自在に灼熱の炎を操る。

戦闘シーンがバッサリカットされたのはネタ切れだからではない。


タイアードオリジオン
人間態(?):
元ネタ:ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド
物体を劣化させる合成人間の力を持ったオリジオン。原点同様、触れた箇所を一瞬で劣化させる。四肢を動かなくし、地面を脆くする。彼の前では物理的な防御など無意味と思った方がいいだろう。
オリジナルの使い手からしてデバッファー要員。主に行動を封じるために用いる。劣化した生体組織は能力が解除されれば元通りになる。
火力はそんなにないのでまあ大したことはない、


今回は色々わちゃちゃしすぎた気がしますが、おそらくここからこんな感じで話が進んでいくと思います。
カブトVSカブトの構図がやりたいがための回でしたので、瞬がオリジオンに関わる機会を極力減らしました。
転生者のキャラが一辺倒すぎるなーと思ったので、今回はただ屑やゲズではないやつを目指しました。一方は天の道を踏破せんとする狂人チャレンジャー。もう一方は小心者のサイコパス。敵のバリエーションをどんどん増やさなきゃだめだなこりゃあ……まだまだや。
あと天道語録むずすぎる。二度と書きたくない。



1章もいよいよ後半戦。灰司とバルジの因縁については1章で蹴りをつけなきゃならないのですが、その前に出さなきゃいけないキャラを出し切ってしまわねばなりません。序章で予告していたクロスオーバーもちゃんとやりきらねば。サブタイトルの時点で次の舞台はわかると思います。ではまた何カ月後とかに!





次回 池袋ジャック・ザ・ボマー
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