【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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1章も折り返しです。就活つらいよ。

今回は新キャラ達の顔見せ程度です。あんまり話は進まないよ。
今回は余りプロットが出来てないのでかなり遅いペースになります。


※淫夢要素有り










※2022年10月18日改稿


1章-池袋編
第24話 AM10:00/池袋ジャック・ザ・ボマー


5月2日未明・都内某所

 

 

 視界に広がるは、燃え盛る火の海。

 元は大層豪華な家屋だったのだろう。華美な装飾の施された額縁やシャンデリア、椅子やテーブルの残骸が、それを物語っている。しかし、それらは既にあるべき姿を失っている。炎に巻かれ、砕け、潰れたそれに、元の価値はなかった。

 

「な、なんで……ワシが……」

 

 瓦礫の下から、しわがれた声が発せられる。そこに、1人分の足音が接近する。

 

「よう死にぞこない。俺のことを覚えているか?」

 

 足音の主は、しわがれた声にそう言いながら、声のしたあたりの瓦礫を力を込めて踏みつける。すると、ぐちゅりという気色悪い音がして、しわがれた声が途切れた。瓦礫と瓦礫の間から、おびただしい量の血がにじみ出る。文字通り潰されたのだ。

 足音の主は、焼け崩れた天井の穴から、空を見上げてつぶやく。

 まるで、誰かを呼ぶかのように。

 

「さあこいよ■■■……俺を殺しに来い……!」

 

 その直後、もうひとつの足音が聞こえた。あり得ない。既にここにいる人間は全員殺したはずだ。全員の死にざまの一部始終をこの目に収めたのだから間違いない。サイレンは聞こえてこないことから察するに、消防車や救急車が来たわけでもない。この状況で、外部からの侵入者でもやって来たというのか。

 男は、燃え盛る瓦礫の山をぐるりと見渡す。生命反応はない。そこに、背後から声がかけられる。

 

「おいおい、こりゃ随分と派手にやってんなあ」

「誰だ!」

 

 そう叫んだ時には、既に彼の喉元にナイフが突きつけられていた。

 刃が当たらないように、なんとか目線を動かす。ナイフを突き立てていたのは、目元から頬にかけて走る傷と真っ白な髪が良く目立つ、小学生ぐらいの女の子だった。

 この場に圧倒的に似つかわしくない存在だが、男は察していた。コイツは転生者(どうるい)だと。相手の転生特典も大方の目処がついている。

 

「お兄さん、ここでなにしてるの?これ、あなたが全部やったの?」

 

 少女が問いかける。見た目に違わない、あどけない声だった。しかし油断はしてはならない。彼女はおそらく自分と同じ転生者、見た目で判断するのは三流のやることだ。しかし一体、何故彼女は自分の邪魔をしに来たのだろうか?

 喉元にナイフを突きつけられたまま、男は逆に問い返す。

 

「お前……AMOREか?」

「いや、通りすがりの殺人鬼だ。たまたま散歩していたらこの火事を見つけてな……要救助者がいるかもと思って飛び込んだはいいけど……この調子だと、生存者はゼロみたいだな」

「ヒーロー気取りか?なら引っ込んでろ!」

 

 男は肘鉄をくらわそうとするが、その肘は空を切る。

 少女は、ひらりと身をかわし、火の手が回っていない箇所に着地する。

 

「月に代わって御仕置きされてみるか?ちょっくら残虐だけどな!」

 

 ナイフを突きつけながら、少女はそう言った。

 


 

 

 

5月3日早朝・都内某所

 

 闇の中で、こんなやり取りがあった。

 

「これを、この住所に」

『いや、それなら宅配業者に頼んだ方がいいんじゃないですか?』

「本当なら俺が直接届けたかったんだが、生憎俺は今命を狙われているんだ。それに、追っ手もこれを血眼になって探している。だからある程度腕っぷしの立つ奴じゃないと任せられないんだ。その点貴女は大丈夫だ。なんせ■■■■■■■だからね」

『失礼ですが、誰からそれを?』

「仕事柄そういったものに縁があったのさ。それで貴女のことを知った」

『……』

「怪しむのも無理はない。なんせこれは()()()()命がかかっているんだからな。頼む、金ならいくらでも積む」

『まあ、報酬については文句ないのですが……』

 


 

 5月3日早朝 AMORE本部内

 

 

 どこかの世界に存在する、AMOREの本部。その施設内の、とある部屋。

 プロジェクターの光以外に光源のない真っ暗な部屋の中で、ミーティングのようなものが行われていた。プロジェクターの脇に立つのは、目の下に隈をつくった壮年の男性。ところどころに金の装飾が施された白い制服に身を包み、自身の前に立つ数人のAMORE隊員と思しき若者たちに、本日の作戦内容を伝えているようだ。

 壮年の男性に相対するのは、様々な服装の若者たち。青いバンダナを巻いた金髪の青年だったり、全身包帯まみれの男だったり、どうみても無理のある魔法少女コスの成人女性だったりと、どうみても世界を守る使命を負う者には見えない格好の奴らだった。

 壮年の男性は、プロジェクターに映し出された数人の顔写真を指示棒で指し示しながら、ミーティングを締めくくった。

 

「……これが今回のターゲットだ。すべて必ず生かして捕えること。以上」

「質問いいですか?」

 

 ミーティングを切り上げようとした壮年の男性に、バンダナの青年が手を挙げて質問する。

 

「なんだ」

「あのう……ターゲットの背景とかの説明はないんですか?いつもはあるのに……」

「それを教えて私に何か得があるのか?ないだろう?君たちに求めるのは、命令を確実に成功させるに足る実力だけだ。ったく、相変わらず君は反抗的だな……これ以上無駄な口答えをするようなら、降格も辞さないがいいのかね?」

「いえっ……はい、なんでもないです」

 

 男性の高圧的な態度にいち隊員であるバンダナの青年は黙り込むほかなかった。ちらりと同僚達を見てみると、他の皆はただ静かに話を聞いているだけ、一見すると真面目に話を聞いているだけのように見えるが、その実は「コイツに何言っても無駄」という、一種の思考停止に陥っているのだ。

 バンダナの青年が黙り込んだのを確認すると、壮年の男性はプロジェクターを片付け、去り際に部屋の証明をつけると、不機嫌そうに退室していった。男性の姿が見えなくなったのを確認すると、緊張の糸が解けたのか、隊員たちが一気にだらけたような態度になる。

 

「どうした、あんまり乗り気じゃないみたいだが。お前が応森さんとの関係が微妙だからと言っても、あれはまずくないか?」

「だってさあ……ただ理由も聞かずに転生者捕えろとか言われてもさ、なんか納得しにくいというか……そう思わないっすか?」

「考えるだけ無駄よ。あたし達は所詮下っ端。上には上の考えがある……下っ端には想像もつかないような、ね」

 

 想像もつかない考え。それが不安の種でないことを祈りたい。

 バンダナの青年は、そう祈りながら、貰った作戦内容の記された資料に目を通していた。

 


 

 5月2日早朝

 

 あれから少したった頃。

 少女は早朝の街をひとり歩いていた。

 

「逃げられちゃったねえ……まあ、あもーれには気をつけろっておかあさん言ってたし。変に目をつけられる前に逃げだしといて正解かもね」

 

 そう、結局、燃え盛る洋館での死闘は決着がつかなかったのだ。決着がつく前に、AMOREに介入されてしまい、互いになりふり構わず逃げだしたのだ。あんな場所にいたら自分まで捕まってしまう。こちとら()()()()()()()()()()()()だ。

 鼻歌を歌いながら、少女は朝焼けに包まれた街を歩いてゆく。早く帰らないと親が心配するだろう。いくら前世ではいい年した大人だったといえど、今の自分は小学生。夜遊びには早すぎる年齢だ。

 そんなことを思いながら歩く少女。その手の中には、あるものが握られていた

 

「しっかし……これ、なんだろうね?あの転生者からくすねたんだけど……」

 

 それは、透明なケースに収められたチップのようなものだった。それが何なのかは見当もつかないし、恐らく彼の大事なもののだろうが、持ってきてしまったものは仕方がない。

 

「まあいいかな。あの人がさっきのようなことを続けるなら……また会えそうだしね。返すのはその時でいいかも」

 

 彼女は、随分と気楽な様子だった。

 少女はチップを短パンのポケットにしまうと、鼻歌を歌うのを再開した。

 

 

 

 これがきっかけで、翌日彼女は、実質的な指名手配犯にされてしまうことを、少女はまだ知らない。

 


 

 同じころ。

 人気の少ない小道を歩いていた男は、あることに気づいた。

 

「クソ……さっきのガキに盗まれたか……!」

 

 どうやら何かを盗まれたらしい。落としたとかではない。確実に、あの洋館での決闘の最中に奪われたのだと、男は確信していた。

 

「はあ……面倒なことになったぜ畜生……まあ、優先事項は他にもあるんだ。それをやっていきゃあ見つかるだろ」

 

 悪態をつくものの、すぐに気持ちを切り替えた。落とし物を回収することも大事だが、他にもやることがあるのだ。

 たとえそれが、誰にも理解されないとしても、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 起点を語るとするならば、これくらいで十分だ。

 これは、よくある因縁の話。

 

 


 

5月3日AM10:00

 

 

「ぬわあああああああん疲れたもおおおん」

 

都内のある大学の空手部の部室である、臭く狭い和室の中に響くデカくて不快な声。頭をタオルで拭きながら、襖を勢いよく開け放つ浅黒い男が一人。

 彼の名は田所浩二。周りからは野獣と言われている24歳の大学生だ。浅黒い膚にイボの乗った汚い不細工面、ステロイド疑惑が尽きない、そこそこガッチリしてる身体付きにやや高い声。人望はない。

 

「チカレタ……」

 

野獣に続いて入ってきたのは、小声で愚痴をこぼす坊主頭のアホ面男・三浦智将。田所より年齢は下だが、学年で言えば先輩にあたり、この迫真空手部の主将もしている。ものすごい馬鹿頭の持ち主だが、主将なだけあって腕っ節は確かだし、飯をホイホイと奢ってくれる気前のいい一面もある。

 

「辞めたくなりますよ〜部活ぅ〜!せっかくの休日に朝練とかキツスギィ!」

「お、そうだな。おい木村ぁ、隅っこにいないでコッチに来るゾ」

 

 ズボンを脱いでシャツとブリーフだけになった三浦は、部屋の隅で雑誌をチラチラ読み始めた青年に話しかける。

 彼の名は木村直樹。野獣達よりは綺麗な顔立ちの、爽やかそうな青年だ。空手部の中では一番の後輩かつ唯一の常識人であるが、野獣をわりと本気で嫌っている。

 

「なんだよ木村、何嫌そうな顔してるんだよ?」

(だって野獣先輩臭いし煩いから近付きたくないんだよなぁ)

 

 まあ、体臭を差し置いても、好んで近づきたい存在ではない。

 三浦に金集るわ部活サボるわ下品だわ2浪だわ非常識だわ、と底辺のオンパレード。そんな人間と深く関わりたくないというのが本音だ。なんでこんな部活に入ってしまったんだろうか、と儚げな顔になる木村。

 

(いやまあ、空手は大学でも続けたいなと思ってたけど……まだ入ったばかりだけど、やめようかな……)

「何読んでんだよ、見せろよ見せろよ〜」

「あ」

 

 自分のせいで木村が思い詰めてるとは梅雨知らずな野獣は、木村の読んでた雑誌を無理やり奪い取ってパラパラとめくり始めた。見たところ普通の週刊誌であるようだが、ふとある一文が彼の目に留まった。

 

「爆破事件?何これ」

「池袋を中心に頻発してるんですよ。今朝も電車が遅延してましたよ」

「はえー、俺電車通学じゃないから知らなかったわ」

 

 そう。近頃、池袋近辺で次々と謎の爆発騒ぎが起こっているのだ。爆発の原因は不明だが、既に死傷者がでているようで、世間では不安の声が上がっている。

 

「カッチャマもすっげー怖がってたゾ。なんとかしてやりたいゾ」

「なんとかって……僕らみたいな一般人に出来ることなんてありませんよ。だいたい僕らがでしゃばらなくても、警察とかがなんとかしてくれるでしょ」

 

 木村に正論を言われ、「あ、そっかぁ……」と三浦は呟き、部屋の隅に畳まれていた布団の束に背中を預ける。

 が、そこで野獣が調子こいてこんな事を言い出した。

 

「お前さ木村さぁ、俺達空手部だよなぁ?爆弾魔くらいでビビってたら、一体何のために練習してるのか、これもう分かんねえなぁ」

「野獣もいいこと言うなぁ〜。よし、俺も犯人捕まえて刑務所にぶち込んでやるぜ」

 

 馬鹿なのかコイツらは、と言いたくなる木村だったが、実際この2人は馬鹿だしそれを言ったところで意味がないのでグッと飲み込む。どうせなら野獣だけ爆殺されればいいのに。

 兎に角早く帰らねば。このままだと自分まで巻き込まれる。

 厄介ごとは御免だと言わんばかりに、木村はジャージを羽織ってスポーツバックを肩にかけると、部室を後にしようと入口の襖に手を掛ける。しかし、木村の行動は遅すぎた。

 野獣ががしりと、木村の肩に手を置く。

 

「逃げるのか?先輩達に任せて1人だけ帰るのか?」

「はいそのつもりですが?警察ごっこならあんたら2人でやっててください。僕を巻き込まないでって散々言ってますよね?」

「拒否権はないってそれ一番言われてるから。それに空手の修行と思えばいいじゃねえか」

「普段部活サボりまくってる人間が言っていい台詞じゃない」

 

 年上への敬意もへったくれもない辛辣な言葉をぶつけまくるが、野獣は引き下がらない。何故こいつはここまで躍起になっている?打算でしか動かないような野獣が犯罪者退治に乗り気になるワケがない。裏があるに決まっている。

 それがわかっているからこそ、木村は帰りたいのだ。今まで野獣が欲望に駆られて突っ走ったせいで、どれだけ散々な目に遭ってきたか。今日こそは逃げてやるのだ。

 しかし木村は失念していた。敵はもう1人いたのだ。

 そいつは、野獣と口論している木村の横から近づき、木村の手をがしりとつかんだ。

 

「ホラホラ、木村も行くぞー。正義の味方みたいで格好いいだルォオ⁉︎ 」

「あ、ちょ……三浦先輩⁉︎ 何するんですか⁉︎ やめっ……おいコラ!離せポンコツハゲ入道!」

 

 必死に抵抗する木村だったが、三浦の怪力になすすべなく、部室へと引き戻されてしまう。この人は悪意がない分余計厄介なのだ。

 ——— ああ、今日も駄目だった。

 木村は諦めたような顔をしながら、三浦に担ぎ上げられていった。

 

 

 


 

 

 5月3日AM11:17  池袋

 

「……こんなはずじゃなかったんだがなぁ」

 

 道端のベンチに腰掛け、空を見上げながら、瞬はそうぼやいた。

 まだ午前中だというのに、酷く疲れた気分だ。隣では、アラタも半分死んだような顔で缶コーヒーを啜っている。隣のベンチでは、そんな2人を見つめておろおろしている志村。

 さて、何故男性陣が揃いも揃ってこの有様なのかというと、だ。

 

「いやあ荷物持ちがいると捗るよね」

「偶には遠出してみるものですね。近場じゃ手に入らないあれやコレが

がこんなに……欲を言えば秋葉原まで行きたかったんですけどね」

「お前目的忘れてない?これは湖森の回復祝いなんだからな?」

 

 そう。舞網市での一件でオリジオンに怪我を負わさせた湖森が、ようやく完治したというので、景気付けに池袋まで遠出してきたのだ。なんでも、湖森が行きたい場所があるんだとか。

 しかしついてきた他の面々があれ買いたいこれ買いたいと色々注文つけてきた結果、それに付き合わされた瞬とアラタは疲弊しまくっていた。まあこれには連日のフィフティとの特訓の疲れもあるっちゃあるのだが。

 それにしても、今はゴールデンウィーク真っ只中だから、てっきり皆それぞれ遊びに行っていて不在だかと思いきや、まさかいつものメンバー全員が集まるとは思っていなかった。集合を呼びかけた張本人である瞬は、駅前に集まった顔ぶれを見て、皆どんだけ暇なんだと呆れたような、笑ったような顔になった。

 そんなこんなでぐでーっとしている2人のもとに、女性陣と灰司が帰ってきた。

 

「2人ともお疲れ様です。僕なら大丈夫ですから、2人は休んでいてくださいね」

「灰司くんも来てくれるなんて思わなかったよ。僕らだけじゃキツい……」

「いいですよ、ちょうど暇でしたから。それに僕だって仲間ですからね」

 

 瞬に缶ジュースを手渡しながら、爽やかな笑顔をむける灰司。瞬はそれを受け取りながら、すげえな気遣いレベルMAXかよ、と感心する。モテる人種というのはこういった奴を指すのだろう。

 ハルは手に持っていた袋を灰司に手渡し、瞬とアラタの間にどしりと座り込む。何故わざわざ狭いところに座るんだ。そしてそれを見た唯がフシャーッ!とハルを威嚇する。猫かお前らは。

 唯を宥めながら、瞬は灰司から渡された缶ジュースを口にする。冷たく甘いグレープジュースが、瞬の身体を癒してゆき、少し体力が戻ったような気がした。

 しばらく経って、思い立ったかのように唯が立ちあがる。

 

「あ、次あそこ行くねー!じゃっ後で!」

「勝手にしてくれ……」

「あ、まってよー!置いてかないでぇ!」

「2人とも大丈夫?キツかったら私に言ってくれていいからね?」

 

 女性陣+灰司が居なくなり、再びアラタと瞬(+おまけで志村)だけがこの場に残された。5月のくせに凄まじい光を放つ太陽に身を焦がされながら、瞬は考えていた。

 そして、ふと、思考が口から洩れた。

 

「転生者ってなんなんだろうなあ……」

「いきなりなんだよ」

「いや、前にフィフティやギフトメイカーの連中が言ってたんだよ。転生者がどうたらこうたらって」

 

 転生者。最初にその言葉を聞いた時は、馬鹿げていると思った。

 今の瞬が言えたことではないが、とんだ絵空事だというのが、その単語を聞いた時に抱いた感情だった。しかし、ギフトメイカーはそれを大真面目に言うのだから、どうしたものかと頭を抱えるほかなかった。

 転生者をオリジオンに変えて、その中から新しい神さまを生み出す。荒唐無稽にして、迷惑極まりない。仮にそれが事実だとしても、間違いなく碌なことにならない。

 

「転生者か……アニメとかラノベとかの世界だけの話かと思ってたけがど、本当にいたなんて……事実は小説よりも奇なり、というのかな?」

「神さまから凄ーい力を貰って?前世の記憶と人格を持ったまま漫画やアニメの世界に転生して?欲望の限り好き放題やる?笑えねーよ。馬鹿馬鹿しいにも程がある」

「あれ、逢瀬くんいつもより機嫌悪くない?」

「悪くなるに決まってるだろ。身勝手な転生者の身勝手な理由で、これまで多くの人が傷つけられてきたし、そしてこれからも多くの人が傷つけられるんだ。これで怒らない方がアレだよ」

 

 瞬のその言葉には、転生者という不条理に対する、確かな怒りがこもっていた。

 これまでも、多くの人が転生者とギフトメイカーに傷つけられてきた。気に入らない奴を痛めつける、気に入った異性を手に入れる、そのためならばどうなろうが構わない。瞬に限った話ではなく、そんな考えは世間一般では受け入れられないのだ。

 苛立ち気味にため息をつき、瞬は空を見上げる。

 

「……まともな転生者とやらに会ってみたい、というのは贅沢なんだろうか」

「……」

 

 その言葉に、アラタは沈黙するしかなかった。

 なぜなら彼も転生者。だが、今それを言い出すことはできない。今の瞬が転生者に抱くイメージは最低レベル。そんな状態でカミングアウトすれば、少なくとも今の人間関係は崩れ去ってしまう。それに、身勝手な理由でこの世界に転生したという点では、アラタもそこいらの転生者と変わらないのだ。だから、何も言えない。その資格がない。

 晴天のGWの雰囲気とは裏腹に、瞬達の周囲だけが、一気にどんよりとした雰囲気になってしまう。志村は、この雰囲気に耐えらないのでどうにかしたいとは思うものの、何もできないので、ただ1人でベンチの隅に座り込んでいるほかなかった。

 そこに、見知らぬ声が割り込んできた。

 

「君達、ちょっといいかい?」

「えっと……どちらさん?」

 

 声をかけられた瞬は、空を見上げていた顔をおろす。

 眼鏡とスーツを着用した、厳つい顔の男が話しかけてきた。歳は20代中盤くらいか。ぱっと見、どこかのエリートサラリーマンみたいな雰囲気を感じさせているその男は、スーツのポケットから名刺のようなものを取り出し、瞬に差し出してきた。

 

「俺は裁場誠一(さいばせいいち)。武偵をやっている」

 

 そう言って、彼はスーツの襟のあたりに付いている微章を見せてくるが、瞬はさっぱり分からない。

 

「武装……探偵?」

「名前通りだよ。凶悪化した犯罪に対して武力によって立ち向かう探偵の事さ」

 

 武偵というワードがピンとこない瞬に、横からアラタが説明を加える。要するに警察みたいなもんか、と雑な理解をした上で、瞬は名刺を受け取り、男の話を聞くことにした。

 

「俺は今、池袋連続爆破事件を追っている。君もニュースで聞いたことくらいはあるだろう」

「ありますけど……」

 

 勿論、瞬達も事件についてはニュースで連日耳にしている。今朝も池袋まで行くと知った瞬間、叔父に咎められたものだ。

 

「要するに聴き込み調査ってこと?」

「そういう事だ。協力していただけるだろうか?」

 

 そうは言ってくるものの、瞬達は何にも知らない。

 

「いや、俺達この辺の人間じゃないんで良く知らないっすね」

「ニュースで報道されている内容以上のことは知らないぜ?」

「そうか。時間を取ってしまって申し訳なかった」

 

 裁場はそう言って、立ち去ろうとする。

 

「すみません、お力になれなくて」

「謝る必要はないさ。君たちも気をつけたまえ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()etc(えとせとら)……爆弾魔以外にも、この街は色々と危ないからね」

 

 ……ん?

 裁場が何を言っているのか、瞬は分からなかった。聞き違いだろうかと思い、横のアラタを見ると、アラタはアラタでなんだか唖然とした顔で、「マジかよ……まさかそこまでクロスしちゃう?」と呟いているが、一体何のことなのだろうか?

 —— 真面目そうな雰囲気を纏っている癖に、変な人だ。

 それが、瞬の、裁場整一という人間に対する第一印象であった。

 

「さーて、アイツらの買い物ひと段落してる頃合いかもだし、そろそろ行こうぜ」

「そうだな。あーまた荷物持ちかぁだりぃなぁ……」

「まあ荷物持ちくらいやってやろうよ、ね?」

 

 店の方に目をやると、レジに並んでいる唯の姿が、自動ドアのガラス越しに見える。休憩時間が終わるという事実に苦しみながら、重い足取りで唯のもとに向かおうとする。

 その時だった。

 

 

 ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ‼︎ と。

 瞬達の頭上で爆発が起きた。

 

 

 

 正確には、爆発したのは瞬達のいた場所のすぐそばにある雑居ビル。そのワンフロアが吹き飛んだのだ。

 池袋の空に、黙々とたちのぼる黒煙と火の粉に、瞬とアラタを含め、辺りの人々は皆釘付けだった。だが、呆然としている場合ではない。命の危機が、迫っていた。

 爆発の衝撃で、ビルの屋上に建てられていた広告用の看板が、地上に向かって落下してきている。落下地点は、瞬とアラタの今立っている場所だ。

 

「やべっ……おい逢瀬っ!逃げろぉ!」

「あっ」

 

 一足先に我にかえったアラタが、瞬の首根っこを掴んで走り出す。身体を覆うように迫る影から、必死に足を動かして逃げる。ぶわりと、素早い物体が通過したような感覚を背中に感じたのちに、ズガシャアアンッ‼︎ と大きな音を立てて、ひしゃげた看板が地面に衝突する。

 勢い余ってすっ転んだアラタは、息を切らしながら後ろを振り返る。そこには、五体満足で大の字になって転がる瞬と、ひしゃげた看板があった。どうやら、誰も下敷きにならずに済んだらしい。

 

「大丈夫か⁉ 」

「あ、はい……なんとか……」

 

 爆発音を聞いて引き返してきた裁場が、地面に倒れこんでいる瞬に手を差し伸べる。瞬はその手を借りて立ち上がり、ビルの方を見る。

 

「また……起きたというのか⁉︎ 」

「なんだよ……なんなんだよ畜生!」

「これが……さっき言っていた爆弾魔の仕業だってのか?」

 

 黒い煙を上げるビルを呆然と見上げながら、瞬は身体を振るわせる。それは恐怖からか、怒りからかは定かではない。

 その時。

 

「た、助けてください!階段がくずれちゃって出られないんです!」

 

 煤けたガラス窓の向こうから、大声で助けを求める声があった。それは、今にも終わってしまいそうな、切羽詰まった声だった。

 その声を聞いた途端、裁場と瞬は、黒煙を上げるビルに向かって一目散に走りだした。

 

「何やってんだお前ら!死ぬ気か⁉ 」

「あ、ちょっとアンタら……!」

「まてよ二人とも!いくらなんでも無茶だって!」

 

 周囲の静止を歯牙にもかけず、両者はビルの中へと入ってゆく。下の方はまだ火の手が回っていないとはいえ、既に一部の天井板が床に落下しているのがちらほらと確認できる。あまり長居はできないだろう。もう止まっているであろうエレベーターを無視し、裁場は迷うことなく非常階段を上り始める。瞬も慌てて裁場の後を追う。

 

「何故君まで来るんだ⁉ 君は戻るんだ!」

「嫌です!2人でやった方がより多くの人を助けられる!」

 

 階段を駆け上がりながら、両者は互いを帰そうと口論を繰り広げる。

 純粋な正義感で動いているがゆえに、互いに譲れない。自己犠牲の精神同士が激しくぶつかり、対立しあう。

 言うことを聞こうとしない瞬に苛立ちを覚えたのか、裁場は階段に足をかけた状態で立ち止まり、叱りつけるように言う。

 

「いいか⁉ これは遊びじゃないんだ。君みたいな子供が行っても死体が増えるだけだ。そんな事、俺は許容しない」

「わかっています。でも、俺にできるなら、やらない訳にはいかないんです!」

 

 瞬は、真っ直ぐな目を向けながら、そう言い返した。

 自分にはアクロスの力(これ)があるのだから、それを手にしたのだから、そうする義務があるのだ。人を助けられる力が、手段があるというのに、それを使わない、しないということは、逢瀬瞬という人間にはできないのだ。

 だって、()()()()()()()()()()()()()()() ――

 だがしかし、裁場はそれを認めるわけにはいかない。それは武偵という職業柄か、はたまた大人としての責任か。

 

「できる出来ないの話じゃない!死にたいのか⁉ 」

「本気だよ。何言われようが俺は ―― 」

 

 瞬が言い返そうとしたその時、激しい轟音と衝撃が響き渡った。

 

「うわあああああああああっ⁉ 」

 

 振動で階段から瞬の足が浮き上がり、瞬は10段近くの高さから投げ出され、後方の踊り場まで放り出される。背中に数度激痛が走り、瞬の口から少量の血が吐き出される。

 

「裁場さん……っ!」

 

 瞬は歯を食いしばって起き上がり、階段の上の方を見る。しかし、そこは既に瓦礫と炎で埋まってしまっていた。僅か数メートル先で、メラメラと炎が燃え上がっている光景に、瞬は思わず立ちすくんでしまう。

 どうやら、もう一発爆発が起きたらしい。上の方は、一酸化炭素の煙が充満してしまっている。ここから先は生身で向かうのは厳しいだろう。それに、いつまでもここに居座るわけにはいかない。助けるにしろ引き返すにしろ、ここはもうこの手しかなかった。

 

「ならば……変身!」

《CROSS OVER!仮面ライダーアクロス!》

 

 瞬は、クロスドライバーでアクロスに変身して、先に進むことにした。これならば炎や煙もある程度防げるし、瓦礫をどかすことも容易だろう。水を操れるようなライドアーツがあればよかったのだが、生憎そんなものはない。アクロスのスーツ越しにも、すさまじい熱気が瞬の身体に伝わってくる。

 

「裁場さんも無事だといいんだが……」

 

 炎をかき分けながらそう呟く。瞬よりも近い位置であの衝撃をうけた彼は、果たして無事でいるのだろうか。そうであってほしいと思いながら、アクロスは階段をのぼり始めた。

 

「……?」

 

 次の踊り場にたどり着いたとき、奇妙なものが見えた。誰かが廊下を走っていったのだ。

 ひょっとして裁場なのかと思い、アクロスは廊下を覗き込んだが、そこには誰もおらず、ただ煙の充満したボロボロの廊下だけが広がっていた。しかし、その中で一つだけ、キラリと光るものがあった。

 

「ん?」

 

 手近にあったそれを、アクロスは拾い上げてみる。それは、一本の彫刻刀だった。それを見たのは小学校以来だろうか。おまけに、明らかについさっきこの場に置かれたかのようにまだ真新しい。

 

「なんなんだよ、一体」

 

 廊下の端は、もう一つの非常階段に通じている。ならば、さっき廊下を走っていった誰かも、そこに行ったのだろうか。

 

「……とにかく、先に行かないと」

 

 この彫刻刀の持ち主の無事を祈りつつ、アクロスは階段を再び上り始めた。

 


 

 外では、爆発音を聞きつけて唯達も戻ってきていた。

 

「はあ⁉ お兄ちゃんがあの中に⁉ 」

「ああそうなんだよ!止める暇もないくらい程にな!」

「マジで何考えてんの……」

 

 アラタから、瞬が燃えるビルの中に飛び込んでいったことを聞かされ、皆血の気が引いたような顔いろになってゆく。

 中でも唯は、一番動揺していた。

 

(瞬……変わった……?)

 

 そう。

 10年近く共に過ごしてきた仲だから分かる違和感があった。

 瞬は、世間一般でいうところの「良い奴」というカテゴリに含まれる人間だと、唯は思っている。なんだかんだ言いながら、唯の無茶ぶりにも大体乗ってくれるし、唯やヒビキほどではないが、困った人間を放ってはおけない性分だ。

 だが、いくらなんでも、ここまでやる奴だっただろうか?他人のために命まで張れる人間だっただろうか?

 そんなのは普通の人間ではない。躊躇いなく自分の命を張れるようなものを、少なくとも普通の人間とは定義しないだろう。瞬は、仮面ライダーになってから変わった。いや、もしかすると、もともとそうだったのかもしれない。誰も知らなかっただけで、逢瀬瞬という人間は、そういう生き物だったのかもしれない。

 そんなことを考えているうちに、唯の中に、ある感情が浮かんできた。

 それは、また、1人遠くに行ってしまったような、自分が置いて行かれたような孤独感と疎外感。このタイミングで普通は出てこないような類の物。

 

(ほんと、ずるいよ……)

 

 幼馴染の変化に対し、唯は、気づけばそう呟いていた。

 

「唯さん、唯さん」

「……」

「はむっ」

「ひょわあああっ⁉ 」

 

 突然、耳たぶを誰かに甘噛みされた感覚が唯を襲い、思わず彼女は恥ずかしい声をあげてしまった。

 

「は、ハル⁉ いきなる何すんの⁉ 」

「呼んでも返事なかったんで」

 

 だからって耳を甘噛みするのはないだろう。それもこんなに多くの人がいる中、同性に。あまりに刺激が強すぎたのか、山風が口をあんぐりと開けて呆然としているではないか。ひょっとしてハルには()()()()気があるのだろうか。別にどうでもいいけど。

 

「で、何」

「灰司くんがいません」

「ほんとだ……どこ行ったんだろう……」

 

 そう言われてあたりを見渡してみると、確かに、灰司の姿が見当たらない。どこにいったのだろうか?

 辺りには、騒ぎを囲う群衆しか見当たらなかった。

 


 

 転生者秩序維持同盟(Alliance to maintain the order of reincarnations):通称「AMORE」。またの名を転生者狩り。

 転生者だって人間だ。善人もいれば悪人もいる。そして彼らは共通して転生特典を持つ。その大半は、やれ幽波紋だの個性だの宝具だの魔法だのといった、何処かの世界の誰かさんがもっていたような、異世界の力だ。そんな力で暴れられれば、最悪世界が滅亡してしまう。それを憂いた一人の転生者が組織した有志団体が、AMOREの前身となっている。

 やむを得ない場合や、余りにも凶悪な転生者を除いて、基本的にはAMOREは転生者を積極的に殺す真似はしない。あくまで彼らは自警団。殺戮者ではないのだから。

 故に。

 

 

 

「よう、転生者狩りさんよぉ。最近ここら辺の転生者を次々と倒してらっしゃるそうじゃないっすかぁ?」

「酷くない?俺達セカンドライフを満喫したいだけなんだよ……なんで邪魔するの?マジ許せないんだけどー」

「だからさぁ、ストレス解消兼ねていっちょ仇討ちさせてもらうわ!ギフトメイカーに貰ったこの力でなぁ!」

 

 —— こんなことになっても、自分から打って出られない。

 灰司の目の前には、お揃いの革ジャンを身に纏った3人の男が立ち塞がる。その後方には、灰司と同い年くらいの少年がぶっ倒れている。男達の手には、くしゃくしゃになった万札が数枚。大方、カツアゲをした直後だったのだろう。転生者になってまで、オリジオンになってまでやる事がカツアゲとは、正直言って恥ずかしくないのだろうか。

 そんな風に憐れむような目を向ける灰司に、男達は更に激昂する。不良という生き物は、プライドだけで生きているようなもの。それを傷つけられたと判断したら最後、その原因を排除するまで止まらないのだ。

 

「つーか、俺随分と有名人じゃねえか。なるべく正体露見しないようにしてたつもりだったんだがなぁ」

「へっ!転生者の間で持ちきりなんだよ、仮面のヒーローが転生者倒しまくってるってな!」

「ちなみにオメーの正体はお仲間ボコって聞き出したぜ?ちなみにソイツは俺様がこんがり焼いて病院送りにしたぜ!ザマーミロ!」

「俺達3人の力を合わせれば転生者狩りだって屁じゃねぇ!行くぜ!火吹、水亀!俺達の新たな力で蹂躙してやろうぜ!」

「やっちまいましょう、木花のアニキ!」

《KAKUSEI FUSHIGIBANA》

《KAKUSEI LIZARDN》

《KAKUSEI KAMEX》

 

 3人のチンピラは、それぞれ自身の転生特典を発動し、オリジオンとしての姿を眼前にさらす。背中にラフレシアに似た花を咲かせ、頭部から毒液を垂れ流すのは、フシギバナオリジオン。その後ろで、大きな翼を広げながら口から小さな炎の吐息をもらして此方を威嚇してくるのはリザードンオリジオン。そして、大砲を生やした大きな甲羅を背負い、のしのしと大きな足音を立てている大亀はカメックスオリジオン。

 この世界には存在しえないポケモン(いきもの)の力を持った異形達が、灰司を睨みつけていた。灰司は彼らを見て、ほくそ笑む。

 お前らなんぞ大した相手にならないんだぞ、と存外に告げるように。

 

 

「なるほど、純粋な戦闘特化型か。やりやすくて助かる」

《standing by》

 

 オリジオン達を挑発するように、これ見よがしにカイザフォンを取り出し、変身コードを入力していく。

 正体が露見しているならば、コソコソ隠れて変身する必要はない。全員ぶちのめせば後処理もいらない。

 

「変身」

《complete》

 

 カイザフォンがドライバーにセットされると同時に、黄色いフォトンブラッドのラインが灰司の身体を包み込み、カイザのスーツが出現する。親指を下に突き立てながら、首を掻っ切る仕草をし、オリジオン達をさらに挑発する。

 

「さあかかってこい。てめえらが誰に喧嘩売ったのか、その腐った身体に教えてやるよ」

 


 

 熱で変形したドアを蹴り飛ばし、アクロスは部屋の中に入る。そこには、地上とは比べ物にならない程酷い光景が、そこに広がっていた。

 元は喫茶店だったその場所は、地獄になっていた。瓦礫が上半身が潰れた死体や、黒焦げになってしまい老若男女の区別がつかなくなった死体がアクロスの視界に入り、思わず吐きそうになったが、助けを求めてきたあの声を思い出してなんとかこらえ、歩を進める。助けを求める声が聞こえてきたのはこのあたりの階層だった気がするが、果たしてこの状況で声の主はまだ生きているのだろうか。そうであってほしい。

 

「誰かあ……いませんかあ……」

「⁉ 」

 

 瓦礫の向こう側から、か細い声が聞こえた。アクロスは即座に反応し、声のした方に向かう。

 行く手を阻む瓦礫を蹴り砕き、要救助者の居る空間にたどり着く。瓦礫が砕かれる音に反応し、うずくまっていた要救助者がアクロスの方を振り向く。そして、アクロスと彼女は、互いに素っ頓狂な声をあげた。

 

「と、トモリさん⁉ あんた何してんだよそんなところで!」

「あ、あれえ⁉ アクロスう⁉ な、なんで君が来るのお⁉ 」

 

 悲報:知り合い(トモリ)だった。何なのこの人。児童誘拐事件の時も確か助けたような気がするのだが、よっぽどの巻き込まれ異質だったりするのだろうか。なんだか一気に緊張の糸がほどけるような感じがして、アクロスは力なく笑う。

 そこに、少し遅れて裁場がやってくる。

 

「大丈夫か!」

「え、あ、はい」

 

 顔を煤だらけにしながら、裁場はトモリにそう声をかける。そして、トモリの横にいたアクロスに目をやると、一気に険しい顔になった。

 

「っ!お前は一体……」

「あ、やばい」

 

 裁場はアクロスの姿を見て、完全に警戒してしまっている。そりゃあ、傍から見れば変なスーツを着た得体のしれない人型実体なのだから、警戒されるのは仕方ないだろう。おまけに状況が状況だ。最悪爆弾魔だと思われてもおかしくないだろう。

 どう言い訳したものかと悩むアクロス。そこに、

 

「火中にわざわざ飛び込んでくる馬鹿発見♪」

「⁉ 」

 

 アクロス達をあざ笑うような声が、火の向こうから聞こえた。ばっと一同が声のした方を振り向くと、そこには一体の怪物(オリジオン)がいた。

 ダイナマイトを思わせる形の頭部に、煤けた猫の仮面のようなものが引っ付いている。さらにデフォルメ化された爆弾のような形状の両肩からは、導火線のような紐が何本もぶら下がっており、その先端からは煙がのぼっている。

 さしずめ、ボマーオリジオンといったところだろうか。ボマーは、姿を現したアクロスを見るなり、何かに感心するかのような素振りを見せる。

 

「仮面ライダーが来た……ってことは、それなりに効果があったという事だな?」

「まさか、俺を呼ぶためだけにやったのか?」

「自惚れるな、お前はただの前座さ。お前には用はない、さっさと始末してくれる!」

 

 そう言うと、ボマーオリジオンは即座にアクロスに殴りかかってきた。

 兎に角まずは非戦闘員を逃がすのが先だ。アクロスはそう判断し、オリジオンの拳を受け止めながら、裁場達に先に逃げるように告げる。

 

「くそ!2人は先に逃げて!」

「……っ!ああ、わかった!」

 

 声をかけられた裁場は、一旦アクロスを警戒するのを中断し、人命救助のほうを優先する。トモリを抱き上げると、廊下の方へと走り出す。

 

「ちょっと⁉ まさかこんなところで戦うつもり⁉ いくらなんでもやばいって!」

「大丈夫だ、俺もこんな場所で死ねない」

 

 去り際のトモリのもっともな意見にそう返すと、アクロスはボマーオリジオンの掴んだ拳を思いきり自分の方へと引き寄せ、そこに強烈なパンチを加えた。ボマーオリジオンは数歩後退するも、ニヤリと笑いながら、足元の火のついた瓦礫をアクロスに向かって蹴り飛ばしてきた。

 

「っ!」

 

 アクロスは蹴り飛ばされた瓦礫を蹴り砕き、オリジオンの懐めがけてジャンプパンチを繰り出す。ボマーオリジオンはそれを身体で受け止めると、アクロスの身体をがっしりと掴み、そのまま壁めがけて勢いよく投げ飛ばした。

 燃える壁を突き破り、アクロスは廊下まで投げ出される。起き上がろうとするアクロスに向かって、ボマーオリジオンは、手のひらをかざす。すると、オリジオンの手のひらから、凄まじい熱気が放出され、アクロスを再び壁へと叩きつけた。2度も壁に叩きつけられてなお起き上がろうとするアクロスに、ボマーオリジオンは鼻で笑う。

 

「なんだ……思ったより大したことないな。いいから邪魔をするな、お前の出る幕じゃないんだ」

「いくらだって邪魔してやるよ!お前ら転生者の好き勝手にはさせない!」

 

 アクロスはそう啖呵を切って立ち上がり、再びボマーオリジオンに向かって突っ込んでゆく。

 

「馬鹿の一つ覚えみたいに突っ込んでくんなよ……爆殺!」

 

 その様子を見て、ボマーオリジオンはほくそ笑みながら指を鳴らす。

 すると、一瞬だけ、アクロスの腹部あたりが歪んで見えたたかと思えば、次の瞬間、アクロスの腹部が爆発した。苦悶の声を漏らしながら、アクロスは三度壁に叩きつけられる。

 

「が……っ⁉ 」

「インスタント・ボム……殺傷力は低いが、まあ連発すれば済む話だ」

 

 そういうと、ボマーオリジオンは何度も指を鳴らした。アクロスは咄嗟に前に転がる。すると、アクロスが先程までいた地点が小さな爆発に包まれた。続いて、アクロスの前方数センチの位置が爆発する。もう少し転がる距離が長かったら、直撃していただろう。

 3発目は、アクロスの頭を狙っていた。爆発の前にくる空間の歪みを頼りに、アクロスは頭を横に倒してそれを躱す。そして、4発目がアクロスの足元に放たれる。

 アクロスはそれを跳んで躱しながら、ツインズバスターを自らの手に出現させ、ガンモードに変形させたツインズバスターの引き金を引く。向こうが遠距離攻撃をしてくるならば、こちらもやってやろうではないか。

 

「やあ!」

 

 次々と迫り来る爆発攻撃を躱しながら、ツインズバスターを連射するアクロス。攻撃の後隙を狙って放たれた数発の光弾が、ボマーオリジオンの胸部に命中する。

 硝煙をあげながら、ボマーオリジオンがよろける。アクロスも、こんな火災現場に長居するわけにはいかない。消防車のサイレンが聞こえてきているし、このままだと消火活動の邪魔になる。

 

「こんな場所からはさっさとトンズラさせてもらうぜ」

「それは此方の台詞だ。チッ……今回はハズレか。まあ、目的の一つは果たせたからよしとするか」

 

 ボマーオリジオンは不満そうにそう言うと、両手を強く握りしめる。すると、彼の両手が激しく光り出す。どうやら、この一撃で決めるつもりらしい。そして、それはアクロスも同じだった。ツインズバスター・ガンモードのグリップ部分に、腰のホルダーから抜いたペンデュラムライドアーツを差し込む。

 

《PENDULAM CROSS BRAKE!マルチバース・ブラスト!》

「いっけえええええええええええええ!」

「はあああああああああああああああ!」

 

 ツインズバスターの銃口に、エネルギーが貯められる。そして、アクロスが引き金を引くと、銃口から螺旋状の光線がオリジオンに向かって放たれた。オリジオンも負けじと、どこぞの戦闘民族の如く両手にエネルギーを貯めると、それを光線に目がけて受け放つ。

 そして、双方が放ったそれらが衝突し、大爆発を引き起こした。

 

「く……うう……っ!」

 

 その衝撃はフロア内の火の手を瞬く間に消滅させるとともに、アクロスの身体を浮き上がらせ、天井に叩きつける。爆発により生じた煙が視界をふさぎ、これまでの衝撃で脆くなっていた壁が次々と崩壊を始める。このままではあと少しもしない内にこのビルは倒壊するだろう。

 だが、アクロスは逃げない。あのオリジオンがまだ無事である限り、これが繰り返される。そんなことはあってはならない。煙を振り払い、前方の壁に空いた穴の向こう側を覗き見ようとしたところ、そこに予想だにしないものを見てしまった。

 

「ああああああああああああああああああああああああああっ!」

「何いいいいいいいっ⁉ 」

 

 それは、穴から今まさに空中へと放り出されようとしている男性の姿だった。隅々までこのフロアを探索していた筈だが、アクロスは見逃していたのだ。もう1人の生存者のことを。

 アクロスは手を伸ばす。しかし、それはどうあがいても届かない。間に合わない。

 

「クソおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 


 

 その悲劇を回避したのは、1人の男だった。

 

 

 アクロスがいる階層よりも下。

 そこの窓から、ひとりの男が姿を現す。

 

「やれやれ……これ以上人死にがでるのは勘弁願いたいものだ……な!」

 

 男 ―― 裁場はそう言うと、ズボンのポケットから拳銃のようなものを取り出し、その銃口を真上に掲げながら、なんと割れた窓から地上に向かって飛び降りた。

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 裁場のすぐ上に、ビルから投げ出された男が落ちてくる。死への恐怖からくる鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら落ちてくる男を、裁場は冷静に自身の元へと引き寄せると、手に持った拳銃らしきものの引き金を引いた。

 すると、銃口から凄まじい速度でワイヤーのようなものが射出され、ビルの壁面にその先端が突き刺さった。繋がれたワイヤーによって、2人の落下速度は抑えられ、2人は安全に着地する。助けられた男は、自分が助かったことを理解すると、その場にへたり込む。

 

「た、たすかった……」

「さて、後は……」

 

 へたり込んだ男の元に、救急隊員が駆け寄っていく。裁場は鎮火されつつあるビルを見上げる。

 あと一人、帰ってこなければならない人間がいる。

 

 


 

 それから1分ほど経って、瞬が地上に戻ってきた。

 

「はあ……はあ……」

「瞬!」

 

 戻ってくるなリ、泣きそうな顔をした唯が、野次馬をかき分けながら瞬の元に駆け寄ってきた。

 

「ホント何考えているわけ⁉ 瞬ってこういうキャラじゃなかったでしょ!何簡単に命投げ出そうとしてるのさあ!」

「今回ばかりは看過できないな。ったく、いつの間にそんなにヒーロー気質になりやがったんだお前?」

「ごめん……でも、どうしてもいかなきゃって思って……」

 

 唯やアラタが、瞬の軽率な行いを非難してくる。彼らの言い分は最もだ。いくらヒーローとしても力を持っていようが、いきなりこんな真似をされたら、周囲の人間からすればたまったもんではない。なんせ、最悪の場合もありえたのだ。瞬もそれをわかっているからこそ、彼らの言葉に委縮する他なかった。ただ黙って、泣きつく唯の頭を撫でることしかできなかった。

 そこに、つかつかと近づいてくる足音。救急隊員の静止を振り切り、その足音の主は瞬の隣へとやってくる。足音に気づいた瞬が顔をあげると、そこには、険しい顔をした裁場が立っていた。

 裁場は、瞬の胸倉をつかみ上げ、怒鳴った。

 

「この馬鹿野郎!」

「っ!」

「え、どちらさん……」

 

 そのあまりの剣幕に、周囲が静まり返った。

 

「正義感が強いのは結構なことだ。だがな、自分の命を捨てようとするんじゃない」

「……」

「そんな救い方はやっては駄目だ。命を救えても、心は救えない。お前がこれからも人を助けたいと思うなら、まずは自分を大事にすることだ。死して英雄になるというのは、救われた者に十字架を背負わせるだけなんだ」

 

 彼の言っていることは正しかった。

 行き過ぎた正義感は、時に身を滅ぼす。それは独善という名の悪になり果てるという形ではなく、自己犠牲という形でも成り立つ。自己犠牲で救われた人は、確かに命は救われるかもしれない。しかし、その心は傷つく。自分なんかのために他人が傷ついたという事実に対する罪悪感という形で、当人をむしばむのだ。

 裁場は胸倉をつかんでいた手を放し、瞬の両肩に手を置き、諭すように言う。

 

「君は1人じゃないんだ。頼むからそんな真似はやめてくれ。君の友達を、家族を、泣かせるんじゃない」

「裁場さん……」

「……すまない。気が立ってしまった」

 

 裁場はそう言い残すと、瞬に背を向けて歩き出す。

 

「…………」

 

 裁場の残した言葉の一つ一つが、瞬にひっついて離れなかった。

 


 

 

 5月3日AM13:40 池袋某所

 

 池袋の何処かにある、どうやって利益出してるんだと言いたくなるほど入居者が少ない、古臭いアパート。

 その2階外通路、とある一室の扉の前に、2人の男が立っていた。金髪グラサンのバーテンダー風の男と、ややくたびれたドレッドヘアの男だ。彼ら —— 平和島静雄と田中トムは、テレクラ代金の回収業者、要は借金取りじみたことをやっている。今日もまた、代金を滞納している顧客の元へとやってきたのだ。

 

「鍵は掛かっている、と」

 

 当然ながら扉は鍵が掛かっていて開かない。最初のインターホンに応じて顔を出した部屋の住人は、静雄達の顔を見るなり、速攻で扉を閉めてしまったきり、全く反応しない。そりゃあ金払いたくないんだから、向こうから開けるわけがない。

 

「ほーらお宅さん、大人しく支払ってくださいよ。早いとこ払えば穏便に済むんだよ」

 

 扉の向こうにいる客相手に、やさしく諭すように言うトム。これですんなり出てくればいいのだが、残念ながらそうはならない。大抵口論になったり、時には乱暴な手に出ることだってある。そして、今回のケースでは、引きこもって無反応を貫くことが選択されていた。

 留守というのはありえない。なんせ2人は、この部屋の住民がこの中に入っていくのを、つい先ほど見たのだから。丁度帰宅した時に訪問したということになる。強情な客にしびれを切らしたのか、静雄がドアノブに手をかけながらトムに尋ねる。

 

「扉引きちぎっていいすかね」

「やめとけ、また弁償しなきゃならなくなる」

「それもそうですね。じゃあ ―― 」

 

 そう言いながら、静雄はドアノブから手を離す。

 その時だった。

 

 

 

 閃光と熱風と轟音が、一瞬にして辺りを包みこんだ。

 

 

 

 

 

 トムは、何が起こったのか分からなかった。反射的に顔を腕で守ったが、熱風に煽られ、トムは外通路の柵に身体を打ちつけられる。

 

「何が……どうなって……」

 

 恐る恐る顔をあげる。

 目の前には、先程まで自分達の前に鎮座していた扉が、煙を上げながらドロドロに溶けかけた状態で転がっていた。先程の衝撃といい、まさかと思いながら、トムは外れた扉の向こう側を覗き込む。

 そこには、下半身が消し飛ばされた死体が、廊下の奥に転がっているのが見えた。死体は焼け爛れ、玄関口から死体までの間には、血の道が出来上がっている。床や壁は穴が開いており、そこからは下の部屋が顔をのぞかせている。両隣と下の部屋が空き部屋だったのが幸いか。

 あまりの光景に、トムは絶句せざるを得なかった。仕事柄、時たま血を見るようなことはあるが、いくらかんでもここまでの光景には慣れていない。しばらく呆然としていたが、トムははっと我に返る。

 

「静雄は?」

 

 そう。静雄はトムよりもより近い位置で爆発に巻き込まれた。しかし、通路には静雄の姿が見当たらない。

 まさかと思い振り返って下を見ると、そこには、地上の駐車場にぶっ倒れている静雄の姿があった。爆風で吹き飛んで落ちたのだ。

 

「お、おい⁉ 」

 

 思わず声を荒げながら、慌てて静雄の元に駆け寄る。落ちたとしても2階ほどの高さだし、静雄の頑丈さを考慮しても死んでいるようなことなないと思うが、それでも大事な後輩だから心配なのだ。トムが階段を駆け下りて静雄に駆け寄ると、静雄は頭を押さえながら起き上がっているところだった。爆発に巻き込まれたというのに、まるで滑って転んだレベルのリアクションだった。

 

「ってえ……」

「良かった静雄、大丈夫だった —— 」

「……」

「静雄?」

「……また服が駄目になっちまったじゃねぇか」

 

 その顔には、青筋が浮かんでいた。

 大事な弟がくれた服が、また一つダメになってしまった。それはもう、彼を怒らせるには十分すぎた。

 

(ああ、爆弾魔さんよ。お前詰んだぞ)

 

 警察に電話しながら、トムは色々と諦めたような顔をする。何故なら爆弾魔(そいつ)は、池袋で一番怒らせてはいけない人間を怒らせたのだから。

 まだ見ぬ爆弾魔に、早くも哀悼の意をあらわにするのであった。

 

 


 

 同時刻、とある駐車場にて。

 

「むぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 断末魔がコンクリートジャングルに響き渡った後、停められていた車のうちの1つが、凄まじい音を立てて空に舞い上がった。断末魔の主であるフシギバナオリジオンは、車を1台吹き飛ばしたのちに、別の車にぶつかり、そこでようやく停止する。勿論、車の方は無残にもスクラップになってしまった。

 ブチブチと、身体にまとわりつく蔦を乱雑に引きちぎりながら、カイザは自身が殴り飛ばしたフシギバナオリジオンに接近してゆく。

 

「もっと踏ん張れよ。損害賠償いくらすると思ってんだよ?」

「テメエが殴り飛ばすのが悪いんだろうが!」

「俺だって、テメエがここまで吹っ飛ぶとは思わなかったんだ。お前らを過大評価しすぎた」

「何い⁉ 」

「転生特典貰ってイキる奴が強い訳ねえってのは分かりきっていることなのにな……転生者狩りに真っ向勝負挑んでくるから、相当実力に自信があるんだろうと思っていたが、結局はただの考えなしだったということか」

 

 カイザは、僅か1分足らずでここまで追い詰められたフシギバナオリジオンに対し、呆れたようにため息をつく。

 3人と彼とでは、勝負になっていなかった。3人の猛攻に対し、カイザに変身している灰司の方はほぼ無傷、対してオリジオン3人組はかなり焦っていた。フシギバナオリジオンはすでに満身創痍、残る2人もかなり疲弊している。この時点で、軍配がどちらに上がっているかはほぼ明白であった。

 フシギバナオリジオンに吹っ飛ばされた車が、カイザの後方に落下してくる。それが接地した瞬間、その衝撃で車は爆発を起こした。爆炎を背後に迫りくるカイザの姿は、オリジオン達にとっては恐怖でしかなかった。

 

「く、くるなあ!」

「喧嘩売った癖に何言ってんだお前。それにどの道、俺はお前らを倒さなきゃなんねえってのが分からねえのか?」

 

 情けない声をあげるフシギバナオリジオン。それを守ろうとするかのように、リザードンオリジオンが空からカイザめがけて急降下しながら、炎のブレスを吐いてきた。

 

「火ィ吐アアアアアアアアアアアアアアア!」

「ぬうん!」

 

 しかし、カイザはその炎を、手に持っていたカイザブレイガンでいとも容易く切り裂き、強引に防いでしまう。それを見て狼狽するリザードンオリジオン。しかし、急降下は止められない。そのまま、真正面からカイザブレイガンでぶった切られ、赤い血をまき散らしながら地面をゴロゴロと転がっていった。

 それを見ていたカメックスオリジオンは、やけくそ気味に叫びながら、カイザ目掛けて突っ込んでいく。

 

「二人とも……!クソォ!俺があ!」

「馬鹿の一つ覚え、だな」

 

 しかし、そんな攻撃が通るわけがなく、カイザに、まるで寄ってくる羽虫を払うかのように軽くあしらわれ、お返しと言わんばかりにカイザブレイガンで数回斬られ、思いきり蹴とばされてしまった。だが、流石の灰司と言えど、鈍重なカメックスオリジオンを吹き飛ばすことは難しかったようで、カメックスオリジオンはなんとかその場に踏みとどまる。

 

「なめんなあ!」

「うがああ!」

 

 カメックスオリジオンは、背中の砲門から高圧水流を発射し、リザードンオリジオンは、再び口から火炎を吐き出す。大量の炎と水が激しくぶつかることで、周囲に大量の蒸気が発生し、全員の視界が白く染まる。

 

「やったか⁉ 」

「よし、今のうちに兄貴を!」

 

 あれで倒せれば御の字、無理でも多少の足止めにはなる。そう判断し、リザードンオリジオンとカメックスオリジオンは、兄貴 ―― フシギバナオリジオンの救出と離脱を試みる。

 しかし、それは叶わぬ夢となる。

 

《EXCEED CHARGE》

「何……!」

 

 蒸気の向こうから、リザードンオリジオンのいる方に向かって、誰かが走ってきている。この状況で聞こえる、切羽詰まった声。間違いなくカイザではない。

 

「いやだああああああ!捕まってたまるかああああ!」

 

 蒸気をかき分けるようにして出てきたのは、フシギバナオリジオンだった。泣きそうな声をあげながら逃げるその姿には、彼らが普段兄のように慕う威厳など、とっくになくなっていた。

 それでも構うもんかと、リザードンオリジオンは手を伸ばす。が、

 

「遅い」

 

 フシギバナオリジオンのすぐ後ろから、デジカメ型ツール・カイザショットを右手に構えたカイザが飛び出し、そのまま、逃げるフシギバナオリジオンの背中に、カイザショットを使った強烈なパンチが浴びせられた。

 

「あ、に、き……!」

「ぐああああああああああああああああああああああっ⁉︎ 」

 

 背中を勢いよく押されたフシギバナオリジオンは、勢いよく前方にかっとんでゆき、その果てで悲鳴をあげながら爆発した。オリジオンとしての力を喪失したチンピラが、アスファルトの地面にうつ伏せになってぶっ倒れる。

 カイザは、フシギバナオリジオンに変身していたチンピラに近づくと、その両腕に手錠をかける。すると、チンピラの身体が光の粒となて霧散してゆく。これは転生者捕縛用の特殊手錠。手錠をかけるだけで、すぐさま転生者をAMOREの留置所に転送できるのだ。

 まずは1人。残った2人も片付けようと、カイザはあたりを見渡すが、そこには既に誰もいなかった。

 

「逃げたか……」

 

 灰司は変身を解く。戦闘直前に居た路地の方を振り返ると、先程の転生者達にボコされた被害者が横たわっている。救急車でも呼んでやるべきだろうとスマホを取り出すが、その時、取り出したスマホがブルリと振動した。

 画面を見ると、そこにはメールの通知が一件。差出人はAMORE局長。本部からの通達だ。

 灰司は、スマホに送信されてきた画像ファイルを開く。

 そこには、煤煙を掻き分けるようにして壁に開いた穴から出てくるとある人物の顔が写っていた。

 その顔に、灰司は見覚えがあった。見た瞬間、思わず乾いた笑いが漏れた。

 

「なんとも……数奇な巡り合わせだな」

 

 小学生くらいの体躯に、白い髪。顔には大きな傷跡。その両手には鋭く刃を光らせるナイフ。小学生には到底似つかわしいその獲物の存在が、彼女がまともな存在でないと頑なに主張している。

 彼女の名は霧崎律刃。

 またの名を■■■■・■・■■■■ ――

 


 

「……」

 

 事件から数時間後、警察の事情聴取を終えた裁場は、とあるビルの屋上から池袋の街を見下ろしていた。

 彼の脳裏には、あの炎の中で出会った仮面の戦士の姿が浮かんでいた。それを思い出すたびに、彼の顔つきが険しくなる。

 

(あの姿は……間違いなくアクロス。まさか既に資格者がいたとはな……)

 

 知りえるはずのないその名を、彼は反芻していた。

 そして、その手には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 




あまり長すぎるとアレだよな、と思ったので今回は短めにしました。多分次回からはこれくらいの長さになると思います。

淫夢要素ありますねえ。
某ホラー淫夢シリーズの影響を受けているので、野獣が屑っぽく見えるだろう?
空手部なら鈴木だろという突っ込みは野暮。今回は顔見せしかできませんでしたが、たぶん次回からは本格的に巻き込まれてもらうことになります。果たしてただのホモが生き残れるのか……?

あと序章で存在を匂わせていた奴らも出て来ます。
AMOREについても補足を加えたりと、今回もつかれたよ。
まさかここまでくるのに3年かかるなんてなあ!




今回から募集オリジオンも出始めます。出すタイミングに恵まれなかったのですが、ようやく機会に恵まれたので出しました。




オリジオン紹介

フシギバナオリジオン/木花(原案:黒い幻想氏)
カメックスオリジオン/水亀
リザードンオリジオン/火吹


カントー御三家のオリジオン。見た目は普通のチンピラ。
転生者狩りを倒そうとするも、灰司が強すぎたため失敗に終わる。
どうやら仲間意識は高い模様。
フシギバナオリジオンは倒されたが、残りの2体は逃走した模様。



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