【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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今回はガンズ・カオスソルジャー・リザードンとの決着回です。

■前回のあらすじ
ザ・ハンドオリジオンVSアクロス
ティロ・フィナーレオリジオンVS律刃
インクリングオリジオンVS迫真空手部
——決着!


第35話 AM3:00/再来のロストウィル

 

 プラネットプラザ2階・洋服店

 

 

 ショッピングモールのテナントのうちのひとつである、なんてことのない洋服店。

 数多の服が陳列されてるこの場所では、先ほどから、この場にふさわしくない音――銃声が散発していた。

 その発生源となるのは3人。

 武偵高校の生徒である神崎・H・アリアと遠山キンジ。そして、彼らと敵対する異形の怪人、ガンズオリジオンだ。

 他の皆を先に行かせるべく、ガンズオリジオンの相手を引き受けた2人。

 その戦いは既に、両者ともに何回引き金を引いたのか曖昧になってしまうほどに、続けられていた。

 

「くっそ……あっちだけ弾数無限とかずるいっての!」

「ないものねだりをしてもしょうがない……約束通り、俺達がコイツを引き留めるしかねえんだ!」

 

 キンジは半ばやけくそ気味に、隠れていた商品棚の影から身体を乗り出し、ベレッタの引き金を引く。狙うは当然ガンズオリジオンだ。

 発射された弾丸は、一直線にオリジオンへと向かってゆく。

 しかし、ガンズオリジオンは近くに置かれていたマネキンを掴んで盾にすることで、キンジの射撃を防御する。そして弾をすべて防ぎ切った後、弾除けにしたマネキンをキンジ達の方に向かって、思いっきりぶん投げた。

 

「こんなのっ!」

 

 アリアは苛立ち気味に得物を双銃から双剣へと切り替えると、飛んできたマネキンを切り裂く。当然ながらマネキンは真っ二つに切断され――その奥から、ガンズオリジオンの足が飛び出してきた。

 マネキンを投げたのは攻撃の為ではない。視界を妨げるためだったのだ。

 

「ボラァッ!」

「ぐっ………………!」

 

 突発的に飛びこんできたオリジオンの蹴りを、アリアは咄嗟に腕を交差させてガードする。

 しかし、オリジオンの蹴りの威力は相当なものであり、小さなアリアの身体は、埃をまき散らしながら床を滑ってゆく。蹴りを防いだ両腕が、メキメキという音を立てるのが、アリアの耳にも入ってきた。武偵高校特性の防弾防刃制服を着ていなければ、きっとアリアの両腕の骨は粉砕されていたことだろう。

 

「この野郎……なめんなっ!」

 

 オリジオンの蹴りでダメージを負ったアリアだが、彼女もただではやられない。

 アリアは即座に、ガンズオリジオン目がけて拳銃の引き金を引く。

 勿論狙いはその脳天。常人では回避するのも困難な一発が迫る。

 しかし、

 

「無駄だっ!」

 

 アリアの放った弾丸は、ガンズオリジオンのアームキャノンの砲身によって見事に跳ね返されてしまう。子気味良い音と共に弾かれた弾丸は、カラカラと音を立てて床を転がってゆく。

 そして、お返しと言わんばかりにガンズオリジオンは手に持った拳銃を発砲してきた。

 

「こんな弾丸っ!」

 

 キンジは瞬間的に判断していた。

 避けるのではなく、迎え撃つ判断を。

 足ではなく腕を動かし、手に持ったベレッタの引き金を引く。発射された弾丸は、ガンズオリジオンの放った弾丸と空中で激突し、互いに本来の軌道を逸れ、あらぬ方向に飛んでゆく。

 咄嗟の銃弾撃ち(ビリヤード)が成功した事に、一瞬安堵するキンジ。

 が、甘かった。

 

「なっ……」

 

 キンジが弾き飛ばした弾丸の背後。そこに、ギラギラと輝く2発目の弾が存在していた。

 あの時、ガンズオリジオンは一瞬で2発の弾丸を発射していたのだ。1発だけの弾丸を想定していたキンジの反撃では、2発目の弾丸に対処する術も時間もなく、2発目の弾丸はキンジの腹部を貫いてゆく。

 

「ぐふっ……」

「流石だぜ!」

 

 弾丸で腹を貫かれたキンジは、口から血を吐き出しながら膝をつく。

 狙い通りの結果を引き寄せたガンズオリジオンは、調子に乗ってガッツポーズをする。

 そして、キンジにトドメを刺すべく、アームキャノンの砲口を向けて発射準備に入る。

 向けられたアームキャノンの砲口内に、光が充填されてゆく。

 

「キンジっ!」

 

 それを見たアリアは、咄嗟に2人の間に割って入る。

 ガンズオリジオンのアームキャノン目掛けて放たれるアリアの弾丸。それはアームキャノンにはわずかな傷をつける程度の蟻の一穴でしかないが、僅かかながら、オリジオンの意識をキンジから逸らすことには成功する。

 その隙をついて、キンジは腹の痛みを堪えながら立ち上がり、ガンズオリジオンに飛びついた。同時に、アリアがオリジオンに飛びつき、その首筋にナイフを振り下ろそうとする。

 2人の行動によって、オリジオンのアームキャノンの砲口がずれ、チャージの終わっていたアームキャノンは、あらぬ方向にビームを発射する。

 

「ぬわっ……⁉︎ 」

「ちょっ⁉︎ 」

 

 誤射されたビームは、3人のいた床を粉々に破壊した。

 足場を失ったキンジ達は、瓦礫と共に1階へと落ちてゆく。2人の手にあった武器も、彼らから離れるように落下する。

 突然の出来事ながらも、キンジとアリアは、それぞれ受け身を取りながら着地することで、落下の衝撃を最小限に抑えることに成功する。対して、オリジオンの方は、まるで溶けて落ちたアイスのように、べちゃりと床に叩きつけられる。

 

「くそっ……余計な真似をしやがって!」

「逃がさないわよ!」

 

 悪態をつきながら立ち上がるガンズオリジオンに、二丁の拳銃を携えたアリアが突っ込んでゆく。

 彼女の手に握られたガメハンドから、硝煙と共に弾丸が放たれる。

 しかし、ガンズオリジオンはアームキャノンの砲身で弾丸を弾き飛ばし、懐に飛び込もうとしてきたアリアの腹を蹴り飛ばす。

 

「きゃああああっ⁉︎ 」

 

 拳銃を取り落としながら、悲鳴をあげて吹っ飛ぶアリア。

 ガンズオリジオンは倒れたアリアに追撃することなく、彼女に背を向け、手負いのキンジを狙いにいく。

 誰がどう見ても、明らかな舐めプ。そんな扱いを受けたアリアが怒らないわけがなかった。

 

「まちな……さいよ!」

「邪魔すんなよ……オメーは対象外だ」

「なんですって?」

「お前は俺にとってのトロフィーワイフなんだよ。狙った女をわざわざ殺しちゃうバカがいると思うか?」

「なによそれ……あたしは物じゃない!あんたみたいな気持ち悪い音なんかこっちから願い下げよ!」

 

 落下時に取り落とした剣を拾いながら、ガンズオリジオンに気持ち悪い言動に、必死になって言い返すアリア。

 オリジオンはそれをバックに、キンジに迫っていた。

 カチャリと、左手のアームキャノンに砲弾を装填する。先程使ったビームではなく、実弾で仕留めるつもりらしい。彼は、アームキャノンの砲口をキンジに向けながら、自らの目的を明かす。

 

「俺の標的は端から遠山キンジ、お前だけだ」

「俺が……?なんで……?」

「気に入らないんだよ。平穏(ラブコメ)闘争(バトル)。そのどちらにも染まりきれないどっちつかずの癖に、きっちりとそのどちらにおいても美味しい所はいただいている。そんなお前を羨み、嫉んでいる奴は俺以外にもごまんといる。俺はな、そういったやつらの代表として、お前を殺しに来たんだよ……遠山キンジ!」

 

 ドパンッ!と音を立てて、ガンズオリジオンのアームキャノンから、彼の恨み嫉みの籠った砲弾が発射される。

 キンジは床を強く蹴って真横に飛んで、飛んできた砲弾を避ける。避けられた砲弾は床に着弾するなり、凄まじい熱風と衝撃を周囲に撒き散らした。

 

「うおおおおおおおおおおおっ⁉︎ 」

 

 身体を焦がすような爆風に煽られながら、床をゴロゴロと転がってゆくキンジ。

 彼はなんとか立ち上がると、弾丸を拳銃に装填しながら、ガンズオリジオンの身勝手な主張をバッサリと切り捨てる。

 

「ふざけんなよ!そんな理由で殺されてたまるか!」

「出る杭は打たれる、だ。お前は俺にとって、床板から飛び出ている杭なのだ!」

「そんなしょうもない理由であたしのパートナー殺そうっての⁉ ほんと、ふざけるのもいい加減に――っ⁉ 」

 

 ガンズオリジオンに怒っているのはキンジだけではない。アリアもまた、その身勝手さと気持ち悪さに怒りと嫌悪感を露わにしていた。

 双剣を構えながら、ガンズオリジオンに背後から斬り込もうとするアリア。

 しかし、その動きが突然止まった。

 そして、次の瞬間には、カランと音を立てて、アリアの手から双剣が零れ落ちていた。

 

「おい、どうした⁉ 」

 

 それを目にしたキンジは、思わず足を止めてアリアに声をかけるが、彼女からは苦悶の声しか帰ってこない。

 アリアの顔は、まるで苦痛に耐えているかのように歪んでいる。

 ——結論から言おう。

 アリアの腕には、ヒビが入っていた。

 先程、ガンズオリジオンの蹴りを両腕を使って防いだ時に、彼女の腕は大ダメージを受けたのだ。防弾防刃制服を以てしても、あの一撃を防ぎ切ることはできなかったのだ。

 

「アリアっ⁉︎ お前腕を——」

「よそ見してるんじゃあねえ!お前は俺に黙って殺されてりゃあいいんだよ!」

「ぐはあっ⁉︎ 」

 

 キンジがアリアを心配した、その隙を、ガンズオリジオンは逃さなかった。

 ガンズオリジオンは、いつの間にかキンジの背後に回り込んでいた。

 それに気づいたキンジだが、遅かった。振り返る間も与えられずに、次の瞬間には、ガンズオリジオンの手刀がキンジの後頭部に命中していた。

 まるでスイカ割りでもするかのように、一切の容赦なく振り下ろされたその一撃は、グシャリという鈍い音をキンジの後頭部から絞り出させるとともに、彼の身体を床に伏せさせた。

 

「なっ……」

「終わりだよ、遠山」

 

 そう呟きながら、ガンズオリジオンのアームキャノンから、2発目の砲弾が発射される。

 アリアは腕の痛みを押し殺し、キンジの元に向かって走り出す。

 そして次の瞬間。

 

 

 爆炎が、生まれた。

 

 

 その爆発は、またもや周囲の床を破壊し、3人を直下の地下駐車場へと突き落とす。

 キンジはおろか、アリアやガンズオリジオン自身も巻き込み、破壊的な爆風と衝撃が周囲に撒き散らされてゆく。それでもなお、ガンズオリジオンはピンピンしていた。

 

「死んだな……死んだなあっ!」

 

 今の爆発で自慢の装甲は吹き飛んでしまったが、それでも優位性はゆるがない。いくらキンジが原作主人公といっても、所詮は人間。オリジオンである自分が負けるはずがないと、ガンズオリジオンは勝ち誇っていた。

 そうして、最後に惨めに吹き飛んだキンジの死体でも確認しようと思って、瓦礫の海を歩いて渡り出したガンズオリジオン。

 

 

 直後、彼のアームキャノンが爆発した。

 

 

「なあああああああああああああああああああああっ⁉︎ 」

 

 あまりにも唐突すぎる

 

「爆発の規模が大きすぎると思わなかったのか?俺が手榴弾を砲口にぶち込んでやったんだよ」

「な、馬鹿な……」

 

 ガンズオリジオンは振り返る。

 そこには、

 

「やあ、誰が死んだって?」

「なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉︎ 」

 

 全身灰まみれになったキンジとアリアが立っていた。

 だが、キンジのその雰囲気は先程までとは違う。なんだか妙にキザな印象だ。

 ——それがなんなのか、何が起きているのか、ガンズオリジオンは知っている。

 

「しかもお前……ヒステリアモードになっているな⁉︎ 一体いつなったんだ⁉︎ 」

 

 ヒステリアモード。

 それは、遠山キンジの個性(ちから)。異性に対する性的興奮をトリガーとしたリミッター解除(パワーアップ)。ガンズオリジオンは、万が一のことを考え、キンジがそうならないように最新の注意を払っていた。

 しかし、最後の最後でやらかした。

 こうして、目覚めさせてしまった。

 

「しかし、なんだ……どのタイミングで……」

 

 あの爆発の直前、アリアがキンジに駆け寄っていた。その後のことはガンズオリジオンにはわからないが——偶然にしろ故意にしろ、兎に角、キンジがヒステリアモードになるような出来事が起きたのだ。

 せっかく、ヒステリアモードにならないようにしていたのに、それを乗り越えてきやがった。

 その事実を理解したガンズオリジオンは、怒りと嫉妬にかられるがままにアームキャノンを構える。

 

「こ……このラッキースケベ野朗があああああああああああああっ!ふざけんな、そーゆーところが嫌いなんだよぉおおおおおっ!」

「黙ってろ!」

 

 が、ガンズオリジオンに撃たせまいと、アリアが地面に落ちていた自分の剣を思いきっり蹴り上げた。

 柄の先端を正確に狙い撃った剣蹴玉(ソードシュート)。蹴飛ばされた剣は、ザシュッ!と音を立てて、オリジオンのふくはらぎに剣が深々と突き刺さる。

 

「がっ……」

「ありがとうアリア!最後は俺がなんとかする!」

 

 キンジはそう言って拳銃に弾を込めながら走り出した。

 さっきの爆発で装甲を失った今ならば、ガンズオリジオンを撃ち抜ける。

 

「くそっ!ならばこの一撃で切り裂いて——」

「遅い」

 

 バッ!と。

 拳銃を構えたのは同時。しかし、引き金を引いたのはキンジが先だった。ガンズオリジオンが引き金を引くよりも早く、キンジのベレッタから弾丸が発射された。

 狙うは銃口——鏡撃ち(ミラー)だ。

 ヒステリアモードになったキンジの方が、瞬発力では上だった。

 そして、

 

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ⁉︎ 」

 

 ガンズオリジオンの銃が暴発し、飛び散った銃の破片が、装甲をうしなったガンズオリジオンの身体に幾つも突き刺さった。

 


 

 プラネットプラザ2階・西通路

 

 ギンッ‼︎と、金属同士が激しくぶつかる音が、戦場と化したショッピングモールに響き渡る。

 それは今宵何度目かもわからない、この地で繰り広げられている戦いの証拠。

 

「あばばばばあっ!」

「くうっ……!」

 

 端的に述べよう。

 ブレイドはカオスソルジャーオリジオンの二刀流に苦戦していた。

 彼女の剣戟は肉眼で捉える事ができないほどの速さだった。それでいて、当たれば馬鹿みたいに太い棍棒で殴られたかのような重みのある衝撃が加わってくる。もし生身だったら、とっくのとうに身体のあちこちが抉れているのが容易に想像がつく。

 ブレイドは、自身の脳天目掛けて振るわれた一撃をブレイラウザーで受け止め、押し返しながらカオスソルジャーオリジオンを蹴り飛ばして距離をとる。

 

「ほら、時代遅れの平成ライダーさん。無謀にも我々に歯向かって……仮面ライダーの名が聞いて呆れます」

「何の罪もない一般人を人質に取ってる時点で、お前らはヒーローでもなんでもないんだ!お前達が何と戦い、何から世界を守っているのか、俺にはよくわからないけど……少なくとも、今のお前達を正義の味方だとは俺は思わない!」

 

 それは、この戦場で何度も繰り返された言葉。決して交わることのない平行線。

 片や、全次元の平和のために少数の心を踏み躙るのを良しとし。

 片や、犠牲ありきの平和を良しとせず。

 どちらもその原動力は正義であるが故に、言葉程度ではとまらないのだ。それは、単純な善と悪の戦いよりも遥かに厄介なモノであった。

 

「不穏分子を駆逐しなければならない。場当たり的な対処では無く、圧倒的な武力を持たねば世界が滅ぶ。それが何故わからない?」

「協力を申し出るというのもあったはずだろ⁉︎ 何でわからない⁉︎ 」

「だから言っているだろう!お前らは守られるべき弱者なんだ!私たちが転生者からお前らを守ってやるから大人しくしててくれないかなぁっ⁉︎ 」

「それは……犠牲の言い訳にならないっ!」

《♠︎2SLASH》

 

 ブレイドがそう言いながら、ブレイラウザーに1枚のカードを読み込ませる。すると、ブレイラウザーの刀身がが青く輝きだす。

 カオスソルジャーオリジオンは、2本の剣を同時に振り下ろしながら、思いの丈を叫ぶ。洗脳によって歪められた正義感は、すでに醜悪な傲慢に成り下がっていた。

 

「何故お前は戦う⁉︎ お前は部外者、我らの戦いに首を突っ込まず、アンデット退治でもしてればいいんだっ!」

「それだけが俺の使命じゃない!他人の涙以外に理由なんかいらない!誰かの涙が許せないから仮面ライダーをやってるんだ!」

 

 ガキンッ!と音を立てて、カオスソルジャーオリジオンとブレイドの剣がぶつかり合う。

 僅かな差によって鍔迫り合いに打ち勝ったブレイラウザーの刃が、カオスソルジャーオリジオンの剣の軌道を跳ね上げる。

 そして、ガラ空きとなった彼女の胴体に、ブレイドの一撃が滑り込み、彼女を吹き飛ばす。

 

「っ!」

 

 口の中に広がる鉄の味を噛み締めながら、カオスソルジャーオリジオンは剣を地面に突き立て、強引に身体を床に着地させる。

 そして、

 

「時空走破斬っ!」

「なっ……!」

 

 距離にして10メートル。

 それだけの間合いを一気に無に還し、カオスソルジャーオリジオンが、一瞬にしてブレイドに肉博する。

 わずかに反応が遅れるブレイド。そこに、カオスソルジャーオリジオンの二刀流が容赦無く降りかかる。

 ブレイドは咄嗟に、手にしていたブレイラウザーでガードをするが、圧倒的な速度と腕力で振り下ろされたオリジオンの刃は、ブレイドの手からブレイラウザーを容易く弾き飛ばし、彼の身体をVの字に斬り裂く。

 

「ぶはっ……っ!」

 

 斬りつけられた胸部アーマーから火花を散らしながら、ブレイドはその場に膝をつく。

 ブレイドの胸部アーマーには、先の一撃に起因する深い傷が刻まれており、周囲の床には、ブレイドから飛び散ったアーマーの破片らしきものが散見される。

 その有り様を目にしながら、カオスソルジャーオリジオンはほくそ笑んだ。

 ——終わりだ、と。

 

「あれほど大言壮語を吐き連ねたくせに、この程度なの?やはり現地民はこの戦いに関わるべきでは——」

「今だ!」

 

 トドメを刺そうとオリジオンが近づいた瞬間のことだった。

 膝をついていたブレイドが、カオスソルジャーオリジオンの両手首を掴む。そして、一気に彼女の身体を引き寄せ、

 

「ウェイッ!」

「ぬぶっ……⁉︎ 」

 

 彼女の下顎目掛け、頭突きを喰らわせた。

 上部の尖った水滴状のブレイドの顔部アーマー、その形状を利用した一撃が、カオスソルジャーオリジオンの身体を上へと跳ね上げる。それはさながら、ツノを突き上げたカブトムシの様だった。

 完全に油断しきっていたカオスソルジャーオリジオンは、ブレイドの反撃によって後ろによろける。得物である二振りの剣も、彼女の手から零れ落ちてゆく。

 

「ウェエエエエエエエエエエイッ‼︎ 」

 

 ブレイドは即座に立ち上がると、よろめくオリジオンに向かって、渾身のドロップキックをくらわせる。彼の全体重を乗せた至近距離からの一撃はまさに一級品の威力であり、カオスソルジャーオリジオンは、ヤギの鳴き声みたいな悲鳴と共に吹っ飛んでゆく。

 体勢を整えたブレイドは、落ちていたブレイラウザーを拾い上げる。

 そして、ブレイラウザーのオープントレイを展開し、そこから3枚のラウズカードを取り出す。

 取り出したのはパンチ力を強化する“♠︎3BEAT”、電撃を発生させる“♠︎6THUNDER”、肉体を鋼鉄化させる“♠︎7METAL”の3枚。ブレイドは取り出したそれらをブレイラウザーでラウズする。

 

《♠︎3BEAT・♠︎6THUNDER・♠︎7METAL》

「これで……トドメだ」

《LIGHTENING METEOR》

 

 3枚のカードをラウズし終わると、ブレイドの右拳が鉄のような質感に変化すると共に、電撃を纏い始める。

 拳を固く握りしめて走り出したブレイドを迎え打つべく、剣を全て失ったカオスソルジャーオリジオンは負けじと立ち上がる。それはAMOREとしての意地か、はたまた洗脳で正気を失っているが故に成せる技なのかはわからない。

 必殺技が撃たれる前になんとかしなくてはならない。

 そう判断したカオスソルジャーオリジオンは、雄叫びを上げながらブレイドに向かって走り出す。

 そして、

 

 

 バキンッ‼︎ と。

 電撃を纏ったブレイドのパンチが、カオスソルジャーオリジオンの鎧を砕いた。

 

 

 

 

 


 

 AM2:48

 プラネットプラザ2階

 

 

 止まっているエスカレーターを駆け下りる、2人分の足音。

 それを追う、全てを焼き尽くす灼熱の炎。

 

「ひゃっはあああああああああああああああっ!パワーアップした俺のデモンストレーション相手になってくれよおモブ共よぉっ!」

「ふざけんな!それ俺達をころすといってるようなもんだろうがっ!」

「言い返さなくていいから足を動かして!死ぬわよ⁉ 」

 

 バルジの手によってパワーアップを果たしたリザードンオリジオンは、有頂天になりながらアラタと大鳳を追いかける。その台詞はもはや、現代日本よりも世紀末に転生した方が良かったのでは?と思わざるを得ないレベルで終わっていた。

 リザードンオリジオンの口から放たれる火炎放射を紙一重で回避しながら、アラタ達はエスカレーターを駆け下りる。アレに当たったら火傷どころか、熱いと感じる前に全身が消し炭になりかねない。

 

「ぬうらぁっ!」

 

 2階に到着した大鳳は、近くにあった観葉植物の植えられた鉢を持ち上げると、エスカレーターの最上段から2階に向かって飛び降りてきたリザードンオリジオンめがけて、それを思い切りぶん投げた。

 艦娘を引退した身といえども、その力は並の少女を上回る。

 大鳳が投げた鉢は、リザードンオリジオンの吐く炎を飛び越し、彼の額にぶち当たって砕け散る。

 聞くに耐えない破壊的な音が発生するとともに、リザードンオリジオンのジャンプの軌道がエスカレーター上からずれ、彼の身体が空中に投げ出される。

 そして、リザードンオリジオンは、吹き抜けを通じて1階まで落下していった。

 

「今のうちに離れるわよ!」

「だな……悔しいが、今の俺たちじゃあ何にもできないしな」

 

 躊躇いなく鉢をオリジオンに投げて撃ち落とすという行動に出た大鳳を末恐ろしく感じながら、アラタは彼女の言葉に従って通路を走る。

 すぐ近くに1階に通じるエスカレーターがあるが、そこの近くには、落下していったリザードンオリジオンがいる為、選択肢としては論外だ。行くならば、他の階段かエスカレーターしかない。

 しかし、

 

「アレくらいで死ぬと思ったか⁉︎ 俺は天下無敵の転生者サマだ!お前ら雑魚とは違って世界に愛される身なんだよねえっ!」

「なっ……!」

 

 下で伸びていると思っていたリザードンオリジオンが、1階から吹き抜けを通じ、たった1回のジャンプで、大鳳の真横まで飛び上がってきていた。

 予想以上の復活が早い。

 大鳳は身構えようとするが、リザードンオリジオンは彼女のアクションを許さず、そのまま彼女を押し倒す。

 

「大した人気もない艦娘風情が、俺に一矢報いたつもりかぁ?調子乗るのも大概にしろよ!」

「くっ……」

 

 押さえつけられた大鳳は、リザードンオリジオンの口内に凄まじい熱気が溜まっていくのを感じた。彼は、この至近距離からの火炎放射で大鳳を焼き殺す気なのだ。

 彼女はなんとかして脱出しようと試みるが、リザードンオリジオンの力は相当なモノであり、大鳳の力を以てしても、オリジオンの身体はびくともしない。

 暴れる大鳳を押さえつけようとして、リザードンオリジオンの腕の力が増す。大鳳の腕を押さえているリザードンオリジオンの手の爪が、大鳳の肌に食い込んで出血を起こす。

 

「絶体絶命……ね」

 

 大鳳は、身体では尚も反抗を続けていたが、彼女の心の中には、早くも諦めの感情が芽生え始めていた。

 

(まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あるべき姿に戻るだけ)

 

 もとに、もどるだけ。

 精神とは逆に、いまだに生存を諦めてはいない自分の身体に、そう言い聞かせる。

 アラタは無事に逃げられただろうか、と、最期に大事な家族について思いを巡らせた大鳳。

 そこで、気づいた。

 

(いやあり得ない!アラタが私を置いていくわけがない!アラタは、どんな無茶をしてでも私を助けにくる。そういうヤツだ!)

 

 舞網鎮守府の時もそうだった。

 結果としては惨敗だったが、アラタは大鳳を助けるために、生身でオリジオンに立ち向かった。その一件以来、彼はフィフティにわざわざ弟子入りしてまで強くなろうとしている。

 そんな彼が、大鳳が身代わりになろうとしている今を許せるだろうか?

 答えは簡単。

 

「テメェ大鳳に何してくれとんのじゃあこの腐れトカゲ野郎!顔面マリアナ海溝にしてやろうかっ⁉︎ 」

 

 グサリ、と。

 怒り心頭で暴言を吐き散らしながら、アラタが手に持っていた包丁を、リザードンオリジオンの側頭部にぶっ刺した。

 完全に、意識外からの一撃。

 それを思いきりくらったリザードンオリジオンは、刺された箇所から血を噴き出しながら、情けない悲鳴をあげる。

 

「大鳳からどきやがれっ!」

 

 その隙に、アラタはリザードンオリジオンを蹴り飛ばし、大鳳の上からどかす。蹴り飛ばされたオリジオンは、包丁で刺された頭から血を流しながら、ショッピングモールの床をゴロゴロと転がってゆく。

 そして、オリジオンから解放された大鳳の手を引っ張り、彼女の身体を起こす。

 

「悪い、得物とってくるのに時間かかった」

「あ、ありがとう……それはそうと、包丁なんてどこから……」

「近くの家具屋からパクってきた。盗んできちまったけど、お前の命に比べたら安いもんだろ。怪我はないか?」

「ちょっと腕から血が流れているくらいよ、大丈夫」

 

 怪我の具合を心配するアラタに、大鳳は強気に笑いながらそう返す。

 そんな2人を睨みながら、リザードンオリジオンは、頭に刺さった包丁を引き抜いてその場に投げ捨て、ゆらりと立ち上がる。

 そして、

 

「ああああああああああああもうイライラ止まらねえよおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 その口から出たのは、空気をビリビリと震わせる咆哮だった。

 足元に投げ捨てた包丁を何度も踏み砕きながら、彼は怒りの限り吠えた。

 

「殺す……貴様らは絶対に許さん!」

 

 激昂したリザードンオリジオンは、自らの尻尾を思いっきり振り回し、アラタと大鳳に叩きつけた。

 

「ごぶひゅっ……⁉︎ 」

「ねべあっ⁉︎ 」

 

 内臓が根こそぎ体内から飛んでいきそうな程の衝撃をその身に受けながら、2人の身体が空高く浮かび上がる。2階にいたはずの2人は、吹き抜けを通じて、3階の天井付近まで打ち上げられる。

 そして、わずかばかりの浮遊感のあと、2人は落下を始めた。

 

「わあああああああああああああああああああああああああっ⁉︎ 」

「おちりゅううううううううううううううううううううううっ⁉︎ 」

 

 高さにして10数メートル。こんな高さから落ちたらひとたまりもない。

 泣き喚きながら、2人は落ちてゆく。

 ——筈だった。

 

『危ないっ!』

 

 地上まで2メートルを切ったというところで、ガクンと、2人の身体が何かに引っかかった。

 見ると、黒いネットのようなものが、アラタ達の真下に広がっている。通路一面を覆う、弾力のあるそれが、2人の身体を支えているのだ。

 そして、ネットの外側には、黒いライダースーツに黄色い耳付きのフルフェイスヘルメットを被った首なしライダーが佇んでいた。このネットは彼女の、影を自在に操る能力によって生み出されたものなのだ。

 恐る恐る、ネットから地上に降り立ったアラタと大鳳は、下で待っていたセルティに礼を言う。

 

「せ、セルティ……助かった……」

「正直忘れてたわ」

『忘れてもらっては困る。ずっといたのだが……私はそんなに影が薄かったのだろうか?』

 

 瞬達と合流して以降、いろんな意味で放置気味だったことにしょげるセルティ。

 が、のんびり会話している暇はない。

 

「お喋りしてる余裕がお前らにあるのかい⁉︎ 」

 

 バッ!と。

 背中の翼を広げながら、リザードンオリジオンが2階から飛び降りてきた。

 セルティは何も言わず(というか頭がないので言えないのだが)、手に影でできたバットを生成する。

 そして、

 

「ぬぎゅおえっ⁉︎ 」

 

 突っ込んできたリザードンオリジオンを、フルスイングでぶっ放した。

 カキーン!と、影でできているはずのバットから金属的な快音が鳴り響くと共に、リザードンオリジオンは天高くぶっ飛ばされる。

 その勢いは、吹き抜けを経て3階の天井にぶつかった程度で止まることは一切なく、そのまま天井を突き破り、空を覆う雨雲に向かってぶっ飛んでゆく。

 

「凄い……」

「やべえな」

 

 一部始終を見たアラタと大鳳は、語彙力の欠片もない簡単の言葉を口にする。

 その直後だった。

 

『ん?』

 

 空を見上げていたセルティは、何かに気づいた。

 何かがこっちに向かってきている。

 赤くて大きい何かが、降り注ぐ雨粒に匹敵する速さでこちらに向かってきている。

 それは、

 

「なっ……」

「メガシンカだああああああああああああああああああっ!俺は!負けないっ!」

 

 全身に炎を纏いながら急降下してきている、リザードンオリジオンだった。

 その姿は大きく変動しており、翼竜を人型にしたような見た目から、完全な翼竜の体型へと変化していた。おまけに、その体色は黒くなり、その身に纏う炎も、赤から青へと変わっている。

 進化の限界を超えた進化(メガシンカ)

 バルジの処置によってパワーアップした姿。

 今の彼は、もう既にリザードンオリジオンでは無くなっていた。さしずめ、メガリザードンオリジオンといったところだろうか。

 彼は全身に青い炎を纏いながら、アラタ達のいる位置目掛けて落下してきている。その様子はまるで流星のようだった。

 

「まずいわ……あんなのが落ちてきたら建物がもたない!」

「どうすんだ⁉︎ 」

『任せろ』

 

 狼狽えるアラタ達だったが、それとは対照的に、セルティは冷静に対処しようとしていた。

 セルティの手に握られた、影でできたバットが、その輪郭を失ってゆく。そして、バットを構成していた影が、みるみるうちに増大化し、アラタ達を守るかのように変形を始める。

 それは網だった。

 プラネットプラネットの通路ほどの幅を持つ影の網で、落下してくる凶星を受け止めようというのだ。

 メガリザードンオリジオンと、影の網が接触する。

 すると、グインッ!とネットが伸び、メガリザードンオリジオンの巨体を押しとどめる。

 

「やったのか?」

 

 希望的観測を口にするアラタ。

 しかし残念ながら、その期待は儚くも崩れ去る。

 

「ぐらああああああああああああいっ‼︎」

 

 バチンッ!と。

 怒声をあげたリザードンオリジオンが、セルティの影網(シャドウネット)を食い破った。

 

「なっ……」

「嘘でしょ⁉︎ 」

(マズイっ……!)

 

 想像以上の相手のパワーに、3人はなす術がなかった。

 影による呪縛を突き破ったメガリザードンオリジオンは、地上にいるアラタ達を食い殺さんと急降下をしてくる。

 もう、なす術なんて無い。

 声にならない悲鳴をあげるアラタだったが、それでも大鳳だけは守らねばならないと思い、必死に彼女に手を伸ばそうとするが、間に合わない。

 オリジオンの牙が、迫る。

 

 

 

 

《LEGEND LINK!ドラララララララァ!CRAZY DIAMOND!》

「!」

 

 メガリザードンオリジオンの牙がアラタの身体に食い込もうとする、その瞬間だった。

 突然この場に響き渡る、クロスドライバーのレジェンドリンクの音。

 その直後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんだ⁉︎ 」

 

 その様子は、まるで、釣り竿かなんかで釣り上げられたんじゃないかと思ってしまうほどのものだった。

 メガリザードンオリジオンは空中でもがきながら、自分がプラネットプラザの天井にぶち明けた大穴を見上げる。

 大穴の上。その縁に、誰かがいる。

 

「お前は……お前は!」

「………………」

 

 そこに立っていたのは、ひとりの仮面の戦士だった。

 アラタは最初にそれを見た時、てっきり、瞬がアクロスに変身して駆けつけてくれたのかと思ったのだが、一目で分かった。アレはアクロスではない、と。

 

「アクロスじゃない……じゃああれが逢瀬の言っていた……!」

「ユナイト……!また貴様かぁっ!」

 

 メガリザードンオリジオンは、忌々しそうにその名を叫ぶ。なぜならそれは転生者狩りに並ぶ、自らの仲間を打ち破った怨敵だからだ。

 穴の縁に立って彼を見下ろしていたのは、仮面ライダーユナイトだった。

 だが、普段とは見た目が違う。メガリザードンオリジオンが以前に出会った時とは異なり、ユナイトはデフォルトのアーマーの上から、白いプロテクターを上から着用している。

 彼らは知る由もないが――これは仮面ライダーユナイト・リンク“クレイジー・ダイヤモンド”だ。

 

「その姿はなんだ⁉ 俺に何をした⁉ 」

「俺はただ直しただけだ。お前が大穴を開けたこの建物の天井をな」

 

 その言葉を受けて、メガリザードンオリジオンは周囲を見渡す。

 そこには、空中に浮かぶいくつもの瓦礫があった。

 オリジオンはその瓦礫が元は何だったのかを知っている。それは、彼がぶち破った、このプラネットプラザの天井だったものだ。

 それらが浮上している。彼の身体同様に、まるで何かに引き寄せられているかのように、上へと浮き上がっている。

 

(俺は知っている……クレイジー・ダイヤモンド……まさかっ⁉ )

 

 ここでオリジオンは、ユナイトの行っていることを理解した。

 クレイジー・ダイヤモンド。それはとある世界において、とあるひとりの少年が得た幽波紋(スタンド)の名だ。

 その能力は物体の修復。ユナイトは今、その力を得て使っている。ユナイトはそれを使って、オリジオンが破壊したプラネットプラザの天井を直した。

 それによって、地上に散らばった瓦礫は元あった天井に向かって引き寄せられている。そしてそれは、メガリザードンオリジオンの身体に突き刺さっている瓦礫も例外ではない。元の位置に戻ろうとしているそれが、オリジオンの身体を引っ張っているのだ。

 全てを理解したメガリザードンオリジオンは背中に刺さっている瓦礫を取り除こうとするが、まなじ完全な翼竜形態になってしまったが故に、その短い手では背中に届かない。結果として彼は、ただもがくことしかできずに、ユナイトのいる、プラネットプラザの屋上駐車場まで浮上させられてしまう。

 

「助けてっ………………折角転生したんだっ!ムショおくりなんかやだああああああっ!」

「だったら最初から悪いことなんかするな」

 

 泣きわめくオリジオンに、ユナイトは冷たく言い放つ。

 そして、

 

《UNION PUNISH!CRAZY DIAMOND》

「弩ララララララララララララララララララララララララアィッ!!!!!! 」

 

 劇的に強化された腕力にものを言わせた、怒濤のラッシュ攻撃が繰り出された。

 ユナイトの拳は、思わず耳をふさぎたくなるほどの強烈な破壊音をまき散らしながら、メガリザードンオリジオンの身体に余すことなくぶち込まれてゆく。そのラッシュの速さは、残像が発生するほどのものであった。

 ラッシュの衝撃は、ユナイトの何倍もの体躯のメガリザードンオリジオンの身体の芯まで伝わり――

 

「ふざけんな……!ふざけんなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!! 」

 

 彼の身体と転生特典を、跡形もなく爆散させた。

 

「…………」

 

 呆然とするアラタ達の目の前に、雨粒と共に、ボロボロのメガリザードンオリジオン――火吹が落下してくる。

 彼は生きてはいるものの、その顔面は月面の如くべこべこになっており、全身をピクピクと痙攣させるだけで何もできない状態だった。

 

「……………………」

『助かった、のか』

 

 ユナイトの手によって、完全に修復された天井を見つめるアラタ達。

 ユナイトの実力を目の当たりにした彼らは、ただただ圧倒されていた。

 

 

 

 

 


 

 ザ・ハンドオリジオン——下澤巻密を撃破した瞬は、アクロスの変身を解いて壁に寄りかかっていた。

 連戦によって、瞬の体力は尽きかけている。多分今眠りについたら、1週間は平気で眠っていられそうだと、瞬は確信していた。

 そこに、ずっと物陰に隠れていたレイがやってくる。

 

「終わった……のか?」

「ああ、ここはな。先に行った唯達はどうしてるかな……」

 

 瞬は呼吸を整えながら、先に行った唯とセラの身を案じる。

 彼女達だけでない。今この場で戦っている皆の無事を、瞬は祈っていた。それは気休め程度にしかならないというのはよくわかっているが、それでも瞬は祈らずにはいられなかった。

 

「そこは皆の実力を信じるしかない。俺たちは俺たちの、出来ることをやるしかないんだよ」

「そっか、そうだよな……なら、行くしかないよな」

 

 レイの声に耳を傾けながら、瞬は立ち上がる。

 その時だった。

 突如として、プラネットプラザ全体を激しい揺れが襲った。

 

「ぬわっ……な、なんだ⁉︎ 」

 

 壁に手をつきながら、瞬は、何が起きたのかを把握しようとする。

 

「地震じゃない……爆発……まさかっ⁉︎ 」

 

 何かを察したレイが、震源地に向かって走り出した。

 それを慌てて追いかける瞬。あちこちで戦闘が頻発しているこの場で、非戦闘員であるレイを1人にするわけにはいかない。

 

「おい待てよレイっ!1人で先に行ったら危ないって——」

 

 先を走るレイを呼び止めながら、彼に追いつくべく全力で走る瞬。

 モヤシが擬人化したようなレベルのヒョロヒョロ体型のくせに、レイは矢鱈と足が速かった。元陸上部だった瞬でも、見失わない様にするのが精一杯だ。

 そして。

 

「やっと……止まって……追いついた……」

 

 時間にして30秒。

 それだけの追跡劇を経て、2人は震源地に辿り着いた。

 瞬の身体に、オリジオンと戦っていた時以上に、どっと疲れが押し寄せてくる。

 壁に手をつき、息を切らしながらも、瞬は目の前の惨状を見つめる。

 そこには、

 

「よう、一足遅かったなレイ。イスタはご覧の通り——俺の手の中だ」

 

 炎と瓦礫の海の中、イスタの首を掴み上げている赤浦健一の姿があった。

 彼の周囲に転がっているのは、瓦礫だけではない。

 瓦礫に紛れて、湖森とトモリが倒れているのを、瞬は見逃さなかった。

 

「お前……何をした⁉︎ 」

 

 怒りで声を震わせながら、瞬は赤浦に訊ねる。

 

「何って、邪魔だから吹き飛ばした」

「なんだと……」

「もしかして、あそこのよくわかんねー人質どもの事で怒ってんのか?あれはオレの管轄外だ。AMOREの馬鹿が勝手にやった事だしな、まあ、息はしてるんじゃないかな?」

 

 あっけらかんと、赤浦は言い放った。

 それを耳にした瞬の拳が震える。

 赤浦に首を掴まれているイスタは、煤けた顔をレイのほうに向けながら、苦しそうに声を出す。

 

「レイ、来ちゃ……駄目」

「それは出来ない。俺はお前と再会するためだけにこの1年を生きてきた。今更止まれない。赤浦を倒して、お前と2人で日の当たる世界に帰るんだよ」

「お前らの夢は叶わない……オレが壊すからだ。お前らがいたから、慈愛はオレのモノにならなかった。だから、彼女の愛を独り占めするために、オレはオレの手でお前らを消し去らなきゃならない」

 

 赤浦もレイも、それぞれの抱く思いは以前と変わってはいない。

 再開を望む執念と、愛の独占を目論む狂気。

 仮面ライダーだのAMOREだのギフトメイカーだのといった要素は、所詮ただの添え物(フレーバー)。今回の事件は結局のところ、この2人の対立に終始するモノでしかない。

 

「碌に戦う術を持たないお前と、オリジオンに覚醒したオレ。同じ転生者といえども、オレとお前じゃハナから勝負にならないという事は分かっているはずだろう。それでもやる気とか、狂ってないか?」

「お前にだけは言われたくないな……こちとら(イスタ)取り返しに来たんだ。親は子のためなら、いくらでも狂ったことをしでかせる生き物なんだぞ?」

 

 レイも赤浦も、両者共に譲らない。

 瞬は湖森とトモリを安全な位置まで移動させながら、2人の対話を聞いていた。

 瞬は2人の因縁を詳しくは知らない。せいぜい、レイから軽く教えられた程度だ。それでも、赤浦の狂気性は身に染みてわかる。

 あいつは倒さなくてはならない。自らの手でその機会を手放した、もう2度と叶うはずのない愛。そのために、ひたすらに破壊を撒き散らし続けるこの男を、なんとしてでもここで止めなければならない。

 そう感じとった瞬は、クロスドライバーを腰に装着し、アクロスに変身しようとする。

 その時だった。

 赤浦は、瞬の方をチラリと見て、こう言った。

 

「言葉をぶつけ合うのにも飽きた。とりあえずひと想いに吹き飛ばしてやるか」

 

 その言葉が合図だった。

 赤浦が指を鳴らした瞬間。

 激しい閃光と熱風を伴って、再びプラネットプラザ全体が激しく揺れた。

 

 

 

 

 

 




ガンアクションむず過ぎだろ!という愚痴はさておき。

なんとか3バトル終わりました。
順調に昇華が進んでいるようで何よりです。
なんかもう、特に書くことがないのでオマケコーナー入りますね。

オリジナル技
ライトニングメテオ AP3400
♠︎3+♠︎6+♠︎7の3枚を使ったブレイドのコンボ技。
電撃を拳に惑わせた上、さらに腕を鋼鉄化させることで威力を底上げしている。リーチは短いがその分威力は極めて高い。

オリジオン紹介のコーナー

火吹(かぶき)/リザードンオリジオン
転生特典:リザードンの力(ポケモン)
チンピラ御三家のリーダー格。
池袋を中心に仲間と共に暴れていたが、2度にわたる灰司との交戦の末に仲間を2人とも失い、その後はバルジの手でパワーアップを果たす。
メガシンカ習得後は有頂天となり、無関係のアラタ達を襲うが……結果は本編の通りだよ。



着半藤殊宮(きはんふじことみや)/カオスソルジャーオリジオン
転生特典:カオス・ソルジャー(遊戯王)
AMORE隊員・着半藤殊宮が洗脳によって無理やりオリジオン化させられた姿。見た目は燻んだ色の鎧を着た騎士。
2本の剣を使った素早い剣戟が持ち味。

次回 覚悟VS責務
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