【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
今回はボマーを殴るだけです。もちろんAMOREの顔に泥を塗りまくった不届者へも制裁を下さなきゃあいけません!
アクロス達がボマーオリジオンとの決戦を始めたその頃。
今回のイスタ及びアクロス奪取作戦を指揮していたAMORE隊員・
ボマーオリジオンの爆破に巻き込まれた彼は、片腕は折れ、背中は焼け爛れ、身体のあちこちから血を流している。まさしく満身創痍、這う這うの体で逃げていた。
普通なら既に意識を失ってもおかしくない程の大怪我なのだが、苛木は逃げながらも、その顔に邪悪な笑みを絶やしてはいなかった。
「ふふ、ははははっ……」
笑う度に、苛木の口から血が零れ落ちる。中も外も、彼の身体はボロボロを極めている。
2回も至近距離で爆発に巻き込まれながらもいまだに歩ける程度の負傷で済んでいるのは、苛木の生存能力の高さと、彼の着ているAMORE特製の強化制服の性能の合わせ技がなせる事だろう。
「どいつもこいつも何故わからない……⁉︎ これは世界を守るための行いだっ!だというのに、この未開の猿共は……‼︎ 誰が転生者からお前達を守ってやってるというのだ⁉︎ 」
苛木は、折れていない方の腕でプラネットプラザの壁を叩きながら、自らの邪魔をしてきた者達への呪詛を吐きまくる。
本来の目的だったイスタも、アクロスへの人質として捕らえていた女共も、ギフトメイカーの少年にカードにされて奪われてしまった上、
もはや、苛木に勝機はなかった。
だが彼は諦めてはいない。ここを生き延びればまだなんとかなる。とあるルートから仕入れたオリジオン化のノウハウはまだ生かせるし、自身の権限を使えば、失った部下の代わりの人員はいくらでも招集できる。まだ、やりなおせる。
「1年前にイスタを手にいれようとした時だって、なんとかなったんだ。私の権力を使えばこの程度の失態は簡単に無かったことに——」
「なると思ったのか?んな都合のいい話が通るわけないだろう、組織の面汚しめ」
が、運命は彼を見放した。
苛木の野望はここで潰えることとなった。
ずっと俯き気味に歩いていた苛木が顔を挙げると、彼が目指していたプラネットプラザの出口に、誰かが立っているのが見えた。
出口の自動ドアのガラスから覗く街灯の光による逆光と、凄まじい豪雨のせいで、苛木からはその人影の詳細を確認することができない。
「誰だお前たちは……そこを退け!」
苛木は出口を塞ぐように立つその人影達に怒鳴り散らす。
人影達は苛木の言葉に無反応を貫きながら、プラネットプラザ内部に入ってくる。
プラネットプラザ内の照明に照らされ、人影達の素顔が露わとなる。
一人は、ウェーブがかった黒い長髪の、痩せ型の中年男性。コートからズボン、ブーツまで全身真っ白な衣装を身に纏い、上着の胸ポケットにはよく分からないブローチのようなものをつけている。
もう一人は、真っ白なAMORE隊服を着た、高校生くらいの少女。アホ毛のようなものがぴょこんと立った黒い髪に、やけに目立つ白いカチューシャをつけており、ミニスカートから覗かせている太腿には、ホルスター付きのベルトを巻いている。
少女の方はともかく、問題は男のほうだ。
苛木は男の素性を知っている。あの白い服装は間違いなくAMOREの一員なのだが、彼の場合はそれ以上にヤバい。
まるで喉元にナイフを突き立てられたかのような重圧を身に受けながら、苛木はその男の素性を口にする。
「四切宮局長……なんで貴方が……⁉︎ 」
「私がいることに対して何か文句があるのか?むしろ私の方が君に文句を言いたいのだがね」
彼こそがAMOREの創設者にして、組織を束ねる局長だ。
四切宮は、満身創痍の苛木にツカツカと歩いて近づいてくる。土砂降りの雨の中にいたというにも関わらず、その身体は全く濡れていなかった。
「君の悪事は全て調べさせてもらったよ。一年前の事件——
「なっ……何故ソレを⁉︎ 私に繋がるモノは全て完璧に切り捨てたんだぞ⁉︎ 今更私に辿り着けるはずがない‼︎ 」
「まさか君如きが私を欺けると思っていたのかい?だとしたら心外だな。組織内で私がどう呼ばれているのか、知らないわけではあるまい」
「“全能”……ふざけやがって‼︎ 」
苛木は怒りのままに四切宮を突き飛ばそうとするが、突き出した腕は四切宮に触れる事も叶わず、虚空を押すにとどまる。
ばっと後ろを振り返ると、四切宮はいつのまにか苛木の背後に回り込んでいた。まるで瞬間移動でもしたかのような動きだった。
苛木は腰に携帯していた自動小銃を抜くと、ノールックで四切宮目掛けて引き金を引く。しかし四切宮は、まるで埃を払うかのようにウデを一振りするだけで、放たれた弾丸をはたき落としてしまった。
四切宮の人間離れした身体能力に驚きを隠せない苛木。恐怖のあまり自動小銃を取り落とし、四切宮から離れようとする。
「ふざけているのは君の方だろう。我々AMOREは影に生きるもの。転生者絡みの事件を除いて、必要以上に異世界に関与してはならない。だが、君はやりすぎた。世界を守ることを建前に、悪徳転生者との不正な取引に加え、何の罪もない民間人を人質にとっての脅迫……懲戒免職ではすまないだろうね」
淡々と、四切宮は苛木を糾弾する。
AMOREのトップに立つものとして、世界を守る者として、組織の名誉を貶めた裏切り者を決して許しはしない。
苛木は淡々と接近してくる四切宮に狼狽えながらも、必死に自らの言い分をぶつけようとする。
「あ、貴方のぬるいやり方では世界を守ることなんて到底不可能なんだ!ギフトメイカーの台頭によって、転生者犯罪の脅威は日に日に大きくなる一方だ。今までのやり方じゃあ駄目なんだ!本気で世界を守ろうというならば、不穏分子を滅ぼして我々自身が絶対的な力で管理するしかないのだ! 」
「ソレはダメだ。そんなことをしてしまえば、我々も悪徳転生者と同じになる。君がやろうとしていることはただの独裁だ。AMOREは転生の秩序を守るための組織、それ以上でもそれ以下でもない。君はソレを履き違えた。だからこそ、罰しなければならない」
「ふざけるな!こうなったら貴様を始末して私がAMOREのリーダーに——っ!」
あらゆる面で否定されて自棄になった苛木は、四切宮を力尽くで排除すべく襲い掛かる。傷だらけの身体にも関わらず、手にナイフを持ち。血気迫った顔で四切宮に迫る。
しかし、バシバシバシンッ‼︎ と。
苛木がナイフを振りかざそうとした瞬間、どこからか伸ばされてきた光の鞭が、苛木の身体を思い切り跳ね飛ばした。
「がばぶっ⁉︎ 」
跳ね飛ばされながら、苛木は目を動かし、自分を滅多打ちにした人物の姿を捉えようとする。
「往生際悪すぎるんとちゃうか?いい加減諦めなよオッチャン、ウチと局長の手をこれ以上煩わせないで欲しいんやわ」
そこに滑り込む関西弁。
苛木を滅多打ちにしたのは、ずっと四切宮の傍に佇んでいたカチューシャ少女だった。両手に光の鞭を持った彼女は、まるで虫でも見るかのような目で苛木を見ていた。
全身を鞭で滅多打ちにされた苛木は、自動ドアに頭から突っ込んだ。大きな音を立てて自動ドアのガラスを突き破り、土砂降りの野外に転がってゆく。
二度の爆発に加え、今の鞭による乱打。もはや彼に立ち上がるだけの力はなかった。
「なんだっ……何だ貴様は……⁉︎ 」
雨ざらしになりながら大の字になっている苛木に、カチューシャ少女が近づいてくる。
彼女は鞭をしまうと、制服の襟首を見せつける。そこには、赤いメビウスの輪を模したバッジがついていた。
「トクエンか、貴様っ‼︎ 」
そのバッジを見て、苛木は少女の正体を察した。
特務援別部隊、通称“トクエン”。
AMORE隊員の中でも特に優秀な者だけが選ばれる、局長直属のエリート隊員だ。他の部隊や部署とは完全に独立した指揮系統を持ち、局長の命令を除き、基本的に単独で任務を遂行する。余談だが、灰司もトクエンの一人である。
少女は手錠を取り出すと、動けなくなった苛木の手首にソレをかける。すると、苛木の身体は光の粒子となって霧散してしまった。牢獄に転送されたのだ。
四切宮は、元凶を捕らえ終わった少女の元に近づいてゆき、彼女に
「お疲れ様まほろ。君がいてくれたおかげで助かったよ」
「褒めても何もでーへんっての。ウチにかかれば、前線を退いたオッサンなんか朝飯前やっての。てかわざわざ局長が出てこんでもよかったんとちゃうの?」
「アクロスとユナイト、それと相藤レイ君には多大な迷惑をかけてしまったからね。せめてもの償いとして、尻拭いは私自らがしなければならないのは当然だと思うがね」
「そーですか。じゃ、さっさと後始末を済ませて引き上げようや」
まほろと呼ばれた少女は四切宮にそう声をかけると、後始末をすべく、再びプラネットプラザの内部に入ってゆく。
彼女はボロボロになった屋内を歩きながら、AMORE専用の通信端末を起動させる。先程苛木をしばき倒した際に、彼からくすねたものだ。
通信端末の画面には、一人の少年の情報が表示されていた。
「逢瀬瞬16歳、仮面ライダーアクロス……」
まほろが閲覧しているのは、瞬に関するデータだった。
彼女はそれを、懐かしむような顔をしながら閲覧していた。
「ほんま、瞬は根っからのヒーローやなぁ。全然変わらへんわ」
瞬の仮面ライダーとしての活躍を知ったまほろは、そう言って微笑みながら、プラネットプラザの深部へと消えてゆく。
その後ろ姿は、どこか嬉しそうに見えた。
プラネットプラザ・地下駐車場
時刻は午前3時を過ぎ、外の雨はゲリラ豪雨じみた激しさとなっている。
激戦に次ぐ激戦により半壊したプラネットプラザにて、最後の戦いが幕を開けていた。
アクロス、ユナイト、そして唯。自身の行手を阻まんと挑みかかってくる3人を排除すべく、ボマーオリジオンは手のひらで生成した爆弾を投げる。
「何人いようが同じことだ!何度だって爆破する!イスタを壊さなければ、俺の愛は証明できない!」
全てを葬らんとする激しい爆発に紛れて、ボマーオリジオンの魂の叫びが、3人の戦士達にぶつけられる。
しかし、彼らはとまらないし、ボマーの言葉に反応もしない。
元より両陣営にはさしたる因縁はないし、戦う必然性もない。故に、両者間では対話なぞ成り立つ筈もなく、単なる言葉と暴力の応酬に終始する他しかなかった。
容赦ない熱風と衝撃がアクロス達を襲う中、その隙間を縫うようにしていち早く脱したユナイトが、銃型武装・フュージョンマグナムを構えながら、ボマーオリジオンに向かって突撃する。
「散々爆撃は受けたんだ!お前の爆撃の癖は見切っている!」
「クソがっ!」
ユナイトのフュージョンマグナムの銃口から放たれた光弾を、ボマーオリジオンは超小型のプラスチック爆発を投げて防ぐ。
そして、光弾が当たった衝撃で起爆した爆弾の爆風に乗って、ボマーオリジオンは上に飛び上がると、そのまま急降下してユナイトに蹴りをお見舞いする。
「とりゃあっ!」
「ぬうっ………………!」
しかしユナイトは、ボマーオリジオンの足を掴んで跳び蹴りを防ぐと、そのまま力の限りボマーオリジオンの身体を振り回し、後方へと投げ飛ばした。
投げとばされたボマーオリジオンが到達する、その着弾点。素早く次の行動に映るべく、そこに目をやったボマーが見たのは、煤まみれになりながら剣型武装・ツインズバスターを構えたアクロスであった。あの爆発の嵐を、アクロスは耐えきっていたのだ。
滞空しているが故に体勢を整えられないボマーオリジオンの正中線に滑り込むかのように、アクロスのツインズバスターの刃が振り下ろされる。
「つぉあああああああっ⁉ 」
火花と血をまき散らしながら、ボマーオリジオンが地面に叩きつけられる。実際には身体はまだ繋がって入るが、一瞬だけ、身体が真っ二つになったかのよな感覚がボマーの全身を包み込む。まるでスイカ割りのスイカのような気分だ。
「ふざけんなよ……何も知らないくせに俺の前に立ちはだかるんじゃあねえよ!」
地面に叩きおとされたボマーオリジオンは、なおもアクロスに掴みかかろうとする。
そもそもこれは、赤浦健一と青島慈愛の問題なのだ。そこに仮面ライダーもAMOREも、ギフトメイカーでさえも入る余地はない。
それをわかろうとしない他者に、彼は怒りを燃やしている。
全てを灰に返す勢いで、ボマーオリジオンはアクロスの胸倉を掴み、拳を振り上げる。
しかし、
「わったし忘れんなあっ!」
「ぼべっ⁉ 」
仮面ライダーたちよりやや遅れて爆風を突っ切ってきた唯が、ボマーオリジオンの頬を思いっきり引っ叩いた。
ぱっと見は、なんてことのない、生身の人間の平手打ち。しかし今の唯は、もう既にただの守られるべき普通の人間ではないのだ。叩かれたボマーオリジオンは、猛烈な勢いで吹っ飛んで死体の海に頭から突き落とされる。
「唯っ⁉︎ 大丈夫だったか⁉︎ 」
「大丈夫!全然ピンピンしてる!」
「はっ……ばあっ……」
近くに転がされていたAMORE隊員の死体を乱雑に蹴飛ばしながら、死体の海から起き上がるボマーオリジオン。
アクロスは唯の無事を確認すると、ボマーの方に向かって瓦礫の山を降りてゆく。
「レイから聞いたよ、お前のことは」
ここでようやく、アクロスがボマーオリジオンの言葉に反応した。
「その上で、お前を止めるって決めたんだ」
「何様のつもりだよお前……ふざけんのも大概にしろよ」
「レイは俺達に助けてくれって頼んできた。だから、応えなきゃいけないんだよ。それが、逢瀬瞬——仮面ライダーアクロスの生き方なんだ!」
言葉を紡ぎながらボマーのすぐ前まで辿り着いたアクロスは、そのままボマーを思い切り殴りつけた。鈍い音を立てて、立ち上がったばかりのボマーオリジオンが膝をつく。
しかし、彼にも意地がある。ボマーオリジオンは膝をついたまま、アクロスの腹目掛けて拳を叩き込む。
すると、ボマーの拳がアクロスに触れた瞬間、そこを中心として凄まじい爆発が発生した。
「俺は爆破の化身だ。爆弾生成だけで無く、肉体全体を起爆させることだって造作もないんだぜ?」
熱風で全身を焦がされながら、勝ち誇ったように笑うボマーオリジオン。
ここまでの連戦で疲弊した所に、ゼロ距離の爆発をモロに受けたのだ。仮面ライダーといえども、これだけやれば戦闘不能は確実だろう。ボマーはそう思いながらほくそ笑んでいた。
が、
「勝ち誇るのはまだ早いだろ……捕まえたぞ、赤浦!」
ガシリと。
ゼロ距離での爆発をモロに喰らったはずのアクロスは、倒れることなく、ボマーオリジオンの腕を掴んでいた。
よくみると、アクロスの全身がまるで鉄のような光沢と質感に変わっている。ボマーオリジオンはそれをみて、ある可能性に至る。
「メタル化っ……!そうか、ブレイドの力を使えるという事は——!」
「そうか、お前転生者だからわかるんだよな……俺より詳しいもんなぁ……ブレイドの力についてさっ!」
今のアクロスは、ブレイドの力を使うことができる。ならば、ブレイドの持つラウズカードの力を使うことができるのは容易に想像がつく。
ブレイドの所持するラウズカードには、全身を硬質化させる“♠︎7:METAL”のカードが存在する。アクロスはその力を使い、爆発を防いだのだ。
「今だ2人とも!」
ボマーオリジオンを掴んだまま硬質化を解除したアクロスが、後ろに向かってそう叫ぶ。
するとアクロスの背後から、ユナイトと唯が同時に飛びかかってきた。
「てりゃあっ!」
「なんかすごい風圧パンチっ!」
ユナイトのフュージョンマグナムによる射撃と、唯の正拳突きによって発生した凄まじい風圧が、アクロスの肩越しにボマーオリジオンに命中する。
ボマーオリジオンは血反吐を吐きながら吹っ飛ばされてゆき、地下駐車場の柱にぶち当たって地面に倒れる。
「トドメだッ!」
ヨロヨロと立ち上がったボマーオリジオンに、間髪入れず殴りかかろうとするユナイト。
しかしその拳は、ボマーオリジオンに受け止められてしまう。
「調子乗るのも大概にしとけよ。ハナから俺たちは対話する必要がない関係性だ。つまんねー会話のキャッチボールよりかは、暴力と主張のドッヂボールの方がお似合いだとおもわねーか?」
「何が言いたい?」
「殺し合い継続だっつってんだろーがこの馬鹿どもがっ!シアーハートアタック、起動せよっ!」
「後ろだ、伏せろっ!」
ユナイトは言葉を受けて、アクロスは反射的に身を屈める。
すると、瓦礫の山をぶち破りながら、けたたましい咆哮を轟かせ、巨大な骸骨を乗っけたキャタピラの怪物が現れた。
ボマーオリジオンはユナイトの手を振り払ってそいつに飛び乗ると、その怪物——アナザー・シアーハートアタックに命令する。
「焼き払えっ!」
ボマーオリジオンがそう命ずると、アナザー・シアーハートアタックは、悍ましい唸り声を上げながら、空っぽの眼孔や鼻腔、口内といった、至る所から灼熱の炎を放出しだした。
一瞬にして、半壊した地下駐車場が火の海に包まれ、死体と瓦礫と炎が散乱する地獄絵図が生み出されてゆく。まるで、絵の具まみれのキャンバスの上から更に大量の絵の具を塗りたくるかのような暴挙だ。
「くっ……」
「熱いっ……めちゃくちゃ熱い!」
全方位から迫り来る凄まじい熱波に、アクロスも唯も顔をしかめずにはいられない。
そんな彼らの姿を見下ろしながら、口から血を垂らしたボマーオリジオンは、両手に爆弾を手に持って高らかに叫ぶ。
「さあ、第二ラウンドと行こうか……邪魔ばっかりでいい加減ウンザリしていたんだ。俺はお前らを殺して先に行く!こんなクソッタレた障害物レースなんぞ、全部消し炭にしてやるよ!」
アナザー・シアーハートアタックの火炎放射により、地下駐車場は火の海と化した。
そして、その熱波は、離れた位置にいたアラタ達にも容赦なく襲いかかってきた。
「あっつぅ⁉︎ アカンこのままじゃ焼け死ぬぅ!」
「カード燃えるって!やばいって!」
「兎に角逃げるぞ!皆、俺についてこいっ!」
このままではみんな仲良く真っ黒焦げ不可避だ。
そんな結末は当然嫌なので、剣崎の先導の元、アラタ達は来た道を引き返して地下駐車場を後にする。
火の手が回っておらず、まだ出口が塞がっていない方へと走る一同。
その途中、セルティがある事を思い出していた。
『私はあれを知っている——アレは今朝のヤツだ 』
「知ってるのセルティ?」
「朝わたしたちを追ってきたバケモノだよ。あれっきり姿を見せないと思ったら——あれ、ボマーの一部だったんだね」
「一部……⁉︎ 」
律刃の言葉を聞いたアラタは、地下駐車場の出口へと通じるスロープを駆け上がりながら、熱波に包まれた後方を振り返る。
(マジで規格外すぎんだろっ……!だいたい、転生特典に“キラークイーン”を持ち込むとか馬鹿だろ⁉︎ 逢瀬も唯も、あんなのに勝てるのかよ……⁉︎ )
転生者であるアラタは、ボマーオリジオンの転生特典を知っている。それ故に、恐怖せずにはいられない。
しかし、友としては、彼らの勝利を願わずにはいられない。
どんな無茶な相手だろうと絶対に撃ち破り、そして皆で帰るのだ。そう、約束したのだから。
(頼む……死ぬんじゃねーぞお前ら……!)
望みは託された。
それが叶うか否かは——直に明らかとなる。
プラネットプラザ 地下駐車場
火に包まれ、原型を留めないレベルで崩壊した地下駐車場。
そこに唯一立つ人影があった。
「ははははははははっ!やったぞ!もう俺を止める奴は誰もいねえ……!全て爆破して、俺の愛の正しさを証明するだけなんだっ!」
アナザー・シアーハートアタックの上に乗りながら、ボマーオリジオンは大笑いしていた。
先程から、プラネットプラザ全体が小刻みに振動している。激闘に次ぐ激闘の余波であちこちがボロボロになっているため、建物自体の耐久性に限界がきているのだ。このままだと、数分以内にプラネットプラザは倒壊するだろう。人のいない閉店後でよかったというべきか。
ここまでやったのだ。仮面ライダー共も、もう死んでいてもおかしくないはずだ。眼下に広がる火の海を眺めながら、ボマーオリジオンはそう思っていた。
が、彼らのしぶとさはボマーの想像を遥かに超えていた。
「ふぅ……」
「⁉︎ 」
むくりと、火の海の中で何かが立ち上がった。
それを見たボマーオリジオンは、信じられないものを見たような顔をする。
彼の視界の先、火の海の中で佇むモノ。それは、ひとりの少女だった。
「………………」
ボマーオリジオンは、その少女を知っている。
諸星唯。
転生者でもないにもかかわらず、仮面ライダー達と共に自身に食らいついてきた、得体の知れない存在だ。
彼女の服装は、先程までの肩出しパーカーとはうってかわり、ぴっちりしたレオタード風の衣装の上にメカめかしい装甲がくっついたという、まるで何処かの変身ヒロインかなんかの様な格好となっていた。
誰もがそれを見れば、笑ってしまうだろう。
しかしボマーオリジオンは、その変化を真剣に受け止めていた。アレが単なるコスチュームチェンジのはずが無い。きっと何かがあるはずだ。
「なんだ小娘……なんなんだよ、その姿」
「私も知らないよ」
ボマーの言葉に、短く返す唯。
その顔は、未だに闘志に燃えていた。
「でも、これがきっと私の力なんだよね。なら私は、精一杯振るわせてもらうよ」
それは、独り言に近しい言葉だった。
まるで何かを確かめるかのような。はたまた自分に言い聞かせてているかのような。そんな、ただの通過儀式であった。
そして、唯の言葉に呼応するかのように、火の海の中から、新たな人影が立ち上がる。アクロスとユナイトだ。装甲の表面に焦げ跡を作りながらも立ち上がる2人のライダーに、ボマーは思わず身震いしてしまう。
「お前らまで……なんで……」
「倒れるわけないだろ……コッチもお前を倒して皆で帰るんだよっ!」
「ようやくお前を裁ける。この騒乱も、片がつく」
《FINAL UNION PUNISH!》
ユナイトは、腰のホルダーから龍騎ライドアーツを取り出すと、フュージョンマグナムの銃身上部のスロットに装填する。
「フゥ————————-」
唯は、腰を深く落として、拳を構える。
その拳には、緑色の光が集まりつつあった。
《RAUZING CROSSBREAK!》
アクロスはドライバーに装填していたブレイドライドアーツを抜き取ると、ツインズバスターの柄にあるスロットにブレイドライドアーツを装填し、剣を構える。
すると、ツインズバスターの刀身に、青白い稲妻が纏わりつき始める。
「くそっ!アナザー・シアーハートアタック!もう一度焼き払えっ!」
「お前、自分の愛を証明したいんだったよな」
ライダー達が必殺技を撃とうとしているのを見て、慌ててアナザー・シアーハートアタックに命じて今一度焼き払おうとするボマーオリジオン。
しかし、そんな彼の声を、アクロスが遮る。
アクロスはツインズバスターを構えながら、ボマーオリジオンの全てを否定する言葉を放った。
「悪いけど、お前の愛は叶わないよ、ボマー」
刃と共に突きつけられる現実。
次の瞬間。
電撃を纏った斬撃と、龍のオーラを纏ったビームと、緑の光に包まれた衝撃波。
それら全てが同時に、ボマーオリジオンの身体を貫いた。
そして、
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉︎ 」
ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ‼︎‼︎‼︎‼︎ と。
凄まじい音を立てて、ボマーオリジオンは爆発した。
次回、池袋編ラストです。
■ボマーオリジオン/赤浦健一
転生特典:キラークイーン(ジョジョの奇妙な冒険)
イスタ開発に携わった科学者・赤浦健一が変身するオリジオン。いつギフトメイカーと接触したのかは不明。
爆弾を自在に生み出す能力を持つ上、素の戦闘能力も非常に高い。
奥の手として、巨大な髑髏戦車であるアナザー・シアーハートアタックを生成する能力を持つ。アナザー・シアーハートアタックは、触手や火炎放射による高い全滅能力を持つため、単騎での撃破は至難の業だ。
次回 そして朝は訪れる