【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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●前回のあらすじ
・古城、堕天使3人組に力を貸す
・瞬、飛鳥の願いを引き受ける
・ラーマオリジオンの正体はまさかの……

バルジ君のヘイト稼ぎ回になります。
みんなどしどし彼を嫌いましょう。


第42話 ひとりぼっちな君への贈り物

 

「……なんで俺達、こんなところにいるんだろうか」

 

 やたらとカラフルな景色を目の前に、ベンチに腰掛けていた逢瀬瞬はそうぼやいた。

 

「流れ的にさ、飛鳥のお姉さん探しに移行する筈だったよなコレ」

「そうっすよね」

 

 瞬の隣に座る御手洗倫吾が相槌を打つ。その目が死んでいるのは、多分負傷のせいではない。

 少しばかりの間を置いて。

 浮かれに浮かれた人混みの中で、瞬は思いの限り叫んだ。

 

「なんで俺達遊園地であそんでるんですかねえっ⁉︎ 」

 

 


 

 

 

 フェニックスワンダーランド。

 瞬達の暮らす街にある、多彩なアトラクションとステージショーが人気のテーマパーク。

 正直言って瞬は、このテーマパークの存在を全く認知していなかった。

 おそらくだが、艦娘やデュエルモンスターズと同様に、次元統合の影響で出現したのだろう。フィフティから説明はされたといえども、自分の過ごす世界が知らない間に全くの別物へと変貌していく様子には、未だ慣れない。

 そんな話はさておき。

 現在瞬は、唯を本気で叱りたいと思っていた。

 

「むんぎゃあああああああああああああああああああっ! 」

「たーまやーっ! 」

「それ花火のかけぬぎゃあああああああああああああ口から色々と吐きそうだあああああああああああああああっ⁉︎ 」

 

 肝心の唯は、目の前のジェットコースターを満喫してやがった。

 おまけにクラスメイトの志村優始(しむらゆうし)九瀬川(くせがわ)ハルまで呼んで一緒に遊び出す始末。

 飛鳥はというと、瞬達の側ですっかりいじけてしまっている。切実な願いを胸にやってきた筈なのに、遊園地で遊び呆けている。そんな現状に耐えきれないのだ。

 と、その時。

 

「いやー楽しかったなぁ! よし次はミラーハウス行こうぜ、最下位はポップコーン全員分を奢りねっ! 」

 

 ジェットコースターを堪能し切った唯達が降りてきた。

 ちなみに志村とハルは、無理矢理ジェットコースターに乗せらたせいで気分を悪くしており、向こうのベンチで死にかけている。

 瞬はすかさずベンチから立ち上がり、唯に詰め寄ってゆく。

 

「んなことしてる場合かよ⁉︎ 俺達はバルジを探してボコすために出かけたの! 決してゴールデンウィーク最終日の思い出づくりのためなんかじゃないんだからねアンダスタンッ⁉︎ 」

「殴らないで馬鹿になるからっ‼︎ 仕方ないじゃん、バルジどころかギフトメイカーの奴ら、基本的に神出鬼没で探しようがないじゃん⁉︎ フィフティはどっか行っちゃったし、もうなんかどうしようもなくないっ⁉︎ 」

 

 開き直りやがる唯を、瞬と飛鳥がボコボコ殴りまくる。

 10年以上一緒にいたが、こいつがここまで能天気だとは思わなかった。本気で泣きたくなる。

 

「そ、それにさ……飛鳥ちゃんがお姉さん取り返した後の話も考えるべきだよ」

「何? 言い訳の続き? 」

「飛鳥ちゃんのメンタルケアだよ。飛鳥ちゃんはバルジに何もかも奪われて、すっごい傷付いている。だから、それを少しでも癒せないかなーって……」

「それ唯さんが遊びたいだけですよね。小学生だからって馬鹿にしないでもらえます? 」

 

 飛鳥にそう言われて固まる唯。

 女子小学生に図星を突かれて固まるとか、恥ずかしくないんですか?

 一通り唯にお灸を据え切った瞬は、飛鳥に平謝りする。

 

「ごめんな飛鳥、俺がコイツをとめてやってたら……」

「ホントそうですよね。彼女の手綱を握れないとか、仮面ライダーとして恥ずかしくないんですか? 」

 

 その時だった。

 何気ない少女の一言が、ふたりにクリティカルヒットした!

 

「なななな何を言っているのか飛鳥ちゃん⁉︎ 

別に私と瞬はそんな関係じゃあないんだからねーっ⁉︎ あんまりあることない事言うと背筋捻りパンみたいにしちゃうけどいいかなーっ⁉︎ 」

「ままま間違ってもコイツと付き合うとかあり得ないからなっ⁉︎ 今以上に疲れるのが目に見えてる、俺が5人居ても足りねーよ! 」

 

 目に見えて狼狽し出す唯と瞬。

 その様子はまるで、システムのバグったロボットか何かのようにしか見えなかった。

 あまりにもコテコテすぎて、いつの間にか復活していた志村とハルも、思わずツッコミをいれてしまう。

 

「唯ちゃんさあ、毎日のように逢瀬くん家に上がり込んでる時点で、説得力ゼロどころかマイナスだよね」

「逢瀬さんも逢瀬さんで、なんだかんだ不平不満言いながら唯さんと付き合い続けているあたり、だいぶズブズブだと思いますけどね」

 

 オーバーキル!

 逢瀬瞬と諸星唯は倒れたっ!

 瞬と唯はダウンしてるし、倫吾は相変わらず包帯まみれだし、志村は吐き気がぶり返してベンチと一体化しているしで、もう何もかもめちゃくちゃだった。

 その惨状を見た飛鳥の口から、無意識のうちに笑いがこぼれる。

 

「っははは」

「あれ、飛鳥ちゃん笑った? 」

「わ、笑ってないです! 幻聴幻覚ですよきっと! 」

 

 ぽかぽかと倫吾を叩きながら必死に否定する飛鳥。

 と、ここでずっと空気だったヒビキとネプテューヌが、飛鳥の肩に手を置きながら語りかけてきた。

 

「子供は笑っててなんぼだよ。笑顔を恥ずかしがる必要なんてナッシング、笑いたきゃ笑えばいいのさっ」

「うんうん、やっぱり人の笑顔は元気をもらえるね。これだからお人好しはやめられないんだよ」

 

 いやあんたらも子供ですやん。

 復活した瞬は、しばらくネプテューヌに冷めたような目を向けた後、ぼそりとこう言った。

 

「……さっきまでずっとコーヒーカップで目を回していたガキどもがなんか言ってるよ」

「黙れ女神キックッ‼︎ 」

「あぶぶばっ⁉︎ 」

 

 直後。

 自称女神の飛び蹴りが瞬の腰を貫いた。

 

 


 

 

 その頃、フェニックスワンダーランドにてひとりはぐれた湖森は。

 

「……許さねえからな兄貴」

 

 ソフトクリーム片手にショーを眺めながら、殺気のこもった声でそう呟いていた。

 

 


 

 

『よーしみんなーっ! 合言葉はわかってるよねー? なら思いっきり叫んじゃおっか! せーのっ、わんわんわんだほーいっ‼︎ 』

「「「「わんだほーいっ‼︎ 」」」」

 

 ジェットコースターの前でひとしきり騒ぎ切った瞬達は、野外にあるショーステージを訪れていた。

 ステージでは今まさにショーの真っ最中であり、主役である勇者の少女が、魔王に挑むにあたり観客席に向かって呼びかけているところだ。

 

『ぬーっはははははっ‼︎ そんなくだらない茶番で、この魔王サカツ様に勝てると思っているのかぁっ‼︎ 』

『みんなからの声援があれば、勇者えむは百人力なのだーっ‼︎ いくよ皆っ、力を貸してっ! 』

「おーっ! いっちゃえ勇者えむーっ! 」

「わんだほーいっ! ほら飛鳥ちゃんも応援しないとっ」

「え、えーと……が、がんばれぇー……」

 

 すっかりノリノリのヒビキ達に引っ張られるように、飛鳥も戸惑いながら声援を送る。

 その顔には、ぎこちないながらも笑顔が浮かべられていた。

 

「あの子達……確か、“ワンダーランズ×ショウタイム”だったかな。僕らと同い年なのに凄いよね。おまけに魔王役の天馬司(てんまつかさ)くんはクラスメイト……マジで凄いなぁ」

「語彙力なさすぎて全然褒めてるように聞こえないんですけど」

 

 志村とハルは、“ワンダーランズ×ショウタイム”の面々が同級生であるという点に驚いている模様。

 もちろんその記憶は、次元統合によって改変された後の記憶であるのだが、転生者でもなんでもない2人はそれに気づけない。

 そして、志村や飛鳥達から一列後ろの席。

 瞬と唯と倫吾は、ショーを眺めながら飛鳥の境遇について話し合っていた。

 

「AMOREに保護されてから、飛鳥ちゃんはひとりぼっちだったんすよ。お姉さん——薫さんは保護した当初からずっと意識不明でしたし、2人とも保護の名目で施設内に閉じ込められていましたから」

「……可哀想だね」

「俺もそう思って、ちょくちょく飛鳥ちゃんのいる施設に顔出しては、AMOREの任務で行ったさまざまな世界の話をしてあげてたんすよ。その時についうっかり、灰司先輩や瞬さんの話をしてしまったら、勝手についてこられてこの有様っすよ……」

「お前は秘密組織とかにいるべき人間じゃないと思うぞ」

 

 灰司と同様に、倫吾の口の軽さを心配する瞬。彼の辞書には守秘義務という言葉は恐らく存在しないのだろう。

 でも倫吾の口の軽さのおかげで、結果的に飛鳥は羽を伸ばす事ができている。

 あくまで結果論だが、その点だけはいいのかもしれない。

 

「……多分、灰司も同じなんだよな」

「いきなり何、どうしたの瞬」

「灰司も、バルジに全てを奪われた。飛鳥とは違って、正真正銘のひとりぼっちになった。そりゃあ、復讐しなけりゃ生きていけないよな……」

「そうっすよねぇ。灰司先輩はあんまり自分の事語りたがらないっすから、俺もその辺は噂でしか知らないんすよね……」

 

 何もかも失い、友達と遊ぶ事も家族に甘える事も出来ず、身を守る為に施設内に軟禁される日々。

 飛鳥の境遇は、大の大人でも辛い筈だ。それを10歳で経験している彼女は、それ以上に苦しい筈なのだ。

 だから、こうして飛鳥が遊園地で楽しんでくれている事が喜ばしい。ここに彼女の姉がいれば、飛鳥の笑顔はもっと良いものになっているだろう。

 

「……何としてもでも2人を再開させなきゃ、だよな」

「うん。たったふたりの姉妹だもん、離れ離れのままなんて、残酷にもほどがあるよ」

 

 ショーを観て笑う飛鳥の様子を見て、改めてそう思う2人なのだった。

 

 


 

 

 それからはもう、瞬達はめちゃくちゃに遊びまくった。

 お化け屋敷では、恐怖のあまり気絶した志村を背負う羽目になった。

 スペースショットでは、予想以上の加速に全員揃って白目を剥いた。

 ミラーハウスでは、壁にぶつかりまくってたんこぶをたくさん作った。

 そうしているうちに午後4時になっていた。

 背伸びをしながら、唯が満足そうな顔をする。

 

「いやー楽しかったよねー」

「目的忘れてないよな? バルジと飛鳥の姉を探すためにわざわざ出てきたんだからな? 」

「忘れてない忘れてない……うん」

 

 いや、その顔は絶対に忘れているだろう。

 瞬は心の中でそう突っ込んだ。

 

「あれ、ちびっ子どもはどうした? 」

「トイレっすね」

「そっか」

 

 現在は、ヒビキ・飛鳥・ネプテューヌのちびっ子3人のトイレ待ち。彼女達のトイレを済ませたら、瞬達はフェニックスワンダーランドから退園するつもりだ。

 欠伸をしながら3人を待つ瞬。

 そこに、

 

「おーにーいーちゃーんんんんっ⁉︎ 」

「っ⁉︎  」

 

 突然、とてつもないさっきを感じ取った瞬。

 慌てて振り返ると、そこには怒りの形相の妹・湖森の姿があった。

 フェニックスワンダーランドに来て早々に逸れてしまいそれっきりだったので、瞬は心配していたのだ。

 

「あ、湖森……お前今までどこ行ってたんだよ? ここに来て早々にいなくなっててさ……一応心配s

「白々しいんじゃこの野朗っ! 」

「ぎゃあああああああああっ⁉︎ 」

 

 瞬間、湖森は手に持っていた土産袋でフルスイングで瞬をぶん殴った。

 中身は不明だが、相当に中身が詰め込まれた土産袋をモロに鳩尾に食らった瞬は、土産袋の重力と遠心力を一気にその身に受け、派手に吹っ飛ばされる。

 そして、地面に盛大にぶっ倒れた瞬の体を、湖森は思いっきり踏みつけながら、思いの丈を言葉にし始めた。

 

「全然探す気配すらなかったよね⁉︎ L●NEめちゃくちゃ送ったけど既読ついてなかったよね⁉︎ おかげ様でこっちは、修学旅行の自由行動で孤立する陰キャ男子の気分なんだわっ! 少しは妹大切にしてくれっ! 」

 

 ぐうの音も出なかった。

 完全に鎮圧された瞬の様子を見て、志村とハルは震え上がっていた。

「湖森ちゃんも意外と怖いんだね」

「女性はみんなそんなもんですよ」

 

 瞬が助けを求めてきているが、ほとんど瞬が悪いので知ったこっちゃない。

 無情にも、瞬は湖森からボコボコにされ続けるのであった。

 

 


 

 

 その頃。

 用を足し終えて手を洗っていた飛鳥達。

 

「ねえ」

「どうしたの、いきなり」

 

 ふと、手を洗いながら、ネプテューヌが尋ねてきた。

 

「飛鳥ちゃんの世界ってどんな感じだったの? 」

「それを聞いて何になるんですか。傷口抉るのが目的だったりしませんよね」

「いやいや滅相もないっ‼︎ ただ知りたいだけだって! 」

 

 飛鳥に疑いの目を向けられて取り乱すネプテューヌ。

 飛鳥としては、ネプテューヌの質問には、できれば答えたくない。色々と思い出してしまい、辛くなるからだ。

 しかし、ここでヒビキまでもが、ネプテューヌと同じように好奇心を輝かせながら訊いてきやがった。

 

「私からもお願い。飛鳥ちゃんのことをもっと知りたいの」

「やめてよ……ちょっと考えれば、話したくないって分かるでしょ。何考えてんの……」

 

 2人を突き放そうとする飛鳥。

 しかし、ヒビキは飛鳥の手を取り、更に懇願してきた。

 

「飛鳥ちゃんの世界を覚えているのは、飛鳥ちゃんとお姉さんだけでしょ? それってあまりにも……寂しいなって思ったんだ。だから知りたいの、飛鳥ちゃんの生きていた世界を。それが、無くなってしまった飛鳥ちゃんの世界に対する、一種の“弔い”になると思うから」

「……………」

 

 ヒビキの言葉を受け、考えこむ飛鳥。

 飛鳥としては、失ってしまった過去を思い返すのは辛い事なのだが、それを自分の中にしまいこみ続けて風化させたくない、という気持ちも確かに持っている。

 ヒビキは、そんな飛鳥の思いを見抜いていたのだ。

 

「……はぁ」

 

 飛鳥はひとつ、ため息をつく。

 そして、ぽつりぽつりと、自分が生きていた世界のことを話し始めた。

 

「…………わたしの世界は、普通だったよ。不思議なことは何にも起きないけど、退屈はしていなかった。お父さんはちょっと馬鹿だけど家族思いだったし、お母さんは怒ると怖いけど、どんなときもわたしとお姉ちゃんを大事に思ってくれていた」

 

 ひとつひとつ、丁寧に噛み締める様に。

 なくなってしまったものを語る飛鳥の瞳には、涙が浮かび始めていた。

 

「クラスメイトの篠田(しのだ)くんはスポーツが得意で格好よくて、友達のかさねちゃんは頭が良くて、よく勉強を教えてもらっていたな。近所のタミエ婆さんは歳の割にはひょうきんだったし、隣に住んでるまーちゃんは兎に角わんぱくで、お姉ちゃん共々手を焼かされたっけ」

 

 話す度に、飛鳥の瞳から涙が流れる。

 止めようと思っても止められない。それらが、もう二度と戻ってこないものだと知っているからだ。

 

「そして、お姉ちゃんは…………ドジで人見知り気味でちょっと馬鹿だけど、一緒にいると安心できる、自慢のお姉ちゃんなんだ」

 

 ポロポロと涙を流しながら、飛鳥は自らの心中を搾り出すかの様に語った。

 やがて、悲しみに耐えきれなくなった飛鳥は、大泣きしながらその場に崩れ落ちる。

 

「前まではなんとも思っていなかったけれど、今となっては……全部全部、かけがえのないものだったんだ…………‼︎ それをバルジ(あいつ)は奪った! 壊した! そんなの……許せる訳ないじゃん……っ! 」

「お、落ち着いて飛鳥……ってのは無理だよね」

「ご、ごめん飛鳥ちゃん。悲しい事思い出させちゃって……」

 

 最後まで話を聞いたヒビキとネプテューヌは、予想以上に大泣きしてしまった飛鳥を宥める。

 そしてヒビキは、悲しみと憎しみで泣き崩れている飛鳥の身体を、そっと抱きしめた。

 

「大丈夫……なワケないか」

「…………ごめん、感情的になりすぎた」

「ううん、憎んで当然だよ。飛鳥ちゃんにはその権利がある」

「……話を聞いてくれてありがとう。これで少しでも……わたしの世界を覚えててくれたらいいかな」

「忘れないよ……絶対に忘れないから」

 

 ヒビキは飛鳥を抱きしめながら、噛み締めるようにそう約束する。ネプテューヌもそれに同意するように、強く頷く。

 それからしばらくの間、辺りには飛鳥の嗚咽が繰り返されていた。

 ———そこに、邪魔者が現れる。

 どこからか、ガタリという音がする。

 

「ミツ、ケタ」

「なっ———⁉︎ 」

 

 音のした方を振り向く少女達。

 そこでは、灰司に吹っ飛ばされていたラーマオリジオンが、トイレの窓から顔を覗かせていた。

 それを見た飛鳥は、心臓が縮み上がる。足がすくんで、その場から動けなくなってしまう。

 

「あ、ああ…………‼︎ 」

「ミツケタ……ミツケタ……オイデ、オイデ……‼︎  」

 

 ラーマオリジオンが窓枠に手をかけると、ミシミシミシッ‼︎ と激しい音を立てて、窓枠が周囲の壁ごと粉々に砕けてしまった。

 壁が一面丸々崩れたことで、やたらと開放的になった女子トイレ。

 ラーマオリジオンは譫言(うわごと)の様に同じフレーズを繰り返しながら、飛鳥達の方へと歩み寄ってくる。

 

「逃げよう飛鳥ちゃんっ! ここで死んだらお姉さんに会えなくなるって! 」

「そうそう‼︎  足を動かして‼︎ 兎に角今は逃げ一択だからっ! 」

「あ、あ……うん」

 

 足がすくんで動けない飛鳥を、ヒビキとネプテューヌが引きずる様にして動かしながら、オリジオンから逃げる。

 逃げ出した3人を見たラーマオリジオンは、背中に背負っていた槍を取り出すと、それをぐっと構え、投げの姿勢に入る。

 ラーマオリジオンは、槍を投擲するつもりなのだ。

 

「ニガサナイ……アスカ……ッ‼︎ 」

 

 ぐっと力を込め、ラーマオリジオンは槍を投げる。

 オリジオンの手から離れた槍は、螺旋軌道を描きながら飛鳥の頭目掛けて飛んでゆく。

 が、

 

「とりゃあっ‼︎ 」

 

 ラーマオリジオンが投げた槍は、トイレを飛び出したあたりで、突然、横から飛んできた謎の鉄パイプに弾かれて地面に落ちてしまう。

 

「ヌウウウウウウウウウウウウウウウウウッ⁉︎  」

 

 怒りのこもった呻き声をあげながら、トイレから飛び出して辺りを見渡すラーマオリジオン。

 そこに、

 

「ホラァッ‼︎ 」

「ガブッ⁉︎ 」

 

 背中への一撃をうけ、ラーマオリジオンはよろける。

 が、オリジオンはすかさず背中の薙刀を手に取ると、そのまま自分の周囲を斬り払うように一回転した。

 しかし、薙刀には何かを切った感触はない。

 困惑しながら辺りを見渡すラーマオリジオン。

 邪魔者は、目の前にいた。

 

「お前が男なのか女なのかは知らねーけど、女子小学生のトイレ覗くとか完全に事案だろ」

 

 逢瀬瞬。

 クロスドライバーを腰に巻いた彼が、ラーマオリジオンの前に立ち塞がっていた。

 彼が、鉄パイプで投擲槍を弾き、オリジオンの背中を蹴飛ばした張本人。

 

「これ以上飛鳥に悲しい思いをさせてたまるかよ……覚悟しろよ。変身っ! 」

《CROSS OVER! 思いを、力を、世界を繋げ! 仮面ライダーアクロス! 》

 

 瞬は、バックル右スロットにアクロスライドアーツを装填してアクロスに変身すると、すぐさまラーマオリジオンに攻撃を仕掛ける。

 

「ジャマダッ‼︎ ジャマダッ‼︎ 」

 

 ラーマオリジオンは邪魔が入った事に怒り、アクロスを抹殺せんと、炎を纏わせた薙刀を振り回してくる。

 アクロスは、腰に帯刀していたツインズバスター・ソードモードを取り出し、その刀身で薙刀を防ぐと、そのまま目一杯力を込め、薙刀を押し返す。

 

「コシャクナ……ッ‼︎ 」

 

 初撃を防がれたラーマオリジオンは、今度は口から灼熱の炎を吐き出した。

 

「うわ熱っ⁉︎ 」

 

 アクロスは咄嗟に横に転がって火炎放射を回避する。

 全く掠ってすらいないというのに、凄まじい熱気が襲いかかってくる。恐らく、あの火炎放射を生身で受けていれば即死だっただろう。

 

「危ねえだろっ‼︎ 骨まで溶かす気かっ‼︎ 」

「ヌブゲッ⁉︎ 」

 

 地面を転がったアクロスは即座に立ち上がると、一気にラーマオリジオンとの距離を詰め、その腹部にツインズバスターの斬撃を叩き込む。

 腹を切られたラーマオリジオンは、まるで血を噴き出すかのように、口から断続的に炎を漏らしながら地面を転がる。

 

「速攻で終わらせてやる。こっちは予定が立て込んでいるんでな」

 

 さっさとオリジオンを倒して飛鳥の姉探しに踏み込みたいアクロスは、早くも必殺技でフィニッシュを決めようとする。

 ベルトに付いているライドアーツホルダーからブレイドライドアーツを取り出し、ツインズバスターの柄の先端にあるスロットに装填する。

 が、

 

「シャアアアアアアアアアアアッ‼︎ 」

「なっ⁉︎ 」

 

 ラーマオリジオンは倒れたふりをしながら、背中に背負っていた巨大なブーメランを手に取ると、それをアクロスに向かってぶん投げたのだ。

 完全なる不意打ちが炸裂し、アクロスはツインズバスターを取り落として吹っ飛んでゆく。

 投げられたブーメランは大きく弧を描きながら、あたりの建造物やアトラクションを破壊する。

 

「ジャマスルナ、ッテイッタヨネ」

「……するに決まってる。お前が何をしたいのかは知らないが、暴れさせるわけにはいかないんだ」

 

 ラーマオリジオンは、手元に戻ってきたブーメランを再び投げようとする。

 そこに、

 

「てーりゃあっとなっ! 」

「ブッ⁉︎ 」

 

 飽きるほど聞いた声と共に、ラーマオリジオンの後頭部に蹴りが炸裂した。

 その衝撃で、ラーマオリジオンの手からブーメランがこぼれ落ち、オリジオンの身体は地面にぶっ倒れる。

 そして、ラーマオリジオンの背後から、誰かが姿を現す。

 

「さーんじょうっ‼︎ こっからは諸星唯バトルモードのステージだいっ! 」

 

 アクロスには分かっていた事だが、それは唯だった。

 池袋の時と同様に、ぴっちりしたレオタード風の衣装の上にメカめかしい装甲がくっついたという、まるで何処かの変身ヒロインかなんかの様な格好となっている。

 改めて見ると、中々に目のやり場に困る格好だ。どうにかならないものだろうか。

 

「瞬、加勢しにきたよっ! 」

「唯……他の皆は? 」

「もう逃げたよ。飛鳥ちゃん達は倫吾に任せてきた」

 

 それなら安心だ。

 アクロスと唯は、立ちあがろうとしているラーマオリジオンと対峙する。

 ここからが本番。

 だが、2人ならば負ける気がしないと、不思議とそう思っていた。

 

「お前大丈夫なのかよ、まだ戦い慣れてないんじゃないのか? コイツかなり強いぞ」

「足手纏いになる気はさらさらないからねっ! 一気にぶん殴って終わらせるよっ! 」

 

 


 

 

 その頃志村達は、物陰からアクロスと唯の戦いを見ていた。

 

「あれが唯ちゃんの新しい力……暴走してた印象しかないから、なんだか新鮮だな」

「志村さんは暴走の場に居合わせていましたからね、そう感じるのもむりはないでしょう」

 

 唯のバトルモード(仮称)を初めて目の当たりにした志村とハルは、それに興味津々の模様。

 倫吾も倫吾で、ヒビキ達の肩に手を置きながら、アクロスの戦いを見守っている。

 

「すごいな……短期間でここまで成長するなんて。苛木の奴が焦る訳っす」

 

 資料でしか知らなかったアクロスの戦いを目の当たりにし、倫吾は改めてその凄さを実感する。

 まだ戦い始めて1ヶ月弱しか経っていないにも関わらず、かなり戦い方が様になっている。ひょっとすると、灰司に匹敵するかもしれない。

 そんな人物を敵に回していた事に、今更ながら恐ろしさを感じる。

 

「っと、考えごとに集中しすぎたらダメっす。今は飛鳥ちゃん達を守ることに集中しないと。安心するっすよ飛鳥ちゃん、あの怪物は仮面ライダーが絶対に———」

 

 飛鳥を元気付けながら、倫吾は後ろを振り返る。

 そこに、飛鳥の姿はなかった。

 

 


 

 

 アクロスと唯がラーマオリジオンと交戦を開始してから、暫く経った頃。

 

「ようアクロス、せっかくのゴールデンウィークだってのに、派手に無様に戦ってるねぇ……よくもまあ飽きないもんだ」

 

 ありとあらゆるものを馬鹿にしているかの様にしか聞こえない声が、上の方からした。

 アクロスはラーマオリジオンと掴み合いになりながら、声のした方を見る。

 

「あそこにいるのは……バルジ⁉︎ 」

 

 紫のライダースーツの上に白衣を羽織り、狂気的な笑みを絶えず浮かべている一人の男———バルジだ。

 彼は、メリーゴーランドの屋根の上に腰掛けながら、アクロスとラーマオリジオンの戦いを見物していた。

 

「バルジ……このオリジオンもお前の仕業なのかっ⁉︎ 」

That's All(そのとおり)ッ‼︎ 逃げ出した時はマジで凹んだが、予想以上の暴れっぷりで結果オーライだっ! 」

「今度は何を企んでいるの⁉︎ 飛鳥ちゃんにした事を、私達は絶対に許さないからっ! 」

 

 アクロスも唯も、バルジに敵意剥き出しの眼差しを向けている。バルジの所業を鑑みれば当然だろう。

 しかし当のバルジは、なんで2人が怒っているのか全く理解できておらず、心底不思議そうに首を傾げながら、2人を落ち着つかせようとする。

 

「まあ落ち着けよ。せっかくの機会だ、俺様の楽しい実験(あそび)踏み台(あいて)にでもなってくれよ…………ほら」

 

 バルジかそう言うと、彼の背後からひとつの影が姿を現す。

 それを見たアクロスは、唖然とした。

 アクロスだけではない。

 唯も倫吾も志村もハルも、湖森もヒビキもネプテューヌも、誰も彼もが唖然として固まっていた。

 なぜならば、それは。

 

 

「本日の実験の主役はコチラッ‼︎ デデンッ、なんと行江飛鳥ちゃん10歳! パパもママもお友達もぜーんぶ奪われた挙句に、お姉ちゃんとまで離れ離れになった、とびっきりの逸材だっ! 」

「……………………」

「あす…………か? 」

 

 

 虚ろな目をした飛鳥だったのだから。

 

 

 あまりの光景に、アクロスと唯は戦いの途中だというのにフリーズしてしまっていた。

 誰も彼もが絶句して静まり返る中、バルジだけは抱腹絶倒している。

 そしてバルジは、笑い転げながら飛鳥の背中を軽く叩く。

 それが合図だった。

 

「ああああああああああああああああああああ痾阿合椏飽或鈳揚(ああああああああ)アアアアアアアアアアAAaaaaaaaaAaaAaaAああああああああああああああああああっ‼︎‼︎‼︎ 」

《KAKUSEI THETA》

 

 飛鳥は、小さな喉を潰す様な勢いで叫びだす。

 そして、変化が訪れた。

 飛鳥の体表にいくつものジッパーが現れ、それらが一斉に開いてゆく。開いたジッパーの隙間からは、断続的に炎が噴き出しはじめていた。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼︎‼︎ 」

 

 諸々の変化が完了した時。

 飛鳥は、オリジオンになっていた。

 見た目はラーマオリジオンに似ているが、兜の下から赤い髪の様なものが伸びていたり、背中に背負っている武器は弓だけだったり、全体的に装甲が薄く軽装だったりと、随所に違いが見られる。

 否、外見なんぞどうでもよかった。

 

 

「そんな…………飛鳥ちゃんがオリジオンに……⁉︎ 」

「嘘だろ…………」

 

 アクロス達にとっては、飛鳥がオリジオンになってしまったという事実がショックだった。

 それを引き起こした張本人であるバルジは、あまりの出来事に唖然とする一同を、馬鹿にする様に笑い転げている。

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「ぎゃははははははははっ‼︎ マジで痛快だろうっ さあ行け、思う存分暴れてやりなっ‼︎ 」

 

 バルジはケラクラと笑いながら、オリジオンと化した飛鳥の背中を押す。

 地上へと降り立った飛鳥———シータオリジオンは、着地するなり呻き声をあげながら、ラーマオリジオンと戦っているアクロス達に向かって突撃してゆく。

 

「ふざけるなああああああああああああああああっ‼︎ 」

 

 あまりの所業に、瞬はブチ切れた。

 高みの見物を決め込むバルジに、アクロスは拳を強く握りしめながら突撃する。

 ラーマオリジオンを蹴り倒し、バルジのいるメリーゴーランドに向かって一直線に走る。

 が、そこにバルジに焚き付けられたシータオリジオンが、アクロスに掴み掛かってくる。

 

「やめろ飛鳥、お前何やってんだよ⁉︎ 姉を助けるんじゃなかったのかよ⁉︎ 何バルジの手駒にされてんだよっ⁉︎ 」

「飛鳥ちゃん正直にもどって! 頼むからっ! 」

 

 アクロスと唯は必死に呼びかけるが、シータオリジオンと化した飛鳥は、呻き声をあげながら2人を攻撃する。

 アクロスは、理性を失い暴れ回るシータオリジオン———飛鳥を抑え込みながら、メリーゴーランドの屋根の上からこちらを見下ろしているバルジに怒りをぶつける。

 

「ふざけるなバルジぃっ! 飛鳥から何もかも奪っておいて、その上さらに飛鳥自身を玩具にするだと……⁉︎ どんだけ他人の尊厳を踏みにじれば気が済むんだお前はッ‼︎ 」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()。弱い奴が悪い、選ばれなかった奴が悪い。悔しかったら復讐なりなんならやってみやがれよ、どうせ無理だろうけど」

 

 息を吐くように神経を逆撫でするバルジの発言で、アクロスは理解した。

 ———(バルジ)は生まれてはいけない存在だ。今ここで倒さなければならない。

 

 

 バルジの実験(あそび)は、始まったばかりだ。




実は一回下書き消してしまって書き直している。
これが無ければ昨日公開だったんだけどな……

良かったら感想、評価おねがいします。
次回は来週くらいの更新を予定してます。



そしてしれっと混ざるプロセカ要素。
あくまで顔見せレベルですけどねー
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