【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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久しぶりのアクロスです!
待たせて済まない!


・前回までのあらすじ
なんやかんやあってフェニックスワンダーランドへ遊びに来た瞬達。
少しずつ飛鳥と心を通わせていくが、悲劇は終わらない。
オリジオンに襲われた飛鳥たちを助けるべくアクロスに変身した瞬だが、彼の目の前で飛鳥がオリジオンにされるという、あってはならない事態が発生してしまう―――!


第43話 故に、人は彼を天災と呼んだ

 

 

 飛鳥がオリジオンにされた。

 そのショックはあまりにも大きかった。

 家族も友達も全て奪われ、挙げ句の果てには自分自身すら奪われてしまった少女は、獣のような雄叫びをあげながらアクロスに襲いかってゆく。

 

「………………嘘っすよね? 」

 

 御手洗倫吾は、目の前の光景を受け入れたくなかった。

 

「飛鳥ちゃんがオリジオンになるなんて、嘘なんすよね? 」

「…………現実ですよ、腹立たしいことに」

 

 倫吾の隣にいる九瀬川ハルも、静かに怒りを燃やしていた。

 

「………………」

「飛鳥…………」

 

 ネプテューヌとヒビキは特にショックが大きいようで、ほとんど放心状態になってしまっている。

 心を通わせた直後にこれなのだから当然だろう。

 

「やめろっ……! 飛鳥、正気に戻れよ⁉︎ バルジに何もかも奪われて、その上玩具にされて…………それでいいのかよ⁉︎ 」

 

 誰もがショックを受けている中、アクロスは飛鳥———シータオリジオンの攻撃をかわしながら、彼女に何度も呼びかける。

 しかし、アクロスの声は届かない。

 メリーゴーランドの屋根の上に腰掛けているバルジは、大笑いしながらその光景を眺めていた。

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! いくら声かけても無駄無駄、そいつは既に本能のままに暴れるだけの怪物! いい加減理解しろよ、ヒーローってのはなんでこうも馬鹿ばっかなんだ? いや、馬鹿だからヒーローなんかになって俺様達に歯向かうなんて愚かな真似するんだよな‼ 可哀想! 」

「ふざけるな! 飛鳥はお前の玩具なんかじゃないっ! 飛鳥だけじゃない、誰もかれも、お前の玩具にされるために生きてるんじゃねえんだよっ‼ 」

「“玩具じゃない”だと? そんな言葉、聞き飽きてあくびも出ねえよ。可哀想(おもしろそう)な面してる奴が十中八九悪いに決まっているだろ」

 

 暴れまわるシータオリジオンを取り押さえようと四苦八苦するアクロスに、バルジの心無い言葉が浴びせられる。

 バルジの言い分は、いじめられっ子に「虐めたくなるような見た目をしているお前が悪い」と言っているようなもんだ。ジャイアニズムも真っ青になるレベルでイかれている。

 アクロス自身も、既にバルジとの対話なぞできるわけがないと諦めきっている。それでも、灰司や飛鳥の境遇を思うと、言葉をぶつけずにはいられなかった。

 

「なんで……なんでギフトメイカー(お前達)は……っ‼ こうも人の心がないんだよっ‼ 本当に赤い血が通ってんのかよ⁉ たかが一回転生した程度で、ここまで化け物になれる理由がさっぱり分からない………………っ!!!! 」

「何それ褒め言葉? いやー照れるねえ。嫌いな奴からの罵声は最高の誉め言葉だ! 」

 

 シータオリジオンを投げ飛ばしながら、これまでの戦いの中でギフトメイカーに対して感じてきた怒りをぶつけまくるアクロス。しかし、どれだけ怒りをぶつけてもバルジはまるで堪えていない。まさに暖簾に腕押しというべきか。

 本当ならすぐにでもバルジを殴り飛ばしたいが、暴れまわるシータオリジオンをどうにかしない限りはそれができない。かといって、シータオリジオン―――飛鳥に攻撃するなんて真似は、アクロスにはできない。

 そこに、

 

「どぅばあああんっ! 」

「ゴボダオベッ‼⁉ 」

 

 ラーマオリジオンを蹴り飛ばしながら、唯が乱入してきた。

 ラーマオリジオンを踏みつけている唯の目は、普段では考えられない程に冷たかった。彼女もまた、バルジに対して怒っているのだ。

 

「瞬、さっさとコイツを倒しちゃおう。これ以上アイツと同じ空気吸ったら狂ってしまいそうだ」

「………………ああ」

 

 怒りで震える声でそう口にするアクロス。

 そこに、更なる乱入者が姿を現す。

 

「見つけたぞバルジ……今日こそテメエを殺してやる……っ!!!! 」

 

 サイドカー付きのバイクに乗って現れたのは、仮面ライダーカイザ。

 その変身者は勿論、

 

「カイザ……灰司か⁉︎ 」

「アクロス、引っ込んでいろ。コイツは俺が殺す! 」

 

 カイザ―――灰司はアクロスを冷たく突き放すと、そのままバイクでバルジの居る場所目がけて突っ走ってゆく。

 が、暴れん坊のシータオリジオンとラーマオリジオンがそれを看過するはずもなく。

 

「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!! 」

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAっ!!!! 」

 

 獣のような雄たけびを上げながらカイザに襲い掛かってきた。

 カイザは腰に携帯していたカイザブレイガンを手に取ると、即座にその引き金を引く。

 

「邪魔するなっ!!!! 」

 

 何発もの光弾をもろにくらったオリジオン達だが、全くひるむ様子を見せない。身体のあちこちから炎を吹き出しながら、再び雄たけびを上げて飛び掛かってくる。

 一刻も早くバルジを倒したいカイザは、苛立ちながらバイクから飛び降りると、飛び掛かってきたラーマオリジオンに肘鉄を入れて叩きおとす。

 

「どうやら死にたいようだな……ならテメエらもバルジと同じ地獄に叩きおとしてやる! 」

 

 そして、炎の矢を連射しながら突っ込んできたシータオリジオンに、再度カイザブレイガンの銃撃を喰らわせようと銃口を向ける。

 が、引金を引く寸前で、倫吾がそれを止める。

 

「やめるっす灰司先輩! そのオリジオンは飛鳥ちゃんなんだ! 」

「っ⁉︎ 」

 

 倫吾の声を聞いたカイザの動きが一瞬止まる。

 が、カイザはそれを振り切るかのように、右手のカイザブレイガンの引き金を引く。

 

「ガガガガガッ……‼︎⁉︎ 」

 

 カイザブレイガンの銃口から発射された光弾は、シータオリジオンに次々と命中してゆく。

 その度に、シータオリジオンの口から苦悶の声が零れ落ちる。

 

「それがどうした、オリジオンになったならば倒すまでのことだ! どうせ撃破すれば元に———」

「やめとけよ」

 

 そう吐き捨てながら、続け様にブレイガンで斬りかかろうとするカイザ。

 しかし、突然横から伸びて来た腕に手首を掴まれて阻まれる。

 腕の伸びて来た方に視線を向けると、いつの間にかバルジがカイザの真横に立っていた。

 

「バルジッ……なんのつもりだ⁉︎ 」

「そこのバンダナ野朗の言うとおりだ。お前は幼気な少女をぶった斬るつもりか? ひぇ〜っ、仮面ライダーの風上にも置けない非道っぷり、俺様じゃなきゃ見逃しちゃうね」

「どの口が言ってんだこのクソ野郎ッ‼︎ 」

 

 カイザはバルジの腕を振り払い、カイザブレイガンでバルジを斬りつけた。

 完全に殺すつもりの一撃だったし、間違いなくバルジを両断した———感覚はあった。

 しかし、バルジは平然としている。一滴も血が流れていないどころか、彼の身体には傷一つついていない。

 

「なんだと…………⁉︎ 」

「もうひとつ言っておかなくちゃいけないことがある。()()()()()()()()()()()()()()()? 」

「なっ———」

「正確には、あいつらの洗脳のために使っている虫はな、寄生対象が強いダメージを受けると、脳内で爆発するんだよ。言わば人間爆弾さ」

「バルジ……‼ 」

「ならテメェを殺せば済む話だッ‼︎‼︎ 」

 

 拳を震わせながら怒るアクロス。

 対してカイザは、バルジを殺せば洗脳は解けると考え、ベルトに刺さったままのカイザフォンのENTERキーを押し、必殺技を発動させる。カイザスラッシュでバルジを斬り殺すつもりだ。

 が、

 

「それはだめだゾ~~~~~~~~っ❤ 滅っ!!!! 」

 

 気持ち悪いほどに媚びまくった声と共に飛んできたナイフが、カイザの手に握られていたカイザブレイガンを弾き飛ばした。

ナイフの飛んできた方を振り向くアクロスとカイザだが、そこに間髪入れず、続けざまに何本ものナイフが飛んでくる。

 2人は別々の方向に跳躍してナイフの雨を避けると、その発生源を睨みつける。

 そこには、

 

「ご主人様を傷つける奴は、クソ雑魚負け犬メイドのレイラちゃんが皆殺しにしちゃうぞっ☆ 」

 

 ………………酷い顔色をしたメイド服姿のレイラが居た。

 明らかに健康な人間がしてはいけないような顔色の酷さに加え、頭に巻いた包帯から血がにじみ出ていたり、焦点の在っていない目と、誰がどう見てもまともな状態じゃない。

 唯から話は聞いていたとはいえ、彼女の予想以上の酷さに、敵ながらアクロスは心配せずにはいられなかった。

 

「お、おい………………? お前本当に戦えるのか? 下がっていた方がいいんじゃないの? 」

「大丈夫です! わたしはバルジ様専属の奴隷メイドですので! 手足が千切れようと内臓がなくなろうと、全身全霊でご奉仕するだけですぅっ❤」

「っ……」

 

 その異様さに、アクロスはたじろいでしまう。

 以前にあった時とはまるで別人だ。

 恐らくだが、彼女にも飛鳥同様に寄生虫による洗脳が施されているのだろう。

 

「何をぼさっとしているんですか!! 戦闘の真っただ中ですよ! 」

「………………っ、そうだ! 」

 

 レイラの異様さに圧倒されていたアクロスだったが、ハルの声で我に返る。

 そして、横から唯も声をかけてくる。

 

「瞬っ! レイラの相手は私がやるから瞬は飛鳥ちゃんを! 」

「ああ! 」

 

 唯に鼓舞されながら、アクロスは再びシータオリジオンを止めるべく走り出す。

 彼の前方には、炎を纏った武具を持った二体のオリジオン。

 

(待っていろ飛鳥……絶対に俺達が助け出してやるからな…………!)

 

 


 

 

 一方、レイラと対峙することになった唯は、レイラのモップ攻撃をパンチ一発で弾き飛ばしながら、彼女の懐へと飛び込む。

 

「どんぶりゃあッ!! 」

 

 唯はそう叫びながら、渾身の正拳突きをレイラの胴体に叩き込む。

 たった一回の突き、それだけで周囲に突風が巻き起こり、レイラの身体ははるか後方へと吹っ飛んでゆく。

 ジェットコースターの支柱に叩きつけられたレイラは、口から血を吐きながら立ち上がる。

 

「ゆるっ……しません…………! 貴女はわたしが殺します……ぶち殺しちゃいますっ❤ 」

 

 ごほっ、ごほっ、と断続的に咳き込むレイラ。その度に、彼女の口から赤い液体が漏れ出してゆく。それと同時に、頭に巻かれた包帯からも、鮮血がにじみ出ては頬を伝う。どう考えても、唯のパンチ一発でこうなるはずがない。

 唯は、レイラの状態を察していた。

 

「ボロボロなんだ……この子もバルジに全身を滅茶苦茶にされて、もう限界なんだ…………!」

「ごほっ……げぼっ……! たとえこの身が滅びようともっ……ご主人様の邪魔はさせませんっ❤ 」

「どうわっ⁉ 」

 

 レイラは再びと結交じりの咳をしながら唯の心配を一蹴すると、懐からパリパリに乾いた雑巾のようなものを取り出し、ブーメランのように投げつけてきた。

 唯は側転しながらそれを避け、その勢いを保持したままレイラに突撃する。

 その背後から、ヒュンヒュンと風を切り、街頭や木を切り倒しながら雑巾のブーメランが迫りくる。

 

「ご主人様の為に死んじゃってくださ~~~いっ❤ 」

 

 レイラは生気の籠ってない笑みを浮かべながら、何処からかティーポットを取り出し、その蓋を外す。

 すると、ティーポットから灼熱の炎が飛び出し、まるで意思を持っているかのように、唯めがけて襲い掛かった。

 背後からは切れ味抜群の雑巾ブーメラン。前方からはタイルを溶かすほどの灼熱の炎。どちらを喰らっても致命傷待ったなしだ。

 が、その程度で臆する諸星唯ではない。

 

「それはノーサンキューだっ‼ 」

「なっ――」

 

 唯は背後から飛んできた雑巾ブーメランを素手で掴むと、前方から迫りくる炎に向かってそれをぶん投げた。

 切れ味抜群の雑巾ブーメランは、炎を容易く切り裂いてゆき、元の持ち主であるレイラの首筋目掛けて跳んでゆく。

 

「このっ‼ 」

 

 レイラは咄嗟にナイフを取り出して雑巾ブーメランを弾き飛ばすと、既に眼前まで迫っていた唯の顔面目掛け、そのナイフを振り下ろそうとする。

 が、唯はすかさずナイフを持ったレイラの腕を掴み、そのまま押し倒した。

 

「大人しくして! あなた、もう身体が限界なんじゃないの⁉ 」

「限界……? そんなことはどうだっていいの……! わたしはクソ雑魚奴隷メイドのレイラちゃん。バルジ様の玩具として、壊れるまで従うだけ……!」

 

 唯に取り押さえられたレイラは、血を吐き出しながら必死に自身の存在意義を主張する。だがそれは、バルジによって植え付けられた偽りでしかない。

 ヒトとしての尊厳を極限までそぎ落とされた少女の姿を見た唯は、どうしてもそれを敵だとは思えなかった。

 

「私は元のあなたがどんな人間だったかなんて知らない。でも、こんな終わり方は絶対にダメ。操られて、貶められ続けて、弄ばれる。それを壊してはいおしまいだなんて能天気な人間には、私はなれない」

「ごほっ……げほっ……! 敵に情けをかけるなんて言語道断ですぅ! 」

「もう動かないで、さっきから血を吐いてばっかじゃん! このままだと死んじゃうよ⁉ 」

「バルジ様の栄光の為なら、わたしは死んでもいいんですっ❤ わたしは身も心もbボフアッ‼ 」

 

 そこまで言って、レイラは激しく吐血した。

 白いメイド服が真っ赤に染まり、戦闘によって緩んだ頭の包帯からもどくどくと血が流れている。

 血を流し過ぎたレイラには、もやは意識を保つだけの力すらなかった。唯に取り押さえられたまま、彼女は気絶していた。

 

「まだ死んでない。けど……」

 

 レイラはまだ息はしているが、このままだといつ死んでもおかしくない。しかし、今彼女を助けたところで、洗脳が解けない限りは何度でもこれが繰り返される羽目となる。

 彼女を救う方法はただ一つ。

 

「瞬、早くバルジを倒して――! 」

 

 唯はレイラを取り押さえながら、バルジと対峙する仮面ライダー達を見つめるのだった。

 

 


 

 

 そして、バルジに挑もうとする仮面ライダー達はというと。

 

《EXCEED CHARGE》

「てやああああああああああああああああああっ!!!! 」

 

 カイザショットを右手に装着し、必殺技・グランインパクトを発動させながらバルジに突撃するカイザ。しかしバルジは生身の右手でそれを受け止め、受け流してしまう。

 そこに間髪入れず、アクロスがツインズバスターで斬りかかるが、バルジはそれも素手で受け流し、ついでといわんばかりにアクロスの横っ腹に蹴りを叩き込み、アクロスを蹴り飛ばしてしまった。

 怒りマックスのライダー達の波状攻撃を生身で対処し続けるバルジは、つまらなさそうにあくびをしながら、

 

「ぬるいよなア……考えなしに攻撃して勝てる相手じゃねえってのがまだわかんねえのか? ったく、これだから馬鹿(ヒーロー)は嫌いなんだ。人間の自由の為に戦う? 世界平和? 今どき小学生でもそんな妄想してねえよ! 強くて選ばれた俺様の様な奴が好き勝手する。それこそが世界の真理だっていい加減理解しろよ! こっちは馬鹿猿の相手するのも飽き飽きしてるんだっての! 」

 

 そう吐き捨て、アクロスとカイザをパンチ一発で吹っ飛ばした。

 カイザに至っては、ご丁寧にベルトを木っ端微塵に粉砕している始末。

 

「がっ………………ぐう………………」

「ぐっ……だが、俺にまだ……!」

《Deal……Decide Up! Deep(深く)Drop(落ちる)Danger(危機)! (仮面)Rider Demons!!》

 

 ベルトが破壊されたことでカイザの変身が解け、生身で地面を転がる灰司だが、即座に受け身を取って立ち上がると、新たなドライバーとスタンプの様なデバイスを使い、新たなライダーに変身する。

 灰司が腰に巻いたバックルにスタンプ型のデバイスを押し付けると、その姿が、顔面と胸部アーマーが蜘蛛の巣のようなデザインとなった仮面ライダー――デモンズに変化した。

 

「テメエだけは許さねえ! 俺から全てを奪ったお前だけはっ!!!! 」

「そう熱くなるなよ。復讐者が激情に駆られるなんて、最上級の死亡フラグだぜ? 」

「お前がそれを言うなっ!!!! 」

 

 灰司――デモンズはそれをバルジの戯言を怒りながら切り捨てると、指先から何本もの蜘蛛の糸をのばし、バルジを拘束しようとする。

 しかし、バルジが軽く触れるだけで、糸はあっというまにボロボロに朽ち果ててしまう。

 

「こっちの攻撃がまるで通じていない……」

「アクロス、よそ見は厳禁だぜ? 」

「! 」

 

 バルジがニヤつきながらそう言った直後、アクロスの身体が宙を舞った。

 

「ごはっ……⁉ 」

 

 全身の骨と内臓がシェイクされているかのような衝撃を受けながら宙を舞うアクロス。

 地上を見下ろすと、そこには弓を引き絞ったシータオリジオンの姿と、全身から熱気を吹き出して唸り声をあげているラーマオリジオンの姿があった。恐らくだが、ラーマオリジオンの体当たりを喰らったのだろう。

 そこに追い打ちをかけるように、シータオリジオンの炎の矢が飛んでくる。

 アクロスは空中で身をよじってなんとかそれを躱そうとするが、全てをよけきることはできず、炎の矢をその身に受けて地上へと撃ち落される。

 

「ぐっ……駄目だ…………」

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!! 」

「DEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEATHっ!!!! 」

 

 立ち上がることもできない程に満身創痍のアクロスの前で、シータオリジオンとラーマオリジオンが雄叫びを上げながら殴り合う。

 何とかしなきゃいけないはずなのに、できない。 

 

「飛鳥…………目を覚ましてくれっ……!!!! 」

 

 いくら声をかけても、彼女には届かない。

 地面に倒れたアクロスと、膝をついたデモンズ。

 それを見て、バルジは馬鹿にしたように笑う。

 

「へー、もう終わりなんだ。やっぱ仮面ライダーって雑魚だわ!!!! 世界に選ばれ過ぎて怖いぜ!!!! 」

「ざけんなっ……! 勝手なことほざいてんじゃねえぞこのクソ野郎! 」

 

 デモンズは諦めることなく、バックルにスタンプを再度押してから両側のノックを押し、必殺技を発動させる。すると、デモンズの右足に赤く輝く蜘蛛の足が収束し始める。

 

「無駄だって言ってんだろ、ほんとお前は馬鹿だよな! まあできもしない復讐なんかに現を抜かすような奴だからしょうがないかっ! 」

「テメエがそれを言う資格はねえんだよォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!! 」

 

 デモンズ―――灰司の復讐者としての在り方すら馬鹿にするバルジ。

 彼にとっては、この世のすべてが自分の玩具か邪魔者でしかない。彼の中では、自分と並び立つ人間なぞいないのだ。

 

「しつこいんだよ、ったく…………本当は使いたくなかったが、俺様の新しい力を使わなきゃわかってもらえないようだしな。ちょっとばかりサンドバックにでもなってくれよ、愚かな仮面ライダー? 」

「何だと……⁉ 」

「ピカチュウ、イガリマに続く俺様第三の姿を拝ませてやるから、よーく見とけよ? 」

 

 バルジは憎たらしさ全開の笑みを浮かべながら、パチンと指を鳴らす。

 

《KAKUSEI………………EVOLT》

「ぐはははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!! 」

 

 

 

 バルジの高笑いが耳に入った直後。

 

 瞬間的に、世界が真っ暗になった。

 

 

 


 

 

 

 

「………………なにが、起きた? 」

 

 逢瀬瞬が目を覚ました時、そこには馬鹿でかいクレーターが出来ていた。

 受けたダメージが限界に達したのか、アクロスの変身は解けている。

 

「っ………………! 」

 

 立ち上がろうとしたが、全身にくまなく痛みが走っている。ぽたぽたと、頭から血が垂れる。

 辺りを見渡すと、そこには凄惨な光景が広がっていた。

 跡形もなく消し飛んだメリーゴーランドに、支柱が折れてレールごと倒壊したジェットコースター。先ほどまで多くの客で賑わっていた筈の遊園地。その一区画が、見るも無残な姿になっていた。

 瞬は傷ついた身体を引きずりながら、クレーターの中心部に向かう。

 そこには、ラーマオリジオンとシータオリジオンが倒れていた。彼らもまた、バルジの一撃に巻き込まれたのだろう。

 

「ア………………ア………………」

「ゴバ………………ド………………」

 

 二体のオリジオンは、呻き声をあげながら互いに手を伸ばす。

 それと同時に、両者の変身が解け、人間としての姿が露となる。

 一人は、藍色の髪をシニヨンにした幼い少女・行江飛鳥。もうひとりは、薄紫色の髪の高校生くらいの少女。その顔は、どことなく飛鳥に似ている。

 その顔を目にした飛鳥は、目を見開いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 」

「あ、すか? 」

 

 少女の名は行江薫。

 飛鳥の姉にして、彼女にたった一人残された家族である。

 

 

 


 

 

 

 そして。

 その光景を、倫吾は見ていた。

 

「………………………………あ」

 

 バルジの攻撃の直前に唯がバリアを張ったために、倫吾達は無傷だった。

 だが、それ以上のショックが、彼を襲った。

 

「あ……あああああああ………………あああああああああああああああああああああっ!!!! 」

「ど、どうしたの⁉ 」

「バルジの奴………………すでに薫ちゃんを………………飛鳥ちゃんのお姉さんをオリジオンにしてやがった! アイツはただ二人生き残った姉妹を殺し合わせて楽しんでやがったんだ!!!! 」

「!!!! 」

 

 倫吾の言葉を聞いて、血相を変える志村達。

 バルジの度を超えた悪辣っぷりに、誰もかれもが怒りをこらえることができないでいた。

 しばしの沈黙の後、耐え切れなくなったヒビキが泣き出した。

 

「なんで……なんでそんなことができるの⁉ 」

「転生者に非ずんば人に非ず、とでも考えてるんでしょうかね……どちらにせよ、私も柄にもなくブチぎれそうです」

 

 ハルは表情を変えることなく、冷静そうにそう言ってはいたものの、その身体は怒りで震えている。

 この場にいる誰もが、ひとつの結論を下していた。

 ―――バルジ(こいつ)は生きてはいけない存在だ、と。

 

 


 

 

 そして、クレーターの中央。

 動かなくなった灰司を踏みつけながら立っている、一体の怪物がいた。

 端的に表現するならば、それは全身真っ黒な人型のコブラとでもいうような見た目をしていた。身体のあちこちにはボトルのようなものが刺さっており、腹部に空いた大きな穴の中では、底の見えない漆黒が胎動している。

 それはかつて、地球を破壊せんとした地球外生命体(エボルト)の力。

 愛と平和を謳うとある仮面ライダーによって打ち倒されたはずの厄災が、ここに舞い戻っていた。

 

「さて、そろそろトドメ刺してやるかな」

「くっ………………! 」

 

 バルジ改めエボルトオリジオンは、踏みつけたままの灰司にトドメを刺そうとする。

 

「やめろバルジっ! 」

 

 それに気づいた瞬が慌てて駆け寄るが、圧倒的に間に合わない。

 エボルトオリジオンの手のひらで生成された黒いエネルギー球が、灰司にむかって放たれる。

 

 

 ―――その寸前。

 

「………………あれ? 」

 

 エボルトオリジオンの右手に溜められていたはずのエネルギーが、突如として霧散してしまった。

 困惑するエボルトオリジオンだが、続けざまに、全身から黒い霧を吐き出しながら彼の変身が解け、人間に戻ってしまった。

 そのことに困惑するバルジだが、即座に理解する。

 

「………………チッ、もう限界かよ。やっぱりこの力、使うのは一筋縄ではいかねえか」

「なんだ………………? 変身が解けた………………? 」

 

 戸惑う瞬の目の前で、バルジは苛立ち気味に灰司を蹴とばすと、そのまま踵を返して歩き出す。

 

「くそっ、撤収だ! 」

「りょうか、ごほっ……ぼはぁっ!!!! 訳立たずのお二人の回収については、このクソ雑魚奴隷メイドのレイラちゃんにお任せくださげほげほっ!!!! 」

 

 撤収に入ったバルジに続いて、ボロボロのレイラが飛鳥と薫を両脇に抱えてついてゆく。その顔には正規の籠ってない笑みが浮かべられており、断続的に吐血交じりの咳を繰り返している。

 唯に取り押さえられていた彼女だが、唯がエボルトオリジオンの攻撃から皆を守ることを優先したために、拘束を解いてしまったのだ。

 

「待てっ……! 」

 

 逃がすまいとバルジ達の後を追う瞬だが、傷だらけの身体ではまともに走ることができず、傷が痛んでその場に蹲ってしまう。

 

「瞬、無茶だって! その傷じゃ戦いどころじゃないでしょ⁉ 」

 

 慌てて唯が駆け寄り、その場に崩れ落ちた瞬の身体を支える。

 霞む瞬の視界に、悠々と立ち去るバルジ達の背中が映る。

 

「くそっ………………くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!! 」

 

 変わり果てた姿となった遊園地に、少年の慟哭がこだました。 

 

 

 

 

 




はい、完全敗北です。
バルジをエボルトにするとか阿保にもほどがあるだろう!

でもハーメルンだとエボルト(に限らずライダーラスボス)無双系がやたらと多かったよなあという印象が強いのも事実なので、思い切ってぶち込みました。
………………さて、どうやってコイツを倒そうか?



☆オリジオン紹介のコーナー!

■シータオリジオン/行江飛鳥
元ネタ:Fate/Grand Order・ラーマーヤナ
バルジに故郷を滅ぼされた少女・行江飛鳥がバルジの手によって強制的にオリジオンにさせられた姿。
彼女の意思は完全になくなっており、ただ本能のままに暴れるだけの獣。
弓矢に炎を纏わせる戦い方を得意とする。


■ラーマオリジオン/行江薫
元ネタ:Fate/Grand Order・ラーマーヤナ
バルジに故郷を滅ぼされた少女・行江薫がバルジの手によって強制的にオリジオンにさせられた姿。
彼女の姿はなくなっており、ただ本能のままに暴れるだけの獣。
背中に背負った様々な武具を自在に使いこなす戦闘能力の高さに加え、炎を操る力も持つ。

■エボルトオリジオン/バルジ
元ネタ:仮面ライダービルド
イガリマの力を失ったバルジの新しい姿。
このタイミングでラスボスの力を持ってくるあたり、彼の空気の読めなさがうかがえる。
その実力はもはや馬鹿みたいなレベルと化しており、生身で仮面ライダー達を圧倒できてしまう。
あまりにも力が強すぎるため、バルジほどの実力者ですら変身自体が長く持たないのが欠点。
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