【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
AMOREリメイクに着手していて遅くなりました。すいません。
逢瀬家前
灰司を探して瞬が飛び出していった直後。
とある一団が、逢瀬家の前にやってきていた。
気だるげそうなパーカー少年とギターケース担いだJC、自称シンガーのJKに眼鏡のおにいさん(28)、おまけに堕天使3人。ここまで列挙すればもうお分かりだろうが、古城達である。
バルジを捕まえに行くぞと意気込んでやってきた古城達だったが、そうしてたどり着いたのが何の変哲もない民家だったので、古城達はなんだか拍子抜けしたような気分だった。
「あのぉ……ここ何処っすか? 」
「バルジに挑むのだろう? ならばここに来るのが手っ取り早い」
困惑気味のミットルテの質問に裁場はそう答えると、戸惑う古城達を放置してインターホンを鳴らす。
「まさかここが奴の本拠地……? 」
「それにしては、普通の家にしか見えませんけど……? 」
古城は裁場の行動に戸惑いながらも、「この流れでここに来たのだから、きっと何かあるはずだ」という考えを捨てきれない。
戦士としてはまだまだ未熟な部類である古城だが、裁場の行動の節々からうっすらと漂っている、所謂強者のオーラの類の存在を、確かに感じ取っていた。それ故に、今の裁場の行動にも何かしらの深い意図があると考えているのだ。
そんな感じに深読みする古城を他所に、インターホンを数回鳴らし終わった裁場は、居住者がドアを開けるのを待たずして、自分から玄関扉を開ける。
「入るぞ」
「え、まだ返事が――」
「はーい、どちら様ですかー? 」
鍵のかかっていなかった玄関扉が開くと同時に、玄関のすぐ近くにあった部屋から、中学生くらいの少女が出てきた。
逢瀬湖森である。
何時ものように人当たりのよさそうな笑顔を浮かべながら玄関にやってきた彼女だったが、かってに玄関に上がり込んでいる裁場達の姿を目にした途端、一気に真顔になって固まった。
「………………誰? 」
「………………………………」
――気まずい。
非常に気まずい。
あまりの気まずさに、古城はフリーズしてしまっていた。
知らない人の家に上がり込んで、居住者と思しき少女と顔を合わせている。普通ならばまず体験しないであろう種類の緊張感だ。少女の方は滅茶苦茶警戒心剥き出しだしで、古城は一刻も早くここから離れたくて仕方がなかった。
が、そんな彼らの気持ちなど意にも介さずに、裁場は湖森に瞬の居場所を尋ねる。
「逢瀬瞬はいるか? 」
「あなたたち、ひょっとしてお兄ちゃんの知り合い? ………………なんか見るからに変な人達だなあ。お兄ちゃん、友達選び下手糞すぎない? 」
裁場達の遠慮のなさに辟易した湖森は、思わず兄の交友関係を心配する。まあ、彼女も彼女で、ヒビキやネプテューヌを平然と受け入れているあたり、割と似たようなものなのだが。
「少しばかり彼に用事があってな、こうしてやってきたんだ。知ってるか? 」
「いつの間にか家からいなくなってたんだよね。わたしは知らない。そこのフィフティならなんか知ってるかもね」
「この流れ知ってるわ……日本のRPGでよくあるたらいまわしよ」
湖森の無責任じみた回答に、カワラーナは思わずそう口にする。
「そうか、なら上がらせてもらう」
「え、ちょっと待って、勝手に上がり込まないで⁉ 」
湖森の返事を聞いた裁場は、彼女の許可すら得ずに、ずげずげと逢瀬家に上がり込むと、玄関のすぐ近くに位置するリビングの中を覗き込む。
するとそこには、悠々とソファーでくつろいでいるフィフティの姿があった。
「よく来たな待ってたぞ、エアギター弾き語りしながら」
「似合わない冗談はやめろ」
「ギャグにマジレスはご勘弁だよ」
ちょっとした冗談が裁場に通じなかったことに軽くショックを受けながらも、フィフティは裁場の呼びかけに応じる。
裁場はリビングに入ってフィフティの目の前に立つと、眼鏡の奥の鋭い眼光を突きつけながら、フィフティに瞬の居場所を尋ねる。
「逢瀬瞬はどうした? 」
「あー、彼ならついさっき出ていったよ。ったく、なんでわざわざ無束灰司の為に駆け回ってるんだか。本人が死にたがってるんだからほっときゃいいのに」
「っ………………⁉ 」
フィフティのその言葉を聞いた裁場の顔色が、一瞬でかわる。
そして彼は無言で踵を返し、逢瀬家を飛び出していってしまった。
あまりにも素早すぎる一連の動きに、古城達はおろかフィフティですらも、反応がワンテンポほど遅れてしまう。
「えっ、えちょっと待って⁉ どこ行く気⁉ 」
「なんだかよくわからないですけど……付いて行くしかないですね」
古城達も戸惑いながらも、走り去ってゆく裁場を追いかけてゆく。
そうして後には、フィフティがひとり取り残される。
「やれやれ、そこまでして彼らを案じるとは……相変わらず優しすぎるねぇ、裁場くんは」
だが、フィフティは君のそういうところを見込んだうえで仮面ライダーにしたのだ。
走り去る裁場の後姿を眺めるフィフティの顔は、先ほど瞬に向けた時同様に、子を見守る親の様な優しさと寂しさに満ちたような表情を浮かべていた。
日が完全に沈み切った学校の屋上に、灰司は居た。
屋上階段の上の、貯水タンク脇に腰掛けながら、夜の闇に呑まれゆく街を見下ろす灰司。その手には、空になった缶コーヒーがあった。
ばたんと音を立てて、屋上階段に通じる扉が閉じる。
誰かがやってきたようだ。
「何しに来た」
灰司は扉の方を振り返ることなく、屋上にやってきた人物に声をかける。
その人物――逢瀬瞬は、無言で梯子を上ると、灰司の腰掛けている貯水タンクの根元までやってきて、灰司の方を見上げる。
「話しに来た」
「お前、俺を止めに来たとか言うんじゃないだろうな」
「…………」
灰司の言葉に、瞬は答えることができなかった。
世間一般において、復讐についての意見は、肯定派と否定派の真っ二つに分かれている。肯定派は、当人が本当に望んでいるのならば復讐に走っても構わないと主張し、否定派は、復讐心を悪しきものと断じ、復讐にすべてをなげうつことを否定する。
だが、瞬はその答えを出せないでいた。これまで、復讐なんてものとは縁のない人生を送ってきた彼は、こうして復讐者を目の当たりにして、初めてそれについて考え始めたのだ。
しばらくの間、沈黙が走る。
そして。
瞬は、ひとつの結論を出した。
「多分、俺が首を突っ込む資格はない」
「そうだ。これは俺と奴の問題だ」
「だから、お前の話を聞きたい」
「前後関係がめちゃくちゃだぞ、お前」
「滅茶苦茶じゃない」
呆れる灰司だが、瞬は引かなかった。
「――このままお前がいなくなったら、俺は永遠にわからないままなんだ。一緒に戦ってきたはずなのに、お前のことを何も知らないままで別れることになる。それだけは駄目だ」
「わけわかんねーことほざいてんじゃねえ。抽象的すぎるんだよ、パプリカでもキメてんのか? 」
「俺だってどう言ったらいいのかわからないんだよ。でも、今お前と話さないと、きっと後悔すると思う。だから俺はここに来た。唯達にも内緒でな」
「………………はぁ」
瞬の灰司は観念して、瞬の話に付き合ってやることにした
どの道、この怪我では瞬時にこの場から離れることなんてできない。
瞬は灰司の腰掛けている貯水タンクに背中を預けると、こんなことを聞いてきた。
「灰司。確かお前、別の世界から来たんだよな?」
「なんだ、もう深堀するところはないと思うが」
「お前の居た世界って、どんな感じだったんだ?」
「………………………………」
その問いかけは、灰司を沈黙に誘うには充分すぎた。
しんと静まり返る屋上。
そして。
そして。
長きにわたる沈黙の後、灰司は苦悩しながら口を開いた。
「…………俺の居た世界は、ここと変わらなかった。くだらないことを笑ったり泣いたりできる、そんな普通の奴らが生きる、ありふれた世界だった。それなりの家族愛を持った親、手のかかる弟、世話焼きな幼馴染み……こんなことを言うのは柄じゃねえんだが、まあなんだ。多分、恵まれていたんだろうな、俺は」
「………………」
「――それをアイツは踏みにじった‼ 」
そう叫びながら、灰司は、手に持っていた空き缶を握りつぶした。ぐしゃりと音を立てて、空き缶がゆがむ。
「アイツが呆然とする俺になんて言ったかわかるか? 」
“――この程度で滅ぶなんて、ほんとくだらない世界だな!玩具にすらなりゃしねえじゃねえか!”
「奴はそう言った。あんな奴を生かしておいたら、この世界も同じ末路をたどるのは明白だ……アイツは……アイツは、生きてはいけない存在なんだよ! 」
あんな狂ったやつがいるだなんて、人間の姿をした人でなしがいるだなんて、知りたくなかった。そんな叫びを、瞬は確かに聞き取った。
瞬はバルジと会話をした覚えはほとんどない。しかし、戦場で幾度となく見聞きしてきた彼の言動は、正直言って瞬からしても目に余るものであった。彼から直接的な危害を受けたわけでもない瞬ですら、彼にはことさら強い嫌悪感を抱いている。
バンバンと、灰司は怒りのままに何度も空き缶を叩き潰す。
何度も叩き潰された空き缶は、縦にひしゃげていた。それほどまでに、灰司の怒りは強いのだ。
素手で空き缶をプレスしてしまった灰司の馬鹿力に若干ビビり散らしながらも、瞬は灰司に問いかける。
「お前、復讐を果たした後はどうするんだ? 」
「答える義理があるとでも? 」
「いや、だって……短い付き合いだけどさ、俺達は一緒に戦ってきただろ」
「アホか。俺はお前を戦友と認めた覚えはねえぞ」
「そりゃあ、立場や目的は違うし、最初は有無も言わさずボコボコにされたりもしたけどさ……一応、共通の敵と戦ってきたじゃんか。それってもう戦友では? 」
「………………」
瞬の言葉に、灰司は面食らったような顔をしていた。
信じられない馬鹿でも見たかのように、呆気に取られていた。
「……やっぱり裁場の言ってたように、復讐を終えたら死ぬつもりなのか? 」
「別にいいだろ。もう俺が死んでも悲しむ奴は居ない。なんせ全員死んでるんだからな」
「悲しんでくれる奴がいないなんて、そんな悲しいこと言うなよ。AMOREの仲間たちだって、きっとお前が死んだら悲しむはずだろ。それにさ、俺だって悲しいよ。同じ敵と戦ってきた間柄以前に、同級生だろ」
(コイツ、知らねえ間に随分と
瞬の言葉に黙って耳を傾けていた灰司は、そう思いながらため息をつく。
出会った当初、灰司は瞬のことを有象無象の悪党転生者と同類と思っていた。
AMOREエージェントとして数多もの悪と対峙し続けたことで擦り切れてしまった灰司には、当時の瞬は、実現できもしない綺麗ごとを吐き連ねる無能、ひいては偽善者の面を被った悪にしか見えなかった。
だが瞬は、灰司の予想を裏切り、ヒーローとしての成長を積み重ねた。
その結果が今だ。
「だから死ぬなよ。それが俺からお前に言う、唯一の我儘だ」
「…………」
瞬はそう言うと立ち上がり、屋上を去ろうとする。
「何処へ行くんだ。俺を連れ戻しに来たんじゃなかったのか? 」
「別に俺はお前を止めたくてここに来たんじゃない。お前と話すのは今しかないと思ってここに来たんだ」
「なんだその言い方、最初から俺が死ぬ気だって分かってたようじゃねえか」
「もう一度言う、死ぬなよ」
そう言って、瞬は扉の向こう側へと消えた。
藍色の空の下に一人残された灰司は、瞬の階段を下ってゆく足音が完全に聞こえなくなった頃になって、些細な愚痴を漏らした。
「………………そいつは聞けねえ願いだっての」
――あの日のことは、鮮明に覚えている。
2年前 とある世界
「見つけたぞ‼ 」
「………………ンあ? お前誰だよ? 」
何時ものように
バルジとリイラの前に、一人の少女が立ちふさがった。
黒くてごつい軍服に身を包んだ銀髪の少女だ。その顔立ちは、バルジの傍らにいるリイラによく似ていた。
彼女の名はアステア・ライトレア
――
「ようやく見つけた……リベラ! 4年間、ずっと探してたんだぞ⁉ 突然いなくなって……色んな世界を巡りながら探したんだ」
「………………誰? 」
しかしリベラ――否、リイラは、目の前の少女について、まるで見知らぬ他人でも見るかのような目を向けている。
バルジはバルジで、まるで珍獣を見るかのような視線を少女に向けている。
アステアはそんな目線を受けながらも、涙ぐみながらリイラを抱きしめる。
「な、何……? なんなのこいつ……⁉ 」
「……4年間も離れ離れだったんだ。お互い随分と様変わりしているから、わからないのも無理ないか。私だ、アステアだ。お前の姉で、たったひとりの家族のアステア・ライトレアだよ……! さ、帰ろうリベラ。義兄さんも心配しているぞ」
「………………」
少女の言葉に、黙って耳を傾けていたリイラ。
彼女はしばらく考えたあと、ようやく思い出したようだ。
「………………ああ、お姉ちゃんか」
「思い出してくれたか、リベラ」
「うん。バッチリと………………ね」
リイラが微笑む。
その直後だった。
グォバシャアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と。
リイラの左腕が、鮮血と共にアステアの背中から勢いよく突き出した。
断末魔をあげる間すらなかった。
一瞬にして腹部にドーナツホールを開けられてしまったアステアは、訳が分からないとでも言うかのように眼球を動かしながら、
リイラがアステアにぶっ刺した腕を引き抜くと、支えを失った彼女の身体は、綺まるで水風船が破裂した時のような勢いで風穴から血を噴き出しながら、その場に崩れ落ちてゆく。
「今更のこのこと私の前に姿見せるとか、一体どんなおめでたい頭してるのかしら。バカみたい」
伸ばされたアステアの腕を乱暴に蹴り飛ばしながら、リイラは彼女に唾を吐き捨てる。
リイラの発言を聞いたアステアは、目を丸くしていた。
彼女の発言が、理解できなかった。
「ギフトメイカーになって私は生まれ変わったのよ。毎日が楽しくてたまらない。人の悲鳴を、絶望を、憎悪を生み出すのがやめられない。こんな刺激的なものがあるなんて、故郷に居た時は考えたこともなかったわ。わかる? わたしはいますっごい幸せなの! だから邪魔しないでよ。愚図で無能なお姉ちゃん? 」
(なん……で、だ……? )
アステア・ライトレアは朦朧とする意識の中、困惑していた。
生き別れた妹を探すために始めた冒険、その終幕がこんなものであっていいはずがない。
だが、リベラに何があったというのだ? 離れ離れになって4年、その間に何があったらこうなるというのだろうか?
考えたくても、できない。
腹を貫かれたアステアは、その命を散らそうとしていた。全身が冷たくなっていくのを感じるし、思考は纏まらなくなってきている。どうあがいても、彼女の命はここで終わる。
(ああ……ごめん、リベラ…………)
――だが、ここで死んだ方が、幸せだったのかもしれない。
何故ならば、ここには
「あー気持ち悪かった。さて、なんかイラつくからもう一度刺すか」
リイラはもう一度アステアをぶっ刺そうと、血塗れの左腕を振り上げる。
が、一部始終を黙って見ていたバルジがそれを制止させる。
「待てよリイラ、殺すなんてもったいねえだろ」
「……いやいや、勘弁してよ。こちとら大嫌いなお姉ちゃんに抱き着かれたせいで最悪な気分なんだけど? 」
「わざわざ俺様達の元まで来てくれたんだ。殺してハイおしまいってのはあっけなさすぎる」
「じゃあどうすんのよ? どのみちコイツ、じきに死ぬけど? 」
「まあ任せろっての。この天才バルジ様にかかれば、コイツを最高の
そう言うとバルジは、どこからかフラスコの様なものを取り出す。
その中には、見たこともない虫のようなナニカがもぞもぞと蠢いていた。
「俺様の仲間を奪おうだなんて……身の程を知れよ、雑魚。ちょっとムカついたからよ、お前の身も心も弄んであげるぜ」
フラスコから、蟲が零れ落ちる。
それは、死にゆく少女の顔に――
それからしばらくたった後。
「気分はどうだ? 」
ガラクタの山の頂上に腰を下ろしたバルジは、目の前で跪いている少女に声をかけた。
無言で跪いている彼女だが、先ほど穴を開けられたはずの腹は完全にふさがっており、目は不気味なまでに充血し、綺麗な顔に浮かび上がった血管の中では、なにかがもぞもぞと蠢くような挙動を見せている。
「頭に霧がかかったような、
落ち着いた声色で、軍服の少女はそう答えた。
バルジはガラクタから腰を上げると、全てを見下しているかのような下品な笑みを浮かべる。
「今日からお前はレイラだ。我らがギフトメイカーの為に思う存分すべてを投げだしてくれや」
こうして、アステア・ライトレアは生まれ変わった。
ギフトメイカー・レイラ。
その役割は、
そこにアステアの尊厳はない。起こしたくもない惨劇を起こし、やりたくもない奉仕を行い、最愛の妹からは蔑まれる。
傍から見れば、その様子は学校でよくある虐めに見えるかもしれない。
だが、彼女がそれに憤りや屈辱を感じることは決してない。何故ならば、彼女は既に心身ともに玩具になってしまっているからだ。玩具は何も感じない。
その地獄から解放される日は、まだ――
「げほっ……がぼええええええええええええええええええええっ‼ 」
夜の公園、その端。
ギフトメイカー・レイラは、フェンスに手をつきながら吐血していた。
頭に巻いた包帯からは今もなお鮮血が滲み出ており、幾度となく繰り返された吐血により、身に付けているメイド服は赤く染まっている。
今にも倒れそうな彼女を、バルジはつまらなさそうな目で見つめていた。
その後方には、リイラとレド、そしてガングニール・ラーマ・シータの3体のオリジオンの姿も見える。
「そろそろ耐用年数が近くなってきたか」
まるで壊れた家電を買い替えるかのようなノリで、バルジはそう呟いた。
実際、レイラは限界だった。
彼女は幾度とない改造と戦闘により、心身ともに壊れる寸前まで来ている。洗脳し直すたびに寄生虫を頭の中に追加投入させられたせいで脳は圧迫寸前だし、無理矢理入れられた転生特典の負荷が常に彼女の身体を蝕んでいるし、人格を根本から何度も捻じ曲げられたせいで精神はほぼ崩壊しているしで、仮にここから解放されたとしても、彼女がまっとうな人生を送れる可能性は限りなく低いだろう。
だがバルジは、否、ギフトメイカー達はレイラの命には微塵も拘泥しない。
彼らにとってレイラとは、その程度の存在でしかないのだ。そこに仲間意識はない。
「ま、中々に楽しめたぜ? 最愛の妹を探してやっとのことで再会したと思ったら、今では身も心も玩具にされて、妹からも蔑まれる毎日だもんなァ。さぞ惨めだろうよ。お前もそう思うだろ、レド君」
「趣味悪すぎるんだよ、お前」
話を振られたレドは、露骨に嫌そうな顔をしながらそう吐き捨てる。
レドはバルジのことが嫌いだ。ボスであるティーダの頼みでもなければ、こんな悪趣味野郎を助けようなんてことを絶対しないくらいには。
「ティーダに命令されて来たけどさ、この調子だと僕たちの来た意味無くない? こいつ助けなくてもいいんじゃないかな」
「わたしはレイラの無様な最期が見たくて付いてきただけだし? まあ、同好の士として、必要なら手を貸すわよ」
「ああ、思いっきり遊んでやろうじゃねえか。この世界でよぉっ‼ 」
心底嬉しそうにハイタッチをするバルジとリイラを前にしたレドは、顔をしかめながらそっぽをむく。
一応レドも愉快犯じみた性格の持ち主だが、こいつらほど露骨に開く趣味に走る気はない。
――傍から見れば同じ穴の狢でしかないのだが。
「で、どーするのよ? わざわざわたし達を呼んだってことは、それなりに何か考えているんでしょうね? 」
「当たり前だっての。まずは――」
リイラに
その時だった。
「見つけたぞゲロカス共ッ!!!!!! 」
直後。
圧倒的な爆発が彼らを包んだ。
公演の敷地全体が激しく揺れ、土埃が土砂降りの雨のように降り注いでくる。
その中で、ギフトメイカーの面々は涼しい顔をして不動を保っていた。
バルジは白衣についた土埃を払いながら、土煙の向こう側に確認できた人影に対し、ため息交じりに文句を垂れる。
「あのさあ、空気読めよ。こっちはさんざんお前の復讐ごっこに付き合わされて辟易してるんだっての。いい加減にしてくれよ、俺様男にストーカーされるような趣味ないんだけど」
土煙が晴れる。
そこに立っていたのは、無束灰司だった。
昼間の戦いで負った傷はおろか、先日の池袋での戦いで受けた傷すら完治していない、立っているだけでやっとなほどにボロボロの身体で、彼はこの場にたどり着いていた。
この場を目撃している部外者がいたならば、即救急車送りにされるのは想像に難くない。それほどまでに傷つきながらも、灰司は立っている。バルジに敵意をむき出しにしている。
それほどまでに、執念を燃やしているのだ。
「なに被害者ヅラしてんだ……お前が俺から何もかも奪ったんだろうがっ‼ お前さえいなければこんなことにはならなかったんだよっ‼ 」
灰司はそう叫ぶと、ボロボロの身体に鞭打ちながらバルジに掴みかかろうとする。
しかしバルジは、灰司の腕をいとも容易く掴みとってしまう。
「お前は生まれてはいけない存在だ。お前が生きている限り、悲劇は終わらない‼ 今日ここでっ! テメエを地獄の果てまで突き飛ばしてやる! 」
「雑魚で馬鹿の癖にイキってんじゃねーよ。今まで俺様に一度も勝てなかったお前が、俺様を殺す? 無理無理、無理に決まってんだろっ‼ 寝言はあの世で言うんだなっ‼ 」
そしてバルジは灰司の腕を押しのけると、怒りのままに灰司の身体を蹴りとばした。
彼からすれば、灰司は顔を合わせるたびに罵詈雑言を吐きながら襲い掛かってくる邪魔者でしかない。その辺を飛んでいる蚊やハエと同じような存在でしかないのだ
だが、灰司からすれば、バルジは全てを奪い去った憎き相手。己の命を賭してでも殺さねばならない仇。
両者の間には、圧倒的な認識の差が存在していた。
「ま、身の程を知らない死にぞこないを相手をするのにも飽いてた頃合いだ。ここらでいっちょトドメをさして因縁の清算とでも洒落込むか」
「ほざけ、清算されるのはテメエの罪だ」
《DESIRE DRIVER ENTRY》
灰司はそう吐き捨てながら立ち上がると、デザイアドライバーを腰に装着する。
そして、ドライバーの両サイドに、それぞれパワードビルダーバックルとギガントコンテナバックルを装填する。
《SET WARNING》
バックルがドライバーに装填されると同時にブザー音のような音が鳴り響き、灰司の背後に工事現場の様な半透明なエフェクトが浮かび上がる。
「「変身っ!! 」」
《KAKUSEI EVOLT》
《WOULD YOU LIKE A CUSTOM SELECTION》
両者は敵意剥き出しの眼差しを躱し合いながら、灰司は昼間にラーマオリジオンと戦った時に変身したライダー・シーカーに、バルジは先ほど手に入れた新たな姿・エボルトオリジオンに姿を変える。
《READY……FIGTH‼ 》
ドライバーの音声と同時に、灰司の変身したシーカーの複眼が赤く発光する。
その光は、彼の怒りと憎しみを現しているかのようだった。
復讐劇、再演。
今宵、決着が着く。
いよいよバルジとの決戦が始まります。
……エボルト相手にどないせえっちゅーねん
次回 「デス&カラミティ」