【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
思った以上に長々と書いてしまっていて済まない。
4バトル同時並行とか馬鹿だろ。池袋編から何も学んでないじゃねえか!
とにかく始めてしまったからには仕方ないので、全力で書ききりますね。
それではどうぞ。
まずひとつ、言っておかなければならないことがある。
仮面ライダー3人にギフトメイカー4人。加えてオリジオンやら第四真祖やら堕天使やらのひしめく戦場が、狭い児童公園に収まるわけがない。
アクロスが二体のオリジオンと戦闘をはじめてものの数秒で、三者は公園の敷地外を抜け、夜の住宅街を疾走していた。
アクロスは久々の出番となったバイクを全速力で駆り、空を浮遊しながらマシンガンを掃射してくるアルタイルオリジオンに追われていた。
「あれれぇええええええええええ? さっきまで威勢いいこと言ってた割には、第一手がそれですかぁあああああああっ? ヒーロー辞めちゃって大人しくレイラちゃんに殺されちゃえばぁ? 」
(勝手にほざいてろっ‼ まずはこいつらをあの公園から引きはがす、そこからが戦いの始まりだっ‼ )
アルタイルオリジオンの嘲笑と銃弾の掃射を背中で受けながら、アクロスはバイクを加速させる。
あの公園で大乱闘でもすれば、間違いなく周囲の住宅街への被害が出る。というか、バルジと灰司が本気で殺し合っておきながら、ほとんど周囲への被害が出なかったこと自体が奇跡なのだ。
それを最小限にするべく、まずは敵を誘い出す。
ただ敵を倒せばいい相手側とは違い、アクロスには周囲の被害に気を配る義務がある。
――そこが、悪党とヒーローの決定的な差にして、ヒーローの隙となる。
「イッチョクセンニイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!! 」
「なぁっ⁉ 上からぁ⁉ 」
バイクを走らせるアクロス。その真上に、奇声を上げながら、ガングニールオリジオンが空から降ってきた。
空を飛べるはずのないガングニールオリジオンの、空からの奇襲。想定外の攻撃に僅かながら反応が遅れたアクロスは、乗っていたバイクごと前方に吹き飛ばされ、突き当りにあった土手を乗り越えて河原までゴロゴロと転がってゆく。
「どうやって………………⁉ こいつ、どこから降ってきた……? 」
「コウエンカラ…………トンデキタ」
「嘘だろ⁉ 」
なんとガングニールオリジオンは、律義にもアクロスの疑問に答えてくれた。それに思ってたよりも力技だった。
……と、ツッコミを入れている場合ではない。今は殺すか殺されるかの戦いの真っ最中だ。
知性の感じられない唸り声をあげながら、ガングニールオリジオンが殴りかかってくる。アクロスはガングニールの馬鹿力は痛いほどわかっている。一発でも喰らえば大ダメージは確実だ。
アクロスは横に転がってパンチを避けて立ち上がると、続くガングニールオリジオンの二撃目を左手で逸らし、そのまま腕の付け根目がけて左手でチョップを叩き込む。
「お前とは嫌になるほど戦ってきたんだ、受け流し方くらい身に付いてんだよっ‼ 」
肩関節にダメージが入り、苦悶の声をあげるガングニールオリジオン。
アクロスは追撃の手を緩めることなく、そこに続けざまに連続でパンチを叩き込み、ガングニールに着実にダメージを与えてゆく。
「ドガアアアアアアアアアアアッ‼ 」
「ぬあっ⁉ 」
が、戦局は一変。
アクロスのラッシュ攻撃をなすすべなく受けていたガングニールオリジオンが、雄たけびを開けながらアクロスのパンチを払いのけると、仕返しと言わんばかりに殴りかかってきた。
アクロスはなんとかその拳を受け止めるが、ガングニールオリジオンの馬鹿力に徐々に押され始める。
「くそっ……! コイツ、更にパワーが増してやがる! 」
「オマエッ‼ コロスッ‼ ナグリコロスッ‼ 」
「おまけにちょっとずつ知能も上がってるしよぉっ‼ 」
バキィッ!!!!!! と、音を置き去りにして両者の拳がぶつかり合う。
これまでは押されるままだったが、数々の戦いを乗り越えてアクロスが成長した今、アクロスとガングニールオリジオンは互角の肉弾戦を繰り広げていた。
「フシャァアアアアアッ‼ 」
「目くらましかっ⁉ 」
ガングニールオリジオンの拳が引っ込むと同時に、彼の首に巻かれていたマフラーが触手のように伸張し、アクロスの視界を覆わんとしてくる。
アクロスは伸ばされてきたマフラーを素早く掴むと、それを思いっきり引っ張ってガングニールオリジオンの身体を引き寄せる。
そして、
「どらっしゃああああああああああああああああっ!!!!!! 」
アクロスは全体重をかけたタックルで、ガングニールオリジオンの肉体を思いっきり吹き飛ばした。
限界を超えて引っ張られたマフラーは千切れ、その切れ端は砂のように崩れ去ってゆく。
「さんざんお前らギフトメイカーの悪辣っぷりを目にしてきたんだ。その程度の小手先の技、なんてことないんだよ」
「………………グウ」
が、アクロスの敵はもう一人いることを忘れてはいけない。
「
いつの間にかアクロスの真上に浮遊していたアルタイルオリジオンが、媚び媚び声をあげながら両手に持ったサブマシンガンを掃射してきた。
アクロスのそばにガングニールオリジオンがいるというのに、彼女はお構いなしにサブマシンガンをぶっ放す。仲間意識のなの字もあったもんじゃない。
「くっ……痛え……! いつものことだけど、仮面ライダーに変身してなかったら即死だった……」
アクロスのスーツの頑丈さに救われたが、痛いものは痛い。
這う這うの体で銃弾の雨から逃れるアクロスだが、そこに追撃が来る。
「じゃじゃーんっ☆ レイラちゃんのベコベコハンマーっ! キュートな版画にしてあげるぅ! 」
「うおおおおおっ⁉ 」
アクロスが顔をあげた先では、漫画とかでしか見たことないような馬鹿でかい金槌をもったアルタイルオリジオンが、今まさに飛び掛かろうとしていた。
アクロスが慌てて前方に転がり込むと同時に、アルタイルオリジオンの金槌が地面に触れる。
すると、ズシンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と、まるで某ガキ大将のリサイタルを耳元で聞かされたかのような衝撃がアクロスの全身を襲う。攻撃は確かに避けたはずなのに、ダメージが減衰している気配が微塵も感じられない。
が、それだけではなかった。
「まだまだ行くよーっ‼ 」
「え」
アルタイルオリジオンが指をパチンと鳴らすと、アクロスを取り囲むようにして、空中にいくつもの巨大金槌が出現する。
そして。
「はいっ、ぺっちゃんこっ♡ 」
アルタイルオリジオンが両手でハートを作りながらそう言った直後。
巨大金槌が一斉にアクロスをプレスしにかかった。
そのころ、公園では。
アクロスから行江姉妹の対処をまかされた唯が、オリジオンと化している2人と対峙していた。
「………………待っててね飛鳥ちゃん、薫さん。今助けるから」
その言葉は、今の2人には届かない。
バルジの暇つぶしで故郷はおろか、自我すら奪われ、殺し合いを強要させられている2人には、何を言っても通じない。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! 」
「グルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!! 」
ラーマオリジオンとなった薫と、シータオリジオンとなった飛鳥。
両者は互いを呼び合いながら、全身から炎を吹き出して激しくぶつかり合う。
当然ながら、唯のとる行動はひとつだった。
「たった二人の姉妹で殺し合いなんて、そんなの絶対にさせないっ‼ 」
地面を強く蹴って駆け出した唯は、2人の戦いを止めるべく間に割って入ろうとする。
が。
彼女の相手は別に存在する。
それは、既に唯の背後に回り込んでいた。
「邪魔はさせないわよ」
「!! 」
その言葉の直後だった。
ズドドドドドドドドドドッ!! と激しい音を立てながら、唯の周囲の地面から何本もの鋭くとがった触手が突き出してきた。
唯は咄嗟に立ち止まったことで回避したものの、もし判断がわずかでも遅れていれば、今頃串刺しになっていたのは想像に難くない。
「
「………………やっぱりあなたもここにいるんだね、リイラ」
唯が空を見上げると、そこにリイラが居た。
彼女は背中から昆虫の羽のようなものを生やし、それを動かして空に浮かんでいた。
その人物の乱入に対して、唯はどこか冷めたような反応だった。まるで、最初からそれを予期して怒下のようだ。
「そうよ。池袋の時は全然話にならなかったけど、成長してその力を使いこなせるようになった今ならば、ディナーとして不足無しといったところね」
リイラの言葉を受けて、唯は自分の手のひらを見つめる。
つい最近になって覚醒した、名前すらわからない力。
池袋の一件で目覚め、制御に成功したこの力のことを、唯は何も知らない。
「あなたは……この力について何か知ってるの? 」
「それは"失われた女神の力"。遠い昔に朽ち果てたはずの、その残骸。確かなのはそれだけよ」
それが何を意味するのかは、唯には理解できない。
だが、リイラはこれ以上のことは話す気がないらしい。
「続きは……………ディナーの後にしましょうか? 」
「ごめんだけど、あんたの今日のディナーはお預けになるかもね。だって私、食べられる気なんてさらさらないからっ! 」
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッ!!!!!!!!!!! と、リイラの真下の地面から、新たな触手がいくつも出現する。
それと同時に、唯の全身が光に包まれ、ぴっちりしたレオタード風の衣装の上にメカめかしい装甲がくっついた、何処かの変身ヒロインかなんかの様な格好の戦闘スタイルに移行する。
「
「? 」
「それがこの姿の名前。たった今そう名付けた」
「あっそ、どうでもいいからさっさとくたばってよ」
「そっちこそさっさとくたばれっ! 飛鳥ちゃん達を助けるのは私だっ! 」
そして。
世界の摂理を逸脱した二人が、再び衝突した。
「さあ始めるわよっ!! テメエら全員もれなくグサグサバキバキにして差し上げますので、ごかんしゃしてくださいましっ!! 」
「レイナーレ、あんた口調滅茶苦茶過ぎない⁉ 」
バトルの幕開けは、シエスタオリジオンとカワラーナのそんなやりとりからだった。
シエスタオリジオンが洋弓の弦を引っ張ると、何処からともなく光の矢が弓に装填される。
そして、放たれる。
「キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!! 死んじゃえ死んじゃえ」
「うわっ⁉ 」
シエスタオリジオンの放った光の矢は、まるで生きているかのように自在に軌道を変えながら、執拗にユナイトを射抜かんと追跡してくる。
いや、彼だけではない。直後に放たれた何本もの光の矢が、古城や堕天使達にも同じように自動追尾を仕掛けてきている。彼女は――レイナーレは、本気で皆殺しにする気なのだ。
「目を覚ますっす! ウチらずっと一緒にやってきたじゃんかよォ⁉ 」
「こちとらギンギンになるレベルで正気よォッ!! それにねぇ、バルジ様に改造してもらいながら裏切った負け犬なんか必要ないのよねぇ! 」
「血の涙流しながら殺しにかかってる奴が正気なわけないっての!! 」
光の矢を回避しながら、カワラーナが眩く光る魔力弾を指先から放つ。
魔力弾は、空気を切り裂きながら一直線にシエスタオリジオンに向かうが、その鼻先を目前にして、横から飛んできた光の矢に貫かれて消滅する。
「無駄よ、あんた達と私の実力差を知らないわけではないでしょう? 」
「たかが実力差ごときで諦めるわけにはいかないの! あんたは私たちの大事なリーダーだしっ、それにこのまま糞みたいなマッド野郎にやられっぱなしだなんて、堕天使のプライドが許せない! 」
絆と反骨心を糧になんとかしてシエスタオリジオンに食らいつこうとするカワラーナだが、及ばない。
自由自在に軌道を変える光の矢が、執拗にカワラーナの身体を貫こうとしてくる。
「このっ……しつこいっての! 」
「やめろレイナーレッ‼ 正気に戻れッ‼ 操り人形のままでいいのか⁉ お前はそんなタチじゃあないだろう⁉ 」
「さっきからギャーギャー煩いのよ、バルジ様を満足させられなかった失敗作の玩具の癖にッ‼ 」
「ッ‼ 避けろ‼ 」
ドーナシーク達の必死の呼びかけを煩わしく感じたレイナーレ――シエスタオリジオンは、キレ気味に光の矢を乱射する。
複雑怪奇な軌道を描きながらドーナシークに迫りくるそれは、古城が叫ぶよりも早く、ドーナシークの胴体を幾度も貫いた。
「げはっ………………! 」
「おいアンタッ‼ 大丈夫か⁉ 」
「先輩っ、後ろから来てますッ‼ 」
血を吐きながら膝をついたドーナシークに思わず駆け寄る古城。そこに、雪菜が
古城の背後には、迫りくる無数の光の矢。
圧倒的に、回避が間に合わない。
光が来る――その直前。
「屈めッ‼ 」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉ 」
滑り込むユナイトの声。
咄嗟にそれに従って身をかがめる古城とドーナシーク。
その直後、ユナイトの右手に握られていたフュージョンマグナムから放たれた光弾が、古城達に迫っていた光の矢達に次々と命中していった。
カワラーナの魔力弾が効かなかった通り、この光の矢を打ち消すことは不可能。だが、起動を逸らすことはできる。互いに正面衝突したフュージョンマグナムの光弾と光の矢は、互いに軌道を予期せぬ方向に曲げられ、そのまま周囲の地面や遊具に激突して霧散する。
「す、すごい……」
「この程度、造作もない。なるべく光の矢を逸らすんだ、打ち消したり撃ち落としたりができない以上、それが最善策だ」
「簡単に言ってくれるなあ! 」
さも全員ができる前提で言っているかのようなユナイトの物言いに、古城は頭を伏せたまま悪態をつく。
「ただの人間風情が一丁前に抵抗しちゃってさあ……! あんただけはただでは殺さないわッ‼ 」
「強がるのはやめたらどうだ。もう既に限界が近いんじゃないのか? 」
「は、何言ってんのよ。私はまだ――がっ、ああっ⁉ 」
ユナイトの言葉を鼻で笑おうとしたシエスタオリジオンだったが、その言葉を途中まで紡いだところで、突如として激しい頭痛が彼女を襲った。
引こうとしていた弓をその場に落とし、頭を抱えながら苦しむシエスタオリジオン。
彼女の豹変に困惑する堕天使達とは対照的に、ユナイトと、戦いを観戦していたレドだけは冷静さを保っていた。
「やっぱバルジの奴、はじめから使い潰す気しかないじゃん。洗脳のクオリティもレイラと比べたらはるかに劣っているし、素体への負担の軽減も全く考えていない。
「何を………………言っているんだ………………⁉ 」
「早く助けないと手遅れになるということだ。このままじゃ彼女の身体が持たない」
「‼ 」
ユナイトの言葉で、ようやく堕天使達はレドの発言内容を理解した。
バルジはあえて、レイラ以上に負荷を伴う洗脳と改造をレイナーレに施した。ただそのほうが面白そうだから。それ以外の理由は、彼にはない。
これがバルジの趣向。
放っておけば全てを遊びの資材として使い潰してしまう、究極の簒奪者にして破壊者。何としてでも止めなければならない災厄。
「兎に角スピード勝負だ。取り返しのつくうちに、全てを終わらせる」
「やってみやがれよ雑魚。生まれ変わった私の本領はこれからよ」
調子を取り戻したシエスタオリジオンが弓を構えるのと、ユナイトがフュージョンマグナムの銃口を向けるのは、同時だった。
そして。
光の矢と光弾が、再び衝突した。
そして、本戦。
仮面ライダーソーサラー――灰司と、エボルトオリジオン――バルジは、互いに目に見えて消耗し始めていた。
怪我の関知しない内から連戦に身を投じていたソーサラーと、渾身の一撃をそのまま跳ね返されて大ダメージを負ったエボルトオリジオン。
先に膝を地面から話したのは、ソーサラーだった。
「っ………………さあ、邪魔者はいなくなったんだ。第2ラウンドと行こうぜ」
「ケッ、どいつもこいつも寄ってたかって俺様の邪魔をしやがる。ヒーローってのはいつから集団リンチを正当化する卑怯者の集団に成り下がったんだ、ああ? 」
「被害者ヅラしてんじゃねえぞこのゴミクズ野郎っ‼ 」
ソーサラーは怒りのままに地面を蹴って走り出す。
それと同時に、エボルトオリジオンの両足を縛り付けていたボロボロの鎖が霧散し、ソーサラーの変身も解除され、灰司の素顔が露となる。魔力切れで鎖はおろか、変身すら維持できなくなったのだ。
もう魔法使いの力は使えない。
灰司は的確かつ迅速に、数多の手札の中から次の一手を選び取る。
「変身ッ‼ 」
《バグルアップ! デンジャー! デンジャー! (ジェノサイド!)デス・ザ・クライシス! デンジャラスゾンビ!!(Woooo!)》
灰司が選択したのは、仮面ライダーゲンム・ゾンビゲーマー。
どうやら、満身創痍の肉体をゾンビの不死性で補うつもりのようだ。それほどまでに、灰司は戦闘を継続しようとしているのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! 」
「魔力枯渇したからって次はゾンビアタックかよ。どうした、出血多量で思考能力にぶってきたりしてんのか、ああ? 」
鎖が消えたことで自由を手に入れたエボルトオリジオンは、手のひらから光線を放つ。
それは完璧な形でゲンムの顔面に直撃するが、突撃してくる彼を止めるには至らない。ゾンビゲーマーの不死性で攻撃を無理やり耐えながら、ゲンムはエボルトオリジオンの眼前まで進撃する。
「消えろッ‼ 」
「目障りなんだよゾンビ野郎! そのままくたばりやがれっ! 」
バキイッ!!!!!!!!!!! と激しい音と火花を飛び散らせながら、ゲンムとエボルトオリジオンの拳が衝突する。
両者の拳がぶつかった直後、同極の磁石同士が反発し合うように、2人の身体が間反対の方向に吹っ飛んでゆく。
ゴロゴロと地面を転がりながらもなんとか体勢を整えて立ち上がろうとするエボルトオリジオンだったが、そこで異変に気付く。
「ッ‼ なんだッ……身体が重い…………⁉ 」
「………………今の一撃で、テメエの体内に高濃度のバグスターウイルスをぶち込んだ。感染すれば即座に発症しちまうくらいにドギツイやつをな」
そう。
ゲンムは先ほどの一撃で、エボルトオリジオンの肉体に超高濃度のバグスターウイルスを注入していたのだ。それにより、エボルトオリジオン――バルジの肉体は、現在進行形で著しく衰弱していっているのだ。
バグスターウイルスは、普通の方法では治療不可能な常識外のウイルス。通常の者と比較しても毒性を極限まで増幅されたそれは、エボルトオリジオンの身体を猛烈に蝕んでゆく。
だが彼は、ただで終わるような男ではない。
「おいおい、俺様の頭脳を見くびってもらっては困るんだ。こんな病気、すぐにでもこの場で治療してやるぜ」
「させると思うのか? 」
次の瞬間、エボルトオリジオンの目の前にいたはずの灰司の声が、後ろから聞こえた。
その異変に気付いた時には、すでに手遅れだった。
「ライダーキックッ‼ 」
《RIDER KICK》
「ッ‼ いつの間に変身をぉおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおををををおをををおおおおおッ⁉ 」
ゲンムからダークカブトに変身を切り替えた灰司が、クロックアップで灰司の真後ろに回り込み、ライダーキックを今まさに叩き込もうとしていたのだ。
バグスターウイルスに感染したことで反応速度の鈍っていたエボルトオリジオンでは、攻撃には気づいても回避行動が間に合わず、結果として、顔面に全力のライダーキックをぶち込まれ、サッカーボールのようにぶっ飛んでいってしまう。
「がああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!! 」
「はあ、はあ……とりあえず、今のは効いただろ……これでもまだ遊びだとかほざくつもりかよ、この糞野郎」
公園のフェンスを突き破り、アスファルトの上に放り出されたエボルトオリジオン。
ダークカブトはふらふらとした足取りで、エボルトオリジオンの元へと歩み寄ろうとする。
「遊びに決まってんだろ。俺様は転生者、選ばれた人間だ。他の凡庸な雑魚共とは違うんだって何度も言ってるだろ」
「………………もう、ここから先は喋らねえぞ」
負傷のせいで訛りのように重くなった足を動かしながら、ダークカブトはそう宣言した。
憎しみをぶつけるのにも、他者を踏みつけるのにも、言葉はいらない。元より対話の余地がない相手だったのだから、これまでのやり取り自体が無駄でしかなかった。ここから先は、より効率的に傷つけあうことができる。
《1,2,3》
再びダークカブトはライダーキックを放とうと、ベルトに装着されているダークカブトゼクターのボタンを押す。どす黒いタキオン粒子が頭部の角を経由して、ダークカブトの右脚に収束してゆく。
ガシャン、とゼクターホーンが動かされると同時に、ダークカブトは空高く飛び上がる。
そして、空中で右足を前に突き出し、全力のライダーキックでエボルトオリジオンに引導を渡そうとする。
もはや、両者の間には雄たけびすら存在しない。
ようやくエボルトオリジオンが立ち上がった時には、既にダークカブトの右足が眼前に迫っているところだった。
(これで終わる……これで、終わらせられる………………! )
勝利を確信するダークカブト――灰司。
が。
「フェーズアップ」
ライダーキックを受ける直前に、エボルトオリジオンはそう口にした。
すると。
ゴワァアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と。
エボルトオリジオンの全身から赤黒いガスのようなものが噴き出し、灰司の意識を数秒の間だけ吹き飛ばしてしまった。
「………………何が起きた? 」
数秒間のブラックアウトから復帰した灰司が最初に目にしたのは、粉々に砕け散ったダークカブトゼクターだった。
マスクドライダーシステムの動力源であるゼクターが破壊された以上、灰司はダークカブトの変身を維持できない。結果として、再び灰司は生身をさらけ出すこととなっていた。
周囲には赤黒いガスのようなものが充満しており、視界は殆どふさがれている。灰司以外にもギフトメイカー達と交戦している輩はたくさんいたはずなのだが、彼らはどうなっているのだろうか。
「お前、俺様を本気にさせちまったんだぜ? 後悔しても知らねえからな? 」
ガスの向こうからバルジの声がする。
声のした方を灰司が凝視していると、そこからバルジが姿を現した。が、その姿は先ほどまでとはまるで違う。
全体的はシルエットはエボルトオリジオンに似ているが、赤黒い体色だったのが全体的にモノクロに変化しているほか、まるで体内から突き破ってきたかのような生え方をした全身のトゲや、後頭部から垂れている赤いコード……というか血管のようなもの、そして不気味に胎動する露出した脳味噌など、グロテスクさが寄りましたような見た目に変化している。
見るからに痛ましい姿に変貌しながらも、彼は笑っている。
「エボルトオリジオン・フェーズ2。ここからは遊びなんかじゃねえ、本気でテメエを排除するための戦いだ」
ここからが彼の本気。
本気となったバルジ――エボルトオリジオン・フェーズ2を目の当たりにした灰司だが、彼のやることは変わらない。
敵を討つ。それだけだ。
「変身」
カードデッキを腰のVバックルに装填し、仮面ライダーリュウガに変身する。
それと同時に、何処からともなく赤黒いガスを突き破り、リュウガの使役する黒龍型のモンスター・ドラグブラッカーが飛翔してくる。
拳を強く握りしめるリュウガ。
痛みはとっくに麻痺している。これならば、死ぬ気で戦える。
全てを滅茶苦茶にしてしまう生まれながらの厄災と、命を投げ出した復讐者。
両者の決戦は、次なるステージに移行する。
オリジオン紹介のこーなー
■シエスタオリジオン
変身者:レイナーレ
元ネタ:シエスタ姉妹近衛兵(うみねこのなく頃に)
能力:変幻自在・伸縮自在の光の矢
バルジに洗脳されたレイナーレが強制的に変身させられた、ウサギとカラスがまぜこぜになったような見た目をしたオリジオン。
彼女本来の人格はほとんど存在しておらず、バルジの忠実なる兵隊として邪魔者を排除する。
光の矢の射程距離は無限。おまけに物質を貫通する。
防ぐには魔術的な防御手段が必須。