【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
いやなんでこれ1話に纏めようとしたんだろうか。
現在の対戦カード
■アクロスVSアルタイルオリジオン・ガングニールオリジオン
■灰司VSバルジ
■唯VSラーマオリジオン・シータオリジオン・リイラ
■ユナイト・古城・雪菜・カワラーナ・ミットルテ・ドーナシークVSシエスタオリジオン
■観客 GUMI レド
とりあえずバルジ以外はこの回で決着つくと思います。
灰司君の戦いは次回に回しますう
水飛沫と土埃が降り注ぐ中、レイラ——アルタイルオリジオンは爆心地を凝視していた。
手元の一つを残して召喚したハンマーを消去したアルタイルオリジオンは、アクロスの生死を確かめるべく、ハンマーを肩に担ぎながら悠々と歩いてゆく。
「死んだかな? 」
「ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ? 」
アルタイルオリジオンの声に、唸り声で応えるガングニールオリジオン。
その様子はまるで、飼い犬と飼い主のようだった。
「ぺっしゃんこのぐっしゃぐしゃになってるかなー? なっていたらご主人様に褒められたいなっ☆ 」
血の涙を流しながら、うきうき気分で歩を進める。身体は既に限界を迎えているはずなのに、なおもバルジの為に生きようとする。自分が何をしているのかすらわからないままに使い潰される。そんなことがあっていいはずがない。
アルタイルオリジオンが、アクロスの存在した辺りの地面を軽く足で叩く。
その直後だった。
「せいやあああああああああああああああああああああああああああああああああっ! 」
《PENDLUM CROSS BREAK!》
「がはっ⁉ 」
奇術師とドラゴンの入り混じったような姿――リンクペンデュラムとなったアクロスが、真後ろからアルタイルオリジオンに跳び蹴りをぶち込んだ。
アクロスは死んではいなかった。ハンマーによる一斉攻撃の寸前にリンクペンデュラムにフォームチェンジし、瞬間移動で包囲を抜けていたのだ。
必殺技をもろにくらったことで、ハンマーを取り落とし、近くの草むらに頭から墜落するアルタイルオリジオン。口から血を流しながら顔をあげた彼女の目の前には、まるでショーの真っ最中の奇術師を思わせる悠々とした態度で佇むアクロスが居た。
「レディースエーンドジェントルメーンッ! 華麗……とはいかねえが、脱出ショーは成功したぜ? 」
「……まだ生きていたのォ? ヒーローってのはどいつもこいつもほんっとしぶといね。反吐が出るほど嫌いになっちゃいそっ☆ 」
「死ぬわけねーだろ。俺にはまだ救えてない奴がいるんだ」
「じゃあもういっぺん食らわせてアゲルゥッ♡ ぐっちゃぐちゃミンチに生まれかわーれっ♡ 」
「そいつはもう喰らわねえッ‼ 」
激昂したアルタイルオリジオンは、新たなハンマーを手元に召喚すると、それをブーメランの如く投擲した。
何十キロもの鉄の塊がピッチャーの剛速球並みの速度で飛来してくる。これを生身でくらえば、そのままぶち当たった部位が消し飛んでしまいかねない。
「なら……コイツでも喰らいなッ‼ 」
「⁉ 」
アクロスがそう叫ぶと、アクロス・リンクペンデュラムのローブ状のアーマーが変形し、ドラゴンの尾を形成する。そしてそれを思いっきりぶん回し、アルタイルオリジオンの投擲したハンマーを警戒な音と共に打ち返してしまった。
アクロスを殺すべく投擲された超質量の鉄の塊が、そっくりそのままアルタイルオリジオンの脅威となって牙を剥く。
「チッ‼
舌打ち気味にアルタイルオリジオンがそう叫ぶと、彼女に迫りつつあったハンマーが消失する。
入れ替わりに、ガングニールオリジオンが弾丸のような速さでアクロスに突撃してきた。
「オマエ、ブッコワスッ‼ 」
「コイツッ………………⁉ 」
その驚異的な速さに、アクロスは回避するのが精いっぱいだった。
ガングニールオリジオンの突き出した拳は、アクロスの喉元ギリギリをかすめて通過してゆく。これまでの知性の欠片もない無軌道な暴走ではない。人の形をした殺人マシーンとして、的確に殺しにかかってきている。
油断をすれば、そのまま殺される。
ガングニールオリジオンの本気の一撃を回避したアクロスは、より一層気を引き締めてオリジオン達と対峙する。
「ドゥワアッ‼ 」
「そうらっ‼ 」
ガングニールオリジオンのドロップキックをアクロスは華麗な身のこなしで回避すると、腰に携帯していた銃剣・ツインズバスターを抜き、すれ違いざまにその刃をガングニールオリジオンの胴体に叩き込む。
勿論、この程度で倒れるような相手ではない。ガングニールオリジオンは脇腹に一撃を受けながらも、全くひるむことなくアクロスに襲い掛かってくる。
「てぇ~いっ♡ 」
「くっ⁉ 」
そこにすかさずアルタイルオリジオンが加勢し、サーベルの二刀流で斬りかかってくる。アクロスは、片手にツインズバスターを持ってアルタイルオリジオンの剣撃をいなし、反対側ではガングニールオリジオンの猛攻を受け流す………………が、そんな無茶が長続きするわけもなく、2人の同時攻撃を受けて鉄橋の土台に叩きつけられる。
「ざーこざーこ♡ ご主人様の邪魔なんか絶対させないんだから♡ 」
「どうでもいいけど、口調コロコロ変わりすぎじゃねーのお前……それも洗脳の影響だったりするのか? 」
川の浅瀬から起き上がりながら軽口をたたくアクロスに、アルタイルオリジオンは目に見えて不機嫌そうな態度をとる。
そして、手元にマスケット銃を出現させると、その銃口をアクロスに向ける。
「ひっどーい!! レイラちゃんのとご主人様の絆を洗脳の一言で片づけないでよねっ‼ 」
「明らかに目がイッてる奴が言うことじゃねえだろっ‼ 」
《LEGEND LINK! 着いてきやがれ天の道!光速のオンリーワン!LINK KABUTO!》
アルタイルオリジオンが引き金を引くと同時に、アクロスはライドアーツを付け替え、リンクカブトに変身する。
アクロスがカブトライドアーツをドライバーに装填すると、どこからともなくカブトゼクター型のアーマーが飛来し、霧散するリンクペンデュラムのアーマーと入れ替わるようにアクロスに覆いかぶさり、フォームチェンジが完了する。
「クロックアップっ‼ 」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼ 」
フォームチェンジが完了すると同時に、アクロスはリンクカブトの固有能力であるクロックアップを発動させる。
瞬間、アクロスの姿がブレたかと思えば、刹那の間にガングニールオリジオンの身体が真上の橋桁に叩きつけられ、アルタイルオリジオンの手元のマスケット銃が真っ二つにぶった切られていた――ように、アルタイルオリジオンには見えた。
これが常人から見たクロックアップ。アクロスは超高速で移動しながらガングニールオリジオンを真上に吹っ飛ばし、アルタイルオリジオンの得物をツインズバスターで両断した。それを現実時間では1秒もかからない内に成し遂げていたのだ。
「ずるいずるいずるいっ‼ そっちだけクロックアップとかズルいの極みだよっ‼ 」
「2対1の時点でズルいだろっ! 」
「コヒュッ」
クロックアップによって1秒足らずでアルタイルオリジオンの目の前に到達したアクロスは、駄々をこねるアルタイルオリジオンに悪態をつきながら、飛び膝蹴りを至近距離から叩き込む。
胸部に叩き込まれた鋭い一撃は、一瞬だけアルタイルオリジオンの呼吸を妨害するとともに、彼女の口から血の混じった痰を吐き出させる。
至近距離からの飛び膝蹴りを喰らい、サッカーボールのように飛んでいくアルタイルオリジオン。
そこにすかさず、ガングニールオリジオンが雄たけびを上げながら突撃してくる。
「ゴォウオオオオオオオオオオオオッ!! 」
「ライダーキックッ‼ 」
が、それを見抜いていたアクロスは、即座にタキオン粒子を右足に充填させると、振り向きざまの回し蹴りを真正面からぶち込んだ。
骨が折れるような音を発しながら、ライダーキックッを受けたガングニールオリジオンが吹っ飛んでゆく。アルタイルオリジオンとは反対側、無素のクレーターに覆われた川辺に。
「はぁっ……はあ……」
足を振りぬいたアクロスは、その体勢のまま息を切らす。池袋の時よりはマシとはいえ、一日に二度戦うのはそこそこに疲れる。
そこにべちゃりと、アクロスの真後ろで液体が地面にこぼれるような音がする。
振り返ると、口から血を吐きながら立ち上がるアルタイルオリジオンの姿がそこにはあった。
「ゴフゥッ……‼ 」
「っ……‼ もうやめろッ! これ以上はお前が持たないだろっ!! 」
「ご主人様じゃない癖にごちゃごちゃ煩いっ!! わたしはクソ雑魚奴隷メイドのレイラちゃん!! この身この魂が朽ち果てようとも、ご主人様の為に全てを捧げるっ!! それがレイラちゃんの命の使い方なのぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ♡ 」
「そんな命の使い方、俺は認めねえぞっ……‼ たとえ腐り果てた悪人でも、そんな風に命を投げ出していいわけがないっ!! 償うことも悔いることもできずに使い潰されるなんて、そんな結末には絶対させないっ!! 」
《LEGEND LINK!! SET UP!! ネプテューヌッ!! 》
ダッ!! と、アクロスとアルタイルオリジオンが同時に地面を蹴る。それと同時に、アクロスは腰のホルダーからネプテューヌライドアーツを取り出し、ドライバーに装填しているカブトライドアーツと取り換える。
アクロスがライドアーツを付け替えると、リンクペンデュラムの装甲が解除され、入れ替わりに紫色に発光する黒い装甲がアクロスの全身に装着されてゆく。それと同時に、手に持ったツインズバスター・ソードモードにも新たな刃が追加され、片手剣から大剣に変化する。
リンクネプテューヌ。アクロスが最初に手に入れた絆の結晶だ。
「ぶった切ってあげるうううううウウウウウウウウウウッ!!
アルタイルオリジオンは無数のサーベルを自分の周囲に召喚すると、そのうちのひとつを手に取ってアクロスを迎え撃とうとする。
が、剣を構えようとした寸前で、彼女はまたしても吐血する。
それが致命的な隙となった。
次の刹那。
ズバシャァアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と。
アクロスは背中に追加されたスラスターと機械の翼で急加速しながら、そのまま大剣となったツインズバスターで、アルタイルオリジオンを思いっきりぶった斬った。
「………………もうやめろ、お前をバルジの玩具から解放してやるから、もうこんな真似はやめろ」
――その仮面の裏側の顔は、憐みの表情でいっぱいだった。
「あ、アア………………⁉ 」
よろりと、腹部を斬られたアルタイルオリジオンがアクロスの方を振り返る。
その時一瞬だけ、彼女はオリジオン態から戻ったかのように見えたような気がした。その時見えた顔は、死人のようにしか見えなかった。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! 」
アルタイルオリジオン――レイラの敗北を悟ったガングニールオリジオンが、雄たけびを上げながら突撃してくる。
「2人纏めてぶった斬ってやる、来いッ!! 」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼ 」
《EXEDRIVE CROSS BREAK‼ 》
アクロスはツインズバスターの柄にネプテューヌライドアーツを差し込んで必殺技を発動させると、その柄を強く握りしめる。
紫色の光が刀身に充填され、アクロスの複眼が紫色に発光する。
そして。
目も眩むほどの閃光が、アルタイルオリジオンとガングニールオリジオンの視界を塗りつぶした。
ユナイト、暁古城、姫柊雪菜、ミットルテ、カワラーナ、ドーナシーク。
彼らは6人がかりでシエスタオリジオンと化したレイナーレに挑んでいながら、戦況は互角だった。
理由は単純。
「さあズタズタのベキベキにしてあげるわッ!! 貫かれなさいッ!! 」
「くそっ、この光の矢……滅茶苦茶うざったいぞっ!! 」
シエスタオリジオンは堕天使達の攻撃の隙間を縫うように移動しながら、弓を引いて光の矢を放つ。
射程は無限、何処までも標的を追尾する掟破りの飛び道具。それが一斉に、ズバババババッ!! と空気を無理やり押し開けるような音を立てながら、ヒーローたちを亡き者にせんと襲い掛かる。
「このっ…………おおおおおッ!! 」
「避けるだけ無駄だ、兎に角軌道を逸らすしかないっ!! 」
ユナイトの声がした直後、ギャリギャリギャリギャリッ!! と激しい摩擦音を立てながら、光の矢が雪菜の雪霞狼の穂先を滑ってゆく。
「しぶといわねっ……いい加減くたばりなさい失敗作どもッ!! バルジ様の期待に沿えなかった欠陥品の癖によくもまあのうのうと生きていられるわね! 」
「あんなマッド野郎の玩具になるくらいなら、失敗作で結構結構っ!! いい加減聞き飽きたし、さっさとくたばって正気にもどれっつーのっ‼ 」
「カワラーナ………………いいわ、まず貴女から
バシュンッ、と放たれたカワラーナの魔力弾を最小の動作で回避しながら、シエスタオリジオンはそう口にした。
瞬間、場の空気が一気に変貌する。
まるでここからが本気だとでも言わんばかりに。
「あんたってやつは……ふざけるのも大概n」
カワラーナの言葉はそこで途切れる。
理由は単純明快。
シュルルルルルルルルンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と。
眼にもとまらぬ速度で放たれた光の矢が、ロープのようにカワラーナの首に巻き付いていたからだ。
「かっ………………はっ………………⁉ 」
何が起きたのかわからない、といった表情を浮かべながら、光の矢によって
彼女の首元には、長く伸びた光の矢が巻き付いている。その有様はもはや矢というよりも光のロープと行った方が適切のように見える。
「おいカワラーナッ⁉ 」
ドーナシークが慌てて駆け寄ろうとするが、
「邪魔」
「がっ………………⁉ 」
次の瞬間には、彼の首にも同様に光のロープが絡みついていた。
シエスタオリジオンは首つり状態となったふたりを乱雑に振り回し、遠心力をも利用して2人を絞殺せんとする。
このままだと2人とも仲良く首吊り死体は確定。しかし単純な物理攻撃では、あの光のロープを破壊することができない。
「ならばもっと破壊力のある一撃を食らわせるまでだっ‼ 」
「そんなものがあるのか⁉ 」
古城の言葉にユナイトは無言でうなずくと、折りたたんだ状態で背負っていた槍型武装・ユニオンジャルグを手に取る。
そしてそれを2つに分割し、腰に携帯していたフュージョンマグナムとガチャガチャと組み合わせ、長い銃身を持つライフルへと変形させる。これこそがユナイトの奥の手。槍と拳銃を合体させたライフル・アブゾーブスナイプの完成だ。
「槍と拳銃が合体した………………⁉ 」
「そのままぶっ放すっ‼ 」
ユナイトが銃口を空に向けると同時に、ガシャンガシャン‼ とアブゾーブスナイプの砲身の表面が変形し三脚となる。シルエットだけ見れば野外に置かれた天体望遠鏡だが、実際には滅茶苦茶物騒なシロモノが、この場に出現していた。
そして、スコープを覗き込みながらユナイトがアブゾーブスナイプの引き金を引く。
ズバンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と地面を激しく揺らしながら、二発の弾丸が発射される。
《EXTEND CROSS BURST‼ 》
二発の弾丸がカワラーナとドーナシークを吊っている2本のロープに触れた瞬間、その弾丸達は極小のブラックホールに変化し、ロープを虚空へと引きずり込む形で切断してゆく。
極小といえどもその吸引力、それによって生じた突風はすさまじいものであり、シエスタオリジオンもユナイトも、戦闘に参加していた全員(+遠くからじっと観戦していたGUMI)を空中に巻き上げる形でその場から吹き飛ばしてしまう。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉ 」
「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉ いくら助けるためとは言ってもブラックホールはやりすぎじゃないっすかああああああああああああああああああああああッ‼ 」
「手持ちではこれが最善策だったんだ、許せ」
「あのさっきから気配消しながら観戦していただけのか弱い一般ピーポーの私を巻き込まないでくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ⁉ 」
そして飛んで飛ばされ、一行は住宅街の端にひっそりとくっつくように存在していた廃工場まで吹っ飛んでいく。なんだか神の意志的なものが介在しているような
ドサドサドサドサッ‼ と人間の耐久力をガン無視した高さから落下していくユナイト達。しかし、ユナイトとシエスタオリジオンは自前の耐久性で、堕天使達は黒い翼で、古城・雪菜・GUMIの3人は堕天使達たちに抱えられる形で、それぞれ転落死を回避する。
「大丈夫か、お前ら」
「やりすぎよっ……まあおかげで助かったけど」
ユナイトの言葉に、首に巻き付いたまま残った光のロープを引きちぎりながらそう答えるカワラーナ。
彼らの目の前には、血を吐きながらよろよろと立ち上がるシエスタオリジオン。
「ふざけるんじゃあないわよっ‼ 全員纏めてワイルドに串刺しにしてやるっ‼ 」
「先輩、出番ですっ‼ 」
シエスタオリジオンが大量の光の矢を放つと同時に、古城が無言で前に出る。
その周囲には、荒れ狂うほどの濃密な魔力の奔流が生まれていた。
「
「皆さん、先輩から離れてくださいっ!! 」
雪菜に言われるがまま、一斉に古城から距離をとるユナイト達。
古城が叫ぶと同時に、彼の背後に緋色の
自身の膨大な魔力を高周波の振動に変換し、周囲のあらゆる物体をずたずたにしてしまう破壊の化身。最初に顕現させた"
双角獣の角から発せられる高周波音波は、うねりながら飛来してきた光の矢をずたずたに切り裂いてしまう。規模が尋常ではないとはいえ、ただの物理現象が通用したあたり、どうやらあの光の矢にはちゃんとした物理的実態が存在するようだ。
そうして光の矢を粉砕した振動は、そのまま周囲の地面ごとシエスタオリジオンを蹂躙する。神代の兵器すら粉微塵にしてしまう破壊の権化が、彼女の全身を貫いてゆく。
「あ、あれ、レイナーレさん、死んじゃわないっすよね……」
「先輩ストップっ!! これ以上眷獣を暴れさせたらあの人死んじゃいますッ‼ 」
「いややらせたのお前だからな⁉ 」
流石にやりすぎたと判断した古城がすぐに眷獣を非実体化させたことで、シエスタオリジオンを襲う暴力は中断された。
高所から落とされるわ超音波で全身ズタズタに切り裂かれるわで、シエスタオリジオンは既にボロボロ になっていた。
しかし彼女は諦めない。自らの命よりもバルジを優先するようにマインドコントロールされているシエスタオリジオンは、満身創痍の身体に鞭打ちながらなおもユナイト達との戦いを続けようとする。
「なめ、やがってえぇ………………‼ 転生者でもない雑魚の分際でバルジ様の邪魔を……! 」
「トドメだ、一気に全てを叩き込むッ!! 」
「なんだか虐めをしているよう気分だが……すまん、これもお前を救うためだ! 」
ザッ、と。
ユナイト達が横一列に並ぶ。
彼らの思いはひとつ。これ以上弄ばれる前に、
「これで終わらせますッ‼ 」
「ああ、こんな胸糞悪い遊びは終わりだ! 」
「やってやるっすよ、ここまで来たからにはっ‼ 」
「レイナーレには悪いけど、全力でぶっ飛ばすわよ! 」
「"
「撃ちぬくッ‼ ジャスティスサイド・デットショット‼ 」
《CROSS BURST》
先陣を切ったのは、雪菜の雪霞狼。魔力を切り裂く銀の矛が全力で投擲され、シエスタオリジオンの防御を打ち崩す。
そこから先は暴力の嵐だった。
堕天使達の高濃度の魔力の塊、古城の眷獣の荒れ狂う雷霆、そしてトドメはフュージョンマグナムから放たれた高密度の光弾。過剰なまでの一斉攻撃が、シエスタオリジオンに次々と襲い掛かる。その壮絶さに、周囲の音は完全に置き去りにされていた。
「………………ぁ」
全ての攻撃が命中してからやや遅れて、ドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と凄まじい轟音と爆発が発生する。
先程のユナイトのブラックホールに匹敵するレベルの爆風が容赦なく周囲に吹き散らされ、誰もかれもが目を開けていられなくなる。ライダースーツで全身を覆っているユナイトでさえ、爆風でまきちらされた粉塵で視界不良となるほどに、壮絶な爆発だった。
「げほっ……これ死んでないっすよね⁉ 生きてるっすよね⁉ 」
「当たり前だ、最大限に加減はした。古城の眷獣の暴走込みでな」
「だから俺、こういう共闘は苦手なんだって……」
レイナーレの生存を不安視する者、その不安を払拭しようとする者、やらかしたのではないかと不安になる者と、様々な反応を見せる面々。
しばらくして、土煙が晴れる。
そこにいたのは、ボロボロになって地面に横たわるレイナーレだった。
それを目にしたドーナシークが慌てて駆け寄り、レイナーレの生死を確認する。
「………………息はしている、死んではいない」
「でも、これだけボロボロにしちゃったんすから、きっと目が覚めたらブチ切れっすよね」
「それでもいいよ。死んでいたらそれすら叶わないんだからさ」
ミットルテの言葉に、GUMIはそう答える。
ともかく、彼らの当初の目的は達せられた。あとは目覚めたレイナーレが正気を取り戻していればミッションはコンプリートだ。
「………………最後の最後で何いい感じに台詞取ってるんだお前」
「いやそうしないとわたし存在感マイナスになっちゃうからね⁉ 」
一人の少女を救うための戦い。
その最後は、なんとも気の抜けた幕引きだった。
時間は、ユナイト達の加勢する直前に遡る。
行江姉妹を救うべく、立ちはだかるリイラと交戦を始めた唯。
これまで何度か相まみえた2人だが、実際のところ、池袋の時は力が出せずに逃げ惑うだけだったり、かと思えば完全な暴走状態にあったりと、イーブンの勝負は一度もできていない。そして今も、単純な人数差で言うならば全くイーブンな状態ではない。唯一人に対して、リイラとオリジオンと化した行江姉妹。1対3である。
それに対して不平を言ったところでリイラは耳を貸すような奴ではないし、行江姉妹に関しては完全に理性を失ってるので言葉すら通じない。だから唯は、考えるのをやめていた。
全員ぶっ倒して、行江姉妹を助ける。
それこそが最適解だと、唯は知っている。
「邪魔ッ……するなあッ‼ 」
唯は一歩前に踏み出すと同時に、握り拳を前に突き出した。
つい先ほどデザイアモードと名付けたその力。これで何ができて、何処までやれるのかはいまだ未知数。ならばここは、流れに身を任せるしかない。人間、ある程度割り切りが肝心なのだ。
「えーっと、なんかすさまじいインパクトッ‼ 」
「ワ? 」
拳を突き出しながら叫ぶ唯。
それと同時に、凄まじい衝撃波が発生し、技名に困惑する素振りを見せたラーマオリジオンを宙に舞いあげる。
本当ならばかっこいい必殺技名とかを叫びたかったが、残念なことに唯は馬鹿なので、即興でかっこいい技名を口にすることができなかった。残念!
そして唯自身も、まさかパンチ一発でこんなことになるとは思わなかったので、自分の拳をまじまじと見つめながら困惑する。
「なんか出た……」
が、そんな余裕はない。
いつの間にか、リイラが唯の真上に飛来していた。
「いつからここはギャグ空間にでもなったのかしら、せっかくのディナーショーなんだから真面目にやってくれない? メインディッシュがそれじゃあ食欲も失せるってものよ」
「っ‼ 」
「さあ、
ブオンッ!! と大きな音を立てて、リイラの背中の羽根が振動する。
たったそれだけでいくつもの真空の刃が発生し、一斉に唯を切り刻まんと襲い掛かる。
「どうわああああああああっ⁉ 」
唯は情けない声をあげながら真横に転がり、真空の刃を回避する。標的から外れたそれらは、唯の背後にあったフェンスをずたずたに切り裂いてゆく。
その情けない姿を、リイラは空から嗤う。
「その姿はただのコスプレ? なら大したことないわね」
「言ってくれるなあ! 」
「口だけは達者なようだけど、わたし以外のこと忘れてない? 」
リイラがそう言った直後、唯の鼻先をかすめる形で真横から炎の矢が飛んできた。
それがシータオリジオン――
「ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉ 」
奇声を上げながら上体を思いっきり逸らし、飛び掛かってきたシータオリジオンを素通りさせる。腰の骨がバキバキになるような回避手段を選んだことを軽く後悔しながら、唯は体勢を整える。
「いってえ……膝曲げるべきだったかも! 」
「だーかーらぁーっ、遊びでやってんじゃないのよォッ‼ 」
唯のふざけた態度が気に食わないリイラは、再び羽根を強く振動させて真空の刃を飛ばす。
「同じ手は喰らわないっ‼ 」
唯は威勢よく啖呵を切りながら、右腕を最大速度で降り抜く。
すると、振りぬいた右腕から衝撃波が放たれ、リイラの真空の刃と正面衝突を起こし、対消滅する。
「………………ずるくない? 」
「私だって好きでやってるんじゃないんだいっ‼ そもそもなんで狙われてるのかわかんないんだよこっちは! 」
唯は空を飛ぶリイラに向かってがむしゃらに腕を振るい、やたらめったらと衝撃波を飛ばしまくる。リイラはなんだか大変不服なようだが、唯は望んでこんな力を手に入れたわけではないし、そもそもなんでこんな芸当ができているのか理解できてすらいない。
背中に生えた羽根を使って縫うように唯の衝撃波を躱し続けるリイラ。
その顔には、着々と不機嫌オーラがたまり始めていた。
「あーなんだかイラつく。なんでメインディッシュの癖にここまで抵抗するかなあ‼ そこの奴隷姉妹、ちゃっちゃと屠殺しちゃって! 」
「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼ 」
「ボフゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ‼ 」
面倒くさくなってきたリイラは、地上のラーマオリジオンとシータオリジオンに命じて唯を攻撃させる。
まず先陣を切ったのはシータオリジオン。炎の弓を連射して唯の衝撃波を相殺しながら、彼女は突撃してくる。
「飛鳥ちゃん………………」
「オネエサンシネッ‼ 」
そしてそのまま無駄にごつごつした弓で殴りかかってくるが、唯はそれを片手で掴んで受け止める。
痛みは感じなかった。
「コロシテヤルウウウウウウウッ‼ 」
そのままシータオリジオンの攻撃を押し返そうとする唯だが、そうする暇もなく、シータオリジオンの背後から槍を構えたラーマオリジオンが飛び掛かってくる。
「ッ‼ 」
唯は咄嗟にシータオリジオンを突き飛ばしながら一歩下がると、眼前に槍を振り下ろしてきたラーマオリジオンの鼻頭を思いっきりぶん殴った。肉の焼けるような音と熱さが生じるが、唯は歯を食いしばって必死にこらえる。
「2人ともっ……バルジなんかに操られてていいのっ⁉ 全てを奪った相手に従って使い潰される、そんな終わり方でいいの⁉ 」
「ダアアアアアアアアアアアアッ‼ 」
「ドオオオオオオオオオオオオッ‼ 」
唯の呼びかけに対して返ってくるのは、自我持ち性もない雄たけびのみ。こうなれば力づくでも正気に戻すしか方法がない。
意を決した唯は、身を屈めてラーマオリジオンの槍の薙ぎ払いを避けると、足払いで彼女を転倒させ、ついでに槍を奪い取る。
そして、その槍でラーマオリジオンを刺突する。
「ヴォウッ⁉ 」
「たあっ‼ 」
唯のパワーが強すぎたのか、はたまたラーマオリジオンが頑丈だったのかは定かではないが、ラーマオリジオンを突いた槍は一突き分の働きを終えると、そのままバキンッ、と折れてしまった。
間髪入れずにシータオリジオンが炎の矢を放ってくるが、唯は回し蹴りで風圧を引き起こして炎の矢を鎮火してしまう。若者の人間離れここに極まれり、だ。
「いい加減に……目を覚ませえええええええええええええええええええっ‼ 」
「ドメラァッ⁉ 」
唯はそのまま身体を反対方向に捻り、逆回転の回し蹴りをシータオリジオンにぶちこんで吹っ飛ばす。
脇腹辺りに蹴りが命中したシータオリジオンは、その小さい体躯を九の字に折り曲げながら吹っ飛び、地面をゴロゴロと転がってゆく。
続いて薙刀を持ったラーマオリジオンが突撃してくるが、唯は折れた槍の残骸を投擲してラーマオリジオンの薙刀を弾き飛ばすと、そのまま目にもとまらぬ速度の膝蹴りをラーマオリジオンの胸に突き刺した。
あまりにも速いその一撃は、ラーマオリジオンの胸を穿つだけにとどまらず、真空の刃をも生み出し、周囲にまき散らしてゆく。
それは周囲の遊具や木々、
「これが私のっ、デザイアモードになった諸星唯サマの実力よぉおおおおおおおおおおおおおおっ! 」
ダンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! と勢いよく足を地面におろしながら叫ぶ唯。その顔は既に、一人のヒーローの風格を漂わせていた。
オリジオン達は大ダメージを受けた上に触手は全滅。そんな状況に追い込まれたリイラは当然ながら不機嫌そうな顔になる。
「………………使えないヤツ」
「へっ、」
「でも、今の一撃は悪手だったと思うわよ」
「? 」
リイラが指さす先。
そこには――
「あーあーあーあーッ‼ こんなになるまでやられちゃってさぁ‼ 折角俺様が色々といじくってやったってのに、なんでここまで惨敗しちゃうかなぁあああああああああああああああああ⁈ 」
「なんっ………………だ⁉ 」
ラーマオリジオンとシータオリジオンが吹っ飛んだ先では、
互いに激しく損耗した中、両者の間に滑り込むようにして吹っ飛んできたオリジオン達を目にしたエボルトオリジオンは、凄まじくハイテンションな罵声を彼女達に浴びせる。
が、次の瞬間。
エボルトオリジオンはにっこりと笑いながら、倒れているラーマオリジオンとシータオリジオンの額に手を当てる。
「だけど、俺様は優しいからね。こうなったら、
「お前……何をする気だ⁉ 」
《ADVENT》
エボルトオリジオンが何かをする前に止めるべく、リュウガはドラグブラッカーを呼び寄せて攻撃を仕掛けようとする。
しかし、一歩遅かった。
「――フェーズ3・吸収」
瞬間、エボルトオリジオンの両腕が著しく肥大し、ラーマオリジオンとシータオリジオンの身体を瞬く間に呑み込んでいってしまった。
両腕から始まった体組織の肥大はあっという間にエボルトオリジオンの全身に行き渡り、彼の身体はすさまじい速度で変化してゆく。
全身から漆黒の炎を噴き出し、背中にはドラゴンの翼のような器官が生成される。極めつけに両肩には、苦悶の表情を浮かべたラーマオリジオンとシータオリジオンの頭部が生えてしまっていた。
エボルトオリジオン・フェーズ3。
全てを食いものにしてしまう最低最悪の厄災は、またしても進化を果たしてしまった。
「さ、かかってこいよ」
得意げに挑発するエボルトオリジオン。
常人ならば、既に心が折れていたかもしれない。しかしリュウガ――灰司は折れない。復讐しか残されていない彼には、折れるという選択肢ははじめから持ち合わせてはいないのだ。
「関係ねえよっ………………テメエがいくら進化しようが関係ねえ! 俺の手で殺してやる! 」
「だから無理だっつってんだろォがッ‼ 」
いくつもの激突が繰り広げられた今宵の決戦も、終幕を迎え始めていた。
これが最後の激突。
最終戦が、はじまる。
結構難産だったけど、なんとか予定通りに進められました。
いやー無駄にバトル増えるような展開書いた昔の自分を呪うしかねえ!
次回で多分決着つくんじゃないかな!
次回 因縁決着~requiem for the Avenger~