【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
※4/18 加筆修正
前回までのあらすじ
・平行世界論を展開するフィフティ
・子供を誘拐する事案系怪人
・リュウガにいきなり殺されかける瞬
かおすばこですよろしくおねがいします(激寒)
コメントなくて寂しい。
相変わらず主人公がボコボコにされます。
まあ、連続でボスクラスがやってくるからね。仕方ないね♂
主人公TUEEEE!以外は認めんぞって方の期待には添えない、ツッコミどころ満載の拙作をとくとご覧あれ。
「お前は、危険すぎる。だから、世界の為にも今ここで殺す!」
「なっ….…⁉︎ 」
《SWORDVENT》
リュウガは、再びカードを取り出して左手の機械に挿入する。すると、彼の右手に一本の剣が現れる。黒い柄とギラリと光る刃が禍々しく感じられる。
「なんなんだお前……一体なんなんだよ!」
「今から死ぬ奴に話すことはない!」
リュウガは瞬の言葉を切り捨て、剣を振りおろす。アクロスは必死になって体を横にずらし、それを回避する。標的に避けられた剣は、先程の攻撃でひしゃげた車を容赦なく切り裂き、車は大爆発を引き起こした。
「うおっ……はっ……!」
焼けつくような爆風に煽られ、アクロスの身体は数メートル先に飛ばされる。再び地面を転がり、立ち上がって体勢を整える。
リュウガの方を見ると、炎の中に真っ黒な影が佇んでいるのが分かる。炎の中から、気怠げな声が聞こえてくる。
「じゃあ、次はこれだ」
《COMPLETE》
突然、炎の中から青い閃光が放たれる。そのあまりの眩しさに、アクロスは目を閉じてしまう。そして、何かが炎の中から勢いよく飛び出してきた。
アクロスはばっと後ろを振り返る。そこには、先程までとは違う、新たな姿となったリュウガがいた。
白い身体に、青いライン。紫の大きな複眼に、ベルトに取り付けられているのは携帯電話のように見える。一番の特徴は、背中に取り付けられた大きなジェットバッグだった。
「リュウガ……なのか?」
「今の俺は、サイガだ」
サイガはそう言うと、ジェットバッグを起動させる。背中から勢いよく煙を吐き出し、サイガの身体が宙に浮き上がる。
「なんだよそれ……ありえねえだろ⁉︎ 」
「文句言うんじゃねえ。ここは戦場だぞ?いつでもどこでもフェアな勝負が出来るとでも?とんだお笑い種だな!」
サイガはそう言い放ちながら、ジェットバッグからアクロスのいる地上に向けて光弾を発射する。一発一発が、容赦なく地面を抉り取っていく威力。アクロスは、必死に身体を動かして回避する。
「じゃ、フライトを楽しみな」
「なっ⁉︎ 」
いつの間にか、背後にサイガが回り込んでいた。硝煙と、回避に集中していたせいで気付くのが遅れてしまったのだ。サイガは、そのまま瞬を羽交い締めにした状態で、上空へ飛び上がる。
声にならない悲鳴が、アクロスの口か出る。たった数秒で、ショッピングモールが小指の爪程の大きさに見える高度まで連れて行かれる。
ちらりと見えたのは、とても小さショッピングモールの敷地。あまりの高さに、思わず体が震えてくる。今地上に落とされたら、人間の形を保っていられるのだろうか。
恐怖で震えるアクロスに、サイガから追い打ちがかけられる。
「さあ、お楽しみはこれからだ」
瞬間、サイガはアクロスを羽交い締めにした状態のまま、地上へと急降下を始めた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ‼︎ 」
あまりの唐突さに、認識が遅れる。ようやく現実を認識し絶叫した時には、すでに数十mは落下していた。
ブワッと身体全体に吹き付ける風。猛スピードで迫る地上。夢であって欲しい、夢なら覚めて欲しい。アクロスの頭は、恐怖で塗りつぶされていた。
(ヤバイ、俺、死ぬ――)
サイガは、地上まで十数mのところで瞬を放す。やっと解放された ——— では済まない。
すぐ眼前に、地面が迫る。
仮面の下で、瞬は目を閉じる。
その時。
《LINK FALCON》
落下が止まった。しかし、地上に落ちた訳ではないようだ。体の何処も、地面に接してはいない。
目を開けて下をみると、自分の足が宙に浮いている。ここで、アクロスは誰かに腕を掴まれている事に気付いて上を見る。
「大丈夫かな?」
「フィフティ……」
バイクに跨った涼しい顔のフィフティが、瞬の右腕を掴んでいる。というか、バイクが空を飛んでいる訳なのだが、生憎、命拾いをして呆然としているアクロスはそれを疑問に思えるほど頭が回らない。
フィフティはアクロスを引っ張り上げて自らの後ろに乗せると、スピードメーター下のレバーを手前に倒す。すると、バイクはゆっくりと地上に降り立ち、それと同時に側方に展開されていた翼が折り畳まれ、内部に格納される。
「随分と酷い事をするもんだね。“彼”が離れていっちゃうのも納得するよ」
フィフティは、上空から此方を見下ろしているサイガにそう言い放つ。高度を下げて接近してきたサイガは、フィフティを睨むかのように顔を向ける。
「こいつはお前の差し金か。何を企んでんのかは知らねぇが、邪魔しないでくれないか」
「変わらないな、君も。まだ復讐を続けるのかい?」
「……お前には一生理解できねぇよ」
そう言い残すと、サイガは此方に背を向け、そのまま飛び去っていってしまった。
彼の姿が小さくなって見えなくなると同時に、瞬は変身を解除してその場に膝を落とし、座り込む。その体は、度重なる戦いによってボロボロになっていた。
「酷くやられたね。立てるかい?」
「…………」
瞬の返事はない。フィフティが手を差し伸べるも、反応がない。ぐらりと、少年の体が揺れたかと思えば、そのまま地面に倒れた。
「逢瀬君!」
フィフティは体を揺するが、反応がない。
「まずい ……予想以上にダメージが大きい」
意識のない瞬の体を肩に担いで、フィフティは移動を始める。この場所にまだ敵がいる可能性もあるからだ。
瞬を担いだフィフティが、ショッピングモールの駐車場を出たその瞬間、
「いたいたー!私を置いてくなんて酷い……ってねぷぅ⁉︎ どうしたのその怪我!」
公園に置いてきた筈のネプテューヌと遭遇した。公園とショッピングモールは距離が近い為、戦闘音を聞きつけてここまで辿り着いたようだ。
血塗れの瞬を見て、気が動転するネプテューヌ。フィフティは、彼女を軽く押しのけて前に進む。
「話なら後にして、救急車でも呼んでくれると助かる。私は今携帯電話を持っていないもので」
「そうしたいのは山々なんだけど……出来ないんだよね。何故か繋がらなくてさー」
しまったな……とフィフティは頭を抱える。唯達はまだ建物内にいるし、ここから建物の入り口までは距離がある。
脈はまだあるのだが、一刻を争うのには変わりない。バイクの方は、ライドアーツの状態のまま何故か動かない。
ここで、ネプテューヌがいきなり大声をあげる。
「む、むむー?私、この状況を打破出来るかも!」
そういうと、彼女はパーカーのポケットに手を出して突っ込んで、なにかをがさがさと探し始める。
「あった!知り合いのアイテム屋さんから買った“すごそうな傷薬”!」
ネプテューヌが取り出したのは、ポ○モンとかで出てきそうな一本のスプレー缶だった。この時点で充分怪しいのだが、「すぐ効く!」「最強!」と、頭の悪そうなキャッチコピーが書かれているのが、それの怪しさを際立たせている。
ネプテューヌは缶の封を切り、フィフティが肩に担いでいる瞬の顔面目掛けてそれを思い切り吹きかけた。
「何をすげほっ」
「動かさないでっ」
思い切りフィフティの顔面にもかかってたり、そもそもネプテューヌの背が低い為に瞬にうまくかからずに苦労するも、なんとかやり終えた。
フィフティは、その場に腰を下ろしたネプテューヌに言う。
「……君もついてきたまえ。おそらく、私なら君の知りたい情報を提供できる」
時は進み夕方。
誰もいない倉庫街。
「うう……」
血をダラダラ流しながら、呻き声をあげる一人の男。着ていた背広は破けて半裸状態。左手に至ってはあり得ない方向に折れていた。ひしゃげたコンテナに仰向けになった彼の後ろには、大きな黒い蜘蛛のような存在が倒れている。
その前に、二つの人影が立ちはだかる。左眼に金属製の片眼鏡を嵌めた法衣の男と、ケープコートのみを身に付けた藍色の髪の少女だ。
「完全に虚仮威しですね。まあ、貴方みたいな吸血鬼ごときにハナから期待はしていなかったんですが」
「……ちくしょう」
法衣の男の侮蔑の言葉が、倒れたままの男にぶつけられる。
男は、吸血鬼である。真祖の様な戦闘力はないが、弱い吸血鬼でも、眷獣の強さは戦車や戦闘機一台分には相当する。普通なら、人間相手にここまでやられる事もないし、される道理もない。
しかし実際、男は目の前の二人に完敗し、追い詰められていた。
「終わります。アスタルテ、やりなさい」
「はい、殲教師様」
藍色の髪の少女は、静かに目を閉じる。コートを靡かせながら、抑揚のない声で告げる。
「
「あ、ああ……」
彼女のコートの隙間から、仄白く輝く透き通った、巨大な腕が飛び出す。そしてそれは、倒れている吸血鬼の男とその眷獣を勢いよく貫いた。
「さて、引き上げますよ」
そう言って、法衣の男 —— ルードルフ・オイスタッハは踵を返す。彼とアスタルテは、ある目的の為にこの地に降り立ち、魔族を狩っている。これまでも幾度となく襲撃を繰り返しているのだが、警察は彼等まで辿り着いてはいない。
自らの悲願成就の為に、足早に立ち去ろうとするオイスタッハ。しかし、そこに一人の影が現れる。
「……」
現れたのは、制服姿の少年。東洋人の顔は殆ど同じように感じるオイスタッハはそうは思わなかいのだが、顔も整っている。夕日に照らされたその顔は、まるで物を見るかのように此方を見ている。
「なんですか。まさか、見たのですか?」
バレないようにやったつもりだが、目撃者なら消すしかない。先日も、獅子王機関の剣巫と第四真祖に目撃され、彼等を始末しきれずに撤退してしまった為に、オイスタッハは余計に不安を感じていた。
まだ実行するには不十分だ。全てを賭して臨む聖戦がある。手に持った戦斧の柄を強く握りしめる。
「オッサンには、興味はないんだけどな。実験してえんだわ」
「……アスタルテ、構えなさい」
二人が構える。少年は、不気味な笑みを浮かべながら、
「無駄な足掻きをしてくれる」
《KAKUSEI GILGAMESH》
その音声とともに、少年の体にジッパーが現れ、それが開いていく。そして、ジッパーが開ききると同時に、まるで内と外をひっくり返すかのように体が反転していく。
その変化が終わると、そこにいたのは少年ではなく、黄金の傷だらけの鎧を着た怪物であった。夕日の輝きを反射しながら光るその姿は、酷く醜く感じられる。
「前哨戦……貴様には、俺の踏み台になってもらおうか」
怪物の後ろから、眩い光が照りつける。夕日ではない。オイスタッハは、今夕日を背に立っているからだ。
「
その瞬間。
なんの前触れもなく、派手な装飾が施された戦斧がオイスタッハの脇腹を抉りとった。
「あ……⁉︎ 」
彼の意識は、ここで途切れた。
夢。
それは、過去のプレイバック。
唯と二人で帰る道。
夕日に照らされながら、瞬はこんな言葉を切り出した。
「時々さ、虚しくなるんだ」
「いきなり何?詩人じみた台詞なんか言い出して。中二病?」
「やめろ、お前ほどイタくねぇわ」
唯の揶揄いで、話の腰をいきなり折られてしまう。瞬はそっぽを向いて話を続ける。
「自分が、空っぽに感じる。何も持っていない、木偶の坊に思えてしまうんだ」
「そう?」
何時からかはわからない。
自分を形作るモノ。その中にあるのは全て他人の受け売りだと気付いた時、瞬はどうしようもない虚しさに襲われた。
と、ここまで話したところで、唯が堪えきれずに大笑いする。
「笑うなよ。割と真剣なんだぜ」
「いや、笑うしか無いじゃん。アンタそういうキャラだった?」
「青年期特有のアレだって……お前だってそうだろ?」
「いやいや、私はさ ——
最初に視界に入ったのは、自室の天井だった。
窓の方に視線をやると、窓の向こうは完全に暗くなっていた。随分と懐かしい夢を見てしまったらしい。はっきりと覚えている。あれは、唯と初めて出会った時のことだ。
しかし、何故今この夢を見たのだろうか。寝ぼけてた頭で考えても分からない。
「……てか、ここは?」
瞬は、ゆっくりと体を起こす。何故か上半身が下着一枚になっている。ここに至る経緯を思い出してみようと、ベッドに腰掛けて考える。
(俺は、あのリュウガとかサイガとかいう奴にやられて……)
ここで、瞬は自身の体が無傷であることに気付く。あんなに連戦が続き、その全てでボコボコにされた筈なのに、今の瞬の体には傷のひとつも無く、疲れが取れたかのように体が軽い。
何でだ?と疑問に思う瞬だったが、その思考は廊下から聞こえてきたドタドタという音に遮られる。
「こらー!待て待て待てー!私の分のプッチンプリンを食べるなんて許さないぞー!」
「うわああああ!ごめんなさいごめんなさい〜!」
……ちょっと待て。何故コイツらがいる?
ドアを開けた瞬の頭に、突如浮かび上がるハテナマーク。紫色と栗色の髪が瞬の視界の下方を横切る。
「つい出来心で……ごめんネプテューヌ!」
「食べ物の恨みは深いんだから!例えるならえーっと……とにかく深いんだから!」
「人ん家で何ギャーギャー騒いでるんだよ。夜だぞ。てか何でいるんだ」
迷子の幼女二人を家に連れて入るとかアウトだろう。とりあえず二人を捕まえて両脇に抱え、階段を下りていく。
「HA☆NA☆SE!」
「やだやだやだやだやだ!」
じたばた暴れながら叫んでいるみたいだが聞こえない、気のせいだ。無心になって二人を抱え、足でリビングのドアをスライドさせる。そこでは、妹の胡森が既に夕食を食べていた。
「あ、お兄ちゃん。ご飯出来てるよ」
「ゴチになりまーす」
唯と一緒に。
思わずギャグ漫画的ズッコケをやらかしそうになる瞬。抱えていた幼女二人をその場に下ろして唯に詰め寄る。
「何当たり前の様に人ん家でメシ食って帰ろうとしてんのじゃおのれはぁ!大体昨日もそうだったろーが!」
「叔父さんはいいって言ってたし、私の親からも許可貰ってますからー」
「つーか叔父さんもお前の親もなんでホイホイOKしちゃう訳⁉︎ 」
無責任な大人ばっか揃いやがって……とがっくりと肩を落として溜息をつく瞬。話を切り替えて、リビングの入口に置きっ放しの幼女二人について尋ねる。
「で、だ。こいつらがなんで此処にいるんだ?ニュースになってた連続児童失踪事件の犯人はお前だったのか?」
「いやいやいや、私そんな趣味ないし!いきなりフィフティがやって来て、瞬とネプテューヌを置いていったんだって……」
「じゃあコイツはなんなんだ?」
瞬がヒビキを指差して唯に尋ねる。なんか迷子のようなのだが、家に連れて帰るとか完全に犯罪でしかない。この歳で前科持ちとか洒落にならない。
「フィフティに訊いてよ。なんか『彼女は普通ではない。君達の手元に置いていた方が都合がいい』とか言ってたけど……」
なんでそう中途半端にはぐらかすんだ。瞬は思わず頭を抱えてしまう。ソファーにどかりと座り込み、背もたれに背中を預けてポツリと一言呟いた。
「…ホント、どうすんだよ」
世界は不親切すぎる。少年は、齢16にして
それを思い知らされるのであった。
しばらくたって。
唯が帰るので、家の外まで見送りに来た瞬。春先の、微妙に冷えた風が二人に吹き付け、瞬は一回クシャミをする。
瞬は、ふと思った事を唯に言う。
「……なぁ、唯」
「何?なんか悩み事?」
「俺は、この力をどう使えばいいんだ?」
瞬は、バックルを取り出してそう言った。その顔には、なんとも言えない表情が浮かべられている。唯はうーんと唸りながら、
「胡散臭男は、世界を救うとか言ってたんでしょ?そうなんじゃない?」
そんなことはわかってる。多分、何度聞いたって同じ事を彼は言うだろう。しかし、昼間リュウガに言われた言葉が、頭から離れない。
“意思も目的もない、強大な力。お前はそれがどれほど恐ろしいか分かっちゃいない”
確かに、これまで瞬は状況に流されるがままにアクロスに変身し、戦っていた。歴戦の勇者のような強い意思も、アクロスの力を使いこなす術も、自分で掲げられるような目的も無い。
果たして、そんな自分がアクロスの力を使っていいのだろうか。そう思ってしまったのだ。
「……俺が、このままアクロスでいいのかな?」
ぽつりと呟いた言葉。それを聞いて、唯が少し吹き出す。
「ちょ……笑うなよ。コッチは真面目で……」
「もー難しく考え過ぎだよ、瞬は」
唯は軽く笑うと、瞬の手をとって次のように言った。
「力が有ろうが無かろうが、瞬は瞬だよ。やれる事は増えたかもしれないけど、瞬がやる事は変わらないんじゃない?」
その言葉が、瞬にどのように通じたのかは、他人にはわからない。だが、瞬の顔は薄く笑っているように見えた。
「瞬には、私と同じ皆ハッピーの精神がある。そう簡単にはブレないよ」
そう言うと、唯は踵を返して歩き出す。一人残された瞬は、バックルを手に持ったまま立ち尽くしていた。
あくまでも、唯の言葉はヒントのようなモノ。最終的には、瞬自身で答えに辿り着かなくてはならない。周りから与えられた、頭から消える事のない命題に、少年は頭を悩ませるのだった。
今回はここまで。
ルビをまだ降っていないので多分明日くらいに修正します。
大学生活が始まった為に執筆が遅れております。大変申し訳ありませんが、多分今後このくらいのペースで更新する事になると思うので、気長に待っていてください。