【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
数日後 AMORE本部前
「釈放だ」
そう言い渡されたとき、アステアは浮かない表情をしていた。
バルジの死亡に伴い、洗脳が解かれ正気に戻った彼女は、AMOREの本部が存在する別次元へと移送された。
そして、そこでの数日にわたる取り調べの結果、彼女は罪に問われることはなかった。しかし、洗脳の影響がまだ残っているかもしれないとのことで、一旦彼女の世界に帰ったうえで、現地のAMORE隊員のもとで経過観察期間に入るとのことだ。
上記の内容を言い渡されてからさらに数日経ち、彼女はAMORE隊員の男性に連れられ、空港のロビーのような場所にやって来た。
この世界はどうやら瞬達の世界よりも技術が進歩しているようで、次元間の移動技術が一般に普及しているらしい。そして、彼女が今いる施設は次元航行艦の発着施設であり、ロビーの窓から外を眺めると、今まさに一隻の艦が別次元へと旅立とうとしていた。
「珍しいかね?」
「いや、そうでもない。だが私の世界では軍事利用が主だったからな……庶民の身では到底利用できるものではなかったよ」
男性隊員の問いかけに、窓の外を眺めながらそう答えるアステア。その脳裏には、妹と共に生まれ育った故郷のことが浮かんでいた。
お世辞にも良い世界とは言えなかった場所だが、それでも愛しの妹や、血は繋がらないが優しかった義理の家族たち、何かと張り合うことの多かった級友など、望郷の念を抱かせるには充分すぎる思い出があるのだ。しかしアステアは、彼らには黙って出てきてしまった挙句、当初の目的は果たせなかったどころか、悪の尖兵にまで身を落とした。そんな自分に、果たして帰る資格はあるのだろうか?
思いつめるアステアに、男性隊員が続ける。
「君の妹については行方を追っている。だが……仮に行方が分かって、身柄を捕えたとしても、彼女は大罪人だ。君みたいに洗脳されている可能性が薄い以上、無罪放免は絶望的だ。最悪死刑や抹殺もあり得る。それでも……」
「それでも、頼みたい。これ以上罪を重ねる前に、あの子を捕まえてほしい」
「……僕は事務員みたいなものだけど、AMOREを代表して約束しよう。必ずギフトメイカーを撲滅させると」
そう言いながら、男性隊員は敬礼をする。
「君の乗る船は分かっているな?6番ゲートから17時に出港する艦に乗りたまえ。まあチケットに書いてあると思うが………………と、何処へ行く? そっちはゲートとは反対方向だぞ? 」
男性隊員はそのまま説明を続けようとするが、アステアは彼を無視し、ゲートとは反対の方向に歩き出していた。
慌てて男性隊員が呼び止めると、アステアは不機嫌そうに鼻先で構内案内板を指し示す。案内板には、トイレやエレベーター、非常口の方向が記載されている。
——言わずもがな、彼女が用があるのはトイレである。
「お前は淑女のトイレを覗く趣味でも持っているのか?」
「これでも妻子持ちなんだ。リスクとリターンが割に合わない」
アステアの嫌味を軽く受け流すと、男性隊員は去り行くアステアの背中を見送る。
——数分後、彼はこの選択を後悔することになる。
「…………」
誰もいないトイレにやって来たアステア。
勿論、彼女の目的は用を足すことなんかではない。
「いける、か? 」
トイレの窓を見上げる。人一人は何とか通れそうな大きさだ。
まず彼女は、窓を通るうえで邪魔になるであろう帽子と厚手のコートを脱いで畳む。そして、
「
そう呟くと、アサルトの手の中に細いワイヤーのようなものが出現する。彼女はそれを窓の鍵に向かって投げて引っかけると、ワイヤーを引っ張って鍵を開けた。鍵が開いたのを確認すると、アステアはワイヤーから手を離し、畳んだコートと帽子を窓から外に放りなげる。その後、ガンッ、と床を強く蹴って飛び上がり、窓枠にしがみつく。手から離れたワイヤーは、その瞬間跡形もなく消え去っていった。
腕の力でよじ登り、窓から身を乗り出す。2階相当の高さだが、この程度ならどうってことはない。そのまま、さらに身を乗り出しながら体重をかけ、窓から外に出る。
「…………!」
当然ながら、頭から落下するような体勢になるものの、アステアは空中で一回転し、綺麗な三点着地を決める。そして、近くに放り投げていたコートと帽子を広いあげ、土埃を払って再び身に付ける。
ここは搬入口に近く、人気は少ない。アステアは、先ほど身を投げた窓を見上げながら思う。
「あのままひとりで帰ることは、できない」
哀れな被害者として、甘んじて保護される道も用意されていた。しかし、彼女はそれを自ら投げ捨てた。どうしても許せないし、認められなかった。
誰かに任せて逃げるなんて真似をすれば、
夕日で照らされた頬に、一筋の涙が零れ落ちる。少女は帽子を目深く被りながらそれをぬぐい、決意表明をする。
やるべきことは決まっている。ゆくべき場所もわかっている。
ならば、はじめから選択肢はないも等しかった。
「待っていろ……絶対に私が救い出してやる……!」
発艦予定時刻の17時がやってきた。
しかし。
アステア・ライトレアがその時刻に、搭乗口に現れることはなかった。
アステア・ライトレア
出身世界:■■■■・■■■■■
年齢:17歳
幼い頃に両親を失い、実の妹である■■■と2人でとある剣士の家に養子として迎えられる。
しかし10歳の時に■■■が失踪。
長きにわたる放浪の旅の末に再会するも、■■■はギフトメイカーの一員となっていた。
力づくで連れ戻そうとするも返り討ちにあい、以降はギフトメイカー・レイラとして洗脳され、バルジに弄ばれることとなる。
とある復讐譚の果てに自由を取り戻した彼女は、再び孤独な戦いに身を投じる。
今度こそ、■■■を救い出すために。
備考:ギフトメイカー・レイラとしての罪は、洗脳状態にあったことも考慮して情状酌量の余地あり。
現在は洗脳の後遺症などの治療の為、ひとまずAMORE本部の医療機関にて保護予定。