【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes 作:カオス箱
そしてはじまりました1.5章!
1章は色々と制約があったので凝ったオリジオンやはっちゃけたギャグが入る余地がなかったのですが、ここからはそんな制約とはおさらば!これまで以上にバラエティに富んだお話を提供していきたいです。
今回は一件本題に関係ないように見えるお話ですが、一応新レギュラーも出るので読んだ方がいいです。
1.5章OP1 ワンミーツハー/ヒトリエ
第51話 DREAMLIVERも夢を見る
――人は
それならば、ボクのような人間はスタートラインに立つ資格すらないってことにならない?
どこかの学校の校舎裏。大人ですらめったに立ち寄ることのない、めったに日の当たらない、薄暗くてじめじめとした場所。
そこは、子供たちにとって格好の遊び場であった。子供にだって、大人に隠したいことのひとつやふたつはあるのだ。それはベッドの下に隠したエロ本だったり、秘密裏に飼育していた野良猫だったり、誰にも理解されない趣味嗜好だったり、公にできない恋愛関係だったりと様々だ。
校舎の影で、複数人の子供たちが、ひとりの子供を取り囲んでいる。そこからは時折、ボコスカと何かを殴りつけているような音が聞こえているが、誰もそれを気に留めないし、とがめない。
「勇者けーじ様の攻撃ぃ!オークキングに会心の一撃だあ!」
「っしゃあ!正義は勝つんだ!覚悟しろよ豚野郎!」
「ぶがっ…………」
複数人の少年が、一人の少年を暴行している。
――平たく言うと、イジメの現場だった。
虐められているのは、丸々と太った豚のような顔の少年。彼は身体中のあちこちにあざを作り、顔は鼻血と涙でぐしゃぐしゃになっている。
「きったねえ泣き顔見せんじゃねーぞ豚ァッ‼ 悪役なんだから大人しくやられていろよーっ‼ 」
「そーだそーだ! 」
「よし、次おれな! 必殺っ、正義の鉄拳っ! 」
「ひべばっ⁉ 」
そうして次は、別のいじめっ子が思いっきり殴りかかって――
――それは今もなお、彼の心を蝕んでいる。
彼は、前世では典型的ないじめられっ子だった。
理由は単純明快。
容姿が劣っているという一点だけで、彼の人生は幼くして最悪な方へと転がり落ちてしまった。幼少期の虐めが尾を引いて引っ込み思案となり、中学校でも虐められて引きこもり。たまたま外に出てみたら、運悪く歩道橋の階段で足を滑らせ、打ち所が悪くて即死だった。
あまりにも惨めな幕引き。まるで誰かの肥やしや引き立て役になるためだけの無価値な人生。
しかし世界は、彼に幸運をもたらした。
異世界転生。
転生特典を一つ選んで、別の世界に生まれ変われる。どうしようもなく惨めだった第一の人生を丸ごと塗りつぶせるほどの、かつてない幸運。
願ったのは、ただ一つだった。
「後悔したくないんだ……ボクに……蔑まれることのない優れた容姿をくれ! 」
――転生して数年後。
彼はその選択を後悔した。
転生して数年。
物心がつくと同時に前世の記憶を取り戻した陽菜多は、一目散に鏡へと向かった。
そして、唖然とした。
「……………………………………………………思っていたのと違う」
鏡に映った今世の自分は、確かに美しかった。
サラッサラの銀髪に、ぱっちりとした大きな目。男らしさの欠片もない、華奢で色白、それでいてところどころ肉の乗った身体。女性から羨望のまなざしで見られるほどに張りのある肌。透き通るようなソプラノボイス。鏡に映っているのは、10人中11人が振り返るであろうほどの美貌を持った、絶世の美少女であった。
しかし、だ。
粗末ながらも、前世から苦楽を共にしていた股間の相棒(意味深)が、確かにぶらさがっている。
結論を言おう。
儚芽陽菜多は。
所謂男の娘として第二の生を受けたのだった。
5月22日
PM12:40 開王学園
「うむむむ…………」
5月下旬の、妙に蒸し暑い学校に、昼休憩の開始を告げるチャイムが鳴り響く。
多くの学生が校庭に遊びに行ったり学食に行ったりと騒がしくしている中、逢瀬瞬は教室の自分の席にて、真剣な表情で財布の中身と睨めっこしていた。机の上には、妹お手製の弁当が置かれているが、その封はまだ解かれていない。昼食を後回しにしてまで、何をしているのだろうか。
唯は昼休憩が始まるなり、購買までダッシュしてこようと思ったのだが、そんな瞬の様子を怪訝そうに思い、教室に引き返して瞬に問いかけることにした。
「どうしたの瞬、早くいかないと購買閉まるよ?」
「いや俺弁当持ってきてるし。てか無理だよ」
「どうして?」
「簡単なことだ……お金がない」
そう、少年は至極単純なことで悩んでいた。
この間の池袋への遠征の際に予想以上にお金を使ってしまい、今現在の瞬の懐はというと、かなり寂しいものとなっていた。最初は冗談かと思ったが、財布の中身は嘘をつかない。いつだって持ち主の日々の暮らしを正直に反映しているのだ。
「こうなりゃバイトでもするしかねえかなあ……でも俺、仮面ライダーだし……いつどこでオリジオンが現れるかわかったもんじゃないし……」
「ヒーローって大変なんだね」
「他人事みたいに言いやがって……」
唯のどこか薄情に思える反応に悲しくなる瞬だが、そんなことをしたところで
そんな時だった。
「あーくそ、思ったより引っ掛かりが悪いな………………」
そんなことをぼやきながら、目付きの悪い金髪の少年が近くの廊下を歩いていた。
その少年を瞬は知っている。
生徒会庶務・
「おーい善吉くーんっ、やっぽ~っ! 」
「その声は……諸星先輩に逢瀬先輩か」
「待て待て引きずるなっ! 」
瞬は特に用があるわけではなかったのだが、唯にやや強引に引きずられるように教室の入口付近まで連れていかれる。
そうして教室の入口の内ひとつを占有しながら、3人が会話する。
「生徒会の業務お疲れさん、イヤー頑張ってるねー」
「近所のおばちゃんみたいな態度するな。てか善吉、お前1年生だろ?わざわざこんなところまで来てどうした? 」
「実はさ――」
そう言って善吉は事情を話し始めた。
時は流れ、放課後・OC部部室。
元は廃部寸前の漫画研究部だったものの、紆余曲折あって
「ほう、アイドルグループのリアルイベントのスタッフバイトですか」
「生徒会の奴らも手伝うらしいんだけど、人手が欲しいんだってさ。丁度金に困っていたから応募しようと思うんだけど……どうせならお前らもやらないか?」
そう、善吉から紹介されたのは、一件のバイト求人だった。
近々とあるアイドルグループがこの学校でリアルイベントをやるとのことで、そこで裏方などを行うスタッフのバイトを募集しているのだ。
「内容によっては頑張っちゃいますよー私」
「大丈夫かなぁ……僕なんかができるかなあ」
瞬からバイトのことを聞かされて変にやる気になってるのは元漫研部部長・
対して不安そうな素振りを見せるのは、無駄に顔の良いヘタレ野郎・
「で、アイドルって言っても千差万別なわけだろ。どんな奴ら? ジャ●ーズ系? 」
「ちょっアラタ、暑いんだから肩に手を回すなよ」
「バイトかぁ、見たところ報酬もよさそうじゃない」
「社会勉強の一環に丁度いい……かも」
瞬の背後から肩に手を回しながらまじまじと求人チラシを覗き込んできたのは、2人の艦娘と共に暮らす少年・
皆の興味津々な視線を一身に受けながら、瞬はチラシの内容を声に出す。
「えーとどれどれ……
――瞬間。
瞬と唯以外の全員が悲鳴を上げた。
「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!⁉ 」」」」」
煩かった。
なんかもう、鼓膜どころか全身の骨が吹き飛びそうなほどの絶叫だった。
「ほ、ホロライブとにじさんじの皆さんと会えるんですか⁉ マジやったーサイコーサイコー!」
「えっと……俺達よくわかんないんだけど……そんなに凄いのか?」
瞬と唯は皆が何故こんなにも興奮しているのかが分からず、ひたすら困惑する。
そこにハルがすかさず解説を入れてくる。
「数年前に超新星のように現れたトップアイドルグループ、ホロライブ!個性豊かなメンバーが織りなす最高峰の……ええと、なんていえばいいんでしょうか……駄目だ、ぜんぜん言葉が思い浮かばないですすみません」
「にじさんじも個性面では負けてないぞ!異世界人に未来人、社畜に悪魔に壁にメンヘラ!何でも揃いのやべー奴らだぞ⁉︎ 」
「それどちらかというと貶してるよね?」
表に出しちゃいけない個性がちらほら出てきているのは気のせいだと思いたい。いやほんとに。
アラタの興奮っぷりに若干引き気味になりながら、瞬はうんうんと頷くことしかできなかった。
「よ、要するに有名人なんだな、そいつらは」
「YES!そゆことです!まっさか私たちが仕事で関われるなんて……感無量……今すぐ死にたいです!」
「一旦落ち着こうか!さっきから情緒不安定にも程があるから!」
いつもにましてハルが支離滅裂なことを言っているし、さっきから興奮しすぎて息も絶え絶えになっている。それほどにすごいことなのだろうか?
そこに、ソレは来た。
「ヘーイ……話は聞いたぜお前たち……」
がしりと、何者かが僅かに開いていた部室の扉を外から掴む。
「ま、まさかああああああああああああああああ!」
「煩い黙ってて」
興奮のあまり騒ぎだしたハルを、山風が殴って止める。
直後、部室の扉が勢いよく蹴とばされると共に、何者かが部室に飛び込んできた。
咄嗟にパイプ椅子を手に取って武装する瞬。
警戒する彼の前に、ソレは姿を現した。
「そう!私こそが!ホロライブ1期生…………皆の夫、夏色まつり様じゃああああああああああああいっ!」
「本格的♂清純派アイドル、白上フブキだよ~☆」
…………飛び込んできたのは、サイドテールの少女と白い狐少女だった。
それを見て、瞬が一言。
「え……こんなのがアイドルとか世も末じゃね……?」
「「「ド直球!」」」
なんか皆はショックを受けているようだが、初っ端からドアを蹴破るバイオレンスなアイドルを押すような趣味は瞬にはない。
それはそうと、また変な奴に遭遇してしまった。
これまでにも一癖も二癖もあるような奴等と出会っては絆を築き上げてきた瞬だが、今回は一段と変だ。というかテンションからしておかしい。
瞬が唖然とする中、歓喜に震えすぎたせいで生まれたての小鹿みたいになったハルが、まつりとフブキの元へとよたよたと近づいてゆく。
「ほっ本物の夏色まつりちゃんと白上フブキちゃんだっ‼ サインくださいあとパンツください‼ 」
「アイドルに何要求してんだお前っ‼ 」
「私のパンツは無理だけどフブキのなら……」
「なんであげようとしてんだ‼ つーかなんで俺に差し出そうとしてんだっ、あげるんなら言い出したハルの方にでもやれよっ‼ 」
どこからか黒いパンツを差し出してきたまつりの手を、瞬は咄嗟に払いのける。何故ハルではなく瞬の方に差し出してきたのか、瞬には理解できなかった。
と、ここで唯があることに気付く。
「てゆーか、私達一介の学生バイトだよ? それなのにわざわざアイドル本人が来てくれるなんて……」
「あれ、バイト内容知らないの? 」
「内容……? 」
フブキに言われて、再度チラシに目を通す瞬。
しかし何処をどう読んでも、チラシには"合同イベントのスタッフバイト"としか書かれていない。てっきり裏方じみた仕事でもやるのかと思っていたが、違うのだろうか?
「それは招待状なんだよ。君達はそのための外部プレイヤーとして選ばれたってわけ」
「プレイヤー…………? ゲームでもするってのか? 」
瞬の疑問に、白上フブキは不敵に笑いながらこう答えた。
「そう、君達は選ばれたんだよ。"迷宮学園ホロさんじからの脱出"のプレイヤーとしてねッ!! 」
それが、今回の発端となった。
翌日。
瞬達は早朝のグラウンドに集められていた。
「あ、瞬たちだ」
「……なんか見たことある顔がちらほらいるんだけど」
眠い目をこすりながら校門をくぐると、そこには見知った顔もあった。
例えば、寝癖が凄いことになっているトマト頭こと榊遊矢とその仲間たち(敬称略)。
今回のイベント運営を任されることとなっている黒神めだか以下生徒会メンバー。
立ったまま寝ている暁古城と、彼を何とかして起こそうとする雪菜や浅葱。
他にも、学校でよく顔を合わせているクラスメイト達もちらほら見受けられる。瞬が言うのもアレだが、皆暇なのだろうか。
「生徒会の奴……さては節操なく誘いやがったな」
「まあいいじゃん、お祭りみたいで燃え上がってこない? 」
「わかりますわかります。九瀬川ハル、こう見えてお祭り騒ぎが大好きなんですよねえ」
「それはどうでもいいから」
時刻は午前6時前。
だというのに、唯とハルは既に元気いっぱいだ。なんでこんなにエネルギッシュなんだこいつら。
そこに、やや遅れてアラタや大鳳も到着する。
「おーおー朝から元気いっぱいだなぁお前ら……」
「アラタ、なんかお前ジジ臭いよ」
「快眠中のところをモーニングコール連打されたら誰だってダルいだろ」
「同感」
大あくびを連発しながら、明らかに頭の回っていないであろう会話を繰り広げる瞬とアラタ。
三大欲求のひとつを取り上げられただけで、人はここまで腑抜けになるのだ。何とも恐ろしいものだ。
と、その時。
「あ、あそこ見てっ」
大鳳が指さす先に目をやると、そこには特設ステージらしきものが設置されており、舞台上には黒神めだかと眼鏡をかけたまな板が立っていた。
めだかの方は何故かコンパニオンみたいな格好をしてるが、特に深く突っ込む気にはならなかった。というか幼馴染みの善吉が気まずそうに目を逸らしているのだ。他人である瞬達にはどうこう言えそうにない。というか言ったところで通じない気がする。
目のやり場に困る舞台の上、まな板眼鏡がマイク片手に喋りだした。
「えー皆さんはじめまして。友人Aことえーちゃんです」
「すごいよハルちゃんっ、まな板が喋ってる! 」
「もしかして――まな板の付喪神かッ⁉ 」
「次言ったら殺すよ」
まな板こと
舞台上にマイクだったものがパラパラと散らばると同時に、会場は静まり返る。
彼女を怒らせてはいけない。この場にいる全員がそれを理解した。
そうして静寂が訪れたのを確認すると、友人Aは新しいマイクを手に持って再び喋り始める。
「えーと、徹夜続きで限界なのでさっさと開会式終わらせたいと思います」
そう言うと、友人Aの頭上に掲げられていたくす玉がパカリと開き、紙吹雪と共に垂れ幕が落ちてくる。
垂れ幕には、えらく達筆な字でこう書かれていた。
――"にじ×ホロ☆ハイパーアルティメットウルトラミラクルドリームトレジャーハントッ!! ~エデンの戦士たちはそして伝説へ~"
…………なぜだろう。
なにをどうやったらここまで胡乱なタイトルを生み出せるのだろうか。きっとこれを書いたやつは何かしらキメて書いていたに違いない。
というか昨日フブキから聞いたのとタイトルが全く違うのだが、そのあたりは一体どうなってるんだろうか。
早くも嫌な感じがしてきた瞬だが、今更引き返すことはできない。
腹をくくり、その場に踏みとどまる。
「ではここからは体力的に終わりかけているえーちゃん氏に代わり、この私黒神めだかが説明を引き継ごうと思う 」
「あ、ようやくまともな説明が始まるみたいだね」
「あのタイトルでまともな説明が来るとは思えないんだけど」
なんか土気色の顔していた友人Aに代わり、コンパニオン衣装の黒神めだかがマイクの前に立って説明を引き継いだ。
「ルールは至って簡単だ。参加者は7人1組のチームとなり、この学園内に散らばっているこちらの"ライバーぐるみ"を集めてもらう。制限時間は5時間。一番多くのライバーぐるみを集めたチームが優勝だ。そして、優勝したチームには豪華賞品がもらえるそうだぞ! 皆切磋琢磨して正々堂々と競うがよい! 」
そう言いながら、めだかは背後の机の上に置かれた袋から、白上フブキを模したぬいぐるみを取り出して掲げる。
こうして、思ったよりも簡潔でまともな説明が終わった。
壇上からめだかが消え、代わりに台車に乗った大きなガシャポンのような機械を押しながら、生徒会庶務・人吉善吉と生徒会会計・阿久根高貴が舞台上に姿を現した。
「じゃあめだかちゃんの説明が終わったことだし、さっそくチームを作ろうか。この抽選機を使ってランダムにチームを作っていくから、事前に配った番号札に従ってチームで集まってもらうよ」
「番号札って……これか」
阿久根に言われて、校門の前で番号札を渡されていたことを思い出した瞬は、ポケットにしまっていた番号札を取り出す。
「じゃあ行くよ。君達の運命を分けるビンゴダイムだ。GOOD LUCK!! 」
ガシャンと、阿久根が抽選機のレバーを下ろす。
これより始まるのは、混沌に混沌を重ねたゲーム。
その裏で、新たな悪意の手が目の前に迫ってきていることを、瞬はまだ知らなかった。
その光景を、校舎の屋上から眺める影が二つ。
一人は、赤いシャツを着たチャラそうな少年――レド。
もう一人は、タンクトップを着たガタイのいい青年。爽やかなスポーツマンといったような雰囲気を漂わせてはいるが、地上へと向けられているその眼光は恐ろしいまでにギラついている。
彼の名は
ギフトメイカー直属の精鋭転生者集団"リバイブ・フォース"の一員である。
「…………気に食わないなあ」
ふいに、亜腕がそう口にした。
「…………何がだ?」
「アイドルだよ。あいつら、ほんと気持ち悪くて仕方がない。笑顔で媚び売るのも気色悪いし、それを有難がるキモオタ共も気色悪くて仕方がない。だというのにメディアにはイケメンアイドルだの女性アイドルだのが蔓延ってるし、なんなら最近はネットにもVtuberとかいうアイドル擬きが巣食っている始末。ほんと嫌になるよね、あんなゴミ共がのさばる世の中なんて。アイドルとそれを有難がるゴミオタク共、汚物はすべて消毒すべきだよ。それこそが健全な世の中を作る第一歩になると思うんだよね。きっと全人類それを望んていると思うんだけど、レド君はどう? 」
怒涛だった。
隠す気の微塵もない嫌悪感。
しかし何よりも恐ろしいのは、それを思いっきりぶちまけておきながら、朗らかな態度を微塵も崩していないところだろう。
あくまでも自然体で、彼は嫌悪と敵意を垂れ流している。
これこそが、鉄富亜腕という男なのだ。
彼の憎悪の限りをすべて耳にしたレドは、露骨に嫌そうに舌打ちをしながらそれらを一蹴し、話を本題に引き戻す。
「僕は別にアイドルなんかには興味ないからどうでもいいんだけどさぁ……本当にうまくやれるの、今回のコは」
「やれるさ、なんてったって俺の同志なんだから」
「……なんかろくな感じしないのはなんでなんだろうな」
自信満々な亜腕の言動に、レドは呆れたようにため息をつく。
「まあ大船に乗った気でいたまえ、ガングニールの後継者はこの俺がばっちりと見つけ出してやるから‼ 」
そう高らかに宣言すると、亜腕は校舎の屋上から勢いよく飛び降りていった。
もちろん、飛び降り自殺ではない。というかオリジオンに覚醒した転生者がこの程度で死ぬはずがない。
亜腕が動き出したのだ。
「さて、と」
一人きりになったレドはその場に腰を下ろし、ズボンのポケットからあるものを取り出す。
それは一枚のDISCのようなものだった。
ゴムのような質感と弾力を持ち、金属光沢とは違った不思議な輝きを放つそれを、レドはまじまじと見つめている。
(このDISC……一体何なんだ? バルジの奴が持っていたってとこは何かがあるんだろうけど……)
レドが今手にしているDISCには、"igalima"と印字されている。
これは死亡した同僚・バルジの死体から回収したものだ。
彼はこのDISCを使うことで、本来一人一つしか持てない筈の転生特典を複数使用することができていた。
しかし、レドをはじめとする他のギフトメイカーはこんなものは知らない。バルジがそれをずっと隠していたからだ。
「テメエの事は死んだ今でも気に食わねえけどよ……遺したモノは有効活用させてもらう。死者の資源を生者が有効活用する、それが人間の歩みってやつなんだからよ」
空にかざしたDISCに、レドのにやけっ面が反射して映り込む。
彼の今回の目的はただ一つ。
ガングニールオリジオンの離反によって生じたリバイブ・フォースの欠員補充。
そのためならば、手段は選ばない。
「……………………」
目の前で稼働している抽選機を見つめながら、儚芽陽菜多は震えていた。
別に歓喜しているわけではない。
怖いのだ。
(無理なんだって……ボクみたいな奴が人前に出るなんて…………)
女の子のような容姿で転生してしまったせいで、ヒナタの第二の人生は碌なものにならなかった。
男子からのセクハラや虐めは日常茶飯事で、女子からも気持ち悪いと避けられる始末。身体を鍛えて男らしくなろうとしたものの、転生特典としてこの容姿が与えられてしまったためか、いくら鍛えたところで美少女を脱することはできず。それでも高校に入れば何か変わるかもと思ったが、その期待もあっけなく裏切られ、冬休み以降不登校生活を送っている。
外に出ようとしても、自身の容姿が気になって仕方がなくて、出られない。そんな生活を送っていたら、いつの間にか半年近くが経過してしまっていた。
本来はこんなイベントに参加したくなかったのだが、唯一の味方だった幼馴染みの、引きこもり脱出大作戦の一環として強引に参加させられてしまったので、幼馴染みの厚意を裏切る訳にもいかず参加する羽目に。
上記の理由から、ヒナタは気が重くて仕方なかった。
しかし、ヒナタには逃げるだけの度胸もない。
どこまでいっても、彼は弱かった。
「…………なんか事故でも起きて中止にならないかな」
そんな妄想を心の中に描きながら、ヒナタはパーカーのフードを目深く被る。
ヒナタの体感時間上で気の遠くなるような時間を経て、7つの玉が抽選機の下部から排出される。
阿久根がそれを拾い上げると、玉にかかれている番号を読み上げる。参加者各自の持つ番号札は玉にかかれた番号とリンクしており、これによりチーム分けが決定するのだ。
「まず最初のチームは――12番・58番・96番・44番・8番・15番・66番っ! 番号を呼ばれた人は前にっ! 」
「――ッ!! 」
阿久根の言葉に、ヒナタの心臓が縮み上がった。
ヒナタの持つ番号札は、12番。
彼はしょっぱなから選ばれてしまったのだ。
「…………」
抽選に当たったことを黙ってしまおうかと考えるヒナタ。
しかし、その願いを踏みにじるかのように、彼の手の中に握られていた番号札がブザー音を発し始める。
「お、選ばれたみたいだな。行って来いよ」
「あっ…………」
近くにいた茶髪の青年に背中を押されたヒナタは、促されるがままにステージの方へと向かう。
ステージの前には、既に他のチームメイトたちが集合していた。
その中には、ホロライブ・にじさんじのライバーの姿もある。
白狐の白上フブキに、秘密結社HoloX総帥のラプラス・ダークネス、そしてにじさんじの顎こと剣持刀也。至近距離から放たれる名だたる有名人たちのオーラに、ヒナタは完全に圧倒されていた。
「白上フブキっ、僭越ながら一番手で行かせてもらいますねっ! 」
「光栄に思うが良いっ……この我、ラプラス・ダークネスと共に歩めることをっ! 」
「いや僕でいいのかな。なんかすっごい申し訳ない気持ちなんだけど」
ファンサービスを欠かさないフブキとラプラスに対して、剣持の方は若干腰が引けている模様。名だたるライバーたちを差し置いて真っ先に選ばれたことがちょっと気になっているようだ。
と、そこに、駆け足気味にふわふわの金髪ツインテールの少女が飛び込んでくる。
「うわととと到着っ! 天馬咲希到着でありますっ」
「あの子は…………」
その少女を、ヒナタは知っている。
天馬咲希。
最近話題にあがりはじめた女子高生バンド・Leo/needのメンバー。
彼女と同じ学校に通う幼馴染みからよく話題に出されていたので、ヒナタは咲希のことを一方的ながら知っていたのだ。
予想外の人物にヒナタが内心驚きを隠せないでいると、そこに遅れて2人分の足音が近づいてくる。
「おやおや、逢瀬さんと同じチームとはついてますね私。今朝の星座占い最下位だったんですけど、案外あてにならないもんですねえ」
「どこがどうツイてるんだよ……ま、参加するからには楽しんだ方がいいのかもな」
やって来たのは、黒髪の少年と小柄なボブカットの少女。どうやら2人は知り合い同士らしい。
少年の方は、ヒナタに気付くなりすたすたと近寄ってくる。
微栗と肩を震わせるヒナタ。
少年はそんなヒナタに躊躇することなく、自然な笑顔と共に手を伸ばしてきた。
「お前が7人目のメンバーか。俺は逢瀬瞬、よろしくな」
この時点では知る由もないが。
これが、ヒナタの運命を変える出会いとなる。
1.5章ED1 ray/BUMP OF CHICKEN
とゆーわけで、Vtuber編開幕です。
導入からしてソシャゲのイベントシナリオ感を意識して書いてます。
のっけからハイテンションで行かせていただきました。キャラぶっ壊れてるような気がするけど、ホロぐらだとみんなこんな感じだし、多少はね?
一応ホロライブ側の主役については、今回はフブキングに。
彼女がメインです。
そして本格的にプロセカキャラも登場です。
そもそも前章でフェニックスワンダーランドが出てた時点で、ねえ。
宮女組を出すタイミングが思いつかなかったので、あえてここでぶち込みました。
たぶん僕はTS娘と男の娘の中毒者だと思います。
次回から本格的にゲームが始まるよ!