【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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新章突入です。新キャラもでるよ。
なんか瞬空気になっちゃうけど許してね。
今回はキャラ紹介を兼ねた箸休めがてらのコメディ増し増しでお送りします。畳めるかは別として風呂敷一気に広げます。いえい。

FGOやってて遅れました。星5はまだアルトリアのみ……こればかりは運だししょうがないね。

YouTubeでシンフォギア全話が毎日一話ずつ公開!
適合者のみんなは絶唱しながら見ようね!




他サイトとのマルチ投稿を考えているんですが……どうしますかねぇ


第1章 統合陰謀学園 アマスベ
第8話 ハイスクールR×R


 少し肌寒い、四月の朝。

 部屋にけたたましく鳴り響く目覚ましの音。開けっ放しの窓から入ってくる海風が、ベッドで寝ている少年に吹き付ける。

 しかし少年は、手探りで目覚まし時計を止めると、再び眠りについてしまう。その時、数回ドアをノックする音がしたかと思えば、直後に部屋のドアが開いた。

 

「アラタ、いつまで寝てるのよ?春休みはとっくに終わってるんだけど」

 

 部屋に入ってきたのは、小柄な少女。茶色がかった短めの黒髪が、窓から入ってきた海風にたなびいている。

 少女は、少年の体に被さっている布団を勢いよく引っぺがし、少年の体を何度も揺すって起こそうとする。

 

「起きろこん畜生」

「あと2、3年寝かせてくれぃ……」

「馬鹿なの貴方は。さっさと起きなさいよ。春休みはとっくに過ぎてるんだってさっき言ったよね」

「わかったてーの、大鳳……」

「先、降りてるからね」

 

 大鳳と呼ばれた少女は、少年がちゃんと目を覚ましたのを確認すると、部屋を出て行った。

 起こされた少年は、大きな欠伸をしながら壁にかけてあった制服を着ていく。寝癖直しは後回しにし、着替え終えた少年はリビングへと向かう。

 

 欠望(かけもち)アラタ。16歳。

 彼は“艦娘”と共に生きる少年である。

 


 

「あ、アラタおはよー」

「うわあ姉貴、凄え寝癖じゃんか……」

 

 廊下でばったり出くわしたのは、アラタの姉である|一希(いつき》。アラタより頭一つ分小さな身長に、肩まで伸びた寝癖まみれの茶髪。寝ぼけているのか、眼鏡がちゃんとかけられていない。朝はいつもこんな感じなのだ。

 

「ご飯ならもう出来てるよん」

「姉貴もさっさと目覚めとけよ。フラフラ歩いてると危なっかしくて見てられねーんだからさ」

「善処する〜」

 

 そう答えると、一希はフラフラと洗面所に向かうのであった。まあ何時もの事だし大丈夫だろうと、アラタはほっといてリビングに入る。すると、台所の方から挨拶がとんできた。

 

「あ、アラタおはよー」

「おう山風、今日も朝飯作ってくれたのか。毎朝ホント助かるぜ」

「へへんっ」

 

 山風と呼ばれた少女は、嬉しそうに胸を張る。頭の黒いリボンや緑の長い髪と共に、割と大きめな胸が揺れているが、見なかったことにしておこう。

 と、そこに寝癖はそのままで、顔を洗い終えて若干顔付きがしっかりした一希がやってきて、山風の肩に手を置いて瞳を潤ませる。

 

「山風も大鳳も学校かあ……いやぁ、ここまで立ち直るなんて私嬉しくて嬉しくて涙腺壊れちゃうよ」

「んな大袈裟な」

「今更言うか。もう二年生だぜ」

 

 アラタも口ではそう言っているものの、なんだかしみじみとした雰囲気の欠望姉弟に、若干気恥ずかしくなる大鳳。アラタ達の顔は、どこか救われたような雰囲気を漂わせていた。

 なんか朝から雰囲気があらぬ方向に行ってしまっている二人に対し、大鳳は現実に引き戻そうとアラタと一希の手を軽く引っ張る。

 

「と、兎に角朝食を食べなさい。遅刻するかご飯抜きかの選択を迫られることになるけどいいの?」

「や、やっべぇ」

 

 時計を見ると、七時半はとうに過ぎてしまっていた。学校が始まるまであと一時間もない。遅刻しないように急いで食卓につき、朝食に手をつけ始めるアラタ達。

 その様子を眠たそうに、かつ優しそうな眼差しで眺めながら、コーヒーを飲む一希。

 

「……一希さん、どうかしました?」

「ん、いや何でもないよ」

 

 山風にそう笑いかけると、一希は何かを誤魔化すようにコップを置いて大きな欠伸をする。

 

(貴女達は人間の中で生きる事を選んだ。それを私もアラタも、あの提督さん達やお仲間も咎めやしない。精一杯この世界を楽しんでくれや)

 


 

「いただきます」

「いただきまーす」

 

 いつも通り食卓につき、朝食を食べる。

 逢瀬家の3人に加えて、ネプテューヌにヒビキも共に食卓を囲む。春休みの間に、瞬達はすっかりたこの光景に慣れてしまった。

 ただ、春休みと違うのは、瞬と湖森が制服姿な所だ。先週から新学年が始まったのだから当然ではあるのだが、次元統合前の記憶がある瞬は、ちょっとした転校生状態になっていた。

 

(なんか慣れないぜ……学校も俺の記憶とはまるで違うし……この間まで学ランだったってのに。ブレザー似合ってる気がしないんだよなぁ)

 

 白飯を口に運びながら、瞬は始業式の事を回想していた。

 学校で見かけた生徒の中には当然見知った顔もあったが、この一週間だけでも随分と周りと自分の知る世界の違いを思い知らされた。

 例えば、変態3人組と称される女子から忌み嫌われる男子生徒達。投稿義務を免除された特待学級の十三組。「二大お嬢様」と学校中から注目を集める女子生徒。支持率98%の新生徒会長などなど —— 瞬と唯からしたら混乱の極みであった。

 その中でも、唯と同じクラスという事実は、幾らか瞬を落ち着かせた。同じ戸惑いを感じる、唯一同じ境遇の存在の心強さに感謝せずにはいられなかった。

 

「湖森、あのさ」

「……」

 

 ついでにもう一つ、困ったことがある。

 オリジオンと戦って以来、湖森の態度が冷たいのだ。この春休みの間、瞬と湖森はほとんど口を利いていない。どうやら、あの時湖森の目の前でアクロスに変身した事が原因のようなのだが、弁解しようにもそれすら無視される始末。ここにきて反抗期かよ、と瞬はショックを受けるのだった。

 


 

 朝食を終え、少し寛いでいると、学校に行く時間が近づいてきた。瞬と湖森はそれぞれ鞄を持って玄関に向かうが、二人の間には言葉は交わされない。

 

「ほんじゃ、俺らは学校行ってくるから、叔父さんの言うことちゃんと聞いて留守番してるんだぞ」

「子供扱いしないで欲しいもんだね」

「子供だろ」

 

 居候幼女達にそう告げて家を出る。

 湖森の方をちらりと見たものの、見事に視線を逸らされ、早歩きで先に行ってしまった。こういう時はどうすれば良いのだろうか、と悩みながら瞬は歩いていた。

 そのせいだろうか。

 

「ぶぁっ!」

「ひょああああああああああああ⁉︎」

 

 後ろから大声で驚かされて盛大に尻餅をついてしまった。見上げると、其処には見慣れた顔が一つ。

 

「いやぁ随分と悩んじゃってるね」

「なんだ唯か……」

 

 笑いながら此方を覗き込んでくる唯を見て、軽く溜息をつく瞬。

 

「あの年頃の女の子って複雑だからね。しょうがないね」

「お前が単純すぎるんだよ」

 

 そう言いながら瞬は立ち上がる。みっともない姿を晒してしまったことに少し恥ずかしくなる瞬。

 

「まあ、全然上手くいかねーんだわ。お前が訊いたって、はぐらかされたんだろ?」

「ありゃあ、そっとしておくのが一番じゃない? 下手に突っ込んだら余計悪化するかも」

 

 瞬自身、そんな事は分かっている。しかし、時間に任せて何もしないでいるのもなんだか落ち着かない。今迄それ程喧嘩する事なく、兄妹仲は良好だった分、余計に瞬は悩んでいるのだった。

 

「そーなのかな……」

「まあ、兄がいきなり仮面ライダーになったらそら受け入れがたいに決まってるんだけどねぇ」

 

 仮面ライダーも難儀なものだなあと実感する瞬。今日も湖森との仲直りに悩まされながら、瞬は学校へとあしを運ぼうとする。

 が。

 

「うお危なあがあっ!」

「あべしっ!」

 

 なんだかよくわからない内に衝撃をくらい、再び尻餅をつく羽目になった。

 どうやら、いきなり曲がり角で誰かと衝突した模様。いつの時代のラブコメなんだと思いながら、瞬は相手を確認する。

 

「あ」

「は」

 

 そこにいたのは、瞬と同じ制服を着た茶髪の少年だった。お互いに呆然とした顔で見つめ合っている。

 一部始終を見ていた唯がぽつり。

 

「……ラブコメ展開だ」

「「冗談じゃない! 誰がコイツと恋に落ちるか!」」

 

 息ぴったり、見事なダブル突っ込みが炸裂。唯は調子に乗って瞬をさらにおちょくりだす。

 

「お前いきなりぶつかって来るとかなんなんだよ……」

「そっちこそ、どこ見て歩いてんだよ!」

 

 少年は自らの頭をさすりながら瞬を睨みつける。朝から変な奴に絡まれたなぁと思いながらも、どうやってこの状況を掻い潜ればいいんだと考える。

 ここで、

 

「何してるのアラタ」

「アラタの方がトラブル起こしてどうするの」

「あいだだだだだだ耳もげる!」

 

 少年の後方からやってきた二人の少女が、少年の耳を引っ張り、瞬から引き離していく。

 

「だからちゃんと前見てって言ったじゃない……ほら謝って謝って」

 

 少女に諭され、少年は瞬のほうを向いて謝る。前をちゃんと確認しなかったのは瞬も同じようなものなので、まあお互い様っちゃあそうなのだが。

 

「わ、悪かったな」

「ちゃんと」

「ご、ごめんなさい」

 

 再度謝り直してから、少年達は走って十字路を横切っていく。去り際に緑髪の少女が唯に向かって一言。

 

「学校行くなら、急いだ方が良いよ」

 

 彼女の姿が見えなくなったあと、忠告を受け入れ、腕時計を見た唯が一言。

 

「やばっ! 遅刻する!」

「まじかよ⁉︎」

 

 慌てて瞬も自分の腕時計を見てみると、遅刻5分前。さあ大変なことになった。距離的にはギリギリ間に合うか否か。朝から全力疾走だ。

 

「やべえ完全遅刻ダッシュゥウウ!」

「瞬お先に失礼〜」

 

 身体能力に自信のある唯が、あっという間に瞬を置いて走り去っていく。

 

「ま、待ってくれえええええええ!」

 

 常識の消え去った、波乱の学園生活が幕を開けようとしていた。

 


 

 朝の早い時間帯。とある高校の教室のひとつ。そこでは、茶髪の青年が必死な様子で何かを訴えていた。

 

「いやホントマジだから! ガチ中のガチだから! 赤き真実で証明できるレベルだから! 信じてれよぉ松田ぁ! 元浜ぁ! 桐生ぅ!」

 

 青年の名は兵藤一誠(ひょうどういっせい)。スケベな事の事を年中考えている、どうしようもない変態である。当然女子からは嫌われている。

 そんな彼であったが、先日なんと女子から告白されたのだ。それもとびっきりの美少女に。デートの約束も既に取り付けてあり、一誠としては狂喜乱舞モノなのだが……どうやら、クラスメイト達は信じていない様子。

 

「それってよ、エイプリルフールの嘘告白じゃあねぇのかよ?」

 

 松田と呼ばれた坊主頭の男は、信じられないといった様子で言う。彼もまた変態仲間である。

 

「俺も松田に同意だ。二次元彼女の間違いじゃねーのか?」

 

 松田の隣にいる元浜と呼ばれた眼鏡の男は、一誠を茶化しては眼鏡をくいっとおさえる。彼も一誠や松田同様に変態であり三人揃って変態トリオとされている。

 

「いや、普通に考えても無いわ。いくらマシになったといえども、兵藤は変態だから」

 

 辛辣な言葉を一斉にぶつける眼鏡女子は、桐生。ちなみに中身はかなり腐っていらっしゃる模様。

 

「汚名は簡単には払拭できねぇのかよ畜生がっ! てかお前ら馬鹿でかいブーメラン飛んでるからな⁉︎」

 

 一誠はクラスメイト達の薄情さに文句を言うも、日頃が日頃なので助け船は出ない。というかブーメランが自らにも跳ね返っているのに気付かないのだろうか。

 クラスメイト達の心無い言葉の数々に、ご立腹の様子である一誠。彼は不貞腐れたように自分の席に座ると、机に突っ伏してしまった。松田と元浜も、一誠を揶揄うのに飽きたのか、好みの女子を見つけるためな窓から校門を眺め始めた。

 

「しかし、今年の一年生はすげぇ可愛い子ばっかりだなあ。あー内面も外見も最高の彼女が欲しいぜー」

「あの中から彼女になってくれる子、出てきてくれたら嬉しいんだけどなぁ。俺童貞のまま死にたかねぇよ」

 

 叶わぬ夢をボヤキながら、彼らは窓の外を眺める。

 

「あ、木場と阿久根だ」

「死んでしまえイケメン」

 

 視線の先には、金髪の青年二人が数多の女子に囲まれながら校門を潜る光景が広がっていた。両者とも女子から絶大な人気を誇っており、学園の二大王子と呼ばれている。

 怨嗟のこもった視線を送る松田と元浜だが、それはすぐに途切れることとなる。

 

「あ! グレモリー先輩だ! 朱乃先輩に子猫ちゃんも!」

「マジかよ! あーやっぱふつくしい……思わずおっふってしまうよ」

「謎ワードを作るな」

 

 視線の先には、鮮やかな紅い髪の女性と、スタイル抜群の黒髪ポニーテールの女性と小柄な白髪の少女が共に校門をくぐる光景が広がっていた。男子生徒の中で大人気のリアス・グレモリー、姫島朱乃、塔城子猫の3人である。

 松田達の顔が一気にだらし無くなるのを見て、桐生は呆れて溜息をつく。

 

「で、いつまでしょげているのよ?」

「煩い薄情者め。今に見てろよ、俺ハーレム王になるからな」

「日本は一夫多妻制は採用してないわよ」

 

 もっとも、例えハーレムが許されたとしても、既に学校中に悪評が広まりきっているのでハーレムは不可能に近いのだが。

 そんな一誠に、悪友達は心無い言葉をぶつけるのであった。

 

「なあイッセー、これから新入生に声掛けにいかね? もしかしたら彼女できるかもしんねぇぞ。妄想じゃない奴がな」

「ちょ……流石に言い過ぎだろ松田。僻みをぶつけるんじゃあない」

 

 知るもんか薄情者共め。ふてくされた一誠は机に突っ伏した状態で、ただデートプランを練り上げていくのであった。

 


 

 時間は進んで昼休み。多くの生徒で混雑する食堂での話。

 

 

「ねぇ聞いた? 新しい生徒会長の噂」

「いきなりなんだよ柚子」

 

 ピンクのツインテールの少女・柊柚子(ひいらぎゆず)は、目の前に座っているトマトみたいな髪色の少年・榊遊矢(さかきゆうや)に対し、唐突に話を振った。

 

「あ、まあ聞いたよ。なんでも凄まじく化け物じみた人らしい。一年生にしてこの時期でって時点で凄いと思うんだけどな」

「アイツ相変わらずぶっ飛んでやがる……普通あんな啖呵の切り方するかよ」

 

 遊矢達とともに学食を食べていた人吉善吉(ひとよしぜんきち)は、ラーメンの麺を啜って飲み込んでから、呆れたように大きな溜息をつく。

 

「支持率98%、偏差値90超え、手にした賞状やトロフィーは数知れず。スポーツもトップレベルで、実家は世界経済を担う冗談みたいなお金持ち。身長263.5m、高度6万フィートをマッハ2で飛行! インテルも入ってる! 人間かどうかも疑わしいレベルの超人だよ」

「後半3つは流石に無いだろ……てかいつの間に不知火はそこに?」

「嫌だなあ、最初からいたよ?」

 

 善吉の向かい側に座っている小柄な少女・不知火半袖(しらぬいはんそで)は悪戯な笑みを浮かべながら話を続ける。

 

「ま、私も彼女に清き一票を入れたわけですがね」

 

 うわあ見るからに怪しい顔してるなぁと思いながらも、遊矢と柚子は苦笑する。

 

「で、人吉は生徒会入るの? あのお嬢様の事ほっとけないんじゃ?」

「馬鹿、アイツは一人でなんでも出来ちまう。俺なんか必要ねーだろ。ともかく、俺は生徒会には入らない」

 

 善吉の言葉はもっともだ。入学したばかりの遊矢達でさえも、又聞きではあるものの彼女の完璧さは理解できる。

 と、ここで善吉以外の動きが止まる。何だ何だと狼狽える善吉に対し、他の三人は一斉に指をさして、

 

「……後ろ」

 

 後ろ? とぼやきながらも、善吉は振り向く。そこには、

 

「ほう、随分とつれない事言うじゃないか、善吉」

 

 なんか凄い態度のでかい美女がいた。形も大きさも立派な胸元を露出した黒い制服。左腕に付いているのは、生徒会役員の印である腕章が五つ。腰まで伸びた黒髪。それら全てが、彼女の凛とした態度を際立たせる。

 

「……ちょっと待ってくれ。まだ昼飯食べ終わってない」

「問答無用! 私についてくるのだ!」

 

 善吉の言葉を問答無用でぶった斬ると、彼女はそのまま手を引っ張りながら食堂から消えていった。その場にいた全員は、あまりの出来事にぽかーんとしてしまう。

 近くで一部始終を見ていた遊矢と柚子にたいし、不知火はニヤニヤ笑いを浮かべながら言う。

 

「あれが噂の生徒会長、黒神めだかだよ」

「……なんかよく分かんないけど、やっぱよく分かんない」

「遊矢、日本語おかしいから」

 

 周りから見れば充分ぶっ飛んだ部類の彼らからみても、強烈だった模様。暫く遊矢達は食事に手がつかなかった。

 


 

 誰もいない剣道場。

 剣道部が数年前に部員不足で廃部になって以来、不良の溜まり場になっているのだが、本日は日曜日なので来ていない。

 一歩歩くたびに埃が舞い、足に竹刀がぶつかるほど散らかったその中。二人の少女が、一人の男子生徒にある提案を持ちかけていた。片方は、紫色の髪を腰まで伸ばしたゴスロリ衣装の少女。もう一人は、分厚い軍服のようなコートを着て、軍帽を目深く被った、長い銀髪をツインテールでまとめあげた少女。

 

「貴方の力、覚醒させてあげようか?」

「少し醜くなるけど、その力は絶大だ」

「……ああ、寄越せよ。俺が世界を変えてやるからな」

 

 男子生徒が少女達の問いに即答すると、ゴスロリ少女は満足したかのように顔に笑みを浮かべて、彼の肩に手を置く。そして、その身体を真っ二つに引き裂くように左右に強く引っ張り始めた。

 

「決まりだなリイラ。中々の逸材だ」

「そうねレイラ。彼ならきっと、うまくやってくれる」

 

 男子生徒の顔に浮かぶは苦悶の表情。さらにその上に、ジッパーのようなものが浮かび上がってくる。リイラとレイラ、二人の少女が少年を引っ張っていくたびにそのジッパーが開いていき、少年の姿がまるで皮のように裏返っていく。

 少女達は、少年に笑みを向け続ける。彼女達の甘言に、彼は際限なく堕ちてゆく。

 

「少し痛いが我慢しろ。これが終わればお前はなんでも思うがままにできるはずだ」

「嫌いな奴を消したり、好きな子を独り占めしたりは勿論、みんなから認められる英雄にもなれるの」

 

 変化が終了する。

 そこには既に少年の姿はなく、全身が赤黒い鱗で覆われた怪人がいた。

 

《KAKUSEI DRAIG》

「お前も今日から赤龍帝だ。本物を倒して代わりに王になるもよし、気に入らないやつを痛めつけるもよし……思うが儘だ」

「だけど気をつけて。仮面ライダーっていう悪い奴らが私や貴方の邪魔をするの。充分気を付けてね」

 

 リイラとレイラの忠告を聞いた後、怪人は地を震わせるような低い声で返答する。

 

「……俺はそんなヘマはしない。俺こそが魔王に相応しいということを、この世界の馬鹿どもに見せつけてやるのさ」

 

 怪人は開いていた扉から剣道場の外に出ると、肩に力を入れる。すると、怪人の背中から一対の赤黒い翼が生えて、力強く羽ばたきだした。そして、大空高くに飛び上がっていく。

 レイラとリイラは、嬉しそうにそれを眺めていた。

 

「最っ高ね! たまらないわ! あたしも久しぶりに暴れたくなっちゃうくらい!」

「よせリイラ。お前の能力だと全員再起不能になるだろ」

「あっそーだったわ。まあ、今回は出しゃばらないでおきましょう。仮面ライダーって奴を知りたいしね」

 

 リイラとレイラは、軽口を叩き合いながら踵を返す。すると、二人の姿が一瞬のうちに消えてしまった。

 


 

 日曜日、正午過ぎ。

 兵藤一誠はワクワクしながら待っていた。心臓は高鳴る一方、不安も当然ながらあった。事実、彼は変態性が災いし、今まで一度も彼女が出来たことがなかった。好意を持っていた異性の幼馴染みも、今では海外在住。

 結果、女性とこんな感じで付き合うのは一誠にとっても未知の領域だった。

 

 

「まだかなー夕麻ちゃん……すっぽかさないよなーまさか……」

 

 若干不安そうに、いずれ来る筈の恋人の名前を呟く。女の準備は時間がかかるというから、多分そうなんだろうなぁと思い、不安を紛らわせる。

「あなたの願い、叶えます」と書かれた、少し前に貰ったチラシを握りしめて、デート成功を祈願する。

 体感時間では数十分は待っただろう。一誠を呼ぶ、聞き覚えのある声。

 

「兵藤くん、おまたせ」

「ゆ、夕麻ちゃん。俺も今来たところだぜ」

 

 黒髪の美少女に名前を呼ばれ、一誠の心は舞い上がった。彼女こそ、一誠をデートに誘った少女・天野夕麻(あまのゆうま)である。

 若干声が裏返りながらも、緊張を誤魔化すように精一杯強がる一誠。いくら変態な一誠といえど、既に心臓はバクバク状態。

 

「じゃ、行こうか」

「あ、ああ」

 

 こうして、二人は街に繰り出した。

 

 

 

 兵藤一誠の人生は、ここで転換期となる。

 果たしてそれがどう転ぶのかは —— 転生者であっても予測はつかない。

 


 

 夕方頃、逢瀬家では。

 

「あ、味噌切らした」

 

 夕飯時になって、叔父の還士郎がそんな事を言い出した。なんで今更になって言いだすのだ。昼間買いに行く時間は充分あっただろうに、と思いながら、瞬は叔父の言葉を聞き流す。

 この流れだと確実に買いに行かされる羽目になる。手間はかからないが、出来れば行きたくないのが本音だ? 

 

「……1日くらい味噌汁なくてもよくね?」

「いやそれだと晩御飯が鯖味噌と白米だけになっちゃうんだよね……それって寂しくない?」

「それもそうだけどさ」

 

 瞬がそう言いかけた時、横からネプテューヌが会話に割り込んでくる。

 

「ついでにトイレットペーパー買って来てよ。無くなったんだよね」

 

 ついでにの前後が逆な気がするが、まあそれは置いておこう。味噌とは違って、トイレットペーパーが無いのは死活問題なので、これは流石に買いに行くしか無い。

 

「わかったよ、俺が買ってくる」

 

 結局、瞬が買いに行く事になってしまった。大きな欠伸をしながら、外へ出て行く瞬。

 これを機に、再び彼は騒乱に巻き込まれることになる。

 


 

 デートも終わり、待ち合わせした公園に戻って来た二人。一誠にとっては、新鮮な体験であったために、未だに有頂天であった。

 

「今日は楽しかったな」

「ええ」

 

 嬉しそうに頷く夕麻の顔をみて、思わず心の中でガッツポーズをする一誠。無い頭を必死に絞って考えたデートプランを楽しんでもらえて嬉しいのだろう。

 と、去り際になって夕麻がこんな事を言ってきた。

 

「兵藤くん、私、お願いがあるんだ」

「そ、それは —— 」

 

 突然の出来事に対し、淡い期待を膨らませる一誠。月明かりに照らされた、夕麻の妖艶な笑みがその期待を一層膨らませていく。

 しかし、それは果たされること無く終わった。

 

 

 ズブリ。

 その音の直後、一誠の身体は血を吹き出しながら倒れていった。

 

 

 

 一部始終を目の前で目撃していた天野夕麻 —— レイナーレにとっても、これは予想外の展開であった。

 彼女は実は人間ではない。人間より高位の、堕天使と呼ばれる存在である。ある目的をもって一誠に近づいたはいいものの、それを果たす前に横取りされた形になったことに対し、憤りを感じずにはいられなかった。

 ドチャリと、力無く血だまりに横たわる一誠。それは自分でも、その仲間達の仕業でも無い。

 

「……」

 

 目の前に居たのは、真紅の鎧を纏った怪物だった。レイナーレにとっても、それは見覚えのない存在。しかし、その雰囲気には何処か心あたりがあるように感じられた。

 違和感を押し殺しながら、彼女は問いかける。

 

「何のつもり? 私の獲物を横取りしようなんて、いい度胸ね」

 

 いきなり獲物を台無しにされたのだ。当然ながら敵意くらい湧く。レイナーレの問いに対し、怪人は沈黙を続ける。

 

「まあ、私も邪魔されて黙っているほど甘くないの。死になさい」

「……俺は悪魔の王となる存在。堕天使風情など敵ではないが、目障りだ。今すぐ俺の視界から消えた上で死ね」

「こっちにも都合ってもんがあるのよ!」

 

 レイナーレはそう叫ぶと、光で出来た槍のようなものを両手に持って、怪人に向かってそれを振りかざした。

 

「言った筈だ。貴様など敵ではないと」

 

 怪人はそれを片手で防ぐと、パキンと、軽く力を入れただけでへし折ってしまった。敵の予想外の強さに一瞬動揺するレイナーレだが、すぐに距離を取る。

 そして、彼女の背中から漆黒の翼が勢いよく開き、それを強く羽ばたかせて夜空に翔び上がった。

 

(コイツは強い……恐らく、私一人では勝率は高くはない。ここは撤退……いえ、あの方の為にも、それは許されない)

「……」

 

 怪人は空に浮かぶレイナーレに見向きもせずに、踵を返して瀕死の一誠に向かって歩き出す。

 

「俺の覇道の犠牲になれ」

 

 怪人は爪を高く振り上げ、冷たい声でそう告げる。今一誠をこの怪人に殺されてしまえば、レイナーレの目的は果たせなくなる。出来るかは分からないが、その前に怪人を追い払うしかない。空からその光景を見下ろしながら、攻撃準備をするレイナーレ。

 両者が今まさに攻撃をしようとしたその瞬間。

 赤い閃光が、夜の闇を塗り替えた。

 


 

 兵藤一誠はただ事態に流されるまま、理不尽にもその生を終えようとしていた。

 何が起きたのかは分からないが、自分の身体から血と体温がなくなっていくのが感じられる。腹を抉られた部分は、まだ熱を発しているものの、それ以外の部分は自分でもわかるほどに冷えてきていた。死んでゆく、というのはこんな感覚なのだろうか。

 

(死にたくない)

 

 漠然とした願いが浮かぶ。

 それは生への執着。理不尽に殺されゆく者の、正当なる願い。早すぎる死の恐怖から逃れようとする未熟な者の、強大な願望。

 

 

 

 それに、応答があった。

 一誠の前に赤い光が突如として現れる。レイナーレと怪人の双方が動きを止める。光は何らかの模様を描くように広がっていき、一誠を包み込んでいく。

 

「この光……紋章、まさか」

「まだ集団戦をする時ではない……俺はこれで去る」

 

 その正体に気付いた両者は、戦いをやめて撤退を始める。後に残されたのは、今にも死にゆこうとする一誠だけであった。

 


 

 不利な状況と判断し、逃亡を図った怪人。既に公園からは離れ、人通りのない、高速道路の高架下まで移動していた。

 このあたりまで来ればなんとかなるだろうと思い、息を切らしながらも移動を続ける。目立つのを避けるため、人間態に戻った上で徒歩で移動を続ける。

 が。

 

「ヨォ、随分と不細工な姿してんな」

 

 その声を聞いて、思わず足を止める。

 月明かりも届かない高架下の暗闇の中から響いてくる足音。怪人は音源の方を凝視する。

 

「オリジオンなら、とりあえず殺せば済む」

 

 ボタンを押すような音が三度。

 

《STANDING BY》

「変身」

《COMPLETE》

 

 くぐもった音声と共に、黄色い光が闇の中から発せられる。オリジオンの間近に迫る足音。月明かりの下に出てきたそれは、紫の複眼を持ち、顔に×マークがある仮面ライダーであった。複眼や、身体中の黄色いラインが発光し、彼を威嚇しているようにも感じられる。

 

「……俺の事くらい知ってんだろ」

 

 怪人の方は、人間態から再び変身し、目の前の仮面ライダーと戦う準備をする。

 

「仮面ライダーカイザ……いや転生者狩り!随分と暇なのだな貴様は」

「勝手に言うがいいさ。どーせオタクは死にやがるんだからよ」

 

 その会話を皮切りに、戦いは始まった。

 両者共に、一気に駆け出して互いに拳をぶつけ合った。あまりの速さに、両者を中心に突風が吹き荒れる。

 そこからは言葉は不要であった。互いが互いにガラ空きの部分を目敏く見つけては蹴りや拳を叩き込み、また相手のそれを予測して的確に防いでダメージを回避する。

 

「はぁっ!」

「ぬん!」

 

 両者の蹴りは、お互いの腹に同時にヒットし、双方吹っ飛んで地面に叩きつけられる。

 しかしらカイザもオリジオンもすぐに立ちあがり、戦闘を続行しようとする。両者ともまだダメージは小さい。戦いは始まったばかりなのだ。

 カイザはベルトに付けられたガラケーのような装置からメモリーを取り外しては、右腰に携帯していた×マークを象った銃に取り付ける。

 

《READY》

 

 その音声と共に、銃の下部から光の刃がまっすぐ伸びる。刃が黄色く発光したそれを逆手に持ち、オリジオンに斬りかかろうとする。

 しかし、それは予想だにしない邪魔者によって妨げられる事となった。

 

「……何してるんだ、お前ら」

 

 逢瀬瞬。

 買い物帰りの少年が、偶然にもこの戦いの場所に来てしまったのだ。カイザもオリジオンも、邪魔者の出現に僅かながら興を削がれるも、直ぐに気を取り直して互いに攻撃を再開した。

 

「……よし、俺も……」

 

 流石にオリジオンを放置するわけにはいかない。瞬はバックルを取り出して腰に取り付ける。

 しかし、ここに更なる邪魔が入る。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 今まさに変身しようとしていた瞬の目の前に、突如として人型の何かが落ちてきた。落下の衝撃と土埃に、思わず目を瞑る瞬。

 

「新手か……!」

「く……はっ!」

 

 目を開けると、瞬の目の前に居たのは、以前学校で襲いかかってきた、オレンジがかった装甲をあちこちに身につけたオリジオンだった。

 オリジオンは瞬と視線が合うなり、いきなりぶん殴ってきた。動きはそれ程速くなかった為に、瞬もなんとか避けられたのだが、拳の当たった部分のアスファルトが砕け、周囲にもヒビが入る。

 

「ブウウウウウゥ……」

 

 このままだと殺されかねない。そう判断した瞬は、オリジオンと距離を取りながらライドアーツをベルトに取り付ける。

 

《ARCROSS》

「変身!」

《CROSS OVER! 思いを! 力を! 世界を繋げ! 仮面ライダーアクロス!》

 

 何度も変身するうちに馴れたのか、変身動作がすこしスピーディーに感じられる。アクロスはオリジオンに向かって走りだしながら、拳を突き出す。

 

「はあっ! せい!」

「らあっ!」

 

 カイザとアクロス。両者はそれぞれ異なった思いを抱きながら目の前の敵に立ち向かう。

 戦いが、幕を開ける。

 


 

 兵藤一誠の視界に、誰かが映り込む。

 瀕死の彼には、はっきりとは見えていないのだが、その人物は彼をまじまじと見つめながら言葉を告げる。

 

「貴方が私を呼んだのね……今にも死にそうじゃない」

 

 当然ながら、今の一誠には応答するだけの力はない。ただ、その顔には、未だに生への執着が見られていた。

 謎の人物は、クスクスと笑った後、一誠に対してこう告げた。

 

「どうせ死ぬなら、私が拾ってあげるわ。貴方の命。私の為に生きなさい」

 




はい、今回から以下の作品がクロスします。
・艦隊これくしょん
・ハイスクールD×D
・めだかボックス
・遊戯王ARC-V

実は前話からこの話を始めたかったのですが、色々長引いて(ほぼFGOのせい)当初の予定より遅くなりました。
まあ趣味全開です。

二次創作だと大鳳は出番少ないから上手く扱えてる気がしない。

最後にまたまた色々出しました。
手始めにD×D一巻、いってみよー。もちろん一誠達の見せ場も作るつもりですが、かなり改変入ってますのでご注意。特に堕天使勢。
ちなみに私は原作最新巻までは読んでおらず、まだ修学旅行編くらいまでしか原作を持っていないので、そこも注意。

活動報告のリクエストボックスにじゃんじゃんリクエストしちゃってください!オリジオンや敵転生者、または出して欲しい作品やキャラの絡みなど、アンチ関連以外はなるべく採用するつもりですので、待っとるで。
捜索板で教えていただいた作品につきましては、暇な時に読んでいく予定です。これからさらにクロス作品が増えていくので、色々参考できるところはしていきたいですね。

次回 デアイノレンサ

力を、思いを、世界を繋げ!

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