【第1.5章始動‼︎】仮面ライダーアクロス With Legend Heroes   作:カオス箱

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前回までのあらすじ
・学校カオスすぎる
・瞬は色々苦労する
・イッセー死す


スローペース更新ですまない……ほんとすまない……
どこか一箇所でも描写に詰まるとてんで書けなくなっちゃうんや。
まあFGOやってたせいなんですけども。


第9話 デアイノレンサ

 

 

 夜闇に光る、カイザの黄色いラインと紫の複眼。高架線の橋脚に打ち付けられるオリジオンの赤黒い身体。呻き声をあげながら、オリジオンは背中を橋脚に預けながら立ち上がる。

 

(やはりコイツ相手じゃ分が悪い……単純に、今は実力に差があり過ぎる)

 

 そう判断していたオリジオンは、何度も戦線離脱を試みたものの、カイザはそれを許さない。飛ぼうとすればすぐ様銃で撃ち落とされ、一方的に殴られる。的確に、かつ冷酷に、殺す為の攻撃の手を一切緩めることなく、目の前の仮面ライダーは殴ってくる。

 カイザはオリジオンにゆっくり歩み寄りながら、左腰に下げていたデジカメのような機器を手に持ち、×マークのような形をした剣に差していたメモリーを抜いて、デジカメのレンズ部分に差し込む。

 

《Ready》

 

 デジカメから音声がすると同時に、裏側から持ち手のようなものが飛び出す。カイザはそこを右手で掴み、そのまま思い切りオリジオンをぶん殴った。

 大きく吹き飛んでフェンスを突き破り、近くの用水路に落ちてゆくオリジオン。濁った水飛沫を上げ、用水路の底を転がっていく。

 

「大したことないな。その特典は御飾りか? まあどの道、俺には効かないがな」

「……」

「今地獄に送ってやる。転生者(おまえら)は……許さない存在だ」

 

 


 

 

「せいやぁっ!」

 

 一方、アクロスに変身した瞬も別のオリジオンと交戦を始めていた。両者の拳が勢いよく衝突するが、オリジオンの方がパワーが上な為にアクロスの拳は上に跳ね上げられる。

 それを逃す事なく、オリジオンは装甲の隙間から煙を吹き出しながら、ガラ空きになったアクロスの身体に回し蹴りを食らわせて吹っ飛ばした。

 

「やっぱりコイツ強え……純粋にパワーが桁違いだ……」

「オマエト……ワカリアウ……」

 

 こんなのと殴り愛してたらこっちの身が持たんわ! と思いながらも、アクロスは立ち上がる。

 

(俺じゃコイツには勝てない。だから、ここを上手いこと切り抜ける方法を見つけ出さねぇと……)

 

 と、考えているうちに、オリジオンがアクロスに向かって蹴りを放ってきた。すぐ様意識を戻し、身体を横に捻って回避する。蹴りは高架トンネルの壁面に亀裂を走らせ、辺りの空気も震わせる。

 

「ハナシ、アウ……」

「じゃあ暴力やめろや!」

 

 行動と台詞が噛み合ってない。まさか肉体言語で話し合ってるつもりなのだろうか……と思ってしまう。オリジオンはアクロスの方をむくと、身体中から煙を吹き出しながら一歩ずつ瞬に接近していく。

 

「畜生……ならこれを!」

《NEPTUNIA》

 

 以前手に入れた新しいライドアーツをベルトに取り付ける。

 

《LEGEND LINK・SET UP! ネプテューヌゥウウ!》

 

 アクロスの周りに黒と紫のアーマーが出現し、アクロスの上からくっついてゆき、以前変身した姿に変化した。

 オリジオンは一瞬驚いたような仕草をするが、アクロスはその隙を突いて、前より早いスピードでオリジオンに肘を撃ち込んだ。そのままタックルの要領でオリジオンを推して行き、フェンスを突き破ってカイザ達のいる用水路に落ちていく。

 

「今地獄に送ってやる。転生者(おまえら)は……許さない存在だ」

 

 下から聞こえる声には、明確な怒りが感じられる。それに対し、こんな返答があった。

 

「甘いぜ?」

《explosion!》

 

 その声と同時に、赤いオリジオンから衝撃波のようなものが放たれる。それは目の前にいたカイザも、落下中であったアクロス達も、彼の周りに合ったもの全てを吹き飛ばしてゆく。

 気づいた時には、衝撃波を食らった全員が用水路から投げ出され、高い位置の道路に転がされていた。

 赤黒い翼をはためかせながら、オリジオンは用水路から瞬達のいる高さまで翔んでくる。

 

「そうか……赤龍帝の籠手……お前、ずっと溜めていたな?」

 

 カイザはオリジオンに向かって、憎らしそうに言う。瞬にとってはなんのことかさっぱりだが、どうやら彼らには分かるらしい。

 

「貴様に吹き飛ばされる寸前にな。慢心してゆっくりトドメを刺そうとしてくれて助かったぞ」

「……慢心してるのはどっちだ?」

 

 不敵に笑うオリジオンを気にも留めず、カイザはベルトについている携帯電話のEnterキーを押す。

 

《Exceed charge》

「無駄だ……ここから届くとでも?」

「阿保、誰がお前を殴るっつった?」

 

 そう言った次の瞬間、何か黄色いものがオリジオンの身体に刺さる。それは刺さると同時に四角錐状に広がり、オリジオンをその位置に固定する。

 一体何が、とオリジオンは目を動かして自分を襲った現象を探る。すると、カイザの右足に双眼鏡のような物がついていることに気づいた。

 

「殴るんじゃねぇ、蹴るんだよクソッタレ」

「あ、あが……」

「せやぁ!」

 

 カイザは高く飛び上がり、空中で一回転してドロップキックに体勢に移る。オリジオンは避けようともがくが、動けない。カイザの足が、目前に迫る。

 その時であった。

 

「帰るよ、ガングニール、ドライグ」

 

 何処からか声とともに、鞭のような物が飛んできてカイザを用水路へと叩き落とすと共に、オリジオンをまるで引き寄せるように巻きついていった。

 上体を起こしながら、アクロスは何が起きたのか確かめようとする。

 

「今はまだ戦う時じゃない。貴方も分かっている筈よ」

 

 再び声がした。いつの間にか、アクロスの正面、用水路を挟んで反対側の道路に一人の少女がいた。街灯に照らされている為に、彼女の姿は良く見える。禍々しい紫の長髪に、瞬より頭一つ分ほど低い背丈。黒いゴスロリ衣装。しかし、アクロスが気になったのは全く別だった。

 

「唯に……似てる?」

 

 何故か、そんな言葉が漏れた。

 顔付きは似ているように見えるが、それ以外は全て違う。それなのに、出てきた言葉はそれだった。アクロス自身、何故そんな言葉を漏らしたのかわからない。

 

「……唯って誰よ? 私はリイラよ」

 

 少女はアクロスの言葉に機嫌を悪くしながらも、左手にあったもう一つの鞭を伸ばしてもう一体のオリジオンを引き上げる。

 

「まったく、また逃げ出したの? 貴方に死なれたら困るんだから、やめて欲しいのだけどね。転生者といえど、無敵では無いのよ」

「待て —— 」

「煩い」

 

 怪人達を引き連れ撤退しようとするリイラと名乗った少女を追いかけようと、アクロスは立ち上がるが、リイラはアクロスの足元に鞭を放ち、瞬を華麗にすっ転ばさせる。くるりと空中で一回転して背中を地面に叩きつけられる瞬。彼が再び立ち上がった時には、既に少女もオリジオンも姿を消していた。

 

「……」

 

 何だったんだ今の。変身を解くのも忘れて暫く呆然としていたが、そういえば用水路にカイザがまだいる事を思い出し、立ち上がってフェンス越しに覗き込む。

 

「あれ……?」

 

 しかし、そこには何もなかった。結構まともに攻撃をうけているように見えたのだが、既に離れていたのだろうか。

 なんだか心配して損した気分だな、と思いながら瞬は変身を解除する。そもそも買い物帰りだったので、道端に置いてきた買い物袋を取りに行こうと踵を返す。落し物扱いで交番に届けられてなければいいが。

 てか買い物行っただけでバトル発生ってありえねーだろ、と悪態をつきながら、買い物袋を置いてきた地点へと向かう。そこに、

 

「少しはいい顔つきになったじゃないか、逢瀬君」

「ふぉあっ⁉︎」

 

 いきなり真横から胡散臭い声が聞こえてきて、思わず驚いてしまう。声のした方を見ると、そこには久しぶりとなる怪しいお兄さん(フィフティ)の姿があった。

 

「久しぶりだね」

「フィフティ……」

 

 なんでそう心臓に悪い登場の仕方しか出来ないんだ。と言わんばかりの視線をフィフティに向けて放つ瞬。しかしスルースキルが異様に高いフィフティはそんなの関係ねぇとばかりに薄笑いを浮かべながら話を続ける。

 

「すまないね。出てくるのが遅くなって」

「……」

 

 別にお前を待ってた覚えは無いんだが、と言いたくなったが、どうせスルーされるのは目に見えているので、瞬は黙っていた。

 

「既にアクロスの真の力その1を使ったようだね」

「真の……アレのことか」

「ああ。まさにあれこそがアクロス真骨頂その1『LEGEND LINK』なのさ!」

「……」

 

 腕を広げて高らかに叫ぶフィフティ。正直言うと既に夜中だし近所迷惑だからやめて欲しい。そんな瞬の思いはどこへやら。フィフティは反応に困っている瞬を無視して話を続けていく。

 

「数多の世界で活躍をしてきた・している戦士達の力を借り、身に纏う。それが『LEGEND LINK』なんだ。私が作ったわけではないが、ロマン溢れるだろう?」

 

 なんか得意げにドヤ顔をキメるフィフティに、どう反応すればいいのか分からずに困惑する瞬。はっきり言ってよくわからないので「お、おう」としか言えないのだが。

 

「うん。これでアクロスの力については大方説明はした……と思う」

 

 ホントかよ、と瞬は疑惑の視線を向ける。フィフティは踵を返そうとするが、ふと何かを思い出したような素振りを見せ、最後に一つ、と付け加える。

 

「アクロスの力は絆の力。それを念頭に入れてほしい。もし君がその力を私利私欲の為に使うならば、私は君を殺す」

「 —— !」

 

 今までにない真面目な表情、低い声で瞬にそう告げるフィフティ。その声色は、いつもの不信感マシマシな胡散臭い雰囲気を一切纏わず、代わりに形容しがたい恐怖を含んでいた。

 フィフティはそう告げた後、すぐさま何時もの胡散臭そうな雰囲気にもどると、

 

「あ、それはそうとコレを」

「あっ……買い物袋」

 

 フィフティが手渡したのは、瞬の買い物袋だった。戦闘の邪魔になると置いておいたのだが、持っていたらしい。

 

「最後に忠告を一つ。あの転生者狩りには気をつけたまえ。君がアクロスとして戦う以上、彼との衝突は避けられないだろうが、しばらくは彼との戦闘はしないでおこう。力量差は天と地ほどあるからね」

「協力ってのは……」

「無理だ。おそらく彼と君は根本的に馬が合わない。そもそも私も彼に嫌われてるから協力なんか絶望的さ」

 

 一体過去に何があった、と疑問に思わずにはいられなくなる。どうやらフィフティと転生狩者は面識があるようだが、どうせ訊いたところで答えてはくれないだろう。

 瞬としてもファーストコンタクトでボコボコにされた相手とは出来れば関わりたくないのは本心であるのだが、かと言ってオリジオンを野放しにすれば、前回のような事態になり得る。それは瞬としても看過はできない。

 つまるところ、方針としてはあの転生狩者との戦闘をなるべく回避しながらあのオリジオンに対処することになる。

 

「じゃ、また今度」

 

 言いたいことは全て言い切ったのか、夜の闇に消えていくフィフティ。後に残されたのは瞬ただ一人。

 こうして、再び戦いの幕が上がった。

 

 


 

 柔らかな朝の日差し。

 兵藤一誠は、ゆっくりと目を開ける。

 

「……あれ?」

 

 目が覚めると、見慣れた自分の部屋だった。部屋の至る所に健全とは言えない内容の雑誌やらDVDやらがある、別の意味で汚部屋な自室。

 時計を見ると、午前6時。起きるにはちょっと早い時間な気がするが、目覚めたものはどうしようもない。

 

「朝……朝かー、てか俺いつ帰って来たんだっけ……?」

 

 そう思考を働かせていると、昨日の記憶が蘇る。

 

「つーか、俺死んでなかったっけ?」

 

 それに気づくと同時に、背中が冷や汗でぐっしょりと濡れていく。

 止め処なく流れてゆく鮮血と、冷えてゆく身体。何もわからないまま、夕麻との別れ際に訪れた“死”。あの時、明らかに一誠の腹は何者かに抉られた筈だった。

 しかし、彼はまだ生きている。何故だか分からないが、こうして今も生きているのだ。腹に穴は空いていないし、心臓はちゃんと脈打っている。むしろピンピンしている。

 一体これはどういう事なんだ? と、一誠は足りない頭を振り絞って考える。と、ここでふとある事が頭をよぎった。

 

「つーか、夕麻ちゃんは大丈夫だったのか?」

 

 そうだ。あの時、あの場には夕麻も居たはずだ。彼女は襲われずに済んだのだろうか。後で電話でもかけてみようか、と決める一誠。

 早速しようと、机の上で目覚ましアラームを鳴らしっぱなしの自身のスマホに手を伸ばそうとしたその時、廊下から母親の声が聞こえてくる。

 

「イッセー、起きなさい。また遅くまで起きてたの?」

「お、起きてる! 起きてるから! 今降ります!」

 

 一誠はそう言うと、すぐ様アラームを切り、スマホを手に持って部屋を出て行く。いくら考えたところで答えは出ないし、今は考えないでおこうと決め、いつも通りに朝の支度を進めるのであった。

 


 

 そんなこんなで登校中。歩き慣れた通学路を行く一誠だが、T字路でばったり出会った級友に声をかけられる。

 

「おっすイッセー」

「ん、アラタか」

 

 半ば腐れ縁のような関係のアラタと一誠。諸事情より艦娘との縁が豊富なアラタに対して、時折一誠は軽く嫉妬と羨望の念を抱く事もある。本日も大鳳と一緒に登校しているアラタの姿に若干嫉妬と羨望を抱く一誠であった。

 

「お前どうした? なんか気怠げそうじゃあないか」

 

 アラタに心配そうな顔でそんな事を言われたが、昨晩あんな事があったのだ。能天気にエロいことを考えられる訳がない。考えないでおこうとしても、やはり難しい。

 

「気のせいだって、昨日のデートも楽しめたしな」

「あー、そうか。そういやそんな事言ってたな。あれ嘘じゃ無かったんだな」

「お前まで信じてなかったのかよ⁉︎写真まで見せたのに……!」

「てっきり合成かと思って」

 

 お前も信じてなかったんかい! と一誠はアラタの頭にグリグリ攻撃を繰り出す。痛い痛いともがくアラタと、その光景を若干冷めた目で見る大鳳。ちなみにこの冷めた目は一誠にのみ向けられている。

 

「相変わらず冷たい視線だ」

「たりめーだろ、お前日頃女子から何て言われてると思う? 逸(脱した)性(欲の権化)(イッセー)だぞ? 目があったら即孕ませらるとか言われてるぜ」

「聞きたくなかったそんな情報! 昔に比べたらだいぶ治まってきたから! 覗きも足を洗ったから!」

 

 逸性とか品性疑う渾名つけられてはたまらないと憤慨する一誠だが、実際本人が品性疑うような人間なのであまり擁護は出来ない、

 アラタ自身もちょっと一誠を茶化してオーバーに言っただけなのだが、流石にやり過ぎだと思い訂正する。

 

「それって当時の学級委員長にシメられたからだろ……つーかそこまでは言われてねーよ。フレンドジョークだよ」

「なーんだよかったー」

 

 まあ程度はどうあれ、変態なのには変わりないが。

 

「アラタ、友達は選んだ方がいいよ」

「そう言うなって。これでも友達思いな奴なんだよ、イッセーは」

 

 大鳳の追い討ちをフォローによってなんとか回避するアラタ。そんなこんなしているうちに、昨日の曲がり角に差し掛かった。

 

「……」

「アラタさん?」

「少し待とうか」

 

 えっ……と大鳳が思っていると、前方の曲がり角から少年が一人出てきた。アラタもご存知、逢瀬瞬である。何だか考え事をしているのか、前をちゃんと見てないようだ。

 

「危ない危ない。またラブコメ展開になるところだった」

「おっす逢瀬……だったっけ?」

「お、おはよ……そうだけど」

「俺は兵藤一誠。せっかく同じクラスになったんだから、よろしく頼むぜ」

 

 一誠は瞬の肩に手を回しながらそんな事を言う。妙に馴れ馴れしい気がするのは気のせいだろうか。

 

「気になってんだがよ、なんでお前挙動不審気味なんだ?」

「え? そ、そうだった?」

 

 瞬はアラタからそう言われて、少しビクッとしてしまう。瞬からすれば、転校してない筈なのに転校生気分な状態なわけであるから、自分の記憶とは食い違う異物には警戒せざるを得ないのだ。

 

「気のせいだって」

「……いや赤の他人の俺から見ても一目瞭然だからよ、流石にこっちも気になるんだ」

「そ、そうか……でもホントに大丈夫だから、な?」

「そうならいいけど」

「さっさと行こーぜアラタ。何やってんだ」

 

 会話が終わって一人残された瞬。確かにここの所張り詰め気味だったが、周りから見ても異様だと思われていたらしい。確かにこの一週間、新たなクラスで孤立気味だとは感じていたが、ひょっとすると無意識のうちに避けられていたのかもしれない。

 

「……もうちょっと肩の力抜いた方がいいのかな」

「肩の力がどうしたって?」

「がひぃん!」

 

 後ろから声がしたかと思えば、いきなり膝カックンをくらって思わず地面に膝をついてしまう。

 

「いって……唯! いきなり何するんだよ⁉︎」

「おっはよー、相変わらず浮かない顔してるねー」

 

 いつも通りの能天気な態度の唯を見て、思わず苦笑する瞬。

 ただし幼馴染みとは言えど、挨拶がわりに膝カックンは無いと思う。そもそも異性にやるのは抵抗感があると思うのだが、彼女はその辺りをどう思っているのだろうか。

 

「お前とは違って色々俺はあるんだって」

「色々ねぇ」

「なんだその反応。とにかく俺は先に行くぜ」

 

 こうしてダラダラ立ち話をしていたら前の様に遅刻ギリギリになりかねない。早歩きになっていく瞬を慌てて追いかける唯。

 

「ちょ待て待てぃ!」

「こないだ置いていきやがった軽い仕返しだって!」

 

 ここで両者全力疾走。学校までの競争が始まった。

 ちなみにこの直後に唯があっさり抜かしていって、瞬は学校に着く頃にはヘトヘトになってしまったのは別の話となる。

 


 

 HR前の教室に、品性が感じられない大きな声が響いた。

 

「彼女ぉ? お前に? いやいやいや、馬鹿な事言うなよ。エイプリルフールはとっくに終わってるんだぜ?」

 

 昨日の夕麻とのデートの話題を振るなり、松田と元浜はそんな心ない発言を一誠に放つ。

 

「お前なぁ……俺に嫉妬するのは分かるが、幾ら何でも言い過ぎだぜ。いつまで疑ってんだ。写真だって見せただろ。昨日のデート写真だってスマホに送ってる筈だ」

 

 そもそもの話、一誠の記憶が確かならば二人に彼女を紹介したし、優越感から「お前も早く彼女作れよ」と言ってやったのも覚えている。

 それにもかかわらず、二人は全く覚えていない。それどころか、夕麻がいたことさえも覚えていないのだ。こうしている今も、松田と元浜は一誠に対して憐みの表情をむけ続けている。

 

「ま、まあなんだ。よく分かんねーけど、今日は俺ん家で秘蔵のコレクションでも見て元気だそうや」

「うんうん。童貞こじらせて妄想彼女とのデートまでやらかしたんだ。お前疲れてんだって」

「うう……」

 

 一誠を無視して勝手に盛り上がる二人。見かねたアラタが肩に手を置いて、

 

「その……よ。生憎俺は知らなかったんだけどさ、まあ落ち込むなよ。お前らしく無いぜ」

「……アラタは信じてくれるのか?」

「分からない。俺は紹介されてねえしな。だけどお前は良くも悪くも正直な奴だってのは知ってる」

 

 アラタに慰められる一誠。流石に変態二人も言い過ぎたと思った様で、申し訳無さそうにしている。

 


 

 昼休み。

 唯と机を向かい合わせにくっつけて弁当を食べようとする瞬。側から見るとお前ら付き合ってないかと言われそうな感じだが、本人達はそのつもりはない。

 そこに、

 

「俺達も一緒でいいか?」

「お前は……」

「欠望アラタだ。こっちは大鳳と一誠」

 

 今朝の三人がやってきた。

 

「別にいいよ。食事どきは賑やかに越したことは無いからね」

 

 アッサリと許可を出す唯。瞬としても断る理由が無いので、三人は近くの空席を動かしてくっつける。

 

「よろしく」

「こっちこそ」

 

 大鳳の挨拶に軽く返す唯。一方で瞬は、自分の向かい側に座ったアラタに対し、なんなんだこいつと言わんばかりの目を向けていた。

 現在の世界は、瞬にとっては未知の部分が多い。記憶している常識と現実が微妙に噛み合わない。それにフィフティからの漠然とした忠告や、前述した実質的な転校生状態がまざるのだから、いくら一般人の瞬でも周囲への警戒心の類は芽生える。

 

「なんだよ、怖い顔して」

「い、いやあ、なんか距離の詰め方が早いっつーか、そんな気がして」

「友達作りの基本は最初は攻める! 俺なりのやり方なのさ!」

「地雷踏みかねないんですがそれは」

 

 ドヤ顔のアラタに対し、思わずツッコミを入れる瞬。アラタの言っていることは理解は出来るのだが、瞬の言う通りの可能性もある。人間関係とは難しいものである。

 

「それを聞いて最初からオープンにしてたら俺女子から嫌われたんだが」

「性欲オープンにしろとは言ってねえよ。てか俺と出会う前からオープンだったろお前」

「正直言って最初見たとき引いた」

 

 割と付き合いの長いアラタだけでなく、ほぼ初対面の唯にまでど正論を突きつけられる一誠。正直言って公衆の面前でエロトークかましてる人間とお近づきになりたいと思う人間は少ないだろう。

 

「お前もっとスケベを隠せば人気になると思うんだけどな」

「性欲は全生命が持ちうる由緒ある欲望なんだぜ。それを —— 」

 


 

 会話が始まって30分程経った。

 やはり食事をしながら話をするというのは、親交を深めるのには効果的なのか、少年漫画トークで盛り上がったり、アラタと一誠の漫才じみた会話に笑いを誘われたりした。

 そして会話は以下の話題に行き着いた。

 

「フラれた?」

「今朝から夕麻ちゃんと連絡がつかないんだよ……電話やメールも番号やアドレス変わってて出来ないし」

「……変態性を見抜かれたのでは」

 

 大鳳のもっともな指摘を必死に否定する一誠。本人が言うには、一応変態コンビ以外の知り合いから色々デートプランのアドバイスを貰ったらしいのだが。

 

「それを誰も覚えてないんだよ。松田達も夕麻ちゃんを紹介したはずなのに全く覚えちゃいない」

「そりゃ不思議だな」

「まあ私含めてみんな信じてないんだけどね。普段がアレだし」

「とにかくこの話題はやめやめ。私達が反応に困るから」

 

 唯の一言で一旦会話が途切れる。話題に入れない人が出てくる会話はあまりよろしくない。

 

「そういえば新しい生徒会長さん、目安箱置くとか言ってましたね。全生徒の悩みを解決するって」

「噂だけでも同じ人間とは思えないんだけど」

「そうだイッセー、目安箱使えばいいんじゃねーの? そうすりゃお前の悩みもなんとかなるかもな」

「無茶言うなよ……」

 

 アラタと一誠のやり取りを他所に、瞬はふと窓の外に目をやる。人気の少ない場所であったが、そこにいた人物にはどこか見覚えがある。

 

(あの白パーカー見覚えあるんだけど、何処で見たっけなあ)

 

 お互いに面識はほぼゼロな上、瞬はズダボロの姿しか見てないために知らないのは当然と言える。なんか下級生らしき少女に必死に弁明しているが、関係無いので視線を戻す。

 

「じゃあ、放課後にでも行くか?」

「ダメ元でやるかぁ……?」

「いやどうにかなるんですかそれで」

 

 そんな感じで昼休みのトークは幕を下ろすのだった。

 


 

「兵藤一誠くんだね」

 

 放課後になって直ぐの事。瞬のクラスに一人の少年がやって来た。彼が教室に入るなり、教室にいた女子の大半が一斉に黄色い悲鳴をあげた。

 

「キャー! 木場くんよ!」

「こんなに近くで見たの初めて!」

「希望の花咲いちゃう!」

「止まるんじゃねえぞ……!」

 

 一体何なんだと、あまりの煩さに思わず耳を塞いでしまう瞬と唯。少年に嫉妬する非リア充の男子達。ある意味カオスな空間の中、少年は一誠に向かって歩く。

 

「お前は……木場裕斗(きばゆうと)!」

 

 学園の二大王子の一人と言われるイケメンボーイこと木場裕斗。男子からは妬み、女子からは羨望の眼差しを一身に受ける人気者である。彼はいつものようにイケメンスマイルを浮かべながら一誠に話しかけてくる。

 

「グレモリー先輩からの伝言を預かってきた」

「俺に? てか先輩が?」

 

 嫌そうな顔をする一誠。声に木場に対する僻みがこもっているように感じるのは気のせいだろうか。

 そもそも呼ばれる心辺りがなさすぎる。学園の人気者であるリアスに呼ばれるのは嬉しいのだが、いささか唐突に感じる。

 

「残念ながら拒否権はないんだ」

 

 爽やかなイケメンスマイルで群がる女性を捌きながら、一誠の手を引いて教室を出て行く木場。

 

「なーんだあれ」

「告白?」

「木場くんと付き合うなんて兵藤絶対許さねぇ!」

「木場くんはホモだった……? でも兵藤、テメーはダメだ」

 

 一連の出来事に対しぽかーんとしている男性陣と、一誠に対して辛辣な言葉を放つ女性陣。一部は「イチキバとかキモくね?」等のマニアックな感想を漏らしていた。

 

「わけわからん……」

「それがこの学園なんだってよ」

 

 瞬の呟きに対し、茶化すように言うアラタ。自分の知ってる学校生活ってもっと平和だった筈なんだがなあと思わずにはいられないのであった。

 


 

 木場に連れられるまま、一誠は旧校舎へとやってきていた。古びた西洋風のこの建物は、現在は一部分だけが部室棟として使われており、寄り付く人は少ない。

 掃除が行き届いているのか中はかなり綺麗になっており、初めて立ち入った一誠は辺りを興味深そうに見ながら木場に連れられていった。

 

「ここだ」

 

 最終的に、ある扉の前で立ち止まった。小綺麗な扉には“オカルト研究部”と書かれたプレートがつけられている。

 

「部長、連れてきました」

「おい、なんでオカルト研究部に連れてきたんだよ?」

 

 一誠の言葉を無視したまま、木場は扉をノックしてから開ける。そこらかしこに謎の文字や魔方陣的な何かが存在する悪趣味な部屋が、一誠を迎える。シャワーの音が聞こえるのは何故だろうか。

 

「うえ……なんだこれ」

 

 ソファーに座っていた少女が、二人に気付いて菓子へと伸ばしていた手を止める。

 

「先輩」

「紹介するよ。こちらは兵藤一誠くん」

 

 一誠も彼女のことは知っている。学園のマスコットとも言われている美少女・塔城小猫(とうじょうこねこ)だ。ロリな外見で男子人気の高い後輩は、一誠に軽く頭を下げるてすぐにそっぽを向いてしまう。

 

「嫌らしい顔」

 

 初っ端から辛辣な言葉をぶっかけられた。そりゃあ現在進行形で女子から嫌われてる一誠に近寄られたくないというねは当然の事。一誠も分かってはいるし、言われ慣れてはいるが、やはり傷つく。

 一誠がソファーに腰掛けると同時に、部室の奥の方のカーテンが開く。そこに居たのは制服を着たリアスの姿。

 

「ごめんなさい、さっきまでちょっと忙しかったから、今シャワーを浴びてたの」

「いえ、気にしてません」

 

 少し濡れた紅い髪が、一誠を興奮させる。それを見て再び小猫が嫌な顔をする。すると部室の扉が開き、黒髪ポニテのダイナマイトボディの女性が入ってきた。リアスと並ぶ学園の憧れの的・姫島朱乃(ひめじまあけの)

 だ。彼女の登場により、更に一誠は興奮する。

 

「少し遅くなりました」

「これで揃ったわね。さて、兵藤一誠くん —— いえ、イッセー」

「は、はい」

「私たちオカルト研究部は貴方を歓迎するわ —— 悪魔としてね」

 

 


 

 同時刻、帰り道。

 アラタと大鳳は二人で歩いていた。海が近いので、潮風の匂いが二人を薄く包んでいる。

 

「アラタ、なんで急にあの人達と関わり出したの?」

「それ聞く必要あるかな?」

「いやまあ、結果的には悪くない人だったけど、なんかこう……始まりが突発的な気がして」

 

 アラタは数秒ほどうーんと唸ったのち、

 

「ん、まあ……ちょっと昔の俺に似てるなーって思ってさ」

「昔……ああ、あの厨二病拗らせてた」

「拗らせてねーよ」

 

 大鳳の言葉に苦笑して、アラタはこう言った。

 

「周りを恐れて、何もできなかった独りぼっちの俺にさ」

 

 

 

 




割とキーパーソンが出まくっているので苦労しました、。オカ研メンバーとアクロスの遭遇までやりたかったが、長くなりすぎるので断念。てかまだHSDD1巻の内容の1/5しか終わってない……

めだ箱やARC-Vの要素が薄いですが、だいたい数話毎にクローズアップする作品を決めて進めていく方針なので許してほしいです。
多重クロスになってねーだろと言われても仕方ないわこれ。

イッセー弄りはなぜかノリノリで書いてました。
馬鹿な男子高校生の会話の雰囲気を感じて頂ければ幸いです。

次回「望まれないエンカウント」


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