アイズ「違います。好きになった人がたまたまショタだったんです」   作:鉤森

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金髪の剣姫といったらお相手は彼かなと。あと彼が一番型月系主人公で好き。


なんで小人族かって言われたら書きたかったから。ショタロリのザビーズが。



続けたい。ネタ次第


その愛は、焔の如く(顔から火が出る的な意味で)

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインは釣り合わねえ。」

 

 

「アイズ。お前は俺とあのガキ、どっちをツガイにしたいんだ?」

 

 

宴もたけなわ、主神ロキ主催の「豊穣の女主人」にて開催された祝勝会の席での話だ。突如として吐かれた、酔いも酔った狼人(ベート)の一周回って…もいない告白まがいの発言。酒の勢いのまま吐かれた言葉は、不慣れもあろうがあまりにも下衆のソレだ。空気をブチ壊す無神経なその発言、勢いに呑まれ愛想笑いを浮かべる面々の中には、それさえ浮かべずに嫌悪を滲ませた人物もチラホラと見える。

 

では件の人物。そんな告白らしきものを吹っ掛けられたアイズ・ヴァレンシュタインその人の反応はと言えば。

 

 

「……。」

 

 

無言である。だが、無表情ではなかった。いや、彼女と付き合いが薄い者達からすれば、ソレは普段とさほど変わらぬ無表情(クールビューティー)に映るだろう。

だが違う、違うのだ。その表情は明らかに違った。周囲の視線が不機嫌から一転して、驚きと興味の色に染まる。特に言い出しっぺのベートの反応が大きい。その様子は言い淀んでいる?困っている?それとも、悩んでる?

 

 

いや、それはそのどれでもあるだろうが。ほんのり頬に朱の差した様子は、どちらかといえば。

 

 

———どこか「恥ずかしがっている」ように、皆の眼には映った。

 

 

「ア、アイズたん?なんやねんその反応?」

 

 

「ア、アイズさん!?そんな、まさかですよね!?ベートさんはナシですよね!?」

 

 

「ア、アイズ!こた、答え!答え聞かせてくれ!」

 

 

その反応にそれぞれが困惑や恐怖、そして思わぬ展開にまさかといった期待と言った感情をこめて続きを促し、口には出さない他のファミリア面子(メンバー)も興味深そうに先を待つ態勢に入った。

がらりと変わった空気。こうなると祭り好きの多い冒険者達もまた好奇の視線と共に乗っかってくる。更に遠巻きに有名人(アイズたち)を見ていた酒の回った外野(ギャラリー)も合わさり、店内の空気は瞬く間に、盛大にヒートアップしていった。

 

 

熱気にあてられますます恥ずかしそうに口ごもっていたアイズだったが…やがて意を決したように、飲み物を一息に飲み干した(注意。酒ではない)。

タン!と、音を立ててテーブルにたたきつけられた容器の音と共に、訪れた静寂の一瞬。熱気はそのままに静まり返った面々を前にして、アイズはより一層頬をに紅潮させながら、やや据わった眼で…「ソレ」を告げた。

 

 

 

 

「もう好きな人、いますから。ジャガ丸くんをおいしく作れる素敵な人、いますから。だから…その、どっちも間に合ってます…から!」

 

 

 

それだけ言い放ち、あとは答える気がないとばかりに、アイズは料理を猛然と食らい始めた。

今度こそ訪れる本気の沈黙。理解と不理解の双方に凍り付く刹那。誰もが驚き、或いは呆然として眼を見張るなか、ようやく言葉の意味が、血と共に全員の脳へ巡った瞬間。

 

時は、動き出した。

 

 

 

『な、なな、なにィィィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』

 

 

 

その日。ちょっぴりお高い憩いの酒場「豊穣の女主人」は、内側から響いた、迷宮都市(オラリオ)の端までも届きそうな絶叫の複合合唱に、本気で壊れそうなほど激しく震えたという。

あと約三名ほど(神一柱含む)、その場で失神したそうな。完全な蛇足である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…尚、その前に誰にも気づかれずに逃げ出していた白兎君(ベル・クラネル)がその発言を聞けなかったのは果たして幸か、はたまた不幸なのか。

それは誰にも分らなかった。

 

 

**************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がジャガ丸くん移動販売店「小泰山」を経営するようになった理由(きっかけ)は、恐らくかなり情けない理由に部類されるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

 

 

 

「大変に言いづらいことだが、君には武才がないな。」

 

 

そんな身も蓋もない評価を我らがファミリアの団長から喰らったのは、部位鍛錬を散々にさせられ、苦しみ抜いていざ鍛錬を…といった矢先でのことだった。

光の死んだ眼差しと共に、どこか愉し気に叩きつけられた言葉は、まだ幼かった俺を硬直させるに十分な威力を秘めていた。だがこの巨躯の団長様はこちらの硬直に気遣うこともなく(というかそんなデリカシーを持ち合わせていたとしても使う気は恐らくなく)、容赦なく酷評を続けた。

 

 

「基礎も基礎とはいえ、厳しい部位鍛錬にはよくぞ耐え抜いた。内気功の才もまずまずといった所だ。善い眼と頭もある、そこは素直に褒めておくとしよう。忍耐面に関しては及第点だ。

…が、肝心の戦う才覚に大きく欠けている。うん、度胸?いいや、そういったものではない。要は闘争心に欠けているということだ。」

 

 

少なくとも単身ダンジョンに潜れるものではない。色々言われたが、総評するとこういった結論だった。

正直泣きそうだった。というか泣いたかもしれない。当たり前だ、この時の俺は八歳かそこらといった年頃である。冒険者になりたくて小人族(パルゥム)という肉体的には決して恵まれてるとは言えない身体に鞭打って鍛えた全てが「無駄だった」で片づけられれば泣きたくもなる。

故に食い下がった。荷物にはなりたくないと、どうにかして迷宮に潜りたいと。諦めたくはない、まだ何も成し得てはいない…しかし幾らそう叫んだ所で、団長は微笑みながら首を振るばかりだった。

 

 

「団長として承服しかねるな。ハッキリ言って、君では潜ったところで死ぬだけだろう。第一成し遂げたいというならば君にはあまりにも多くが足りていない。武才、行動力、共に潜る仲間達。

知っての通り私は既に怪我と衰えを理由に前線を退いた身だ、残念ながら付き添えん。君の双子の姉もハッキリ言って武才には乏しい。生き残る才は十分だが、地下に潜る、先に進むということを前提とすれば…これでは君とセットでも無駄も無駄だ。因みに姉の方には後で伝えるつもりだ。」

 

 

膝を折りそうだった。折らなかった自分を今なら褒められる、念入りに站樁やっててよかった。あと親愛なる我が姉君にも同じ挫折と絶望を追って味わわせると面と向かって言いやがった。泣きそうだ、膝だけ笑ってる。

今の俺では迷宮に潜れない———それはつまり、俺は今後冒険者として迷宮に潜れないという、純然たる事実を表していた。なにせ俺の所属する「アンリマユ・ファミリア」には団員が四人しかいないのだ。元・Level6の冒険者である団長に、事あるごとに歪んだ教育を施そうとして団長にしばかれる東方出身の出張カウンセラー、そして気が付いたらこのファミリアに拾われていたという俺と、双子の姉だ。

つまるところ、経済的な余裕がないのだ。ついでに言えば働かない我らが主神・アンリマユは神々からの評判もすこぶる悪く、人脈がないし人望もない。収入面は団長が勤めている小さな料理店からの収入だけである(因みにカウンセラーは無償だ。曰く、完全なる趣味での「人助け」だという)。俺達が何とかしなくては、そう思って姉と誓いを立てたのはそう古い記憶ではない。

これからの自分達の成長も考えれば、今はもう働きだす手前だ。つまりピークである。

 

 

「君の気持ちはよくわかるとも。お荷物になりたくないという気概は大変に見事だ、教育してきた身としては実に喜ばしい。そして小人族の子供、それも我らが「アンリマユ・ファミリア」所属の子供を好き好んで雇うような奇特な店はそうそう見つからんだろう。だからこその冒険者という選択だった、だからこそ私も敬意を表し、君たちを鍛えてきた。

だが…残念ながら、私としてもむざむざ若い芽を摘ませたくはないのでね。」

 

 

その言葉に、俺はなにも言えなかった。純粋に感じ入っていたのもあるが、本格的に道が閉ざされてしまったからだ。

諦めるつもりはない。俺の、俺達の居場所はここだ。ここだけだ。守りたいと思う。だから考えなくてはいけない…そう思い悩み、俯いていると。肩に大きな手が置かれたのだ。

 

 

「だが喜べ少年。君の願いは問題なく叶う。」

 

 

その言葉に思わず顔を上げた。優しく微笑む団長の顔に、思わず光を見た気がした。

団長はゆっくりと頷き、こちらを見据える。口元が弧を描いたまま、白い歯を覗かせて開く。

 

 

「もう長いこと私が勤めている料理屋「泰山」の店主がもう歳でな。さしあたって、近い将来に店を引き継ぐこととなった。そこで私としては後任の教育と顔を広めるために、店とは別に移動式の屋台を設けたいと思っている。販売メニューは味の宣伝も含めてこれから考えるつもりだが…よければ君たちにはそちらを請け負ってもらいたい。」

 

 

…なんという手回しだ。抜かりないその手腕、その示された光明を前にして俺は素直にそう思い、感謝と尊敬の眼差しで見つめ、力強く頷いた。

正直先程まで団長を外道と思いかけた自分を殴ってやりたい気持ちでいっぱいになる俺の即決に、団長も嬉しそうに笑いながら、力強く頷いた。

 

 

「では午後から姉にも事情を伝えた後に、料理の鍛錬に入るとしよう。何、今まで散々持ち帰った店の賄やら売れ残りで既に味の仕込みも済んでいる。あれだけの部位鍛錬をこなした今のお前達ならば私のしごき(・・・)にもついてこれるだろう。

 

否、———ついてきて貰わねば困る。思う存分に苦しみ…自らを磨き上げたまえ。」

 

 

 

 

そう告げた後に、踵を返した団長の後ろ姿は。普段となんら変わらないのに…いつも以上に大きく、立派で、輝いて見えた。

 

 

 

**************

 

 

 

 

…これが俺の、俺達の始まり。俺達の理由。俺達の店「小泰山」のスタートラインだった。挫折から始まった。何も持たず、才能に敗けて、境遇にもがいて、やっぱり助けられて始まった道だった。

 

他人から見れば情けない道かもしれない。…それでも諦めたくないと歩き、やっと繋がった道である。だからこの道を歩んだことに後悔はなく、この道を歩めたことに感謝し続けている。

 

だからこそ巡り合えた「運命」もあったのだ…だからこの道を、俺達はきっと歩き続けるんだろう。そんな思いを胸に抱き、今日も俺達はジャガ丸くんを揚げ続け、人々から笑顔を貰うのだ。

 

 

戦えない俺達に代わり、戦ってくれる誰かのために。

 

 

 

今日も感謝と、最高の「笑顔(おいしい)」を届けよう———。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ン……?アレ…?

 

 

 

なんか変だぞ…?いや、というか…。

 

 

 

…これもしかして、俺達は最初からこのために鍛錬積まされてたのでは…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みに主人公とアイズは二歳ほど歳が違う設定。主人公のが年上です(外見おねショタ好き)。



続くといいなあ(浮かばない場合の逃走準備だけは済ませながら)

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