アイズ「違います。好きになった人がたまたまショタだったんです」   作:鉤森

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お待たせしましたコッソリ投稿。バレてないカナ…?


フレイヤ様で美しい恋を書きたいと言いました。でも失恋で美しいとか特にフレイヤ様だと無理でした。
まだ書けておらず、今回は別の話を。微糖でリハビリです。また少しずつ書いていきたい次第です。



またどうかよろしくお願いいたします。


見惚れよ(悪神のやらかした爪痕への皮肉)

「———いい加減にしろこのバカ共が!さっさと扉から離れて、ついでにレフィーヤは握り込んだ武器から手を離せ!」

 

 

「だ、だって!あの麻婆男がアイズさんと、アイズさんの私室で二人きりなんて!もしもの事があったら大変じゃないですかぁ!?」

 

 

「確かに他のファミリアの団員と考えると少々問題はあるが、恋仲なら問題はあるまい。そも、今回は事情があっての「保護(・・)」、いわば特例処置なのじゃろう?団長(フィン)も許可しとる…それどころか、あやつからも皆に頼み込んだワケだしのう。」

 

 

「それにアイズさん相手だと、なんとなく心配してるようなことにはならなそうな…。」

 

 

「な…なな、なんで皆さんそんなに肯定的なんですか!?こうしてる間にも———ハッ!!べ、ベートさん!!ベートさんは何処に!?」

 

 

「ああ、ベートなら…ここに縛り上げて転がっているのがそうだが?」

 

 

「ベートさぁぁあん!?」

 

 

「まったく…感情任せに、それも他所のファミリアの非戦闘員に襲い掛かるバカがいるか。いい機会だ、少しはその茹だりきった頭を冷やせ。」

 

 

「ががぁッ!!ごご…ががあッ!!」

 

 

「うわー…何言ってるかわからないのに、しっかり言いたいことだけは伝わってくるよ。というかスゴイ凶相(カオ)してる。子供見たら泣きそうだねー。」

 

 

「フン。アイズがどのタイミングで想いを告げたかは知らんが、少なくともアイズはお前のように燻ぶらせることはしなかった。そこまでこじらせたのは踏み出せなかったお前の「甘さ」こそが最大の原因だ。」

 

 

「ごッ!?」

 

 

「お前がどれほど納得していなかろうが二人は既に恋仲だ。アイズが自分で選んだ相手である以上、万が一ケガでもさせれば今度こそアイズは敵に回るぞ。」

 

 

 

「ぐ、ごごごごッ…!!」

 

 

 

「…だいたいベート。お前は先日の食堂で、そしてその前にはあの酒場でもアイズの口から直接「ベートさんはゴメンです」と言われていたろうが。」

 

 

「ご、ぶ———コフッ…。」

 

 

「ベートさんが死んだ!?」

 

 

「日課の域になってたね。」

 

 

「しかしこの様子だとロキが朝から外出していて不在だったのはせめてもの救いかのう…む?というか、もう一人保護した姉とやらはどうしたんじゃ?中におるのか?」

 

 

「ああ…あっちはあっちでティオネに捕捉されていたが、すぐにフィンが間に入った。さっき覗いてみたが…今はどういう訳だか、料理対決をすることになっていたな。」

 

 

「フィンは審査員になっちゃってたねえ。でも料理って…ティオネ、もしかして昨日なんかあったのかな?。」

 

 

「ええ…いくらなんでも本職相手じゃ自殺行為(むぼう)じゃないっすか…?」

 

 

「ベートよろしく暴れられるよりは遥かにマシだ。丁度いい、昼食(ランチ)には少し遅くなってしまったが、折角だから我々もご相伴に預かるとしよう。無論レフィーヤも来い。拒否は許さん。」

 

 

「あ、そういえばお昼…でもあの姉弟の料理(おみせ)すっごくおいしいって聞いたよ!楽しみだね、その内弟君のも食べてみたいねー!」

 

 

「い、嫌です!いくらリヴェリア様のお言葉でも、私はここを———ヒィ!?……う、うぅぅううう…わか、わかりましたぁ……。」

 

 

「…うむ。わかってくれて何よりだ。ホラ、他の連中もさっさと行くぞ。」

 

 

「おー!!」

 

 

「うぅうう…あ、アイズさぁぁあああん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やっぱ美人っておっかないっすね。」

 

 

「リヴェリアは特にそうだのう。しかしまあ、今日ばかりは飛び帰ってきたアイズの方が恐ろしく見えたわい。」

 

 

「…ですねえ。あんなアイズさん、初めて見たっス。…部屋の中で今、どんな風になってるんですかね…?」

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

 

 

時間は少し、その日の朝まで遡る。

 

早朝、「アンリマユ・ファミリア」の拠点(ホーム)のリビングスペース。思えばそこが全ての始まりだった。

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

「————…………。」

 

 

「……、………。」

 

 

その光景を目にした時、姉弟、キシナミ・白野と白夜の動き(じかん)は、確かに一瞬止まったという。

急激に喉が、瞳が乾いていくような錯覚を味わいながら二人の視線が向かう先。そこには三人の…一柱と二人の同胞(かぞく)が揃って座っていた。爽やかな朝だというのに心が死んでいくような光景が広がっていた。

 

 

酔い潰れて床に転がる主神なる悪神・アンリマユ(笑顔)。

朝の早い時間だというのに地獄のように赤い麻婆豆腐を汗だくで食いまくる団長・綺礼(笑顔)。

ツヤツヤしてるのにまだゴチソウ待ちみたいな顔してる出張カウンセラー・キアラ(笑顔)。

 

 

認識した直後、気が付けば思わず二人揃って両手で顔を覆っていた。そんなことをした(目を塞いだ)ところで「ソレ」が直視しなくてはいけない現実である事は変わらないし、これから二人は朝の貴重な時間を迅速に動き、仕込みを済ませて出店しなくてはならない。だが今は、この瞬間だけは衝動のままにそうせざる得ない現実でもあったのだ。多くの神々でさえ耐えられないようなその光景を前に、直接叫ばなかっただけ、まだ二人は耐えられた方だと言える。

そう。二人の心中は、今この瞬間に完全に一致(シンクロ)していたのだ。せめて声ならぬ叫びを、深々とした溜息として吐露する。

 

 

『(もうダメだ。なんかやらかしやがった)。』

 

 

それはもう「嫌な予感」などという生易しいものではない。「確信」だ。避けられぬ困難(メンドクサイこと)がこれから我が身に降りかかる。そしてそれを乗り越えなければならないという、そんな「確信」が二人には理解できた。

 

———故に(・・)。通じ合った心のままに二人は、重なり合う溜息と同じくその視線を交わし、覚悟を固めて頷き合った。

 

 

「朝は、歩きながら食べよう。神サマ(アンリマユ)は二日酔い確定だろうし、仕込みの合間でお粥かスープでも作っていこう。」

 

 

「ならそれは俺がやるよ。一応しっかり食べてはいるだろうから辛口のスープで…代わりに朝ご飯をよろしく。」

 

 

「任された。じゃあ取り掛かろうか弟———ついてこれるか?」

 

 

「———上等だ!!」

 

 

短く言葉を交わし、確信した困難を前に二人の一日は始まりを迎えた。朝の貴重な時間をこれ以上逃すことは出来ない、今日も変わらない…今まで以上の「笑顔(おいしい)」を届ける。その想いを胸に、気付けばその小さな身体は動き出していた。

どの道避けることは出来ない困難だ。だがそれは、つまるところ今までと何も変わらない(・・・・・・・・・・・)。ならばこの二人が今更変わる道理もないのだ。進むべき道を決めた(えらんだ)あの日から、折れることも諦めることもしない(・・・)とこの二人は決めたのだから。

 

いや、そんな決意などなくても。「待ってくれている人達がいる」というだけで、この二人が前に進む理由には十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お二方とも!もし!いや是非よろしければ改宗(コンバート)に興味はございません!?っつかもう辛抱ならねー!」

 

 

「何をたわけた事を…!前々から狙っていたのが自分だけだと思うな!是非とも我がファミリアに!」

 

 

「いやいやこんな料理上手はウチのファミリアにこそだ!ついでに『剣姫』も一緒に!」

 

 

「どうやってフレイヤ様を堕としたんだぁ!?」

 

 

「キアラさまは?いないの?」

 

 

「いいえ、私と結婚してください。二人同時でも構いません(むしろウェルカム)。」

 

 

 

———決意を固めて、屋台と共に拠点(ホーム)を後にし数分後。二人は道中の路地の壁際にて詰め寄られて…いやむしろ、追い詰められていた。固めた決意が早速崩れかけていた。

最早壁というよりは城塞の域に達しそうなほどの興味とか好意とかの視線と圧を前にして、二人は動けないでいた。急すぎる上に理解不能な展開に、珍しく震えさえ走らない程度には恐怖していた。

 

 

 

「…ナニコレ。」

 

「うん…なんだろねコレ。」

 

 

 

経験上、この姉弟二人にとって「追い詰められる」という状況自体はそう縁遠いものではない。最近こそ殆どなくなったとはいえ、「小泰山(ザビーズ)」としてここまでの信頼を獲得するまでの最初期(あんこくじだい)、あくまで二人は悪名高き「アンリマユ・ファミリア」の団員という肩書のみだったために、数多の悪意と敵意を向けられてきた。また子供だったとはいえ素性のしれない新参店舗(しょうばいがたき)として突如進出してきた二人は他の商業系ファミリアからのウケも良いとは言えず、評判が上がった今でさえも余計なトラブルを極力避けるため、出店場所は人気の薄い入り組んだ路地中でと決めているほどだった。

 

だからこそ敵意だの悪意だの警戒だのに対する耐性はあったのだが———不慣れかつ意味不明な現状では、ソレが逆効果(マイナス)に働いていた。冒険者ではない二人は逃げることも敵わず、あれよあれよと追い詰められて、現在に至っている。

 

 

「今ほど冒険者でいたいと思った日はない…!というか最前列正面!あの狐耳のアレ常連さんじゃないかな!?」

 

 

「完全に理性が焼き切れた眼をしてらっしゃる…!!常連の中でも一番の良識枠だと思っていたのに…!?」

 

 

「というかどうする弟!もう後がないんだけど!!そろそろ向こうも雪崩れ込んできそうな感じなんだけれども!!」

 

 

「…くれ…。」

 

 

「———え?」

 

 

お互いでかばい合うように手を繋ぎ、身を寄せ合いながらの切羽詰まった白夜(あね)の声に白野は俯いたまま、何かを呟く。聞き取れずに見返し、そしてすぐに察して耳を塞いだ白夜の目の前で白野は構わず大きく天を仰ぎ、その小さな体に見合わぬ大きな声を張り上げた。

 

どうするか?その問いに、白野は咄嗟に思考してしまった己に対して苦笑いが浮かんだ。何も考えるまでもない。できることは一つだけだ。()ばなくてはいけない、(おのれ)がキシナミ・白野であるのなら。その名は決まっている(・・・・・・・・・・)

 

 

最も信頼し、自らを守護すると誓った愛しき少女(えいゆう)の名を。

 

 

「来てくれ!アイズーッ!!」

 

 

ビリビリと空気が震える。喧騒と熱気に包まれていた集団の声が一瞬にして静まり返り、天にまで届きそうなその叫びの僅かな残響が余韻として残っている。

そして。魂の底から籠ったようなその叫びに、呼びかけに。応えぬ「(かれ)の英雄」ではない。

 

 

 

「———二人に、ナニをしてるの?」

 

 

 

一陣の風が、間を置かずに凛々しくも鋭く吹き抜ける。路地の石畳にさながら解き放たれた銀の剣が突き立つようにして、金色の『剣姫』が舞い降りた。

 

 

否、ソレは『剣姫』というよりも———

 

 

 

 

 

「私の白野に、ナニしてるの?」

 

 

 

 

 

 

———『剣鬼』といった方が相応しかったかもしれない。

 

 

 

 

 

**************

 

 

そしてアイズが無事に二人を「保護」し、現在。その先行きを危ぶまれつつも見守られていた自室の中で、二人はというと。

 

 

 

 

「アイズ…その…。」

 

 

「ダメ。まだ、離さない。…絶対に誰にも渡さない。白野も疲れてるし、このまま少し一緒に寝た方がいい。」

 

 

「俺は、アイズの元を離れない(いなくならない)よ。」

 

 

「…うん。白野の事は信じてる。きっとこれからも待っててくれるし、ちゃんと私を呼んでくれた。でもダメ。まだきっと狙ってるヤツがうろついてるから、当分はこの部屋にいた方がいい。こうして抱き締めてないと安心できない。私は白野にも抱き締めて貰えるし、一石二鳥。」

 

 

「…いや、でももうお昼も過ぎちゃうよ?」

 

 

「夜、たくさん食べればいいよ?勿論、一緒に食べる。この際だから、そのまま皆に見せつける。」

 

 

「見せ…!?いや、え!?ソレつまり、このままの体勢で日常生活を…!?」

 

 

「? そうだよ?」

 

 

 

 

割といつも通り、いつも以上に。色々と甘えまくっていた。

 

 

 

**************

 

 

 

 

「……チクショオォォォオオオオーッッ!!いえ、もう一戦よ!次こそは勝つ!勝って見せるわ…!」

 

 

「流石に本業だから負ける気はしませんし、助けてもらったので作るのは構わないですけど…えと、食べきれます?皆さん。」

 

 

「メッチャおいしいから問題なし!まだまだイケるよー!」

 

 

「甘いものまで作れるとは…特にこの、春巻きだったか。濃厚で甘いカスタードに、酸味の強い二種類のイチゴが一緒に入っていてイイな。後口がサッパリして、この異国風のウーロンなる茶とも相性がいい…。」

 

 

「こっちの酢豚というのも良いのう!衣がフライとは違うのか?キメ細かでしっかりと硬いから、甘酢に浸されても触感が死んでおらん!バリっと砕けた後に口中に旨味が溢れて酒も進むわい!!」

 

 

「た、確かにおいしい…あの、もしかしてマ…弟…さん、も、同じくらいの腕前で…?」

 

 

「マ?ああ、うん。基本的に同等の腕前ですよ、プロですし。」

 

 

「う、ううぅぅぅぅうううううううううううーッ!!おいしい、でも認めたくないぃ……!!」

 

 

「…どうしたのかな…。あ、ディムナさんもお口に合いましたか?少し香辛料の抑えたマイルド版はそっちの皿にありますけど。」

 

 

「いや、すごく美味しいよ。そして不謹慎だが、こうして君の料理を存分に頬張れて僕は幸せだ。」

 

 

「…そうですか。うん、よかった。勝負の勝ち負け以上に、その言葉が嬉しいです。それにこちらこそ、姉弟纏めて置いて頂いてありがとうございます。後で弟にも…。」

 

 

「ははっ、気にしなくていいよ。本当に美味しくてそう…僕は、毎日君の手料理を食べたいくらいだ。」

 

 

「…ぅ、え?」

 

 

『……………、………え。』

 

 

 

 

 

「ガハァッ!!」

 

 

 

『ティオネも死んだぁー!!?』

 

 

 

 

 

 

 




屋台は団長が回収しています。

カウンセラーは付属で赴いております。
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