その日、マグルの少女は運命の出逢いをした。
慣れない旅で思いの外疲弊していた彼女は、一番近くにあったコンパートメントの扉を開けた。
中には既に誰かが居るようで、彼女からしたら逆光で見辛かった。
光が弱まりその姿が露になった。
其処は今まで彼女がであったことの無い存在がいた。
カラスのような艶やかで絹を思わせるような黒髪。
白磁器のような芸術性を思わせるアジア人特有の黄色を帯びた肌。
うっすらと見える唇は薄紅色で図鑑で見た“サクラ”の花弁のよう。
外の景色を憂鬱そうに眺める様は絵画のようであった。
「・・・あぁ、気付かなくてゴメンね。何か用事かな?」
窓に写る自分の姿に気が付いたのか、アジア人特有の妖しい色香を放つ存在からは以外に思えたが、そのハスキーボイスは不思議と彼女の脳に溶け込んでいった。
「あ、あの他のコンパートメントが空いていなくて、もし良かったらご一緒させていただいても宜しいでしょうか?」
普段の彼女からは想像できない、慌てた様子だった。
そんな彼女を微笑ましそうに先客は見ていた。
「えぇ、貴女が不快でなければ是非一緒に座りましょう」
そう言うと、自分が座る対面の席を手で案内してくれる。
「ありがとう御座います、私“ハーマイオニー・グレンジャー”と言います」
何に緊張しているか解らないが、少女“ハーマイオニー・グレンジャー”は慌てて自己紹介をした。
「これはご丁寧に、僕は“ユウリ・クオンジ”。日本からの留学生です」
そう自己紹介をしてくれた目の前の存在にハーマイオニーは心を奪われていくのを自覚した。
「それじゃ、ユウは3年生なのね。あとリョクチャって以外と美味しいのね」
自己紹介を終え、互いの当たり障り無い話に移った際に年齢の話になった。
ハーマイオニーは背格好が似たユウリを同い年だと思っていた。
しかし、ハーマイオニーの知る11歳の男子特有の煩さがなく、物静かでそれでいて話していて楽しいユウリを気に入っていた。
また、短時間で互いを「ユウ」、「ハミィ」と呼び会うまでに仲良くなっていた。
今はユウリが鞄から取り出した日本茶セットと「キ○トカ○ト」や「○の里」等のお菓子で旅を楽しんでいた。
「そうだよ、お茶に関しては煎れ方の問題だね。西洋圏の尚且つ北欧を起源とする魔法界の実地研修で留学してきたんだ」
ハーマイオニーにとってユウリの話はとても面白く、特に現代魔法界の実情の話ではアジア、アラブ圏の魔法界は現代を学び、使える技術は非魔法使いが造り出したものでも活用していくようにしているらしい。
「ハミィなら解ると思うけどフクロウで手紙のやり取りするよりも携帯電話で連絡した方が早くない?」
そう言うとポケットから携帯電話を取り出して鞄に入れる。
つい最近まで普通の現代っ子だったハーマイオニーからすると当たり前過ぎて考えもつかなかった。
「そうね、便利なものは何であれ取り入れていけば良いのに」
「言い方が悪いだろけど、こっちの魔法使いたちは良くも悪くも“プライド”は人一倍高いからね」
ユウリはそう言うと可笑しそうに然りとて苦笑ともとれる笑みを浮かべた。
「「あぁ~、“姫”ここにいたんだ」」
そんな空間に突如として現れた異物。
赤毛の双子が異口同音でユウリを指さしていた。
「やぁ、“ウィズリーズ”。前にも言ったけど列車ではお静かに、ね」
そう言うと人足指を唇に当て「シー」のポーズをするユウリはどこかいたずらっ子のような印象を見せた。
ハーマイオニーにとってユウリはまるでお近づきの印にもらった万華鏡のような存在に映っていた。
同級生と思わしき少年たちと話をするユウリにどこか疎外感を感じ始めていたハーマイオニー。
そんな時だった。
「フレディ、ジョン。こちらはハーマイオニー・グレンジャー女史、新入生だけど当時の君たちも裸足で逃げ出すほど勤勉で良い子だよ」
ユウリはそう言うと隣に座っていたハーマイオニーを紹介してしまった。
「ハミィ、この二人はフレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリー。寮は違うけど僕に良くしてくれる悪友だよ」
「「よろしくね~」」
異口同音でタイミングを合わせたかのように挨拶をしてくる上級生二人。
「ちなみに見比べてカッコいいのがフレディで、見比べて理知的なのがジョンだよ」
「「酷いな~”姫”は」」
そんな様子にたまらず吹き出してしまったハーマイオニーだったが、3人の上級生は温かく見守ってくれた。
ホグワーツが近づき、制服に着替えることになった。ハーマイオニーとユウリが一緒に着替えることになったが、ユウリは用事があると消えてしまい戻ってきたときには既に着替え終えていた。
ローブをすっぽりとかぶり制服姿が見えないことに残念がるハーマイオニーだったが、ユウリに頭を撫でられ制服姿を褒められる様子は誰が見てもご満悦であった。
「あ、あのぉ、ここに僕の”トレバー”は来ませんでしたか」
全員が着替え終え、ユウリのお土産に舌鼓を打っていた時だった。
見慣れない少年がコンパートメントの扉を叩いたのは。
「まずは名乗りなさい、常識であるのと同時に最も敵を作りにくいやり方だよ少年。君が新入生なら特にだ」
ユウリに諭された少年は顔を赤らめると下をうつ向いてしまった。
ユウリ以外の三人はその理由に思い至ったのか、気の毒そうに少年を見ている。
「ぼ、僕はネビル・ロングボトムです。ペットのヒキガエルのトレバーが逃げ出しちゃって探しているんです」
もし、本当に書いてやってもいいよって人がいたら私まで連絡をお願いします。