駄文短編集   作:完全怠惰宣言

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ヒロアカ系オルフェノク増ジロちゃんといちゃつきたいだけー①

“聖灰事件”

かつて、“個性”が“異能”と呼ばれていた時代から存在する未解決事件であった。

それは、ある日突然のことだった。

警察が“異能”を使い自身の欲望を満たす犯罪者をとある袋小路に追い詰めた時だった。

追い詰められた犯人は、自身の異能を使用し警察を牽制していた。

そんな中、犯人は突如異能を使うのを止め空を見上げた次の瞬間、犯人は突如“蒼白い焔”に包まれ灰となってしまった。

後には犯人が着ていた衣服だけが残されていた。

この事件を皮切りに、“異能”を使用し悪事を働く者が“蒼白い焔”に焼かれ灰となる事件が続発した。

一時期は「愚かな人類に神が下す罰」という考えから過激な“異能排除主義”を掲げた「灰神教」なる宗教が持て囃されたが、その教祖が演説中に突如苦しみながら灰化したことで、「“異能”による無差別テロ」という見解がなされ、警察の賢明な捜査も虚しくある日突然この現象はピタリと止んだのだった。

それから、数十年の年月が立ち、人の記憶からも忘れられかけた時のことだった。

 

青年が一人、ビルの屋上で月を眺めていた。

月明かりに照らされるその姿はスポットライトを浴びる舞台役者のようであった。

 

『♪~♪~、♪~♪~、♪~♪~』

 

青年の傍らに置かれていたスマートフォンが鳴ったのは月が雲に隠れたのとほぼ同時だった。

電話に出て一言二言話した青年はスマートフォンを着ているワイシャツの胸ポケットにいれると深く深呼吸した。

徐々に雲が晴れ、再び月が顔を出した時、青年のいた場所には全身が灰色に染まり、隼を想わせる外見の異形が立っていた。

その異形が左手を振るうと身の丈もある大弓が姿を表した。

そのまま、右手で矢を番える動作を起こすと光の矢が現れた。

そして、その矢を躊躇することなくビルの奥に出来た暗闇へと放ったのだった。

異形はそのまま、何事もなかったかのようにその背に翼が現れると夜空へと飛び立っていくのだった。

 

-矢が放たれる数分前―

 

ビルの暗がり、そこには複数の男女が瀕死の状態で大量の血溜まり中にいた。

 

「は、我を虚仮にする記事を書こうとするからだ」

 

その男女を見下すように、見ているのは現代において最も人気の高い職業、“個性”を善き事のために使うヒーローと呼ばれる存在であった。彼等は“個性”を悪き事に使う存在“(ヴィラン)”と戦い、人々を守の安全を守る存在であった。

しかし、この男は自分の人気のために罪もない一般人をヴィランに仕立て上げ、無抵抗な者達を次々に意識不明の重体にすることで発言をさせないようにしたり、ヴィランもどきと結託して災害を起こし敢えて被害が出た瞬間に現れ活躍するといったことを行ってきた。

そんな男なのだから、自身に繋がる証拠は残さずにきたはずだが、とある事件で捕まったチンピラが現在、血溜まりにいる彼等の出版社に情報を流したことで、今迄やってきたことが露呈しかけたのだった。

そのため、口封じに彼等を痛め付けたのだった。

 

「さて、此処までやれば当分意識は戻るまい。このUSBは壊させてもらうよ」

 

そう言うと男は自分の悪事が記録されたUSBメモリを空中に投げる。

次の瞬間、男は何かに貫かれる感覚を覚えた。

目線を下げると、自分と記者たちの間に光の矢が突き刺さり、数秒と経たずに消えていったのであった。

しかし、異変はそれだけではなかった。

男は自分の胸を押さえていた左手を徐に眺めるとその左腕が突如として“蒼白い焔”を上げて燃え始めたのだった。

焔は瞬く間に男を包み込むと、後には男の着ていたヒーローコスチュームとそこに付着する“灰”だけが取り残されていた。

 

数日後

 

〈ピーーンポーーン〉

 

独り暮らしには贅沢な3LDKのマンションに響くチャイムの音。

この家の主人たる青年は未だベッドの上で布団の中、夢の中にいた。

 

〈ピーーーンポーーーン〉

 

先程よりも長めに押されたチャイムにより意識が覚醒しかけたが、再び目を瞑ると布団の中に逃げ込んだ。

 

〈ピーーーンポーーーン、ピーーーンポーーーン〉

 

二回鳴らされたチャイムも意に介さず布団にくるまるとスヤスヤと寝息をたて始めたのだった。

一向に家主が現れないことに業を煮やしたドアの前にいる少女は顔に怒りの色を現すと手に持った鍵で乱暴にドアを開ける。

靴を脱ぎ捨てると勝手知ったる他人の家と言わんばかりに、家主の部屋に真っ直ぐ突き進んでいった。

 

「い・い・か・げ・んに」

 

その勢いのまま開けっぱなしにされていた寝室のドアから綺麗に飛び上がると

 

「起きろ!!」

 

その勢いのまま家主の眠るベッドに飛び込んだ。

だが、少女もまた甘かった。

勢いの乗った跳躍の力をそのまま、少女を捕まえると家主の青年は少女を自分の寝ていたベッドに受け流す。

そして、イイ笑顔を浮かべると覆い被さるように彼女と視線を合わせるのだった。

青年の部下である表裏ともに真面目な青年がこの光景を目撃したらまず間違いなくとてつもない良い笑顔で通報するだろう。

家主の青年は既に目覚めている頭を悟らせないように、起こしに来た少女の首もとに顔を埋める。

そして、その綺麗な首筋に唇を落とすのであった。

 

数分後、妙に色気を放つ少女と妙にスッキリした青年がリビングのソファーで寛いでいた。

 

「今日は日曜日だよ。もう少し寝かせてくれても良かったんじゃないの“響香”ちゃん」

 

自分の煎れた日本茶を片手に起こしに来た少女「耳郎響香」に声をかける家主。

 

「日曜だから、一緒に居たかったの」

 

そんな家主の太股の間に体を小さくさせながら、家主の煎れてくれた甘めのカフェモカをチビチビと飲みながら、家主に体を預ける響香。

父の仕事の関係で知り合ったこの青年と響香の付き合いは響香の両親の応援もあって順調に進んでいた。

二人の関係を知る青年の仕事仲間には

 

「“まだ”、一線“は”越えてないから大丈夫」

 

と言っているそうだが誰にも信じられていない。

日曜日ということもあり、朝から情報番組が一週間のニュースを二人で眺めている。

響香にとって、青年と過ごすこの何気ない時間が大好きであった。

 

「あ」

 

そんな時、画面に今週の重大ニュースが映し出されていた。

 

『さて、数十年振りに「聖灰事件」が起きたわけですが、皆さんはどうお考えでしょうか』

 

MCのお笑い芸人がコメンテーターに話を振る姿が映し出される。

二人は無言でその光景を見ていた。

 

「響香ちゃんもヒーロー科に入っちゃった訳だけど、こういう事件を捜査するようなヒーローになるのかな」

 

壊れ物を扱うように腕の中に響香を包み込む青年。

その青年の行為に、身を任せながらカフェモカを溢さないようにカップをテーブルに置く響香。

そして、空いた手を青年の腕に絡める。

 

「ウチはまだ、どういうヒーローになりたいか解らないけど、ウチは羽流人さんが自慢できるヒーローになりたい」

 

蕩けた顔を青年「隼月(はやつき)羽流人(はると)」に向ける響香。

羽流人はそんな響香を愛おしそうに抱きしめるのだった。

 

羽流人と響香が互いを堪能した(くどいが本当に一線は越えていない)日曜日が終わり月曜日となった。

羽流人は自分の店で仕事の準備をしていた。

そんな時、店のドアが開いたのを報せるベルが鳴り響いた。

 

「まだ準備中ですよ」

 

顔も上げずに来訪者に告げる羽流人。

 

「そう言わないでくれ、久しぶりに君の煎れた茶が飲みたくて来たのだから」

 

羽流人が顔を上げると、そこには3人の人物が立っていた。

 

同時刻ー警視庁ー

 

「「聖灰事件」、未解決のこの事件が再び動き出すとは」

 

そこには、骸骨のように痩せこけた男性と、熊のようなネズミのような摩訶不思議な生物とともにとある一室にいた。

 

「我々としても頭が痛いことだ。今回のターゲットが悪徳プロヒーローだったこともあってか世間からのバッシングが止まないのだよ」

 

対面に座るヒーロー協会役員の男性、その隣に座る公安部に籍を置く女性は机に置かれた各メディアの資料に目を向ける。

そこには、今回の事件の被害者であったヒーローの悪事とそれに荷担し隠蔽をしてきた協会関係者と警察関係者への止めどないバッシングが書かれていた。

 

「それで、態々僕らを呼んだのは、何か収穫があったからじゃないのかい」

 

熊のようなネズミのような存在、“根津”は持参した紅茶を飲むと対面の二人に情報を出すよう促した。

 

「事件の前後、近隣の監視カメラと重症だった記者の隠しカメラに映った映像を調べた結果、狙撃位置が解りました」

 

そう言うと机に一枚の写真が置かれた。

 

「この写真はとあるビルの屋上に設置された監視カメラが捉えた映像を切り取ったモノだ。“こいつ”が意図的にしろ偶然にしろその姿を捉えられたのは前進と考えたい」

 

同時刻

カウンター席に座る3人の人物。

 

「朝っぱらから有名人3人がこんなとこにいても良いんですか」

 

羽流人は自身の前に座り各々注文した飲み物を楽しむ3人に目を向けた。

 

「花形さん」

 

世界シェア上位。

電子機器メーカー「スマート・ブレイン」社長。

 

「はっはは、会社は有能な部下たちに任せたあるから大丈夫だよ」

 

花形(はながた)流星(ながれ)

 

「ベッキーさん」

 

ヒーローのみならず世間一般でも知られる開発機関。

“個性”サポートアイテム研究開発機構「BoarD」主任。

 

「私も皆が優秀ですから息抜きデ~ス」

 

ベッキー・シールド。

 

「本郷さん」

 

今世紀最良と言われる警察官。

警察庁刑事企画課“個性”犯罪情報分析室室長。

 

「なに、老兵の私がいなくとも今回の件では上手く回せているさ」

 

本郷(ほんごう) (たける)

 

世界的にも有名人な3人が雰囲気は良さげな小綺麗な喫茶店に顔を出すのは偶然といえばそれ迄であった。

しかし、その店の店主と親しげに話しているとなると、そこに別の何かが生じてくる。

 

「先週の件、あちら側に情報を与えて良かったのですか?」

 

本日休業の看板が出された店内。

その中の棚を手順よく弄るとその奥に地下に通じる階段が現れた。

階段を降りている最中、似非訛りを無くし饒舌に話すベッキーは最前列を歩く羽流人に声をかけた。

 

「もともと、その予定だったですし、本郷さんが精査してくれた情報ですから、僕が露見することはないでしょう」

「件のヒーローについては前々から我々がマークしていたが、彼の社会貢献度から表沙汰に出来なくてね」

「それに、この世は“個性”社会だ。我々の存在に結びつけれるとはとても思えないしね」

 

暗がりの中進む4人。

すると、目の前にカメラが備わった扉が姿を表した。

そして、4人に変化が起きた。

4人の瞳が灰色に染まると顔に異形の姿が重なって映し出された。

その後、4人の姿は異形へと変わっていった。

 

同時刻ー警視庁内ー

 

机の上に置かれた写真、そこには一体の異形が写っていた。

 

「“異形型”の個性持ちですか?」

 

骸骨のように痩せこけた男性が写真に写る灰色の異形を見た感想を述べる。

 

「“オールマイト”、我々もそのように判断しました。しかし、だとすると一つ問題がある」

 

公安部の女性警官がパソコンを操作すると、壁にプロジェクターで何らかのリストのようなモノが映し出された。

 

「既に“個性”届けが出されている全員を調べたが、該当する“個性”は居なかった」

「ということは」

「我々が感知出来ない、届け出が出されていない者。あるいは嘘の届け出を出した者が犯人であると思われる」

 

その内容を聴きながら根津は一人かつて自分が囚われていた実験施設で見た一体の異形を思い出していた。

 

「もしかしたら」

 

根津のその声は部屋に静かに響いた。

 

「もしかしたら、僕は彼の正体を知っているかもしれないのさ」

 

 

カメラの起動音と共にマシンボイスが鳴り響いた。

 

『“ゴートオルフェノク”様、認証イタシマシタ』

 

流星の立っていた場所には左右の側頭部に立派な巻き角を持つ山羊の特徴を持った異形が。

 

『“ラフレシアオルフェノク”様、認証イタシマシタ』

 

ベッキーの立っていた場所には花のようなドレスを身に纏う女性のような異形が。

 

『“ホッパーオルフェノク”様、認証イタシマシタ』

 

尊の立っていた場所には首に巻かれたマフラーのようなモノがひときは目を引くバッタの特徴を持った異形が。

 

 

「僕がまだあの忌々しい研究所に囚われていた時、灰色の異形に変身できる人間が一緒にいたのさ」

 

なにかに怯えるようにガタガタと震えながら話を進める根津の姿は普段の自身に満ちた根津からはかけ離れていた。

 

「研究が進むにつれ、その人間には“個性因子”が存在していないことが解ったのさ」

 

根津のその言葉に思わず立ち上がってしまう3人。

 

「僕が研究所から脱出して、かつての仲間たちと研究所の場所にいった時には、研究所は廃墟となっていたのさ」

「せ、先生」

 

思わず恩師の肩に触れ、安心させようとするオールマイトだっが、根津の震えは止むことはなかった。

 

「僕は直感的に、この惨劇を引き起こした犯人がその人間だと確信したのさ」

「そして、廃墟の中に残された数少ないレポートの切れ端から、研究所でその人間がどう呼ばれていたか知ったのさ」

「その人間につけられた検体名は“オルフェノク”」

「僕らと違う“進化”を遂げた新人類だと書かれていたのさ」

 

 

『“ファルコンオルフェノク”様、認証イタシマシタ』

 

羽流人が立っていた場所には、警視庁でオールマイト達が見ている写真に写っている隼を思わせる弓兵のような、狩人のような印象を与える異形が立っていた。

 

『オカエリナサイマセ、星ノ子供タチ』

 

4体の異形は扉が開くとそのまま中へと進んでいった。

そこはまるで楽園のような幾億もの花が咲き、和な光に照らされた場所だった。先に進むと其処には空中に浮かぶハンモックチェアがあった。

花吹雪がおこり、周囲の景色が包まれた後には人の姿に戻った4人が立っていた。

 

「さて、今後のことを話し合おうか」

 

花形の言葉を合図に4人は思い思いの椅子に座る。

この話しは、とある少年が最高のヒーローになるまでの物語ではない。

ある世界に存在した異形達の物語である。

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