駄文短編集   作:完全怠惰宣言

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ヒロアカ系オルフェノク増ジロちゃんといちゃつきたいだけー②

耳郎響香は“ヒーロー”に憧れた。

それは、偶然であった。

しかし、彼女はその出会いは必然であったと信じている。

切欠は彼女がまだ小学生の頃だった。

その日、大好きな父がコンサートから帰ってくると知っていた彼女は普段は通らない工事現場を近道として走っていた。

秋も深まり、風が肌を刺すように冷たく感じるその日、それは起きてしまった。

鉄骨が剥き出しの作業現場では半グレ集団が互いの縄張り争いで“個性”を使用した喧嘩をしていた。

その中で手から熔岩を噴き出す“個性”の少年と触れたモノを錆び付かせる“個性”の少年が一進一退の喧嘩を繰り広げていた。

そんな二人の“個性”であれば鉄骨等簡単に壊してしまう。

そして、そんな時にこそ事故は起きてしまうのだ。

響香が知らず知らずのウチに通り過ぎようとした真上。

丁度その時、二人の個性が歪なバランスを保っていた鉄骨に当たり数本の鉄骨が落ちていった。

そして、何かが落ちてくる音に気づき響香が見上げた時、そこには響香を押し潰そうと意思を持ったように鉄骨が落ちてくる景色が広がっていた。

目をつむり、頭を抱えるようにしゃがみこんだ響香は幼いながら自分が死ぬことを理解していた。

目をつむり続ける彼女を突然秋風の冷たさが頬に当たる感覚で薄く目を開いた。

驚いたことに響香は空を飛んでいた。

そして、誰かに抱えられている感覚を覚えた響香はうっすらと目を開ける。

そこには灰色の鳥のような顔をした“ヒーロー”がいてくれた。

あまりのことに頭が追い付いていない響香を気絶していると判断したその灰色のヒーローは人気の無い神社に降り立つと響香を優しく寝かせ、数歩離れ辺りを見回す。

頭が追い付いてきた響香は両親の教えを守りお礼を言おうと頭を起こした。

すると、目の前のヒーローは姿を変え一人の青年となっていた。

互いに目があってしまい青年は気まずそうに視線をずらそうとしていた。

だからだろうか、響香は気が付いたら声になっていた。

 

「たすてくれて、ありがとう」

 

その言葉に呆気にとられた青年は、少ししたら笑顔になった。

響香は初めて異性が笑う姿を綺麗と感じた瞬間であり、“ヒーロー”に憧れた瞬間であり、羽流人に一目惚れした瞬間であった。

そんな出会いから数年、両親が“彼ら”の“支援者”であり、羽流人の後見人を務めていたこともあり二人の関係は着実に進んでいった。

その証に響香の赤らんだ首筋に見える鎖に通された指輪は、羽流人が高校入学祝にプレゼントしてくれたモノであり、周りからも婚約指輪扱いされた。

ヒーロースーツに身を包んだ時、アクセントのように胸元で輝く指輪。

それは、響香にとって常に羽流人が傍に居てくれるような安心感を与えてくれた。

 

「耳郎ちゃんはどういうタイプが好きなの?」

 

クラスにも馴染んだある日、女子だけで昼食を取っていると何故か恋愛の話しになっていた。

既に婚約者(羽流人)が居る響香は同年代の恋愛観を聴きながら、羽流人が作ってくれたお弁当を食べていた。

そんな中、クラスでもムードメーカーで「見ての通り、見えない透明人間」がフレーズに成りつつある「葉隠 透」に話をフラれてしまった。

無自覚に惚気たい願望が強い響香は待ってましたとばかりに外には漏らさないように、鞄に入れておいた音楽雑誌を取り出し、とある特集ページを見せ、堂々と指差したのだった。

 

「ウチは“この人”かな、弦楽器奏者の“隼月羽流人”」

「うゎー、イケメンやー」

「男性の方ですわよね、とてもお綺麗ですわ」

「ケロ、この人見たことあるわ」

「あ、あたし知ってる✕✕駅の近くにある喫茶店のオーナーさんだ」

「葉隠も知ってるんだ、あそこのケーキ美味しいよね」

 

自分の旦那(予定)が褒められている姿は誇らしくあり、それと同時に響香には変な優越感が生まれた。

 

<どうだ、ウチの羽流人は格好いいだろう>

<優しいけどちゃんと叱ってくれるし>

<ご飯も美味しいし>

<ウチをちゃんと女の子扱いしてくれるし>

<でも、絶対に渡さないからな>

 

お昼をしっかり胃に納めながら、乙女達の会話は午後のヒーロー学に移っていった。

 

隼月羽流人は奏者であるが、実業家でもある。

かなりの金額を貯蓄する彼は趣味で始めた喫茶店経営が軌道に乗ってしまい、仕方なく店を部下に任せて自分は名ばかりオーナーとなっていた。

そんなある日、花形の使いとして一人の男性が現れた。

 

「雄英襲撃、派手なこと考えるね」

「私としては、どうでも良いことです。しかし、狙われているのが耳郎さんの娘さんならあなたに報告しておいた方が面倒になら無いと社長からも言われましてね」

「それで、態々来てくださったんですか村上さん」

 

村上(むらかみ)梗司(きょうじ)

スマートブレインにおいて30代で専務職を任される男であり、花形の命令系統においてNo.2の位置にいるオルフェノクでもある。

 

「オレに釘を刺しに気たわけじゃなさそうですね」

「寧ろ、一緒に行っていただきたいのですがね。今回は此方の四葉に出向いていただく程ではありませんが」

「戦力が欲しい、と言うことですか」

「というより、その場からの離脱力ですかね。私としては空を飛べるあなたは勿論、彼らにも来ていただけると助かるのですが」

「つまり、オレは公衆の面前で響香をお姫様だっこして、見えないようにキス跡残して、照れてる響香を存分に堪能すれば良いんですね」

「あなた、人の話し聴いてました?」

「・・・・、冗談ですよ」

 

梗司にとって羽流人の派閥、特に羽流人本人は理解しかねる存在だった。

穏健派が多い上位オルフェノクの中において、羽流人の派閥は特に融和的な思考を持つ者達が占め、梗司が言うところの「上の上」に位置するオルフェノクが多く籍を置く派閥であった。

一方で力に溺れ、その力を我欲を満たすために使う“異能者”やオルフェノクを躊躇すること無く殺すその姿は各派閥から恐れられていた。

「温和でありながら冷酷」、そんな羽流人達を梗司は心のどこかで恐れている。

 

「で、いつ行くんですか“先輩”」

 

それでも無下にしないのは、この人懐っこい後輩を自分が気に入ってしまっているからだろうと無理矢理結論付ける。

一拍置くために出された紅茶を飲み干すと時計を確認し梗司は口を開いた。

 

「今すぐ、です」

 

数秒後、慌てて店を出る4人の男性の姿が目撃されるのだった。

 

 

“嘘の災害や事故ルーム(通称:USJ)”本来であれば、今ここではヒーローの卵達が災害救助の基礎を学んでいる筈だった。

しかし、今ここは戦場のような殺意に満たされていた。

突如現れた“ヴィラン()”と呼ばれる存在達による強襲を受けた。

その上、空間移動系の“個性”持ちにより生徒は散り散りに飛ばされ中央広場ではプロヒーロー2名が重症を負って動けずにいた。

散り散りに成ったヒーローの卵達は各々が最適の判断で行動し、彼等にはひどい怪我を負った者は居なかった。

更に、“敵連合”を名乗る集団が奥の手に出してきた巨体の怪人も遅れながら馳せ参じたオールマイト(No.1ヒーロー)により撃退され、このまま引き下がるであろう空気が流れたそんな時だった。

 

「くそ、このままじゃ終われないんだよ」

 

敵の首領と思われる全身に手をつけた“死柄木(しがらき)(とむら)”と呼ばれている人物が大声で叫びながら憎しみが籠った目でオールマイトを見つめる。

 

「あと一歩でアイツを殺せるんだ」

「死柄木弔、此処は退くべきです。退いて体制を整えるべきです」

 

全身が靄で覆われた“黒霧(くろぎり)”と呼ばれていた参謀格の存在の言葉に耳を向けようのせず、手を伸ばそうとする弔。

 

「だったら、ボーナスステージといこうじゃないか」

 

全身を恐怖が襲う。

その声が聞こえただけでヒーローの卵達は心が折れた。

その声はとても純粋にとても強烈に黒く悪意に染まっていた。

突如として目の前に2体先ほどの怪人と同じような姿をした怪人が現れた。

しかし、大きな違いがあった。

片方は先程の怪人に比べ細身であった。

しかし、右腕は蟹のような形状をしており、その巨大なハサミは注視しなくとも鋭さを認識できた。

一方で左腕は人のての形状をしているが、明らかに甲殻類の殻のようなものに覆われており、その巨大さは先程の怪人の3倍は有りそうであった。

もう片方は先程の怪人と同程度の大きさであった。

しかし、右腕は巨大な突撃槍のような形状をしており、左腕には円形盾のようなモノがついていた。

さらに、背中から生えている二本の腕はガトリングガンのような形状をしていた。 

 

「さぁ、僕に君の絶望を魅せてくれオールマイト」

 

その邪悪を煮詰めたような声が響くと2体の怪人は動けない生徒と重症を負ったイレイザーヘッドへと恐ろしい勢いで突進していった。

活動限界にきてしまいまともに動けないオールマイトは手を伸ばすことすら出来ず、絶望の最後を見届ける筈だった。

 

一方、山岳エリアと出入り口にもオールマイトが吹き飛ばしたのと同型の怪人が現れていた。

出入り口に現れた怪人は姿形こそ同じだが全身から雷を放出しながら徐々に生徒達に近づいていった。

重症の13号が自身を盾にして生徒を守る姿を嘲笑うかのような笑みを浮かべながら。

そして、山岳エリアでは

 

「ケケケケケ、女、女ダ。ガキ臭イケド久方ブリノ女ダ」

 

ついさっきまで、ショートしていた上鳴電気を羽交い締めにして勝ち誇っていたヴィランの頭を握り潰し、八百万百と響香を凝視すると狂ったように笑いだし、自分の欲望の捌け口を見つけたような情欲にまみれた目で百と響香を見つめた。

 

「アァ、簡単ニ壊レルナヨ、徹底的ニ楽シンデヤルカラナ」

 

ショートした電気を興味なさげに崖近くまで放り投げ手から出したトリモチのようなもので固定すると、涎を滴しながら、獲物と定めた少女二人の身体を舐め回すように見つめてきた。

思わず二人の身体に悪寒が走る。

そして、それは一瞬の隙になってしまった。

怪人は両手から電気に放ったトリモチのような何かを二人に向けて放ち動きを封鎖するとその背中からエ○ゲーでお馴染みの触手を無数に生やし恐怖を煽るようにゆっくりと生け贄(少女)へと歩み始めた。

 

4体の怪人が突如何かを警戒するように止まったのと、大きな破砕音で土煙が舞ったのは偶然にも同じ時だった。

オールマイトがその眼に写したのは生徒の前に盾のように立ち塞がる全身に鋭利なナイフを思い起こさせる突起を持った狼の要素を持った灰色の異形とイレイザーヘッドの前に立つ頑強な全身鎧に身を包んだ西洋騎士を思わせる馬の要素を持った灰色の異形だった。

そして、13号の前には白みがかった体躯、頭部の透けた場所から見えるバラの花束を思わせる器官を持つ異形。

そして、百と響香の前には弓兵を思わせる背中に2対の翼を持った隼を思わせる灰色の異形が腕を組んで涎を垂らす異形に殺気を放っていた。

 

中央広場で甲殻類の殻を鎧のように纏った怪人と相対している灰色の異形は徐に半身に構えその場でステップを踏み始めた。

それは、"個性"が現れる前、立ち技最強とうたわれたキックボクシングのような構えであった。

そして、灰色の異形が開いてた両手を思い切り握りしめると、その両腕に変化が現れた。

"ジャマダハル"を思わせる武器が現れ、先ほどに比べより攻撃的な印象を与えていた。

イレイザーヘッドの前に立ちふさがった西洋騎士のような異形も気が付くと両手剣と円形盾を持って眼前の怪人を見据えていた。

そして、勝負は一瞬だった。

殻に覆われた怪人と突撃鎗の手を持つ怪人が人知を超えた速度で突進してきた。

誰しもが一瞬、目をつぶってしまった次には灰色の二体の異形が互いの獲物を振りぬいた姿で立っていた。

そして、突進してきた怪人は突如青白い炎に包まれ燃え尽きた。

 

13号とその場に残った生徒達は自分達の目の前で起きている光景に目を疑っていた。

身体から雷を放出し続ける怪人の前に突如現れた白い異形、その白い異形が腕を振る度に薔薇の花弁が舞い、今となっては雷を放出し続ける怪人の姿は花弁で見えず、花弁の吹雪の中で吼える声しか確認できなかった。

突然、白い異形は腕を振るのを止め花弁の吹雪に手を向けるとその手を力一杯握り締めた。

すると、花弁は消え去り大地に青い薔薇の花が一輪突き刺さっている姿しかなかった。

雷を放出し続ける怪人は姿を消していた。

白い異形が青い薔薇を持ち上げると薔薇は青白い炎を上げ燃え上がり瞬く間に灰になったのだった。

 

山岳エリアでは静かに事が始まっていた。

灰色の異形が地上に降り立つと背中の翼は消え、鳥の脚を思わせた脚部はブーツのような形状に変わっていた。

そして、異形が“右手”に弓を顕現させる。

その弓を真横に振り切ると、弓が姿を変えた。

最上部に取り付けられた鳥の装飾が跳ね上がり、翼を広げる。

すると、その翼はみるみる大きくなり、巨大な鎌のような形状に姿を変えたのだ。

 

[安心しろ]

 

突如、その場で意識があった全員に“声”が響いた。

耳で拾った音でもなく、テレパシーのような頭に直接届けられた感覚とも違う、その声は直接“魂”に届けられたかのように、染み込んでいった。

その声が響くと灰色の異形は鎌を怪人へと向けた。

 

[あのケダモノを、君たちに近付けはしない]

 

そう宣言すると一歩、また一歩と緩やかに間合いを詰める灰色の異形。

 

[一つ、お前は意味もなく“命”を奪った]

 

回りを見渡せば幾人もの敵が頭を握り潰された姿で転がされていた。

 

[一つ、自分のためだけにその“異能(個性)”を行使し恐怖を垂れ流した]

 

灰色の異形の言葉に気を良くしたのか、怪人は顔に喜色を浮かべる。

 

[一つ、未来ある者を淀んだ欲望で汚そうとした]

 

間合いの一歩手前。

再び、左半身が前になるように身体を傾ける異形、そのまま左手を目線まで上げると、怪人を指差した。

 

[さあ、お前の罪を数えろ]

 

静かな、しかし確固たる怒りが籠ったその一言が合図となった。

 

両手からトリモチを発射、同時に先を尖らせた触手による波状攻撃。

怪人のとった手段は一般的には恐らく正解だったであろう。

 

[ちゃっちいな]

 

灰色の異形が鎌を振った、ただそれだけの筈だった。

その結果、怪人は上下に両断されそのまま青白い炎を上げ燃え上がった。

それだけではなかった、山岳エリア鎌の振るわれた軌道上に存在した数多の物が、まるでケーキを切るかのようになんの抵抗もなく切り裂かれたのだった。

 

クラス長の飯田天哉がプロヒーローである教員を連れてきた時には全てが終わった後だった。

敵連合を名乗る二人は消え、広場には生徒とオールマイトが座り込みイレイザーヘッド、13号が安静を保つように寝かされていた。

その上空には根津とオールマイトが写真で確認した異形が悠然と飛んでいた。

 

[危機管理がなっていないな]

 

その声に思わず身構えるヒーロー達。

 

「君の、君たち“オルフェノク”の目的はいったいなんなのさ」

 

気丈にも根津は眼前の異形へと語りかける。

それは、この場の長としての義務感か、はたまた“個性”に刺激された知的好奇心からか本人も解らなかった。

 

[はっ、よく知ってたな。いや、貴方なら知っていて当然か]

[我々の目的か。“人類抹殺”と言えば君らには都合がいいかな]

 

“人類抹殺”という言葉が出た瞬間、その場には言い知れないプレッシャーで覆われた。

 

[冗談だ、“今は”]

 

そういうと、灰色の異形、ファルコンオルフェノクは空へと飛び立っていった。

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