九蛇海賊団の本拠地である“男子”禁制国家アマゾン・リリーがある事で有名。
そんなアマゾン・リリーだが、“
アマゾン・リリーの君主は皇帝と呼ばれ、九蛇海賊団船長と兼任する形式をなしている。
国民は「九蛇」と呼ばれる女系戦闘部族のみであり、みな生まれながら戦士として育てられ、逞しく豪快でありながらどこか気品も漂わせている。
本来ならば偉大なる航路などで活躍する猛者達のみしか体得出来ない覇気を、島の守備を行う戦士全員が会得しているという驚異的な戦闘能力の高さを誇っており、九蛇海賊団のメンバーはこの戦士達の中から選抜されてる。
海賊国家で世界政府非加盟国だが、“凪の帯”が外敵から護ってくれているため外界からの侵略行為による被害はあまりない。
九蛇の海賊船は獰猛な毒海蛇「遊蛇」が船を引いているので海王類に襲われることがなく、彼女らは島への出入りが自由となっている。
そんな彼女たちだが、外海へ出た者が時折体に子を宿して帰ってくるが不思議な事に生まれて来る子はみな女である。
そう、みな“女”なのである。
長々と説明したが何が言いたいかというと。
「おん、おぎゃぁぁぁぁぁ(オレ、“男”なんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉ)」
「あらあら、どちたのお腹空いたの?」
ある日、バイクで走って走っていたオレは車道にばらまかれていた砂にタイヤを取られ盛大に転倒。
身体中が削れる感覚に襲われるとその後、何かにぶつかり意識を途絶えた。
恐らく、この時死んだのだろうと思われる。
そして現在、自分は未だかつて見たことのない美女の胸に必死に吸い付いていた。
そして、マイマザーを観察していたわかったことがある。
まず、オレの生活圏内に“男”が1人もいないことである。
これは、まあそう言う集落なんだな程度にしか考えていなかった。
次にマイマザーと常に一緒にいる謎の蛇。
現代日本では見ることのないコミカルな顔立ちをしているが、マイマザーの弓になったりオレの揺り籠の綱になったりと肉体強度が半端ない。
そして、オレのそういった生活は何故か家の中で完結していた。
この時期の赤ん坊は外に一緒に連れ出すモノだろうと思っていたのだが、未だかつて一度もマイマザーと外に出たことがない。
そして、常々マイマザーが口走る“立派な戦士”と言うワード。
最後に、こういう言い方は気にいらないが見たことある画風。
結論、ここってONE PIECEの女ヶ島じゃねえの?
だったらなんでオレ男なの?
そんなオレの苦悩は。
「よく飲むんだよ、そして立派な戦士になりな」
「あぶぅ(まいいか)」
マイマザーの母性の塊によって悉く討ち滅ぼされていった。
この時、もう少し考えを巡らせたらと思う反面、赤子に何も出来ないと言う諦めが時折頭をよぎるのだが。
更に数ヵ月後、何故かオレはグルグルの産着に包まれ籠、というか明らかに海に流す意図がある小舟に乗せられようとしていた。
「すまないアサガオ、だが我々から生まれた男児はそれ即ちこの女ヶ島に厄災をもたらす忌子。忌子は海神に委ねることが決まりなのだ」
マイマザーの後、マイマザーに矢を向ける集団の中でも一際小柄な老婆がマイマザーに語りかけている。
「解っております。むしろ、1年もこの子と共に過ごさせていただき感謝しております」
マイマザーはそう言うとオレを小舟に乗せた。
「アセビ、私の愛しい子。逆らえない母を許さなくて構わない。此島を滅ぼしても構わない。でも」
そう言うとマイマザーの瞳から大粒の涙がこぼれだす。
「母は、母だけはあなたの無事を祈っています」
そう言うとマイマザーはオレを乗せた小舟を海へと押し出した。
少しして産着の間から見えたのは自らの首を刀で切り裂くマイマザーの姿とそれを抱き止め急いで治療出来る者を呼ぶ小柄な老婆の姿だった。
「あぶぅ(あぁ、オレ死ぬのか)」
皮肉にも日の暖かさに微睡み赤子のオレは意識を失った。
「お頭、赤ん坊が流されてやしたぜ」
「キシシシシ、この大海賊時代にゃ別に珍しいことじゃねえだろう。てか、お前らどうせ拾ったんだろ、まだ生きてるのか?」
「呑気に眠りこけてやすぜ」
凪の帯を何故か抜けてしまったオレはその後の運命を決める男と出会うことになる。
「キシシシシ、こりゃ大物になるぜ」
呑気に笑う男、ゲッコー・モリアと出会ったのだった。
「アセビ、今日の朝飯はなんだ?」
「今日はチョウザメのソテーと釜焼きナン、スープはチョウザメの骨からとった出汁をきかせたスープ。それとカシラにはキャビアのマリネだよ」
「おぉ、朝から豪勢だな」
ゲッコー海賊団に拾われてから7年の月日が経った。
気が付くと海賊見習いとしてこき使われつつ、マトモな料理が出来る(ようになってしまった)のが自分しかいなかったことが関係してかコックの真似事をさせられている。
「皆が昨日、冷蔵庫のお肉食い尽くさなきゃ今朝はベーコンも出せたのに」
「なんだよアセビ、気にすることねぇぞ」
「そうそう、俺達に食われるような鍵かけたオメェが悪い訳じゃねえからよ」
「「ぎゃはははははははははははははははは」」
ゲッコー海賊団に拾われて海賊見習いになってアセビは海賊として順調に成長していた。
「キシシシシシシシ、今日の飯炊きはアセビか当たり日だな」
「「お頭!!」」
周囲に自身の陰から生み出したコウモリを従え、船長であるモリアが姿を現した。
「それじゃ、アセビ。いつものやれ」
「はいよ、船長!!」
そして、気が付くと放たれているナイフ。
部屋に掛かっていた的に当たったナイフ、そして的には何やら文字が書かれていた。
「キシシシシシシ、アセビもナイフの使い方が上手くなったな。お前ら今日は全員で船の掃除だ」
「マジかよ」
「アセビ頼むから島で遊ばせてくれ」
7年間モリア直々に鍛えられたアセビはどこでも買える既製品の投げナイフと2本のバタフライナイフを武器にしていた。
バタフライナイフに関しては頭身は業物の小太刀であるがそれを扱えるということで船員達からも戦力に数えられていた。
もっとも、未だに見習い扱いのためか船員やモリアから許されているのは投げナイフによる援護のみであったが。
そして、アセビを拾ったことでモリアにも恩恵はあった。
「キシシシシシ、しかし便利だな“覇気”はよ」
忌子であっても九蛇の血を引くアセビは物心つく頃には自然と覇気を纏えていた。
モリアは存在こそ知っていたが覇気を使いこなせておらず、どうするべきかと悩んでいた際に、さらりと自然に纏って海王類を撲殺しているアセビを見た。
そして、アセビは才能のある者に覇気の纏い方を教えモリアはアセビに戦闘方法を教えていた。
そんなゲッコー海賊団での生活はアセビにとっては楽しいことばかりであった。
その日、運命の岐路に立つまでは。
「・・・・・船長、死ぬのか」
アセビの目の前には瀕死のモリアが椅子に腰掛け愉快そうに笑いながら酒を飲んでいた。
ゲッコー海賊団は先程カイドウ率いる“百獣海賊団”と全面戦争を行い、モリアとアセビを除く全員が戦死した。
そして、モリアも自身の命が残り少ないことを予見したように眠っていたベッドから起き上がると船長室に拵えた豪華な椅子に腰掛けバーボンを瓶から直に飲んでいた。
「キシシシシシ、ゲホ。どうやらオレはココまでのようだ」
後方支援として覇気を纏った投げナイフしか行っていなかった為、ほぼ無傷のアセビに対してモリアは愉快そうに笑いながら頭を撫でていた。
「アセビ、デッカくなったな。お前を拾ってからこの7年間、退屈することなかったぜ」
「まるで遺言だな、どうせオレも直ぐに死ぬだろうけど」
「キシシシシシ、そう悲観することはねぇぞ」
そう言うとモリアは冷蔵庫からメロンを一玉取り出し皿にのせた。
「最後の晩餐っすか?」
「キシシシシ、まあ聞け。アセビ、オレはもう直ぐ死ぬ」
「この傷だ、テメエのことはテメエが1番解るってもんだ。そうしたら、このメロンが姿を変えるだろう」
「そしたら、姿が変わったメロンを思い切って食いやがれ」
頭に置かれていたモリアの手から徐々に力が抜けていくことをアセビは感じ取っていた。
「アセビ、最後の船長命令だ。自由に生きやがれ」
「・・・・はい、船長」
気が付くとアセビの目から涙が流れていた。
それに気が付くとモリアは笑いながらアセビの頭を再び撫で回した。
「お前と会って過ごした7年間、悪くなかったぜ馬鹿息子」
その言葉を最後に、モリアの全身から力が抜けていった。
そして、2人の間に置かれていたメロンが姿を変えて黒い不可思議な果実になった。
「はぁ、原作と違うじゃん。まぁ、死にたくないから食べるし」
アセビは悲しさを押し殺し、目の前の黒い不可思議な果実“カゲカゲの実”を食べた。
「(バクッ!!)うぇ、クッッッッッソ不味い」
そして、自らの影を確認した。
影はアセビの意志に従い姿を自在に変えた。
そして、影は盛り上がるとアセビの周囲を回り込み姿を変えた。
それは恰も黒蛇のようであった。
「ふう、それじゃ生き汚く生き抜きますか」
直後、百獣海賊団構成員100名が塵となって消えた。
それも、幹部といっても差し支えない強者がカイドウとキングの目の前で日の光を浴びて塵となったのだった。
そして、更に異変が起きた。
対峙していたゲッコー海賊団の船が突如勢いよく燃え始めたのであった。
「降参でーす、降参」
そこから現れたのは白旗を振りながら歩いてくるゲッコー海賊団の海賊見習いの少年。
しかし、先程とは何かが違うとカイドウの本能が告げていた。
その異変を感じ取ったのはカイドウだけではなかった。
キングもまた、その異変もとい少年の変異に気が付いていた。
その変異が何か最初に気が付きそして最初に犠牲になったのはキングよりは数段弱いが実力は確かな構成員だった。
「(ん、オレの影なんか長くね?)」
自身の影が異様に伸びて少年へと続いているのを見た数秒後。
ギラリと影が目を見開きまるで蛇が獲物を丸呑みするように自身の影を取り込んでしまった。
「こ、小僧何しやがった」
そう言って天幕から勢いよく出てしまった構成員。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
日の光に照らされた彼は瞬く間に塵となり消え去った。
「キシ、ごちそうさま」