Virtual Battle Simulation   作:シィロ

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お久しぶりです、シィロです。
月一更新と言いつつほぼ2か月が経とうとしていますが、どうにか4月以内に更新できてほっとしております。

さて、今回は少しどころかかなりオリジナルな要素を足してしまってます。
一つの挑戦と思って読んでいただけたら幸いです。

では、またあとがきで。


第2話 -ろぼさー事件/前編-

砂ばかりの荒野の、その地下。そこにはドーム状の空間があり、一人の機械仕掛けの少女と、彼女を慕うロボットたちが暮らしていた。

彼女の名前は「ロボ子さん」。ホロライブ所属の超高性能ロボットVTuber。ゲームや歌が好きでYoutubeで配信をして過ごしている。

彼女を慕うロボットたちの総称は「ろぼさー」。乾電池に手足を生やしたようなロボットで、基本的な容姿はみな同じだが、個体によって大きさが違ったりアクセサリーが付いていたりと、なかなか個性豊かだ。

そんな彼女らが暮らすこの空間には、二つの建物がある。

一つは彼女らの居住区、通称「ホーム」。二階建てぐらいの高さのシンプルな箱型の建物で、ロボ子さんの部屋やろぼさーたちの充電室等、多数の部屋がある。

特にろぼさーは、ロボ子さんの活動によってどんどん数を増やし、今では9万6千体を超えてしまっている。そのため、この建物は常に建て増し工事が行われているのだ。

そしてもう一つの建物は、何を隠そうこのろぼさーを生み出している工場、通称「ろぼさー工場」だ。

ホームから少し離れた位置に建っているこの建物は、ろぼさーが増えるときだけ稼働する半自動運転になっている。ロボ子さん自身、ろぼさー工場に用があることもなく、生み出されたろぼさーは「もう用はない」と言わんばかりにすぐにホームに向かうので、この工場は意外と知らない事が多い。

 

そんな人気のない夜のろぼさー工場のメインシステム室に、影が二つ。

一つはここで作られているろぼさー。通常のろぼさーと違い、イナヅマ型のアンテナは黒く染まり、瞳は怪しく赤く輝いている。

胴体部分は開き、内部からコードが伸びてメインシステムコンピュータに繋がっている。モニターには「データ転送中:5%」と表示され、ろぼさーの顔を青白く照らしている。

もう一つは、二つの瞳が付いた黒い影としか形容できない。ろぼさーの周りを渦を巻くように漂い、より一層不気味さを増している。

その双眸は怪しく歪み、モニターを凝視し続けていた。

二人の密会は誰に知られることもなく、夜は深まっていく。

 

***

 

「それじゃあ、今日はここまでにしまーす。おつろぼ~」

 

カメラ搭載ドローンに向かって笑顔で手を振り、ロボ子さんは配信を終了させる。

配信を見届けたろぼさーたちは、ロボ子さんに労いのコメントを送ったり、ホームに帰り始めたりしている。

『Virtual Battle Simulation』を初めて起動させたあの日から早二週間。あの後も定期的にVBSを起動させてはシャドーを倒し、少しずつ慣れてきていた。

しかし何度やっても同じ敵しか出ないため、ロボ子さんは飽き始めていた。現にVBSを起動する回数は日を経るごとにどんどん減っていった。

だからなのだろう。ロボ子さんは数日前に行われた大型アップデートに気付いていなかった。もちろん、VBSが勝手に起動するなんて思ってもいなかっただろう。

突如、けたたましい電子音が鳴り響き、ロボ子さんの目の前にいつものホログラムウィンドウが出現する。

 

「ぴぃ!?」

『緊急イベントが発生しました。緊急イベントが発生しました』

 

ゲームを開けば語り掛けてくるいつものアナウンス音声が語りかけ、ロボ子さんの視界内にVBS中に出現する小型ウィンドウが浮かび上がる。

同時に、視界の端から攻撃予想を表す赤色がじわじわと広がり始める。

 

「もう!いったいなんなのさー!!」

 

ハンドガンを抜きながら、発生源を特定するために振り返る。そこにはいつもVBS内で倒している敵、シャドーはいなかった。

そこには、急に驚いたロボ子さんが気になりこちらの様子を伺うろぼさーたち。

その中の一体、最も近くにいる黒いアンテナに赤い瞳のろぼさーが青白い電撃を漏らしていた。

 

「え?」

 

次の瞬間、黒赤のろぼさーがひときわ輝き、ドーム状に電撃が放たれる。

 

「○#&×¥$#$%&’!!?!?!?」

 

電撃に巻き込まれ驚いたロボ子さんの、形容しがたい悲鳴が地下空間に木霊する。ゲージは一気に4分の1程減らされた。

他のろぼさーが巻き込まれることが無かったのは不幸中の幸いだろう。電撃を放ったろぼさーは電池が切れたようにその場に倒れ込んだ。

 

「うぅ…ちょっとビリビリする…」

 

手足のしびれる感覚に顔をしかめながら立ち上がり、電撃を放った黒赤ろぼさーを注視する。そこである違和感に気づいた。

 

「あれ?君、見たことない子だね?」

 

ロボ子さんはゆっくりと近づきながら黒赤ろぼさーを隅々まで観察する。

 

「うん。やっぱり君、最近来たばかりの子だね。でもナンバー無しなんておかしいなぁ…」

 

ろぼさーは大きさや見た目など個体ごとに違うが、それでも似たろぼさーは存在する。

そんなろぼさーたちを見分けるために、ろぼさー工場では作られた順にナンバーが付けられている。つまり最近生み出されたろぼさーには96000番台のナンバーが体のどこかに必ずついている。

 

「ん~?やっぱりないなぁ…」

 

つついても起き上がらず危害が無いことを確認すると、ろぼさーを抱え上げぐるぐると見回してみるが、やはりナンバーは無い。

一旦ろぼさーを地面に置き考え込んでいると、視界の端に!マークが浮かびウィンドウが開く。

 

「P・S、ハッキング…?こんなのあったっけ?」

 

ロボ子さんのP・S、つまり個性スキルは『高性能』と『ロボット』の二種類だけ。少なくとも数日前にVBSを起動したときにはこんなスキルは無かった。

不思議に思ったロボ子さんはゲーム内から見れるアップデート内容を確認する。

そこには数日前にゲーム全体のアップデートが行われたこととその内容が書かれていた。詳細は記載されていなかったが、大量の新スキルの追加と敵、そして緊急イベントについての説明が記されていた。

 

「さっきのイベントってこれの事かぁ!」

 

読み進めていくと、緊急イベントの詳細が書かれていた。

曰く、ユーザーに合った内容のストーリーモードが自動で作成され、ランダムなタイミングでイベントが発生するようになったらしい。

 

「なんてはた迷惑な…」

 

つまりこの黒赤ろぼさーは、ゲームが用意したエネミーということだ。

 

「あれ?てことはこの子、ゲーム閉じたら消えるの?」

 

試しにその場でゲームをスリープ状態にすると視界内のウィンドウは閉じ、いつもの視界に戻るが、それでも黒赤ろぼさーはそこに横たわったままだった。

つまりこのろぼさーは、ナンバーは無いがきちんと実体を持った、正真正銘本物のろぼさーだ。

ゲームならまだしも実態を持った相手を、それも自分自身を応援してくれるファンが敵になるなんて悪趣味すぎる。少なからず怒りを覚えたロボ子さんはムッとして再びVBSを起動させる。

 

『VBS、起動します』

「これはどういうこと?」

 

ウィンドウが開き、起動後のアナウンスが止むや否や、怒りをはらんだ声色でロボ子さんは問う。

 

「ろぼさーのみんなを巻き込むなんて聞いてないんだけど!」

『本システムはユーザーに合ったストーリーを構築し、提供しております。不具合が発生した場合は下記フォームにお問い合わせください』

「不具合どころじゃないんだけど!?」

 

それ以上アナウンスが答えることは無く、視界には問い合わせフォームに繋がるURLが表示されているが、ロボ子さんはため息をつきながらウィンドウを閉じる。

 

「どうしてこんなことになったの…?」

 

ロボ子さんは未だ倒れている黒赤ろぼさーに視線を移す。すると、先ほどにも表示されていた!マークが再び現れ、「P・S ハッキング」と表示されたウィンドウが開く。

問い合わせフォームと同じように閉じようとしたが、ふとロボ子さんの手が止まる。先ほどは表示されていなかったスキルの詳細が書かれていたのだ。

 

「なになに…?『ハッキングすることで情報が得られることがあります』?」

 

つまりゲームの流れとしては、この黒赤ろぼさーから情報を引き出して、この事件を解決させる運びとなっているのだろう。

他にも同じようなろぼさーがいるかもしれないし、この後生まれてくるろぼさーも同様にゲームに侵されているかもしれない。

それは絶対許せない。そう思ったロボ子さんは両手で黒赤ろぼさーに触れ、意識を集中させる。

 

「P・S、ハッキング!」

 

スキルを宣言すると同時に、ロボ子さんの意識は黒赤ろぼさーの中にダイブした。

 

***

 

ふと瞼を開くと、そこは真っ黒な空間だった。ロボ子さんの身体は地に足を付けることもなく、ふわふわと空間を漂っていた。

 

「ここは…あの子の中?」

 

暗い空間に一瞬光がほとばしる。思わず目を覆ったロボ子さんが次に見たのは、二つの扉だった。

 

「ろぼさー…ネットワーク?こっちはメモリー?」

 

ロボ子さんが呟いた通り、一つは「ろぼさーネットワーク」と書かれた看板が掛けられており、もう片方は「メモリー」と書かれた、同じような看板が掛けられていた。

ロボ子さんは扉に近寄り、ゆっくりと「ろぼさーネットワーク」の扉を開く。

そこには膨大な言葉や映像が右から左からと忙しなく流れて行っていた。

 

「なに…ここ!?」

 

流れてくる情報の波を必死に目で追い続けるとだんだんその全貌が明らかになってくる。

ここには、ろぼさーたちの交流の記録やロボ子さんのことを書いた言葉の全てがあった。

そのあまりの膨大な量と、彼らの思いを目の当たりにし、思わずロボ子さんの頬が緩んでしまう。

 

「みんな、ボクの事好きなんだなぁ」

 

緩み切ってしまった顔のまま、しばらくその膨大な情報を眺めていたロボ子さんだが、ハッとすると、両手で軽く頬を叩く。

 

「いけないいけない。目的を見失うところだったよ」

 

ロボ子さんは名残惜しそうにしつつも、扉をくぐってろぼさーネットワークから退室した。

 

「さて、と」

 

今度は「メモリー」と書かれた扉を開き、中の様子を伺う。

こちらは対照的に、ほとんど何もなかった。ろぼさーネットワークと同様右や左から情報が流れてくるが、その量は圧倒的に少ない。余裕で全てを見渡すことが出来た。

ホームにやってきた映像、他のろぼさーを見た時の映像、交わした言葉、ロボ子さんを初めて見た時の映像、ろぼさー工場で目を覚ました時の映像。

 

「…!まって!」

 

ロボ子さんの声に答えるように映像がそこで止まる。このろぼさーが工場で目を覚まし、最初に見た光景が映し出されていた。

そこには同じように赤黒のろぼさーがいた。だがこのろぼさーと違い、黒い霧のような物を身に纏っていて如何にも禍々しい。

 

「この子も見たことないぞ…?」

 

映像を凝視すると他にも黒と赤のろぼさーがいたが、やはり見覚えのないろぼさーたちばかりだった。

ろぼさーネットワークに繋ぎなおし同じようなろぼさーを探すが、やはりいない。この影を纏ったろぼさーも周りにいる黒赤ろぼさーも、ホームには来ずにろぼさー工場にいるのだ。

 

***

 

再び瞼を開くと、いつもの荒野にホーム、そして周りには心配そうに様子を見ていたろぼさーたちがいた。

 

「よし、待っててね」

 

優しい表情で黒赤ろぼさーの頭を撫で、周りにいた他のろぼさーに託す。

みんな心優しいからきっと介抱してくれるだろう。具体的には放電できないぐらいに再充電してくれるはず。

数体のろぼさーに担がれ運ばれていくのを見届けると、ポケットからスマートフォンを取り出し、登録していた番号にかける。

 

「もしもしパパ?うん、久しぶり。ちょっと診てほしい子がいるんだけど。うん、今ろぼさー達が運んでるから。お願いね~」

 

通話を切ってポケットにしまい、ホームからすこし離れた建物に視線を投げる。

その建物はろぼさー工場。日々ろぼさーを生み出し続け、今まで特に気にすることの無かった、未だ謎の多い建造物。そこに手がかりがあるのは間違いない。

ロボ子さんは工場に向かって歩きだし、なにやらウィンドウを操作する。

ロボ子さんの身体が光に包まれ、一瞬陽炎のように揺らいだ。かと思えば、ガラスを砕いたような音と共に光が散り、そこには先ほどとは違うロボ子さんの姿があった。

 

ポニーテールは短く切りそろえられたショートカットになり、頭上には人の耳とは別にネコ科の耳が付いていた。

黒縁眼鏡は無くなり、代わりに青いLEDが煌めくメカチックな眼帯が右目を覆っている。

首元には暗いピンク色のチェック柄のマフラーが巻かれていた。

服はいつもの迷彩服はそのままに、その下に黒い戦闘用ボディスーツを身に纏っている。

いつもはむき出しの太ももも、今は光沢のある白と黒の鋼に包まれていた。

 

覆われて真っ暗な右目の視界に、ろぼさー工場内の地図が映し出される。

所々円型のノイズが表示されており詳細は見えないが、一定の速度で同じ場所を動いているということはジャミングをしている何かがいるのだろう。

やはり戦闘は避けられないかもしれない。そう悟ったロボ子さんは左目を細めると、短くなった髪とマフラーの先を揺らし駆け出すのだった。




ろぼさー事件前編、いかがだったでしょうか?
今回は文字数も多く、また私の執筆が間に合わない事から、前後編(の予定)となっております。

少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです。

また、今後から後書き内にマシュマロを置くことにしました。
感想批判提案などなど送っていただけるとモチベに繋がりますので、もし「送ってもいいかな」と思ったら遠慮なく投げてください。
全て受け止めます。

次の更新は5月以内を予定しております。
ひょっとしたら2回更新するかも…お楽しみに。

ツイッター:https://twitter.com/Shi_loh4646
マシュマロ:https://marshmallow-qa.com/shi_loh4646
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