この素晴らしい世界で運命を矯正する   作:翠晶 秋

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この後始末と下準備に猫の手を!

 

「ね、寝過ごしたァ!」

 

朝の光に目が覚めて、一気に意識が覚醒する。

マジかー……。

除霊の時のめぐみんトイレイベント、目撃することはできなかったかー……。

日はまだ昇りきっていない。

良かった、まだ朝と呼べる時間帯だ。

 

「まずはご飯、と」

 

キャビネットの上に設置した鏡で寝癖を直す。

うん、ちゃんと女顔だね夢じゃなかったねチクショウ。

 

「いたっ!」

 

部屋の扉を開けると、ゴンという鈍い音と共に頭を押さえためぐみんが視界に入った。

 

「す、すみません!大丈夫ですか!?」

「だ、大丈夫です。おはようございますヨータ、丁度いいところに。今、アクアの除霊した霊の取り憑いていた人形を集めているので、手伝ってください」

 

辺りを見渡せばなるほど、西洋人形がごろごろと転がっている。

 

「わかりました」

「……あと、私の前だと敬語は止めてください」

「え?なんでですか?」

 

めぐみんは恥ずかしそうにそっぽを向く。

 

「……キャラが被るからです」

「……そっか。んじゃわかったけど、本当にそれが理由?」

「本当です!ほら、行きますよ!」

 

そして、リビングへと人形を集めながら移動した後、同時にカズマとアクアが帰ってきた。

カズマはすぐにお墓の方へ行き、俺は料理をすることに。

献立は唐揚げだ。

 

「エプロン姿がよく似合っているぞ、ヨータ」

「だからそういうの止めてってば」

 

男としてそこは譲れない。

その言葉は姿が変わる前に言ってほしかった。

 

「ん?ウィズがいますね。どうしたんでしょう」

「なにかカズマさんと話してるような……。はい、唐揚げできましたよ」

 

エプロンを外して待っていると、徐々にアクアが駄々をこねだす。

 

「私、のろまなカズマに言ってくるわね。カズマー!もうご飯できてるから、はやくきてーはやくきてー!早く来ないと、せっかくのお昼が冷めちゃうんですけど!」

「待ちきれません。早く来ないと、一分遅れるごとにカズマの唐揚げが一つずつ失われる事になってしまいそうです」

「カズマー!めぐみんが、一分遅れるごとにカズマの唐揚げが一つずつ失われる事になるって言ってるわ。やっぱり、来るのはゆっくりでいいわよ。私達のおかずが増えるし」

 

窓の外から、カズマの慌てたような声が聞こえる。

……本当に、このすばの世界に来たんだなあ。

カズマの皿から唐揚げをつまもうとするめぐみんを横目で見ながら、俺はそう考えていた。

 

 

 

 

「おいこらアクア、そこをどけ今から内職するんだよ寒いなら布団にでもくるまってろ」

「『…………………』」

「嫌よ。お布団なんて、一度出たら冷えちゃうじゃない」

「『…………………………………』」

 

もはや慣れた二人のやりとりを、()()冷えきった目で見ていた。

現在、我は例の二重人格───名付けて【太陽モード】の状態で、アクアに暖をとられていた。

どうにも、太陽モードの状態だと収まりきらなくなって溢れた魔力が熱に変わるらしく、太陽モードの我の周囲は暖かいらしい。

 

「なあ、ヨータ。どんな気分なんだ?そうしてさるぐつわを噛まされ、身動きもできない自らの体を利用されるのはどんな気分だ?」

「『んんんーんん、んーんん(誠に遺憾である)』」

 

極めつけは、暴れないように巻かれたロープと、口を開くとろくな事を喋らないからと、口に巻かれたさるぐつわ。

復讐してやろうかとも考えたが、アクアのお陰でわかったことが一つあるので止めておく。

それは、我は太陽モードになると髪の毛が逆立つという事実。

色も薄緑から真っ赤な赤へと変わり、なんというか……『ボボボ』という擬音が似合いそうだ。

 

「なによ、やる気?お互い素手の状態なら、ステータスが高い私に分があるわよ。ヨウタストーブは私の物……ぎゃああああ!!熱い!至近距離だと超熱い!」

「『疫病神よ、今言ってはならないことを口にしたな!』」

 

しめたとばかりに『フレア』でロープとさるぐつわを燃やし、アクアにアイアンクローをかます。

冒険者カードでステータスを示そうとしたアクアは持っていた冒険者カードを取り落とし、それをカズマが拾う。

 

「……なあ、お前、これだけ高レベルになったのにステータスが全く上がってないのはなんで?」

「バカねカズマ。私を誰だと思ってるの?ステータスなんて最初からカンストしてるに決まってるじゃない」

「えっ」

「『えっ』」

 

カズマは思わずカードを取り落としてしまう。

それもわからない事もない。

なぜなら、アクアはこの先どれだけレベルを上げてもステータスが伸びないのだ。

それは、少ない知力も例外ではない。

 

「あら?何よ、随分と素直に譲るじゃない。……ねえ、なんで泣いてるの?ステータスで抜かれたのがショックだったの?……え?ヨウタも行っちゃうの?どうして二人は、私をかわいそうな子を見るような目で見るの?」

 

カズマは無言で屋敷を出た。

我も太陽モードを止め、素直にクエストに行くことにしよう。

それが、俺にできる最大のパーティー貢献だ。

 

 

 

 

『息子に剣術を教えて欲しい。ただし、ソードマスターかルーンナイトの冒険者に限る』というクエストを受け、一週間講師の1日目を終えたあと。

俺はダクネスに呼ばれ、何やら重たい荷物を運んでいた。

 

「ダクネスさん、これなんです?」

「ああ、言ってなかったか。これはな、蟹だ」

「カニぃ!?」

 

俺よりも多くの箱を担ぐダクネスは、得意気に説明する。

そうか、もう蟹の章か。

つまりは、カズマ初のサキュバスサービスの日だな。

 

「そうだ。実家からパーティーメンバーに向けて普段お世話になっている御礼だそうだ。ああもちろん、ヨータの分もある」

「え?良いんですか?俺、まだ仮のパーティーメンバーですよ?」

「同じ家に住んでいるのだし、もう関係ないだろう。ヨータは立派な、私達のパーティーメンバーだ」

「だ、ダスティネス様!」

「こ、こら、ダスティネスは止めろ!他の連中に聞かれたらどうするつもりだ!」

 

ついついダスティネスと呼んでしまうが、まだ我慢。

ダスティネスやララティーナと呼んでいいのは、三巻からだからな。バニルよ、はようこんかい。

 

「こ、こほん。とにかく、今日の夕飯は蟹だ。質は期待していいぞ?」

「やったあ」

「あとは、私が担いでいるこの箱の中にも、良い酒が入っている。今夜は贅沢だな」

「やったあ」

 

最初に飲んだ酒も高級なやつだった。

舌が肥えて、安酒が飲めなくなったりしないだろうか、不安である。

 

「じゃあ、お酢の準備しますね!あとは、蟹のサラダにするのもいいですし……。この量だと、たくさん料理ができますね!」

「そうだな。楽しみにしていてくれ」

 

しかし、俺は忘れていた。

二巻の結末、アニメ一期のラストに、超難題ボスがいたことを。

機動要塞デストロイヤーが、駆け出しの街、アクセルに近づいていることを。

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