この素晴らしい世界で運命を矯正する   作:翠晶 秋

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前回のあらすじ!
デストロイヤーぶち壊したけど国家転覆罪の容疑かけられたよ!やったね!
……やったねじゃないよヤバイよバカッ!!


その裁判前にサブクエを!

 

……。

…………。

………………。

 

「話せば分かる!だっておかしいだろこんなの!」

「黙れ!その話は署で聞く!」

「テンプレかよ!ちょっ、掴むな!」

 

カズマが、連行されていく。

言い分も聞いてもらえないらしい。

 

「よ、ヨウタ!ヨウタぁぁぁぁぁ!!」

「…………」

 

その様子を、俺は敬礼しながら見ることしかできなかった。

 

 

バタン。

 

 

「それじゃあ剣術指南のクエストに言ってきますね」

「ちょっと待てヨウタ!?カズマが連行されたのだぞ!?」

「だからと言ってお仕事ですし休むわけにも……。それに、カズマさんがいないとお金が無くなっちゃうじゃないですか」

 

アクアが今になって泣きわめく中、ダクネスが俺の肩を掴む。

本当に。本当にそうだよ。

 

「どどど、どうしましょう!?カズマが、カズマがぁ!」

「あの冷静沈着な……ん?冷静、沈着……な……?」

「おい、私の性格に文句があるなら聞こうじゃないか!?」

「ごほん。冷静、沈着なめぐみんさんでさえこうなってるんです。せめて僕くらいは、自分に出来ることを考えないとって」

 

俺の言葉を聞き、ダクネスは自分の胸に手を当てた。

 

「自分に出来ること、か」

「はい。……あっ、身売りとかはやめてくださいね?」

「し、失敬な!私はそんな尻軽女じゃない!」

 

わかってますって。そう言いながら扉を開く。

依頼主の家に行くために。

 

「ヒノヨウタさん。あなたは現場にいて一部始終を見ておきながら、止めることをしなかったそうですね。現場の管理不十分として爆散した領主の瓦礫を片付ける仕事と現在の領主宅での奉仕が課せられています」

「…………」

 

依頼主、変わったっぽいです。

 

 

 

 

「か〜わ〜い〜い〜っ!!」

「っ……なぜ僕がこんな目に……」

 

領主の名前はアルダープ。

その人の屋敷が爆散したので、後処理の協力をした後。

現在、領主は貴族のお屋敷に泊まり、俺はそのお屋敷のお手伝いをするらしく、ダスティネス家にやってきていた。

通された部屋で、支給された服に袖を通せば。

 

『め、メイド服……』

『ヨウタ様の容姿ですとそちらの方が適任かとぐへへ』

『今ぐへへって言いました!?わざとですよね!?わざとですよねぇ!?』

 

そう。フリフリのメイド服だったのだ。

確かに!確かに今の俺の見た目じゃメイド服になるよねすいませんでした!

 

うわぁ……スカート落ち着かないよぉ……。

なんだかスースーして、足元が落ち着かない……。

早く仕事終わらないかな……気にせず飛んだり跳ねたりできるキュロットが恋しい。

 

「では、ヨウタ様はこちらのお部屋を。つい先日まで領主様とは別のお客人が泊まっていた部屋です」

「は、はい」

「ヨウタ様は現在客人ではなく新人という扱いです。くれぐれも、怪しい行動はとらないようお願い致します」

「が、がんばります!」

 

これはまた……維持費がかかりそうなお部屋だ。

観光ホテルのちょっと良いクラスにありそうだ。

 

まずはベッドメイク。

素早く四隅を外してシーツを巻き上げる。

換えのシーツを貰ってないから今回は毛布やシーツを取るだけにする。

 

次は棚の上。

背中のリボンに固定したなんかその……上をぱたぱたするやつを取り出す。……メイド服以外と便利だ。

 

「んしょ、んしょ」

 

上を叩いたら埃が落ちるので、床のゴミと一緒に掃き掃除をする。

次は鏡か。

支給されたハンカチに少量の液体石鹸を付け、拭うように拭いていく。

このとき、洗剤を多くつけすぎると流れ落ちちゃうので注意、と。

仕上げは、別のハンカチで拭き取ります。

 

「……俺、本当に女の子みたいな見た目になっちゃったなぁ」

 

綺麗になった鏡を見て、一人呟く。

肩口まで伸びた、薄緑色の髪。

小さい鼻と、大きな瞳。

前までの俺であれば、こんな娘を見つけたら可愛いって思うだろう。

しかし、自分となれば話は変わる。

 

今は屋敷に住まわせて貰ってるからいいけど、最初はトイレもお風呂も大変だった。

顔が完全に女の子だったから、男湯に入るとみんな『!?』って顔するんだよね。

身長も低くなっちゃって、指は細くなって。

 

……男の子じゃい!!

 

「っとと、早く終わらせなくちゃ」

 

窓の掃除に取り掛かる。

今頃カズマは牢獄の中。

なるべく原作通りにしたいけど……裁判のとき、ちゃんと弁護とかしてみようかな……。

 

綺麗になった窓を見て、モヤっとした気持ちが少し晴れた。

 

 

 

 

「お帰りなさいヨウタ。今日は遅かったですね?子供に教えるのはそんなに難しいんですか?」

「あぁ、いえ、違うんです。実は……」

 

帰れるころには既に日が暮れていた。

素手の卓上にご飯が置いてあるが、俺の右斜め奥……ダクネスの隣の席が、空いていた。

 

「カズマさんってまだ……」

「まだ帰って来ていません。領主の関わった裁判です、きっと裁判以前の問題でしょう……」

 

全員の顔が暗く沈む。

静まり返った食卓で、アクアが口を開く。

 

「逃げましょう」

「逃げるって?」

「みんなで逃げるの。他の街なら上手くいくわよ、きっと大丈夫。カズマをどうにか脱獄させて、ほとぼりが冷めるまでみんなで逃げましょう?」

「でも、どうやって脱獄なんてさせるのですかアクア。カズマは潜伏スキルを持っていますが、牢屋は鍵がかかってるのは当たり前として、見張りの数も多いと思うのですが」

「そこは抜かりないわ。カズマは妙なところで小手先が器用だから、針金を落とせばきっと解錠して出てくるわよ。べ、別にカズマの復讐が怖くなったわけじゃないからね」

 

「爆裂魔法」と俺が呟く。

視線が集まった。

 

「アクアがカズマさんに針金を渡し、めぐみんさんが爆裂魔法で見張りの兵士を惑わせます。倒れためぐみんはダクネスに運んで貰えば……」

「ヨウタは?ヨウタはどうするの?」

「僕は…………火でも、放ちましょうか」

 

この先は、原作知識は関係なくなってしまう。

でも、これで良いのかもしれない。

神様が俺に課した『使命』とやらも、未だに思い出すことができないし……。

なにより、このパーティーに愛着が湧いてしまった。

 

「大丈夫です。きっと、カズマさんを救えますよ」

「実行開始は……そうですね、一時間後。一時間後にしましょう。アクア、針金を用意しておいてください。ヨウタは脱走の準備を」

「わかったわ!」「はい!

 

サトウカズマ救出計画。

今、それが始動した。」


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