使命とは何かを忘れてしまった。
その場で思い出そうとうんうん唸る俺に、通りの冒険者が声をかけてきた。
「おい、どこの誰かは知らないけど、そこ邪魔になるからどいたほうがいいぜ」
「えっ!?あ、すみません!」
「いいっていいって。ま、どうしてもお礼がしたいんなら今度酒代でも出してもらおうかな。あーさぶさぶ」
俺に声をかけてくれた親切な冒険者は体をさすりながら町の外に出ていく。
あの冒険者の発言で気がついたが、今は冬なのか。
そういえば寒い。ここは早めに冒険者ギルドに登録した方がよさそうだ。
今の俺の装備はジーパンにシャツ、パーカー……。
秋に死んだお陰で、ギリ長袖である。
出店も少ない。カズマさんのようにおばちゃんにギルドへの道を聞くことはできないだろう。
「ここは一つ、アニメの記憶を頼りにやってみますか。……さ、寒い」
アニメのOPから見てこの街、アクセルは円型の街。
冒険者ギルドは一本の通り道にあったから、このまま歩いて……そう、右だ。
1巻でおばちゃんは右に曲がると言っていた。
そしてしばらくあるけばそう、青い屋根のギルド。
ドアを開ければ、中で冒険者達が騒いでいた。
「不本意だがすごく暖かい」
アルコールの臭いが鼻をつく。
入って右手のカウンターにはギルドのお姉さんたちが談笑している。
「あのぉ……少し、いいですか?」
「はい、なんです?」
金髪で巨乳のギルド嬢……ルナさんは談笑をやめてこちらに向く。
で、でかい。
「冒険者に成りたいんですけど……」
「でしたら、登録手数料として千エリスいただきますが、よろしいですか?」
「………………」
「もしもし?」
すっかり忘れていた。
そうだ、登録手数料!
辺りを見渡すも、プリーストのじいちゃんは居ない。
…………えっと。
「その、この季節に身一つで追い出されまして、お金も持ってないんです。何か、実入りのいいお仕事ってありますか?」
「そうですか。でしたら、当ギルドの厨房でお皿を洗うアルバイトなどはどうですか?」
「う、うーん。なるべく今日中に稼ぎたいんですよね……」
「そうですか……むむむ、困りましたね……」
なにか、いい仕事は無いものか……。
皿洗いじゃあすぐに千エリスは貯まらなさそうだもんなあ……あ。
「じゃあこういうのはどうです?ギルドに千エリスを前借りして、すぐにクエストに出て稼いでくる。僕の報酬から千エリス、もしくは利子をつけた分を引けば!」
「……どうなんでしょう。少し聞いてみますね」
ルナさんは俺の提案に少し迷った後、カウンターの奥へ入って行った。
俺はオタクだから内職スピードも遅い。
唯一頼れるチート能力はスキルっぽいし、まずは冒険者に成らないと意味がないだろう。
「お待たせしました。可能との事なので、当ギルドから千エリス、お貸しします」
「やったあ」
「では、ある程度は理解しているとは思いますが、改めて簡単な説明を。……まず、冒険者は街の外に生息するモンスター……。人に害を与えるモノの討伐を請け負う人の事です」
これアレか、1巻で出てきた冒険者とは何かの説明か。
決まり文句じゃないけど、決まったセリフなんだな。
「とはいえ、基本は何でも屋みたいなものです。……冒険者とはそれらの仕事を
来た。ゲームでも定番の職業選択。
アクアはアークプリースト、めぐみんはアークウィザード、ダクネスはクルセイダー……そしてカズマさんは最弱職の冒険者。
免許証サイズのカードを取り出したルナは、カードの説明を始める。
「ここにレベルという項目がありますね?ご存知の通り、この世のあらゆるモノは、魂を体の内に秘めています。どの様な存在も、生き物を食べたり、あるいは殺したり。他の何かの生命活動にとどめを刺すことで、その存在の魂の記憶の一部を吸収できます。通称、経験値、と呼ばれるものですね。それらは普通、目で見ることはできません。しかし……」
ルナはカードの一部を指差し、俺に見せる。
「このカードを持っていると、冒険者が吸収した経験値が表示されます。それに応じて、レベルというものも同じく表示されます。これが冒険者の強さの目安になり、どれだけの討伐を行ったのかもここに記録されます。経験値を貯めていくと、あらゆる生物はある日突然、急激に成長します。俗に、レベルアップだの壁を越えるだの呼ばれていますが……。まあ要約すると、このレベルが上がると新スキルを覚えるためのポイントなど、様々な特典が与えられるので、是非頑張ってレベル上げをして下さいね」
な、
とはいえ、再確認できた。
「ではこちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入を願います」
えーと……身長162センチ、体重50キロ、黒髪に黒目……。
「はい、結構です。えっと、ではこちらのカードに触れてください。それであなたのステータスがわかりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね。経験を積むことにより、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえて職業を選んでください」
おっと、これは小説と同じ展開なんだな。
アニメだと水晶に手をかざし、ビームみたいのがカードにステータスを記入するシステムだったが。
はてさて、どんなステータスだろうか。
「……はい、ありがとうございます。ヒノヨウタさん、ですね。ええと……器用度、
そうして提示された紙には、こう書いてあった。
・ソードマスター
・ルーンナイト
・アークウィザード
・アークプリースト
・盗賊
・冒険者
「あの、この一段空いてる【冒険者】って……」
「はい。総称ではなく、【冒険者】という職業がございます。冒険者は、すべての職業の専用スキルを覚えられる上、レベルも他より上がりやすいというメリットを持っています」
「おお、すごいじゃないですか」
「……しかし、スキル習得には大量のポイントが必要になりますし、職業補正も無いので本職には遠く及ばないという……」
うん、知ってるよそれ。
あいづち打っただけだからね。
「じゃあ……どうしようかな」
俺は後々、カズマのパーティーに入ろうと思っている。
ここに来た以上、彼の心労を減らしてあげたい。
そうすると、カズマさんのパーティーに必要な職業は何か……。
ああ、前衛だ。前衛が
そしたら、前衛職になる方がいいかな。
基本はチートを使う予定だし。
剣を扱えればそれでいいや。
「じゃあ、この【ルーンナイト】ってのにします」
「ルーンナイトですね!攻撃や防御はもちろん、ある程度なら魔法も使える職業です!では、ルーンナイトっと……。冒険者ギルドにようこそヨウタ様。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!では、あちらのクエストボードからクエストを選んでください!」
一連の作業が終わった。
これで、千エリスの借金を返し終えたら俺は冒険者だ。
ワクワクするな、なにがあるんだろうな。
とにかく、まずはスキルをとっていこうか。
先程、スキル習得に使われるポイントの欄に20と書いてあるのを見た。