八剣って、それはないでしょう!   作:ばうえもん

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停電でセーブしていなかった書きかけの序盤が消えてしまったので初投稿です。



クズ人間の俺がシガ八剣と呼ばれている


 

横島、数多の世界線の横島忠夫が統合する事によって生まれた、複数の魂を縒り合わせた末に創世神の領域まで到達した存在。

何らかの理由によって虚数空間を漂う横島忠夫のうち、帰る場所が無い者、帰る気が無い者、既に死んだ者、生きる意味を無くした者、数多の平行世界で生まれた敗者と負け犬の魂が一つになったのだ。そこは時間が存在しない場所故に生まれた時点で終わっていて、完成しているのに未だ成長し続ける存在がそいつだ。

 

その存在は自分のような被害者をこれ以上生み出さない様に数多の世界の横島忠夫へ向けてメッセージを送った。

この先試練の時を迎える横島忠夫はどうか俺達の元へ来なくて済む様にと。

 

だが究極で、到達点で、主神級を超える領域にあってもどうしようもなく負け犬で敗者なソレは下らない敗北を重ねてしまった。

ようするに横島忠夫はまた失敗したのだ。

 

 


ねんがんの てんせいしゃのちからを てにいれたぞ


 

「俺の居た世界は霊的エントロピーが極端に低い為かそもそも神魔という存在が無くてな、ソイツが危惧したような事態は起きる事は無いんだ。

なのに世界が受け入れられない量の霊力をぶち込まれれば世界が崩壊しかねない。だから世界は自分を守る為に霊力を得てしまった人間を(/承)の文珠が現れた時に開いた穴から弾きだしたんだ」

「つーわけでソイツが余計なマネをしくさったお陰で、俺はこんな目にあっている」

 

かなり端折ったが説明終了、実にバカげた理由で俺はここに来てしまったのだ。

 

「戻れないのか? 霊基構造が邪魔なら俺が貰ってやろうか?」

 

「戻ろうにもあんたら流に言えば宇宙意思に拒まれた結果だからな。それに霊基構造を捨てても俺の魂は既に成長してしまったから元の世界のキャパを超えた計算だ、無理に戻れば宇宙崩壊の危機だろうな」

 

「そりゃどうしようもないか、不幸な」

 

「おまけに今この世界は魔王の季節とかいう非常事態なんだろ、ムカつく事に正直この先ここで生きて行くには霊力が無いと困る」

 

霊力が無かったらこっちに来た時点で詰んでいたんだが、そもそも霊力が無ければ異世界転移する羽目にはならなかったんでやはりムカつく

 

「…酷いマッチポンプを見せられた」

 

げんなりとした顔のストライプはそう溢した

 

 

 

騎士バウエンには迷宮都市に向かうと言って別れた俺達だが未だ王都に滞在している。一人では無理だと思い諦めていた事があったのだが、俺以上の文珠の使い手であるストライプと組めば可能性が見えてきたからだ。

 

俺はこの世界へ流れ着いた当初、地球に居た頃に読んだ異世界物のラノベを参考に色々と試していた。一時期面倒を見ていた主無しの奴隷姉妹の片割れが転生者だった為に異世界物の定番であるレベルアップによるスキル習得を可能とする自己確認(セルフ・ステータス)を文珠を駆使して習得出来た事と、この世界の特異点(主人公)と思われる310というふざけたレベルの男の霊基データを手に入れたのが大きかった。

現状はその男のユニークスキルの複製は出来ていないが、ある程度の仕様は分かったので近い機能を持つ王城に保管されているオリジナルの「ヤマト石」を調べて劣化版だが情報習得システムを作れた。

 

そして俺とストライプは外部からの干渉を遮断してその男のユニークスキルによる探査から身を隠している。タネが割れて入ればある程度の対抗策を準備出来るのが文珠の便利なところで、相手はスペックこそバケモノだが現状は人間なので思考や精神の隙を突けば隠れて観察する位は可能だという事だ。寧ろこの場合は一緒にいる猫耳の方が感が良くて厄介だな。

 

「俺でももうちょっと近づかないと(摸)(倣)出来ないな」

 

「アンタでも無理か、なんとか一人のタイミングで接近するしかないな」

 

「いや、近づくよりも相手方が近づいて来たタイミングで機械的に対応した方が発覚しにくいだろう」

「そういや以前はいったいどうやって霊基データを採取したんだ?」

 

「ああ、その時は砦を明け渡す代わりに俺に危害を加えない様に呪術契約を結ぶ交渉をしたんだがな、肝心の呪術契約があっさりレジストされたんだよ」

「だからヤツの髪と血を触媒にしてなんとか契約を結んだ。その時にだ。しかし一月と持たなかったな」

 

「おいおい、正面からかよ。契約破棄されたのは痛いが霊基データを採取出来たのなら悪くはないか?」

 

それにしても解析して分かったがあの男は一見して人間に見えるが、中身は魔横島と同様に複数の魂を縒り合わせて高位霊体に至った存在のようだ。本人無自覚のようだし龍神と縁が有るようだから多分本人の意思とは関係ない所で行われたんだろう。

 

「急に黙って何を考えてるんだ?」

 

「ヤツがああなった理由についてかな…」

 

「やっぱりアコンなんちゃらって龍神の仕業なんだろうな。まったく、これだから神族ってやつは」

 

 

 


 

クズ人間の俺がシガ八剣と呼ばれている

 


 

……。その気があれば、いつでもシガ八剣になれるとでも言いたいのか?」

 

今日は王城にチームペンドラゴンが報奨を受け取りに来る日だ。せっかくだから着飾ったルルさんを見て目の保養をしようと思っていると、嫉妬に駆られた貴公子様がペンペンに絡んでいる場に出くわしてしまった。

 

「なれるだろうさ」

 

「っ、バウエン殿か」

 

「ペンドラゴン子爵はなんとも言えないが、リザ殿はその気が有ればなれるんだよ。なにしろ俺達選考組と違ってジュレバーグ様が直々に推挙したんだからな。お前だって模擬戦の一件については聞き及んでるだろう?」

 

なので助け舟を出したつもりなんだが余計に煽っている気もせんでもない。なんにしろ同僚になる予定のコイツに変にコンプレックスを持たれるのも困るな

ペンドラゴン卿に罪は……いや有るな。謙遜も行き過ぎれば嫌味だ、今のジェリル殿には毒を盛るに等しかろう

 

「焦る気持ちはわからんでもないさ、俺も魔禍払いの儀式の場で警護でいたからな。傷無しの異名に違わぬ活躍は見ている」

「それ以外にも王都で次々と実績を重ねるペンドラゴン卿と比較されるのは辛かろうが…、卿に当たるのは筋違いだぞ」

 

「私だって……護衛がなければ…」

 

「ああ、ムーノ伯爵は英断だったな。自身の護衛よりも魔獣共を倒す方が結果的に全体の安全度を上げるからな」

「だがビスタール公爵の判断も間違ってはいないぞ。仮に貴公が参戦してあの場を切り抜けてもだ、騒動に乗じて暗殺者に襲撃でもされてしまったら問題だ。ビスタール公爵の身にもしもがあれば今以上に北が荒れる。だから公爵が用心するのは王国に取っても正しい選択なんだよ」

 

また(・・)手練れに襲撃を受けたら困るんだよ。当時者ならわかるだろう?」と肩に手を置き言い聞かせる。

 

いかんな、思わず肩を掴む手に力が入り過ぎたのかジェリルの野郎が若干引きつった顔で頷く。おいおい、ペンペンまで笑顔を取り繕うのを忘れているぞ?

どうやらお家騒動に巻き込まれて死んだ聖騎士達の件で俺がビスタール公爵家に良い感情を持っていないのを察したようだ。いやホント親子共々死ねばいいのに

 

 

なんてやり取りをしたのはそう昔の事ではないハズなんだが、ビスタール公爵領から帰って来た俺達は王都の駐屯地でチームペンドラゴンが勇者と供に魔王討伐を成し遂げたという報告を聞いている。あー、ジェリルの野郎こりゃまた荒れるな

 

まぁヘルミーナ様とかケルンとか好意的な面々以外も流石にこのような偉業を成されればシガ王国の誉と騒ぎ立てる。

だが平常運転、いやどちらかというと荒れそうな同期の件でうんざりしている俺に気が付いたのかヘルミーナ様が声を掛けてくる

 

「バウエンはペンドラゴン卿とは仲がよかったと思っていたのだけど落ち着いているのね」

 

「いやまぁ流石に魔王は驚きましたけど、恐らく勇者のフォローに回っていたのでしょうからまぁ有りえるかなと」

 

「どういう意味かしら?」

 

「ペンドラゴン卿はどういうわけか魔族との戦闘経験が豊富ですからね。全てに勝ったわけではありませんが「傷無し」の異名に違わずきっちりと生き延びています」

 

「ああ、私との出会いもそうだったわね」

 

「それと、なんというか、持っている人間って奴なんでしょうね。騒動の渦中に居合わせる才能でもあるのか結構いいタイミングで良いポジションに居るんですよ。だから外交の旅なんぞに出向けばそのうちやらかすだろうなとは思っていました」

 

「やらかすって、なにそれ」

 

くすくす笑うヘルミーナ様と対照的に俺の隣で不機嫌な貴公子どのがウザイ。

とはいえコイツの気持ちもわからんでもない。シガ八剣を辞退した人間が魔王討伐の武功を上げたのだからだ。

シガ八剣の地位に興味なかったのはそれ以上の偉業を成し遂げる自信があったからかと勘ぐってしまうのだろう。冷静に考えればそんな事は不確定要素だらけでありえないのだが

 

「宰相殿は笑いが止まらんでしょうね。それとも遣り過ぎだと慌てているかな?」

 

「どういう意味かしら?」

 

「いやぁ、ペンドラゴン卿がシガ八剣を辞退したのは最初から宰相に言い含められていたからなのかと」

 

俺とヘルミーナ様の会話に気が付いた周囲も俺の陰謀論に注目している

 

「続けて、」

 

「シガ八剣は国防の要ですからね、意外と腰が重いといいますかあまり自由には動けないんですよ。ましてや国外に出るのは」

 

「そうね、だから国外で動ける人員としてシガ八剣以外の戦力を欲したと?」

 

「そうなりますね。ペンドラゴン卿は観光相のナンバー2、現場で自由に権限を振るえる立場ですので動きも早い。そして少数精鋭だからこそ機動力もあり、旅慣れていますのでバックアップも最低限で済む」

 

「私だって、機会さえあれば……」

 

あー、こいつまだ張り合えると思ってやがんよ。決定的な差が有るのに気が付いてねーな。

 

「無理だよ」

 

「何故だ!! 私が彼に劣るとでも!!」

 

ぶっちゃけ相手はレベル3桁の化け物、勝てるわけがない

 

「総合的に見れば劣るんだよ、何しろペンドラゴン卿には優秀な部下が居る。本人を含めてシガ八剣級が4人、もちろん他の4人も優秀だぞ。ヘイム様、耳族の二人は俺達に勝てますかね?」

 

「……簡単には勝負はつかないだろうな」

 

言葉を選んだヘイム様、俺達が負ける可能性が高いと考えたかね?

 

「何を……確かに年を考えれば優秀だが」

 

「魔法使い二人も普通に一線級だからな、たぶんシガ三十三杖でもやっていけるだろうよ」

「あと普通に文官としても優秀だからな、普段は外交官を務めるのだからそっちの才能も必要だな。お前個人で全て対応出来るのか?」

 

「何を言うかと思えば、雑事は他に任せればいいし部下だって声を掛ければ…」

 

「お前にシガ八剣級の戦力を集められるのか? 文官を別に連れては大所帯になるぞ、確実に足が遅くなる。

 その点ペンドラゴン卿は最初から全部持っている。全員戦闘をこなせるから護衛も必要が無いので最少人数で動ける。つまりペンドラゴン卿一人口説けばそれで済むんだよ」

 

「実際他国にしてみれば悪夢だろうよ、外交官が実は有事の際にはシガ八剣級の戦闘集団になるんだからな」

「おまけにペンドラゴン卿の立場はあくまでも文官だ、だから負けても逃げても恥ではない。むしろ情報を持ち帰るのが仕事だ。探求者上がりのペンドラゴン卿ならば退き際は間違えないだろうから適任だな。実に良く考えられている」

 

「くっ、シガ八剣こそシガ王国最強!! なのに何故陛下は我々に魔王討伐を命じてくれないのだ…」

 

「そりゃ俺達は国防の要だからだろ。この魔王の季節に下手に動かせるわけあるかよ」

 

「貴公は悔しくないのか!!」

 

「お前こそシガ八剣を名のるって意味をちゃんと考えているのか? シガの名を冠するのは王国最強だからじゃなくて王国の守護者だからなんだぞ」

 

俺の言葉に頷くのはジュレバーグ様やレイラス様、若い騎士団員は若干不満そうだな。武人が武功を求めるのは仕方が無くもあるが。

 

「さっきから聞いていればペンドラゴン卿を褒め称えるだけで後は覇気の無い言い訳ばかり、貴様にはシガ八剣の誇りはないのか!!」

 

うっわぁ、標的俺に変わっちゃったよ。そりゃ未だ引き摺っていて覇気に欠けるのは自覚してるけどさ。だいたいテメーのところの主家の騒動のせいでどんだけ迷惑被ったって思ってんだよ。

 

「表へ行こうか、黒槍殿には未だ及ばんが、おさまりつかないんなら相手してやんよ」

 

 

 

そうして闘技場で向かい合う俺とジェリル、奴が6席で俺は7席なんだがまぁその辺は政治力学の影響もある。ぶっちゃけ差は無いと思う。

 

「牙突」の二つ名が広まったので最近は開き直って牙突を練習している。「鉋」は長すぎるんで若干オリジナルと構えが異なるのはご愛敬だな

ジェリルの野郎も剣に魔刃を発生させたので俺も刀身に薄く纏わせる。ジェリルに比べて弱い輝きに周囲は6席と7席の差だなんて好き勝手批評しているが……流石に一度目にしているジュレバーグ様はこの意味を分かるのか驚いている。いや驚くってあんたひょっとして魔刃の出力調整出来ないんか!?

まぁ、今回は俺もちょっと八つ当たりしたい気分なんでこの程度済ませる気は無いんだがな。

 

審判の始まりの合図と供に俺の牙突を警戒しつつじわじわと動くジェリル、相手してやるとさっきは言ったけど実は相手する気は無いのでさっさと終わらせる。なんせこれはビスタール公爵関係者である奴に対する八つ当たりなんだからな。

 

「魔刃が強く!?」

 

正面の奴には俺の魔刃の輝きが増した様に見えるだろうが審判のジュレバーグ様や横から見ていた人間には別の物が見えているだろう、俺は敢えてゆっくりと刀身全体に纏わせた魔刃を先端に向けて移動していく、結果先端に収束して輝きを増した魔刃を更に細く収束して点にする

周囲の騒めきに何か不味いと感じたのかジェリルは間合いを詰めるが…遅い

 

「牙突・穿(うがち)

 

俺の宣言と同時に腿を撃ち抜かれて足をもつれさせ転倒するジェリル、一瞬何をされたのかわからなかったようだ。殺傷能力を落す為の針のような魔刃砲。急所に当たらなけば小さな穴が開く程度だ。死にやしないさ

今回は敢えてゆっくりと発動させたのだが、撃った後は弾速までは調整出来ないので何人見えたかね、細くて視認しずらいから難しいだろう。

 

リザが使う3連魔刃砲を目標として鍛錬していたのだが魔刃砲を連射する程の高速の魔力操作は未だ習得出来ていない、だからせめてもの足掻きで彼女の魔刃砲を撃ち抜ける威力と速度を求めた結果がこれだ。恐らくこれならば彼女が2発目を打つ前に撃ち抜ける。といいな……

 

そのまま倒れ伏すジェリルから若干外して切り下し、本来は刃が届かない間合いを刀の刀身の様に薄く伸ばした魔刃砲を放ってすぐ横の床を切り裂く。

 

「ガンリウ・空牙」

 

風刃を諦めた俺が代わりに取り掛かったのが切り裂く魔刃砲、距離が離れると収束が緩むので使いどころが難しいのだが、奴の度肝は抜けただろう。

 

「嫉妬する暇があるなら鍛錬でもしてろ。6席から落ちたくはないだろう?」

 

呆然とするジェリルに背を向けて去ろうと…えっ、はっ? ジュレバーグ様っ!? いやちょっと、まだ実践レベルになってないんで模擬戦は、あっ、あ~~~~!!

 




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