「はいどうも皆さんこんにちは! 中川かのんです!
第12回キャラクターコメンタリー、始めていきましょう!」
「今回はスミレ編だったな。甘味ラーメンか。はぁ……」
「それでは、VTRスタートです!」
『……参りました』
「七香さんの投了シーンからスタートだね」
「関係性が近すぎず遠すぎず。ある意味一番おいしいポジションに入ってるからな」
「原作だと七香さんと桂馬くんって最終的にはほぼ互角みたいな感じだったけど、本作だとそうでもないみたいだね」
「その表現は正確ではないな。実力はお互いにあまり変わってない。
しかし、夜通し対局してた原作と違って僕と七香の対局回数は当時は2桁に届かない程度だ。
七香が僕との対局に慣れていないから僕が勝ちつづけてるだけだ」
「なるほど……そんな理屈があったんだね」
『ふぃ~、ここのコーヒーはいつも美味いなぁ。ところで桂木、今から時間ある?』
『無い』
『即答かい! ってかどうせゲームやろ?』
『だったらどうした?』
『いや~、大したことや無いんやけど、いつも世話になっとるから昼飯でもどうかと思ってな。うちの奢りやで?』
「確か行き先はラーメン屋だったね」
「僕が自分からラーメン屋に行くわけが無いからな。
全く、何であんなギトギトした脂っこいものを食わなきゃならんのだ」
「ラーメンファンに全力で喧嘩を売ってるね……」
「原作では確かエルシィが駄々こねてラーメン屋に入ったんだったか。
どっちの方がより自然な流れだったんだろうな」
店員に案内されて4人掛けのテーブル席に案内される。
そのうちの1つの席には既にチャイナ服の女子が座っていて、種類の違うラーメンを3杯ほど食べているようだ。
塩分や油がどうこう言う前に食べすぎじゃないのか? 寿命がガリガリと削れていてもおかしくはない。
まったく、こういう自分の命を顧みないような見境の無いマニアにはなりたくないものだな。
「……あの、桂馬くん?」
「ん? どうした?」
「……スルーしようかとも思ったけどあえて言わせてもらうよ。
『自分の命を顧みないような見境の無いマニア』って桂馬くんの事じゃないの!?」
「…………何の事だ?」
「……え?」
「全く、妙は言いがかりは止してくれ。
食事などというどうでもいい事とゲームをするという生きる上で必要不可欠な事を一緒にしないでくれ」
「逆! 逆だよ桂馬くん!!」
駆け魂センサーを持ってきていて、見つけてしまったのは仕方がない。
この目の前のラーメン女の情報を集めて攻略をしなければならない。
『ご馳走様でした!』
って、言ってる傍から席を立ちやがった!
幸いまだ注文はしていないから後を追って……いや、七香を放っておいて着いてこられたりしたら面倒な事になる。
ならばかのんを行かせよう。席を立つ口実はこっちで作らせてもらう。
僕はPFPのメール機能を急いで立ち上げて空メールを送った。
「空メールを連絡用に使ったのは初めてだな」
「桂馬くんがスミレさんからPFPに視線を戻した瞬間に次の行動が読めたから空っぽのメールでも十分意図が伝わったよ」
「明確な言葉にせずとも伝わる以心伝心な関係というのは筆者の趣味だな。
実に便利だ」
「確かに便利だけどさぁ……もうちょっとときめきを感じて欲しいよ」
……姫様、スミレさんを尾行中……
『すいません! 醤油ラーメンと豚骨ラーメンと……星雲合成ネギラーメンお願いします!』
『お嬢ちゃん、注文は食券で頼むよ!』
『あっ、すみません』
「星雲ラーメンって何!?」
「落ち着け。星雲『合成ネギ』ラーメンだ」
「いや、もっと分からなくなったよ……」
「原作女神編の栞の小説の中に出てきた謎の食べ物だな。せっかくだから入れてみたらしい。
ついでに言うとこの店は同じく原作女神編(栞)で出てきた店という設定だ。食券での注文だから栞でも安心だな」
「……実はこの時背景に居たりして」
「……かもな」
……姫様、上本屋で食レポ中……
『頂きます』
情報を少しでも集める為に食レポのような気持ちで目の前の料理と向き合ってみる。
まず、率直に言って見た目は地味だ。美味しく見せる配置とかそういったものが全く見られない。私自身もそこまで詳しいわけではないけど、プロの手に託せば3倍くらい良い見た目になりそうだ。
次に、スープの味を確認する。メニュー表にはシンプルに『ラーメン』としか書かれていなかったので何味なのか分からなかったけど、どうやら醤油ベースの出汁にいくつか改良を加えてるみたいだ。
そしてお待ちかねの実食。麺を箸ですくい上げて勢いよく啜る。
『どうですか? うちのラーメンの味は』
『……凄く美味しいです。正直に言うと見た目が地味だったので味も地味かと思いましたが全然そんな事はありませんでした。
もしかして、品質を落とさずに作れる量が限られているからわざと地味な見た目にして一見さんお断りの雰囲気にして客数を制限してるんですか?』
『え? いや、うちの親父はそんな小難しい事は考えてないはずだけど……』
「うちの筆者にしては無駄に頑張ってる食事描写だな。
しかしまぁ、よくこんなスラスラとコメントが出て来るな」
「飲食物のCMとか、食べ物が絡む系のバラエティ番組に出る事はそこそこあるからね。
……どういうわけか最近はバラエティの出演が『そこそこ』じゃなくて『かなり』多くなってるけど」
「不思議な事もあるもんだなー」
「そうだねー」
……その頃の神様……
『エルシィは居るか!!』
『あ、神様! お帰りなさいませ!
どうですかこの服? お母様が用意して下さって……』
『んな事はどうでもいい。さっさと行くぞ!』
『え? ちょっ、神様ぁ!?』
「エルシィさんのウェイトレス姿がサラッと流されたね」
「あんな誰でも考えつくような浅はかな真似にいちいち反応なんざしてられん」
「ふ~ん……私も着てみよっかな~」
「好きにすればいいさ」
「反応無しか……桂馬くんを悩殺できるような良い感じのコスチュームとか無いかな?」
「そんなもんを僕に訊いてどうする」
「え? 勿論着るつもりだけど」
「いや、そういう意味じゃない。何で僕が知ってると思ったんだ?
そして仮に知ってたとして、言うと思ったのか?」
「だって桂馬くん以外で知ってそうな人が全く居なかったんだもん。
あ、そうだ。今度検証してみようよ!」
「誰がやるか!!」
「あれれ~? もしかして怖がってる~?」
「そういうわけではないが……」
「じゃあ決まりだね~。今度のオフの日はイナズママートのブティックでデートだよ!」
「コスチュームと言うよりは普通に服か。
はぁ……まぁ、そんくらいなら付き合ってやる」
「やったー! 忘れちゃダメだよ!!」
『すいません大将。
僕をこの店で働かせてください!』
「随分と思い切った事したよね。現実だったらちょっと考えられないよ」
「
「でもさ、この後アッサリと受け入れてくれたから良かったけど、もし断られてたらどうしてたの?」
「その場合いくつか方法はあるが……どうやっても無理だったら客として攻略するしか無いだろうな」
「……スミレさんのお父さんが分かりやすい人で本当に良かったね」
※
現実的に考えたら人を1人雇うだけで結構色んな手続きが必要になるはず。
そういう所は気にしてはいけない。きっと。
……そして翌日(月曜日)の放課後……
……ではなく、早朝……
『な、何でアンタが居るのよ!!』
『あ、おはようございます。本日からここで働かせていただく桂木です。宜しくお願いします』
『いや、それは知ってるわよ! 私が言いたいのは何で
『大将には空いてる時間に来いと言われたので。もう少ししたら登校しますよ』
『こんな時間に来てもやることなんて無いでしょうが!!』
『フフッ、それはどうでしょうか?』
ラーメンの仕込みは早朝から行う場合もある……が、それは大将の仕事だから除外しておく。
除外した上で、やれる事は十分にある。
この、エルシィから借りた魔法の箒を使ってな!
「当時は全く気にしてなかったが、実は理力で動いてたんだよな。あの箒」
「もし魔力を使う道具だったら全く動かせないって事になってたね」
(当時の記憶は私にもある。
私はずっと奥の方に引きこもっていたので、我が宿主の理力量はそこらの人間が自然に放つものとそうそう変わらない。
私の影響が僅かだがあったので多少は強化されていたようだが……まぁ、目立つレベルではなかったのは確かだ)
「って事はただの人間でも扱えるんだよな。あの箒」
「最大パワーで一掃するのは無理でも、ちょっとした汚れなら簡単に落とせるみたいだね」
「むしろ安全で助かるな」
(今の桂木なら周辺を一掃する事も可能だな)
「やめい!」「やめて!!」
『た、ただいま……って、何でアンタがもう居るのよ! このトンコツ男!!』
『トン……? いや、学校が終わったらすぐに来ただけですけど?』
『学校が終わってから全速力で走ってきたのにそれよりも早いなんておかしいでしょゲホゲホッ!!』
それはご苦労だったな。
空を飛んで移動するのはやはりチートだな。加減してるらしいスピードでも余裕で着けた。
『そんな事を言ってる暇があるなら着替えたらどうですか? ピークの時間帯はまだ先ですが、やれる事はありますよ』
『言われなくても分かってるわよ!!』
う~ん、いい感じに嫌われてるな。
それじゃ、見せつけてやろうじゃないか。経営系ゲームも極めている僕の店員としての格の違いという物を……!
「この辺の会話って攻略時期が原作とズレた影響がそこそこ出てるんだね」
「ん? ああ。原作では夏休みだったのに対して本作では平日だからな。
タクシィが有効活用できる」
「やっぱり羽衣さんって偉大だね!!」
『オイテメー、わぁってんのか!?』
『す、すみません!』
『ゴメンで済んだら警察は要らねぇんだよ! 態度で示せや!!』
『しょ、少々お待ち下さい!!』
「あ、スミレさんがクレーマーに絡まれてる」
「筆者がご都合主義で仕掛けた無駄に壮大で無駄にバカなクレーマーの話だな。
上の場面では『注文したラーメンと違う』と言いがかりを付けてるわけだが、実際にこういうクレーマーが居たらどうなるんだろうな」
「それは……持ってきちゃったラーメンで通すしか無いんじゃない?
もしくは急いで作り直すか」
「まぁ、そうなるか」
『お客様、大変お待たせ致しました。
こちらがご注文の品になります』
『おう。ってオイテメェ。注文と違うじゃねぇか!!』
『はて? 何か間違えましたか?』
「……どう見ても注文通りだよね?」
「ここまで悪質なクレーマーは
『お客様、失礼ですが物忘れが激しいようですね』
『あ〝あ〝?』
『それではこちらをご覧下さい』
そう言いながら僕は懐からある物を取り出す。
某アイドル曰く、演技の練習に凄く便利な機械、『ボイスレコーダー』を。
「お~、私のボイレコが活躍してる!」
「本作において初めてボイレコが出たシーンだ。アイドルなら持っててもおかしくはないという判断らしい。
少なくともスタンガンよりは自然だ」
「え? そうかな……」
「……振り返ってみるともうちょい前から伏線として張っておくべきだったと後悔してるらしい。
唐突に出てきてもそこまで不自然ではない代物だが、だからこそもっと前から自然に仕込めたはずだ。
普通の攻略においてもバックログを確認するのに非常に役に立つしな」
『お疲れさまです、スミレさん』
『……うん、お疲れさま』
『おーい、スミレさん?』
『……うん、お疲れさま』
『…………』
『……うん、お疲れさま……』
「スミレさんが壊れた!!」
「筆者の悪癖その3『ギャグ描写を大真面目に解釈して続行する』が発生しているな」
「あ~、さっきのクレーマーの対処を見て打ちのめされてるんだね……
って言うか、1番と2番は?」
「『インフレするヒロイン』と『物語に直接関係ない無駄話を無駄に壮大にする』だな。
真面目に悪癖を解説するなら『やたら多い3点リーダー』とか『会話文でゴリ押しする進行』とかだな」
「あれ? 何か真面目な解説に……」
「作文の勉強なんてまともにしたことも無いうちの作者でもそこそこのものは仕上げられる。
これを読んでる皆様も是非とも頑張って欲しい。
……との事だ」
『はいっ! 私の下克上ラーメン試作1号、完成!!』
『……いくつか訊きたいんだが』
『どうかしたの?』
『まず、この上に乗っかってるメロンみたいなのは何だ?』
『あ、メロンだよ♪』
『じゃあ、このオレンジっぽいモノは何だ?』
『あ、オレンジだよ♪』
『…………』
「うわぁ……目に毒だ」
「見てるだけでも吐き気が……うぷっ」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫だ……今日は朝から何も食べてないからな!!
吐き出すものなんて無い!!」
「……そ、そういう問題なのかなぁ……」
……翌日……
『さートンコツ、張りきっていくわよ!』
現在の時間帯は放課後、夕食のピークより前。
この時間帯なら客は少ないのでバイトが居なくてもどうにかなるらしい。あと、仕事が終わって大将が下で片付けをしている間も可能だとの事だ。
夏休み中とかならもっとまとまった時間が取れたかもしれんが、無いものねだりをしてもしょうがない。回数で稼いでいこう。
「原作との比較をネタにしたモノローグだね」
「本章における数少ない原作との差異の一つだな」
『厨房は使えないから上でやるわよ。付いてきなさい!』
『この店の2階? 居住スペースになってるのかい?』
『ええそうよ。台所もあるからちゃんと料理できるわ。
勿論、下の店の厨房ほど立派な物じゃないけど』
『試作品を作るくらいなら問題ない、と』
『そゆこと』
スミレに連れられて扉を抜けるとそこには殺風景な部屋が広がっていた。
店の面積よりも少し狭いスペースに2つの部屋があり、手前の部屋には卓袱台が、半開きの襖から見える奥の部屋には畳んだ布団しか置かれていない。
本当に最低限の居住スペースといった感じだ。
『あんまりじろじろ見ないでよね。そんなに良い部屋じゃないし』
『ああ、ゴメン』
「じー……」
「ど、どうしたかのん」
「けーまくん。今度私の部屋に遊びにおいでよ!」
「何故そうなる!!」
「だって、VTRの中の桂馬くんはスミレさんの部屋にお呼ばれしてるじゃん! 私も負けてられないよ!!」
「いや、確かにスミレの部屋と言えなくもないが実質ただの居間だぞアレ」
「うぅぅ、そうだけどさぁ……細かい事は気にしちゃダメだよ!!」
「気にしなかったとしてもお前の部屋にわざわざ行く必要が無いな」
「……PFPを拝借して私の部屋に飾っとけば来てくれるかな?」
「止めい」
『で、スミレさんのラーメンを毎回毎回きっちり完食してる、と』
『……ああ。昨日の夜はアイスクリームとマシュマロとかりんとうが乗ったラーメンに追いかけられる夢を見たよ』
『どんな夢を見てるの!?』
桂馬くんが攻略を開始してから一週間近く経つ。
その間、ほぼ毎日すみれさんの超甘党ラーメンを3~4杯以上完食してるらしい。
何というか……冗談抜きで命懸けの攻略な気がする。駆け魂攻略はそもそも命懸けだけどさ。
『私にできる事だったら何でも相談してね。味見以外で』
『おい、そこをピンポイントで除外しないでくれ』
『だって太りたくないもん』
「そう言えば、そもそもの前提として甘い物が好きとか嫌いとか、そういうのはあるのか?」
「小さい頃は大好きだったけど、今はそれほどでもないかなぁ……
カロリーを取る度に岡田さんから課せられた地獄のダイエットを思い出しちゃうから……」
「……苦労してるんだな」
「……うん」
「ふと気になったんだが、アイドルを辞めようと思った事は無いのか?
辛い事も色々とあるだろうし、自由時間もかなり少ないと思うんだが」
「そりゃ辞めたいって思った事はあるよ。でも、私の事を待ってくれてるファンの皆が居るから。
それに……私の歌が、私と桂馬くんを繋いでくれた。出会いのきっかけっていう意味でも、記憶を奪われなかったっていう意味でも。
だから、簡単に辞めちゃダメだと思う。いつか限界は来るんだろうけど、その時までは精一杯続けるよ」
「……そうか」
「それに、桂馬くんはまだ働く気は無いでしょ? 高卒で働くと仮定してもまだ1年近くかかるし、大学や院にまで行くならもっともっとかかる。
私が働いて養ってあげないと!」
「おいコラ」
『大将、突然で申し訳ありませんが、僕は今日でこの店を辞めます』
『……そうか。ま、無理もねぇな。あんな下らねぇ事を見せちまったからな』
『いいえ、僕が辞める理由はそんな事じゃあない』
『あん?』
『僕が店を辞めるのは、今日で僕が必要無くなるからです』
『どういう意味だ?』
『僕はきっと、今日このラーメンをあなたに届ける為にここに来たんです。
受け取って下さい。スミレさんが作ったこのラーメンを』
『何べんも言わせるな。そんな下らない事は……』
『逃げるんですか?
本気でスミレさんにラーメン屋を継いでほしくないなら、このラーメンを食べて、その上で否定して下さい。
ま、あなたには無理だと思いますけどね』
『……いいだろう。そこまで言うなら食ってやる』
「スミレさんのお父さんの攻略のクライマックスだね」
「親父さんにラーメンを食わせるという流れ自体は原作とあまり変わってないが、この辺の口調がやたらと煽り口調になってるな。
まぁ、原作だと『ラーメンを食わせてくれ』で、本作だと『ラーメンを食え』だからちょっと変わるのはある意味当然なんだが……」
「煽り口調と言うより挑戦的な口調なんじゃないかな。
煽りも入ってると思うけども」
「……かもな」
『はぁ、今回の攻略はキツかった』
『お疲れさまです、神様!』
『お疲れさま、桂馬くん』
だが、これで甘味地獄とはオサラバだ! ようやく普通のメシが食え……いや、もう点滴でいいな!
「いや、ダメだよ!!」
「え~、別にいいだろ。
食事などという無駄な行為の時間を丸々削減できるんだから」
「いやいやいやいや、無駄じゃないから!!
そんな事言ってるともうお弁当作ってあげないよ!!」
「いや、学校で点滴を打つのは流石に面倒だから弁当は欲しいんだが……」
「……そういう問題じゃないと思う」
「こんなもんだな。そろそろ時間のようだ」
「……さて、お次は……あ」
「? どうかしたか?」
「う、ううん、何でもないよ! 次回は月夜編『そのセカイは美しい』です!」
「『恋愛による攻略』が一番はまった攻略対象だったな」
「では、また来週~!」