「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!
第14回キャラコメンタリー始めます!」
「名字が省略されたな」
「うん。だって、わざわざ名乗らなくても皆理解してくれるはずだからね!!」
「……お前の主張する名字がどっちなのかは今は触れないでおこう。
今回は長瀬編だな。
どうでもいいことだが、いつもは『歩美編』『かのん編』って感じで下の名前なのに長瀬だけは何故か上の名前だ」
「先生だからねぇ……
それじゃ、VTRスタート!」
エルシィさんは地獄の特訓合宿へと旅立った。
あ、私の仕事をエルシィさんに押しつけたわけじゃないからね?
岡田さんから『あっちの方のかのんを連れてきてね』とわざわざ言われたのだ。
岡田さんも棗さんも『悪魔が変装した替え玉』とまでは見抜いてないだろうけど、『何か2人居る』って事には気付いてるみたいだ。
むしろ今までバレなかった方が不思議……いや、今までも薄々勘付かれてたね。岡田さんが優しいからスルーしててくれただけで。
「何で今更というツッコミは……しないでおこう」
「このタイミングで特訓するのは完全に筆者さんの都合だね。
じゃあ逆にどのタイミングが自然なのかって言われるとちょっと分かんないけど」
「今回の章の執筆にあたっては『エルシィの活用』と『ヒロイン視点』を縛って進めたらしい。
完全に純粋にお前と僕の2人きりの攻略になるな」
「初めての共同作業ってヤツだね!!」
「……まぁ、間違っちゃいないな」
『そういうわけで、私の後輩が教育実習にやってきた。
しばらくは副担任としてこのクラスについてもらう』
二階堂先生が連れてきたのは先生よりも少しだけ背の低い女性だった。大体私と同じくらいの身長かな。
手元の駆け魂センサーを確認してみたけど、鳴り響く様子は無い。
よく考えたら、今までの駆け魂は高校2年生にしか取り憑いてないんだから心配する必要も無かったかな。
「かのんの身長が161cmに対して長瀬の身長は162cm。あと二階堂は168cmのようだ。
何でわざわざこんな事に言及しているかと言うと……地の文の肉付けの為だな」
「身長って外見の第一印象に繋がるからそこまで不自然でもない気がするけどね」
「……隣に立ってる二階堂と比較するのは自然な流れとして、自分との比較って実はあんまりしないんじゃないかという気がしないでもない」
「……そこは深くは突っ込まないでおこうよ」
「そうだな。
あと、本章ではようやく『高校2年生』以外の攻略だ。まぁ、実は殆どのヒロインが高校2年生だから呪いでもなんでもないんだけどな。
『舞島の』まで入れた上で連続ドローするのは呪い以外の何物でもないが」
「いや、呪いではないんじゃないかな。偶然が起こっただけで」
……放課後……
『桂木君、ちょっといいかな?』
振り向くとそこには見覚えの無い女子が居た。
かのんと同じくらいの身長で、長い黒髪を束ねて左肩から前に出すサイドダウン、服は何故か制服ではないが、だらしないわけでもなくキッチリした服を着ており……
ん? もしかして、生徒じゃなくて教師か? 見覚えが無いが……
『……誰ですか?』
『……えっ? あの、桂木君? 本気で言ってる?』
『? はい』
「……私と初めて会った時の対応より微妙に丁寧だね」
「そんな妙な所で対抗意識を燃やすな。
単に教師っぽかったから一応敬語を使っただけだ」
「……桂馬くん、敬語なんて使えたんだ!!」
「そりゃ使う時は使うさ。相手が何者かも全く分からなかったしな。
下手な事言って突然スタンガンとか取り出されたら敵わん」
「あれ、もしかして私のせい……?
い、いや、スタンガンなんて大したものじゃないし!」
「はいはい」
……そして、翌日 1限目……
ドロドロドロドロ……
”おいっ、ふざけるなよ
”いや、私に言われても……”
僕の叫びが、メールボックス内に響き渡った。
「メールの表現が安定してないなぁ……」
「確かに鈎括弧の表記がブレてるね。まぁ、伝われば良いんじゃないかな」
「メモでも手元に置いて執筆すればこんなことにはならないんだろうが……そこまでこだわってないからなぁ」
『コラぁぁぁ!! ダレだ授業中にアラームを鳴らす奴は!!
ノーバディ・ハズ・テレフォン!!』
『えっ、あっ、ゴメンナサイ』
『せめて英語で謝れ! セイ、ソーリー!』
『そ、そーりー!』
『セイ! ヒゲソーリー!』
『ひ、ひげ? ソーリー……
あの、何の意味が?』
「何の意味があったんだろう。ホント」
「筆者も頭を抱えてたな。
児玉のキャラ付けとして、他の場面だと『性格の悪い教師』って感じだがここだけは偽物を疑うレベルでお茶目になっている」
「そ、そこまでかな? う~ん……」
「多分、原作者の若木先生がノリで言わせてみただけだとは思うが、どうなんだろうな」
英語教師の児玉がうるさいな。やれやれ。
ゲームを始めようか。3面同時攻略だ。
『あっ、おい桂木! 何をしている!! 授業中にゲームするなと何度言えば……』
『? 今は授業してないでしょう?』
『ぐぬぬぬぬ……授業をコンティニューする! お前ら、テキストブックを開け!』
「……桂馬くん」
「何だ?」
「この後にちひろさんも言ってた事だけど、これってわざと目立つようにゲームして先生の注意を引きつけてくれてたよね」
「……何が言いたい」
「別に~。ただ、ありがとね」
「……フン」
『あ、そうだちひろさん、お兄様にバンドのメンバーの事話しました?』
『ん~? メンバー? 特に話してないけど』
『やっぱりそうでしたか~。メンバーも揃ってきて軌道に乗り始めたんだから、メンバー紹介くらいはしても良いんじゃないですか?』
『あ~、それもそうだね。よし桂木、とくと聞きなさい!!』
「ちひろとの会話を続ける為にもお前が話を振ってくれて助かったんだが……もうちょっと何とかならなかったのかという気はするな」
「もうちょっと状況を把握してから伝えたかったんだよ。実害は無かったし」
「まあそうだが、そうなんだが……」
『次っ、ギター担当! 舞高の非誘導陸上ミサイル! 高原歩美っ!!』
『なっ、何っ!?』
『ドラム担当っ! 五位堂結っ!!』
『ゲホッ! ゲホゲホッ!!』
「…………お前のせいではないのは分かってるんだが、何か釈然としないな」
『な~か~が~わ~?』
『お、落ち着いて桂馬くん』
「あ、壁ドンされてる。いいな~」
「いや、自分の事だろ」
「映像の音声を気にしなければ、かつてない勢いで私に迫ってきてる桂馬くんにしか見えないね。
ねーねー、今度またやってよ!」
「断る!」
「む~、じゃあ私からやっちゃうよ!!」
「……逆パターンでも満足なのか。お前は」
「うん!」
「……僕もスタンガンを用意しておくべきだろうか」
『……何の情報も集まらない内からルートを決め打つことはできない。
ひとまずは……汎用的な手法でやってみようか』
『教師ルートではないんだね』
『下手したら攻略完了は卒業式とかになるが、それでもいいならな』
『……教育実習生の
『……ま、まあ避けるに越した事は無い。
互換フラグを用いて教師ルートの脱出を試みるぞ』
『互換フラグ……確か、恋愛に関係ない感情で埋めた後にそれを恋愛感情に変換する手法だったね』
『良く分かってるじゃないか。
先ほども述べたように、教師というのは『親しさ』の属性を元々持っている。
ここは『怒り』の感情で埋めるべきだ』
『怒り? ……あの人、そう簡単に怒るかな? トラウマを抉るくらいの事をしないと厳しいと思うけど?』
『? どういう意味だ?』
『そのまんまの意味だけど……例えば、どんな風に怒らせようとしてる?』
「……ん?」
「え、え~っと……桂馬くんったらホントドジだね~。まったくも~」
「そんなわざとらしい台詞で話題を逸らす必要は全く無い。
何で気付けなかったんだろうな、当時の僕は」
「う~ん……汎用的な手法だったからどこか別の場所で説明してると思ってたんじゃない?」
「そうかもしれんな。
……おっと、これってコメンタリーだった。
かのんが地味にボロを出してるわけだが、気付いたか?」
「『互換フラグ』っていうのは桂馬くんが私を攻略してる最中に教えてくれば言葉だったね。
『絶対に覚えていない』っていう場所ではないけど『覚えてたらやや不自然』くらいの場所かな?」
「他の場所で説明してるなら覚えていても……と言うより知っていても全く不自然ではないな。
ただ、筆者が描写した限りではかのんに『互換フラグ』について教えている箇所は攻略中を除けば0のはずだ」
「……ところで、桂馬くんが普通にドジだった件については?」
「……ノーコメント」
……長瀬先生の過去について調査中……
『……レアなエルシィさんの出番だね』
『こういう時に限って居ないんだなあいつ』
長瀬先生の『過去』の調査と、ついでにクラスでの評判とかの調査。
本命である1人の人間をピンポイントで狙った調査ならともかく、集団からの情報収集は私たち3人の中ではエルシィさんが一番上手いだろう。
「筆者の課したエルシィ縛りが効いてきてるな」
「エルシィさんの活躍できるシーンはこの後にもあるけど、これは果たしてエルシィさんを縛ったからこそ問題点が浮き彫りになったのか、それとも単にレアケースが頻発しただけなのか……」
「新作『もしエルシィすら居なかったら』を実際に執筆してみれば分かりそうだな。
多分単にレアケースだっただけだと思うが」
「羽衣さんならともかくエルシィさんだもんね……」
『お前が私の所に来るとはな、何の用だ?』
お、おかしいな。言葉自体はそこまで不自然じゃないけど何か雰囲気に刺を感じる。
エルシィさんは桂馬くんと違って二階堂先生の逆鱗に触れるような事はしてないはずなんだけど……
『どうした黙り込んで』
『あ、いえ、なんでもないです!
それで、え~っとですね……』
『……あいつに伝えろ。ゲーム機を返してほしければ妹に頼まずに自分で来いと』
『え?』
『ん? 違うのか? てっきりあいつに頼まれたのかと思ったが?』
『いえ、全然違います。お兄様とは関係ないですよ~』
『……お兄様、ねぇ』
「本編終了後の私たちでも実は知らない情報だけど……これって錯覚魔法効いてないよね?」
「過去編に関しては『原作と似たような流れがあった』という仮定で執筆を進めているらしい」
「ゲーム機云々の台詞は『二階堂先生』としてのカモフラージュ的な発言で、それ以外はドクロウさんの発言みたいだね。
嫉妬されてるね♪」
「嬉しそうに言うな」
『……部活』
『っ!?』
『長瀬先生の、当時所属していた部活を教えていただけませんか?』
『…………はぁ、桂木妹にしては鋭すぎるぞ』
『そうでしたか? まあそういう日もありますよ。きっと』
「これも遠回しな忠告かな?」
「あんまり頭が良すぎると正体がバレるという忠告。
あるいは、エルシィの変装してるクセに本気を出したお前に対する文句かもな」
「そんな事で文句言われても……」
『エルシィっていつ帰ってくるんだ?』
『えっと……確か次の月曜日だったはず』
『じゃ、攻略は待とう。緊急事態なら強制的に呼び戻してたが、長瀬の実習期間内なら無理に急ぐ必要は無いからな』
エルシィが居なくても何とかならなくもない気がするが、あいつの結界が無いと逃げられるリスクが跳ね上がる。
前にハクアがやらかしたような事は勘弁願いたい。
「この時はまだエルシィが駆け魂討伐に必要不可欠だとは気付いていなかったみたいだな」
「そうみたいだね。桂馬くんが気付いてなかったなら多分私も気付けてないよ」
「筆者視点では知ってて、その情報を頭に入れた上で執筆してるから違和感を感じた人は居るかもしれんな」
「歌を聞かせると駆け魂が暴れ回るっていう描写が……実は毎回カットされてるんだよね。
あのミネルヴァさんの結界だから『もうダメです! 結界が維持できません!!』みたいな場面も普通の駆け魂討伐では皆無だし」
「ハクア編での巨大結界は結構無理してたのかもな」
僕達はかのんのパソコンを使ってチケットを購入する事にした。
『ジャンボ鶴間とやらは残念ながら引退済みか』
『と言うか、故人みたいだね。でも、後継者っぽい人の試合が丁度今週末にあるみたい。
みたいだけど……』
『……前の方の良い席は全部埋まってるみたいだな。後ろの方なら何とか2席確保できるか』
『取れるけど……長瀬先生なら前の方の席を既に取ってそうだね』
『万が一取ってなかった場合が問題だ。金には余裕があるからチケット1枚余分に買うくらいどうという事は無いし』
『それじゃあチケット買おうか。えっと……ここをクリックして……あ、あれ? この後どうやるんだろう?』
『貸してみろ、一旦戻って……何? エラーだと? くそっ、どうなってる!』
『一旦ブラウザを閉じて……お、重い……』
『強制シャットダウンだ。いいか?』
『仕方ないね』
『よし、立ち上がった。それじゃあチケットを……あっ、売れてやがる!!』
『タッチの差だったんだ……他には無いの?』
『隣り同士の席は……いや、前後に繋がってる席ならまだあるな』
『よし、それにしようよ。今度こそ慎重に……』
「エルシィが活躍できてもおかしくない場面だな」
「原作では私のイベントとかに積極的に参加してるみたいだからこの手のチケットの手配はお手の物……だと思うけど……」
「本作だとおまえのおっかけじゃなくて替え玉だからな。本当に活躍できたのかは分からん」
「筆者さんとしてもちょっと迷ってたみたいだけど、きっとチケット手配の才能だけはあったんだろうと解釈しておいたらしいよ。
エルシィさんが手配するわけじゃないから意味は無いけどね」
「どんな才能だ……」
……週末 プロレスの試合当日……
『プロレスかぁ……桂馬くんはプロレスを見たことは……無いよね』
『当然だ。ゲームでもプロレスを題材にしたギャルゲーはあまり見ないな』
『じゃあこういう場所って桂馬くんも初めてなの?』
『そうだな……こういうスタジアム的な場所で観客に混じって騒ぐのは初めてだ。
って言うか、お前こそ経験無いのか?』
『私がプロレスの? 全然無いよ』
『いや、そういう事じゃなくて、他のアイドルのライブを見たりとか無かったのか?』
『う~ん…………全然無いね。ステージの上に立つ事や裏の方から見る事ならよくあるけど』
『……そうか』
「桂馬くんとデートだー!」
「それはさておき、かのんの過去の設定なんかは筆者の独断で適当に決めてるわけだが……原作者の想定としてはどうだったんだろうな?
ステージを見てアイドルに憧れた……とかの設定があってもおかしくはないが」
「うーん……当時の私の性格を考えるとそんな人が多い場所には行きたがらない気がするよ。
親に連れて行ってもらったとかなら有り得なくはないけど……それよりもテレビで見たとかの方が有り得そう」
「確かにな。
……で、真相は?」
「な、ナイショだよ!!」
『すいませーん』
『ん? 譲ちゃんどうした?』
『できれば、席を交換していただけないかなと。お
『あ~、なるほど。そこの席か。そんくらいなら構わんよ』
『ありがとうございます!』
「……おにいちゃん、ねぇ……」
「え? どうしたの? おにいちゃんって呼んで欲しいのおにいちゃん」
「何かゾワゾワするから止めてくれ!
と言うかアレだ。兄だったら結婚できないぞ?」
「従妹って設定なら結婚できるから大丈夫だよ。お
「確かにそうだが止めい!!」
※
解説するまでもないかもしれないけど、実の兄妹は結婚できません。
これは『3親等以内の血族とは結婚できない』という法律があるからです。
親等とは、簡単に言うと『どれだけ血の繋がりが近いか』を示す指標であり、自分の親と子は1親等、その1親等の人にとっての1親等の人は自分にとっては1+1で2親等となります。(自分自身は除く。強いて言うなら0親等かな)
自分自身の兄弟姉妹は『自分の親の子供』なので2親等。結婚できません。
まぁ、桂馬とかのんは血縁的には赤の他人なので全く関係無い話ですけどね。
『……客たちまで声を上げるのか。単なる歓声の声じゃなくて示し合わせたセリフだよな?』
『ちょっと驚いたけど、よく考えたら私も似たような事はさせてるかな。
ステージで歌ってる時に歌詞の最後の部分を言う前にお客さんたちの方にマイクを向けるとちゃんとその部分を歌ってくれるよ』
『そうか……こういう場では客たちすらも協力をする。
と言うより、舞台の上の演者が客すらも引き込んで一つの劇に仕立て上げるのか』
『う~ん、そういう見方もできるかもね。私は『協力してもらってる』っていう意識でやってるけど』
『だとしても、客に協力させられるのは、協力しようという気持ちにさせるのはお前の実力のおかげだろう』
『……ありがと』
「こういう議論を楽しませるのは筆者が意図的にやってるとの事だ」
「1つの物事を違う視点で意見する。そして相手の意見を受け入れて更に発展させていく。
……価値観の共有、か。何だか嬉しいな」
「この辺とか、前回の月夜編の話は筆者のプレイしたあるゲームの話に結構影響されてるかもな。
1人の人間が世界を見た所でその人間の価値観に依存した1つの世界しか見る事ができない。
しかし、他人と意見をぶつけ合わせて、その価値観を理解し、共有する事で今までとは違う世界が見えてくる。
世界は見える所までしかない。だから誰かと全力でぶつかって、境界線をブチ破って、世界を広げていく。それこそが、このセカイの今を全力で楽しむという事だ」
「う~ん、ある意味桂馬くんらしいような、そうでないような……」
「ただの受け売りだからな。それに、コレはあくまで考え方の1つでありコレが正しいと主張するつもりは無い」
「ぶつかって、確かめる。
桂馬くん。手加減なんてしないからね。全力でぶつかって桂馬くんを理解するよ」
「フッ、僕は逃げも隠れもしない。全力で来い!!」
「よし、じゃあスタンガンとスタンロッド構えて物理的な意味で全力で……」
「止めい!!」
※
DS及びスイッチにて発売されている『すばらしきこのせかい』より。
他人との関わりを拒絶する少年が主人公という意味では神のみと同じ。
タイトルに『せかい』って付いてるし、開発者は神のみのファンだな!(暴論)
『あ、桂木君! 来てくれてたんだね』
『……ゲームはどこでもできるんで』
『え、こんな時までゲームしてたの?』
「描写は省かれてるけど、この辺でもゲームはやってたんだよね……」
「七香との対局時は実はやってないくらいで、それ以外は手放した記憶は無いな」
「……今もやってるくらいだもんね」
桂馬くんが長瀬先生に見せているキャラは決して好意的なものではない。
だからこそ終盤で好意的に……なんていうのはドラマの中の世界だけだし、そもそもまだ終盤と言える時期じゃないだろう。
そういうわけだから桂馬くんから長瀬先生に好意的に話しかける展開は作りにくい。不可能ではないだろうけど。
話しかけて話題を提起し、桂馬くんを巻き込むのは私の役目だね。
『長瀬先生はプロレスが好きなんですよね? 私、こういうの初めてで、圧倒されました!』
『そう? それは良かった。折角来たんだから楽しめなくっちゃね』
『はい! 桂馬くんも何だかんだ言って楽しんでたみたいですよ』
『お、おいっ!』
『そうなの!? 桂木君もプロレスの魅力を分かってくれたんだね!!』
『ぐっ、す、凄いなとは思ったよ』
「何か都合良くいい感じのパスが来ると思っていたが、しっかり計算尽くでやってたんだな」
「トーゼンだよ! 許嫁の力を舐めちゃいけないよ!」
「……僕に対する理解度がかなり高いのも伏線の一種なのか?
恋愛の記憶があったからこそ必死に理解しようとしてたっていう」
「記憶が無くたってこれくらいはできた……と思うけどちょっと自信が無いかな」
「つまり伏線なのか」
「……いや、桂馬くんのスペックを考えると攻略の記憶が無かったとしても普通に恋愛しそう。
ここまで理解を進めているのに露骨に恋愛する素振りを見せない事の方が伏線になってる気がするよ」
「…………そういう考え方もあるのか」
『とうとう私の出番ですね!! 真の地獄から生きて帰ってきた私に死角はありません!!!』
『あー。よろしくたのむぞー』
「自称悪魔が真の地獄とか言い出した件について」
「岡田さん主催の強化合宿の事だっけ? 明らかに人間界なんだけど……」
「エルシィ縛りで進めた本章だが、最後は必要だからこうして出てきてもらった。
タイミングが良いのは……ご都合主義だな」
朝のホームルームの時間、純はクラスの皆に対して一つの提案……いや、宣言を行った。
『ちょっ、先生本気!?』
『うん、勿論!
今度開かれる舞島マラソン、皆で参加しましょう!!』
これだけなら、ただの提案で済む。
こういうのに興味がある人が……例えば歩美とか? だけが参加するかもしれないだけだ。
だが、それだけで済むほど奴は大人しい性格じゃない。
『もう皆の分も申し込んでおいたからね♪』
『ちょ、待てい!!』
『強制かよ!!!』
「これってフルマラソンなのかな、ハーフなのかな? それとも適当な長さだったのかな?」
「ん~、原作の絵にはそこまで詳しい事は書かれていないな。
せいぜいひやしあめが飲み放題ってくらいで」
「……走る前に飲んだらお腹がタプタプになりそうだし、走った後だとそんなに飲めない気がする。
これの主催者って実はかなりケチ?」
「いやいや、ひやしあめ目当てで走る奴なんてごく少数だろう。参加人数がどれだけかは知らんが1人1杯だとしてもそこそこの出費になるし」
『わ~、神様! ひやしあめ飲み放題って書いてありますよ! 何か美味しそうですね!!』
「……何故だかマラソンが終わっても平気そうにしてる光景しかイメージできない」
「多少息を切らしてそうだが、それでも平然と冷やし飴をガブ飲みしてそうだな」
「エルシィさんは大食いってイメージは無いけど……主催者さんが赤字になるのは凄く良く理解できたよ」
『まったく、長瀬もよくやるよな。
お前らみたいなバグだらけの連中、何しても無駄なのにサ』
『あン? 何だオタメガ!? 今なんつった!!』
『エラソーな事言えんのか! このクレイジーゲーマーが!!』
『事実を言っただけだ。お前らの相手をするくらいなら無限ループのバグゲーをやってた方がまだ楽だっていう話だよっと』
「この後、原作ではエルシィの羽衣人形による変わり身の術で教室を抜け出すわけだが……本作のエルシィにはそんな事はできないから別の方法で脱出した」
「紙飛行機を明後日の方向に飛ばして、そっちに意識を向けてから脱出……か。ミスディレクションっていうヤツだね!」
「僕を引きずり倒してでも止めるような意志がクラスの連中にあればこんな小細工じゃ脱出できなかっただろうが、わざわざそんな事をする血の気の多い奴はそう居ない。
ぶっちゃけ小細工なんてしなくても脱出自体は不可能ではなかったはずだ」
「じゃあ何でわざわざそんな事を……」
「脱出が可能ってだけであって、完全に振り切れる自信は無かったからな」
『あれっ、どこに行きやがった!! 捜せ!!』
『いや、放っとこうよ。べつにいいでしょ』
「実はこの2つ目の台詞ってちひろさんなんだよね」
「その台詞の解説をする文は当時も一応用意したが、明確にこの台詞を示していた訳ではないし、次話でやってるから日付を跨いでいるんで非常に分かり辛い箇所だったな。
まぁ、意図的に分かり辛くしてたわけだが」
「気付いた人はちょっと楽しめた……かも」
……女バス部室跡にて……
「ここから先の桂馬くんと長瀬先生の問答は今回の攻略における核になる部分だね。
ぶっちゃけこの問答さえあれば他のイベントはほぼスルーできるね」
「心のスキマの原因さえ分かってしまえば後は簡単……ではない攻略も結構あったが……
今回のケースは結構楽な方だったな」
「理想……か。
長瀬先生はこの後どんな教師になるんだろうね」
「さぁなぁ……ただ、平凡な教師として終わる事は無いだろうな。
大成功するか、あるいは大失敗するかのどちらかだろう」
「大失敗の可能性が視野に入ってるんだね……何というか夢が無いというか、現実的と言うか……」
……攻略完了直後 桂馬のモノローグ……
こんな都合の良いタイミングでクラスの連中が偶然来るなんて有り得ない。だから事前に仕込みをしておいた。
まあ、仕込みと言っても大した事じゃない。僕が教室を出た時点からエルシィに500秒ほど数えさせ、その後エルシィにクラスの連中を連れてこさせただけだ。
あの天然なポンコツ悪魔はクラスのアイドル……とまでは言わずともマスコットみたいな感じで人気者だ。そのエルシィが『長瀬先生を呼び戻しにいこう』と提案すれば必ず何人かは同調する。主にちひろとか歩美とか、ちひろとかだな。
純に恨みがある生徒なんてそうそう居ないし、マラソンの強制参加の件も僕がより強い怒りで埋めて引きつけたから気にする奴はあまり居ない。自然と迎えに行こうという雰囲気で覆い尽くされ、反発する奴が仮に居たとしても少数派なんで封殺される。
「桂馬くん、地味に黒い事考えてるね。
同調圧力で少数派を封殺するとか」
「僕だったらエルシィに呼びかけられた所でわざわざ行かないしな。
あと、問答で『理想』を語ったからこそこういう『現実』をサラッと混ぜてみたらしい」
「う~ん……でも、あの時来たクラスの人達って普通に自分の意志で来たんじゃないかな。
長瀬先生ってやらかした部分もあったけど、それでもクラスの皆に対しては真摯に対応してたし」
「……そこは分からんな。まぁ、可能性までは否定はしない」
……攻略後 かのんちゃん登校時……
『おはようございます、長瀬先生』
『あ、は、はい……え、えっ!?
ど、どどどどういう事ですか二階堂先輩!!」
『いつもは来ないうちのクラスの生徒の1人だ』
『せ、生徒!? かのんちゃんが!? えええええっっ!?
先輩っ! どうして黙ってたんですか!!』
『まさか来るとは思ってなかったからな。
と言うか、何で来たんだ?』
『え? ダメでしたか?』
『そういうわけではないが……純粋な疑問だ』
『大した理由じゃないですよ。今日で教育実習の最終日だと聞いていたので、挨拶だけでもしておこうかと思いまして』
『ど、どうも。これはご丁寧に……』
『おい長瀬、生徒に敬語使ってどうする』
『す、すいません』
「筆者さんがニコニコしながら書いてた部分だね」
「……よく考えてみると長瀬なら写真付きのクラス名簿くらい普通に持ってそうだな。全員の名前を丸暗記してたっぽいし。
大した問題ではないが、地味な矛盾だな」
「う~ん……まあいいんじゃない? 実害は無いし」
「そうだな。
ところで、この場面では二階堂がシレッと出てきてお前に質問してるが……これって『何で(その姿で)来たんだ』って意味だったんだな」
「二階堂先生に錯覚魔法が効かないのは原作設定だっけ?」
「ん~、原作で見抜いてるっぽい描写はあるが、単に正体を知ってただけで魔法自体は効いてた可能性も十分にある。
原作をベースに練った本作の独自設定だな。
本作では錯覚魔法はエルシィやハクアではなくドクロウ室長がかけたものだから効いてないってのもあるが」
「本人には効かないってコトだね」
「そろそろ時間のようだな」
「理想かぁ……桂馬くんも相当理想が高い方だよね。
私は、桂馬くんの理想の許嫁になれてるかな?」
「フン、そんなの必要ない。
お前はお前だ。別の何かになる必要は全く無い」
「…………」
「ん? どうした」
「え、えっと、その……突然そんな嬉しい事言われたから。
もう! 桂馬くんったらそういう事はちゃんと段取りを踏んで言ってよ!
あ、そうだ! もう一回言って!!」
「……そのボイスレコーダーをしまったら考えてやろう」
「そんな薄情な!
……はい、しまったよ」
「考えた結果、言わない事にした。
だって、電源は切ってないだろ?」
「桂馬くんのイジワル! ヘタレ!!」
「はいはい。そろそろ〆るぞ」
「うぅぅ……今度からボイレコの電源は入れっぱなしにしとこう」
「そういう事すると僕は喋らなくなるんだが……」
「……分かった。録音は諦めるよ」ピッ
「さて来週は……日常回Aと……Cだな」
「C? ……確かにCだね。
「そんなこじつけしたらAとBは何なんだって話になるけどな。
え~、次回は『神の休日、姫の平日』『小阪ちひろの野望』の2本立てだ。
ただ、場合によっては更にその次の期末テストの話もやるかもな」
「分量次第……かな?
それでは、また来週!」