「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!
第15回キャラコメンタリー始めます!」
「今回は2本立ての予定だ。
まず1本目は日常回A、つまりかのん編だな」
「3枚も入ってたはずなのにあまりにも引かないから強制ドローしたみたいだね」
「内容としては……僕とかのんがニアミスしまくる話だな」
「それでは、VTRスタート!」
純の攻略を終えた次の週末。僕は1人で電車に乗っていた。
目的地は舞島市の隣の鳴沢市、その目的は2つ。
1つはゲームショップを巡って掘り出し物が入荷していないかを探る事だ。流石の僕でも入手ができなかった過去に少数だけ販売された隠れた名作や、販売数が限定されすぎていた代物などがたまに紛れ込んでいる事があるからな。こういう定期的なチェックは欠かせない。
もう1つは……まあ、あくまでついでだが、かのんのコンサートを見に行く事だ。かなり見通しが悪いが、それ故に売れ残って席があったのでPFPからネットに繋いで購入しておいた。この前のプロレスの時みたいに場の雰囲気を感じ取るだけならこんな席でも十分だろう。
コンサートが開かれるのは夕方頃だが、現在時刻は9時過ぎだ。のんびりとショップを見て回ろう。
「桂馬くんがモノローグでツンデレしてる」
「どこがだ。僕は事実を言って……じゃなくて思ってるだけだ」
「だって、私のコンサートの事はあくまでもついでって言ってるじゃん。
ここまで露骨に言われると逆に怪しいよ」
「じゃあどういう言い方なら自然なんだ?」
「え? う~ん……さぁ?」
「……どんな言い方をしても何かしら言われそうだな」
……最初の店……
『あ、かのんちゃんだ!』
『こんな所でイベントやってたのか! よし、俺も並ぼう!』
(前略)
仕方ない。正面からササッと入ってしまおう。入ってしまえば気付かれる事はあるまい。
いざ!
『ん?』
「お前がこっちを向いた瞬間に隠れたつもりだったんだがな……」
「桂馬くんから見えてるって事は私からも見える位置に居たって事だからね。
あとは桂馬くんの反応速度と、私の動体視力との勝負になるね」
「……で、お前が勝ったと」
「そういう事だね」
……次の店……
『フフフ、フハハハハ!! 今日はなんて良い日なんだ!!』
次に向かったゲームの専門店、そこでは素晴らしい出会いがあった。
かつて、ヒロインの1人に問題があるとされて発売日当日に回収騒ぎに遭い、後に出された修正版ではそのヒロインは削除されていたというゲーム『らぶ・てぃあ~ず』。その修正を免れた初回版(特典CD付き)が今この僕の手に!!
そして……ワゴンセールの一番下、そこに隠されていたのは古き時代の隠れた名作……『西恩灯籠』!! この世のものとは思えないような体験ができると噂され、すぐに回収され処分されたと言われていた曰く付きの逸品、そのオリジナルロットが、今僕の目の前にある!
ゆっくりと、噛み締めるように、僕はそのパッケージを手に取り……
『こんにちはー!』
『いらっしゃいませーって、かのんちゃん!?』
「……桂馬くんが逃げた先で偶然出会う……
これが運命ってやつだね!!」
「嫌な運命だな……
一応訊くが、僕を追ってきたわけじゃないんだよな?」
「うん。純然たる偶然だよ」
「…………はぁ。
さて、解説しておくか。『らぶ・てぃあ~ず』も『西恩灯籠』も一応原作に出てきた作品だ。
まぁ『西恩灯籠』の方は小説版からのものなんで原作では無いが」
「公式に出てきた作品って言い方なら大丈夫そうだね」
「そうだな。モノローグで丁寧に説明しているように、どちらも非常にレアだ。
……しかし、普通のギャルゲである『らぶ・てぃあ~ず』はまだしも『西恩灯籠』は何でこんな所で売ってたんだろうな」
「……筆者さんの遊びの結果だね。
でもまあ良かったんじゃない? そんなレアものが買えて」
「……いや、買えなかったんだよ」
『ん? コレだ。気に入った』
『えっ、そんな不気味なのを買うんですか……?』
『おいおい、見た目で物事を判断してはいけないぞ?』
『そうかもしれませんけどねぇ……』
『ククク、僕の直感は外れたことが無いんだ。レジに行くぞ姫っち』
『ああもう、後悔しても知りませんよ?』
「この中二病とピンク髪のバカップルのせいでな!!」
「どこかで見たことがあるような……あるような……」
「……さて、ここに筆者からのメモがあるんで広げるとしよう」
※ 『西恩灯籠』をかっさらって行った人とその候補者について。
分かる人はすぐ分かったと思いますが、このヒト達は前作のオリ主とヒロインである『
このヒト達ならあのゲームをプレイしても死ぬことは無いでしょう。きっと。
他の候補者としては以下の通り
許嫁系理論派メイド
『なのは洋菓子店のいい仕事』より『言葉・S・サリンジャー』
哲学するねじの人
『ねじの人々』より『根地大和』
候補ですらない人は以下の通り
完璧で洒落なメイドの人
『東方シリーズ』より『十六夜咲耶』(メイド繋がり)
学校生活な感じの人
『School Days』より『桂言葉』(名前繋がり)
木葉にて最強な感じの人
『NARUTO』より『日向ネジ』(名前繋がり)
混沌より這い寄る過負荷の人
『めだかボックス』より『球磨川禊』(ネジが武器の人)
「……筆者さん、こういう所だと全力で遊んでるね」
「候補の連中だと普通に死ねるが、候補ですら無い連中なら悪霊なんて普通に撃退しそうなんだよな……」
「あの、約1名ほどただの平凡な女子高生が混ざってる気がするんですけど……」
「……自力で魔力生成できそうなくらいの怨念を持ってるし、大丈夫だろう。きっと」
「えぇぇ……?」
※
桂言葉さんは完全な一般人のはずなのに何故か悪霊くらいなら撃退しそうなイメージがある。
冷静に考えると流石に厳しいかなぁ……
なお、余談だが彼女は声だけだが神のみ原作に出演している。第3話に彼女のものと思しき声がある。
……昼食時……
昼食時なだけあって店内は混み合っていた。
一番安いハンバーガーを数個注文する事を決めて列に並び、ゲームしながら待つ。
早く席に座りたいな。立ったままだとPFPを落とすリスクがあるから2面同時攻略ができない。
ようやくハンバーガーを受け取り、適当な空いてる席を捜す。
店も混んでいるし、サッサと食べてサッサと出よう。
そう考えながら席に座った時だった。
『あ、かのんちゃんだ!』
『こんな店にあのかのんちゃんが!?』
「……本っ当に仕組んでないんだよな?」
「う、うん。この辺の予定とかも遅くとも前日より前に決まってた事だよ」
「……運命……いや、呪いかな」
「あ、でも、ここだけは桂馬くんの存在に気付けなかったよ」
「視線が通る位置には居なかったからな」
『すいませーん。新発売のスーパービッグチキン&ビーフ&エッグバーガー鳴沢風味を一つ下さい!』
『ご注文を繰り返します。スーパービッグチキン&ビーフ&エッグバーガー鳴沢風味を1点ですね?』
『はいっ!』
「……ところで、コレって美味いのか?」
「まぁまぁだったよ。気になるなら今度一緒に食べに行こう!」
「……ゲームショップ巡りのついででいいならな」
「言質は取ったよ! 約束だからね!」
……更に次の店……
『お、かのんちゃんのCD配布だ! 午前中に別の所でもやってたよな』
『よっし、もう一度並ぶぜぇ!!』
また、お前かっ!! 働きすぎだろ!!
一体今日だけで何回遭遇しているんだ!? 4回目だよチクショウっ!!
だが問題ない。しばらくここに居るというならまた別のゲーム屋へと……ん?
ショップの外からでも良く見えるように陳列されたゲーム達。
その中で一つ……見えた。
アレは、『星の瞳のジュリエット 初回版A』っ!!
先ほど購入した『らぶ・てぃあ~ず 初回版(特典CD付き)』よりレア度は少々下がるが、十分にレアな逸品だ。当然、買いだ。
だがしかし、そうなると入り口近くのかのんが邪魔……って、何回目だよこの展開は!! 遭遇は4回目で実際に待ったのは3回目だよ!!
まぁ、午前の部はそんなに時間がかかってなかったようだし、すぐに終わるだろう。
「コレも原作に出てきた作品だな。
……流石にそろそろネタ切れになりそうだな」
「ゲーム自体は沢山あっても名前がちゃんと出てきてるゲームは以外と少ない?」
「そうだな。あのよっきゅんの出てくるゲームもアニメ版でようやくタイトルが明かされたくらいだしな」
「そう言えば、本作でも名前は出てきてないね……」
「……さて、『星の瞳のジュリエット 初回版A』についてだな。
原作を読み込んでいる方であればすぐにある事実に思い至れるはずだ。
『もう既に持っている』という事に」
「えっ、そうなの!?」
「件のタイトルが出てきたのは夏休み直後の地震で割れてしまったソフトを補充する時の事だ。
まだ割れてしまっていないのだから当然家にある」
「……じゃあ何でわざわざ買おうとしてるの……?」
「そんなの決まっているだろう。良いゲームは何本あってもいいものだからだ!!
これはアニメ版2期の台詞だったな」
「…………どうしよう。時々桂馬くんが分からなくなる」
……そして数時間後……
『ふむ、これは攻略サイト『落とし神』でも絶賛されていたレア物ですね。セージさんとの恋愛成就計画の為の恋愛経験値になってもらいましょう。
買いです』
「で、また横から持っていかれた……と」
「……ああ。
ああ、今度こそ許嫁系理論派メイドだ。
時系列は特に考えてないが、『セージさん』と呼んでいるから原作前という事は多分無い。原作後だな」
「ある意味私の師匠みたいな人だね。今度会えたら許嫁としての秘訣を教えてもらおう!」
「いや、あいつ結局成功してない気が……まあいいか」
……コンサート会場前……
『おや、見ない顔だね。ここに来るのは初めてかい?』
『ん?
後援……会?』
『おや、名乗り忘れていたね。申し訳ない。
儂はかのん後援会の会長をやらせてもらっている者だよ。
と言っても、ファンの皆に『雰囲気がそれっぽいから』と祭り上げられただけで、大した事はやっていないがね』
「そう言えば会長さんと話してたね」
「ん? 知ってたのか?」
「うん。画面には映ってないけど、この場面は見てたよ」
「そうだったのか!?」
「そりゃそうだよ。そうじゃなかったら曲の差し替えなんて間に合わないし」
「……ん? そっちも初耳だぞ? どういう事だ?」
「あ~、そっかそっか。気付いてなかったんだね。
……もうちょっと後で解説しよっか」
『まあ、そうですね。何か問題でも?』
『問題……問題と言えば問題だね。
慣れていない人はこういう場所での楽しみ方が分からなくて楽しめないままに帰ってしまう事がたまにあるのだよ。
だからもしかしたらレクチャーが必要かと思ってね』
「ありがたい話だよ。変にプライドの高いファンとかだと逆に新参者に風当たりが強いらしいからね」
「嫌な話だな……」
「私のファン達があまり問題を起こさないでいてくれてるのはこういう人が上に立ってるからなのかな」
「そういう奴を味方に付けたお前の成果……とも言えるな」
……ライブ中……
『ワン、トゥ、スリ、フォー ワン、トゥ、スリ、フォー
ワン! トゥッ! ワントゥスリーフォー!!』
『この曲は『ダーリンベイビ』だのう。割と新しめの曲だのう』
『ふーん』
「この辺は流石に『歌詞』ではないと判断して遠慮なく載せたようだ」
「って言うか桂馬くん、こんな隅っこに居たんだね。
通りで探しても気付けなかったわけだよ……」
「この時は見つかってなかったのか。なるほど」
『しかし、気になるのう』
『? 何か問題でも?』
『順番的には今回のライブは『らぶこーる』から始まるはずだが……
まあ、事前に明言されているわけではないから問題と言う程の事でもないがのう』
『って言うか開幕の歌の順番の不文律まで存在するのか……』
『不文律というほど立派なものでもないがのう』
「あ、そうそうこれこれ。私が無理言って直前に差し替えてもらったんだよ」
「そうだったのか!? 何でまたそんな事を……」
「何となく、桂馬くんにはまだ聞かせたくなかったんだよ。
この歌、『らぶこーる』は私の攻略の最後に歌った歌だから。
私が胸を張って桂馬くんに告白できるようになるまで、歌いたくはなかったんだよ」
「まぁ、理解できないでもないな。
……今度、時間がある時にでも聞かせてくれ」
「えっ? うん、いいけど……珍しいね。桂馬くんから言うなんて」
「別に。ただ……あの時聞き損ねた分を聞かせてもらうだけだ。あの隅っこの席でもチケットはタダじゃなかったんでな」
「う~ん……分かった。それじゃあ今度、最っ高の環境で聞かせてあげるよ!」
『……良いコンサートだな』
『少年よ、この良さが分かるか。
最前列は更に凄いぞ。機会があれば行く事をオススメするぞ?』
『……いや、遠慮しておこう。
ファンでもない僕があそこに混ざる気にはなれない』
『ファンではない? すると何故君はここに来たのかね?』
『あいつを……かのんのここでの姿を見ておきたかった。それだけだ』
『ふむ……君にとって彼女は一体どういう存在なのだね?
ただの知り合い? 親戚? それとも……』
『……相棒、かな。とても信用できる、な』
『……何やらただならぬ事情があるようだのう。深くは訊かんでおこう。
今は、このコンサートを楽しもうではないか』
『そうだな。チケット代金分くらいは回収させてもらおうか』
『その意気だな。ほれ、周りに合わせてサイリウムを振りなさい』
「『相棒』という言葉はここが初出だな」
「この時点で筆者さんは恋愛ルートは諦めて許嫁ルートに進んでるっぽいね」
「いや、決断したのは天理編を終えた後だった気がするが……視野に入れてるのは確かだな。
信頼ルートに入った後でもその気になれば互換フラグでいくらでも恋愛に変えられるしな」
「え? それだったら今からでも恋愛ルートに入れる?」
「いや、ムリじゃないか? これだけ恋愛アピールしてるんだから、そこから更に互換フラグになるレベルの衝撃を与えるのは難しいだろ」
「うぐぅっ……しょうがない。今まで通り地道に頑張るよ」
「おっと、ここで終わりか」
「そうみたいだね。それじゃあ次いってみよ~。
日常回C『小阪ちひろの野望』!
あのちひろさんが主人公の話だよ!」
「時期としてはちひろ編の直後らしい。
では、VTRスタートだ」
私は女子高生である。名前は小阪ちひろ。
……何となく文学少女っぽく始めてみたけどここまでしか分からないや。まあいいか。
「こんなアホな事考えてたのかあいつは」
「没個性とか言われてるちひろさんだからこその発言……なのかな?」
桂木の奴に何かこう、見返してやるんだ! って宣言したわけだけどさ。どうしようかな。
歩美みたいに陸上……はまず無理だね。一応元陸上部だけど、今からやり直して歩美に勝てる気がしない。
そもそも2年のこの時期に何かの部活に参加するのもなぁ……『頑張る』事はできても中途半端な所で終わっちゃいそうだ。
なら部活に入らず、例えばかのんちゃんみたいにアイドル活動しろってのも無理があるよね。アイドルなんて成りたくて成れるものでもあるまいし。
う~ん、でも音楽関係ってのは面白いかも。
個人か、身内数人でやるならバンドかな? 少し調べてみようか。
「微妙に記憶がある事が伺えるね」
「原作でのあいつはどういう意識でバンドを始めたんだろうな。僕を意識しては……いなかった気がするな」
「そうだね。攻略の核になる重要な部分は多分全部忘れてたよね」
『おっすエリー! バンドやろうぜ!』
『え? ばんどですか? ばんどってなんですか?』
『おい、そっからか……いいかエリー、バンドってのはな……』
「軽音部は知ってたのにバンドは知らなかったんだよな……」
「……エルシィさんだからね」
「しかし、ちひろのこの選択はどうなんだ?
もっとマシなのがいくらでも居ただろうに」
「う~ん、ちひろさんとしても真剣に音楽を極めようとしてたわけじゃないからね。
いい加減にやろうとしてたわけじゃないけど、程々に楽しめるようにムードメーカーのエルシィさんを入れたんじゃないかな」
「……そういう効果に期待できる事は否定しないが、果たしてあいつがそこまで考えていたのだろうか?」
「え、う~ん……」
『……京~、バンドやらん?』
『えっ、私が? どうして私に?』
『何か京なら上手くやってくれそうかな~って』
『う~ん、まあいいけど……私、陸上部の活動と塾もあるからあんまり時間取れないかもよ?』
『ん~、ま、いいよ。そんじゃあ宜しく頼むね』
「京さん、何気に初登場?」
「……いや、歩美編で少しだけ出てきているようだな。
しかしまぁ原作者もよくこんなチョイ役を覚えてたな」
「作者なんだからチョイ役であっても忘れるって事はほぼ無いんじゃない?」
「……そんなもんか」
『歩美~、ドラムやら……』
『キャー!』
どごぉぉん……
「最初は歩美がドラム担当の予定だったのか……」
「曲が一瞬で終わるっていうのは流石に言いすぎだけど……適任とは言えなそうだね」
「なにはともあれ、これで初期メンバー4名が揃ったと」
「結さんは後からだったね」
……数日後……
『ではこれより、2B PENCILSの第一回目の会議を始めたい』
『わ~ぱちぱち~』
『いや、あの、どういうノリ……?』
(……パート分け中……)
『ちょっと待ってください!! ちひろさんばかりズルいです! 私も歌いたいです!!』
『エリー、あんた歌なんて歌えるの?』
『勿論です! 見ていて……じゃなかった。聴いてください!!』
「原作ではパート分けとかで色々と揉めていたようだが、本作ではサクサク進んでいくな。
せいぜいエルシィが文句言ったくらいで」
「特に理由があるわけじゃなくて単純に面倒だったからみたいだね」
「それでもエルシィだけは残したようだな。原作ならまだしも本作では確実にボーカルに立候補するだろうし、そして伏線の仕込みにも使える」
「? どういう事?」
「こういう事だ」
……偽アイドル歌唱後……
『……却下で』
『どうしてですか!?』
『だって……それってかのんちゃんの歌じゃん!!
何かパクリっぽくて嫌だ』
『えええええっ!?』
『私もちひろに賛成かな……全然知らないアイドルの歌ならともかく、一応クラスメイトの歌だからね』
『別の歌は歌えないの?』
『うぅぅ……えっと……この歌しか自信無いです』
『よし、んじゃあ私がボーカルって事で!』
『し、仕方ないですね。ま、まあ譲ってあげなくもないですよ!』
「この中に伏線?
…………ああっ!!」
「ちゃんと覚えていてくれていたようだな」
「う、うん……エルシィさんって、私の歌以外の歌もちゃんと歌えるよね。
レベル3を弱めた時とか、はぐれ魂を倒した時とか。
これは……意図的に隠してるって事でいいんだよね?」
「そういう事だな。あのエルシィが自重してしっかり隠すほどのものだと判断できるな。
……まぁ、アレがドクロウ室長も絡んでいる非常に重要なものだというのは結構前から分かってはいた事だけどな」
……数日後……
『おうお前ら! 準備はいいか!』
『いえ~い!!』
『お~!!』
『テンション高いなぁ……』
「順調に頑張ってるみたいだね。音はヒドいけど」
「辛辣だな」
「音楽に関して妥協する気は無いよ!
始めたばっかりだから仕方ないんだけど、率直に言ってヒドいね」
「そりゃそうだな」
『う~ん、どこかに音楽にある程度詳しくてドラムの経験豊富で私たちに協力してくれるような部活にも入ってない暇人って居ないかなぁ』
『ちひろ~、そんなの居る訳ないでしょ~』
『流石に部活に入らずに暇してる人なんてねぇ』
『だよね~。言ってみただけで……』
『……あ!!』
「エルシィてめぇ!!」
「まぁ、うん。攻略した子となるべく距離を置いておきたいっていうのは私たちのわがままみたいな面も無くはないけど……
……なんだかなぁ……」
「理屈ではまぁ分かってはいるんだが……ああくそっ!」
『エリー、例の人物はどいつだ?』
『え~っと、あの人です!』
『え、エリー、何か凄く良い所のお嬢様っぽい雰囲気があるんだけど……』
『え? 私がですか? いや~照れちゃうな~』
『違うよ! 五位堂さんの事だよ!!』
『え? そりゃそうですよ。良い所のお嬢様ですから』
「ミネルヴァさんは天界ではそこそこ地位が高いんだっけ?
もしそうならお嬢様という表現もあながち間違いではないような……」
「流石にこじつけじゃないか? 血統で選ばれているわけでもないみたいだし」
「う~ん、確かに」
「それはさておき、攻略後の結が出てくるのはここが初だったな。
原作と同様の男装女子ではなくお嬢様として出てきたわけだが、筆者にしてはそんなに迷わずにサクッと決めたらしい」
「あれ? いつもは『直前まで迷ってた』とかって解説が入るのに」
「当時も言った事だが、レベル2の駆け魂の力でそんな後遺症が残るわけがないだろうという判断だな。
お嬢様バージョンの結を上手く描けるかという不安はあったようだが……その不安が杞憂だったのかどうかは読者の皆さんの判断に委ねるとしよう」
『あの~、五位堂さん……ですよね?』
『あら? 私に何か御用ですか?』
「この場面、当時のちひろもモノローグで説明しているが、結の一人称は『わたし』ではなく『わたくし』だ」
「細かいね……」
「箱入り娘のお嬢様で、親しいクラスの友達も美生を除いて皆無だろうから可能な限り堅苦しい口調にしたかったらしい。
ただ、それは本章のみの話で、バンドに入ってちひろ達との交流が進むと一般人っぽい口調に移行している。ある程度はお嬢様らしさが残ってるが」
『あの、えっと……ドラムが上手いって聞いたんですけど……もしよかったらウチらのバンドで一緒に活動してもらえないかな~なんて』
『バンド、ですか?』
『そそ。ウチらのバンド、今ドラムが欠けててさ。いい人が居ないかなって』
『ふむ……それでしたら、一つだけ注文させて頂けないでしょうか?』
『な、何?』
『貴女方の生の演奏を一度で良いので見させていただきたいのです。その様子を見て参加するか決めさせて頂きます』
『むぐっ……』
「結の奴、こんな条件出してたのか。原作だとサクッと入ってたのにな」
「原作だと実際に一緒にバンドしてたからね。マルスさんの宿主だったんだから朧げに記憶に残っててもおかしくないし」
「確かにな。まぁ、普通に考えて実態の分からない部活に軽々と入る事はしないだろうな。
体験入部ですぐ辞めるなら話は別だが」
「演奏を聞かせてもらうっていうのが体験入部みたいなものだね」
「だな」
『わ、分かった。いいよ。
但し、準備とかがあるから1週間後で良い?』
『ええ。宜しくお願いしますね』
とりあえず、自然な流れで1週間の時間を貰った。
……特訓するか。そうしよう。
「たった1週間で何か変わるのか……という疑問は野暮か」
「目標があれば頑張れると思うよ。
バンドの今後もかかってるわけだし」
「……かもな」
そうして……私たちは特訓を始めた。
『わ~、お財布落としちゃいました! お金が足りないです!』
『チィッ、ならば仕方ない。T資金を出そう!』
『何ですかそれ?』
『私の貯金だ! 受けとれいっ!』
『あ、後で必ずお返しします』
時にはトラブルに見まわれ……
「おいおい、何やってるんだ」
「T資金……
「筆者の意図としてはそうだな。
ただ、今にして思えばchihiro資金の方が良かったんじゃないだろうか」
「桂馬くんだってK資金じゃなくてM資金だし大丈夫じゃない?
意味が全然違うけど……あれ? そもそもM資金って何?」
「M資金はM資金だ」
「……そっか」
『よし、しーるど、こんどこそ繋ぎましたよ!!』
『今度こそ録音できるな。やってくれ京っ!』
『そんな派手な動作でも無いんだけどな……』
『よっし、演奏終了!』
『録音できたよ~』
『は~い。じゃあこのしーるどを片付けちゃいますね~』
『あ、ちょっと待ったエリー!』
ギィィィン!
『あわわ~!!』
『あ、アンプから抜く時は、アンプの音量下げてからね……』
時にはトラブルに見まわれ……
「これは『けいおん!』からのネタだな。
唯が同じような失敗をやっている。
唯はギターで、エルシィはベースだが……まぁ、さして違いは無いだろう。きっと」
「初心者がやっちゃいそうなありがちなミスではあるんだけど……
……他の人が対処法をしっかり知ってるって事は1回目ではなさそうだね」
♪録音の再生中♪
『ん~、大分マシにはなってきた?』
『そうだけど……何か違和感があるような……?』
『……ベースの音、ちょっと変じゃない?』
『あれ? ホントだ。エリー、ちょっとベース見せて』
『はい、どうぞ!』
『……弦がダルンダルンになっとるやん!!
何やってんの!?』
『え? えっと、指が切れちゃいそうで怖かったので緩く……』
『そんな物騒な弦なんて使ってないから!! あと、緩くすると音が変わっちゃうの!!
今すぐ戻しなさい!!』
『す、すいません~!』
時には、トラブルに見舞われた。
「さっきからトラブルしか起こってない!!」
「しかも全て原因はエルシィだな……」
「結さんが最終的にバンドに入ってくれたのは知ってるけど、過程は詳しくないんだよね。
大丈夫なのかなぁ……」
……1週間後……
『へぇお嬢様、こちらでございます』
『あの、そんなに身構えなくてもいいですよ?』
『こっ、これがお嬢様のオーラ! 私たち庶民とは格が違うっ!』
『お、おおおお落ち着きましょう歩美さささん!! の、ののの飲まれてはだだめですす!!』
『お前が落ち着け、エリー』
『今はアホっぽいけど、真面目にやるときはちゃんとやるはずなんで、まあよろしく』
『ふふふ、個性的で良いではありませんか』
「何で一番知ってるはずのエルシィさんが慌ててるんだろう」
「エルシィだからなぁ……。多少意図的にボケてる可能性は……無いな」
「結さんの第一印象はどうだったんだろう、コレ」
「最高、とまではいかないがかなり良かったようだぞ。
楽しそうだったからな」
……結さんのコメント……
『……分かりました。それではコメントさせて頂きます。
と言っても私の専門は打楽器であり、弦楽器は専門外なのであまり細かい事は言えませんのでできる範囲で、です。
まず、あなたたちの演奏は、下手です。
一番目立つのはベースが遅れ気味な事ですが、ギターの方々も細かい技法が使いこなせてないように思えます。
キーボードは安定していますがそれだけです。もう少し自由演奏するようにした方が広々とした曲になります』
「うわぁ……ボロボロだね」
「筆者が頑張ってありそうな難癖を付けたらしいぞ。
ただ、ベースに関してはサクッと書けたそうだ」
「だろうね!」
『そういう訳なので、きっちりと指導させて頂きますね』
『…………え?』
『? どうかしましたか?』
『え、あの……入って、くれるんですか?』
『もちろんです。参加するつもりが、改善するつもりがな勝ったらわざわざこんな辛辣な事は言いませんよ』
『あの、どうして参加してくれようと思ったんですか?』
『簡単な事です。
皆さん、演奏中はとても楽しそうでしたから』
『えっ、たったそれだけで?』
『『たったそれだけ』ではありませんよ。
演奏する人が楽しんでいなければ良い演奏はできません。
自分の意志で楽しんでやること。それこそが一番大切な事です。
誰かに押しつけられたり、義務感のみで流されるままの行動に価値など無いのですから』
「う~ん、良い言葉だね」
「言うまでもない事だろうが、この辺は結の体験談が混ざっている。
母親に強制された数々の習い事とかの事とかな。
人生において義務感が必要な場面もあるだろうが、こういう事に関しては楽しめなければ意味が無いな」
「筆者さんが目指したのは原作以上に芯の強いお嬢様、だったね。
見た目はお嬢様なのに、何だか凄くカッコいいね」
「これで終わりのようだな。分量は……多分大丈夫だな」
「次の話の分量がそこそこあるようだったら統合の必要は無さそうだね。
書いてみないと分からないけど」
「次回は期末テスト編だな」
「プロフェッサーフェスティバル編だよ!」
「これもドローを無視して行う夏休み前最後の章だな。
分量は攻略編と比べるとやや少ない気がするが……語る場面はそこそこあるからきっと大丈夫だろう」
「それでは、また来週!」