もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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軽音部編 プロフェッサーフェスティバル

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第16回キャラコメンタリー始めます!」

 

「今回は期末テスト編だな」

 

「プロフェッサーフェスティバル編だよ!」

 

「……何故そこまでこだわるんだ?」

 

「う~ん……何となく?」

 

「……では、VTRスタートだ」

 

 ※ 補足

 原作で『プロフェッサーフェスティバル』と呼ばれているのは体育祭と舞校祭の間の中間テストのみであり、他の定期試験に関してはそんな呼称は使われていません。

 でも、要するに定期テストだから他の所で使ってもいいよね♪

 

 

 

   ……ちひろ達 バンド活動後……

 

 『……これなら、次のステップに進んでも良いかもしれませんね』

 『次?』

 『はい。皆さんも基礎練習と時々演奏だけでは飽きてしまうでしょうし、ちょっと別の事をやってみましょう』

 『別の? どゆこと?』

 『端的に言ってしまうと……私たちで部活を作ろう、という事です』

 『……??』

 

 

「へ~。結さんから言い出したんだ」

 

「原作ではエルシィが発案していたな。アニメを見たとか何とか言いながら。

 原作のコマを確認するとテレビの中に『けいおん!』と思しきアニメが映っているようだ」

 

「ウワ~、ヨクニテルナ~。偶然の一致ってやつだね!」

 

「まぁ、そういう事にしておこう」

 

 

 

 『皆さん、顔に『良く分からない』という文字が浮かんでいるようですね。

  それでは、1から説明していきましょう。

  私たちが通う舞島学園では部長、副部長、会計の3人が居れば部活を申請する事ができます。

  他の条件として部活の取りまとめをしている教員の方に許可を取る必要はありますが……ここは気にしてもしょうがないので条件はクリアしています。

  部活動を申請する事によるメリットは2つです。

  一つ、部活動であれば部室が貰えるので、私たちの活動拠点が確保できる事。

  一つ、文化祭などでステージの確保がしやすくなる事。

  特に活動拠点が得られる事はかなりのメリットでしょう。場所代も移動時間も節約できますから』

 

 

「章をまたいだ伏線ではないが、短期的な仕込みはしっかりと行っているな」

 

「部活設立には3人必要っと。

 この説明はエルシィさんにはできなかっただろうね」

 

「結が発案者に選ばれた大きな理由の一つだな。

 他の理由としては、『ルール関係に詳しそう』とか『成長っぷりを描写したかった』等があるようだ」

 

「ルール関係……そんな描写って原作にあったっけ? むしろ脳筋で猪突猛進なイメージがあるけど」

 

「遠慮ないなお前。否定はしないが。

 本作の場合だとお嬢様だからな。ルール関係を熟読して理論武装して母親を打ち負かすとか普通にやってそうな感じだ。

 あくまでも筆者の偏見だが」

 

 

 

   ……翌日!……

 『却下』

 

 

「アッサリ却下されたね……」

 

「文化部の担当が児玉だからな。

 しっかしルール的にどうなんだこれ?」

 

「校則なんて熟読してないから分かんないけど、普通は書類を揃えたらちゃんと受理してくれるはずだよね?」

 

「まぁなぁ。ただ、うちの学校って何故か顧問が居ないからな。

 ある意味児玉が全文化部の顧問みたいな立場で、なおかつ顧問の登録が必須であるなら児玉が却下するのはルール上なんら問題は無いと言えるな」

 

「いや、顧問は流石に居たけど描写が省略されてただけ……いやでもそれだったら誰がやったんだって話になって……う~ん……?」

 

「……とにかく、他所の学校はともかくうちの学校では担当者の一声で却下できるルールなんだろう。

 そういうのに詳しい設定の結も何も言ってないしな」

 

 

 

 『大体、お前たちみたいに一時の思いつきだとか、思い出作りだとか言って部活を作ろうって奴らは山ほど居るんだ!

  声優研だとか、カードファイト部だとか、ライトノベル研究会とか、そんなのいちいち認められるか!!』

 

 

「児玉先生の出す部活例が地味に改変されてるね」

 

「声優研は原作の丸パ……オマージュだが、カードバトル部がカードファイト部に、そしてラノベ研究会が何故か追加されている」

 

「何故かって一体……?」

 

「本作みたいな二次創作小説なんてラノベみたいなもんだからな」

 

「そういう問題なのかなぁ……?」

 

「あと、カードファイト部は某カードアニメのオマージュだそうだ。

 ……そう言えばあのアニメもアイドルが出てきてたな」

 

 ※

 『ヴァンガード』シリーズのアニメより。

 カードゲームのヴァンガードでは『対戦する』という意味で『ファイトする』という言葉を使うため、主人公たちが立ち上げる部活の名前が『カードファイト部』となる。

 詳しくはアニメをご覧下さい(販促は基本)

 

 

「えっと、そのアイドルさんはメインヒロイン……? いや、何か違うような……」

 

「カードゲームのアニメなんだからカードがヒロインに決まってるだろう!」

 

「そうなの!?」

 

 ※

 遊戯王とかだとマジでそんな感じだったりしますが、ヴァンガードでは……う~ん……むしろ主人公がヒロインかな(遠い目)

 一応ヒロインと呼べる人は何人か居るけど『メインヒロイン』って呼べるような人は居ないです。真剣に決めようとすると戦争になるので。

 

 

 

 

   ……児玉に部活設立の条件を突きつけられた後……

 

 『予想外の条件を出されましたね』

 『いや、確かにバンドにはかけてるよ? でもそれと勉強とは話が違うと思わない!?』

 『100点って、そもそも最初っから認める気無いよね……?』

 『ちなみに、皆さんの前回の試験における英語の点数は……』

 『82。頑張れば何とかならなくもない点数ではあるけどね』

 『それくらいであれば100点満点とまではいかずとも90点台までなら何とかなるのではないでしょうか?

  完全に認めさせるのは無理でも交渉材料にはなるでしょう』

 『あ~、うん。私は何とかできると思う。私は」

 

 

 

「満点を狙うってなるとケアレスミスとかにも注意しないといけないから大変だよね」

 

「心に余裕があればケアレスミスなんてそうそうしないけどな」

 

「いや、それ桂馬くんだけだよ」

 

 

 

  …… で! ……

 

 『……勉強、しますか。まず全力でやって、その後考えようよ。

  皆はどう思う? 京と結は聞くまでもなさそうだけど……』

 『当然、100点を目指しますよ』

 『満点はちょっとキツいけど……何とかやってみるよ』

 

  優等生組は当然のように頷いてくれた。

  残るは赤点組だけど……』

 

 『ちひろ!? 私はギリギリ赤点じゃないからね!?』

 『あれ? 声に出てた?』

 『出てたよ!

  私もやるなら全力で頑張るけど、100点はちょっと……』

 『わ、私も無理ですぅ……』

 『歩美もエリーもやる気があるなら大丈夫。皆で頑張って何とかしよう!』

 

 

 

「モノローグをさり気なく台詞に変換するのは小説ならではの表現だな」

 

「それはそうと、ちひろさんの本気が伺えるね。

 あのちひろさんが音楽の為に100点を目指すなんて」

 

「確か原作では主にお前の影響でやる気出してたな」

 

「え、あれ? そうだったっけ?」

 

「ああ。本作では原作以上にやる気を出してるわけだが……ある意味これもお前の影響なのかもな」

 

「いや~、どうだろう。結さんの影響かもよ?」

 

「……確かに、そっちの方が有り得そうだな」

 

 

 

 『……ちょっと気は進まないけど、あいつに頼むのが一番か。

  エリー、あいつを呼んでくれない?』

 『アイツ? どなたですか?』

 『そんなの決まってるでしょ。ロクに授業も聞いてないクセに、児玉のテストはもちろん他のテストでも100点しか取ってない問題児。

  あんたのお兄さんだよ』

 

 

「こうして僕は巻き込まれたわけか」

 

「と言うか、ちひろさんから言い出したんだね。原作ではエルシィさんが巻き込んでたけど」

 

「……とりあえずあの駄女神には後で文句言っとこう」

 

「いや、別の世界のエルシィさんの所業に文句言っても……」

 

「ちひろが僕に連絡を取ろうとしたのは攻略の記憶がある程度残ってる影響だな。

 どうもあいつの中で僕はそこそこ仲の良い友人ポジションになっているらしい」

 

「……流石はちひろさんって言うべきなのかな?」

 

「僕としては極めて遺憾だが、あの現実(リアル)女を思い通りに動かすのはまず無理だ。仕方ないから放置しておく」

 

「……どうしよう、面倒くさいツンデレにしか見えない。

 ちひろさんに桂馬くんを取られる前に何とかしないと!」

 

「オイコラ、何をする気だ」

 

「えーっと、えーっと……ちひろさんを見習って恋愛相談とか?

 桂馬くん、大変なの! 私の好きな人がいつまで経っても素直になってくれないの! 本当は私の事が大好きのはずなのに!!」

 

「…………」

 

「……桂馬くん、せめて何かコメントして」

 

 

 

 『ええっ、桂木を呼ぶの!? あの桂木を!?』

 『凄い良い案だと思いますよ!! 神様ならきっと何とかしてくれます!!』

 『桂木、かぁ。

  確かにいつも授業すら聞かずに100点取ってるのはどうやってるのかなって思ってたけど……

  この際に聞いてみたい気もするね』

 『桂木さん? どなたですか?』

 

 

「桂馬くんの事を聞いた皆の反応だね」

 

「ストーリー的に重要なのは歩美と結……元攻略対象2名の反応だな。

 歩美は女神が居ても大丈夫な反応を、結は女神がほぼ居ない反応をイメージして書いてるらしい」

 

「あ、居ないのは確定だったんだ」

 

「ほぼな。理由は、恋愛による攻略を行わなかったから。

 絶対的な縛りではないが、なるべくなら入れたくなかったらしい」

 

「ふ~ん……あれ? 栞さんが無視された上で美生さんが選ばれてたのはどういう事?」

 

「約1名を除いて女神の性格を変える気は無かった。その上で、栞に入れても問題なさそうな女神……居るか?」

 

「えっと、当時は確定枠が3人居て、残りはアポロさんにマルスさんにウルカヌスさん……

 ……辛うじて大丈夫そうな人が悉く除外されてるね」

 

「メルクリウスとかなら普通に相性良さそうなんだけどな。まぁそういう事だ」

 

 

 

 『どんな奴かは呼べば分かるよ』

 『えっ、ホントに呼ぶの!?』

 『歩美……その成績をどうにかするには悪魔に魂を売り渡すくらいしなきゃダメだよ』

 『怖いよ! って言うか桂木は悪魔なの!?』

 『いえ、そもそも悪魔は魂の売り買いなんてしませんよ!』

 

 

「『魂の売り買い』という台詞に対してある読者からは『過去編で似たような事してたヒトが居た』ってコメントを頂いたな」

 

「香織さんの事だね。今の時代だと一体何をしてるんだろう……?」

 

 

 

 『それじゃあエリー、桂木を呼んで』

 『え? 無理ですけど』

 『ちょっ、何で!?』

 『神にーさま、携帯持ってないですから』

 『マジで!?』

 

 

「結構後で原作では実は持ってた事が判明したけど、今の桂馬くんは本当に持ってないんだよね……」

 

「メールならPFPで十分だし、通話も念話で十分だからやっぱり必要ないな」

 

「確かにそうだね! 十分だよ!!」

 

(……歌姫と姉様以外の通話相手を切り捨てた我が宿主と、同じく切り捨てた歌姫、どっちもどっちだな)

 

「ん? 何か言ったか?」

 

(いや、なんでもない)

 

 

  ……ちひろのモノローグ……

 

  このご時世で携帯持ってないってどんだけなのよあいつは!!

  ……そう言えば、ユータ君への告白を手伝ってもらった時も電話で済むような話をわざわざ口頭で言っていたような気もする。

  番号やメアドの交換もしなかったような……

 

 

「この辺は完全に覚えていたようだな」

 

「ちひろさんの記憶に関してだけどどうも『西原まろん』に関する記憶と、その後の記憶が曖昧みたいだね。

 ちひろさんの好感度がやたら高いのはユータ君攻略の記憶が残ってるからだね」

 

「くそっ、ドクロウめ。中途半端な仕事しやがって!」

 

「まぁ、いいんじゃない? 友達として付き合うなら。

 あ、でも浮気はダメだからねっ!」

 

 

 

 

  ……桂馬がちひろからのメールを受け取った後、家の電話を使った電話……

 

 『もしもし~』

 『おいお前、どういうつもりだ?』

 『あ~……脅したのは謝るよ。でもどうしても話を聞いて欲しくてさ』

 『……僕の時間は貴重なんだ。手短に話せ』

 『私たちバンドメンバー全員で次の英語のテストで100点取んないといけないの!

  お願いだから力を貸して!!』

 『……おい、何で僕がテストなどというお前たちの自己満足に付き合わないといけないんだ?』

 『ち、違うって! これができないと部活が作れないんだよ!!

  児玉のヤツが意地悪でさ!』

 『部活……児玉……そういう事か。

  大方、陰湿な児玉に部活を作る条件を無茶振りされたんだろ?

  で、いつも100点を取ってる僕に泣きついたと』

 『そうそうそうそう! 話が早いね!』

 『だが、僕には関係ないな。お前たちの部活なんてどうでもいい事だ』

 『ちょっ、そんな言い方は……』

 

  いやいや、落ち着け。ここで怒っちゃダメだ。

  確かに桂木の言うことは間違っちゃいない。こんな話を引き受けた所で桂木は何にも得しないんだから。

  ちょっと言い方はヒドいけど、正論だ。

  かと言って桂木に何か支払えるようなものがあるだろうか?

  私とデートする権利とか♪ 女日照りの桂木ならこれでイチコロ……いや、止めとこう。何かこれだけはやっちゃいけない気がする。

  結局できるのは……

 

 『お願いだよ桂木。私たち本当に困ってるの。

  ほんのちょっとだけでいいから助けて下さい。お願いします』

 

 

「あのちひろがストレートに頼みごとをするというのは意外だったな」

 

「今までのちひろさんだったら軽いノリで頼んで、断ろうとすると軽く受け流そうとしそうだね」

 

「そして僕が受話器を置く……と」

 

「ちひろさん、結果的に最善の選択肢を選んでるね」

 

 

 『あの……』

 『明日の放課後、1時間だけ付き合ってやる。後は自力で何とかしろ』

 『あ、ありがとう!! それじゃあまた明日ね!』

 『ああ』

 

 

「ちひろさん達に協力しようと思った決め手は?」

 

「別に、ただ、ちょっと興味を持っただけだ。

 真剣になったちひろがどこまでやれるのかってな」

 

「け、桂馬くん! 浮気はダメだからね!!」

 

「しないしない」

 

 

 

 

   ……翌日!……

 

 『桂木センセー! お願いします!』

 『チッ、忘れてなかったか』

 『そりゃそうだよ。宜しくね!』

 

 

「バッくれる気満々だったんだね」

 

「奴らが忘れてるようならその程度だったという事だ。そんな奴に僕が協力してやる義理は無い。

 まぁ、当然のように覚えていたわけだがな」

 

 

 

 

 『あれ? 桂木君……どこ行くんだろう?』

 

  授業が終わってすぐだったから誰も教室を出ていない。

  彼女は部活には入っているが、そこまで打ち込んでいるわけでもないから多少遅れても問題ない。

  そんな中、ただでさえ目立つ生徒が多数の女子と一緒にどこかへ行くという更に目立つ行動を取る。

  彼女が気になってこっそり尾行する条件は十分に揃っていた。

 

 

 

「イッタイダレナンダー」

 

「当時、この呼び方を使ってる人って実は1人だけ?」

 

「いや、栞とかもこれだったと思うぞ。別クラスだし、多分部活入ってないが」

 

「じゃあもう確定だね」

 

「まぁ、気付くだろうな。筆者も隠す気無かったし。

 ……ああそうそう、序章を除けば初めての『地の文』なんじゃないか?」

 

「あれ、そうだっけ?」

 

「正確には『キャラクターのモノローグではない地の文』だな。

 所謂、神視点というヤツだ。

 何でこんなタイミングまで出てこなかったかというと……1つは単純に筆者が一人称視点で動かす方が得意だから。

 そしてもう1つ、神視点では嘘が吐けないからだ」

 

「最初のは分かるけど、もう一つはどういう事?」

 

「小説執筆における絶対的なルールというわけではないだろうが、うちの筆者は神視点で意図的に嘘を吐く事は絶対にしないようにしている。

 叙述トリックを仕掛けてるわけでもないのにそんな所で嘘を吐くのは非常にアンフェアだと言わざるを得ない」

 

「アンフェア……そういう問題なのかな?」

 

「直接的な嘘を吐いて騙しても意味が無い。真実だけで騙すからこそ面白いとも言っていたな。

 筆者の歪んだ性格が垣間見えるな」

 

「……そういう問題なのかな?」

 

「まぁ、その辺は置いておこう。叙述トリックを仕掛ける場合を除いて意図的に嘘を吐かないのは絶対的な制約だが、意図的でない嘘、ちょっとした描写ミス等による設定の矛盾等も発生させない事も努力目標として存在している。

 例えば、エルシィの事を『バグ魔』と表現するならセーフだが『悪魔』と表現するのは即座に筆を折るレベルのアウトだ」

 

「確かに凄まじい矛盾になっちゃうね。

 しかもうっかり書いちゃいそうな……」

 

「『悪魔を名乗る少女』みたいな表現なら事実なんで大丈夫だが……いちいちそんな事書いてたら怪しまれるしな

 ただまぁ、ミスなんて努力だけでどうなるもんでもないからな。そもそも神視点はなるべく使わないようにしているというわけだ」

 

「な、なるほど。

 あれ? でも、モノローグでも描写を間違える事は有り得るよね? その場合はどうするの?」

 

「そういう時はそのモノローグの主の勘違いだったという事になるな。

 勘違いしない人間なんてまず居ないから、むしろリアリティが出てくれる」

 

「なるほどね。

 今回の場合はモノローグの主になれる人が麻美さん本人くらいしか居ないし、一応隠してる風にしてるから神視点でやるしか無かったんだね」

 

「そういうコトだな」

 

 

 

 『……あと残り50分くらいか。高原と小阪をそれぞれ20分ずつほど個別授業をして、残り10分で全体からの質問を受け付けるか』

 『えっ、神様? わ、私は?』

 『お前は答えを丸暗記する作業だから助けなんざ要らんだろうが』

 『そんな! ヒドいですよ神様!!』

 『異議は受け付けん。それじゃあ早速始め……ん?』

 

  ふと、視線を感じた。

  教室の中から……ではなく、扉の方からだ。

 

 『……ああそうそう。この辺は間違えやすいから全員で一度確認しておこう』

 

  適当なセリフを吐きながら何気ない動作で扉に近づく。

  黒板の端から1歩ほど。これくらいが限界か。

 

 『ここの構文だが、上手く使えば様々な表現に使える。

  例えば……こんな風に!!』

 

  一気に扉に駆け寄り、思いっきり開く。

 

 『She seems to have been there since a few minutes ago.

  彼女は数分前からそこに居たらしい。とかな。

  で……お前は何でこんな所に居るんだ?』

 

  扉の向こうで尻もちをついていたサイドテールの少女。

  そう、吉野麻美がそこに居た。

 

 

「Seem構文と現在完了の複合だな。

 前者は『○○らしい』という曖昧な表現に使える。

 後者は『過去に行い、継続しているor経験しているor完了した』という表現に使える。今回は『数分前からそこに居た』という継続として使ったな。

 ……これって高校2年の範囲だったか?」

 

「う~ん、あんまり授業出ないから私にもちょっと分からないかな」

 

「……まあいいや。

 さっきの神視点の辺りの人物は案の定、吉野麻美だったわけだな。

 原作のかのんの役だ」

 

「私の場合は教室に堂々と入った上で桂馬くんの横顔を凝視してたよ。

 やった! 勝った!!」

 

「勝負だったのかこれ……?

 麻美がここで再登場するのは本章をやる事が決定した時点で決まっていたらしい。

 具体的には……月夜編を執筆してた辺りには決まってたんだな」

 

「下手するともっと早いかもね。ちひろさんを引いた時点で決まっててもおかしくないんじゃない?」

 

「いや、引いた時点だと着地点すら決まってない状態だったから……ちひろ編を書き終えたくらいからもう視野には入ってただろうな。

 麻美に女神を入れる事は……流石にまだ決まってなかった気がするな」

 

「この時にはもう決まってたのかな?」

 

「そうだな。多分、アポロが入る事まで決まってたと思うぞ。

 マルスもウルカヌスも相性がちょっと微妙だしな」

 

「この章で横から入ってくるのがアポロの宿主だったって事は実は原作と変わってないんだね」

 

「偶然の一致だな」

 

 

 

   ……麻美の個別授業……

 

 『どうやら、自力で大体何とかなってるらしいな』

 『うん。凄いねこの予想問題。桂木君が書いたの?』

 『まあな。大したことじゃない』

 『十分大した事だよ。

  この予想問題があれば誰でも100点が取れるんじゃない?』

 『いや、そうでもないだろう。

  答えを丸暗記しようとしてできる奴なら普通に正攻法で解くだろうし、正攻法で全員が解けるなら50点未満の奴は存在してないはずだ。

  ある程度楽になる事は確かだが、無条件で100点を取れるような代物ではないな』

 『そういうものかな?』

 『そういうものだ』

 

 

「学園モノでは僕みたいなのがテストの問題を完全に予想するという展開は割とあるが、それだけで満点取れる程甘くは無いわな」

 

「答えを丸暗記するよりも理屈を理解する方がずっと簡単だね。

 瞬間記憶能力とかがあるなら話は別だけど……そういう人は教科書を丸ごとコピペしとけばいいと思う」

 

「前にどっかの漫画でテスト前日に予想問題を配布したら学校中で全科目で100点が続出したとかいう話があったが……非現実的と言わざるを得ないな。

 赤点回避が楽勝になった事に異論は無いし、赤点ラインギリギリが続出したとかなら積極的に取り締まるべきだと思うが……予想問題だけで満点を取れたんなら学校側は普通に喜んで良い」

 

 

 

 

   ……後日……

 

 『諸君、成果はどうだった?』100点

 『うん、バッチリだったよ! 桂木の予想ドンピシャ!』100点

 『一応怪しそうな所も見といたけど、無駄だったね』100点

 『皆さんの話では授業中にゲームばかりしていて授業を聞いていないとの事ですが……

  あれだけの予測ができるという事は聞いてないようでちゃんと聞いているのでしょうね』100点

 『う、うぅぅ……ご、ごめんなさい』49点

 

  勉強会が終わった後、児玉と直談判して、ゴネにゴネて、二階堂先生とかの力も借りて、何とかエリーだけ条件を緩くしてもらえたんだよ。

  そのラインが、50点。

  1点、足りなかったみたいだ。

 

 

「……エルシィさん……」

 

「……エルシィだからな。あいつにしては頑張ったよ。あいつにしては」

 

「うちの学校の基準だと一応赤点は回避してるんだよね。エルシィさんにしては大躍進だよ」

 

「あと1点だったならカンニングくらいさせてやるべきだった気もするな。

 羽衣さんだったらそのくらいできるしな」

 

 

 

   ……職員室……

 

 『お願いします!!』

 『ダメだ!』

 『そこを何とか!』

 『ダメなものはダメだ!

  大体、緩めてやった条件さえ満たせてないだろうが!』

 

 

「児玉先生はどうしてこんなに頑ななんだろう」

 

「条件を明示した上でそれでダメだったのにも関わらず譲歩したらそれはそれで問題になるからな。

 単純に性格が悪いだけかもしれんが」

 

「他にも現実的な案として、うちの学校は廃部の条件が緩すぎるから乱立させられないんじゃないかっていうのが筆者さんから出てたね」

 

「1人の意志で創部を突っぱねてると考えるよりはある意味現実的かもな」

 

 ※他に理由が思いついたら是非とも教えてください!

 

 

 

 『邪魔だ。どいてくれ」

 『あ、ごめんなさ……って、桂木!?

  え、どうしたの?』

 『……邪魔だ。どけ』

 『そんな言い方しなくてもいいじゃん!』

 『いいから、どけ』

 『う……わ、分かったよ』

 

 

「お、桂馬くんがやってきた。例の創部届を持ってるね」

 

「ああ。ま、児玉の奴は僕も鬱陶しいと思っていたからな。

 あいつに一泡吹かせられるならやる価値はあるさ」

 

「そんな理由付けしなくても、ちひろさん達の為にやったで十分だと思うけど?」

 

「知らんな」

 

 

 

 

 

 『で、改めて訊くぞ?

  桂木、コレは何の冗談だ?』

 『軽音部の件ですか? 僕も驚きましたよ。

  まさか小阪達が作ろうとしていたのが軽音部だったとは』

 『あくまでも偶然だと言い張るつもりか?』

 『言い張るも何も、僕が現実(リアル)女子の動向に気を配るわけが無いでしょう?』

 『ムムム……一理あるな』

 

 

「凄く納得できる理屈だね」

 

「流石にこれで完全に騙されてくれる程の愚か者ではなかったようだが……棚上げさせただけで十分だな」

 

 

 『……確かに、この申請書の名簿に記されている名前は全員私のテストで100点を取っている。

  部長、桂木桂馬、副部長、吉野麻美と。

  ここまではまだ納得できなくもない。

  だけどな。これはどういう事だ一体!!』

 

  児玉が指し示したのは、会計担当の……3人目の名前。

  そこにはハッキリと記されていた。『中川かのん』と。

 

 

「麻美さんも何気に100点取れてたんだね」

 

「それを言うならお前もな。

 直前の特別授業とかも無しに普通に100点とっててくれてたな」

 

「桂馬くんのおかげだよ!」

 

 ※

 日頃の勉強の成果でもあるけど、中の人補正も活用しています。

 きんモザの九条カレンさんとか、艦これの金剛さんとかの人ですね。

 『中の人繋がり』ではなく『中の人補正』です。そこを間違えないように注意。

 

 

 

 

 『どうしてお前如きがアイドルと接点を持ってるんだ?

  偽造した申請書なんて受け取れんぞ!』

 『偽造じゃなくて本人の直筆だ……なんて言っても信じないんでしょうね』

 『当たり前だ!!

  仮に本物だったとしてもアイドル活動で忙しい奴が部活なんてできるわけないだろうが!!』

 

 

 

「正論だね」

 

「正論だな。

 この場面は地獄の関係者以外にお前と関係がある事を初めて明かした場面だな」

 

「あれ? そうだっけ?

 ……確かにそうかもしれない」

 

「正確にはうちの母さんも知ってるが……まぁ、アレはノーカウントでいいだろう」

 

「明かしたと言うより私が押しかけただけだもんね……

 でも、この時は自分からしっかり明かしてるって事は私の存在が桂馬くんの中でも受け入れられてるみたいな、そんな感じなのかな?」

 

「相手が児玉とかいうモブだからあまり気にしなかったというのもあるかもな」

 

「も~、桂馬くんったら」

 

「僕の心情とは関係なしに、お前との関係は可能な限り伏せていた。無用なトラブル回避の為だな」

 

 

 

 『……あいつ、結構怒ってましたよ』

 『ハァ? 何をだ?』

 『何をって決まってるでしょう。

  学校側がアイツに対してカンニング疑惑をかけた事ですよ』

 『なっ、ななな何故お前がそれを知っている!!』

 『本人から聞いたんで』

 

 

「そう、そうなんだよ! 私は頑張っただけなのに!!」

 

「とは言っても、露骨に『お前カンニングしただろ!』って言われたんじゃなくて『まさかとは思うけどカンニングとか……いや、流石に無いか。無いよね?』くらいの感じだったんだろう?」

 

「それでもだよ。疑いたくなる気持ちは分からないでもないけどさ。

 万が一でもそんな噂が流れたらアイドルとしてのイメージに傷が付くんだよ」

 

「評判が収入に直結してるもんな。ただの噂じゃ済まないのか」

 

「うん。それに、桂馬くんとの勉強の結果がカンニング疑惑なんて嫌だよ!

 だから、白黒付ける為にも、先生たちへの意趣返しの為にも再試験を要請したよ!」

 

「過剰な反撃と取る人も居るかもしれんな。

 まぁ、そのおかげでこうして脅迫のネタになったから助かった」

 

「巡り巡ってちひろさんの役に立ったなら、良かったって思えるよ」

 

 

 

 

 

「これで、終了だな。分量は……問題ないようだな」

 

「そう言えば舞校際のライブより前に本編が完結しちゃったんだよね……

 どんな演奏だったんだろう。聞いてみたいな」

 

「続編を期待……したとしてもその辺は飛ばされるだろうな」

 

「う~ん…………まあ、しょうがないか。

 それじゃ、来週は天理編『『純真』の女神は運命の地に再臨す』をお送りします!」

 

「初めて……ではなく2人目の女神だな。

 ……あ、そうそう、神を数える時は普通は『人』ではなく『柱』と数えるが、本作では意図的に『人』にしてる。

 何でかというと……あいつら、無駄に人間臭いからな」

 

「そういう問題なのかなぁ……

 それでは、また来週!」

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