もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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天理編 『純真』の女神は運命の地に再臨す

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第17回キャラコメンタリー始めます!」

 

「今回は天理編。『『純真』の女神は運命の地に再臨す』だな」

 

「女神編でのアポロさんの神託は

 『純真』の女神は十年の時を経て帰還する

 だったね。微妙に違うんだね」

 

「アポロの神託を出すつもりは当時にもあったしサブタイとリンクさせる計画もあったが、正式な文面は全然決まってなかったそうだ。

 だからとりあえず無難なサブタイトルをチョイスしたわけだが……無難過ぎたな。『運命の地に再臨する』のは全女神が当てはまる。

 だからまぁ……『運命の地』という言葉は神託の序文に移して、ディアナに関する神託の文を逸脱しない範囲でいじったらしい」

 

「それじゃ、始めよっか。VTRスタート!」

 

 

 

 

 

 『フハハ、フハハハハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』

 

  ついにこの日がやってきた。

  僕は神だが、常に『ある物』にその権能を束縛されている。

  それは、『時間』

  落とし神モードで6本同時攻略をする等してその束縛は年々緩和されつつあるが、それでも時間の限界という物は存在する。

  しかも! 今年はエルシィが降ってきたせいでただでさえ貴重な時間がどんどんどんどん削れて行った!!

  だがしかし!!! この日を迎えた僕はその束縛から解き放たれる!!!!

  わざわざ学校に行く必要も無くなり、24時間ゲームし続けられる日が一月半ほど続く、この日。

  そう、『夏休み』がやってきたのだ!!!!!

 

 『フハハ、フハハハハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』

 

 

「……た、楽しそうだね」

 

「夏休みが永遠に続けば良いのにな。ハハハハハ」

 

「そ、そうだね……

 いくら桂馬くんでも時間までは操れないよね。

 ……緩和してるってだけでも十分凄いけど」

 

「リフレクターデバイスがあればいいんだけどな。ドクロウ室長なら頑張れば開発できるんじゃないか?

 あとメルクリウスとか」

 

(無茶を言うな)

 

 ※

 リフレクターデバイスとは、もの凄くザックリ言うとタイムマシンの事。

 より正確には『過去に記録した時空間の座標へと跳躍するデバイス』

 神のみのある意味元となった作品『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』におけるキーアイテムであり、同作ではリフレクターを駆使して有限の並列世界を踏破していく。

 神のみでもこれを元にしたと思われる『宝玉』が過去編で登場している。

 セーブ地点が強制でかつスロットが1つだけだったり、ロードも強制でしかも回数制限があったり、アイテムは持ち越せなかったり、分岐マップが見れなかったり、強制起動のタイミングがやたら早かったりと本家と比較して大分劣化しているが、ルートを逸脱した際に矯正し、正しい歴史の流れへと導く様は紛れもなくリフレクターの機能そのものである。

 

 

 

 

 『母さん。僕は今から40日ほど姿を消すけど心配しないように。それじゃ!』

 『コラ、待ちなさい』

 『な、何っ、放せ! すぐそこに1000時間が!』

 『何を訳の分からない事言ってるの。ほら、お客さんに挨拶しなさい!』

 

 

「事前に言ったとしても40日も姿を消したら心配すると思う」

 

「上の部屋でゲームやってるだけだから大丈夫だろう。

 それに、結局はすぐにゲームの方が尽きて買出しに行くハメになったしな」

 

「本気で40日立てこもる気で居たわけじゃない……んだよね?」

 

「…………ああ」

 

「桂馬くん、今の間は?」

 

 

 

 

 『大きくなったね~桂馬君。

  おばさんの事覚えてる? 10年ぶりだけど』

 

  ここで正直に『覚えてない』等と言うと母さんか鉄拳が飛んでくるのは間違いないので適当に頷いておく。

 

 『あの桂馬君が17歳かぁ。うちの娘と同い年だもんね。

  ほら、天理! 桂馬君よ!』

 

  よく見てみると鮎川さんとやらの隣には1人の女子が居た。

  前髪がやや長めで俯いているので表情は伺えない。何故か梱包に使うプチプチを手で潰している。

  人の家に挨拶に来ておいて手で何かをいじっているだなんて、常識がなってないな。

 

 

 

「まったく、こいつは何を考えているんだ。この僕が時間を割いてやっているというのにプチプチをいじって」

 

「人の家とかでもおかまいなしに手で何かをいじって……どこかで見たことがあるような……」

 

「そんな奴が天理以外に居るのか」

 

「う~ん…………」

 

(……これはツッコミ待ちなのか? そうなのか?)

 

 

 

 

 『神にーさま! ただいま戻りました!!

  ほら、見てくださいよ! 私、賞を貰っちゃいました!!』

 『お前かよ!! 今入ってくるなよ今!!』

 『えへへっ! ほらほら! 室長賞ですよ!!

  あ、そう言えばお手紙はちゃんと渡しておきましたよ!!』

 『ああ、良くやった。良くやったからサッサと離れろ!!』

 

 

「……ミネルヴァさんが一番嫌なタイミングで帰ってきたね」

 

「実は本作における最初の女神同士の対面だな。

 お互いに自覚は全く無かったようだが」

 

「原作と違ってちゃんと室長賞は受け取ってるんだね」

 

「成果を過少報告してるんで大っぴらに表彰はできなかったからな。

 会合の場での表彰ではなく直接呼びつけてこっそり渡したからしっかりと渡せたんだろう」

 

 

 

 

 ドロドロドロッ

 

 『『っ!?』』

 

 

「ここも原作との相違点だね。

 原作では桂馬くんが部屋に向かった後に鳴ってたから完全に聞き逃してるみたいだよ」

 

「センサーには反応した方角と距離を把握する機能もしっかりあるようだ。

 つまり、『天理から一瞬だけ反応があった』という情報がしっかりと得られるわけだな。

 まったく、こんな重要な情報を原作の僕は何で聞き逃してるんだ」

 

「……ゲームしてたからだね」

 

 

 

 

  ……翌日……

 『センサーのスイッチは今は入ってるのか?』

 『勿論です! 未知の駆け魂も見つけられますし、天理さんの駆け魂にも反応する状態にしてありますよ』

 『そうか。分かった』

 

  のんびりと歩いていたら信号が赤になっていたので止まる。

  交通量の少ない小さな交差点ならともかく、繁華街に近いこんな所で信号無視して突っ切るわけにもいかない。大人しく待とう。

  そう思って立ち止まった。その時だった。

 

 ドンッ

 

  後ろからの突然の衝撃。

  受け身を取る暇も無く倒れた僕のすぐ目の前をトラックが通過していった。

 

 『な、何だ!?』

 

  急いで歩道に戻って、確認する。

  そこに居たのは昨日うちに挨拶に来た少女……天理だった。

 

 『ちょっと! にーさまに何するんですか!!』

 『……っ!』

 

  エルシィに問い詰められた天理は無言でどこかへ走り去ってしまった。

  う~む、いくつか気になる事はあるが……

 

 『まあいい。ゲームゲーム』

 『いや、良くないでしょ! 道路に突き飛ばされたんですよ!?

  ねぇ、ちょっと? 神様!!』

 

 

「……桂馬くん、ちょっと用事思い出した」

 

「待て待て、一体どこに行く気だ!」

 

「大丈夫大丈夫。ちょっと天理さんとオハナシしてくるだけだから」

 

「今更一体何を話す気だ……ちょっと落ち着け」

 

「うん、大丈夫。落ち着いてるよ」

 

(……魔力を溢れさせながら言っても説得力が無いぞ。

 確かにアレは少し肝を冷やしたが)

 

「お前はどっちの味方なんだ。

 ああ、ほらかのん。今は仕事中だからせめて後にしろ」

 

「う~ん……桂馬くんがそこまで言うなら仕方ないね」

 

「……終わる頃には忘れててくれる事を祈っておくか」

 

「何か言った?」

 

「いや、何でもない」

 

 

 

 

  ……買い物後……

 『よし、撤収するぞ!』

 『りょーかいです!』

 

  僕は大型のリュックと大きな紙袋2つ、エルシィは羽衣にゲームを入れて運ぶ。

  そして、店から出た直後……

  再びの衝撃が、今度は右の頬を襲った。

 

 『へぶっ!』

 

  続けてバシャリという音とともに黒い熱湯……コーヒーが頭から被せられる。

 

 『あちちちちっ!!』

 『か、神様!? どうしましたか!?』

 『ぐっ、大丈夫だ。問題な……あああっっ!!』

 『神様!?』

 『こ、コーヒーが、ゲームのパッケージに染み込んでいるぅぅぅ!!!』

 『……ああ、そうですか』

 『この罪は万死に値するぞ!! 僕のゲームにコーヒーをぶっかけたのはどこのどいつだ!!!』

 

  そう怒鳴りながら衝撃を受けた方向を向く。

  そこに居たのは……またしても天理だった。

 

 

 

「…………やっぱり悪意があるようにしか見えないんだけど?」

 

「全くだな。パッケージを汚すとは、万死に値する!!」

 

「えっ? そ、そうだね……」

 

「この時はうやむやになってしまったが、今からでも遅くは無い。一度文句を言うべきか」

 

「あ、あの、桂馬くん……?

 桂馬くんはゲームと自分の身体、どっちが大事なの?」

 

「ん? そんなものゲームに決まっているだろう」

 

「いやいやいやいや!! 身体も大事にして!!

 桂馬くんが怪我したら私が悲しいから!!」

 

「ぐぬぬ……前向きに善処しよう」

 

「そんな政治家みたいな事言わずにちゃんと言ってよ……」

 

(宿主の肉体の問題は私の問題でもあるな。

 ……とりあえず、負担の無い程度の軽い結界を張っておくとしよう。

 これでトラックに轢かれても……まぁ、死にはしないだろう)

 

「それって大怪我は避けられないって事だよね……」

 

(結界は専門外だからな)

 

「……と、とにかく、桂馬くんはちゃんと身体を大事にする事!

 もしそうしないなら……」

 

「しないなら、何だ?」

 

「え~っと……朝起きてから夜寝るまで私がつきっきりで面倒を見る事になるよ!!」

 

「……お前なら本気でやりかねないな。

 はぁ、分かった。人並みには気をつけるとしよう」

 

 

 

 

 『天理さん、どうしちゃったんでしょうね?

  やっぱり駆け魂の影響でしょうか?』

 『そうだな、駆け魂の影響なのだとしたら……

  内気な少女の建前と本音が分かれて二重人格になっている。といった所か』

 『ほえ~、神様何でも知ってますね』

 『当然だ』

 

 

「しっかりと『駆け魂の影響なら』って前置きしてるね」

 

「そんな単純な話じゃないのはセンサーがなかなか反応しない時点で気付いていたからな。

 ゲームでもよくある展開だしな。

 当時は確か……

 1、センサーを誤魔化せるような能力を持つ強力な駆け魂である。

 2、駆け魂の力を押さえこめるような存在である。

 この2つの案を出してたな」

 

「2が当たりだね。

 と言うか、1なんて考えがあったんだね……」

 

「改心した悪魔とか、あるいは逆に闇落ちする天使とか、ゲームでもよくある展開だ。

 光と闇が合わさり最強に見えるとかもロマンだな」

 

「へ~」

 

「……魔力も理力も使うお前の事なんだが」

 

「えっ」

 

 

 

 

  ……その頃の天理さん……

 

 『もう、どうしてさっきはあんな事をしたの!?』

 『天理がなかなか話しかけないから、きっかけを作ろうと思っただけです。

  変な抵抗をするからあんな事になってしまったのです』

 

 

「一応、そういう理由はあったんだな。

 万死に値する事に変わりは無いが」

 

「……そうだね」

 

「パッケージを汚したことは万死に値する!!」

「事故とはいえ桂馬くんを殺しかけた事は忘れてないよ!!」

 

「「……えっ?」」

 

(……姉様には私から言っておくから。その辺にしておけ)

 

 

 

 

 

 『フッ、海は良いよね。

  波間に想いを投げかければ、海は一時の安らぎを与えてくれる。

  しかし、残り続けるのさ。君の心のスキマは』

 

 

 

「……誰だっけこいつ」

 

「う~ん、私も見たこと無いなぁ」

 

「お前も知らないって事は大した奴じゃないな。

 何だ、妙に気取って出てくるから重要キャラかと思ったらただのモブか」

 

「そうだね!」

 

 

 

 『まあまあ、話を聞いてあげてよ』

 『……あの、なん、ですか?』

 『そうねー、医者みたいなもんかな。

  亮! 続けなさい』

 『う、うん。えっと……

  安心して! 僕達駆け魂隊は君の味方だ!

  君の心には今、駆け魂っていう悪い生き物が住んでいるんだよ。

  このまま放っておくと大変な事になる。けど、君はラッキーだ。僕とノーラさんは最も優秀なコンビだからね!』

 

 

「……ああ、ノーラの協力者だったか」

 

「こんな人だったんだ。ノーラさんの協力者」

 

「モブである事に変わりは無いな」

 

 ※

 本作では実は本章しか出番が無いという。

 田坂主将とかよりも出番が少ないです。

 どっちも同じく『フルネームが出ている男キャラ』なのに、どこで差が……

 

 

 

 『これは私の特殊能力でね。羽衣を通して人の心を映し出す事ができる!!』

 『は、離して!』

 『そうはいかないわ。お、出てきた』

 『おや、男だね。この子と同い年くらいかな』

 『これは簡単ね。好きか嫌いかの二択よ。

  あなた、この男が嫌いなの?』

 『っ!!』

 

 

「何だこのチート能力!!」

 

「駆け魂攻略において最強と言っても過言じゃない能力だね……」

 

「相手を拘束する必要がある上に心を暴いているのが相手にも伝わってるみたいだから使い方は工夫する必要がありそうだが……それでも強すぎるだろ。

 エルシィには何か無いのか!!」

 

「本作の場合だと固有能力は『結界』と『互助』だね。悪魔じゃなくて女神としての能力だけど。

 原作の場合は………………掃除かな!」

 

「…………原作の僕よりはマシだと納得しておくか」

 

 

 

 

 

 『♪~♪~♪~』

 『神様……それだけの荷物をかかえながらよくゲームできますね』

 『フッ、ゲームをプレイするのにゲームが障害になるなど有り得ないからな!!』

 『そーですか』

 『よし、クリア。次だ』

 『相変わらず速いですね』

 『今日はいつになくテンションが上がっているからな!

  フハハハハハぐはっ!』

 『……え? どうしました!?』

 

 

「また天理さんに襲われてるね」

 

「今回の場合は純粋に僕を心配して急いで駆けつけただけのようだな。

 ゲームも傷付かなかったし、怒る事ではないな」

 

「う~ん……」

 

「どうした?」

 

「これも一応肉体接触の一種だとするなら嫉妬すべきなのかなと」

 

「迷うくらいなら嫉妬するなよ」

 

「いや、迷うくらいなら私は行動する事を選ぶよ!

 後ろから桂馬くんに抱きつくっ!!」

 

「……満足したらサッサと離れてくれ」

 

「桂馬くんが塩対応で辛い。

 こういうのってさ、普通のラブコメだったら

 『おい止めろ! 胸が当たってる!』

 『当ててるのよ!』

 みたいなやりとりがあるんじゃないの!?」

 

「お前との接触なんざもう慣れたからな」

 

「ううううう~」

 

 

 

 

   ……ノーラに捕まった後……

 『ようやく来たねお嬢ちゃん。

  見てなさい、お前の憎い男をヒドい目に遭わせてあげるから』

 『止めてください! 私、桂馬君を憎んでなんか……』

 『センサーはそうは言ってないわよ。

  この男のせいでお前の心にスキマができているのさ!!』

 

 

「ノーラの能力、チートかと思ったが意外と穴があるな」

 

「心を映し出すはずなのにスキマがあるかどうかは判断できてないんだね」

 

「……いや、スキマ自体はあったのかもしれんぞ」

 

「え? どういう事?」

 

「……ちょっとキャラコメを止めるぞ。そしてちょっと議論させてくれ。

 議題は『天理に心のスキマが存在したのかどうか』だ」

 

「いや、議論もなにも……あの天理さんだよ?

 心にスキマができるとは思えないけど?」

 

「そうだな。真っ当な方法でスキマができるとは思えない。

 しかし、真っ当じゃない方法で強引に穴を開けられた可能性は?」

 

「…………」

 

「あくまでも原作の話になるが、過去編の最後に僕はヴィンテージが残した道具を使って女子たちの心に穴を開けた。

 歩美・結・栞・月夜・かのん。

 そして、天理」

 

「っ!」

 

「あの道具の動作原理は分からないが『対象の心に穴を開ける』のは確定だ。

 そしてその穴は駆け魂を寄生させる為のもので間違い無いだろう。

 だけどな、これって矛盾してるんだよ」

 

「……天理さんの回想。

 あの時、駆け魂の大群に囲まれてたのに取り憑かれてなかったね」

 

「そういう事だ。

 まぁ、特定の駆け魂しか入れないように上手く細工をしていたとかいう解釈も可能だけどな。やや苦しいが。

 そして、そんな特殊な方法で開けられた穴なら自然治癒せずに現在も残っている可能性は一応ある。ノーラの能力が正常に機能していた可能性も十分有り得るな」

 

「く、苦しいね……」

 

「そうだな。非常に苦しい。

 しかし……超解釈をせずに矛盾を矛盾のまま残したらどうなるだろうか?」

 

「え? どういう意味?」

 

「天理の回想と過去編での僕の成果。この2つは矛盾している。

 しかし、これは矛盾ではなく単純に別だと考えたらどうだろうか?

 つまり……過去編で訪れた世界と、僕が元々居たはずの世界は、よく似た別の世界だ……と」

 

「別の世界? どういう事?」

 

「……僕にも分からん。

 ただ……これは、使えるかもしれんな」

 

「????」

 

「……スマン、脱線したな。キャラコメに戻るとしよう」

 

  ※

 単純に設定がブレただけだとは思いますが、真面目に考えると色々と考察できそうです。

 この矛盾に対する答えを知っている方がいらっしゃいましたら是非ともご連絡下さい。

 この辺の解釈は本作の続編に凄く影響するので。そもそも書けるかは分かりませんが……

 

 

 

 『ノーラさん! 止めてください!!』

 『エルシィ? 何よ、邪魔する気?』

 『その人、私の協力者(バディー)です! だから解放して下さい!!』

 『この男が? そりゃあますます痛めつけがいがあるわね』

 『止めてください!! それに、悪魔が率先して駆け魂攻略するのは禁止されてるはずですよ!!』

 『『原則禁止』でしょ? 絶対禁止ってわけじゃないわ。

  私の協力者(バディー)は頼りないから()()()()私がやってんのよ。

  ん~、まあ殺すのは勘弁してあげるわ。

  その代わり……死ぬより辛い目に遭ってもらう!

  エルシィは知ってるわよね? 私の能力、人の心を覗ける力!!

  この男の一番大切なモノを、壊してあげる!!』

 

 

「一番大切なもの……私の事だね!!」

 

「寝言は寝てから言え」

 

「……そうだね! 私が壊されたら大変だからそう言ってノーラさんを騙さないとね!!」

 

「ハイハイ。

 ノーラだったら殺人くらい遠慮なくやってそうだが、ルール上どういう問題が発生するんだろうな。

 日本の法律で裁くのは多分無理だから地獄の方でルールを作って自重してもらわないと困るんだが……」

 

「ノーラさんが本当に遠慮なく殺そうとしてるから特に罰則なんて無い気がするね……」

 

「駆け魂の危険度を考えたら人間1人の命くらいは軽いという判断かもな」

 

 

 

 『さぁ、曝け出せ。お前の心の『一番』を!!』

  (中略)

 『けいまくーん!』

 『よっきゅぅぅんんん!!』

 『会いたかったよ、桂馬君!』

 『よっきゅん、ついに僕達は辿り着いたんだ。エンディングの向こう側へ!!

  あははは、あははははははははは!!!』

 

 『……いや、これどういう願いよ』

 『か、神様……』

 『……変わってないなぁ、桂馬君』

 『えっと……ノーラさん、きっとこれってコイツが好きな女の子なんじゃないかな?

  何かちょっと絵が変だけど』

 『こいつにこそ心のスキマがあるんじゃないでしょうね……

  まあいいわ。それじゃあお前の大切なモノを、壊してあげる!!』

 

 

「う~ん……桂馬くん。1つ聞かせて?」

 

「どうした?」

 

「当時の桂馬くんの1番がよっきゅんなのは分かったけど、今はどうなの?

 私とよっきゅん、どっちが大切?」

 

「2Dと3Dの存在は同じ尺度で語れるものではないんだが……

 まぁ、よっきゅんを除けばお前が1番である事までは断言できる」

 

「微妙に腑に落ちない点はあるけど……一応納得したよ。

 私も大好きだよ、桂馬くん」

 

「……フッ」

 

 

 

  ……よっきゅんが夕日をバックに溶けた直後……

 『うわぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!』

 『ふふっ、どう? 大切なモノを失った気分は!!』

 『…………だ』

 『?』

 『ロードだぁぁああああ!!!!』

 『!?』

 『ロードロードロードロードロードロードロードロードロードロードロードロードロード!!!

  ロォォォォオドォォォォォオオオ!!!!』

 『ひぃっ!?』

 『ちょっ、ノーラさん!?』

 『な、何なのコイツ!? 離して!!』

 『……ダレだ。

  よっきゅんをコロしたのはダレだぁぁああ!!!』

 『痛っ! 力強っ!?』

 『お前たちはいつもそうだ。思いつきの盛り上げや浅薄な話題作りの為に簡単にヒロインを殺す。

  殺されるヒロインの気持ちになった事があるのかぁああああ!!!!』

 『え、ご、ごめんなさい……?』

 『よっきゅんを返せ返せ返せぇぇえええ!!!』

 『いやー!!!』

 

 

「え~っと……何て言えばいいんだろう、コレ」

 

「安直にヒロインを殺そうとするからこうなるんだ。

 物語の構成上、そういう展開があるべき作品も確かに存在するだろう。だからと言ってヒロインが安易に殺されていいわけがない。

 彼女たちは所詮はデータの塊だとか心無い事を言う連中も居るが、それを言うなら現実(リアル)の人間だってタンパク質や水だ。

 決められた文章を読み上げる事しかできないとしても、確かに彼女たちは生きているのだから」

 

「生きている、か。そうだね。

 たとえフィクションの存在だとしても、私たちの心の中で、きっと生きているから」

 

  ※

 創作者、特に二次創作者として肝に銘じておきたい言葉です。

 まぁ、桂馬の反応は過剰な気がしないでもないですが。

 

 

 

 『さて、あのよっきゅんを酷い目に遭わせたあの悪魔を追っ払うのは賛成だが……協力できるかどうかはまだ分からんぞ』

 『そうですね。あなたに私たちを守れる力があると認めた場合の話です』

 『そういう問題じゃねぇよ! って言うか何で上から目線なんだよ!!』

 『少々遠回りしましたが、私と天理はその為に桂木家を訪問しました。

  あなたなら助けてくれる。天理がそう言っていたので』

 『いや、話聞けよ』

 

 

「ディアナさんが神様してるね」

 

現実(リアル)の神とはいえ神だからな。ディアナの態度はある意味一番神っぽいかもしれん。

 ……いや、ウルカヌスには負けるか?」

 

「……と言うより、それ以外の方々がヒドすぎるだけなのでは……?」

 

 

 

 

 『あ、あの~』

 『ん? どうした?』

 『えっと……攻撃されてるみたいです、この部屋』

 『……はい?』

 『だから、この部屋に張っておいた結界が攻撃されてるんです。多分ノーラさんです』

 『……もう来たのか。どのくらい保つ?』

 『数時間は余裕で持ちますけど……それやるとノーラさんに目を付けられそうで怖いです』

 『適当な所で負けておかないとお前がつけ回されるのか……

  仕方ない。結界を上手く破らせてから……全員で屋上に行くぞ!』

 『は、はいっ!』

 

 

「耐えすぎると目を付けられるとか、その辺の判断がエルシィさんにできるのかな……?」

 

「あ~、これな。実は設定ミスらしい。

 ミネルヴァとしての能力を全面に押し出してる時は知能指数が上がるような描写をいくつか入れて、それをエルシィの正体の伏線にしようとしたらしいんだが……

 ……最終的に出来上がったのは駄女神だったんでなぁ……」

 

「……本当はもっと頭が良い予定だったんだね」

 

「筆者が当時イメージしてたミネルヴァ像は性格や趣味嗜好はエルシィのまんまだが、一般人の平均水準よりやや上くらいの思考能力を持っていたらしい。

 ただ、紆余曲折あって言葉だけ更に丁寧な、だけど思考能力は据え置きなミネルヴァになったようだ」

 

「ちなみに、変えた理由っていうのは?」

 

「その方が面白そうだから」

 

「…………」

 

「……という理由もかなり大きいが、それと同じくらい大きな理由にお前を立ち直らせる為というのがあったらしい」

 

「え? どういう事?」

 

「考えてもみろよ。お前のせいで、いや、決してお前のせいではないがエルシィが刺されて、何とか復帰したと思ったら別人だったら……安易に立ち直れないだろ。

 決してできないわけではないが……あの後お前には物語上で大事な役割があったんで確実に後腐れなく立ち直らせたかったらしい。

 だから、『エルシィが戻ってきた』という風にしたわけだな」

 

「……それはある意味私のせいなのでは……?」

 

「あの展開を作った筆者のせいだ。気にするな。

 ……まぁ、そういう理屈でエルシィの知能指数が上がっている。

 設定ミス以外の理由を作るのであれば……『理力を使ってると調子が出てくる』と解釈しておくか」

 

「……微妙に納得できる理由だね」

 

 

 

 『はぁ、はぁ。ようやく追い詰めたわよ!!

  エルシィの協力者(バディー)の分際でよくも手間かけさせてくれたわね!!』

 『見事な逆ギレだな。エルシィ、適当に妨害してくれ』

 『りょーかいです! えいっ!』

 

  どうやらノーラの足を結界で固定したようだ。まさに足止めだな。

 

 『な、何よこれっ! 外しなさいっ!!』

 『いや、外す訳が無いだろ。じゃあな』

 

 『……ところでエルシィ、あの結界の強度どうした?』

 『ご安心下さい! 2分ほどで勝手に割れるようにしておきました!』

 『……結界だけは凄いよな、お前』

 

 

 

「ここのエルシィも知力ブーストがかかっている状態だ」

 

「エルシィさんがここまでやるって……最初のミネルヴァさんが協力者だったら、色々と便利だったのに」

 

「無い物ねだりしてもしゃーないな。

 今はこのエルシィの頭が良かった事を喜んでおくとしよう」

 

 

 

 『こ、今度こそ観念するのね!!

  いい加減に駆け魂を出させてもらうわ!!』

 『その為に僕を痛めつけるのか?

  ハッキリ言って無駄だぞ。何故なら……僕達は愛し合っているからな!!』

 『…………え?』

 (おい天理! そこは合わせて恋人のフリをしてくれ!)

 『ど、どどどどうしてそんな事しなきゃいけないの!?』

 (たのむたのむ!!)

 『おーい、愛し合ってるようには見えないけど?』

 

 

「当時から天理さんの好感度はかなり高かったんだよね」

 

「えっ、そうなのか?」

 

「ええっ!? 気付いてなかったの!?」

 

「えっとだな…………天理に告白された事はあったが、この時既にそうだったのか?」

 

「桂馬くん鈍感過ぎるよ!!

 いや、助かったんだけど、そのおかげで色々と助かったんだけどさ!!

 天理さんが不憫過ぎるよ!! いや、恋敵だから助かったけどさ!!!」

 

「お、落ち着けかのん」

 

 

 『わ、私は……私は、桂馬君を憎んでなんか無い!

  ずっと、大好きだったよ。桂馬君の事が……』

 (よくやった。良いセリフだ)

 『えっ?』

 

  やや強引だが、所詮はただの演出だ。これで問題ないだろう。

  流れるような動作で、僕は天理にキスをした。

 

 

 

「じぃぃぃ~~……」

 

「……言いたいことがあるなら口にしたらどうだ?」

 

「……ここまでする必要あった? 抱き合うくらいでもじゅーぶんだったんじゃない?」

 

「う~む……最初の頃にエルシィが『口づけ程度でいい』って言ってるから大体その辺が恋愛による攻略の目安なんじゃないか?

 絶対に必要かと言われたらちょっと分からないが、やるべきではあったと思うぞ」

 

「……確かに、そうだね。

 キス、いいなぁ。私まだ1回しかしてもらった事無いのに」

 

「いや、天理だって1回目だし」

 

「そういう問題でもないけど……はぁ……」

 

 

 

 

  ……翌日 引越しの手伝いを終えた後……

 『これで大体終わりか。じゃあどこで話すか。

  お前の部屋で良いか?』

 『ふえっ!? えっと、その……』

 『ん? ダメか? じゃあ僕の部屋で……』

 『い、いや、あ、あの……

  わ、私の部屋で……』

 『分かった。エルシィ居るかー?』

  『はーい! 今行きまーす!』

 『よし、向こうも大丈夫みたいだな。

  ん? どうした天理?』

 『そ、そうだよね、妹さんもだよね。何でもないよ。うん……』

 

 

「……エルシィさん同伴なら私の部屋にも来てくれる……?」

 

「いや、そういう問題じゃないから。

 と言うか、そもそもお前の部屋に行って何をしろと?

 一応居候だから私物の類は殆ど置いてないはずだよな?」

 

「えっと、えっと……き、着替えとか置いてあるよ!!」

 

「だからどうした」

 

「えっと……何でもない……」

 

 

 

「おっと、次は追憶編か。

 あの時はちょっと変わった表現方法を使ってたな」

 

「どれどれ? あ~、確かに。

 現在の視点と過去の視点を交互に繰り替えして、過去視点での話し手以外の人の反応はバッサリとカットしてるんだね」

 

「最低限分かるように作っているがな。

 漫画とかだと黒い枠にすればそのコマは過去の話だと一目で分かるが、小説だとそうはいかんからな。

 色々と模索した結果がアレだったらしい」

 

 

 

   ……追憶中……

  あった事……あった事……

  ……ああ、そうだ。天理が泣き出した記憶があるな。

 

  ……おいディアナ、ドヤ顔するな。天理が恥ずかしそうにしてるぞ。

  おいおい気にするなよ。小学生が洞窟に取り残されたらそりゃ泣くから。

  え? 僕は泣いてなかった? そりゃあ僕は神だからな。

  何だと? 人間が神を騙るな? ふっ、現実(リアル)の神風情が本物の神に敵うとでも……え? 続き、ったくしょうがないな。

 

  えっと、天理が泣き出して、更に腹も減ってたみたいだから弁当を渡したな。天理の分の荷物は荷物置き場に置きっぱなしにしてたんだったかな?

  あと、飴とかも押しつけた記憶がある。甘い物が苦手だからちょうど良かった。

 

  ん? 僕の分の食料? ゲームがあれば生きていけるだろ?

 

 

 

 

「ここ、実際にはどんな会話があったんだろう……?」

 

「確か……こんな感じだ」

 

 

  ~~~~~~~~~~~~

 

 

「その後は? その後はどうなったんですか!?」

 

「落ち着けエルシィ。その後はあんまりよく覚えてないんだよな」

 

『そこからが大事なのではありませんか! どうしてそこを忘れているのです!!』

 

「あった事っていってもだなぁ……

 ……ああ、そうだ。天理が泣き出した記憶があるな」

 

『ようやくその辺りの事を思い出しましたか。やれやれ』

 

「……おいディアナ、ドヤ顔するな。天理が恥ずかしそうにしてるぞ。

 おいおい気にするなよ。小学生が洞窟に取り残されたらそりゃ泣くから」

 

「で、でも……桂馬君は泣いてなかったよ?」

 

「そりゃあ僕は神だからな。泣かなくて当然だ」

 

『聞き捨てなりませんね。人間如きが神を僭称するなど。事と次第によっては神罰を下しますよ?』

 

「何だと? ふっ、現実(リアル)の神風情が本物の神に敵うとでも……」

 

「か、神様! それより続きをお願いします!!」

 

「え? ったくしょうがないな。

 えっと、天理が泣き出して、更に腹も減ってたみたいだから弁当を渡したな。天理の分の荷物は荷物置き場に置きっぱなしにしてたんだったかな?

 あと、飴とかも押しつけた記憶がある。甘い物が苦手だからちょうど良かった」

 

「……あの、神様の分の食料は……」

 

「ん? ゲームがあれば生きていけるだろ?」

 

『……エルシィさん。桂木さんはいつもこうなのですか?』

 

「は、はい……いつもこんな感じです」

 

 

  ~~~~~~~~~~~~

 

 

「こんな感じだ」

 

現実(リアル)の神と本物の神って一体……」

 

「? そのままの意味だが」

 

「……うん。そうだね」

 

 

 

 

 『しかし、これでもう桂木さんも天理を忘れないでしょうね。

  何せ2人は口づけまで交わした仲なのですから!』

 『ちょっ、ディアナ!? な、何言ってるのよ!!』

 

 

「何気ない会話だが、割と重要な会話でもある。

 『天理に攻略の記憶がある』事が判断できる会話だ」

 

「身に覚えの無い事をディアナさんに告げられた……って解釈するのはちょっと無理があるか。

 天理さん自身がキスの記憶を持っている事が確認できる会話だね」

 

「記憶操作の範囲の検証なんざやってないからなぁ。日常会話だけで探るのはかなり厳しい。

 ……お前みたいにな」

 

「ん~、褒め言葉と受け取っておくよ」

 

 

 

 

 『あ、あの……桂馬君』

 『ん?』

 『その、ディアナの言うことは気にしないでね。あれがお芝居だって事は、分かってるから……』

 『それでは困るのです!!』

 『あ、生きてたのか』

 『鏡はあくまで写像ですから。本体はずっと天理の中に居るのでダメージはありません。

  そんな事より、あなたには天理と結婚して欲しいのです!!』

 『ディアナああっっ!?』

 

 

「桂馬くんは渡さないよ!!」

 

「映像に言ってどうする。

 まぁ安心しろ。現状ではお前以外の結婚相手は考えられないから」

 

「現状では……か。

 ……ハッ! 桂馬くんが他の女の子に目移りしないようにずっと家に閉じこもらせた方が良いのでは?」

 

「ヤンデレかよ!?」

 

「え? ヤンデレ? 多分違うと思うけど……

 それは置いておいて、桂馬くんにとっても都合が良いんじゃない? ずっと家に閉じこもってゲームできるよ?」

 

「ふむ………………

 いや、ダメだ。そう考えるとかなり魅力的な提案ではあるが、ダメだ」

 

「どうして?」

 

「もしそういう風になった場合、お前が1人で生活費諸々を稼ぐ事になるだろう。

 それに対して僕はずっとゲームに専念している。それだと不公平だ。

 お前とのゲームは対等な条件じゃないとな。そうじゃないとつまらん」

 

「う~ん。そういう事なら分かったよ。

 他の女の子に目移りしちゃダメだからね!」

 

「そうだな……ならゲームをしよう。

 他の女子に目移りさせないように、僕を繋ぎ止めておけ」

 

「う~ん、私たちのどっちかが寿命を迎えるまで続きそうなゲームだね」

 

「僕も同意見だ。で、どうするんだ?」

 

「勿論受けるよ。だって絶対に負けないもん」

 

「……そうだな。僕もお前が負ける事は無いと信じてるぞ」

 

 

 

 

「ん? これで天理編はとりあえず終了のようだ。

 ここからは天理編後日談だな」

 

「あ~、修羅場にしようとしてあんまり修羅場にならなかったやつだね」

 

「修羅場にならなかった理由は主に2つだ。

 まず、うちの筆者は問題解決が……上手いか下手かは置いておいて、速い傾向にある。

 しかし、問題を作るのは割と苦手なようだな」

 

「恋愛のすれ違い描写とか、多分描けないよね、うちの筆者さん」

 

「そうだな。やってやれんことは無いかもしれんが、そもそもやろうとしない。

 筆者の嗜好として『複数のヒロインが乱立するハーレム展開を好まない』『主人公とヒロインは強固な信頼関係で結ばれる事を望む』なんて感じのものがあるようだ。

 結果、変な誤解をしてこじれるとか、そういう展開が一切生まれない」

 

「信頼関係かぁ……良い言葉だね!!」

 

「そうだな。そしてもう1つは……お前だ。かのん」

 

「え、私?」

 

「だってお前、記憶が無くなったフリしてたろ?

 そしてついでに恋愛的なアピールは一切してなかったろ?」

 

「うん。そんな露骨な事したらすぐ桂馬くんにバレちゃうからね」

 

「だから、『かのんがディアナとかに嫉妬する』っていう展開を書くのは不可能だ。

 内心嫉妬しててそれが滲み出るくらいなら可能だが、それを言葉にするのはまず無いだろう?」

 

「うん。そんな事は口が割けても言えないよ」

 

「だから、不可能だったわけだ。

 まぁ、『ディアナがかのんに嫉妬する』なら可能なんだが……何故かディアナが言いくるめられる展開しかイメージできなかったらしい。

 お前なら詰め寄られても動揺する事無く淡々と理詰めで反論できるはずだ……と」

 

「う~ん……確かに、既に演技してるからいちいち動揺したりしないね。刃物とか突きつけられたら流石に動揺すると思うけど」

 

「そんな展開にしたらお前が動揺する前に筆者も読者も引くな。

 そういうわけで、異常と言えるレベルの事をされない限りはペースは乱されない。

 そして、お前は僕との関係をしっかり頭の中で意識し続けてたんだろ? 何で僕達が一緒に居るのかという事に的確に反論できるはずだ。

 アイドルならトークも上手いだろうしな」

 

「……筆者さん、そんな所まで考えてたの?」

 

「いや、当時やろうとして無理だった理由を今考察してるだけらしい」

 

「そ、そっかぁ……」

 

 

 

 

   ……後日談 七香さんとの対局から……

 『ぐぬぬぬぬ……』

 『…………』

 『……ダメや。投了!』

 

  やれやれ、やっと終わったか。今回は少し疲れた気がする。

 

 『う~ん、あと1手やったのになぁ』

 『ん? そこまでか?』

 『え? もしかして気付いとらんかった?

  せやったら……ほい』

 『……こうだな』パチッ

 『じゃあこっち』パチッ

 『……』パチッ

 『……』パチッ

 『…………こうだな』パチッ

 『ほいっと』パチッ

 『………………これか』パチッ

 『これや』パチッ

 『何だと!? ………………いや、これだ』バチィッ

 『ん~……やっぱり投了や。

  ほらな? 1手差やろ?』

 『そのよう……だな』

 

 

 

「少しずつ追い詰められてるね……」

 

「原作での僕はハメ技に引っかかっていたようだが……本作でも多少は使っているもののほぼ純粋な実力で対等に近付いているようだ。

 師匠の存在が大きいな」

 

 

 

 

 『いや~、いっつも見送ってもろて悪いなまろん』

 『別に大丈夫だよ~』

 『しっかし、ここって一応桂木の家やったよな? 家主が見送らずに従妹だけが見送るってどうなん?』

 『桂馬くんってそういう所が無頓着だから、私が何とかしないとね』

 『そのセリフ、何や嫁さんみたいやな』

 『よ、嫁って、そんなんじゃないから!!』

 『ははっ、んじゃ、またな~』

 『もう……』

 

 

「この辺って若干素が出てるのか?」

 

「え? う~ん……確かに。

 桂馬くんも居ないからちょっと油断してるかもしれない」

 

「……まぁ、記憶が無くても普通に言いそうな台詞だけどな」

 

「ダイレクトに『桂馬くんが好きなのか?』とか訊かれたら冷静に答えられたと思うけど、七香さんの独特のノリのせいでちょっと素が出たのかも」

 

 

 

  ……玄関……

 『おい榛原、駒忘れてるぞ』

 『ん? お、ホンマや。サンキューな』

 『ああ。ん?』

 

 『……どういう事ですか、桂木さん』

 

 

「家に女子が居るだけで嫉妬するのはどうなんだろう?

 過剰反応な気もするけど」

 

「…………いや、普通に反応すると思うぞ。嫉妬かどうかはともかく、どういう事かと言いたくなる気持ちは分かる」

 

「そんなもんかな?」

 

「想像してみろ。僕が良く知らない女子を家に引き連れる姿を」

 

「…………、…………」ニコニコッ

 

「何故笑顔になる!?」

 

「えっとね。まず桂馬くんに言われた通りに想像してみたけど……全然大丈夫だったよ!

 何か事情があって連れてきたんだろうとしか思わないよ。

 まぁ、私は既に桂馬くんと一緒に住んでるからゆとりがあるだけかもしれないけど」

 

「ふむ、そうか……」

 

「でさ、桂馬くんってさっき『気持ちは分かる』って言ってたよね?」

 

「ああ、言ったな」

 

「一体どんな場面を想像して『気持ちは分かる』って言ったのかな~って考えたら、何だか嬉しくなっちゃてさ」

 

「サッサと次に行くぞ!」

 

 

 

 

 『では、説明して下さい』

 『ちょっと待て、あと少しでセーブできる』

 『こんな時までゲームですか!? 何を考えているんですか!!』

 『……よし、セーブできた。

  んじゃあまずは……これ何本に見える?』

 

  指を3本立ててディアナに突きつけてみる。

 

 『バカにしているんですか!?』

 『大事な事だ。答えてくれ』

 『……3本ですね。それがどうかしたんですか?』

 『では次、()()、何色に見える?』

 

  本命の質問として、かのんの髪を指差しながら問いかけた。

  かのんの本来の髪色がピンク系の色なのに対して、『西原まろん』の設定は黒髪ロングだ。錯覚魔法が効いているか否かの判断にはうってつけってわけだ。

  さて、結果は?

 

 『黒ですね。何か関係があるんですか?』

 『……分かった。変な質問に付き合わせて悪かったな』

 

 

 

「女神様に錯覚魔法が通用しない可能性を考えての質問だったね」

 

「普通に効いてたけどな。

 この辺は割とスムーズに決まったようだ。

 何故なら……かのんとの同棲をディアナに納得させる方法が全く分からなかったからだ」

 

「そういう理由なんだね……」

 

「そして、もう一つの理由、エルシィの正体を隠す為……などというものは無い」

 

「……え? どういう意味?」

 

「錯覚魔法が理力をも誤魔化す設定、実は当時は全く存在していなかった。

 その設定が正式に練られたのはかなり後、アポロ初登場となる体育祭準備編だったりする」

 

「えええええっっっ!? そんな後だったの!?

 ……あの、じゃあ何でディアナさんはエルシィさんと言うかミネルヴァさんに気づかなかったの?」

 

「なんらかの理由により理力を隠蔽できていた事だけは確定だそうだ。

 肉体が特別制だとか、色々と理由は付けられるな」

 

 

 

   ……七香さんについて軽く説明後……

 『どうだ、納得したか?』

 『1週間に1回のペースで2人きりで将棋をしていると。そういう事ですね』

 『ああ。そういう事だ』

 『年頃の男女が2人きりで……十分やましい事ではありませんか!!!』

 『何故そうなった!?』

 『いいですか? 天理以外の女性とは一切会話してはいけません! 肝に銘じておきなさい!!』

 『そんな縛りを設けて生活できるか!!

  ……いや、意外とできるか』

 『桂馬くん!?』

 

 

「生活するだけなら割と何とかなりそうだ。家では母さんに話しかけられてもひたすら目線だけで対応し、教室で話す女子は居ない。

 いや、ちひろなら話しかけてくるか? 仮にそうだったとしても無視すればいい」

 

「……本当にできちゃうんだね。生活するだけなら。

 でも桂馬くん。大好きな私と話せなくなっちゃうよ!!」

 

「大好きかどうかは置いておくとして……困るのは確かだな。

 アイコンタクトだけで会話するとかも考えたが、少々無理があるな」

 

「いや、仮にできたとしても、じゃなくて挑戦するだけでディアナさんが嫉妬しそうなんだけど……」

 

「……まぁ、今なら念話があるから関係ないな」

 

「……それもそうだね」

 

 

 

 『って、違う違う。

  厳しすぎるだろうが! うちの家族にまで嫉妬するつもりか!?』

 『むぅ……確かに家族とも話せないのは困りますね。天理も父親と会話はしていますし。

  仕方ありません、家族との会話は許してさしあげましょう』

 

 

「言質は取ったね!」

 

「反撃開始だ」

 

 

 『……そうかそうか、家族はセーフか。なるほどな。

  じゃ、こっちの従妹はセーフだな』

 『ん? イトコ?』

 『まろん、自己紹介してくれ』

 『うん。初めまして、天理さんとディアナさん。

  桂馬くんの従妹の西原まろんです。

  引っ越していらっしゃった時は挨拶できなくて申し訳ありませんでした。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます』

 『い、イトコ……従妹ですか』

 

 

「……考えてみると、従妹が家族っていうのもそこそこ強引だけどな」

 

「従妹なら結婚もできる……って台詞は聞き飽きたかな?

 あ、でも許嫁なら家族だよね!!」

 

「確かにそうだな。あの時の僕にそんな認識は無かったし、かのんが言い出すとも思えないが……その主張が通れば家族という事になるな。

 だからと言ってディアナが認めるとは思えんが」

 

「……そうだね」

 

 

 

 

「……さて、ここからはディアナに対して僕達の活動を上手いこと説明する展開になるんだが……その前にこちらを見てもらおう」

 

 『納得したか? したならサッサと帰ってくれ』

 『そうですね……って待ちなさい! 将棋の人の件がまだ済んでいません!!』

 

「あれ? こんな台詞あったっけ?」

 

「この会話は本編の没ルートだ。一応データだけはパソコンに残してあったんで、コメンタリー執筆中に見つけたそうだ。

 せっかくだから流してみるとしよう。途中で途切れてるけどな」

 

 

 

 『納得したか? したならサッサと帰ってくれ』

 『そうですね……って待ちなさい! 将棋の人の件がまだ済んでいません!!』

 

  チッ、忘れてなかったか。

  ったく、何で僕が鈍感系ハーレム主人公みたいな苦労をせにゃならんのだ。

 

 『榛原の件に関しては向こうが勝手に押しかけてくるんだが、どうしろと?』

 『追い返しなさい!』

 『追い返すだけで追い返せるならとっくにやってるよ。

  今は自重して週1の対局だが、それさえも断ったらあいつ家の前に座り込むぞ。一日中インターホンを連打するってのも有り得る』

 『……何がその人をそこまで駆り立てるんでしょうか?』

 『勝負への執念が成せる事だろうな。少なくとも僕に勝つまでは絶対に諦めないだろう』

 『それでしたら、わざと負ければこれ以上つきまとわれないのでは?』

 『……貴様、それは本気で言っているのか?』

 『? ええ。当然です』

 

  ……そうかそうか。お前はそういう奴だったんだな。

 

 

 

「……ここから先も多少残っているようだが、これ以上進めるのは止めておこう」

 

「凄く険悪になってるね。

 ディアナさんの性格を考えたら確かにこれくらい言っちゃいそうな気がするよ。

 『天理さんと桂馬くんは付き合って結婚して当たり前』くらいの価値観で動いてるから」

 

「没になる理由もよく分かるだろ? この流れで進めたらディアナをとことん貶めて終わる展開しか見えない。

 天理さえ絡まなければ割とまともな奴のはずなんだがな……」

 

「それ以外の終わり方となると……桂馬くんが言いくるめられて謝罪する展開とか? 別の意味でもっと有り得ないよねぇ……」

 

「しょうがないから七香の事は忘れた事にしてルートの正常化を試みたようだな。

 ……さて、本編に戻るとするか」

 

 

 

 『……どこまで話したっけ?』

 『そうですね、封印から解き放たれたヴァイスの魂を新悪魔の人たちが追っているという事ですかね』

 『それしか話してなかったか』

 『はい。あと、ノーラという人とエルシィという人が新悪魔……ですよね?』

 『そうだな』

 

 

「目標としては『恋愛を使った攻略を隠す事』だな」

 

「そう言えば、エルシィさんについてはノータッチなんだね」

 

「そこを追求しようとすると没ルートの二の舞になりかねんからなぁ……

 まぁ、あのエルシィだから大丈夫だと判断してくれたんだろう。きっと」

 

 

 『エルシィ曰く、心のスキマを埋める一番の方法は『恋愛』だそうだ。キスできるレベルまで仲良くなれば上出来らしい。

  あの時は切迫してたんで分かりやすい見た目のインパクトが必要だったからああしたまでだ』

 『恋愛……そうですか。

  桂木さん、つかぬ事を伺いますが……

  ……天理以外の女子とキスなどしていないでしょうね?』

 

 

「まったく、何を言ってるんだろうなディアナはー」

 

「そうだよね~。そんなの当たり前だよね~」

 

「こういう質問は当然想定していたから普通に対処できた。

 唐突に質問されていたら何かやらかしていた可能性は0ではないな」

 

「いや、桂馬くんだったら完全アドリブでも何とかできると思うけど」

 

 

  ……女神様帰宅後……

 『ふぅ、疲れた』

 『お疲れさま、桂馬くん』

 『……中川、女神についてどう思う?』

 『そうだね……駆け魂を封じていた存在なんだから味方になってくれれば心強いと思うよ。

  けど、制御するのが凄く大変そうだね。神様だったらああいう性格なのはしょうがないのかな?』

 『女神……か。

  そう言えば、女神ってあいつの他にも居るのかな?』

 『えっ? 確かに……そうだね。

  1人居たんだからもう2~3人居てもおかしくないかもね』

 『……あんなのが沢山居るとか勘弁してほしいな』

 『そ、そうだね』

 

 

「この辺ってエルシィさんの事を思い浮かべながら言ってたんだね」

 

「ああ。女神が複数居るならエルシィは女神かもしれないとは考えていた。

 お前は……この会話を見る限りでは当時はまだ気付いてなかったようだな」

 

「そうみたいだね……いやでも悪魔じゃないって事には薄々気付いてた気がする。女神と結びつかなかっただけで。

 ……あれ? 私ってエルシィさんの正体にいつ頃気付いたんだっけ?」

 

「いや、僕に訊かれても困る」

 

 

 

 

「これにて後日談も終了だ」

 

「今回は長かった気がするよ」

 

「そうだな。平均が約8000字に対して今回は18801字のようだ」

 

「……通りで長いと感じたわけだよ」

 

「さて、次回は……ああ、棗編か」

 

「いや、おばあちゃん編じゃないの!?」

 

「……『おばあちゃん』編でない事は確かだな。

 筆者も日永梨枝子編ではなく黒田棗編と呼んでるんでボケたわけではなく本当に棗編だ」

 

「それは筆者さんがボケただけなのでは……?」

 

「まぁ、その辺は置いておこう。次回『奥山村五行家連続殺人事件!』だ」

 

「最後には大きな屋敷を燃やすよ!

 それでは、また来週!」

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