もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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棗編 奥山村五行家連続殺人事件!

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第18回キャラコメンタリー始めます!」

 

「今回は棗編だな。

 ちょっと前にも説明したが、日永梨枝子編のドローはかなり早いタイミングで発生したらしい。

 しかし、夏休み以外の時期にできる気がしなかった……というのは言い過ぎだが、かなり面倒だったんで夏休みまで先送りにしたようだ」

 

  ※

 トランプ抽選を決定した頃はまだ棗は存在していなかったので、ドローの名称は日永梨枝子編

 

「それでも一応山札の中には入ってたんだね」

 

「まぁな。

 あと、仮にこのタイミングまでに引かなかったとしても絶対にやるつもりだったそうだ。

 本章では極めて重要な伏線が1つ仕込まれているからな」

 

「あれ? 何だろう……?」

 

「それはその時に解説するとしよう。

 それではVTRスタート」

 

 

 

 

 『うぷ……よ、酔った……』

 『神様ったら、大丈夫ですか?』

 

 

「桂馬くん、大丈夫……?」

 

「僕はただゲームをしていただけだというのに。これだから現実(リアル)は!!」

 

「う~ん、自業自得と言えなくもないけど、私も気持ちはよく分かるよ。

 ロケ現場への移動中に台本とか読んでると凄く酔うもん……」

 

「メルクリウス、何か酔い止めの魔法は無いのか!!」

 

(……平衡感覚を鈍らせるようにすればイケるか?

 車から降りる時にうっかり切り忘れると転ぶ事になるが)

 

「それくらいなら別にいいよ! 是非とも開発して!!」

 

 

 

 

 『神様~、ちゃんと手を合わせるんですよ~』

 『……悪魔が手を合わせてて良いのか?』

 

  今回ここに来た目的でもある墓参り。

  特に先延ばしにする意味も無いのでサッサと済ませる。

  人間が死んだら幽霊になるとかいう迷信は全く信じちゃいないが、黙祷を捧げておこう。

  ……いや、幽霊は居なくても地獄や天界はあるんだよな。人は死んだらそこに行くのだろうか?

  後でエルシィに……いや、ハクアかディアナにでも訊いてみよう。

 

 

 

「魂の行方……か。

 一応、地獄と言うか冥界に行ってるハズだよな。

 死者の魂の浄化は冥界の役割で、再び魂を吹き込むのは天界の役割だったはずだ」

 

「アルマゲマキナの後でも冥界が冥界としての機能をちゃんと保ってるかちょっと怪しい気がしないでもないけど……300年間の人間界で特に問題が発生してないって事は何とかなってるんだろうね」

 

「……いや、実は天界に運ばれて、冥界の役割も頑張ってこなしているのかもしれん。

 そんな感じでメチャクチャ忙しかったなら人間界のユピテルの姉妹に干渉できなかった理由にもなるしな」

 

「いや、流石に言いがかりじゃないかな……?」

 

「でもなぁ……自分の世界の浄化すらできない有様の冥界に魂の浄化なんて期待できるかと言うと微妙なんだよな」

 

「う~ん……謎だね」

 

 

 

 『あ、チョウですよ神様!』

 『そりゃ田舎だからな。虫くらい居るだろ』

 『人間界のチョウは大人しいですね。地獄のチョウは近くの動植物を食べ尽くしちゃうんで最優先の駆除対象でしたよ~』

 『……それ、本当にチョウなのか?』

 

 

「何そのチョウ、怖い」

 

「人間界のチョウでもキャベツ食ったりするんで害虫な種類も居るが……『動物を食べ尽くす』と言えるような種類のチョウは居ないはずだ。

 今後の進化で出てこないとは断言できないが」

 

「出てくるとしても私たちが寿命を迎えた後の遠い世界の話になりそうだね」

 

  ※

 アブラムシを食べるという肉食のチョウは極少数ですが居るみたいです。

 害虫を食べてくれるんでテントウムシと同じくむしろ益虫ですね。駆除される事はあまり無いでしょう。

 

 

 

 『しかしホントのどかですね~。空気が綺麗で静かです~』

 『……昔はもっと人が居たんだがな。

  静かではあるけど、やっぱり人が居てこその田舎だ。人が居なければ風習は廃れる。

  訛りのキツい駐在さんとかアヤしげな神官と巫女やら

  ふらりとやってきた流れ者をきっかけに本家と分家争いにまつわる連続殺人事件のラストで燃え落ちる屋敷の後片付けとか

  誰がやるんだよ』

 『……それ、風習ですか?』

 

 

「う~ん、確実に言えるのは、燃やしたセットの後片付けは業者さんの役目だよ」

 

「……確かに、そこの住人任せにはしないか」

 

 

 

 

 『……あれ? あの辺、人が沢山居ますよ?』

 『ん? 何だ……?』

 

  エルシィが指し示す方を見てみると確かに人が沢山居るようだ。

  この田舎に似合わないマイクロバスが駐まっており、すぐ側の民家に出入りしている。

 

 『神様、行ってみましょうよ!』

 『あ、おいっ! たく……』

 

 

 

「……何か見覚えあるバスだね」

 

「そりゃそうだな」

 

 

  『本家と分家争いにまつわる連続殺人事件……

   この事件の真相は必ず私が解き明かします! お婆様の名にかけて!!』

 

 『か、神様!! 本当に連続殺人事件をやってますよ!!

  この後はここらで一番大きいお屋敷が焼け落ちるんでしょうか!?』

 『お、おい、それよりこの声……』

 

  『カット! 良い出来だね。次の場所に移動するよ!』

  『はい! 分かりました!!』

 

 『……えっ!? あれ、桂馬くん!? どうしてここに!?』

 『それはこっちのセリフだ!!』

 

  僕達の帰省と同時にどこかへと遠征に行っていたかのんがそこに居た。

  どうやら、その遠征先がここだったらしいな。

  どんな偶然だよ!!

 

 

 

 

「ホント、どんな偶然……いや、運命だね!!」

 

「ただのご都合主義だが……まぁ、そういう事にしておこう」

 

「私の台詞の『お婆様の名にかけて』っていうのは金田一少年の『ジッチャンの名にかけて』が元ネタだね。

 ……こんな所でも男キャラが排斥されてるんだね」

 

「単に主人公が女性だからそれに合わせてみたというのと、丸パクは自重しただけでうちの筆者に排斥する意図は無かったと思うが……」

 

  ※金田一少年

 言わずと知れた名探偵(死神)。祖父が有名な探偵という設定だったはず。

 

 

 

 

 『あれ、かのん。アンタの知り合い?』

 

  かのんに続いて金髪サイドテールが建物から出てきた。

  ううむ、見られたか。まあ仕方あるまい。

 

 『えっと……うん、知り合いと言うか……クラスメイトだよ、一応』

 『ああ、そう言えばアンタもまだ高校生だっけ。

  クラスメイト……パッとしない男ねぇ。

  まあいいわ。握手してあげてもいいわよ』

 

  どこかで聞いた事のあるようなセリフだな。

  生憎だかその手のキャラは間に合ってる。

 

 『要らん。と言うか誰だお前』

 『なっ! あ、アンタっ! この黒田棗を知らないって言うの!?』

 『お、落ち着いて棗ちゃん!! この人私と会った時も同じ事言ってたから!!』

 

 

 

 

「僕と棗の初遭遇だな」

 

「日常回以外の話に出てきたのも初めてだね。

 小さいイメージが先行してるせいか中学2~3年生くらいっていう設定だよ」

 

「エルシィと居た時は真っ当と言うか、普通にクールなキャラ付けがされていたはずなのに本編だとツンデレになってるな。

 説明するまでもないと思うが、ここの棗の台詞はハクアの台詞を参考にしている」

 

「そう言えばハクアさんもこんな感じだったねぇ……」

 

 

 

 

 『あそんでくれなきゃ……うで切るぞ。

  あそんでくれなきゃ……あし切るぞ。

  あそんでくれなきゃ……くび切るぞ。

  ……あそぼうよ』

 『ひぃぃぃっっ!?!? かか神様!! この子怖いです!!!』

 『落ち着け、今のはこの辺に昔からある童歌だ』

 『……へ? う、うた?』

 『ああ。確か爺ちゃんが前に何か言ってた』

 

 

 

「……私、本編だとこの子の事はチラッと見かけたくらいだけど、こんなキャラだったんだね」

 

「非常に不気味だが、実害は無い。今のところは」

 

「後半ではあるって事だね」

 

 

   ……翌日(エルシィが幽霊(?)を目撃した後)……

 

 『誰かが散歩でもしてたんじゃないか?』

 『あんな時間に散歩してる人が居たらそれだけでも不気味ですよ!!

  と言うか、浮いてたんで絶対違います!!』

 『それだったら……駆け魂なんじゃないか? アレも浮いてて青白いぞ?』

 『その場合は宿主が居ない事になるので駆け魂ではなくはぐれ魂って呼ばれますけど……

  いや、そうじゃなくて、センサーにも反応してなかったので違います!!』

 『……昨日は墓地辺りに居るのが見えたって言ってたよな?

  この家からだとどう考えてもセンサーの有効範囲外だと思うが?』

 『…………あっ!!』

 

 

「原作ではセンサーが反応しなかったと言った後に僕にあしらわれているが……」

 

「単純な距離の問題でもあったね。

 そもそもあのセンサーって動作が微妙に不安定だから盲信もできないし」

 

 

 

 

「ん? ああ、ここだ。最初に言っていた『重要な伏線』」

 

「え? ここ?」

 

  ん? 待てよ?

  ここは田舎で高齢者が人口の大半を占めている。

  『駆け魂を放置すると育ってゆき、やがて隠れた女の子供として転生する。だから女子に取り憑く』

  子供が産めるか否かという事が駆け魂にとって重要なのであり、心のスキマや負の感情だけが目的であれば極論だが男子に取り憑いても問題ないわけだ。

  人間の女性でも高齢者の場合、子供が産めると判定されるのか……?

  そういう場合、最初から取り憑こうとしないのか、それとも取り憑いた後で何か問題が発生するのか。

  ……場合によっては本当に攻略の必要性が無いかもしれんな。

 

「……長いよ。1行で」

 

「極論だが男子に取り憑いても問題ない」

 

「えっ? ああああっっ!! 確かに超重要な伏線だ!!

 って言うか桂馬くんも気付いてたんだねこの時は!」

 

「僕に女神が居るという無茶を通す為の非常に非常に大事な文だ。

 『老人に駆け魂が取り憑いた』という事例は絶対に出さなければならなかったので攻略は確実に行う事は連載当初から決まっていたらしい。

 そうじゃなかったら普通に飛ばされててもおかしくは無かったな。女神も絶対に居ないし」

 

 

 

 『今日はどうしましょうか神様~』

 『また散歩でもするかなぁ。しかしなぁ……』

 

  昨日みたいにかのんとバッタリ出くわすのも面倒だ。

  でもまぁ、人が多い所を避けていれば大丈夫……

 

 『ようやく見つけたわよ!!!』

 

  よし、昨日は北側を見て回ったから今日は南側に行ってみよう。

 

 『って、無視するんじゃないわよ!!』

 『んぁ?』

 

 

「棗ちゃんがスルーされてる……」

 

「僕だったらスルーすると判断したようだ。

 なお、筆者はこの場面を見て某ビリビリを思い出したようだ」

 

「スルーで思い出されるって、それはどうなの……?」

 

 

 

 『……誰だっけお前』

 『ムキィィィイイ! 黒田棗よ!! 今度こそ覚えなさいよね!!』

 『そういやそんな名前だったな。で、僕に何の用だ?』

 『あ、アンタねぇ……この棗様がわざわざ声をかけてあげているってだけでも幸運だっていうのにその態度は何よ!』

 『……用が無いなら行っていいか?』

 『無いわけが無いでしょう!! バカじゃないの!?』

 『はいはい、で?』

 『調子狂うわね……えっと、アンタって特にひいきにしてるアイドルは居ないんでしょ? だったら私のファンになりなさい!!』

 『……よしエルシィ、今日はあっちの方行くぞ~』

 『りょーかいです神に~さま~』

 『コラッ!! 待ちなさいっ!!』

 『……仕方ない。2つ質問だ。

  何でわざわざ僕にファンになってもらいたいんだ?』

 『そんなの決まってるわ。

  あの中川かのんですら落とせなかった相手を落とせたら自慢できるじゃないの!』

 

 

 

「棗ちゃん、真っ直ぐだなぁ……」

 

「堂々とした自信満々のキャラとして描かれているな。

 あと、お前への対抗意識が見える」

 

「棗ちゃんとは良いライバルだからね!

 私も負けてられないよ」

 

 

 

   ……収録現場……

 『岡田さん! コイツを見学させてあげてください』

 『え? どなた?』

 『私のファンです!』

 『いや、違うだろ。強いて言うなら巻き込まれた一般人Aだろ』

 『巻き込まれたって……棗、あなたねぇ……』

 

 

「僕と岡田さんはこの時が初遭遇だ」

 

「そう言えばそうだったね。桂馬くんが私のアイドルとしての活動場所に来る事ってほぼ無かったもんね。

 ライブに一回来たくらいで」

 

「裏方の岡田さんとは当然出会わないな。

 原作……じゃないな、アニメ版だとお前の攻略中にお前の控え室まで入り込んでいるようだが……恐らくは透明化等を駆使して誰にもバレないように入っている。

 結局どうやっても遭遇はしないな」

 

「そもそも私の攻略ってアイドル要素をバッサリと切り捨ててたもんね。

 アイドルとしての私にしっかりと関わるのって本作ではここが初なんじゃない?」

 

「……かもな」

 

 

 

 『まあお構い無く。収録の内容は漏らしませんし、隅っこでゲームしてるんで』

 『うーん、そう言われてもねぇ……ん、ゲーム?』

 

  岡田さんはそう呟くとかのんの方を見た。

  かのんは……知らぬ存ぜぬといった態度で台本を睨みつけているようだ。

 

 『……まあいいわ。それじゃあその辺に座ってて。そろそろ始まるから』

 

  そんな感じで収録は始まった。

 

 

「岡田さん鋭いね」

 

「『ゲーム』という言葉だけで僕とかのんとの関わりを見抜いて思い出していたようだな。

 『かのんの挑戦状』の話は作中時間ではそう遠くない出来事だ」

 

「後から問い詰められなかったのはそれだけ確信してたって事なのか、それとも確信が持てなかったからこそあやふやなままにしておいたのか……」

 

 

 

 

  混乱を防ぐ為に予め言っておくと、主役の探偵はかのんが演じている。犯人役は成人男性で、名前は分からん。

  黒田は探偵の助手役らしい。あれだけ自信満々だったくせに主役ではないんだな。

 

 『この事件の真犯人。東雲(しののめ)(いち)さんを事故に見せて殺害し、南元(みなみもと)治郎(じろう)さんを自殺に見せかけて殺害し、西崎(にしざき)珊瑚(さんご)さんを蛇に噛まれたように見せかけて殺害し、北条(ほうじょう)史郎(しろう)さんを部屋に閉じこめて一酸化炭素中毒で殺害した犯人……それは貴方ですね! 央龍(おうりゅう)怜士(れいじ)さん!!』

 『……フッ、冗談が過ぎるな。探偵のお嬢さん。そんな事を言うからには証拠はあるんだろうね?』

 『そうですね……今はありません』

 『ハッハッハッハッ! 今時の探偵は証拠も無しに人を殺人犯扱いするのかい?

  さ、私はこの事件の事後処理で忙しいんだ。帰らせてもらうよ』

 『何をおっしゃっているんですか? 私は()()証拠は無いと言ったんです。

  ほら、聞こえるでしょう? 私の優秀な助手の足音が』

 

  ガラッ!

 

 『お待たせしました先生! これが証拠なのデス!!』

 『ご苦労様。

  ではまず、最初の事件についてです。

  この事件は……』

 

  昨日少しセリフを聞いたときに感じた通り、このドラマは本家と分家争いが発端となる血みどろの連続殺人事件だ。

  その事件をたまたま慰安旅行にやってきていた探偵である『中谷(なかたに)(あい)』とその助手の『中谷キリン』の姉妹が解決するというオーソドックスな流れとなっている。

  ……旅行する度に事件に遭遇する探偵ってのも考えてみると不気味だがな。

 

 

 

「ちなみに、ここで出てくる『探偵』という言葉の発音は全て『死神』だ」

 

「嘘だからね!? 桂馬くんの嘘だからね!?」

 

「まぁ、冗談だ。

 筆者のいつもの癖だが、こういうどうでもいい物語は無駄に遊び心を入れている。

 東雲市、南元治郎、西崎珊瑚、北条史郎、央龍怜士。

 被害者達と、犯人扱いされてる連中は各方位の名字を持ち、名前は発音が数字になっている。治郎はやや苦しいが、次郎という事で。

 央龍は方位ではないが……中央の央であり、同時に中央を司る黄龍でもある。

 『本家と分家争いが発端となる血みどろの連続殺人事件』だからな。当然、中央の央龍氏が本家、それ以外の4家が分家だ」

 

「中谷藍と中谷キリンの2人は……解説は後にしておこうか」

 

 

 『ふっ、どうよ。私のファンになる気になった?』

 『凄かったです! 凄かったですよ棗さん!!』

 『アンタみたいなチョロそうなのには訊いてないわよ』

 『ぐはっ!!』

 

 

「エルシィと棗は初対面ではないが……ほぼ初対面なのにアッサリと見透かされてるな」

 

「エルシィさんだもんね……」

 

 

 

 『……この台本、書き換えられてますよね。そこそこ雑に』

 『……へっ?』

 『証拠が犯人役を指し示してはいたけど、決定的な証拠は探偵役なら捏造できそうなものしか無かった。アリバイは犯人役は勿論無いが、探偵と助手も何気に存在していない。そしてさっきカットしたのが自白が終わってからではなくこれから自白しそうな場面。

  更に言うのであれば主役2名の藍とキリン……『鸞』と『麒麟』。

  そして、台本で犯人役が出ている場面でいくつかの違和感を感じた。アリバイを消す方向で修正されてる可能性がある。

  ……この事件の真犯人は探偵姉妹なのでは?』

 『えっ、えっ!?』

 『となると……あの中川かのんを犯人役にするわけにはいかない、あるいはドラマ撮影を断られると思ったから急遽変更したのかも。

  元々別の目的で使う台本を強引に修正した手抜き作業だった可能性まで有り得るのか』

 『ちょ、ちょっと待って! 台本の製作会社に問い合わせてみるわ』

 

 

「この場面では素知らぬ顔で私も聞き耳を立ててるわけだけど、凄くビックリしたよ」

 

「鸞と麒麟は中央を司る神獣の名前だ。その上、名字には『中』が入っている。

 単純に名前を考えるのが面倒だったから類似する名前を使っただけの可能性もあるが、こういう仮説を立てる事も可能だ。

 『探偵姉妹は央龍の関係者である』と」

 

「探偵が関係者なら、殺人事件に関わる動機があってもおかしくはない……って事だよね?」

 

「そういう事だな。で、結局この姉妹はどういう繋がりだったんだ?」

 

「えっと確か……央龍の家の隠し子の血筋らしいよ。

 祖母や母親が迫害された復讐が動機みたい」

 

「微妙にフワッとしてるな」

 

「台本製作者が行方不明だからその辺の裏設定の細かい部分は殆ど分からなかったんだよ」

 

 

 

 

  収録は一旦中断になったようだ。

  せめて僕が感じた台本の違和感くらいは修正しないとマズいらしい。

 

 『まさかこんな事になるなんてね……何か、ごめんなさい』

 『別にお前のせいではないだろう』

 『そりゃそうだけど、無理矢理引っ張ってきたのは私だし』

 

 

「高飛車なだけかと思ったが、しっかりと謝る事もできてるんだよな。

 しかも、微妙に本人に非が無い事を」

 

「アイドルとしてのプライドは人一倍強いけど、それ以外は凄く真っ直ぐな子だからね。

 無理矢理連れてきたのも満足させる自信があったからとも言えるし」

 

 

 

 『あ、そうそう。お前のファンにならないかという誘いだが、やっぱり断らせてもらおう』

 『うぐっ、やっぱりそうよね……主役じゃなかったし、台本の違和感にも気付かなかったし……』

 『いや、そこは決してお前の責任ではないだろう。

  と言うか、演技自体は良かったと思うぞ』

 『へっ?』

 『普段はあれだけ高飛車だったのに、撮影中は微妙な小物っぽさとか、姉への尊敬っぷりとか、凄く良く表現できていたじゃないか。

  無理に目立とうとして主役を食ってしまったり、プライドを捨てきれずに小物風の演技が鈍るような奴よりよっぽど良い』

 

 

「……本当に、真っ直ぐな子だから、そしてアイドルとしてのプライドは人一倍強いから。

 だから見てくれに惑わされずに正しい評価を下せる人っていうのは棗ちゃんのストライクゾーンど真ん中なんだよ」

 

「仕事の内容で評価するのは当然の事だろう」

 

「それはそうなんだけど……ほら、人気投票でもよくあるじゃん。実力関係なしに有名な人がやたらと上位に立つ事が」

 

「バンドワゴン効果の事か?」

 

  ※

 『人気がある事』が人気である事の理由になっている現象。

 『この人は人気があるからきっと内容も良いんだろう』という先入観だったり、あるいは選ぶのが面倒だからとりあえず人気者に適当に票を入れただけだったり、

 そんな感じの理由で発生するっぽい。

 アイドルの人気投票から国会議員の投票まで、『投票』と付くものなら大抵は大なり小なり発生する。

 皆さんも投票をする際には流行や世論に惑わされずに自分を信じて投票しましょう!

 

「そう、多分それ。正しい評価を下せる人っていうのは意外と少ないんだよ。

 棗ちゃんの感情としては恋愛と言うよりも信用・信頼の類だけど……

 桂馬くん! 私の後輩をたぶらかしたらダメだからね!!」

 

「そう言われてもな……物語を演じる者には最大限の敬意を払うのは当然の事だ」

 

「……いつも現実(リアル)はクソゲーだって言ってるけど、物語は現実(リアル)じゃないって事かな?」

 

「そういう事だな。

 まぁ、今後気をつけるとしよう。

 ……ところで、お前はどうなんだ?」

 

「え?」

 

「お前もそういう『正しい評価』を気にしたりするものなのか?」

 

「そりゃあね。こう見えても『一番人気のアイドル』とか呼ばれてたりするから、本当に私の実力なのかなって思う事はあるよ。

 でも、桂馬くんなら贔屓目無しで正しい評価をしてくれるだろうから安心できる」

 

「僕はアイドルなんて詳しくは無いから、正しい評価を下すのは別の意味で厳しいんだが……僕からの評価がお前の支えになれるのなら少しは勉強してみるか」

 

 

 

 『そ、それじゃあ……中川かのんと比べてどうだった?』

 『中川と? 演じる役割が違うから単純比較はできないが……

  ……お前の方が違和感は無かった気がする』

 『ほ、ホント!? お世辞じゃないでしょうね?』

 

 

「攻略中ならまだしも、そうじゃない桂馬くんがお世辞を言うわけがない。

 もっと頑張らないと」

 

「……今度またお前たちが何かドラマに出る機会があるなら乗り込んでみるか」

 

「へぇ。それは面白そうだね。桂馬くんが居てくれるならきっといつも以上の演技ができるよ」

 

「また台本に不備が見つかったりしてな」

 

「そんなのそうそうある事じゃないんだけど……」

 

 

 

   ……収録現場を後にした後……

 『……あそんでくれなきゃ……くび切るぞ。

  あそんでくれなきゃ……うで切るぞ。

  あそんでくれなきゃ……たたりがあるぞ』

 『ひぃぃぃいい!!!』

 『おい落ち着けエルシィ。昨日も会っただろ』

 

 

「相変わらず不気味だね……エルシィさんが怖がるのも無理は無いよ」

 

「自称悪魔がただの人間に怯えるなと言いたい所だが……エルシィだもんなぁ」

 

 

 

 

 『で、何して遊ぶんだ?』

 『ままごと! キャハハハハ!』

 

  ふむ、雰囲気は不気味だが内容自体はまともだな。

  愛梨は近くに置いてあった箱から人形を取り出して僕に渡してきた。

  ……何か、凄くボロボロで所々ワタがはみ出ており、目のボタンは取れかけ、待ち針や安全ピンが大量に刺さっている人形を……

  愛梨の方は釘が大量に刺さった藁人形を持っている。着けているエプロンがシュール……と言いたい所だが、真ん中に穴が開いていてその近くは赤黒い何かで着色されている。

  まともじゃ……無かった……

 

 『愛梨がおヨメさんやるから、旦那様やって』

 『…………』

 『おかえりなさいあなた』

 『……ああ、ただいま』

 『ご飯にする? お風呂にする?』

 『……どっちでもいいよ』

 『まあ冷たい! さてはあなた、また後家のイタコと浮気してたのね!!』

 (……どういう設定だ?)

 『悔しい!!』

 

  ブチリと、旦那様役の人形の首がもがれた。

 

 『罰よ! 罰よ!!』

 

  残された胴体はその辺の石ころで滅多打ちにされている。

 

 『お、おい……本人も反省してると思うんでその辺で……』

 『キャハハハハハハ!!!』

 

  将来が不安になる光景だ。親はちゃんと教育してるんだろうか?

 

 『あなた? これから何をしましょうか』

 『離婚調停だな』

 

 

「……私よりも先に愛梨ちゃんの方が奥さんっぽい事やってる」

 

「いや、ただのままごとだからな?

 そしてこれは奥さんっぽいのか?」

 

「首をもいだり石で殴ったりはしないけど、旦那様が本当に浮気したら報復はすると思うよ♪」

 

「笑顔で言うなよ! 怖いだろうが!!」

 

「えっ、もしかして桂馬くん浮気するの……? そんなのダメだからねっ!!」

 

「しないしない。かのん一筋だから」

 

「そ、そっか。そうだよね! 良かったぁ」

 

「(……かのんは怒らせないようにしよう。そうそう怒らないけど)」

 

「何か言った? アナタ」

 

「いや、何でもない」

 

 

 

  ……おばあちゃん宅……

 『友達はええもんよ。愛梨もいーっぱい友達を作らんと』

 『ばあちゃんも友達いっぱい居たか?』

 『おったよおったよ。ほれ、見なさい』

 

  愛梨の婆ちゃんが示したのは壁に飾ってある写真だ。

  10人ちょいくらいの人と『結婚おめでとう!』という横断幕が写っている。

 

 『おばあちゃんの結婚式、友達いっぱいでしょ!

  友達のおかげでええ人生遅らせてもらったよ』

 

 

「結婚式、かぁ。桂馬くんは何か希望はある?」

 

「……特にこだわりはないな。挙げなくてもいいくらいだ」

 

「う~ん……あれ? でも、原作の神様って何か言ってたよね?

 確か、えっと……

 

「1、最低でも、子供の頃からの因縁

 2、少なくとも、ドラマチックな状況でのプロポーズ

 3、絶対的に、教会でのキスをバックにHAPPY ENDの文字をドン!

 これが原作で僕が歩美に提示した条件だな」

 

「……何か微妙に偏ってるけど、相当こだわりがあるみたいだね。

 でもだったら何で私との結婚式はそんなに適当なの?」

 

「僕が言ったのはあくまでもゲームとして、攻略としての話だ。

 お前は……どっちでもない。ゲームをする仲間ではあるがゲームそのものではないし、攻略もした事はあるが、今ここに居るのは『僕が攻略したヒロイン』ではなく『中川かのん』という個人だ。

 故に、こだわる必要は無い」

 

「桂馬くん……」

 

「おっと、名字が違うっていうツッコミは無しだぞ」

 

「いや、確かにちょっと気になったけど今そんな事は言わないよ。

 ただ……何て言えば良いかな。桂馬くんを好きなって良かったって思うよ」

 

「……フン」

 

 

 

   ……深夜……

 『エルシィ、手早く終わらせてくれ』

 『はい。えっと……駆け魂さん。そこに居る悪魔の魂さん。聞こえてますか?

  そこに隠れていても無駄ですよ。お婆さんは子供を産めませんから。

  あなたが転生するのは……不可能です』

 

  語りかけてしばらくすると、愛梨の婆ちゃんの体から青白くて丸っこい小さな駆け魂が顔を出した。

  どうやら言葉は届いていたようだ。

 

 『出てきてくれてありがとうございます。

  せめて苦しまないように送らせてもらいます。

  魂をしっかりと精算してから、生まれ変わってきてください。

  ……姫様、お願いします』

 

 

「駆け魂に対しては筆者がノリで『生まれ変わってきてください』とか書いてるが……どうなんだろうな、これ」

 

「原作では魂のサイクルの説明があったけど……アレって人間の魂に対してだけなのかな?」

 

「本作ではエルシィとかのんが駆け魂を『消滅』させてるわけだが、実はその辺の設定は全く固めてない。

 より魂っぽい存在になって冥界にでも送られてるのか、散り散りに空中分解して文字通りに消滅してるのか。

 その辺は突き詰める必要があまり無かったからかなり適当だ」

 

「そんなに適当だったんだ……」

 

「人間が死んだら死体と魂に別れるのはイメージできるが、魂を殺したらどうなるんだろうな?

 一応、朧げな設定としては『なんやかんやあって冥界に送られて、罪を精算したらまた転生する』みたいな感じらしい」

 

「なんやかんやって一体……?」

 

「なんやかんやはなんやかんやだ」

 

 

 

 『お婆さんが相手でも取り憑けるけど、転生はできない……か』

 『姫様? どうなさいました?』

 『ううん、ただ……ここの人たちの心のスキマはそう簡単には埋まらないんだろうなって』

 『……そうだな。簡単には埋まらない。

  きっと、ここの人たちはスキマを受け入れて生きているんだろうな』

 

 

「超重要シーンだね」

 

「眠気で頭が回ってなさそうなお前が呟くのはやや苦しい気もしたが、絶対に入れなければならないと判断してこうやって入れたらしい」

 

 

 

  ……帰宅時……

 『待ちなさーい!!』

 『どうした、そんな慌てて』

 『ハァ、ハァ……な、名前!』

 『?』

 『アンタの名前、まだ聞いてなかったから教えなさい!!』

 『ん? そんなの中川に訊けば良いんじゃないのか?』

 『そりゃそうだけど……直接聞きたかったのよ。アンタの口からね』

 『……まあ構わんが……桂木桂馬だ』

 『桂木桂馬ね。しっかり覚えたわ。

  この私に名前を覚えられるなんて、光栄に思いなさい!』

 『あー、光栄だなー』

 『アンタねぇ……まあいいわ。それだけだから。じゃあね!』

 

 

「ホント、完全に気に入られてるね」

 

「らしいな。全く、僕が何かしたか?」

 

「十分過ぎるくらいやらかしてたと思うけど……

 棗ちゃんとちょっと仲良くするくらいは別に良いけど浮気はダメだからね!!」

 

「分かってる分かってる」

 

 

 

 

「これで終わりか。

 地味な回だったが……重要な回ではあったな」

 

「重要じゃなかったら普通に省略されてたかもね」

 

「有り得るなぁ……その場合、帰省に行かずに済むからゲーム時間が増えるな!」

 

「ゲームをしてた時間自体は対して変わらないよね……?

 6面同時攻略とかは出来ないけど」

 

「まぁ、な」

 

「……さて、次は……コレは2本立てかな?

 日常回Bとみなみさんだよ」

 

「内容がかけ離れているな……

 分量的には統合した方が良さそうではあるが、内容的には分けた方が良さそうだ。

 来週は2本投稿になるな」

 

「おっけ~。

 それでは次回は『軽音部編2 軽音楽部の恩返し』『みなみ編 正しいエンディングの迎え方』の2本になります!」

 

「2話投稿するんで読み飛ばしに注意してくれ。

 おそらく、片方を5分早く投稿するとかになるはずだ」

 

「それでは、また来週!」

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