もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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みなみ編 正しいエンディングの迎え方

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第20回キャラコメンタリー始めます!」

 

「みなみ編、だな。

 夏休み中に引いてしまった時は筆者もどうしようかと途方にくれていたようだ」

 

「それじゃあ見ていこう。VTRスタート!」

 

 

 

 

 『あ、神様! 少々宜しいでしょうか?』

 

  ちひろたちからかなり気の利いた贈り物を受け取って少し良い気分に浸っていた僕にエルシィが無遠慮に声を掛けてきた。

  何故だろう、凄く嫌な予感がする。

 

 『神様~? 聞こえてますか?』

 『ああ。聞こえてるからサッサと話してくれ』

 『はいっ! 皆さんと靴屋……と言うよりスポーツショップですね。

  そこに行った時に新しい駆け魂を発見しました!!』

 

 

 

「『長時間歩いても疲れにくい靴』が果たしてスポーツショップに売っているものなのかとは言っては行けない」

 

「き、きっとマラソン用の靴だったんじゃない?」

 

「筆者も実地調査したわけじゃないから細かい所は適当だな。

 本当にちゃんとあるのかもしれないし、そうでもないのかもしれん」

 

 

 

 『はぁ……何で夏休み中に見つかるかなぁ……せめて前か後にして欲しかった』

 『え? どうしてですか?』

 『簡単な事だ。『後輩』という属性はギャルゲー的には極めて楽な属性なんだ』

 『何だか属性って言葉を久しぶりに聞いた気がしますよ』

 『そうだったか? まあいい。

  そういうわけなんで、その属性を強調する為にも先輩っぽさを積極的に出していきたいんだが……』

 『何か問題でも?』

 『大有りだ。今は夏休みだぞ?

  学校の事なんざ忘れて遊び倒すような時期に先輩面した奴が現れても鬱陶しいだけだろう。

  相当上手くやらないと後輩属性がプラマイゼロか、下手するとマイナスになる』

 『うわっ、確かに問題ですね』

 『それだけじゃない。通常時なら学校でぶつかる等の遭遇イベントが作れるが、今は夏休み中だから不可能だ。

  かと言って街中でぶつかるのも微妙だ。

  制服を着てたら怪しい奴にしか見えないし、私服だと『同じ学校の先輩』ではなく『本当に赤の他人』にしか見えないからな』

 『それじゃあ……どうするんですか?』

 『できるなら夏休みが終わるまで待ちたいんだが……ひとまずはいつも通りに情報を集めるとしようか』

 

 

「後輩属性なんてどうとでもなるはずなんだが……酷いドロー事故だな」

 

「そう言えばさ、私も誕生日があと1ヶ月くらい遅れてたら1つ下の学年だったんだよね。

 もしそうなってたら私が桂馬くんの後輩になってたルートもあったのかな?」

 

「許嫁アイドルにこれ以上属性を盛る気か?」

 

「許嫁系後輩アイドル……かな?

 ずっとずっと愛してますよ。センパイ♪」

 

「取って付けたように後輩キャラになったな」

 

「で、感想は?」

 

「決して悪くはないが……対等な言葉遣いの方がしっくり来るな」

 

「そっかぁ。それじゃあ、ずっとずっと愛してるよ。桂馬くん♪」

 

「いや、言い換えろと言ったわけじゃないんだが」

 

 

 

   ……みなみさん捜索中……

 『……電波系じゃあるまいし、もっと情報を落としていってくれよこのクソ現実(リアル)が!!』

 『わわっ、神様どうか落ち着いて……』

 『仕方あるまい。今ある情報だけで考えるか』

 

 

「遭遇イベントをかなり強引に作った皺寄せがこっちにも来てるな」

 

「学校じゃ会えないからスポーツショップで会った事にして、偶然遭遇しただけだから情報が本当に無いんだね……

 夏休み中じゃなかったら中学3年生のクラスを片っ端から調べれば分かるけど、そういうわけにもいかないし」

 

「これで部活にも所属してない電波系だったらもうお手上げだったが……みなみで良かった。ホント」

 

 

 

   ……深夜……

  と言う訳で、エルシィの羽衣で透明化して中等部の職員室に忍び込んだ。

 

 『それで、どこにあるんでしょうか。例のぶいんめいぼは!』

 『知らん』

 『……えっ!? 分からないんですか!?』

 『逆に何故分かると思ったんだ? 僕がこの部屋に入るのは初めてだぞ?』

 『え? そうなんですか? 神様が中学生だった頃とか……』

 『もっと近い所に学校があったから僕はそっちに通ってた。この学校に来たのは高校に入ってからだ』

 『ほえ~、そうだったんですか~』

 『そういうわけだから、手当たり次第に捜すぞ』

 『ああ、だからこんな時間に来たんですね~』

 

 

「このそこそこ広い職員室から部員名簿探すって結構無茶だよね?」

 

「あてもなく街を彷徨うよりはずっとマシだ。

 もし見つからなかったら……その時に考えればいいさ」

 

「その辺は行き当たりばったりだったんだね」

 

「まぁ、な」

 

 

 

  しかし暗いな。おまけに暑い。

  明かりを点けるのは論外として、エアコンもどこかの部屋で管理されていそうだ。不用意に触らない方が良いだろう。

 

 『暑いですね~。よいしょっと』

 『おいコラ! エアコンを使おうとするな!!』

 『え~、でも暑いですよ?』

 『だったらホラ、お得意の結界で何とかならんのか? 熱だけが一方通行で逃げていく感じの』

 『そ、そんな技が!? 神様頭良いです!!』

 『できるならサッサとやってくれ。

  あ、そうだ。ついでに光を通さない感じのも頼む』

 『りょーかいです!! あの辺からあの辺まで……できました!!』

 

 

「電力の消費はどっかで監視されてそうだが……エアコンはなんとかしたが明かりに関しては妥協した。

 懐中電灯片手に探すのも非効率だからな」

 

「エアコンよりは消費電力は少ない気がするね。

 う~ん、その辺までしっかり管理してるものなのかな?」

 

「近所の学校に問い合わせても教えてくれるとは思えないから想像で書くしか無いな」

 

 ※

 エルシィが光魔法みたいなのを使えたら簡単だったんですけどね。

 女神様ならそのくらい使えるかなぁ……?

 

 

 

 

 

   ……みなみさんの部活が分かった後……

 『で、何部だったんだ?』

 『女子水泳部みたいですね』

 『水泳か……

  次は水泳部の部室でも探るか。エルシィ、書類の片付けを……もうほぼ済んでいるみたいだな』

 『モチロンです! 掃除は得意ですからね!!』

 『久しぶりに役に立ったなその設定』

 『ちょっ、どういう意味ですか神様!!』

 『いいから行くぞ。明かり消して、結界解いて……』

 『は~い……』

 

 

 

「ホント久しぶりに役立ったね。その設定。

 いや、日常生活では普通に役立ってるはずだけど」

 

「破壊するケースもあるから……辛うじてプラスに働いているといったところか」

 

「うん。ところで桂馬くん。深夜に女子水泳部に潜入して物色するって完全にアウトだと思わない?」

 

「……攻略の為だからな!!」

 

「そうだねぇ……もし一緒に居たのがエルシィさんじゃなくて私だったとしても、軽くツッコミを入れるくらいで普通に協力しそうだよ。

 字面だけ見れば完全に犯罪なんだけどね……」

 

「女子が同伴して監視してると考えれば割と理に適ってると思うが、お前なら普通に犯罪者側として協力してくれそうだな」

 

「そうだねぇ……

 あ、桂馬くん。私の部屋はいつでも物色していいからね! いつでも来てね!!」

 

「はいはい」

 

 

   ……水泳部更衣室……

   ……みなみさんのロッカー捜索中……

 『う~ん……見当たりませんね』

 『…………』

 『あっ、神様! これ凄いですよ!』

 『ん?』

 『この大会のメンバー表、『桜井ひより』って人の名前が何回も出てますよ!』

 

 

「この人は、筆者さんがかなり頑張って強引に出してたキャラだね」

 

「桜井ひよりは一応原作キャラだな。ある意味吉野麻美よりも原作キャラしてる。

 初出は……スゴロクらしいな」

 

「す、すごろく……?」

 

「詳しくは知らんが、サンデー本誌のおまけか何かだろう。

 その時にはこう書いてあるようだ。7月27日生まれの17歳……と」

 

「その日は一体何月何日だったんだろう。それで学年が変わっちゃうよ」

 

「あくまでも『原作内の』時間であればみなみ編よりは前だったっぽいんで夏休みよりは前。

 その年の誕生日はまだ迎えてはいないだろうから高校3年生で確定だな」

 

「先輩だったんだ。桜井ひよりさん」

 

「初出のすごろくの絵だとせいぜい同学年か1つ下くらいに見えるんだけどな」

 

 ※あくまで筆者個人の感想です

 

「まあいい。で、こっちの資料。『神ヒロイン完全攻略ブック』にはこう書いてある。

 桜井ひより。11月27日生まれの17歳……と」

 

「……あ、あれ?」

 

「筆者も今回調べてみてようやく気付いたらしい。何故か誕生日が2つの資料で食い違っている事に。

 で、これをネタに色々と考察した文章を延々と書いていたんだが……ネットで調べたら原作者のブログで誤植として普通に発表されていた。

 初出の7月27日が正しいらしい」

 

 ※せっかく延々と書いたのに……

 

「そ、そうだったんだ。それなら矛盾は消えたね」

 

「ああ。それと同時に、実は先輩ではなく同級生だった事も判明した。

 詳しくは筆者のメモ参照」

 

  ※

 ガイドブックに書かれている年齢は『女神編開始時』の数値だそうです。

 女神編開始の日付は不明ですが、確実に夏休みよりは後です。

 ひよりさんの誕生日は当然過ぎており、プロフィールにある17歳という情報も誤植でないのなら桂馬たちと同年代で確定です。

 

 ちなみに、女神編開始の日付は不明ではありますが、ガイドブックからある程度は絞り込めます。

 同級生の京さん(誕生日10/21)が17歳。石切いづみさん(12/9)が16歳なのでその間のどこかなのは確定のようです。結構広いな。

 

「……結局同級生なんだね」

 

「実は同じクラスであってもおかしくはないが……全然出てきてないから違うクラスだろうな」

 

 

 

 

  ……中等部の部室……

 『お、居た居た』

 『ひゃくえむ、えふあーる、第3補欠って書いてありますね』

 『予備の予備の予備って事か。ほぼ出られないな』

 

「100mのFrだね。

 自由形の100メートルの競泳って事かな?」

 

「そのようだな。

 軽く調べてみたが、水泳競技の略称は色々あるようだ。

 自由形は Free Style で Fr

 平泳ぎは Breaststroke で Br

 背泳ぎは Backstroke で Ba か Bc

 バタフライは Butterflystroke で Bu か Fly

 個人メドレーは Individual Medley で IM

 フリーリレーは Free Relay で FR

 メドレーリレーは Medley Relay で MR

 以上だ」

 

「色んな競技があるんだね。

 私には縁の無い話だよ」

 

「……そう言えばお前ってカナヅチだったな」

 

「うん。ビート板を持って泳ぐ事すらできないよ」

 

「それは重症だな……命を守る意味でも多少は泳げた方が良いと思うぞ?」

 

「う~ん……それじゃあ桂馬くん。今度教えてよ」

 

「僕がか? 僕だってそんなに上手いわけじゃないんだが……」

 

「いや、ゲームしながら泳げる人は十分に『上手い』って言えるよ。

 メインの目的としては速く泳ぐ事じゃなくて器用に水に浮く事だし」

 

「……まあいいか。やるだけやってみるとしよう」

 

「やった! 言質は取ったよ!

 桂馬くんと水着でデートだ!!」

 

「そうなるのか? ……そうなるのか。まあいいさ」

 

 

 

 

 『もしかすると、大会に出られなかった事が心のスキマだったりするんでしょうか?』

 『……まだ分からん。真面目にやっててこの結果だったならその見込みは高いが、遊んでただけの可能性もあるからな』

 『うーん……遊んでいたようには見えませんよ?』

 『ん? どういう意味だ?』

 『これ、みなみさんのロッカーみたいなんですけど、よく見てみてください』

 『……? 何かおかしな所でもあるのか?』

 『あれ、気づきませんか?

  取っ手の所、埃が付いてません。夏休みに入ってからも使われてる証拠です!』

 『埃ぃ? そんなもん簡単に溜まるもんなのか?』

 『神様! 埃をバカにしちゃいけませんよ! あいつらは気がついたら溜まっているんです!!』

 『そ、そうか』

 

 

「おかしいなぁ……今回はエルシィさんが大分活躍してる気がする」

 

「筆者もエルシィが嫌いなわけじゃないからな。活躍できそうな機会があれば積極的に活躍させるようにはしているようだ。

 今回だけよく目立って見えるのは……それ以外の回での活躍の機会が少なすぎるだけだな」

 

 

 

 『次にやるべきは……』

 『何をするんですか?』

 『……張り込みかな。攻略対象の居場所が分からん事には何もできんからな。

  というわけでエルシィ、明日からお前だけであのロッカー前で張り込みな』

 『ええええっ!? 私1人ですか!? 神様は!?』

 『……透明化で隠れて、みなみを待って、見つけたら追跡して家を見つけるだけだから1人の方がむしろ楽だと思うんだが?』

 『それはそうですけど……』

 『じゃ、頼んだぞ』

 『分かりました……』

 

 

「そして、翌日に見つけるという」

 

「エルシィさん活躍し過ぎじゃないかな!?」

 

「こっちはどちらかというと羽衣さんの活躍だがな」

 

 

 

 

  後輩ルートにおいて、出会いは非常に重要と言える。

  相手は『後輩』で、自分は『先輩』なのだ。先輩として格上感や大物感を演出するのがベスト。

  尤も、これは規格外な天才型の後輩には通じないが……みなみに関しては問題ないな。

  相手の得意分野で、相手よりも遥かに優れた実力を目撃させる。それが僕の演出する出会いだ。

 

 『というわけでエルシィ、僕が指示したら羽衣で僕を引っ張ってくれ』

 『そこは自力で泳ぐんじゃないんですね……』

 『僕も人並みには泳げるが水泳部相手に張り合うのは不可能だ』

 『そうですか……

  あれ? でも、あかね丸から落ちた時にノーラさんを凄い勢いで追いかけ回していたような?』

 『ノーラの奴が遅かっただけじゃないのか?』

 『そうかなぁ……まあいいです。全力で引っ張りますよ!』

 

 

「……そう言えば凄い勢いで泳いでた事があったね。しかも服着たまま。

 私はよくは知らないけど、着衣水泳って結構大変のはずだよね?」

 

「いやいや、ノーラが遅かっただけだろう。大した事じゃない」

 

「ホントかなぁ……?

 まぁ、あの時はよっきゅんを殺されて……殺されてたのかなアレ?

 と、とにかく尋常じゃない状態だったからこそなんだろうね」

 

「……まぁ、あの時はリミッターが外れてた可能性までは否定せん。

 実際のスピードがどうだったかは知らんがな」

 

 

 

 

 

 

   ……みなみ視点 鍵を取りに更衣室に引き返した時……

 

  守衛さんから鍵を借りて誰も居なくなった施設に入ります。

  誰も居ない……はずなのですが……

  月明かりだけが照らすプールの中に、その人は居たのです。

  凄い速さで水をかき分けて泳ぐその姿は私が見たことのないものでした。

  端まで泳ぎ終えると水を滴らせながらゆったりした動作でプールから上がり、そこに置いてあった眼鏡を手に取り……

  そして、自然な動作で、こちらの方を向きました。

 

 『ん? 君は……どうかしたのかい?』

 

  その言葉が自分に向けられていると気付くまで数秒かかって、

  その言葉の意味を飲み込むのに数秒かかって……

 

 『えっ、えっと、その……』

 

  結局、まともな返答は返せなかったのであります。

  だって、考えてもみてほしい。誰もいないはずのプールにカッコいい人が泳いでいて突然声を掛けられたのだ。そんな簡単に受け答えなんてできるわけがない。

 

 『……僕はもう上がるけど、用事が済んだら気をつけて帰るといい』

 

  それだけ言って、目の前のその人は去って行ったのでありました……

 

 

 

「泳いだ直後の桂馬くんもカッコいいね!

 ……若干表情が引き攣ってるのが気になるけど」

 

「映像から判断できるのかお前は」

 

「うん。エルシィさんに全力で引っ張られたからそのダメージをこらえてるんだよね?」

 

「そうなるな。しかしまぁよく分かったな。僕ですら映像を見ただけだと分からんぞ」

 

「そりゃあ桂馬くんの表情は見慣れてるからね。そのくらいの違和感は感じ取れるよ」

 

 

 

 

   ……その後 桂木家……

 『ところで桂馬くん、どうして攻略してた事を私に言わなかったの?』

 『あれ? 言ってなかったっけか』

 『聞いてないよ!?』

 『それは済まんかったな。確か……ああそうだ、この攻略は延期も視野に入ってたんでその辺が決まるまで言わなかったんだった』

 『延期って……大丈夫なのそれ?』

 『家に引きこもられていたらどうしようもなかったんだが、まあ何とかなりそうだと判断して攻略開始に踏み切った。大丈夫だ問題ない』

 

 

「実際の所、本当に延期する案もあったらしい。

 トランプ引き直して、みなみ編は夏休み後にやるっていう」

 

「でも結局はちゃんとやってるんだね。何があったのかな?」

 

「単純に書いてみたら最初以外はそこそこスムーズに書けたみたいだな。

 あと、あえて理由を挙げるなら夏休み後だと水泳の大会が終わってしまうというのもあるな」

 

「大会に絡めるのって必須だったっけ?」

 

「攻略において必須のイベントというわけではないが……みなみも一応は選手だしな。

 第三補欠という立場すら失ったら本当に水泳を止めてしまってもおかしくはないな」

 

「……ドローのタイミング次第では水泳を止めちゃったみなみさんを立ち直らせる話とかにもなったのかもね」

 

「かもな」

 

 

 

 『この後はどうするの?』

 『この後か……基本的には、何もしない』

 『何も?』

 『今回の攻略では僕はみなみの『先輩』という立場を最大限利用する。

  これはアイドルキャラにも言える事なんだが、高嶺の花である存在とポンポン遭遇したらレアリティが薄れるだろう?』

 『あ~、何となく分かるかも』

 『だから、僕自身が積極的に動くのは逆効果と言える。理想としてはみなみの方から僕の事を探してくる展開だな』

 『一回会っただけの人をそんな探すかな?』

 『そこはみなみの交友関係の広さによるな。どうせ部活引退後の夏休みでヒマしてるんだし、放っといても探し始める公算は十分にある。

  放置で無理なようなら……少し後押ししてやるとしよう』

 『ふ~ん……』

 

  状況は大体把握できた。私の出番はまだまだ先になりそうだ。

  ……そう言えば桂馬くん、私に分かりやすいように登場頻度とレアリティの話をしてくれたけど、その理屈で行くと私のレアリティは一体どうなってるんだろうか?

  今度ちょっと問い詰めてみよう。

 

 

 

「……で、どうなの?」

 

「お前のレアリティ? アイドル属性のキャラとしては壊滅的だな」

 

「うぐぅっ……そうだよね……

 ほぼ毎日顔を合わせてるもんね……」

 

「許嫁ルートは逆に近さが武器になるからな。

 そう考えると許嫁ルートとアイドルルートの相性は非常に悪いな」

 

「そっか。そうだね。

 桂馬くんのアイドルになるのはスッパリ諦めて許嫁として頑張るよ!

 許嫁というか妻として!!」

 

「あーそうしてくれ」

 

 

 

   ……翌日 みなみ視点……

 

  今日の私は水泳には行かず、友達を遊んでいる。私にだって水泳以外にできる事があるのです。

 

 『お~みなみ、噂は聞いてるぞ~。水泳ばっかやってるボサボサ頭の奴が居るって』

 『3年頑張ってそんなボサ頭になったってのに、お前さんはまだ満足しとらんのか。ハハハッ』

 

  友達……という事にしておこう。今は。

 

 

 

「この2人がみなみさんの友達……友達? だね」

 

「もうちょいまともと言うか、水泳が好きそうな連中だったらみなみに心のスキマができなかったんじゃないか?

 と言うのがうちの筆者の説だな」

 

「決して悪人ではないんだろうけど……相性の問題だね」

 

 

 『ああ可哀想に、そんな頭じゃ男もできないだろうになぁ』

 『いやいや、爆発に巻き込まれた~とか言えば納得して貰えるかもしれんぞ』

 『……と言うか、そっちこそ男と一緒に祭りに行くとか言っておいて結局居なかったじゃん』

 『何だとコラー!』

 『言って良い事と悪い事があるだろ!!』

 

  夏休みの前に近くの神社でちょっとしたお祭りがあったのだが、友人Aことあっこが『一緒に行く人が居る』などと見栄を張り、友人Bこと斎藤も便乗したのだ。

  そして私もやっぱりヒマだったので1人でお祭りに行ったら……仏頂面で歩いてる友人どもを見つけて結局3人で歩き回る事になった。

  ……悲しい事件だった。

 

 

 

「これは原作のイベントから僕の影響を取り除いたものだな。

 原作ではみなみとデートして攻略完了だったわけだが……僕が居なかったら、まぁこうなるわけだ」

 

「みなみさんだったら家族で行くんじゃないかという気もするけど……1人でぶらついてても問題なさそうだね。

 にしてもお祭りかぁ。今度機会があったら一緒に回ろうよ。浴衣着てさ!」

 

「別に構わんが……浴衣か。羽衣さんに何とかしてもらうか」

 

「いやいや、わざわざ羽衣さんに頼むくらいなら買いに行こうよ。

 ほら、私が選んであげるからさ」

 

「……そうだな。そうするか」

 

 

 

 

 『あ、そう言えば……』

 『どうしたみなみ、何か面白い話か?』

 『面白いってわけじゃないけど……ちょっとね』

 

  ……で!……

 

 『夜のプールに居た短髪眼鏡の謎のスイマー? みなみぃ、夢でも見てたんじゃない?』

 『そんな事は無いと思うけど……』

 

 

 

「僕の話題は雑談のネタとして出てきたらしいな」

 

「原作ではどういう流れで出てきてたんだろうね?

 桂馬くんを目撃した直後にはもう翌日になっててアルバムを見てるみたいだけど……」

 

「本作とそう大して変わらんだろう。みなみの好感度は大差無いはずだしな」

 

 

 

 

   ……舞高騎士団ファイル閲覧中……

 

 『こいつ?』

 『違う』

 『じゃあこいつは?』

 『それも違う』

 『じゃあこいつ……』

 『明らかに違うよね!? って言うか金髪ロングの男子高校生なんて実在したの!?』

 『そこはウチらも疑問に思ってた。カツラ説がワンチャンあるかと』

 

 

「そんな人が居たの!?」

 

「ピンクのショートの女子よりはありふれてるだろうな」

 

「いや、私の場合は仕事上のメイクだし」

 

「当時、このカツラ疑惑の先輩の事を『ユータ君じゃね?』と指摘した感想があったが、筆者としては特に誰かを意識したわけではないとの事だ。

 そもそもユータ君ってロングって言えるほど髪長くないし」

 

「このファイルが編纂されたのがいつかは分からないけど、当時はロングだった可能性もある?」

 

「さぁな。そういう事にしても別に構わん。本筋には全く関係ないしな」

 

 

 

 『……あ、この人だ』

 『えっ、マジで?』

 『2人とも、どうしたの? この人に何か問題でも……』

 『問題と言うか問題外というか……』

 『このヒト、高等部じゃ悪い意味で有名人なんだよ!』

 『わ、悪い意味で有名……? それは、誰かからお金を巻き上げたりとかそういう……?』

 『みなみ……お前の中の『悪い人』像は一体どうなってるんだ?

  そういう方向での悪さじゃなくて……ほらあっこ、例えば何だっけ?』

 『一番聞くのは授業中もゲームばっかりやっててロクに聞いてないってやつだね。

  噂だけど』

 『そうそう。他にもダブってて妹と同じクラスなんだって。

  噂だけど』

 『屋上に住んでてUFOを呼んでるって話もあるよ。

  噂だけど』

 『自分から神様を名乗って宗教を開いてるらしいよ。

  噂だけど』

 『それ以外にも……』

 

 

「噂がやたら多いね……

 しかも半分くらい合ってるっていう」

 

「なんだってこんなに噂されてるんだ? こいつらはヒマなのか?」

 

「う~ん、私も友達と噂話をするような事はほぼ、って言うか全く無かったからちょっと分からないかな」

 

「そもそも友達が居なかったんだな」

 

「うぐっ、そ、そうだね……

 で、でも今はちひろさんとか居るし! それに、友達が居なくても桂馬くんが居るし!」

 

「アイドル業が忙しすぎて『友人と雑談』ができないのは今も変わってないようだが……まぁ、いいか」

 

 

 

   ……みなみさん、神様を探索中……

 

  学校までやってきたわけだけど……今日は雨だ。

  まずは校庭を見て回ろうと思ってたけど、こんな日に外で活動してる人は殆ど居ない。

  この学校に屋内プールがあって本当に良かったと思える場面だ。

  仕方ないので屋内を見て回る事にする。高等部の先輩たちが使ってる校舎に入るのって初めてだけど体育館とかの場所分かるかなぁ……

  そんな事を悩みながら足を踏み入れた、その時であります。

 

 『ん? おいそこのお前、こんな所で何をしている?』

 『ひゃいっ!?』

 

 

「夏休み中だが、教師は普通に居るようだな」

 

「文化部の取りまとめをしてる児玉先生ならほぼ間違いなく居そうだね。

 性格悪いとかよく言われるけど、結構苦労してそうだね」

 

「本作では何気に第一章から出ているわけだが……結局大した見せ場は無かったな」

 

「児玉先生に見せ場があったらそれはそれでどうかと思うけど……」

 

 

 

 『そ、その……桂木先輩に用があって……』

 『桂木ぃ!? あの桂木に用だと!?』

 『ひうっ!!』

 『フン、まあいい。奴の居場所は知らんが一応軽音部部長だ! 用があるなら部室にでも行け!!』

 『け、軽音!?』

 

 

「凄い驚いてるね……」

 

「僕も時々忘れるが、紛れもない事実だ。

 メタ的な事を言うと、みなみに当てもなく彷徨わせるのは執筆の労力が跳ね上がるので行き先をサッサと絞り込みたかったらしい。

 その為の丁度いいネタだったとか何とか」

 

「みなみさんはこの時は桂馬くんが運動部に居るって当たりを付けてたから……ありとあらゆる運動部を回るハメになってたね」

 

「この時は雨が降ってたから屋内の部活限定になるがな。

 と言うか、行動を制限する為に筆者が雨を降らせたわけだが」

 

「それだけ聞くと神様に聞こえるね……間違いではないけど」

 

「……ちなみに、軽音部の会計はお前だが……ちゃんと覚えてたか?」

 

「……も、もちろんだよ!」

 

 

 

   ……軽音部 部室前……

 

  ドロドロドロドロ……

 

 『あれっ、センサーが!?』

 『おいエリー、演奏中は携帯切っとけよ~』

 『あ、すいません、ってそうじゃなくて、えっと……そこですね!!』

 

  ドクロの髪飾りを付けたポニーテールの人が突然こっちに振り向いてドアを勢いよく開けたのであります!

  まるで私の居場所を正確に把握していたかのような動きで、あまりに突然だったので隠れる暇も無かった。

 

 『エリー、一体どうした……って、どなた?』

 『あ、あの、その……』

 

  こっそり見てたという負い目と、上級生からの格上オーラにあてられて満足な受け答えはできなかったのであります……

 

 

 

「センサーの有効活用だな」

 

「エルシィさんにしてはなかなかナイスな判断だったね。

 私だったらいきなりドアを開けるのはちょっと躊躇っちゃうよ」

 

「慎重なのは決して悪い事じゃないさ。

 今回はエルシィの積極性が噛み合っただけだ。

 ……大抵は大惨事になるからな」

 

「……そうだねぇ」

 

 

 

 『事情は分かったような分からないような……まあ、何となく分かった気がするよ』

 『あ、ありがとうございます……』

 『しっかしあのバカ、中等部でも噂になってるのか』

 『私の自慢のお兄様ですからね!!』

 『エリー、褒められてないからな?』

 『隣のクラスであるにも関わらず噂の存在を知らなかった私は相当疎いのでしょうか……?』

 『結っ!? そんな妙な事で落ち込まないで!?』

 

 

「軽音の皆も活躍してるね」

 

「物語全体の話になるが、軽音部が絡むイベントは原作よりも普通に多いな。

 これはちひろの記憶があまり消されていない事の影響が大きい。極めて不本意な事に『頼りになる友人』くらいのポジションのようだ」

 

「女神も居ないのにしっかりとメインキャラと呼べる立ち位置に食い込んでくるちひろさんって、実はかなり凄い?」

 

「極めて不本意だが……そういう事になるな」

 

 

 

 『ま~安心しなさい。あいつの事だったらうちらに訊きなさい。

  答えられる範囲で答えるよ』

 『えっ、でもご迷惑になるのでは?』

 『どうせ休憩しようかって時だったからね~。面白そうだし。

  結~、お茶とお菓子出して』

 『そんなものはありませんよ。茶道部じゃないんですから』

 

 

「『けいおん!』だと軽音部の連中はお菓子ばっかり食べていたが……こいつらはそんな事は無いようだな」

 

「茶道部の部員が副部長をやってるわけだけど……流石に茶道関係の道具が置いてあったりはしないみたいだね」

 

「麻美が侘び寂びを極めんとする茶道狂いだったらそうなってた可能性も十分有り得るが……そこまで本格的な活動はしてないからな。

 むしろ結の方が茶道が上手そうだ」

 

「結さん、どんだけハイスペックなの……?

 岡田さんが聞いたら真っ先にスカウトするんじゃないかな?」

 

「…………今度結に相談してみたらどうだ? アイドルやらないかって。

 あいつも仕事を欲しがってたし」

 

「え、あれ? 本当に良い案な気がする。

 今度相談してみよう」

 

 

 

 

 『桂木先輩の噂なんですけど……

  例えば、授業中ゲームばっかりしてて先生の話を聞いてない……なんていうのは流石に何かの間違いですよね?』

 『ん? それは紛れもない事実だよ?』

 『…………えっ!?』

 

 

「全く、何をそんなに驚く事があるのやら」

 

「あれだけの泳ぎを見せた後だから……っていうのもあるけど、普通の人は授業中にゲームなんてしないから」

 

「学校の授業よりもゲームの方が何倍も有意義だというのにな」

 

「……そーいえば音ゲーは散々プレイしてるけどギャルゲーはプレイした事無いなぁ。

 桂馬くん、何かお勧めとかある? 何て言うか……『ギャルゲー!』って感じの」

 

「…………とびっきりの物を見繕っておこう」

 

「うん、お願いね」

 

 

 

 

 『桂木先輩って、ここには来ないんですよね?』

 『そうだね~。うちらが呼びつけても絶対来ないだろうね。

  直接会いたいならこっちから出向くしか無いけど……』

 『何か問題でも……?』

 『……突然行ってもゲームの時間を削ってまで誰かに会おうとするとは思えないね。

  うちらも何日か前にお邪魔させてもらったけど、5分も話せなかったから』

 『そ、そうでありますか……』

 『もっと詳しい話が聞きたいなら……同居人に声を掛けるのが良いかもね』

 『同居人、ですか?』

 

  妹さんではないのかな?

  そう思って視線をそちらに向ける。

 

 『あ~、エリーも一応同居人なんだが……よし、試しに見てもらおう。

  エリー、桂木の事を紹介してみて!』

 『待ってました! お兄様は凄いんですよ!!』

 『ほぅ、何がどう凄いんだ?』

 『はいっ! えっと、何かこう、ピカーって光ったりして、とにかく凄いんです!!』

 『……な?』

 『……はい』

 

 

 

「エルシィさん! もっと何か言う事は無いの!?

 もっと色々あるでしょ! 頭の回転がもの凄く速いとか!

 ぶっきらぼうだけど実は優しい所とか!

 女心に敏感なようで実は鈍感な所とか!

 私みたいな可愛い女の子に迫られても動じない所とか!」

 

「おい、自分で言うなよ」

 

「えっ、わ、私って可愛くない?」

 

「いや、可愛いかそうでないかで言ったら可愛いが……」

 

「♪~」

 

「ああもうひっつくな! 次に行くぞ!」

 

 

 

 

   ……その後 桂馬視点……

 

 『……予想外の方向に話が進んでいるな』

 『経緯はともあれ私が指定する日にみなみさんと話せるわけだけど、どうしようか』

 『その時にお前の手で一気に決着をつける……なんてのは流石に無理だよな』

 『流石に無理だと思うけど……一応狙っておく?』

 『……僕とエルシィも近くで待機しておくか』

 

 

 

「恋愛ルートで攻略するなら短期決戦は不可能だな」

 

「原作のみなみさん攻略だと会わないでいる時間がもの凄く大事だったもんね。

 想像を膨らませる為の時間が」

 

「筆者はこの辺も難しい事は考えずに流れで書いてるらしい。

 ただ、一応は恋愛ルートを視野に入れては居るらしいぞ」

 

「この局面で更に引き伸ばす気だったのかな……?」

 

「それが面倒だったから破棄したという説があるな」

 

 

 

   ……数日後……

 

 『まずは自己紹介からだね。私は西原まろん。美里東高に通ってる高校2年生だよ』

 『あ、は、はい。生駒みなみです。舞島の中等部の3年です……』

 『アハハ、取って食おうってわけじゃないんだからそんなに緊張しなくてもいいよ』

 『は、はいっ! すいません……』

 

 

「まろんの設定として美里東高校に通ってるんだったな」

 

「別の学校でかつ桂馬くんの家から通える高校だね。

 本物の私が入学する高校を決める時にも候補にはあったよ。

 舞島高校の条件が凄く良かったからこっちになったけど」

 

「ん? 中学はうちの中等部じゃなかったのか?」

 

「当時はアイドルじゃなかったから、普通に家に近い中学校に入ってたよ」

 

「そういうもんか」

 

  ※

 かのんちゃんは初登場時に『最優秀()()章』を受賞しているのでアイドルになったのはそこまで昔の事ではなさそう。

 この章の『新人』の定義はハッキリしてないけど……流石に小学校卒業時に芸能活動をしていたという事は無いハズ。

 

 

 

 

 『それで、他に聞きたい事は?』

 『えっと……あ、そうだ。先輩って水泳とかやってました?』

 『水泳? さっきも言ったようにインドア派のゲーマーだから、せいぜい学校の授業でやったくらいじゃないかな?』

 『そうですか……』

 『何か気になる事でもあるの?』

 『はい、初めて先輩を見たとき、凄い勢いで泳いでいたので……』

 『あ~……』

 

 

 

「みなみの行動理由は恋愛ではない。

 これは想像を膨らませる時間が少なかったという面もあるが……一番の理由は、

 『夜のプールで出会っただけの怪しげな男に関わろうとするのは乙女ゲーの主人公だけだろ』

 という筆者の意見があるからだ。

 僕はそんなのやった事ないし、筆者もやった事は無いのでただの想像だけどな」

 

「それって原作にも喧嘩を売っているような……」

 

「……まぁ、そういうわけで、みなみの行動理由を『水泳』の方に全振りしている。

 『泳ぎの速い先輩が居たからちょっと話を聞いてみたい』って感じか。

 尤も、本人も意識していたわけではないようだが」

 

 

 

 

 『……生駒さん、あなたは水泳が好き?』

 『えっ? そりゃあ好きですけど……』

 『それじゃあ、高等部に入ってからも水泳を続けるの?』

 『それは……まだ分かりません』

 

  みなみさんは水泳を3年間続けていた。好きじゃなかったら出来ることじゃないだろう。

  それほど好きな水泳を続けない理由か。きっとそういう事なんだろうね。

  テーブルの下で携帯をそっと開いて桂馬くんにメールを送る。

  『彼女に正しいエンディングを見せてあげてほしい』と。

 

 

 

「ここまでの会話で水泳を嫌ってるわけじゃない事は十分に察せたよ。

 じゃあ何が心のスキマになってるんだろうって考えたらすぐに分かった。

 と言っても、絶対の確信があるわけじゃなかったけど」

 

「恋愛ルートほどデリケートな事はやっていないのだから当たりを付けるだけでも十分だ。

 多少外しても致命的な事にはならない」

 

 

 

 

 『邪魔するぞ』

 『えっ、か、桂木先輩!? い、いつから居たんですか!?』

 『最初からだ。外でもゲームはできるからな』

 『えええええっっ!?』

 『エルシィから僕の事を探してる後輩が居るって聞いて何事かと思ったが……大体把握した』

 『エルシィ……あっ、あの人が喋ったんですか!?』

 『こういう事は口止めしとかないと……いや、口止めしても喋りそうだからな。あいつ』

 

 

 

「どんな相手でも同意を引き出し親近感を抱かせる魔法の言葉『エルシィだから』はみなみ相手でも勿論有効だ」

 

「一種の才能だよね。決して誇れる事ではないけど」

 

 

 

 

 『お前が抱えてる悩みは、『終わり方に納得してない』って事だろうな。

  気合を入れて最後の試合に臨もうとしたら参加できなくなって、なんとなく終わってしまった事に納得できていないんだろう』

 『そ、そんな事は無い……です』

 『本当か? まあいいさ。

  僕に言える事はたった一つ。

  どうか終わりを恐れて始める事を恐れないで欲しいという事だ』

 『…………』

 『あ、あともう一つだけ。

  3年間、よく部活を頑張ったな。おめでとう』

 『っ!!』

 『……なんてセリフは僕には似合わんか。ずっと帰宅部だった僕にはな』

 

 

 

「たった一言。それだけで救われる事はいくらでもある。

 そんな場面は何度も見てきたよ。ゲームで。

 まぁ、相手に意志を伝える事さえできれば必ずしも言葉である必要は無いがな」

 

「桂馬くん! 大好きだよ!」

 

「それは知ってる。いちいち伝える必要は無い」

 

「桂馬くん! そこは『僕もだよ』って返す所でしょ!」

 

「そんなルールは知らん。

 ただ……そうだな。僕はお前を信頼している。誰よりもな」

 

「それは私も知ってるよ。

 でも……知っててもその言葉は暖かく感じたよ。決して無駄なものじゃない。

 だから私は言い続けるよ。桂馬くんが大好きだって」

 

「フン、好きにすればいいさ」

 

「そんな連れない態度取らずに、嫌なら嫌って言葉にしてね?

 肯定も否定も返さないなら……沈黙は肯定と受け取るよ?」

 

「…………フッ」

 

 

 

 

  ……その後……

 

 『結局今回は恋愛ルート使わなかったね』

 『後輩属性が相手だから本来は恐ろしく簡単なはずだったんだがなぁ……』

 『終わり方……か。桂馬くんも終わりを惜しんだ事ってある?』

 『何度もあるぞ。神ゲーの攻略が終わってしまうのは嬉しい事でもあるが、悲しくもある。

  かと言って、エンディング直前で止まるなど愚の骨頂だ』

 『そりゃそうだろうね……』

 『今回の場合はエンディングイベントの直前でバグで止まったようなものか。やっぱり現実(リアル)はクソゲーだな』

 

 

 

「終わりを惜しむ……か。

 長年続けた何かを終わらせた経験っていうのは私には無いからちょっとよく分からないな」

 

「部活とかもやってなかったのか?」

 

「うん。桂馬くんは……訊くまでもないか」

 

「愚問だな。部活なんてやってる暇があったらゲームしている。

 ゲームは1日100時間だからな!」

 

「それは無茶……いや、落とし神モードで6つ同時にやれば17時間くらいで合計100時間に……

 いや、それでも無茶だよ!? 不可能ではないけど!!」

 

「不可能じゃないから簡単だろう?」

 

「そういう問題じゃないから!!

 う~ん……長生きしてもらう為にも少しは生活習慣に口出しした方が良いのかなぁ……?

 いやでも、ゲームしてたらむしろ寿命が伸びる……? う~ん…………」

 

 

 

 

 

「これで終わりのようだな。結構長かった気がするが、気のせいか?」

 

「天理編の時よりは短いみたいだね」

 

「ふ~ん。

 では次は……8月31日編か。

 そこまで長くないから更に次の日常回Aも混ざるかもな」

 

「次の日常回って何の話だっけ?」

 

「軽音の会計の話だ」

 

「あ~アレか」

 

「まぁ、分量次第だな」

 

「では次回は『夏休み最終日 8月31日の出来事』をお送りします。

 また来週~」

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