もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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純真の女神編 特異点

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第24回キャラコメンタリー始めます!」

 

「天理編(番外)だな。

 遊園地に行くのは……本作では2回目か」

 

「1回目は私とだったね。堂々と言えるよ。やった! 勝った!」

 

「……まぁ、そうだな。確かに天理に勝ってるか」

 

「うん。それじゃ、VTRスタート!」

 

 

 

 『ば、バカな……どこで選択肢を誤った?』

 『……その問いの答えはうちにも分からへん。

  けど確かな事が一つだけある』

 『……ああ、その通りだな。これは……これ以上続けるのは見苦しいだけだな。

  投了だ』

 

 

「恒例の七香との対局による導入だな」

 

「まさか桂馬くんが負けるなんて……

 け、桂馬くん! 七香さんへのフラグを立てちゃダメだからね!」

 

「安心しろ。突然負けるならまだしもじわじわと差を詰められただけだからインパクトはそこまで強くない。

 それに、今回は試合には負けたが勝負には負けていない」

 

 

 『しっかし、凄い盤面やな。

  実戦で17手詰みの詰将棋なんてそうそうあらへんよ?』

 『……ん? ちょっと待て。

  お前のさっきの手が1手目とすると19手の詰将棋じゃないか?』

 『……へ?』

 『…………』パチッ

 『そうするんならそりゃ勿論こうやな』パチッ

 『…………』パチッ

 『ほい』パチッ

 『…………』パチッ

 『それは確か……こうやな』パチッ

 『…………本当にそれで良いんだな?』

 『えっ? も、勿論大丈夫……のはずや』

 『……フッ』パチッ

 『……ん? この手は……ああああああっっっ!!!』

 『合い駒しつつの王手だ。形成逆転だな』

 『そこは盲点やった!! って事はさっきの手で対策をしてからやるべきで……

  ああああああっっ! うちの負けや!!!』

 『……次回から詰将棋になってもせいぜい残り5手くらいまではきちんと処理する事にしよう』

 『……せやな。はぁぁぁぁ……』

 

 

「勝ったとも言えるし負けたとも言える結末……何かモヤモヤするね」

 

「そうだな。お互いに損しただけだ」

 

「初勝利(試合)は七香さんに譲ったけど、初勝利(勝負)までは譲らないよ!

 このコメンタリーが終わったら特訓だよ!!」

 

「僕と特訓するとその分僕も成長するんだが……まぁいいか」

 

 

 

 『おめでとう……という言葉はまだ取っておこう』

 『こんな状況で言われたらむしろ泣くわ!

  はぁ……んじゃ、検討しましょか』

 『そうしたいのはやまやまだが、生憎と今日は予定が入ってる。

  また今度させてもらおう』

 『そゆことならしゃーないな。

  しっかし、何の用事なんや? デート?』

 『お前……妙な所で鋭いな』

 『えっ、マジで? 適当に言っただけなんやけど。

  相手はやっぱまろんか?』

 『……お前には僕達が何に見えてるんだ?』

 『1週間に1回しか会わんうちが『おしどり夫婦かいな!』ってツッコミたくなるくらい通じ合っとるように見える場面が多々あるんやけど?』

 『そこまでか!?』

 

  そんな場面があっただろうか? せいぜいアイコンタクトで会話したり、指パッチンで合図をしたりといったくらいのはずだが。

 

 

 

「まったく、七香さんも大げさだね。嬉しいけど」

 

「まったくだな。このくらい大した事は無いだろう」

 

(……言語を介さずにコミュニケーションを取るというのは常軌を逸しているが……本人たちは意外と気付かないものなのだな)

 

 

 

 

  ……天理の家の前……

 

 『やあ天理……ではなくディアナか。おはよう』

 『おはようございます。時間ぴったりですね』

 『……天理はどうしたんだ?』

 『恥ずかしがってマジック用の箱に閉じこもっていたので私が強制的に眠らせて着替えさせてここまで連れてきました』

 

 

「そんな事できるんだ、ディアナさん」

 

「……ところで、メルクリウスもできるのか?」

 

(可能か不可能かで言えば可能だが、面倒くさいのでやりたくない。

 分体を作れるから必要ないしな)

 

「一応可能ではあるんだね。

 っていう事はメルクリウスさんに頼めば桂馬くんの身体を好き放題に……」

 

「止めい! もし身体を乗っ取る必要があるレベルの事をやらかしたら家から追い出すぞ!」

 

「うぐぅっ!! それだけは勘弁して!! やりたい事があったら真っ直ぐに頼むから!!」

 

「それはそれで何かズレてる気がするが……そうしてくれ」

 

「うん。じゃあまずはまた一緒のベッドで寝て、朝起きたらおはようのキスを……」

 

「却下」

 

「ヒドい!! 桂馬くん、照れなくてもいいんだよ!」

 

「照れてない照れてない」

 

「うぅぅ~、じゃあ、布団を持ち込むからせめて一緒の部屋で寝るとか。

 そして朝起きたら真っ先におはようって言ってほしいな」

 

「……はぁ、分かった分かった。そのくらいなら好きにしろ」

 

「え、ホント? やっぱり止めたとかナシだよ!」

 

「そんな事はしないから安心しろ」

 

「やったー! 桂馬くん大好きだよ!!」

 

「はいはい。じゃあ次行くぞ」

 

 

 

 『遊園地に入ってしまえば天理も逃げようとはしないでしょう。

  宜しくお願いしますね』

 『貴様……デートを舐めているのか?』

 『え?』

 『いいか? デートというものは出発してから帰宅するまで、いや、出かける前に服装に悩む所から帰ってきて余韻に浸るまでがデートなんだ!!

  今回の場合は天理がそこまで積極的ではないから理想的な始まりを求めるのは酷だ。しかし、移動イベントを飛ばして良い理由にまではならない。

  貴様如きには想像もつかないだろう。2人で駅へと歩く途中、電車に乗っている最中に交わされる会話が攻略においてどれだけの比重を秘めているのかを!!』

 『よ、よく分かりませんが……要するに、デートはもう既に始まっているという事でしょうか?』

 『まあそういう事だ。だからお前は引っ込んでおけ』

 『言い方は気になりますが……一応天理の事を考えて下さっているようですね』

 『フン、僕が関わるイベントのクオリティが低いのは気に食わんだけだ』

 『妙なこだわりですね……分かりました。ではお任せしますね』

 

 

「まったく、女神サマは全っ然分かってないね」

 

「まったくだな。所詮は現実(リアル)の神という事だ」

 

「あ、そーだ! 桂馬くん。次のデートではどんな服を着ていこうか?

 いつもは私が選んでるけど、たまには桂馬くんの意見も聞かせてほしいな♪」

 

「そうだな……お前が選んだものなら大体似合ってるからな。

 それに、そういうのに気を遣う乙女ゲーは専門外なんだ。悪いが自分で決めてくれ」

 

「う~ん、分かった! 楽しみにしててね!」

 

 

 

 

    ……一方その頃……

 

  七香さんが帰って行って、桂馬くんも家をでかけて、家には私1人になった時に携帯が鳴った。

  相手は、さっき番号を交換したばかりの七香さんだった。

 

 『もしもし? 忘れ物でもしたの?』

 『ちゃうねん。うち、今家の前におるねん』

 『……メリーさんの真似?』

 『ちゃうわい!! 単刀直入に言うで。桂木のデート尾行せえへん?』

 『えっ? デートの尾行って……どうなのそれ?』

 『面白そうやんか! あの桂木がデートやで!

  うちのカンが告げとるんや。あいつらを尾行せいって!』

 『……七香さん、ヒマなの? 将棋の勉強とかあるんじゃないの?』

 『今日は師匠も忙しいんでな。丁度ヒマしとった所なんや』

 『そ、そうなんだ』

 

 

「こんなやりとりがあったのか」

 

「あれ? そう言えば桂馬くんってこの辺の事知らないんだっけ」

 

「ああ、初耳だ」

 

 

 

 『分かった。それじゃあ私も行くよ。どうせヒマだし』

 『よし来た! ほなら行くで!』

 

  そういう事で、桂馬くんと天理さんを尾行する事になった。

  べ、べつにデートが気になるんじゃないんだからね! 七香さんが変な事に巻き込まれないか心配だから付いていくんだからね! 勘違いしないでよねっ!

  ……私は誰にツンデレしてるんだろうか? こういうのは棗ちゃんの役割のはずなのに。

 

 

「……ホント、初耳だ」

 

「べ、べつに桂馬くんが気になったんじゃないんだからね!」

 

「純粋な疑問として、本当に興味が無かったのか?

 記憶があったならかなり気になるイベントだと思うんだが」

 

「う~ん、正直言うと付いていきたかったし、できるなら止めたかったよ。

 でも、流石にそこまで露骨に動くのは『記憶を失くしている』っていう設定上無理だったから。

 七香さんが誘ってくれなかったら1日中やきもきして過ごす事になってたよ」

 

「……七香に感謝すべき場面なのか? いや、でもなぁ……」

 

 

 

   ……一方その頃の棗さん……

 

 『へくちっ』

 『あれ? どうしました棗さん。風邪ですか?』

 『人の心配するヒマがあったら自分の心配をしなさい。その課題をあと15分以内に片付けないと死よりも恐ろしい罰ゲームが待ってるわよ』

 『ひぃぃっ!! や、やります!!!』

 『ったく、何で私がこのかのんもどきの面倒を見なくちゃならないのよ』

 『うぅぅぅ……終わりそうにないです。棗さんも手伝ってくださいよ~!』

 『アンタの為の課題なんだから1人でやらなきゃ意味が無いでしょうが!!』

 『で、でもぉ……』

 『……ああもうしょうがないわね! 少しだけよ! 少しだけ!』

 『あ、ありがとうございます棗さん!!!』

 

 

「半ばオリキャラみたいな奴が書いてる内に性格の設定が捻じ曲がっていくのは良くある事だな」

 

「それは良くあったらいけないと思う」

 

「感想欄ではツンデレと言うよりは姉キャラなんじゃないかという指摘が上がっていたな。

 このやりとりを見る限りでは確かにその通りだな。広義のツンデレでもあるが」

 

 

 

 『うーん、聞こえへんなぁ……何話しとるんやろ』

 『な、七香さん。あんまり身を乗り出すと見つかっちゃうよ?』

 『……ところでまろん、一つ訊いてもええ?』

 『どうしたの?』

 『……桂木たち、今日はどこまで行くつもりなんやろう?』

 『知らずに尾行してたの!? って、そりゃ知らないか。

  デゼニーシーに行くって言ってたから次の次くらいの駅で降りると思うよ』

 『へーそうなんか。

  ところで、もう一つ疑問があるんやけど』

 『何?』

 『……デゼニーシーって、何?』

 『それも知らないの!?』

 『まろん、声抑えて。見つかってまうで』

 

 

「お前たち、こんな近くに居たのか」

 

「頑張って探されたら見つかるレベルだね。周りに人も多いから見つからなかったけど」

 

「しかしまぁ、デゼニーシーを知らない奴が居たのか。僕ですら知ってたのに」

 

「帰国子女だから無理もないかな」

 

 

 

 『それじゃあ説明しておくよ。一言で言うと遊園地だね』

 『おー、遊園地やったんか。デートの事はよう分からんけど、なんか鉄板な気ぃするな』

 『桂馬くんらしく言うなら……

  『ベタなチョイスであり使い古されていて安定している場所だ。よって大失敗する確立は低く最低ラインは保証されるが大成功を狙うのも同様に難しい』

  って感じなんじゃないかな』

 『……桂木の奴は何をもって成功って言っとるんやろうな?』

 『攻略の進み具合にもよるだろうけど、攻略序盤ならとにかく強い印象を与える、中盤なら今まで溜めてきた『印象』を『恋愛フラグ』に変換する。

  終盤なら良い雰囲気で告白してハッピーエンドってところかな。例外も結構あるけど』

 『……なんか、まろんが遠い……』

 『あっ、ごめんごめん。デゼニーシーについてだったね。

  パチモ……妙な名前の割には結構広くて1日で回りきるのは一般人にはまず無理だね』

 『一般人なら? 一般人じゃなかったら行けるん?』

 『……桂馬くんレベルの人が分刻みの予定を組んで全力疾走すればね』

 『まず無理やな』

 

 

「……おいかのん」

 

「桂馬くん大好きだよ! キスしよう!」

 

「ゴリ押しで誤魔化そうとするな。

 この部分の会話、記憶がほぼある事を盛大にブチまけてるぞ!」

 

「う、うん、そうだね……これは桂馬くんに聞かれてたら一発でアウトだったね。

 良かったぁ、桂馬くんに聞こえてなくて」

 

「……まぁ、解釈次第では強引に突破する事もできそうだけどな。

 分刻みの予定を組んで全力疾走すれば全部回りきれるというのは体験談ではなく推定とか、別人の体験談だったりするなら矛盾はしないな。

 そんな回りくどい事を考えるよりも前に記憶の存在を疑うが」

 

「こんな所でボロ出してたんだね私。

 桂馬くんが居ないからこそ手を抜いてたっていう面もあるけど……」

 

 

 

 

 『んじゃ、何から乗りたい?』

 『え? 桂馬君の好きなのでいいよ。私、よく分からないし』

 『それはそうだが……パッと見で興味を持ったものとか無いのか?』

 『えっと……ぜ、全部?』

 

  全部……そう来たか。

  前に挑戦してしっかりと全部回れた事があったので物理的に不可能という事は無い。

  しかし、体力的にかなり厳しい事になるので勘弁してほしい。

 

 『……全部は厳しくないか?』

 『そ、そうだよね。ごめん……』

 『謝るな。今日はお前の為に来てるんだからいちいち謝る必要は無い』

 『あぅ……ご、ごめん……』

 『言った側から謝ってるな……』

 『あっ、ごめ……じゃなくて、えっと……』

 『まあいいや。とりあえず目についたものを適当に回るとしようか。それで良いか?』

 『う、うん! えっと……ありがとう!』

 『礼を言う必要もあまり無いが……まあいいか。行くぞ』

 

 

 

「桂馬くんと天理さんがイチャついてる。

 こういう時は私はどうすればいいんだろう。物陰でハンカチでも噛んでればいいかな」

 

「似合いそうにないから止めておけ。

 いつもみたいに『自分の時は全部回れた、やった勝った!』とか言ってればいいんじゃないか?」

 

「そ、その通りだね!

 私の時は面倒臭がらずに予定組んでくれたよ! やった! 勝った!」

 

「……お前の場合は駆け魂攻略が絡んでいたという面もあるが……まぁいいか」

 

 

 

  ……かのん視点……

 

 『至って普通だね……』

 『せやな……ん?』

 『どうかしたの?』

 『そう言えば、桂木の奴ずっとゲーム持ちっぱなしやない?』

 『? それがどうかしたの?』

 『いや、デート中やで!? 何でずっとゲームしとるん!?』

 『……何言ってるの七香さん。だって桂馬くんだよ?』

 『そ、そうやけど……』

 『むしろゲームしてない方がおかしいよ!!』

 『そ、そうなん? そ、そう言われてみればそんな気も……せえへんわ!! おかしいやろ!!』

 

 

「私の時も……ゲームはしてたね」

 

「当然だな。

 移動しながらだから1台しかプレイしていないが、処理能力的にはあと数台プレイ可能だ」

 

「PFPを上手く支えてあげればもっとプレイできる……?

 いや、デート中に介護みたいな真似するのは流石にちょっと嫌かなぁ……」

 

「僕も流石にそこまで頼む気は無いさ。七香みたいに文句を言わないだけで十分だ」

 

「七香さんも文句を言ってるわけじゃないと思うけど……まあいいや」

 

 

 

「あ、そうだ。ここもちょっとコメントしておくか。

 後書きにチョロッと書いた事だ」

 

 

  今回のデートを書くにあたってデゼニーシーが出てきた11巻や15巻を読み返して、ちょっと遡って14巻を読んだりしていましたが、そこでウルカヌス様の驚愕の台詞を発見しました。

   『かのんトかいう歌手に浮気して!! (後略)』

  どうやら女神様にはちゃんとかのんが歌手だと判断できていたみたいです! いや~良かった良かった。

  台詞の揚げ足取りはともかく、原作者の若木先生もアニメ一期を見た後でもかのんの本業が歌手だという認識はしっかりあったみたいですね。

 

 

「……そう言えばお前って歌手だったな」

 

「当たり前だよ!! 私の本業は歌手寄りのアイドルだよ!!

 最近はバラエティー番組の出演オファーが殺到してるけど、それでも歌手だよ!!」

 

「いやー、流石はミネルヴァだなー。

 余談だが、この後書き以降から筆者が後書きや感想欄などでウルカヌスを呼ぶ時は何故か様付けで呼んでいる。

 敬意を払っているのか、あるいはバカにしているのかは本人もよく分かっていないようだがな」

 

「……私の仕事を理解してくれてるのはウルカヌス様だけだよ……」

 

 

 

 

 『何か食べたい物はあるか?』

 『う~ん……桂馬君のオススメは?』

 『そうだな……』

 『じゃ、あそこのホットドッグなんてどうだ?』

 『大丈夫だよ。美味しいの?』

 『普通のホットドッグだ。食べながら移動できる点が優秀だな』

 『……選ぶ基準、そっち方面なんだね。いいけどさ』

 

 

 

「かのん攻略の時も食べていたという設定になったホットドックだな。

 1日で全部回るという挑戦をしていたから移動しながら食事できるのは極めて大きな利点だ」

 

「あの時は急いでたから味はあんまり分からなかったなぁ……今度また食べに行こう!」

 

「……時間ができたらな」

 

 

 

 

  桂馬君がさり気なく、しかし分かりやすくお手洗い休憩を促してくれたのでそれに甘えさせてもらった。

  今日は朝から色々とあったけど、ようやく1人になった。

  別に桂馬君と一緒に居るのが嫌ってわけじゃない。むしろ幸せ過ぎて心臓が止まっちゃわないか不安になるくらいだけど……

  今だけは、ちょっと1人で……ううん、ディアナと2人で話す必要があった。

 

 『ディアナ、ちょっといいかな』

 『どうしましたか? 何か問題でも?』

 『う~ん、問題と言うか何というか……

  あのねディアナ、ちょっとの間で良いから私が何をしていたかディアナが分からないようにする事ってできる?』

 『分からないようにですか? 少々手間はかかりますが不可能ではないでしょう。

  しかし、一体何をするつもりなのですか?』

 『……ちょっとね』

 『……分かりました。

  ただ、私にできるのはしばらくの間眠っている事と、その時の記憶を意識して見ないようにする事だけです。

  何かの拍子にうっかり覗いてしまう可能性もありますし、緊急事態であれば見る必要があるかもしれません。それでも良いですか?』

 『それが精一杯なら。良いよ』

 『では……しばらく眠ります。万が一何かあったら私を強く呼んでください。いいですね?』

 『うん。

  ……ありがとう』

 

  返事は返ってこなかった。

  それじゃあ……行こうか。

 

 

 

「この場面は僕も初めて見るな」

 

「私もこの場面は見てなかったなぁ。

 この後の事は見てたけど」

 

「……とりあえず次に進むか」

 

 

 

 『ただいま』

 『おう、お帰り。少し休んだら出発するか』

 『……あのさ、桂馬君』

 『どうした?』

 『間違ってたら申し訳ないんだけど……

  ……桂馬君は、女の子とここにデートしに来た事があるよね?

  デート、だけじゃないよね? 多分だけど……キス、くらいはしたんじゃないかな?』

 

 

 

「まさか天理さんにバレるとはねぇ……」

 

「ああ見えてあいつ頭良いからな」

 

 ※天理の学習能力の評価値は最大値の5

 

「普段は大人しいからそんな様子は全く無いのに……」

 

「……ちなみに、運動能力もお前より上だ」

 

「…………えっ?」

 

  ※

 例のファンブックによればかのんの運動の評価値が3に対して天理は4。

 流石に女神補正がかかってると解釈する事もできるけど、もしそうなら5になってない方がおかしい。やっぱり素の実力ですね。

 

 

 

 

 『私は……桂馬君が好きだよ』

 

 『好きだから、一緒に居られたらいいなって思ってる。

  それこそディアナがいつも言ってるみたいに、結婚とか……できたら嬉しいなって、思ってる』

 

 『けどそれ以上に……桂馬君に悲しんでほしくないんだ』

 

 『今日、この園内を歩いてて、時々、桂馬君がどこか遠くを見ているような、少しだけ寂しそうな、そんな顔をしてる気がしたんだ』

 

 『だから……知りたいんだ。ここで何があったのか、桂馬君がどんな事をしてきたのかを』

 

 

「天理さんの告白かぁ……

 先越されちゃったよ。私の攻略の時を除けばだけど」

 

「結局、本作では天理を切り捨てる事になってしまったな。

 今更僕が天理になびく事は有り得ないが、どこかの平行世界(二次創作)では幸せになっていて欲しいものだな」

 

 

 

 『それじゃあ、もう一つだけ。

  桂馬君は……その人の事が好きだったの?』

 『……そっちなら満足に答えられそうだ。

  好きか嫌いかという極端な問いかけであれば間違いなく好きだと言える。

  ただ、恋愛的な意味で好きになった事は一度も無い。そう断言できる。

  以前も、今もな』

 

 

「……ねぇねぇ桂馬くん!」

 

「ノーコメント」

 

「ちょっと!? まだ何も言ってないよ!?」

 

「どうせ『これは今でも変わらないのか』って言う気だろ?

 ノーコメントだ」

 

「桂馬くんのケチ!」

 

 

 

 

 

 『……あの話、私が聞いて良かったのかなぁ……』

 

  全部聞かせてもらったよ。天理さんの告白の辺りからずっとね。

  『私』の攻略に関する事を桂馬くんの口から聞いたのは初めてだ。そういう認識だったんだね。

  『恋愛的な意味で好きになった事は一度も無い』とまで言われちゃいましたよ。あははっ、フラれたね。

  でも、桂馬くん気付いてる? 現実(リアル)の全てを見捨てていた桂馬くんがゼロ以外の評価を出すっていうのは十分に興味を持ってるっていうのと同じ意味だよ。

  多分、天理さんも気付いたんじゃないかな。

 

  ところでさ……一つ気になる事があるんだ。

  桂馬くんは、『前の私』と『今の私』、どっちの方がより好きなんだろうね。

  ……なんて事を考えても意味は全くないんだけどさ。

  結局の所、私は私にしかなれない。他人になる事はもちろん、過去の私に戻る事もできない。勿論、演じる事なら可能だけど……それは考慮しなくていいだろう。

  今、ここに居るのは『私』だ。今現在の私がここに居るだけだ。

  だから、私にできる事を精一杯する事しかできないんだ。

 

 

 

「この辺のモノローグは本当に私の素が出てるね」

 

「『前の私』と『今の私』を分けて考えても全く意味は無い。

 過去を演じる事が可能。

 今現在の私がここに居るだけ。

 適当にカモフラージュされているが、見事に伏線だらけだな」

 

「筆者さんも矛盾が発生しないように相当気をつけたみたいだよ。

 当時の私が断定できる事実は意見レベルだと誤認させて、記憶が無くてもこの発言をしてもおかしくないようにカモフラージュしてるね」

 

「下3行を取っ払って『意味は全くない』の辺りで打ち切ってたら意外とアッサリバレたかもな」

 

「かもね」

 

 

 

  ……その夜……

 

 『天理、どうでしたか? 桂木さんとのデートは』

 『あ、ディアナ。起きたの?』

 『ええ。つい先ほど。結果は……訊くまでもないようですね』

 『え? どうして?』

 『今朝と比べて天理の愛の力は明らかに増しているのが感じられます。上手くいったようで何よりです』

 『そうなんだ……』

 

  上手くいったわけじゃなかった気がするけど……

  でも、桂馬君に対して心境が少し変わったのは確かだ。

  現実に興味を持っていなかった桂馬君が、現実の女の子と恋愛しかけている。

  かのんちゃん……西原さんがうらやましいよ。

  でも、桂馬君が現実に興味を持てたっていう事は……もしかしたら、私にもチャンスがあるのかもしれない。

  お隣に住んで、時々話して、それだけでも満足できる。

  けど……もう一歩、踏み出してみようかなって。そう思えたんだ。

 

 

 

「このタイミングで翼まで復活するのは筆者としても予想外だったようだな」

 

「もし復活してなかったら女神編ではどうなってたんだろう……?」

 

「……まぁ、筆者の事だから強引に何とかしてただろうけどな」

 

「強引ねぇ…………」

 

「本章は美生編の流れで書く事になった話であり本来は書く予定がまるで無かった回だが、物語上非常に重要な回になっている。

 ディアナの復活とかお前の伏線とかな。

 これが無かったら……どうなってたんだろうな。ホント」

 

 

 

 

「これで終わりのようだな」

 

「それでは、次回はアポロ編、『『思慮』の女神は邂逅を果たす』をお送りします!」

 

「誰の事だという感想が多かったようだな。まぁ、アポロだからなぁ……」

 

「それでは、また来週~!」

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