もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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体育祭準備編 『思慮』の女神は邂逅を果たす

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第25回キャラコメンタリー始めます!」

 

「思慮の女神編だ。

 このタイミングで出す予定は全く無かったらしいが、出た方が自然だと判断してこうなったらしい」

 

「それじゃ、VTRスタート!」

 

 

 

  体育祭について色々決める為に国語の時間を潰してHRを行っている。担任で国語教師の二階堂が授業時間を私物化したようだ。

 

 『諸君、ベストメンバーで挑むように。そして1位を取るように。

  説明するまでも無いと思うが、体育祭は紅組・白組などという大雑把なチーム分けではなく各クラス毎のポイントを競うものだ。

  すなわち、この結果がクラスの評価と直結するのだ!

  そう、そしてクラスの評価は私の評価、私の査定に直結する。

  私の給料の為に勝て!!』

 

 

 

「二階堂先生……お金に細かいのは公式設定なんだよね」

 

「電車賃すら細かく節約しようとしてたみたいだからな」

 

  ※

 『神のみぞ知るセカイ オン・ザ・トレイン』より

 学割が使えない事を残念がったり、ちょっぴりおトクな土日切符を目敏く見つける二階堂先生が見れる。

 

「……いや待て? 白鳥のじーさんなら学生証の偽造くらいやってくれるんじゃないか? 二階堂とエルシィを舞校に送り込むくらいだから頼めばやってくれるだろ。

 そうすれば学割が普通に使えるぞ」

 

「え? う~ん……二階堂先生の見た目が学生で通じるかどうかだねぇ」

 

 

 

 『ん~、そういう事なら……』

 

  二階堂の発言を受けて前の方で司会進行をやってる女子(名前は忘れたが何かモブっぽい名前だった気がする)が黒板に名前を書いていく。

  100m走 高原歩美

  400m走 高原歩美

  1500m走 高原歩美

  二人三脚 高原 歩美

 

  ……以下略

 

 『待て待て!! コロす気かぁ!!!』

 

 

「この時の司会進行は原作と同じくモブ子だ。知ってる人ならすぐに分かっただろうな」

 

「う~ん、ツッコミ所は色々あるけど……二人三脚は一体何!?」

 

「ん? ああ、高原って人と歩美って人のペアだろう」

 

「同一人物だよね!? 反則だよね!?」

 

「まぁ、そうだな。

 原作でもこの場面では歩美の名前が黒板に書かれていたが、普通に1人分の名前が書いてあるだけだったな。

 本作ではあたかも別人であるかのように名字と名前の間にスペースを入れたんだが……元ネタ何だろうなこれ」

 

  ※

 筆者として思い当たるのは2つ。

 ・P○Pソフト、『ときめきメモリアル4』より。

 体育祭の二人三脚の歴代レコードに『○○ ××』といった具合に2人分の名字が書かれるべき欄に『伊集院 レイ』と明らかに1人と思われる名前が書かれていた事。なお、その高校の理事長が伊集院の人間だし、作中の世界ではギャグ描写も多いので本当に不正で1人で走ってても割と不自然じゃない。

 ・ライトノベル、『バカとテストと召喚獣』より。

 第二巻にて学園祭の副実行委員を決める際に『候補を何人か挙げてから投票で決めよう』という流れになり、第一候補に『吉井』。第二候補に『明久』と書かれて実質一択になっていた事。(主人公の名前が『吉井明久』。中の人が神様と一緒だったりする)なお、投票は結局行われなかった。解せぬ。

 ……どっちか、あるいは両方の影響を受けて書いてた気がする。

 

 

 

 ガスッ

 

 『ごふぁっ!!』

 

  突然頭に強い衝撃を受けた。何事かと思って後ろを振り向くとそこには目だけは笑ってないにこやかな顔のドS(二階堂)が居た。

 

 『1人で関係なさそうな顔をして何をしている、桂木桂馬くん?

  言っておくが、体育祭は全員参加だ。団体競技以外の競技にどれか一つは参加するように。

  サボる奴はプロフェッサーフェスティバルが血祭りに変わるぞ?』

 

 

「ああっ! 桂馬くんは私だけの呼び方なのに!!」

 

「二階堂だけは実は例外で使ってるな。

 まぁ、『桂木桂馬くん』とフルネームでしか使ってないから『桂馬くん』呼びがお前だけのユニークな呼び方なのは変わらないが」

 

「微妙に釈然としないけど……そういう事にしておくよ」

 

 

 

  まぁ、一応名前くらいは登録しておくか。どうせ両腕両足が複雑骨折して休む予定だからあんまり得点に関わらない競技……

 

 『じゃ、僕は二人三脚で』

 『はーい。オタメガは二人三脚ね。あと登録してないのは……えっと……』

 

 

「桂馬くん、一体何をする気なの……」

 

「あくまでもそういう名目で休むだけであって本当に骨折するつもりは全く無いから安心しろ」

 

「いやまぁ、それは一応分かってるけど……何でわざわざそんな無駄に壮大なでっち上げを……」

 

「特に深い意味は無い。休む名目は何でも良いからな」

 

 

 

 

 『あさみん、まだ決まってないね。どーする?』

 『……二人三脚で、お願いします』

 『はいはーい。これで大体埋まったかな?』

 

  ……何らかの方法で病院送りになる予定だったというのに、どうも予定通りに進めるわけにはいかなくなったようだ。

  女神の第一候補者。そっちからコンタクトを取ってくるのであれば、受けて立とうじゃないか。

 

 

「麻美さんが動いたね」

 

「女神の宿主の第一候補者、そして実際に女神が居たわけだな。

 原作での影の薄さを考えると大躍進だな」

 

「……文字通りの原作だとカバー裏に1回と、4コマで1回。計2回だけの登場だっけ?」

 

「数え間違いが無ければな。

 小説版のキャラは最初は出すかどうか迷っていたようだが……出しておいて良かったな。ホント」

 

 

 

 

 

 『桂木君は二人三脚をやった事は……無いよね?』

 『フッ、見くびってもらってはこまる。二人三脚如き、毎回ハイスコアを出してるさ』

 『……それって、ゲームの話だよね?』

 『愚問だな』

 『……と、とりあえずあの線の所まで移動しようか。

  右・左・右って号令をかけながら移動を……すると転ぶね』

 『ん? ああ、確かに』

 

 

「原作では僕とちひろが愚かにも『右・左』と号令をかけていたが……麻美のおかげで回避しているようだ」

 

「……二人三脚ってけっこうくっついてるんだね」

 

「まぁ、ギャルゲー定番の競技だしな」

 

「今度一緒にやろうよ! 二人三脚!」

 

「2人きりでやっても虚しいだけだと思うんだが……」

 

 

 

 『なぁ、一つ訊いてもいいか?』

 『いいよ。何?』

 『お前、どうして二人三脚を選んだんだ? 特に得意ってわけでもないみたいだが』

 『それは……その……』

 『ん? ああ、すまんすまん。よく考えたら訊くまでも無かったな。

  他の競技大体埋まってたもんな』

 『えっ? そ、そうだね……』

 『ああ、それじゃあしょうがないよな。他に特に理由も無いよな。

  ……それで良いのか?』

 

 

「もしここで『はい』って答えられてたらどうなってたんだろう……」

 

「その時は話は終わりだな。で、エルシィが刺された後にもう一回調査するハメになる。

 勇気を出してくれて助かったよ」

 

 

 

 

  ……回想編 麻美のモノローグ

 

  いつからだろう? 記憶が曖昧になったのは。

  いつからだろう? その記憶が段々と鮮明になっていったのは。

 

  数ヶ月前、私の誕生日が過ぎて少し経った後、何故か心が軽くなっていた。

  何かが、あったんだと思う。けど、その何かがどうしても思い出せなかったんだ。

 

 

「麻美さんの誕生日っていつだっけ?」

 

「6月6日。何気に僕と同じだ。

 記憶が無かったから、近くにある印象に残ってそうな日を引き合いに出してみたようだ。

 少なくとも本作の場合、お前とエルシィに出会ったのは僕の誕生日の直後くらいだったという設定だしな」

 

「ん~、その後に歩美さんの攻略と私の攻略があって……微妙に遠いね」

 

「まぁ、微妙にな。

 かと言って何の特徴も無いただの平日を覚えているってのも不自然だしなぁ……」

 

 

 

 『ねぇ郁美、今年の6月半ば頃の事なんだけど……』

 『え? ガッカンランドの事? どうかしたの?』

 『えっ!?』

 『おねーちゃん? どうかしたの?』

 『う、ううん、大丈夫。

  えっと……今度、お友達と一緒にそのガッカンランドに行くんだけど、どんな所だったっけなって思って』

 『お~、お姉ちゃんも私以外のちゃんとしたお友達ができたんだね!

  ……何かちょっとさみしーなー』

 『ご、ごめん……』

 『ううん、冗談冗談。お姉ちゃんが楽しそうにしてる方が100倍嬉しいよ!

  いやー、桂木君には感謝だね』

 『えっ? どうして桂木君が……?』

 『どうしても何も、一緒に行ったじゃん。ガッカンランドに』

 『っっ!?』

 

 

「吉野郁美の久しぶりの登場だな。回想だが」

 

「う~ん、そう言えば郁美さんとは殆ど絡みが無いね。

 麻美さんのフリしてた郁美さんとちょっと話してたくらいだよ」

 

「そう言えばそうだったな。麻美攻略当時は完全に分業してたからな」

 

「そうだね。

 それはそうと、郁美さんには大体の記憶があったんだよね。

 麻美さんにしてみれば凄いビックリだったろうね」

 

「原作では麻美に女神なんて居なかったわけだが……日常生活で齟齬が出てなかったか少々心配だな。

 まぁ、キスの辺りのイベントだけ削り取ってたなら全く問題ないんだが」

 

 

 

   ……ガッカンランド……

 

  妹から話を聞いた翌日、早速私はガッカンランドに行ってみた。

  夏休み中なせいか、学生っぽい人達で混み合っていた。

  あの時は、ここまで混んでなかった気が……あれ?

  あの時って、いつの事? 思い出せない。

 

  郁美から聞いた施設を回ってみた。水着で入るお化け屋敷、レストラン、カラオケ、ボウリング。

  見覚えがある気がする。気がするけど……思い出せない。

  次は確か……最上階のホールでかのんちゃんのゲリラライブをやってたはず。

  行ってみたけど……さっきまで感じていた既視感すら無い。

  印象に残らないわけが無いのに、やっぱりハッキリとした事は全然思い出せなかった。

 

 

「覚醒しかけの状態だな。既視感くらいは感じているようだ」

 

「そう言えば、原作だと記憶って『操作』されてるけど本作だと『消去』されてるっぽいよね。

 何でだろう?」

 

「ありもしない話をでっち上げるより消し去った方が筆者が凄い楽という面もあるが……

 ……実はお前の責任が半分くらいを占めている」

 

「えっ、私?」

 

「お前言ってたろ? 『ここ一週間の記憶が曖昧』って」

 

「……あ」

 

「当時は記憶消去か記憶操作かなんて僕もお前も分からなかったからとりあえず記憶が無いっていう嘘を吐いたんだろうな。

 筆者がその嘘を補強する為に便乗した形だ。

 まぁ本作では記憶操作のプロセスがそもそも違うんで内容が違っても構わないしな」

 

「そんな裏事情があったんだね……」

 

 

 

 

 

  どうしてだろう? 既視感を感じた。かつてないほど、強い既視感を。

  振り返って、私が今来た道を、階段の上の方を仰ぎ見る。

  ……間違い無い。私は、ここに居た。

 

  その声は咎めるように……いや、違う。彼はただ純粋に質問しただけだった。

 

  どうして忘れてしまっていたんだろう。あんなにも暖かく、心強い言葉を。

 

  全部、全部思い出せたよ。桂馬君。

 

  そして、その時だった。

  階段の踊り場に設置されていた大きな鏡が、光に包まれた。

 

 

 

「思慮の女神様の覚醒だね」

 

「覚醒の時期自体は原作とそこまで変わってないのかもな。

 しかしまぁ……もし本作でも宿主がお前だったらどうなってたんだろうな?」

 

「えっと、それはどういう意味?」

 

「いや、そこまで深い意味は無いが……仮にお前の中にアポロに限らず女神が居て、この辺で女神が覚醒していたらどうなってたんだろうなと」

 

「う~ん…………その時はしょうがないから開き直って桂馬くんの攻略に乗り出すかなぁ……

 いや、その前に隠そうとするか。隠しきれるかは分からないけど。

 もし隠しきれた場合でもエルシィさんが刺された時点で間違いなく自白するから……どうやっても隠せないね」

 

「……お前に女神が居なくて良かったよ」

 

 

 

 『ただいま』

 『お帰りお姉ちゃん! どこ行ってたの?』

 『ちょっと、ガッカンランドに……』

 『あ~、お友達と行くのって今日だったんだね。楽しめた?』

 『う、うん……

  ……ちょっと、部屋で休んでくる』

 『え? うん。大丈夫?』

 『大丈夫。(……多分)

 『それ、大丈夫じゃないような……何かあったら呼んでね』

 『うん。ありがと』

 

 

「鏡の中の自分が話しかけてきたらそりゃ驚いて疲れるよな」

 

「そうだね。すっかり慣れちゃったけどとんでもない異常事態だよね。

 記憶や感情も筒抜けみたいだし。

 ……女神様って実は優秀なストーカーなのでは」

 

「本人たちは意図的にやっているわけではないようだが……確かにそうやって考えると結構なストレスになりそうだな」

 

「桂馬くんも辛くなったらすぐ言ってね! 私が癒してあげるから!」

 

「……何かストーカーが増える予感しかしないな」

 

「そんな、ヒドいよ!!」

 

「まぁ、半分くらい冗談だ。

 僕の場合はメルクリウスの性質すらも有効活用してゲームプレイに生かしているからな。

 特に気にしたことは無い」

 

「そっかぁ……ってアレ? 半分が冗談ならもう半分は……」

 

 

 

 

 『それじゃあまとめてみるよ。

  まず、この世界は『天界』『人間界』『冥界』に分かれてて、ここは人間界なんだね』

 『ほぼ間違いなくそうじゃな。妾の仲間の気配も感じぬし、悪魔どもの気配も感じぬからのぅ』

 『で、アポロは天界の女神様で、6人の姉妹達と一緒に悪い悪魔を封印していた』

 『う~む……まあそうじゃな』

 『でも、気付いたら私の中に居た』

 『そうなのじゃ。気付いたらここにおったのじゃ』

 『そして神様らしい力もほぼ失ってる』

 『うむ! ちょっとした占いくらいしかできぬようじゃ!』

 『……で、その復活の為のエネルギー源は……』

 『うむ、『愛』じゃ!

  お主のおかげで少しずつじゃが力が戻っておるぞ』

 『…………』

 『むぅ~、何じゃその不機嫌そうな顔は。すこし前まではこの手の話題を振ると顔を真っ赤にしておったのに』

 

 

 

「原作の私よりもずっと情報を引き出してる気がする……」

 

「原作のお前は一体何をやっていたんだというくらい無知だからなぁ……

 まぁ、本作と違って仕事が本当に忙しかったんだろうが」

 

「お仕事かぁ……本作でも結構頑張ってるんだけどね」

 

「そんなのいちいち描写されないから結構緩い印象を受けるな。

 実は全くそんな事は無いんだろうが」

 

  ※

 公式設定でかのんちゃんの1日の睡眠時間は僅か3時間。

 仕事時間は朝の1時間の発声練習と2時間の移動時間を抜いても12時間。ちょうど過労死ラインですね。

 曜日によっても変わるのかもしれないけど……かのんちゃんが過労死しないか心配です。

 

 

 

 

 『もうすぐ学校が始まるのぅ。ようやく桂木に会えるのぅ』

 『……そうだね』

 『……? いつもみたいに睨まれるかと思ったのじゃが……』

 『そう思うならからかうの止めようよ』

 『前向きに善処するのじゃ!』

 

 

 

「こんな何気ない描写が後の伏線になるとはな……」

 

「この時はアポロさんの方を攻略するなんて全く決まってなかったよね?」

 

「一応視野には入ってたんじゃないか?

 麻美の再攻略も不可能ではなかったが……まぁ、アポロ攻略の方が楽そうだったからな」

 

「へ~。

 そう言えば原作だとディアナさんが自爆してたけど翼は戻ってなかったね。

 本作だと設定が違うのかな?」

 

「それは単純にディアナの愛が足りなかっただけの可能性もあるが……筆者の頭の中では明確に設定変更しているようだ。

 宿主の愛よりもむしろ効率が良い気がする……と」

 

 

 

 

  ……2学期 学校……

 

 『かのんちゃんに会いたいかー!』

 『……京さん、何事?』

 『何故毎回私が説明を……いや、良いんだけどさ。

  簡潔に言うと……うちの部活の会計が何故かかのんちゃんだった。

  明日会計の仕事をしにうちの部室に来る事になた。

  折角だから麻美さんも誘った。以上』

 『えっ? かのんちゃんが会計……? いつの間に?』

 『何か桂木と個人的な知り合いらしいよ~。詳しくは知らんけど』

 

 

「この辺は部費関係の話だね」

 

「会計騒動編だな。しっかし、麻美を誘っているとはファインプレーと言うべきか何というか……」

 

「ちひろさんの存在感は凄いなぁ……ホント」

 

 

 

 

  というわけで翌日。

  ……何故か、かのんちゃんが窓から入って来た。

 

 『人間界のあいどるとやらは只者ではないのぅ』

 (いや、普通こんなんじゃないから!!)

 『ところで一つ確認しておきたいのじゃが、あのかのんちゃんとかいう者は本当に人間なのかや?』

 (えっ? そりゃそうだと思うけど……)

 『ふぅむ……しかし、これは……』

 (どうかしたの?)

 『……あの娘から妙な力を感じるのじゃ。

  冥界の悪魔達が使う魔力と、妾たち天界の女神が使う理力とが混ざり合ったようなそんな気配をのぅ』

 (つまり……どういう事?)

 『妾にも分からぬ! 片方だけならまだしも両方の気配がするってどういう事じゃ!

  どちらかと言うと理力の方が強い気はするのじゃが、かと言って無視できるほどの魔力ではないわい。

  確実に言えるのは、あやつは只の一般人ではない事だけじゃ』

 (じゃあ、もしかして私の記憶喪失にも関わってる……?)

 『可能性はあるのぅ……』

 

 

「この辺は筆者が何とか抜け道を捏造してたな」

 

「え、どういう事?」

 

「この辺で冷静に考えてみると『アポロ覚醒』と『会計騒動』の時系列はどう考えてもアポロの方が先だろうと判断したようだ。

 会計騒動の直後に覚醒したという風にしても構わないが、それだと覚醒が急激過ぎてしっくり来なかったらしい。

 で、会計騒動の当時はそこまで明確に意識した描写なんてしておらず、復活しかけくらいの感覚で書いてたらしい。

 だから、麻美が消極的だった理由を何とか捏造したようだ」

 

「うわぁ……その場で作ったんだ。これ」

 

「魔力精製と理力精製は元からあった設定だがな。

 そこに『錯覚魔法を使っている時のみ隠蔽している』という設定を足しただけだ。

 都合の良い事に、ディアナに会っている時は常に錯覚魔法を使っていたし、錯覚魔法がディアナに効く事は検証済みだ」

 

「凄い綱渡りしてたんだね、筆者さん」

 

「全くだな。もっと考えてから書いてほしいものだ。

 ちなみに、理力の方が強いのは正の感情の方が強いからだな。

 もし、何か悲しい事があって魔力の方が大幅に高かったらアポロに襲われていた可能性も0ではないな」

 

「うわぁ……」

 

 

 

 

  ……回想終了……

 

 『それじゃあ……聞かせて欲しい事があるんだ。

  ガッカンランドでの事を、あの日にあった事を』

 

  その台詞を聞いた桂馬君は、驚いた顔をした。

  そして、満足そうに頷いたのだった。

 

 

「麻美さん、勇気出したね。

 相手がどれだけの事を知ってるか分からないっていうのは結構な不安だと思うけど」

 

「そう言えばそうだな。よく一歩を踏み出してくれたよ」

 

「桂馬くんの場合は相手の反応をほぼ確信してから動いてるもんね。

 未知だった経験はあんまり無いのか」

 

「お前の偽装には度肝を抜かれたがな」

 

「ふふ~ん♪」

 

 

 

 

 『まさかお主が冥界の関係者じゃったとはのぅ……』

 『ふむ……不要だとは思うが改めて自己紹介しておこう。

  桂木桂馬だ。駆け魂隊の協力者という立場で地獄に関わっている』

 『妾はアポロじゃ! 宜しく頼むぞ桂木よ』

 『……まあ、アポロの事は置いておくとして……』

 『なんじゃと!? どういう意味じゃ桂木!!

  ちょっ、待っ!!』

 『お前にとっては女神だの悪魔だのなんていう遠い世界の話はどうでもいい、女神なんて脇役だ……とまでは言わないが重要じゃないだろ?

  次はあの日の事を話そう。そっちの方が、お前にとってはよっぽど重要のはずだ』

 『……そうだね。桂馬君はずっと全部知ってたんだよね?』

 『ああ。あの日、誰のどんな思惑が働いていたのか、そしてお前が何に巻き込まれたのか』

 

 

 

「筆者が何度か言っている『女神は脇役』って言葉はここが初出のようだな」

 

「女神様の役割かぁ……う~ん……」

 

「ギャルゲー的に言うなら……何なんだろうな、あいつらは。

 ライバルヒロインでもないし、悪役令嬢とかでもないし、情報屋でもないし……

 ……アレか。6つ集めたらトゥルーエンドへの道が開けるアイテムか」

 

「物扱いされてる……」

 

  ※

 ふと気付いたけど『トゥルーエンドに至る為に6つのアイテムを集める』というのは『YO-NO』と同じ。

 実は若木先生によるリスペクトだった……っていうのは流石にこじつけだろうか? こじつけですね。

 

 

 

 『でも……1つだけ、訊いてもいい?』

 『……どうぞ』

 『その……えっと……

  ……ど、どうして、私に、キス……したのかなって』

 『……人の心のスキマを埋める、最も有効な手段って何だと思う?』

 『えっ? うーん……?』

 『……答えは、『恋愛』だそうだ』

 『……れん……あい……?』

 

 

「そう、恋愛だ」

 

「多分私もこんな顔してたんだろうなぁ……」

 

「……とりあえずエルシィは後でもう一回シバいておこう」

 

「いや、決してエルシィさんだけの責任ではないような……」

 

「じゃあドクロウ室長もシバいておこう」

 

「そうだね!」

 

 

 

 『桂馬君は……私を助けてくれたんだよね?』

 『……何だと?』

 『どれだけ頑張っても治らなかった私の悩みを解決してくれて、駆け魂からも守ってくれて……

  だから、感謝してるんだよ。すっごく』

 

  私の言葉を聞いた桂馬君はとても驚いているようだった。

  そう言えば……あの時は桂馬君が階段を降りて私に語りかけてくれたっけ。

  そんな事を考えたせいか、自然と体が動いていた。

  階段を降りて、桂馬君の隣に立つ。

 

 『君がどんな思いでどんな事をしてきたのか、私はよく知らない。けど、これだけは言える。

  私は、恨んでなんかいない。『世界』の全ての人が桂馬君を非難したとしても、私は『君』に言い続けるよ。

  心の底から、『ありがとう』って』

 

 

「この時の麻美の台詞は僕の攻略時の台詞を意識しているとの事だ」

 

「どんな台詞だっけ?」

 

「確か……」

 

  ~~~~~~

 

「断言しよう。そんな事は絶対に有り得ない。

 何故なら君には妹が居る。

 あいつは仮に『君』と『世界』のどちらかを選べと言われても迷い無く君を取るぞ?

 繰り返すぞ。君は一人じゃない」

 

  ~~~~~~

 

「こんな感じだな」

 

「結構露骨だったんだね。気付かなかったよ」

 

「いや、お前視点だと攻略時の台詞聞いてないだろ」

 

 

 

 

 『桂木ぃぃぃ!! 妾を放置ってどういう事じゃ!!!』

 『あ、そう言えば居たなお前。

  あ~……お前との話し合いはまた今度な。話長くなりそうだし』

 『何じゃと!? お主、妾を何だと思っとるんじゃ!!』

 『女神サマだろ? だが所詮は現実(リアル)の神だ』

 『どういう意味じゃぁ!!』

 『えっと……ごめんね、アポロが騒がしくて』

 『気にするな。少し騒がしいくらいならどっかの女神供よりは数倍マシだし、そもそもお前が謝る事ではない。

  それより、今日の放課後時間あるか? アポロとも話しておきたい』

 『今日は……うん、大丈夫』

 『な、何じゃ。ちゃんと妾の話も聞くのじゃな。安心したぞい』

 

 

「伏線……いや、最早伏せてない線だな」

 

「……線かな?

 コレだね。『女神供より数倍マシ』」

 

「言うまでもなく、この女神供と複数形で表現されているのはディアナとエルシィだ。

 あいつらより数倍マシだな」

 

「ホントだよね……ホント」

 

 

 

 『さて、ここからが本題だ。

  お前、他の女神と会いたいか?』

 『当然じゃ! 妾たち姉妹は6人揃ってこそ力を発揮できるのじゃからな!』

 『そうなのか? それは初耳だな』

 『うむ。特にミネルヴァが居るか居ないかで全然変わってくるぞい。あやつは手を繋ぐだけで妾たちの力を何倍にも高めてくれるからのぅ!』

 『何だそのチート能力は』

 

  アポロがおおげさに言ってるだけかもしれないが、もし本当に『何倍も』強くなるんだったらとんでもない事だ。

  ゲームだったらバランスブレイカー過ぎて縛るのがデフォルトになるんじゃないか?

  いや、それとも何倍も強くするのが前提の難易度なんだろうか? だとしたらクソゲーだな。

 

 

「原作ではマルスがリューネにアッサリ負けてる事から『何倍も強くするのが前提の難易度』である可能性の方が濃厚だな」

 

「翼が復活しててもまだまだ不完全っていうのもあるだろうけど……それでもクソゲーだね」

 

「女神の強さってイマイチ分かり辛いよな。

 まぁ、リューネが規格外だっただけで実はムチャクチャ強いのかもしれんが」

 

「神のみはバトルものじゃないからね。明確な順位なんて必要ないからね」

 

 

 

  ……鮎川宅……

 

 『どなたですか……って、桂馬君!?』

 『邪魔するぞ。とりあえずお前の部屋で良いか』

 『最近聞いたような台詞だね……どうせ西原さんが一緒に……』

 『お、お邪魔します……』

 『西原さんじゃない!? だ、誰!?』

 『僕のクラスメイトだ。とりあえず上がらせてくれ』

 『待ちなさい! どういうつもりですか桂木さん!!』

 『……恥を知る気は全く無いぞ。

  と言うか、コレはお前の頼みだったはずだが?』

 『私の頼み……? どういう事ですか?』

 『とりあえず上がらせてくれ。話はそれからだ』

 『……仕方ありませんね。付いてきてください』

 

 

「まさか短期間に2回も天理の家に行く事になるとはな」

 

「ディアナさんはいつも通りのディアナさんだね。

 桂馬くんを信用するっていう発想は……あるからこうなってるのか」

 

「悪い意味で信用されているのは決して信用ではないと思うんだがな……」

 

 

 

 

  ……その後……

 

 『じゃあ僕も帰るとしようか』

 『あっ、桂木さん! お待ち下さい!』

 『……恥知らずな僕に何か用か?』

 『うぐっ、先ほどは……申し訳ありませんでした』

 『……フン』

 『それで、その……ありがとうございました。姉様を連れてきて下さって』

 『気にするな。お前の為に連れてきたわけじゃない』

 『そうなのですか? ですが……それでも私は感謝しています。

  ありがとうございました』

 『……じゃあ、またな』

 『ええ! また、お願いします』

 

 

「全くもう、桂馬くんにだって『恥』っていう感情くらいあるよ!」

 

「いや、そういう問題じゃないからな?」

 

「もし桂馬くんに恥が無かったら今頃は毎日キスしたり毎日一緒のベッドを使えるのに!!」

 

「……お前はもうちょい恥を知っておけ」

 

 

 

 

「これで終わりのようだな」

 

「アポロさんかぁ……女神の中でも比較的まともな方だね」

 

「メルクリウス、アポロ、マルスの順かな?

 他3名は肉体的な被害が及ぶからなぁ……」

 

「……原作ではミネルヴァさんはあんなに大人しかったのに……」

 

「……さて、次は……お前の師匠の話だな」

 

「あ~、アレかぁ……

 え~、それでは、来週は春日楠編『強さと弱さと』をお送りします!

 また来週~」

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