「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!
第30回キャラコメンタリー始めます!」
「もう30回にもなったのか……
それはさておき、女神編"導入1"だ」
「……ん? 1?」
「女神編0日目の内容になるな。2が1日目だ。
分量が多いんで分けたらしい」
「そんな多かったんだ……
それでは、VTRスタート!」
今この部屋、かのんが普段寝泊まりしている部屋に集まっているのは僕を含めて6人
駆け魂隊の地区長、ハクア。
女神ディアナとその宿主の鮎川天理。
女神アポロと宿主の吉野麻美。
僕の相棒である中川かのん……いや、今は西原まろんと呼ぶべきか。一応変装中だ。
そして……
ベッドに横たえられ、一向に目を覚ます様子の無いエルシィ。
「原作でも似たような場面があった女神編の導入だね」
「原作ではアポロは居なかった……いや、一応居たか。
……麻美以外は登場人物が奇跡的に一致しているな。
眠ってたメルクリウスを除けばだが」
「本来は私があのベッドに横たわってたんだよね。二重の意味で。
……エルシィさん、ありがとう」
「ただの人間がアレを喰らってたら即死らしいからな。
……お前たちが無事でいてくれて本当に良かったよ」
『くっ、やっぱりダメみたい。
この剣は……私には抜けない』
『……私がやってみましょう』
『気をつけてね。この剣、下手に抜こうとすると襲ってくるみたいだから』
そう、この剣は抜こうとすると襲ってくる。
剣が纏っている黒いオーラが手を伝って這い上がってくる。
僕が最初に試した時はかのんとハクアがすぐに引き剥がしてくれたが……無抵抗にオーラを受け続けたらロクな事にならないのは明白だ。
「あ、ここか。実は伏線になってる所だ」
「えっ、どこ?」
「実際にはただのミスだけどな。筆者が投稿の数日くらい前に気付いたんだが、あえて残したらしい。
『僕が最初に試した時は引き剥がしてくれた』って部分をな」
「…………??」
「原作だと僕は触れただけで弾かれてたんだよ。
女神や悪魔、あるいは宿主でないと触れる事すらできないらしいな」
「っっっ!!!」
「ただのミスをそのまま残したってレベルのさり気ない描写だからここで気付けた人は……まぁ、居なかったな」
『今感じた悪意には覚えがあります。
おそらくこれは
『誰がそんな物騒なものを持ち出したってのよ! 学校で習うわけも無いし、それ関連の本は禁書指定されてるはずだし……』
『入手経路なんて今はどうでもいいだろ? よっぽどだったらとっ捕まえたあいつを尋問すればいいしな』
『……それもそうね』
かのんが気絶させた襲撃者の悪魔(フィオーレというらしい)はハクアの勾留ビンで勾留してある。
今はビンごと適当な布に包んだ状態で隣の部屋に放置してある。
「フィなんとかを勾留中だという事がようやく語られたな。まぁ、当たり前だが」
「透き通ったビンだから丁寧に布で包んであるんだね」
「原作ではハクアがフィオーレを逃すとかいう日和った事をやらかしていたが、流石にエルシィを刺した現行犯に手心を加えたりはしないな。
白黒ハッキリしてる分、かなり優位に進められる」
『……良い情報と嫌な情報がある。どっちから聞きたい?』
『う~む……では良い方からじゃ』
『分かった。まず、女神ミネルヴァの居場所が分かった』
『何じゃと!? どこなのじゃ!?』
『……嫌な情報だが、その場所とはこの部屋のベッドの上だ』
『……何を言っておるのじゃ? ベッドの上にはお主の妹の新悪魔しか居らんではないか』
『桂木さん。こんな時に冗談を言っている場合ではないでしょう』
『そうよ! まさかエルシィが女神とか言い出すんじゃないでしょうね?』
『そのまさかだよ。
エルシィこそが、女神ミネルヴァだ』
「ようやくエルシィの正体が明かされたな」
「長かったねぇ……」
「こちらは伏線が結構露骨だったから途中で気付いた人は何人も居たようだな。
筆者としても仕掛けた甲斐があったとの事だ。不満も出なかったようで何よりだ」
『しかし桂木さん。彼女がミネルヴァだとすると矛盾が発生します』
『何だ?』
『彼女からは理力を欠片も感じる事ができません。今現在は勿論、以前会った時もです。
そんな存在を女神と呼ぶのは少々無理があるのでは?』
『それについては僕も少々悩んでいた。直接顔を合わせても何の反応も示さないからな。
だが、その点はアポロが解決してくれたよ』
『なぬ? どういう事じゃ?』
『お前たちにもう一度質問だ。
今のエルシィから魔力を感じ取れるか? 特にアポロ』
『……そう言えば、確かに感じぬのぅ』
『確かに少々違和感は感じますが、衰弱しているせいなのでは?
そのせいで感知できないほどに微弱になっているのでしょう』
『一理ある。じゃ、もひとつ実験だ。
おいまろん。ちょっとこっちに……大丈夫か?』
『……うん。大丈夫。私は大丈夫だよ』
「今更だけど、エルシィさんから魔力を一切感知できてなかった事は2人とも完全にノータッチだったんだね」
「そういう事になるな。まぁ、エルシィだからな」
「……だもんねぇ……」
「そして本章に入ってから初めてお前が描写されているが……大丈夫か?」
「あの時は……決して大丈夫じゃなかったね。
人に庇われるって、あんな気持ちになるんだね。似たようなシーンはドラマとかで無かったわけじゃないけど……本物はやっぱり違うね」
「……しつこいようだが、2人とも無事で良かった」
『女神たちに質問。コイツから魔力、理力の類を感じるか?』
『理力を感じたならもっと早く言ってますよ』
『そうじゃな。何にも感じないぞよ』
『……じゃ、かのん。頼む』
『……大丈夫なの?』
『ああ』
『……分かった』
「何気にここだけ私の事をしっかり名前で呼んでるんだね。
私の状態が状態だったからノータッチだけど」
「この台詞は筆者も投稿直前まで迷っていたようだ。名字呼びでも『錯覚魔法を解け』っていう意図は伝わるしな。
だが……何となく、こちらの方が自然だと感じたらしい。
「……もしかすると、桂馬くんは気付いてくれてたのかもね。私が名前で呼ばれたがってる事に。
無意識にそう感じて、そして気遣ってくれたんだね」
「……さぁな」
『っ!? これはっ!?』
『何じゃこれは……と言うかお主は!!』
『……麻美さんと、あとハクアさん以外は初めましてになるのかな。
初めまして。中川かのんです。桂馬くんの協力者をやらせてもらっています』
『ちょっとちょっと! 何なのこの魔力!! アンタって人間よね!?』
「私が解いた瞬間に劇的な反応を見せてるね」
「当時は負の感情がかなり強かったから魔力を放っているな。
感情の動きが正か負かは簡単に分かるという親切設計になっている。
「今更そんなゲームっぽい機能、私には要らないような気が……」
『ドクロウ謹製の錯覚魔法が女神にすら効くのは検証済みだったが……どうやら魔力と理力すら誤魔化すようだな。
あいつ、どこまで先を読んでるんだ?』
『錯覚魔法……? 確かにあのドクロウ室長ならそのくらいやってもおかしくないけど……』
『ついでに言うなら、エルシィが普段使ってる物に細工をして常時発動させる事もできるんじゃないか?
そうだな……駆け魂センサーは僕や中川が預かる事もあったから違うな。
ほぼ間違いなく羽衣に細工がしてあるだろう』
横たわるエルシィから羽衣を丁寧に剥ぎ取る。
すると……何も起こらなかった。
『……ん? 違ったか? じゃあ何か他に……』
『いえ、ちゃんと変わっているようです。
確かに……理力を感じます』
『ほぅ? ちなみに、魔力は感じるか?』
『いえ、純粋な理力です。悪魔が放つ気配では断じてありません』
『なら仮説は正しかったようだな。
……決して喜べる結果ではないが』
「エルシィさんの錯覚魔法には『外見を誤魔化す機能』はゼロで、『気配の隠蔽』に特化してるみたいだね」
「そうだな。あの羽衣さんならそんくらいは朝飯前だろう。
体内に何か埋め込んでるみたいな設定でも良かったが……まぁ、これの方が分かりやすいな」
『……ついでにもうちょい実験しておくか。
ハクア、お前、人の羽衣って扱えるか?』
『それ、今関係あるの?』
『一応関係ある。僕の予想が正しければ……エルシィが女神である説の補強になる』
『…………流石に深い所にある機能は他人じゃ使えないようになってるけど、表面の機能なら普通に使えるわ。
その羽衣を使えばいいの?』
『ああ。やってみてくれ』
『っ!? 何このムチャクチャな術式!? どうなってるのよ!?』
『だって理力しか持ってないエルシィが使ってた代物だぞ? 悪魔に使えるわけないだろ』
『そういう事は先に言いなさいよ!!』
『99%の確信があったが、実際にやってみた方が手っ取り早いし確実だ。
大した事じゃないが、ずっと気になってたんだ。
『何でエルシィは勾留ビンだけが使えないのか』ってな。
他の道具、センサーや羽衣は普通に使ってるみたいなのに』
『? 今のが関係あるの?』
『大有りだよ。
勾留ビンってのは駆け魂をビン詰めにして地獄の……本部? みたいな所に送るんだろ?
これはつまり、羽衣やセンサーは個人装備であるのに対して勾留ビンは駆け魂隊全体で使いまわしてるって事になる。
違ったとしても、ビンごと上に提出する事に変わりは無いだろう? ちょっとチェックされたらさっきのお前みたいに素っ頓狂な声を上げる事になる』
『アンタがやらせたんでしょうが!!』
『エルシィは勾留ビンだけが使えないんじゃない。魔力が必要な道具全てが使えないんだよ』
『ちょっと!!!』
『……逆に言えば、理力を使う道具なら問題なく使えるわけだな』
「タイトル回収の場面だな」
「ホント長かったねぇ……」
「これを投稿するまでにエルシィがビンを使えない理由を考察してた人は……果たして居たんだろうか?
いやまぁ、伏線として仕込んだ所ならまだしもどうでも良い所まで深く考察されると逆に困るわけだが」
「これに気付けっていうのは流石に無理があるよねぇ……」
「……余談だが、本作の誕生の経緯は原作の没ネタの回収。つまりエルシィがミネルヴァだったらという事にある。
その上で、もしそうならどんな事が起こるかと考えを巡らせていって本作が生まれたらしい。
真っ先に思いついたのが『魔力が使えない』という事。
しかし、実際には原作の女神編が始まる少し前までくらいはエルシィは本当にミネルヴァだったらしいにも関わらず普通に使えていた。
だから、使える理由として『理力仕様に改造している』という案を出したが勾留ビンは無理だった」
「その『無理』をあえて残したまま構築してみたって事だね」
「ああ。勾留ビンが使えないなら何が必要か。捕まえられないなら消滅させてしまえば良い。
しかし、死刑囚を勝手に消滅させて大丈夫なのか? まぁ、大丈夫か。
なら、その手段は? そう言えばスピンオフで何かあったな。
いやでも、アレはあくまで弱らせてるだけで消してはいなかったな。
なら女神様に頼ろう。ミネルヴァ単独では難しくても、かのんと組み合わせればあるいは……
……そんな感じの流れだったようだ」
「なるほど。そういう流れだったんだね」
「……ちなみにだが、筆者はかのんのファンというわけではない。
『都合の良いキャラがそこに居たから起用した』というのが正しいようだ」
「ちょっとっ!? 筆者さん!?」
「駆け魂を撃退するような描写がされたキャラが他にも居れば普通にヒロイン交代が可能だ。
ただ、幸か不幸かそういった描写がされたのはお前くらいだ。
小説版で出てきた阿倉川紫埜なら悪魔の弱体化とか普通にできそうではあるが……まぁ、断定はできないし僕との関係性も遠いからすげ替えるのは少々厳しいか。
前向きに捉えるのであれば、本作のヒロインを勝ち取ったのは紛れもなくお前の実力だというわけだな」
「そうなのかなぁ……う~ん……」
『まず、現状の目標とそれを達成する為の手段を整理しよう。
目標は勿論、エルシィを救う事だ』
『そんなの言われるまでもないわよ』
『……そうだな』
エルシィの命は首輪を通して僕とかのんの命と繋がっている。
……なんて動機を持ち出す必要は無いか。
「こんな事考えてたんだ」
「そうだな。普段は鬱陶しい存在だが、流石に死にかけてるのを目の前にすると自然と助けようという気が出てくるものだな」
「……やっぱり優しいんだね。桂馬くんは」
「優しいとかそういう問題なのかこれ? まぁ、いいか」
『で、桂木。一体何をする気なの?』
『今後の方針としては、僕の攻略対象たちの再調査だ。
女神持ちの女子は記憶操作を受けても記憶が復元される事が麻美とアポロの件で判明している。
攻略の記憶の有無を探れば白黒ハッキリする』
『でも、そう都合良くお前が攻略した女子の中に女神が居るの?』
『居るさ。ほぼ間違い無くな。
何故なら、女神は僕の近くに集められているからだ』
『はぁ? どういう意味よ』
『エルシィが僕の協力者になった時から、いや、これは10年も前から仕組まれている。
お前のとこの室長がわざわざ協力者をもう1人用意してまで僕とエルシィを組ませた理由、まさか気付いてないとか言わないだろうな?」
『えっ? えっと……エルシィが女神だからって事?』
『まあそういう事だ。そして、そんな策謀を巡らせるような奴が女神を野放しにしておくわけがない。
エルシィだけでなく、幼馴染みの天理、同じクラスの麻美、見事に僕の身近な人物に女神が集まっている。
だったら、残り3人も僕が既に出会っている人物に違い無い!』
『ドクロウ室長は一体何者って事になってるのよ……』
「原作では『誰かが仕組んでいるという仮定』で進めていたが、本作ではエルシィのおかげで『ドクロウ室長が仕込んでいるという前提』で進められるな」
「会えるかどうかも分からない攻略対象ならまだしも、エルシィさんを桂馬くんに直接ぶつけてるもんね。
しかも2人目の協力者とかいう特例まで使って」
「あと、アポロが登場済みなのも有難いな。僕の近くに集められているという説の補強になった。
いやまぁ、アポロは原作でも出ていたが」
「……ミネルヴァさんが居てくれて助かったね。うん」
『今日はもう明日に備えて寝る……と言いたいが、まだやる事が残ってる。
ハクア、ボイスチェンジャーみたいなのを作るのって出来るか? 2コほど』
『できるけど……何する気?』
『勿論、襲撃者の尋問だ』
「……これ、大掛かりな準備をした割には結局大した情報は得られなかったんだよね……」
「筆者が途中で疲れて飽きてたからな。
まぁ、相手も所詮はフィオーレだし。そんな大した情報を持ってるわけもないしな。
……作中の僕達の視点ではそんな事は全く分からないからやらないわけにもいかないが」
『じゃ、今度こそ尋問を始めよう。
あ、お前はずっと黙ってていいから。むしろ余計な事はしないでくれ』
『えっ!? じゃあ私は何のために一緒に行くのよ』
『フィオーレが勾留を打ち破るかもしれないだろ? それに、身体検査はしたんで多分大丈夫だとは思うが催眠術とかをかけられても面倒だ。
僕が明らかにおかしい行動をしようとしたら殴ってでも正気に戻してくれ』
『……そんな便利な術が簡単に使えるほど魔法は便利じゃないんだけど?』
『ん? そうか。まぁ、保険みたいなもんだ。頼んだぞ』
『……分かったわ。日頃の恨みも込めて遠慮なくぶん殴るから』
『何の恨みだよ何の』
「実際問題、完全に拘束されてる状態で催眠術みたいな小細工は可能なんだろうか?」
(そういう術は存在はするが、よほど相手が油断していない限りは弾かれるな。
ただ、理力や魔力といった手段に頼らない催眠までは完全に防ぐのは不可能だ)
「そんな正攻法な催眠なんてそもそも不可能なんじゃないの……?」
「理論上は不可能じゃないってレベルだな。警戒しておくに越したことは無いか」
『だ、誰なのあんた達は! 私をここから出しなさい!!』
『立場を弁えろ。質問した事以外に喋る必要は無い』
『何ですって!? 私を誰だと思ってるの!?』
『そんなもん知るか。ヴィンテージの下っ端なんぞいちいち気にも止めん』
『はぁ!? この私が言うに事欠いて下っ端ですって!? 冗談じゃないわ!!』
『はぁ、じゃあまずはその辺から聞かせてもらうか。
フィオーレ・ローデリア・ラビニエリだったな。お前はヴィンテージの中でどういう立場だったんだ?』
『!? あんた、どうして名前を……』
『おっと、適当にカマをかけたら偶然当たってしまったようだな。ハハハハハ』
『名前が偶然当たるわけが無いでしょうが!!』
『何をそんなに怒ってるんだ。もっとカルシウム摂った方がいいぞ』
『あんたのせいでしょうが!!!』
「こういう雰囲気の桂馬くんも珍しいね」
「そこそこの大物感も出しつつひたすら相手をおちょくるように会話してたからな。
攻略中に女子を怒らせる事は勿論あるが……あくまでもアピール等の結果怒るだけで、怒らせる事そのものが目的ではない。
ゲームの台詞を参考にして話してみたが、慣れない作業だったんで結構大変だった記憶があるな」
「なるほどね。お疲れさま」
……尋問後……
『……さて、お前は今後どう動くつもりだ?
お前にも地区長としての仕事があるだろうから無理にエルシィを助けるのを手伝えとは言わないが』
『バカ言わないで。仕事よりもエルシィの方が大事に決まってるでしょう?』
『……おい、お前の地区で今回みたいなデカい駆け魂が出たらどうする気だ? 前みたいに取り逃して大騒ぎするのは勘弁だぞ?』
『ああ、それは大丈夫よ。あと少しで出そうな駆け魂は今は居ないから。あの時みたいな事にはならないわ』
『そういう事なら存分にこき使わせてもらうか』
「仕事よりも大事、か。
エルシィが泣いて喜びそうな台詞だな」
「本人の前では絶対に言わない台詞だろうね」
「筆者としては女神編でハクアをどうするか少々悩んだようだが……
ハクアなら積極的に手を貸そうとするだろうと判断してこういう展開にしたようだ」
「原作では割と渋ってたような気もするけど……」
「刺されたのがエルシィだったからなぁ……」
「……数百年単位で付き合いがある親友と比べたら大抵のものは霞んじゃうんだろうけど……何だかなぁ……」
プルルル ガチャ
『はいもしもし~』
『オォウ、アナタ、マリ・カツラギ=サンデスカ?』
『え? はい、そうですけど……』
『オォォウ、トテモ、ザンネンナ、オシラセガ、アリマース。
オタクノ、ダンナサン、キトクデース』
『な、何ですって!? け、桂馬! ちょっと南米行ってくる!!』
「……あのさ。素朴な疑問があるんだけど……」
「何だ?」
「……お義父さんって、一体何の仕事をしている方なの?」
「ああ、それが僕も良くは知らないんだ。母さんの一言で今南米に居るって事を初めて知ったくらいだ」
「……一体何してるんだろう。ホント」
※
桂馬の父親は名前くらいしか設定が語られてないという。
顔すらもギャルゲーの主人公の如く謎に包まれてますからね……
『……って感じで送り出したから安心しろ』
『い、いつの間に……と言うかヒドい方法ね』
『腹から刃物を生やしたエルシィを見られるわけにはいかんからな。
何だかんだ言ってうちの両親は仲良いから、この方法が一番手っ取り早かった。
……一時期は危ぶまれてたが』
『?』
『……いや、何でもない。
そういう事だからうちの母さんのベッドを使うといい』
『い、いやでも泊まる準備なんてしてないし……』
『着替えはエルシィのを使えば良い。あるいは中川から借りても良いし母さんの服を使っても構わんぞ』
『いや、でも……』
『おい貴様、本気でやる気があるのか? 協力する気が無いなら帰ってくれて構わんぞ?』
『んなっ!? そんな言い方は無いでしょう!!』
『…………はぁ、一体何が気に入らないんだ。お前の台詞は『泊りたくない』が前提にあって理由を後からこじつけてるようにしか聞こえんぞ』
『そ、それは……えっと……
……わ、分かったわよ! 泊ればいいんでしょ泊れば!!』
「この辺、上手くハクアを説き伏せたが……実は最初は叩き出す流れになりかけたらしい。
筆者が例のごとく頭をカラッポにして書いてて、途中で覚醒して軌道修正したらしい」
「う~ん……何か、この時の桂馬くんって少し焦ってない?」
「ん? ……気のせいじゃないか?」
「そうかなぁ……?」
(その理由の答えは次のシーンで分かるはずだ)
「え、そうなの? 楽しみだね!」
「…………」
※
正直に言うと筆者も『ハクアとの会話サッサと終わってくれ!』とか考えながら書いてた気がします。
ハクアさんごめんなさい。理由はすぐに分かりますから。
……私のせいだ。
私がもっとちゃんとしていれば、エルシィさんがこんな目に遭う事は無かったはずだ。
不意打ちを受けなければ、エルシィさんはきっと防げていたはずだ。なんたって、女神ミネルヴァの結界なんだから。
私でも倒せた相手だ。間違いなく防いでいた。
いや、違う。もっと前から間違っていたのかもしれない。
私が歌と結界を使って檜さんの駆け魂を弱体化しようと思わなければ、きっと万全の状態で迎え撃てたはずだ。
もっと別の方法を考えるべきだったんだ。
『……ごめんなさい。ごめんなさい、エルシィさん』
「……桂馬くん」
「……何だ?」
「……自分がヘコんでるシーンってコメントし辛いね!」
「そこかよ!! いやまぁ、今更またヘコまれたりしても面倒なだけなんだが……」
「う~ん……私がここまで落ち込んでるシーンって今まで無かったよね。
何か失敗するシーンっていうのがそんなに無いからかな?」
「そうだな。情報を揃えてから挑めば失敗など有り得んからな」
「……そうは言ってもちひろさんの時とか失敗してたような……
広義の意味での失敗なら麻美さんもだし」
「……ま、まぁ、最終的には何とかなったから大丈夫だ!」
『そうじゃないだろうが、このバカが』
『け、桂馬……くん……?』
『お前はバカか? 謝ってるんじゃない。このバカが』
『そ、そんなバカバカ言わないでよ……』
『だってそうだろ? お前はこのバグ魔に庇われたんだろ?
だったら、お前が言うべき台詞は謝る事じゃないだろうが』
『え? それってどういう……?』
『お前が言うべきは、『ごめんなさい』じゃなくて『ありがとう』だろ?』
『っっ!?』
『『自分を責めるな』とか『悪いのは犯人だ』とか、それっぽい言葉を言う気も無いしそもそも言う資格があるのかも分からん。
だけど、お前まだお礼言ってないだろ。ちゃんと言っとけよ。そういうコトは』
『……そう、だね。そうだったね』
「……そっか。そういう事か」
(理解したな?)
「うん! ありがとう、桂馬くん。本当に、ありがとう」
「……何の事だ?」
「私の為に、私を励ます為に急いでくれてたんだね。
ずっとずっと、気にかけてくれてたんだ」
「……フン、お前が居ないと今後の行動に支障が出るからな。
必要だから励ました。それだけだ」
「も~、素直じゃないなぁ……
でも、それでこそ桂馬くんだね。大好きだよ」
『……ありがとう。エルシィさん。私を助けてくれて。ありがとう。私は……』
ダメだ。ずっとこらえてきた涙が溢れそうになる。
でもダメだ。ここで泣くわけにはいかない。こんな状態のエルシィさんの前では……
『おいおい、またバカと言われたいのか? 泣きたい時には泣けばいいさ』
『で、でも……』
『つまらない罪悪感に遠慮をするな。それは本当に救えなかった時に取っておけ。
今は……何も考えずに泣けばいい』
『桂馬……くん、う、うぅっ……』
やっぱり、この想いはあの時から色褪せる事は無い。この忍耐の先に、答えがあると信じよう。
だけど、今は。今だけは……
『うわぁぁぁあああん!!』
キミの胸の中で、泣かせてほしい。
『ああったく、手のかかる相棒だ』
私が泣いてる間、桂馬くんは困ったような顔をしてたのだろう。
それでも、ずっと頭を撫でてくれていた。小さな子供をあやすように。
「『イリスの歌姫は希う』
筆者としては『
まぁ、真実が分かった後を除けば今回含めて2話しか無いんだが」
「一言言わせてもらうよ。あの時の私に演じる余裕なんて皆無だったよ!」
「モノローグを見ると割と露骨に記憶があるな。
「相手がただの『駆け魂狩りのパートナー』だったら、私は全力で泣けなかったと思う。
桂馬くんだったから、大好きな人だったから、私は全てを曝け出す事ができたんだよ」
「アイドルってのは泣きたい時に泣く事もできない面倒な職業だからな。
また泣きたくなったら、いや、それに限らず何かあったらいつでも言ってくれ。胸くらいならいくらでも貸してやるさ」
「そこまで言ってくれるならついでに唇とかその他諸々も……」
「却下」
「ヒドい!!」
『落ち着いたか?』
『うん、ごめん……じゃなくて、ありがとう。
ここからは、いつも通りの私だよ』
『そうか。じゃあ一つだけ、しつこいようだが質問させてもらうぞ。
『確かにしつこい質問だね。大事な質問だけど』
この答えは、以前と変わらない。
『失われた記憶が戻ってきた』という記憶は無い。だからきっと私に女神は居ないのだろう。
『その答えは前回と同じだよ。私の中にはほぼ間違いなく女神は居ない』
『…………分かった』
『……納得してないの?』
『まぁ、そうだな。お前の中に女神が居るなら僕の考えている仮説の辻褄が合うんだが……』
『仮説?』
『ああ。だが、お前が女神の事で嘘を言うとは思えないからな。特に、エルシィの命が懸かってる今なら』
「そりゃそんな記憶無いだろうな。そもそも失ってないんだから」
「前にも言った……いや、桂馬くんには言ってないけど、この時に『記憶はあるのか』っていう質問をされてたら流石に正直に答えてたよ。
桂馬くんがもう少し疑り深く追求してたらあっさりバレてたね」
「……これも前に言ったけどお前には言ってない事だが……この時の僕は無意識のうちに追求の手を緩めてたんだろうな。
疑っているようで、疑いきれていなかった」
「次に間違えないように頑張ろう?
言いたくないけど気付いてほしい事なんて今後いくらでもあるだろうから。
疑いすぎると疲れちゃうけど……お互いを理解できるように、信じ合えるように、頑張っていこう」
『攻略対象……と、エルシィさんの名前だね。
……この妙な並べ方は……勿論何かの意図があるんだよね?』
『ああ。その通りだ』
『……私たちに、と言うより桂馬くんに近い順、だね?
桂馬くんの居る縦列が私たち、少し離して天理さん。
右の列が同じクラスの皆、次は別クラス同学年』
『その後は別学年、更に遠い関係……と置いておいた。
完全に復調したようだな。何よりだ』
『うん。もう大丈夫だから安心して』
「原作でもあった関係表だな。
余談だが、企画の方で『メルクリウスの宿主は原作の関係表の中に居る』というヒントを出すべきか否かをずっと迷っていたようだ」
「……確かに居るね。しかも一番左に」
「筆者の性格の悪さが伺えるな。
本作における関係票ではエルシィの名前を追加し、かのんを最左列に配置してある。
あと、倉川灯の名が消えていて黒田棗が追加されているな」
「当然の処理だね……」
「後は、チェックマークだな」
「アレだね」
チェックマークが付いているのはちひろさん、長瀬先生、七香さん、棗ちゃん。
この人達の共通点かぁ……
『ま、まさか『な』で始まる人……』
『ちひろはどうした。そしてお前自身を忘れるな』
『じょ、冗談だよ。う~ん、分からない。何だろう?』
『そうか。答えは『つい最近まで駆け魂が居なかったと断定できる人物』だ』
『…………確かに、この4人はセンサーが鳴らなかった事を確認できてるね。
棗ちゃんに至っては入る前に撃退したらしいし』
『そういう事だ。
この件が10年も前から仕組まれているなら、女神は当時から入っているはずだ』
『当時の女神は自力で誰かに取り憑ける程の力が残ってなかった。
もしそれくらいの力が残ってたら当時のディアナさんが見つけてるはず』
『……自力で動けない事、そもそも見つけられなかったという事は、ほぼ間違いなく駆け魂に括り付けられたような状態だったはずだ。
事実、ディアナは駆け魂を持っていた』
『つまり、女神は駆け魂が居た場所に居る』
『そして、駆け魂も10年前から居たはずだ』
『よって、このチェックマークを付けた人には女神は絶対に居ない……とまでは言えないけど、女神候補としての優先度がかなり下げられる。
……そういう事だよね?』
『ああ。その通りだ』
「原作の過去編を見る限りではこのチェックマークを付けた連中は完全に除外できそうだな。
尤も、原作だと黒田棗は出てこないし七香も駆け魂が居ない場面は確認できなかったから適用できるのはちひろと長瀬くらいだが。
……いやまぁ、ちひろを除外できるのは強烈だが」
「原作でも本作でも『推定』はできても『断定』は不可能だったからあんまり意味は無いかもね」
「そうだな。結局は自分で探った生の反応の方が信用できるからな。
あくまでも優先度を下げただけだ」
「それよりもさ、この場面なんか良いよね。お互いの意見がハッキリと通じ合ってる感じがして。
むしろ言葉にする必要すらないんじゃないかってくらい通じ合ってるよ!」
「筆者は輪唱推理とか勝手に呼んでたな。まぁ、悪くないな」
『……あ、結局仮説っていうのは、『桂馬くんと関わりが深い人に女神が居る』って事?』
『そういう事だ。この表を見るまでもなくお前と僕との関係性は極めて近いわけだが……』
『……それでも答えは変わらないよ』
『まあ、今はそれでいいか。
ひとまず、この表で近い連中の調査からだな』
こうして、女神捜索の0日目、長い一日は終わった。
「……長い1日だった」
「確か檜さんの攻略がこの日の午前から行われてたんだよね……」
「ああ。とんでもない過密スケジュールで進んでいた。結果的にノーラと同じく半日で攻略とかやってたらしいな」
「攻略……攻略?」
「……決して攻略ではないか。まぁとにかくスピード解決だったな。
檜編から女神編に繋げる展開を考えついたのは抽選の関係で檜編が飛ばされそうになってからだ。
元々エルシィが刺される展開は結構前から決まっていたらしいな。具体的にはミネルヴァを露骨にした辺りから」
「へ~。そんな前から決まってたんだ」
「筆者は連載開始時からずっと『いかにミネルヴァとメルクリウスの攻略を魅せるか』という事を考えていたようだ。
この2名はとんでもない発想の転換が必要とされるから、解決の為の伏線をバラ撒く事も平行して行っていた。
だから、女神編が始まってしばらくしてから何か強烈なイベントでミネルヴァを攻略しようと画策していたようだが……例の企画ではかすりもしなかったという事もあって露骨路線に切り替えたようだ。
そのおかげで片方に専念できたからちょうど良かったな」
「露骨にしたから刺されるイベントがただの答え合わせになったんだね。
もし隠したまま進めてたらどうなってたんだろうね?」
「さぁなぁ……
あと、刺される展開に決定したのはいいがどうやって刺されるかも結構悩んだようだ。
結界で防げば刺されるのなんて防げるしな。
前にエルシィの結界は『結界師』が元ネタだと話した事があったが……本作のエルシィなら絶界や真界みたいなの使っても全く不自然じゃないしな」
「……だからあの展開になったんだね。そっかぁ……」
※絶界と真界
どちらも結界師が扱う結界術の奥義みたいなもの。
自身を中心とする球体状の結界で、絶界は範囲内の自分以外の全てを消滅させ、真界は外界と隔絶された新たなる世界を構築する術
当然、ヴィンテージの呪いの短剣なんて塵と化す。
「さて、そろそろ締めるとするか」
「では次回、『女神編"導入2"』です。
また来週~」