もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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女神編 導入2

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第31回キャラコメンタリー始めます!」

 

「『女神編"導入2"』だな」

 

「それでは、VTRスタート!」

 

 

 

 『女神探しについてだが、見つけるだけなら簡単だ。

  『女神居ますか?』って訊いて回るだけで済む』

 『……でも今は見つけるだけじゃダメだよね』

 『ああ。まだロクに力を持っていない女神が集まってもエルシィを救えない可能性がある。

  だから、女神の力を復活させる。今すぐに』

 『……ごめん、辛い事をさせちゃうね』

 『お前が謝る必要は全く無い。あのバグ魔にくたばられたら寝覚めが悪くなる……と言うか、首輪のせいで永眠するハメになるからな。

  僕が自分の判断でやる事だ。気にするな』

 『……そっか。桂馬くんがそう言うなら、そういう事にしておくよ』

 

 『って、ちょっと待ちなさいよ!! どういう意味なのよ!!』

 『あれ? ハクアか、居たのかお前』

 『居たわよ!! 何で空気みたいに扱われなきゃならないのよ!!』

 『いいじゃないか。人が生きる上で必要不可欠な代物だぞ』

 『そういう意味じゃないわよ!!!』

 

 

「ハクアさんったら察しが悪いよね。私はすぐに分かったのに」

 

「所詮はハクアだからな。原作では結構活躍してたりやらかしたりしていたハクアだが、本作だとそれほど必須ではない。

 居たら居たで便利だが、居なくても全く問題ないな」

 

「そ、そんな事は……あれ? そう言えばタクシィくらいにしか使ってなかったような……」

 

「ある意味重要な役割だけどな。タクシィ」

 

 

 

 

 『ハクア、質問だ。お前は女神じゃないよな?』

 『えっ、わ、私!? いやいや違うわよ! って言うか、もしそうだったら昨日の時点で言ってるわよ!!』

 『そうか、エルシィが女神だったから可能性が0.0001%くらいあるかと思ったが……』

 『それ、0%と何が違うのよ』

 『たった今0%になったから気にするな。これで候補が15から14になった。

  この調子でどんどん絞り込むぞ』

 『……もう、好きにやりなさい……』

 『言われずともそのつもりだ』

 

 

 

「余談だが、最初に作成した例の関係票ではハクアとノーラの名前も一応書いてあったようだ。

 まぁ、結局削ったが」

 

「関係の近さはどのくらいで書かれてたんだろう……?」

 

「ハクアは紙の上での距離は『同学年ライン』と同じだったな。但し、右側ではなく左側に広げて明確に区別していた。

 ノーラはさらに遠いとして、距離的には『他学年ライン』だったぞ。

 ノーラは流石に無いだろうし、ハクアも質問すれば一発で判明するから無意味だったな」

 

 

  ……七香への電話……

 

 『もしもし~? どしたん?』

 『もしもし、僕だ』

 『ん? まろんやなくて桂木か。どしたの、こんな朝っぱらから』

 『急用ができてな。お前に質問だが、『ユピテルの姉妹』という言葉に心当たりは無いか?』

 『ゆぴ……なんやて?』

 『その様子だと知らなそうだな。邪魔したな。切るぞ』

 『え、ちょっ!?』

 

 

「一瞬で調査完了したね……」

 

「当時は読者にこんな指摘を受けたな。

 意訳すると『こんな雑な調査で大丈夫か?』と」

 

「う~ん……もし七香さんに女神が居たらどういう反応になってたんだろう?」

 

「そうだな……まず考えられるのは全く変わらない対応だ。

 宿主だとして、『ユピテルの姉妹』という単語を知っているかどうかは未知数だ。

 ただ、中に居る女神は間違いなく聞いているだろうから後で何らかの反応が得られるだろう。

 原作だとアポロの遺言のせいで女神たちは警戒していたが……本作ではそんな事も無いしな」

 

「あの、アポロさんは死んでないけど……ついでに私も」

 

「言葉の綾だ。

 仮に七香が『ユピテルの姉妹』という単語を知っていたら……まぁ、何かしらの反応が得られたな」

 

「そう言えば、どうしてその単語を選んだの?」

 

「女神に関わる単語、と言うか固有名詞だからな。

 天界や冥界みたいな用語だと概念だけなら誰でも知ってるだろうから使えない。悪魔や女神も同様だ。

 ミネルヴァやメルクリウスという名前を出しても普通に神話に登場するから知っている奴は一般人でも知っている。

 旧悪魔ことヴァイスは……字面を見ないと意味が伝わりにくい。それに、女神に接触する時の単語としては無駄に警戒心を抱かせるかもしれん。

 『ユピテルの姉妹』であれば実際の神話にもそんなものは存在しないからちょうど良かったというわけだ」

 

「へ~。色々と考えてたんだね」

 

 

 

 『やあみなみちゃん。久しぶり!』

 『……え? あ、あの……ど、どなたですか?』

 『いやだなぁ。ボクだよボク!』

 『な、何なんですか? 誰ですか!?』

 『……ごめーん。人違いだったみたいだー』

 『へ? ああ、はい……』

 『……キミ、まだ水泳やってるのかい?』

 『え? は、はい……』

 『……そうか。頑張ってね』

 

  攻略の痕跡は残っている。女神なんて関係無く、な。

  『記憶を失う』という事自体が良い事なのか悪い事なのか、僕には分からない。

  ただ、この地獄と天界を巡る戦いに巻き込まれなかったという意味では、間違いなく幸運なんだろう。

  ……じゃ、探そうか。巻き込まれた不幸な奴を。

 

 

 

「巻き込まれた人達、みんな『不幸だった』とは言わないだろうね」

 

「まぁ、そうだな。結は言いそうだが」

 

「……確かにそうだね。巻き込んだの私だけど」

 

「そもそもエルシィがバンドに誘ってなければ巻き込まれてはいなかったはずだが……

 いや、その点は決して不幸だったとは言わないか」

 

「やっぱり私か。う~ん……」

 

「あの時は仕方なかっただろう。気にするな」

 

 

 

 

 『師匠!』

 『ん? 中川か。今日は来れないとお前のマネージャーから連絡があったが……』

 『えっと……まぁ、色々とありまして』

 『ふむ……来てくれたのなら丁度いい。

  お前、昨日の夕方頃に何があったか覚えているか?』

 『え? 夕方ですか? えっと……

  ど、どうしたんですか? 昨日の夕方何かあったんですか?』

 『実に妙な話なのだが、どうにもその頃の記憶が曖昧でな。

  道場で修行していた……と思うのだが、何だかかなり強大な相手と戦っていたような気がするんだ。

  お前もあの時どこからか湧いて出てきていたよな?』

 『そ、そうですね。ちょっと用事があって師匠の道場に行っていました。

 『やはりそうだったか。で、何か心当たりはあるか?』

 『う~ん…………ごめんなさい。私にもよく分かりません』

 『そうか……分かった。妙な事を訊いて悪かったな』

 『いえいえ。興味深いお話でした。

  何か思い出したら教えてくださいね』

 『そんな面白い話でも無いと思うが……分かった。思い出せたらこの話の続きをするとしよう」

 『それじゃ、失礼します!』

 『ああ。

  ……ん? 中川は結局何をしに来たんだ?

  ……まあいいか』

 

 

 

「師匠も調査完了。これで他学年ラインはオールクリアだね」

 

「オールと言っても2人しか居ないけどな。

 春日楠は原作では檜攻略の過程でチェックが終了していたな。

 本作では楠の攻略の内容が内容だったから記憶操作なんてほぼされていない。

 檜の攻略が無かったら検証がかなり困難になっていただろうな」

 

「『ユピテルの姉妹』って言葉をぶつけてみるしかなくなるね。最終手段だけど」

 

「ああ。万が一があるからできれば使いたくはなかったな。

 まぁ、上手く行ってよかった」

 

 

 

 『はい、オムそばパン。3人分で大丈夫だったよね? 私の分と別で』

 『ああ。パシリみたいな事をさせてすまんな』

 『これくらいならいくらでもやるよ。エリーさんが大変なんでしょう?』

 

 『これがあなたがお勧めした『オムそばパン』ってやつ?

  何よ、ただパンに具が挟んであるだけじゃない』

 『ハクアさん。甘く見ちゃいけないよ。

  確かに見た目はそんなに派手じゃない。むしろ地味。だけど……一口食べるだけでその印象の全てが変わる事を保証するよ』

 『えっ、そこまでかなこのパン……』

 『そこまで言うなら食べてみようかしらね。

  はむっ……な、何コレ美味しい!! 人間界にこんなに美味しい食べ物があったなんて……侮っていたわ』

 『私も、この学校の隅っこでこんなものが売られているだなんて思ってもいなかったよ。

  その時感じたよ。世界って広いんだなって』

 

 『……何だろう、このノリ』

 『……さぁな』

 

 

 

「お、おかしい。一瞬とはいえ麻美さんが桂馬くんの相棒っぽいポジションに着いてる」

 

「オムそばパンが絡むと人が変わるからな……

 しっかし、ハクアまで毒牙にかかったか」

 

「オムそばパンを侮っちゃいけないよ! あのパンには宇宙の真理が内包されているからね!!」

 

「……そこまでかなあのパン」

 

 

 

 『さて、みなみはシロだった。お前の所の師匠も……』

 『うん、シロだったよ。これで、そのラインよりも遠い人は全部除外できるかな?』

 『そうだな。まず居ないだろう。

  これで候補は、歩美・栞・月夜・美生の4人……いや、月夜も除外できそうだな』

 『……そうだね』

 

 

 

「何だかんだ言ってちょくちょく顔を合わせてるもんね」

 

「会話した事は皆無だが、一応『屋上仲間』として顔を覚えられてるくらいの仲ではあるだろうな」

 

「……今度お昼に誘ってみようか」

 

「好きにすれば良い。オムそばパンに感染する奴がまた増えそうだな……」

 

 

 

 

 『ところで、一つ気になったのじゃが……』

 『何だ? 何か気付いた事でもあるのか?』

 『いや、女神とは関係ない事なのじゃが……』

 『僕達に無駄な話をする時間は無い!

  ……って言うのは流石に言い過ぎか。言ってみてくれ』

 『うむ。昨日はそれどころでは無かったので訊けなかったのじゃが、そこのエリーの姿をしたお主は桂木の恋人なのかや?』

 『……へっ? ど、どうして?』

 『だってお主、桂木と同棲しておるのじゃろう? 兄妹でも無ければ従兄妹でもないのに』

 『そうだけど……でも、恋人って事は無いよ』

 『またまた~。同じ年頃の男女が一緒に住んでおったらあんな事やこんなこフムギュッ』

 『ご、ごめんね。こんな時にアポロが変な事を言って』

 

 

 

「アポロさん、なかなか鋭いね! あんな事やこんな事をしたいとは思ってるよ!!」

 

「具体的な事は訊かんでおこう。本作は無駄に警告タグを付ける気は無い」

 

「まぁ、半分くらいの冗談は置いておいて……アポロさんから見て私たちは恋人である事を疑えるくらいには思われてたんだね。

 狙い通り……よりやや近いかな」

 

「アポロが気にしてたのは態度がどうこうではなく単純に同居してたからという事も大きいが……そもそも狙っていた距離感なんてあったんだな」

 

「うん。距離感が近すぎても遠すぎても桂馬くんに疑われそうだからね。

 かなり仲の良い同僚くらいの距離感をイメージしてたかな」

 

 

 

 

 『で、何だ?』

 『うむ。麻美と恋人同士になって欲しいのじゃ』

 『……誰が?』

 『お主が』

 『……誰と?』

 『麻美とじゃ』

 

  そして、鏡をそっと伏せた。

 

 『ふ~、オムそばパン普通に美味いな~』

 『そうだね~普通に美味しいね~』

 『その反応は無いじゃろう!!』

 『そうだよ桂馬くん! 『普通に美味しい』じゃなくて『凄く美味しい』だよ!!』

 『そこではないからな!?』

 『まぁ、言いたい事は分かるさ。

  恋愛の力でアポロが復活できればエルシィを何とかできるかもしれないって事だろ?』

 『何じゃ。分かっておるではないか』

 

 

 

「理に適っているな。言い出したのがアポロでなければスッと受け入れていたかもしれん」

 

「アポロさんが言うと単純に麻美さんをからかいたいだけなんじゃないかという疑惑が出てくるからね……」

 

「一応、至って真面目だったようだ。日頃の行いのせいだな」

 

 

 

 

 『ちょっとした提案があってな。麻美は今は寝てるのか?』

 『うむ。今の会話は麻美には伝わっておらん』

 『なら好都合。アポロ。麻美の代わりにお前を攻略する』

 『…………なぬ? どういう意味じゃ?』

 『そのままの意味だ』

 『い、いやいや、ちょっと待つのじゃ。妾は女神ぞよ?』

 『? 何を当たり前の事を』

 『そ、そうじゃ。当たり前じゃ。そしてお主は人間じゃぞ?』

 『? 何を言ってるんだ。僕は神だぞ?』

 『うむうむ……って、違うのじゃ! お主は人間じゃろう!?』

 『あ~……そういう事にしておいてやろう。で、それがどうかしたか?』

 『『それがどうかしたか?』ではない! 女神が人間に恋するわけが無かろう!!』

 『ハッ、これだからお前は所詮現実(リアル)の神なんだ。

  女神が……いや、男神だろうが女神だろうが神が人間に恋するなんていくらでもあるだろう。

  ゲームで』

 『げぇむの話ではないか!!!』

 

 

 

「『麻美の代わりにアポロを攻略する』という展開は体育祭の辺りから考えていたらしい。

 理由は……僕にあしらわれるアポロが何か可愛かったからとかホザいていたな」

 

「そんな理由だったの!?」

 

「原作者の若木先生だって似たような理由で女神の内訳変えてるし、別に良いだろ。

 後はまぁ、単純にそっちの方が楽そうだったらしい」

 

「……でもさ、ちょっと今更だけど……

 原作だとディアナさんが恋愛っぽいことしてたのに逆に覚醒が遅かったよね。

 本当に女神様自身の愛でどうにかなるのかな?」

 

「そこはアレだ。本作の独自設定という事で通させてもらおう。

 二次創作だからといって原作に忠実である必要は無い。不要な設定は捨ててしまえ! とは筆者の弁だな」

 

 

 

 

 

 

  ……放課後 生物部……

 

 『僕だ。入っても大丈夫か?』

 『……ああ、桂木か。入れ』

 

  許可が下りたので部室の中へと入り、素早くドアを締めた。

 

 『む、中川じゃったな。お主も居ったのか』

 『はい。入っても宜しかったでしょうか?』

 『構わぬ。適当に座ってくれ』

 

 

 

「どうやら名前はキチンと覚えられたようだな」

 

「う~ん、でも、エルシィさんの顔を見て私の名前を出してたよね。

 その名前はちゃんと顔と一致してるのかな……?」

 

「……まぁ、お前の素顔を見せたのは1回だけだからな……

 なに、気にすることは無い。どうせそうそう会わないし」

 

「確かにそうだけどさ……」

 

 

 

 

 『それで、何の用か……という事は訊くまでも無さそうじゃな。エルシィの件じゃろう?』

 『ああ。今の状況は把握しているのか?』

 『旧地獄の暗殺術を受けた事も、一命を取り留めておる事も把握しておる』

 『念のため訊いておくが……お前にも解呪は不可能なのか?』

 『無理じゃ。少し見てきたが、アレを真っ当な方法で解く事は悪魔には不可能じゃな』

 『見てきたって、いつの間に……』

 『お主らが登校した直後じゃ。勝手に上がらせてもらったぞ』

 『そんな妙な事せずとも僕達が居る時間に普通に来てくれりゃあ良かったのに』

 『いつ、どこで情報が漏れるか分からぬ。私の存在を知る者は少ないに越した事は無い』

 『……そういう事なら、了解した』

 

 

 

 

「当然の如く把握しているな。ついでに家まで来てたらしい」

 

「原作だと私が刺される現場に居合わせてたね。本作だと直接は見てないから一応見に来たって感じかな?」

 

「そのようだな。

 ちなみに、この様子見に来た時にフィオーレの女神センサーも回収していたようだ。僕達が持っていてもしょうがないものだからな。助かったよ」

 

 

 

 『ところで、さっき『真っ当な方法で解く事は不可能』って言ってたな。

  真っ当じゃない方法ならいけるのか?』

 『結論から言うと可能じゃ。但し、解呪者の寿命や命を代償にする必要がある。

  そもそも、あの呪いは使用者の寿命を数百年単位で捧げておるからのう』

 『そんな物騒な代償があったのか。あの呪い』

 『悪魔で言う数百年じゃから……人間の感覚換算だと数十年といった所かのぅ』

 

 

 

「フィなんとかさんの扱いが更に酷くなった瞬間だな」

 

「原作だと『洗脳されてた下っ端』だったけど、本作だと完全に捨て駒だね……」

 

「悪魔の寿命は未知数だからすぐにくたばる事は無いだろうし、寿命の感覚も人間とは大違いだろうな。

 本作では一応10倍くらいの寿命だと想定して書いていたようだが……実際の所は不明だ」

 

 

 

 『新悪魔による解呪は最終手段か。

  まあいい。次の質問だ。お前はエルシィが女神だという事は知っていたのか』

 『当然じゃ。そうでなかったら私が名前を覚えているわけが無かろう』

 『それ、エルシィが聞いたら泣くぞ……

  それじゃ、他の女神の居所は知っているか?』

 『残念ながら私が知っているのはエルシィだけじゃ。ドクロウは知っておるようじゃが……教えてはくれぬじゃろう』

 『何故だ? 僕達に教える事にデメリットは無さそうだが……』

 『そこまでは分からぬ。じゃが、きっと何か意図があるのじゃろう』

 『……いいだろう。教えてもらえないのなら自力で突き止めるだけだ』

 

 

 

「この辺、と言うか後々の僕の行動はややご都合主義が入っているな。

 女神の居場所、特にメルクリウスの居場所を教えられなかった理由は今だからこそ把握できているが、悩んだ時点で訊きに行かないのは少々不自然だ。

 後で生物部の部室に言ったら誰も居なかったみたいな描写を入れておくべきだったかもな」

 

「う~ん、頑張って理由付けするなら一回断られたから諦めたか、あるいは危険だから近付かなかったとかかな?

 そもそも、『ドクロウさんと連絡が取れなかった』とかは?」

 

「いや、それは真っ先に考えたらしい。

 だけどな、居るだろ? ドクロウ。すぐそこに」

 

「……そう言えば居たね。じゃあダメか」

 

「まぁそういうわけで……この辺は生温かい目でスルーしてもらえると助かる」

 

 

 

 

 『そう言えば、こうやって図書館に2人きりで行くのも久しぶりだね』

 『2人きりでと言うか、そもそも図書館に行く事が数ヶ月ぶりだな。

  ……そう言えば、攻略の時に栞に没収された本、まだ返してもらってなかったな』

 『そんな事があったの? 栞さん、覚えてるといいけど。色んな意味で』

 『栞の性格を考えたら、すぐに判明するだろう』

 

 

「勉強の場所として結構良い場所だけど、私たちの場合は近所のカラオケボックスを使うから全然使わなかったね」

 

「そうだな。エルシィならまだしも僕もお前もそこまで読書をするタイプではないから、普通の用途にも使わなかったしな」

 

「もし何かの理由で入り浸ってたら月夜さんと同様に栞さんも調査前に否定されてたかもね」

 

 

 

 『あ、キミ。ちょっといいかい?』

 『は、はいっ!? ……な、何でしょうか……?』

 『……『ユピテルの姉妹』という言葉を知っているか?』

 『ユピテル? ……ローマ神話のユピテールの事ですか?

  ………………ユピテールの妻のユノが産んだのはウルカヌスとユウェンタス。あと一応マルスも含まれるでしょうか?

  ウルカヌスもマルスも男神なので姉妹と言うよりは兄弟なのでは……』

 『……よくそんなスラスラと出て来るな』

 『えっ、あっ、ご、ごめんなさいっ!』

 『いや、責めてるわけじゃない。分かった。ありがとう』

 『は、はい……では、失礼します……』

 

 

 

「栞の奴ムチャクチャ喋ってるな」

 

「攻略の成果だね。栞さん、相変わらず博識だなぁ……」

 

「このように、一般人の知識では『ユピテルの姉妹』という単語はまず出てこない。

 やはり確認用の単語としては最適だったな」

 

 

 

 『記憶……無さそうだね』

 『女神候補の数に対して女神の数が飽和したな。

  ……なぁ中川。お前本当に大丈夫だよな?』

 『疑いたくなる気持ちは凄く良く理解できるけど、それでも答えは変わらないよ』

 『……スマン。仮に居て何らかの事情で隠してるとしてもこのくらいでは明かさないよな』

 『本当に居ないんだけどなぁ……』

 『まあいい。飽和しているという事は逆に言えば残りの女神候補にはほぼ間違いなく女神が居るって事だ。

  歩美と美生、あとアポロの攻略を進めていくとしよう』

 『……そうだね。次は美生さんの所?』

 『そうなるな』

 

 

 

「この期に及んでも吐かなかったんだよな」

 

「だって、記憶が戻ったって記憶なかったもん!

 居る可能性は確かにあったけど、確定じゃなかったもん!

 それに本当に居なかったもん!!」

 

「別に責めてるわけじゃないさ。

 ただ……よく黙り通せたなと思っただけだ。

 相当迷っただろう。よく頑張ってくれた」

 

「……うん。

 私、貫き通せて良かったよ」

 

 

 

 

 『……やぁ、青山。久しぶりだな!』

 『え? あ、あんたっ!! えっと……そうだ、桂木、桂木じゃないの! 久しぶりね!』

 

  はい、真っ黒だね。これでもし居なかったらどうしようと思ってたよ。既に飽和してるのに。

  美生さんは恋愛を使って攻略したわけじゃないから妙な探り合いなんてすっ飛ばして普通に話せる。

  恋愛を使っていないせいで女神が居たとしても復活してないんじゃないかっていう懸念もあったけど……どうやら大丈夫だったみたいだ。家族愛の力か、あるいは結さんとの友情の力だろうか?

 

 

 

「恋愛による攻略ではなかったから、こうやってサクッと聞き出せたな。

 連載当初の予定では宿主に恋愛攻略は必須だったんだが……まぁ、仕方ないな」

 

「美生さんまで居なかったらどうしようもなくなるからね……」

 

「栞に突っ込もうかという案もあったらしいが……結局止めたようだ。

 理由としては『宿主を変えた方が面白そうだから』だそうだ」

 

「そう言えば、原作と被ってる宿主って天理さんと歩美さんだけなんだよね。

 その2人は……流石に変えられなかったけど、それ以外はちゃんと変えてるんだね」

 

「そういうコトだな」

 

 

 

 

 『お前の親父さんに線香を上げさせてもらった時以来だな。元気にしてたか』

 『当然よ。この私を誰だと思ってるの』

 『う~ん、誇れる父親を持った可愛い女の子って所だね』

 『か、かわっ!? な、何真顔で言ってんのよ!!』

 『だって事実だし』

 『っ~~~~! そ、それより、一体何しに来たのよ!

  用が無いならサッサと帰りなさい! 仕事中だから!』

 『実を言うと、たまたま近くを通ったから寄ってみただけで特に用事は無かった』

 『? 何か気になる言い方ね』

 『ああ。たった今できたよ。

  青山美生、僕は君に恋してしまったようだ』

 

  桂馬くん曰く、攻撃的なツンキャラは意外と打たれ弱い。

  だから、出会い頭に告白をかますのがセオリーだそうだ。

  もう既に会ってる相手に出会いも何もないけど……多少変則的な攻略になったとしても落とし神様ならきっと乗り越えてくれるだろう。

 

 『……は、はい?』

 『……そういう事だから。じゃあな』

 『……えっ、あ、ちょ、ちょっと、待ちなさい! 桂木ぃぃぃ!!!』

 

 

 

「相手は読み切り版や連載3話目に出てくるようなツンデレキャラだ。導入テンプレートは問題なく使える」

 

「……わ、私もツンデレになったら桂馬くんから告白してもらえるかな!!」

 

「いや、お前とは出会いはもう完全に済んでるしな……」

 

 

 

 

 

  ……その夜……

 

 『あれ? 桂木は何やってるの?」

 『部屋で明日の計画を立ててるみたいだよ。

  何か、『一斉下校イベント』だってさ」

 『一斉下校? つまり、一緒に帰るって事?

  そんな事して何の意味があるのよ』

 『フン、これだから素人は』

 『ひゃっ!?

  な、なな何よ突然!』

 『下校イベントの重要性を知らぬとはな。愚かだな』

 『え、重要性も何も、ただ一緒に帰るだけよね?』

 『フッ、その程度の事しか言えんのか。

  ……中川、説明してやってくれ』

 『…………一緒に下校するっていうのはある種のプチデートだよね。2人っきりの一緒の時間を共有するんだから。

  それに、下校自体は大抵の人は誰もがいつもやってる事だから、その時に一緒に付いていくだけなら行動を起こす時のハードルもかなり低い。

  普通のデートとかと比べると恋に落とす効果はやや劣るかもしれないけど、費用対効果っていう意味ではかなり優秀なイベントなんじゃないかな』

 『……まぁ、そんな所だ』

 

  桂馬くんがやや不満そうに見えるのは決して気のせいではないだろう。

  私に女神はホントに居ないんだけどなぁ……居たら嬉しいけどさ。

 

 

 

「……当時は絶対言えなかったから今言うけどさ、このやりとりって完全に罠張ってたよね!?」

 

「気付かれていたか」

 

「やっぱりぃ!!

 ホント良かった。自分の考えで推理できてホント良かった」

 

「『下校イベント』に関する説明はお前の攻略中にやっていたからな。

 その時に説明したのと同じ答えが返ってきてたらクロだと断定していた所だった」

 

「ついでに言うと、罠だと指摘しちゃうとそれも自白になるね。

 記憶が無い人だと絶対に気付けない罠だから」

 

「モノローグでは一応文句言ってるんだな。これだからクソゲーは」

 

 

 

 

「これで女神編1日目は終了のようだ。

 次回は一斉下校イベントになるな」

 

「次回、『女神編"進展"』です!

 では、また来週~」

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