もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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創造の女神編 『創造』の女神は猛りと共に顕現す

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第33回キャラコメンタリー始めます!」

 

「創造の女神編だ。

 女神の中でも一番物騒とも言われているウルカヌスの登場だな」

 

「あ~……確かに。

 それでは、VTRスタート!」

 

 

 

 

   ……女神攻略3日目 早朝……

 

 『……麻美よ、お主、あの男の事を考えてなかったか?』

 『え? うん、まぁ……』

 『あやつは一体いつになったら諦めるのかのぅ。

  妾が人間如きに恋するなど有り得んのに』

 『でも、昨日は楽しそうにしてたよね。郁美からの追求でも結構ドキドキしてたよね?』

 『気のせいじゃ! と言うか、何であの時は助けてくれなかったのじゃ!!』

 『う~ん……楽しかったから?』

 『どういう意味じゃ……』

 

 

 

「麻美さんも良い性格してるね」

 

「妹の恋路を見守る姉になってるな。

 イベントに一番近い所から蚊帳の外で見守るとかいうある意味一番美味しいポジションに着いてるな」

 

 

 

 『ま、まあ、きっとあやつもこれで懲りたじゃろう!

  万が一また来るにしても放課後じゃろう。女神としてどっしり構えておくとしようかのう!』

 『……アポロ、そういうのって、『フラグ』って言うらしいよ』

 『む? 旗? どういう意味じゃ?』

 『何て言えば良いのか、えっと……』

 

 『やぁ、奇遇だね』

 

 

 

「わ~、偶然だな~。流石は神様。運命まで味方してるんだね!」

 

「いや~、ホント運が良かったな~」

 

(……茶番だな)

 

 

 

 

 『む? 麻美? どうしてこんな時に入れ替わるのじゃ?』

 『……せっかくだから楽しんだら? デート』

 『でぇとでは無いわい!! うぅぅ……妾の味方は居らんのか!!』

 『いやいや、どう考えても麻美も僕も味方じゃないか。

  つまり、味方しか居ないじゃないか!!』

 『お主とは今一度『味方』という言葉の意味をじっくりと話し合っておく必要がありそうじゃのう……』

 『臨むところだ。歩きながらでいいか? 学校に遅刻する』

 『良かろう! 徹底的に叩きのめしてやるのじゃ!!』

 

 

「めちゃくちゃ自然な動作で登校デートを勝ち取ったね……」

 

「基本的には登校イベントよりも下校イベントの方が優れているが、時間が限られているからこそ相手に思考の時間を与えないというメリットもあるわけだな。

 尤も、お前の時は攻略に協力的だったから全く関係ないメリットだが」

 

「好感度がそこまで高くないか、あるいはツンデレな攻略対象相手だと有効に働きそうだね」

 

「そゆことだ」

 

 

 

 『……つまりだ。何でもかんでも助けるのが『味方』ではない。

  困難にさしかかった時にはあえて突き放してやる事がその人の為になる事もある。

  その助けるか突き放すかの最適な比率を見極めるのは極めて難しいし、そもそも人間は勿論神にすら判断が付くかも分からんが……思考停止で助ける事が絶対的な善だと思っているような奴は論外だな』

 『なるほどのぅ。そういう考え方もあるのじゃな。

  一方的に施しを与えるのでは人は成長せぬのじゃな』

 『各地の神話にも通じるものはあるな。どれだけ正確かは知らんが』

 『うぅむ、為になる話じゃった』

 

 

 

「何か凄く真面目な話してる!」

 

「下校イベントでも同様だが、内容よりも会話をしたという事実の方が重要だ。

 当然だが、可能なら内容にもこだわった方が良い。ただ、その内容は恋愛っぽい話にこだわる必要も無い。

 相手の関心を引く内容であればオーケーだな。今回は神話にも通じる話に繋げられたから効果は絶大だったようだ」

 

 

 

 『アポロ。デートは楽しかった?』

 『なぬっ!? で、でぇとではないわい! ただ話し合ってただけじゃ!!』

 『いや、どう見てもデートだったよ。ねぇ桂馬君』

 『僕はそのつもりだったが……そうか、アポロはこの程度では満足しないか。

  では次はもっと凄い事を……』

 『す、凄い事? 一体何じゃ……?』

 『聞きたいか? 本当に聞きたいのか? 後悔しないか?』

 『わ、分かった。でぇとじゃったという事にしておこう!

  じゃから妙な考えは止しておくのじゃ!』

 

 

 

「……ねぇ桂馬くん。もっと凄い事って何かな? かな?」

 

「まずはその魔力放出を抑えろ。

 深くは考えてなかったが……もうちょい恋愛関係の話になるくらいだろうな」

 

「……な~んだ。それくらいなら大丈夫だね」

 

「一体何を想像してたんだお前は」

 

 

 

 『それで? 次はどうする気?』

 『……アポロの攻略はまだ時間がかかりそうだ。歩美の攻略も一旦落ち着かせた状態だ。

  となると、やはり美生を重点的にやるか』

 『……で、具体的に何をするの?』

 『そうだな……

  ……前にちひろやディアナ相手に見たような展開だが、それだけ安定した手法だと解釈しておくか。

  中川、昼休みちょっと手伝ってくれ。ハクアも仕事ができたぞ』

 『ちひろさんとディアナさん……? あ、なるほど。りょーかい』

 『アンタ達は一体何をやらかす気なのよ……』

 

 

 

「お従兄ちゃんとの仲の良さをこれでもかと見せつけちゃうよ!

 ……って言いたい所だけど、恋人っぽく演じ過ぎると誤解を解くのが難しくなっちゃうんだよね」

 

「嫉妬させつつ言い訳ができる距離感が要求されるな」

 

 

  ……昼休み……

 

 『切り替え完了だよ。お従兄(にい)ちゃん』

 『その呼び方止めろ。色んな意味で』

 『あははっ。勿論分かってるよ。桂馬くん』

 

 

「小説なら漢字で表現されるからイトコだって分かるけど、声だけだと実の兄と区別が付かないもんね。

 嫉妬させる為の演技中の呼び方としては不適切だね」

 

「ああ。そうだな」

 

「それは分かったんだけど……他に意味があるの?」

 

「いや、何というかお前にそう呼ばれると何かゾワゾワする。それだけだ」

 

「……お従兄ちゃんと連呼すれば桂馬くんの思考を乱せる……?」

 

「止めい!」

 

 

 

 

  扉を開け、そこにはまだ誰も居ない事を確認しようとして……

  ……何か先客が居た。

  望遠鏡の前のベンチに腰掛け、優雅に紅茶を飲んでいる人形みたいな少女、九条月夜が。

  たまに居るのは知っていたが、何もこんな時に居なくてもいいじゃないか。

 

 『……どうするの?』

 『……居た所で問題はあるまい。そのまま進める!』

 『大丈夫かなぁ……月夜さんなら大丈夫かな……?』

 

 

 

「思いっきりご都合主義で強引に登場させられた九条月夜だ」

 

「ま、まあ居ても決して不自然ではないし、本人にとっても出番が無いよりはずっと良いんじゃない?」

 

「……ご都合主義だな」

 

 

 

 『まろん! 今日も良い天気だな! 屋上で飯にしよう!』

 『ちょっと待って桂馬くん。一体どういう距離感を想定してるの!?』

 『ん? 何かマズかったか?』

 『マズいと言うか何というか……こういう事を言うのもどうかと思うけど、下手にいじらずにいつもの私たちの距離感で会話してるだけで十分嫉妬してくれると思うよ?』

 『? 何をバカな事を言っている。いつも通りのただの会話で食いつくわけが無いだろう』

 『いや、でも……えぇぇ……? いつも以上に近い距離感で会話って、うぅん…………』

 

 

 

「そう言えばさ、桂馬くんって当時はホント私の事を意識してなかったんだね。

 攻略の記憶に関わらずここまで一緒に苦難を乗り越えてきた仲なんだから少しくらい恋愛フラグが立っててくれても良いと思うんだけど」

 

「う~む……無意識の内にそういうのは避けてたからな。

 ここで少々妙なテンションになっているのも『普段は決して恋人ではない』という意識があって、それを基準に距離感を設定したせいだな」

 

「私はずっと意識してたんだけどなぁ……どう責任取ってくれるのかな?」

 

「責任取んなきゃならん事なのかこれ?」

 

「……まぁ、今はちゃんと意識してくれてるならいいや。

 大好きだよ。桂馬くん」

 

 

 

 

 『そこの2人、騒がしいのですね。

  月の観測の邪魔だからデートなら他所でやって!』

 『あ、ごめんなさい。静かにします……』

 『……悪かった』

 『……分かれば良いのですね』

 

 

 

「月夜から見れば普段は妹を連れている僕が突然別の女子を連れてきて仲良くやっていたわけだからデートだと捉えても不自然ではないな。

 ……と、筆者は主張している」

 

「若干だけどご都合主義が入ってるよね、このやりとり」

 

「そう言えば、当時は後書きで『月夜が『デート』という表現を使うのだろうか?』と悩んでいたな。

 ある読者からは『逢引じゃない?』と提案を受けたが、月夜ならむしろ逢引をデートに直すだろうと判断して却下させてもらったようだ」

 

 

 

 『今、月夜さんちょっと嫉妬してたよね?』

 『そうか? ……そうかもな。

  僕自身の事は忘れているようだが、恋愛に対する憧れみたいな感情が残っててもおかしくはないか』

 『でもこれで証明されたね。いつも通りの会話でも十分に嫉妬してくれるって』

 『そうかぁ……? まぁ、そこまで言うならいつも通りでいいか。

  いつも通りかつ静かに話すとしよう』

 『そうだね』

 『じゃあまろん。屋上で飯にしよう』

 『あ、呼び方はそっちのままなんだね』

 『そもそもデフォルトが名前の方じゃないか? 親戚なら同じ名字の知り合いが複数居そうだし』

 『そうだったっけ? まあいいか』

 

 

「……で、実際どうだっけ?」

 

「コメンタリーやってて気付いたが……そもそも西原まろんを名字や名前で呼んだ事が無い気がする」

 

「あれ? ……た、確かに」

 

「『おい』とか『お前』とかで大体通じるからな」

 

「う、うぅ~ん……それだけで通じる事を喜ぶべきか、その待遇に文句を言うべきか……」

 

「名前に関しては無意識のうちに避けていた可能性もあるな。

 もう遠慮する必要も無いから堂々と名前を呼ばせてもらおう」

 

 

 

  ……目の前にタイルが落下後……

 

 『きゃっ!? な、何なの!?』

 『うわぁっ! な、何だこれは!!』

 

 

「僕とかのんの間を割くように降ってきたな」

 

「この程度で私たちの仲を引き裂けると思ったら大間違いだね!」

 

「そういう意図があったのかは不明だがな」

 

 

 

 

 『くっ……やはりこの状態では立つことさえままならぬか』

 『……おーい、大丈夫か?』

 『寄るな! 汚らわしい!!』

 

 

 

「というわけでウルカヌスの登場だ。

 お前沸点低すぎだろとか言ってはいけない」

 

「一応、美生さん呼び出しの手紙で『浮気を仄めかす感じの手紙』って表現されてるし、私たちも精一杯仲良く見せてたけど……若干無理があるよね。これ」

 

「ご都合主義だ。原作ならかのんとの噂があったから波乱を巻き起こす方向の誘導は楽だったんだけどな。

 安定進行の弊害だな」

 

 

 

 『何か、丁度良い依代は……むっ、そこかっ!』

 

  目の前の女神が何事かを呟いた直後、完全な部外者であるはずの月夜から悲鳴が上がった。

 

 『キャッ!? る、ルナが……浮いて……!?』

 『娘ヨ。コの身体、少シ借りるゾ』

 『ルナが喋った!?!?』

 

  いやいやいやいやまてまてまてまて!!

  ここで一般人を巻き込むのか!? 月夜をガン無視で進めようとした僕が言える事じゃないかもしれんが一般人を巻き込むなよ!!

  ふと、かのんの方に視線を向けると首を振りながら片手で頭を押さえていた。考えている事はほぼ間違いなく一致している事だろう。

 

 

 

「この為だけにわざわざ呼ばれたんだよね。月夜さん」

 

「筆者によれば『あのウルカヌス様なら月夜からルナを奪い取るくらいやらかすだろう』との事だ」

 

 

 『よくも……この私を虚仮にしてくれたわね、桂木!!』

 『えっと……何の事だ?』

 『とぼけないで! 散々私にあんな事言っておいて、どうして他の女の子と仲良くしてるのよ!!』

 『ふぅむ……一体どこから説明したものか……』

 『言イ訳なドいラぬ! すリ潰サれて塵ト化ス前に視界かラ消え失せロ!』

 

 

 

「お前沸点低すぎとか以下略」

 

「比較的沸点の低そうな2人組だし、相乗効果みたいなものが働いたのかもね」

 

「……そういう事にしておこう」

 

 

 

「……ところで桂馬くん」

 

「ん? どうした?」

 

「あの台詞まだかな?

 ほら、ウルカヌスさんのあの台詞!」

 

「……何の事だ?」

 

「私の本業が歌手である事を示しつつ、なおかつ桂馬くんと仲が良い事を語ってくれるあの台詞!

 『かのんトかいう歌手に浮気して!!』っていう台詞!!

 浮気っていう所がちょっと間違ってるけど、最高の台詞だよね!!」

 

「…………それ、原作の台詞であって本作の台詞ではないよな」

 

「…………えっ、そ、そんな……」

 

「いや、そんな愕然とされてもな」

 

「あの台詞だけが私が歌手だって認めてくれる唯一の台詞だったのに!!

 酷い、酷すぎるよ!! この世に神は居ないの!?」

 

「いやいや、女神は一応神だぞ?

 それに、唯一って事は……あれ?」

 

  ※

 下手すると『自称歌手』になるかのんちゃんをちゃんと歌手だと評価してくれたウルカヌス様の功績は大きい。かも。

 

 

 

 

 『何を怒っているのかさっぱり分からないが、まぁまずは深呼吸をして落ち着……』

 

 ズドォォン!!

 

  ……台詞の最中にベンチが飛んできて僕のす目の前に突き刺さった。

  タイルみたいな軽いものだけじゃないんだな。へー……。

 

 『お前、バカにシているノか?

  脳味噌をすり潰しテやろうカ?』

 

 

 

「今までで一番命の危険を感じたよ」

 

「そりゃそうだろうねぇ……」

 

「まぁ、大した事は無い。より重要なセーブデータの危機に比べたらな」

 

「そ、そっか……もうちょっと自分の命を大事にしてあげて……」

 

 

 

 『……そうかい。美生、これが君の答えかい?

  僕なんか信用できない。あの世にでも行ってしまえ……と』

 『えっ? いや、そこまでは……』

 『ソの通りダ! お前のヨうなノータリンはギッタギタにスり潰シてカマボコにしテ三途の川ノ底に沈めてヤル!!』

 

  随分と口汚い女神だな。月夜の人形を操ってるくせに。

  しっかし……女神と宿主の意識の違いってのはどこもかしこも結構な問題になってるようだな。

  今回の攻略対象はあくまでも女神ではなく美生だ。完全無視というわけにはいかないだろうが、対応は控えめにしておこう。

 

 

 

「女神が怒り狂ってるせいか美生が若干クールダウンしているな。あまり良くない流れだ」

 

「女神様、さっきからロクな動きをしてないね……いや、女神様に攻略者の視点で考えろっていう方が無理があるけどさ」

 

 

 

 『美生。もし君が僕の事を信じたいと思っていてくれているなら僕にチャンスをくれないか?』

 『チャンス……? 一体何をする気なのよ』

 『そうだな……今から君にキスをする』

 『…………は?』

 『キスこそ、愛の証だ! キスをする事で君への愛を証明してゴフッ!』

 

  台詞を言い切る前に美生に思いっきり助走を付けて蹴り飛ばされた。

  おかしいな。こういう物理攻撃は歩美の十八番だと思っていたんだが……

 

 『な、ななな何言ってるのよこの変態!!

  そそそんなことするわけないでしょう!!』

 『ソの通りダ! 畜生以下ノ単細胞ガ!

  次にオかしな事を言っタら地獄の業火デ魂すラも焼キ尽くし、遺灰ハ犬にデも食わせテやロう!!』

 

 

「キスは大体の問題を解決できる万能ツールと化しているな」

 

「桂馬くん! えっと……なんかこう、問題があるよ!!」

 

「自力で解決しろ」

 

「この薄情者っ!!」

 

 

 

 『いい加減にするのですね!!』

 『何用ダ娘ヨ。今我々は大事ナ話を……』

 『黙れ偽物! ルナは……ルナはそんな言葉遣いはしない!!』

 『エ? いや、そノ……』

 『魔法だか何だか知らないけど、私のルナを返して!!』

 

  月夜はその場にへたり込んでわんわんと泣き叫んでいた。

  これは……無理だな。月夜の行動は場の雰囲気をガラリと塗り替えた。このまま進行をするのは不可能だ。

 

 

 

「会話関係は例に習って頭カラッポで書いてるが、僕とウルカヌスが口論したらそりゃこうなるよなと判断して月夜を乱入させたらしい。

 本章を書き始めた当時は月夜がここまで活躍するとは全く考えていなかったようだ」

 

「そんな急遽決まったんだねこの展開……そんなので良く書けるね……」

 

「重要シーン以外はノリと勢いだけで書くのがうちの筆者のやり方だからな。

 プロットが無いせいで時々変な矛盾が出たりする事もあるが、プロットが無いおかげで思いつきで進行できる」

 

「……ホント、良く完結まで持っていけたね……」

 

 

 

 『……美生。それとそこの……そこのあんた。

  一旦場所を変えて仕切り直そう。異論は無いな?』

 『……そうね。そうしましょうか』

 『…………』

 

  女神は無言で人形を月夜の前まで移動させた。

 

 『……すマなかっタ』

 

  そして一言だけ謝ってから、元の物言わぬ人形へと戻った。

 

 

 

「ところでこれ、桂馬くんの攻略的にはどうだったの?

 良いイベントだったの? 悪いイベントだったの?」

 

「結局すぐに攻略完了したから良いも悪いも無いが……

 まぁ、グッドイベントだったんだろうな。今回の目的は好感度をカンストさせる事じゃなくて一定ラインを越える事だったし。

 最高得点を目指すのであれば荒れた雰囲気のまま進行すべきだが、スピードの方が重要だったから良い転換点になってくれたよ」

 

 

 

  場所を変えて……と言うより、屋上の隅っこの方に移動してから話を続ける。

  月夜の方は反対側の隅っこでかのんが宥めているようだ。今度こそ完全に無視して進められるだろう。

 

 『で、何の話だったっけか?』

 『え? えっと……あ、そうだ! あんたが浮気してたって話よ!!』

 『……どうやら誤解があるようだな。

  ひょっとして、浮気というのはまろんの事を言っているのか?』

 『まろん?』

 『ああ、スマン。あっちに居る黒髪ロングの眼鏡の事だ』

 『そ、そうよ! どういう事なのよ!!』

 『アレは僕の従妹だ』

 『…………へっ?』

 『今は別の学校に通っているんだが、転校を検討中らしくてな。

  学校内を紹介してて、一休みしていた所だったんだよ』

 『そ、そうだったの……ご、ごめんなさい……』

 『……いや、気にすることはない。僕の行動も少々問題があったようだ。すまなかった』

 

 

 

「冷静に考えれば従妹も恋のライバル足り得るんだけど、桂馬くんが勢いに任せて説得してるからすんなりと受け入れてくれたね」

 

「法律上は結婚が可能とは言っても親戚だからな。

 あからさまにベタベタとくっついているならまだしも、単に仲良く会話してたくらいなら『そんなものか』とスルーされるようだ」

 

「ちょっと釈然としないものはあるけど……そんなものかな」

 

「ただ、僕と同棲しているという情報まで流れたらアウトだろうな。

 ちひろもディアナもその辺がアウトだったし」

 

「……最近は感覚が麻痺してるけど、同棲って結構な大事だよね」

 

「……ああ」

 

 

 

 『で、話の続きだが……』

 『? 何の事?』

 『……僕がキスをするかしないかという辺りで止まってたよな?』

 『っっっっ!?!? そ、その話を蒸し返すの!?

  そんなのやるわけないでしょうが!!!』

 『……そうか、僕はそこまで嫌われていたのか』

 『い、いや、嫌いとは言ってないけど……』

 『気にすることはない。自分が胡散臭い奴だという自覚はある。

  今日もやらかしてしまったようだしな。はぁ……』

 『うぅぅぅ……わ、分かったわよ! キスの1つや2つ、やってやるわよ!!』

 『え? だがしかし……』

 『ああもううるさい!! うだうだ言わずに私にキスされなさいよ!!』

 

 

 

「…………!」

 

「(あっ、また変な事思いついたなこいつ)」

 

「桂馬くん! もしかして一向にキスしてくれないのは私が嫌いだからなの?」

 

「いや、そういうわけではないが」

 

「ううん、気にしなくて良いよ。自分でも鬱陶しい奴だっていう自覚はあるから。

 時々何かやらかしてる気がしないでもないし……」

 

「ああ。丁度今やらかしてるな」

 

「カットカット! 桂馬くん! 今のは否定して励ましてそのまま流れでキスの場面でしょ!!」

 

「そんな台本は知らん。

 そもそも、今の流れだと演技なのが丸分かりだ」

 

「いやいや、お芝居のキスならいつもしてるからハードルが低いでしょ?

 そしてそのまま本気のキスのハードルも下げようと……」

 

「……お~いメルクリウス。キスしてみるか?」

 

(キスか。興味が無いわけではないが)

 

「ダメェェェェ!!! そんな事したら本気で泣くよ!?」

 

「はいはい。じゃあこの話終わりな」

 

「…………うん。

 ……あれ? 反射的に否定しちゃったけど、よく考えたらメルクリウスさんの分体の外見は私のものだ。

 私の姿をした人と桂馬くんとのキスを横から見るというのもそれはそれでアリなのでは……?」

 

「知るか」

 

 

 

 『ところで一つ聞かせてほしいんだが、君の中に居る君じゃない方のアレは女神なのか?』

 『女神? え、ええ。確かにそう名乗ってるみたいだけど……』

 『……本人に直接問い質した方が良さそうだな。コレで行けるか?』

 『……お前、何者だ? 何故女神の事を知っている』

 『その質問に答える前に、名前を聞かせてはくれないか?』

 『……良かろう。私の名はウルカヌス。お前が言う通り女神だ』

 『ユピテルの姉妹の一柱か。把握した。

  さっきの質問に対する簡潔な答えだが……ディアナとアポロ、そしてミネルヴァらしき奴に会った事がある』

 『何っ!? どういう事だ!?』

 『直接現状を見た方が手っ取り早いだろう。放課後、時間を空けておいてくれ』

 『……良かろう、と言いたい所だが……』

 『何か予定でも入ってるのか? って、バイトか。毎日頑張ってるもんな』

 『……あ、今日は偶然お休みの日だったわ。ラッキーだったわね』

 『えっ? しかし確か今日も……』

 『うんうん、ホントラッキー。放課後の予定はバッチリ空いてるわ』

 

 

 

「普通にバイトがあったようだな。まぁ当然か」

 

「この後、桂馬くんの見ていない所でちゃんとバイト先に電話したみたいだね。

 バイトといえど仕事である以上はそう気楽に休んだり遅刻したりできるものじゃないと思うけど……色んな意味で良い仕事場だったって事だろうね」

 

「……何故か割と融通が効くかのんの職場は良い職場なのだろうか?」

 

「職場と言うか……岡田さんが凄いね。たまにポンコツになるけど」

 

 

 

 

   ……一方その頃……

 

 『ルナぁ、ルナぁ……』

 『つ、月夜さん? 大丈夫?』

 『大丈夫じゃない。ルナが!』

 『えっと、その……安心して。さっきのアレは腹話術みたいなものであって、決してルナさんの素の口調じゃないから』

 『ほ、本当? 本当に? さっきのはルナじゃない?

  またさっきみたいに突然汚い言葉遣いになったりしない?』

 『大丈夫。本当に大丈夫だから。

  あ、そうだ。これ私の携帯の番号。万が一何かあったら連絡して』

 『あ、ありがとう……なのですね』

 

 

「今後も月夜が絡められるかもしれないと思って携帯の番号を交換させたけど結局使わなかった。

 と、筆者がボヤいていたな」

 

「ま、まあ平和なのは良い事だよね。

 私も仲良くできるのは嬉しいし。

 恋敵でもないから変な遠慮も要らないし!」

 

「一応月夜も恋愛で攻略した相手なんだが……まぁ、記憶無いからな」

 

「攻略が終わった後もなんだかんだで仲良くなったりするのもこの作品ならではだよね。

 ……影の薄い人も居るけど」

 

「筆者としても『居たら使う』くらいの感覚らしいからな。

 その辺の格差は仕方ないな」

 

 

 

 

  そう言えば、今回は女神の現れ方が違った。いつもは鏡を通して話すか宿主の身体を乗っ取るのに。

  あの女神固有の能力かな? エルシィさんの結界やアポロさんの治療みたいに、特化した能力があるのかもしれない。

  ……まさか、本当に人形に魂を吹き込んでいて、女神さまの意志を代弁していただけの可能性も……?

  いや、流石に無いか。こんなお人形さんが素であんな口汚いって事は。

 

  そう思って、ルナさんをそっと撫でた。その時だった。

 

 『フフフフフ、月夜はいつも美しい! 泣いている姿さえも美しい!! 月夜は私のものよ!!

  月夜LOVE!! 月夜LOVE!! 月夜LOVE!! 月夜LOVE!!』

 

 『っ!?!?!?』

 『どうかしたの?』

 『い、いや、何でもないよ。何でもない……』

 

 

 

「……やっぱり気のせいじゃなかったんだねコレ」

 

「ここだけ4コマ時空になってるな。

 ルナとウルカヌス、どちらの方が月夜にとって耐えがたいのかは謎だ」

 

「どっちも強烈だけど、ベクトルが違うからなぁ……

 ……しっかし、何なんだろう、コレ」

 

「……さぁな」

 

 

 

   ……放課後……

 

 『あれ? 開いてる?』

 『朝閉め忘れたの?』

 『その可能性はあるけど……

  ……ハクアさん。警戒して。誰かが侵入したか、あるいはしてるのかもしれない』

 『っ!? 分かった』

 『それじゃ、開けるよ』

 

 

「僕が美生と帰宅してる間にそんな事になってたのか」

 

「うん。あの時はかなり緊張したよ。

 何が起こるか分からなかったから」

 

 

 

 『あら? 遅かったじゃない。ちょっとお邪魔させてもらってるわよ』

 『あなたは……ノーラさん?』

 『あれ? アンタは確かハクアの協力者(バディ)じゃない。どうしてここに?』

 『それはこっちの台詞ですよ! 一体何の用ですか?』

 

 

「そう言えばそんな誤解されてたな」

 

「うん。そう言えばそんな事になってたよ。

 居間に居たのがノーラさんだって気付いて少しは安心したよ。まだ気は抜かなかったけど」

 

「模範的な反応だな」

 

 

 

 『……まあいいでしょう。教えてあげるわ。

  今度私の地区のヒラ悪魔が増員される事になってね。

  でも、予定の日を過ぎても一向に連絡は無いし、そもそも連絡が取れなくなってたわ。

  だから何か情報は無いかうちの地区の悪魔達に聞いて回ってたのよ』

 『なるほど、その行方不明の悪魔の名前は……?』

 『わざわざ言わなくても知ってるでしょ? フィオーレ・ローデリア・ラビニエリよ』

 『……ああ、あの人ってそんな名前だったんですね。みんなフィオとか呼んでたので知らなかったです』

 『……本当に知らなかったのね。まあいいわ。

  さて、ここからが本題よ』

 

 

「家で待ってた時点でエルシィさんの事も捕虜の事も明らかにバレてるからね。

 余計な誤魔化しはせずに進めたよ」

 

「明白な事を延々と話すのは時間の無駄だからな。

 ノーラみたいな偉そうなのは大抵話が長いし」

 

 

 

 『単刀直入に訊かせてもらうけど、フィオを勾留したのはハクアで合ってるの?』

 『……ここでもし『いいえ』って答えたとしても私が関わっている以上はハクアさんは確実に巻き込まれますよね?』

 『と言うか、勾留ビンをちゃんと調べれば誰のものかなんて一発で分かるわよ。面倒だからやりたくないけど』

 『……質問の答えは『はい』です』

 『そう。じゃあ次。上の階でエルシィが瀕死の状態で転がってたけど、それをやらかしたのもフィオで合ってるわよね?』

 『その質問の答えも『はい』です』

 

 

 

「勾留ビンに更なる設定が生えた瞬間だ。

 どうやらちゃんと調べれば誰のものかは分かるらしい」

 

「ノーラさんのハッタリの可能性もあったけどね。ただ、やっぱりごまかしてもハクアさんは確実に巻き込まれるから正直に答えたよ」

 

「エルシィを刺したのがフィオーレの仕業だとノーラが断定的に言っているが、どうやら状況を見て察してくれたようだな。

 ノーラ訪問時の描写はカットされているが、チャイムを鳴らした後に無反応だったんで不法侵入し、そしてエルシィとフィオーレを見つけたという流れらしい。

 当然、フィオーレと会話もしていたはずだが……まぁ、あのノーラが安易に解放するわけが無いな。自分以外が全員悪者と思うくらいで丁度いいとか言ってるくらいだし。

 ただ、勾留されていたのが地獄の上層部だったら、平たく言うとコネが期待できるような人物だったら普通に逃してた可能性もあるな」

 

「あ~……ノーラさんだもんねぇ……

 普通に私たちを売り飛ばしそう」

 

「フィオーレが大物だったら危なかったな。まぁ、そんな事は無かったが」

 

 

 

 『……そう。ありがと。

  じゃ、これは返しておくわ』

 

  突然勾留ビンがこちらに放り投げられた。

  一瞬打ち返しそうになったけど、上手くキャッチする。

  中を確認するとフィオさんは気絶していた。話を聞かれていた心配は無さそうだ。

  ひとまず、ポケットにねじ込んでおく事にする。

 

 

「……おい」

 

「え? 何?」

 

「お前、一瞬打ち返しそうになったのか?」

 

「え? うん。ノーラさんを警戒してていつでもスタンロッドを抜けるように身構えてたからね」

 

「……そうか。まあ……いいや」

 

 

 

 『いいんですか? 私に返しちゃって。

  解放できるチャンスでしたけど?』

 『何で私がわざわざ薄汚い正統悪魔社(ヴィンテージ)の悪魔を解放しなきゃならないのよ』

 『……角付き悪魔は旧地獄から続く名家の証だって聞きましたけど』

 『だから旧地獄の復活を望むって? ハッ、バカらしい。

  確かに、今の地獄が旧地獄にくらべて大人しくて少し退屈な事は否定しない。

  けど、退屈なら自分なりに面白くするだけよ。旧地獄か新地獄かなんて関係ない。

  それに、連中は私に喧嘩を売った。なあなあで済ませるつもりは全くないわ』

 『喧嘩?』

 『そうよ! 私の地区で悪魔……駆け魂ならまだしも部下の新悪魔が死んだなんて事になったら出世に響くのよ!

  幹部クラスの意志なのか、下っ端の暴走かは知らないけど、絶対に後悔させてやる』

 

 

 

「ノーラさんは損得よりも感情の方を優先して行動してる気がするよ。

 と言っても絶対的なものじゃなくて、多少の損なら切り捨てるくらいの感じだろうけど」

 

「そのおかげでヴィンテージと敵対させる流れにするのは結構簡単だったようだな。

 本作ではノーラはエルシィの事を部下としては一応大切に思っているようだからな」

 

「大切に……?

 う~ん、確かに死んだら困るって思う気持ちは大切に思うって言えなくもないかな」

 

 

 

  美生を連れて家へと帰ったら、ノーラが仲間になっていた。

  何を言ってるか分からないと思うが僕にも良く分かってない。

 

 『ごめん、大体全部話しちゃったよ』

 『……いや、お前が信用して話したなら大丈夫だろう』

 

  エルシィやハクアならまだしもかのんが信用したならきっと大丈夫だ。

  徹底的に疑い尽くして、それでも信用に値したなら全く問題ない。

 

 

 

「桂馬くん!!」

 

「な、何だ! 突然抱きつくな!!」

 

「こんな嬉しい事を考えてたなんてどうして言ってくれなかったの!

 ちゃんと言ってくれれば私の好感度がもの凄い事になってたのに!」

 

「いや、当時の時点でほぼカンストしてたよな……?

 それに、お前の攻略が目的じゃないし」

 

「フフフ……カンストを越えた好感度というものを見せてあげるよ!」

 

「止めい。何か怖いから」

 

 

 

 『これが、ミネルヴァなのか?』

 『恐らくはな。本人はまだ名乗ってないから確定ではないが……ほぼ間違い無くミネルヴァだ』

 『まさかこんな姿で再会する事になろうとは……

  しかし、これだけの術を私1人で打ち破るのは少々困難だぞ?』

 『それも分かってる。今助っ人を呼んで……来たようだ』

 

 『申し訳ありません。遅れたようですね』

 『いや、ジャストタイミングだ。丁度ウルカヌスに説明が終わった所だよ』

 『っ! 確かにこの気配は姉様ですね。お久しぶりです』

 『……ディアナか。久しいな。どうやら再び力を合わせる時が来たようだ。

  我らが力を合わせればこの程度の呪いは容易く解ける。そうだろう?』

 『ええ、勿論です。やりましょう、姉様』

 

 

「天理の幼馴染み設定は便利だな。

 ディアナがすぐに来てくれる」

 

「わ、私の方が近いよ!!」

 

「うん、知ってる。

 そして家が遠い奴は……まぁ、もうちょっとしたら出て来るな」

 

 

 

 

 『っ』

 『安心しろ。これは似せてはいるが本物の旧地獄の術ではない。

  ただの紛い物。この程度なら……解ける!』

 

 『おいエルシィ、大丈夫か?』

 『エルシィさん! 聞こえてたら返事をして!!』

 

 『ぅぅ、ぅぅん……? おや? ここは……

  ……そうですか。神様も、姫様も、ご迷惑をおかけしたようですね』

 『良かった! 本当に良かった! ごめんねエルシィさん! ありがとうエルシィさん!

  本当に良かったよ! うわぁぁん!!』

 『ちょ、ちょっと待って下さい。まだお腹が痛むので、少し手加減を……』

 『あぅ……ご、ごめん……』

 

 

 

「互助の女神の復活だな。

 当時の後書きでも述べたが、口調は『普通のエルシィの口調』か『女神様の口調』かで迷っていたようだが……例に習って面白そうな方を選んだようだ」

 

「もともと敬語だから台詞自体の変化は割と大人しめだけど、イントネーションとかが結構変わってるね。

 当時はそこまで気にする余裕は無かったけど……」

 

「もの凄く雑に言うと口調は大人しくなったと言えるな。口調は」

 

 

 

 ガチャッ

 

 『すまぬ! 少々遅れたのじゃ! 姉上と一緒なら解呪も簡単……あれ?』

 『おい、もう全部終わったよ』

 『……そ、そうか。それは……良かったのぅ。

  ……少し、下で休んでくるのじゃ』

 

 

「……家が遠いと、こうなる」

 

「麻美さんの家ってそこそこ遠いよね……

 これでも結構頑張って急いできてくれたのかな?」

 

「そうかもな。結果が全てだが」

 

「……アポロさん可哀想」

 

 

 

 『さてと、まず、僕はお前を何と呼べば良いんだ?

  今まで通りにエルシィと呼べば良いのか、それとも女神ミネルヴァと呼べば良いのか』

 『そうですね……お好きな方でかまいません。

  私は女神ミネルヴァであると同時にエリュシア・デ・ルート・イーマでもあります。

  女神の私も、記憶を閉ざして地獄で過ごしてきた300年の私も、間違いなく私ですから』

 『……じゃ、エルシィと呼んでおこう。

  記憶、やっぱり無かったのか』

 『ドクロウ室長と、お姉様……リミュエル姉様が何かやってくれていたみたいです。

  今、記憶が戻っているのもお2人のどちらかが何かしたのではないかと』

 

 

「こんなアホに腹芸ができるわけも無いから記憶のロックは妥当な判断だな。

 地獄に居た頃に悪魔を演じてたのはそれはもう様々な障害があったろうが、ドクロウが頑張って何とかしたという設定らしい」

 

「その辺、割とフワッとしてるね」

 

「まぁ、エルシィは地獄では落ちこぼれだったし、ハクアとかと違ってそこまで注目は集めてなかったはずだ。

 偽装は簡単……というのは言いすぎだが、割とどうにかなったんじゃないか?」

 

「……影でどれだけ苦労したんだろう、ドクロウさん」

 

 

 

 

  ベランダに出て、外の空気を吸いながら物思いに耽る。

 

 『残り2人、アポロも含めるなら3人……か』

 

  未発見の女神はマルスとメルクリウス。そのうち片方は歩美の中に居るのは確定だろう。

  あと1人は、やはりかのんの中に居ると考えるのが自然だ。しかし、本人にその自覚は無いようだ。

  何か見落としているのか? 

  例えば、僕との関係性が薄かった連中は細かい調査はしていない。していないが……そこに女神が居るというのは流石に無理があるか。

 

 

 

「答えを知った今見ると随分と滑稽な事をやっていたものだな」

 

「アレは仕方ないよ。気付けたら神様ってレベルじゃないよ。

 私が暴いた時だって絶対の確信があったわけじゃないし」

 

「……そうか。

 ああそうそう、これは読者視点の話になるが、『原作と同じペアはディアナ以外居ない』という情報があったんでこの時点で歩美とマルスのペアが確定になっていたな。

 より正確にはウルカヌスが出てきた瞬間からか。

 一応、女神が出てきていないため確定ではなかったが……流石にこの時点で歩美を宿主から除外するのは不可能だったな。

 記憶はほぼ確実にあるし、他に候補も居ないし」

 

「読者さん達の認識ではメルクリウスさんはどうだったんだろうね? ほぼ私で決まってたのかな?」

 

「さぁなぁ……」

 

 

 

 『ねぇ、桂馬くん。ちょっと話は変わるんだけど……』

 『何だ?』

 『……今だからこそ言うけど、桂馬くんが女神を攻略したのって……私の為だよね?』

 『……どういう意味だ?』

 『私がエルシィさんの件で責任を感じないように、死んでしまわないように解決しようとしてくれた。

  そういう事……だよね?』

 『フン、そんなわけが無いだろう。

  僕は自分が死にたくなかったから最大限努力したまでだ。お前の事は全く関係が無い』

 『……ははっ、やっぱり敵わないなぁ。

  私には、到底真似できそうにないや』

 『お前は何を言ってるんだ』

 『……真実はそこまで重要じゃない。重要なのは、私がそう思ったって事。

  桂馬くんは望まないかもしれない。むしろ気を遣わせてしまうかもしれない。

  でも、私はちゃんと君に伝えたいんだよ。『ありがとう』って』

 『……別に僕の許可を取る必要は無い。好きにすればいいさ。

  と言うか、もう伝えてるじゃないか』

 『それもそうだね。ありがとう。桂馬くん』

 

 

 

「これって結局どうだったのか……なんて質問に意味は無いか。

 大好きだよ。桂馬くん」

 

「そこは『ありがとう』ではないのか」

 

「だってそっちはもう言ったし。

 だから、あの時は伝えられなかった事を伝えたよ」

 

「言えなかった……か。

 エルシィを助けた事がお前を助けた事だと認識していたなら告白するくらいまで好感度が上がっていてもおかしくは無いが……

 まぁ、どう足掻いても告白は無理か」

 

 

 

  ベランダから屋内へと戻り、階段を降りて居間へと向かう。

  僕が扉を開けたその瞬間……突然爆発音が鳴り響いた。

  クラッカーでも鳴らされたのかと思ったが……どうやら違うようだ。

 

 『エルシィっ!! どうしてオムレツにマンドラゴンの卵なんて使ったのよ!!』

 『いや、その、ハクアが卵を焼いてと言ったので……』

 『鶏の卵を焼けっていう意味に決まってるでしょうが!! どうしてよりにもよってマンドラゴンの、しかも有精卵を使うのよ!!

  アレの生態を考えたらすぐに強制孵化するに決まってるでしょ!!』

 『我々が復活してからの初めての本格的な戦闘の相手がまさかミネルヴァの食材とは……』

 『やはり適当な人形が欲しい。有ると無いとでは段違いだ』

 『妾の専門は医術と神託ぞよ。荒事は得意ではないから勘弁して欲しいぞよ』

 『う、うぅ……』

 

 『コラエルシィ! 何やってるんだ!!』

 『い、いえ、ちょっとしたトラブルがあっただけで……』

 『エルシィさん! 地獄の食材は使わないって言ったよね!? どういう事!?』

 『え、えっと……その……ご、ごめんなさいぃぃぃっっ!!!』

 

  ……一応、取り戻す事はできたんだな。この鬱陶しくて騒がしい日常を。

 

 

 

「わ~、爆発オチだ~」

 

「このオチにする事は割と前から決まっていたようだな。

 テーマは『取り戻した日常』だ。

 ……日常はもう少し静かであって欲しいが」

 

「これはこれで悪くはないけどね。

 にしてもハクアさん、どうして台所にエルシィさんを入れちゃったかなぁ……」

 

「エルシィは地獄の料理なら得意だからな。人間には害なだけで。

 ハクアもまさか人間界に来ただけで評価が一変するとは考えてなかったんだろう」

 

「……あれ? そう言えばエルシィさんって女神だよね? 地獄の料理って大丈夫だったのかな?」

 

「『悪魔として地獄の食材に耐性がある』のではなく『人外ならではの耐久力がある』と解釈したようだ」

 

「……よくそんな抜け道思いつくなぁ……」

 

「原作のミネルヴァだったはずのエルシィだって料理はあのザマだから問題ないだろう。多分」

 

 

 

「これで3日目は終了のようだな」

 

「次は……アポロさん、思慮の女神編だね」

 

「小休止編、だな。

 ひとまずタイムリミットが無くなったから4日目は休憩だ」

 

「次回、思慮の女神編『束の間の小休止と女神の神託』です!

 ではまた来週~」

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