「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!
第34回キャラコメンタリー始めます!」
「思慮の女神編だ。
休憩してたら勝手に攻略されてたチョロインでもあるな」
「何てヒドい言い草……確かに事実だけど!
それでは、VTRスタート!」
……女神攻略 4日目……
エルシィが復活したおかげで差し迫ったタイムリミットは無くなった。
しかし、大元を断つことができなければ再び同じ事の繰り返しになりかねない。今回刺されたのはエルシィだったから瀕死で済んだが、かのんが刺されていた場合にどうなっていたかは分からない。
そんな事になる前に、女神をできる限り復活させておかなきゃならん。
『次はどっちから行くの? アポロさん? 歩美さん?』
『そうだなぁ……』
「この時点でちょっと疲労が見て取れるね。
濃密な3日……いや、4日間かな? だったから無理もないけど」
「まったくだな。この程度で疲労させられるとか、
「え、そっちに責任があったの……?」
「愚問だな」
『他の人が演じる私の姿を見るというのも中々に奇妙な感覚です』
『僕達にとってはお前の口調の方がよっぽど奇妙なんだが……』
『そこに文句を言われましても。慣れてください』
『善処する。
……って、ちょっと待て。まだ中川はお前の演技なんてしてないぞ?』
『えっ? 聞き取りやすい良い声でフレンドリーに神様に語りかけるこの口調は私のものではないんですか!?』
『違ぇよ! このポンコツ女神!!』
『エルシィさんの声は……もうちょっと間延びしててポワポワ~ってした感じだよ」
『そ、そんなバカな。有り得ません!』
『何を根拠に断言してるんだ……?』
「思いつきで始めたクール口調のエルシィだな。
筆者は何気に苦労していたようだ。
敬語口調なのは前と同じだしな」
「変わっているようで一皮剥くと変わってない。
塩梅が難しそうだねぇ……」
『そう言えばさ、今日はアポロさんと一緒に登校しなくて良かったの?』
『ん? ああ。今日はいいや。攻略において、押し一辺倒じゃなくて時には引く事も重要だ』
『押してダメなら引いてみろってヤツだね?』
『そういうこった。今頃アポロは悶々としてるだろうな』
『……桂木の奴、来ないのぅ』
『そうだね。来ないね』
『あやつをコテンパンにする為に色々と準備しておるのに、台無しではないか!』
『そんな事してたの……?』
『勿論じゃ!! どうせそのうちすぐに現れるじゃろ。その時が年貢の納め時じゃ!!』
(……何故だろう、今日は来ない気がしてきた)
『ん? 麻美? 何か言ったかのぅ?』
『ううん~、何でもないよ~』
「麻美さん、察しが良いね」
「分かりやすくフラグが立ってたな。
アポロには占術の応用でフラグを立てる能力でもあるのか?」
(未来予知の一種だと考えればあながち有り得ないとも言えないな)
『おっす! おはようエリー!』
『おはようございます! ちひろさん!』
『昨日はどうしたのさー。何か大事な用事があるって言ってたけど』
『えぇっと……ごめんなさい。内容までは話せません』
『ん~、まいっか。何か結が『まだ来れないのか』とか言ってたけど、今日は部活来れる?』
『……はい。バッチリです! 生まれ変わった私の姿をお見せします!!』
『へぇ。それじゃ、期待させてもらっちゃおうかな』
「少し迷ったけど、とりあえずミネルヴァさんじゃなくてエルシィさんとして対応したよ」
「教室で大騒ぎになるのは面倒だったから良い判断だと言っておこう」
「騒ぎになるくらいならまだいいけど、熱でも出したのかとか疑われて保健室に運び込まれたりしたら面倒だもんね」
「ああ、全くだな」
『桂木ぃ!! どういう事じゃ!!!』
『おいおいどうした。何か話があるなら後にしてくれ。もう間もなくHRが始まるぞ』
『……そう言って逃げたりせんじゃろうな?』
『しないしない』
『何て言うか……ゴメン』
『気にするな。この程度の暴走は問題ない。
ただ、せめて人目を気にしろとお前から伝えておいてくれ』
『……うん。しっかり言い聞かせておく』
『桂木! 妾を無視するでない』
『はいはい分かった分かった。また昼休みでいいか? のんびり話せるだろう』
『……良かろう。逃げるでないぞ!』
『だから逃げないってば』
『むぅ……』
「アポロさんは本作ではとことん振り回される宿命なんだね……」
「攻撃的なキャラは意外と打たれ弱い……というのは原作の美生編での僕の台詞だったか。
原作のアポロが本当にそうだったのかは不明だが、本作ではこういうキャラ付けになっているな。
原作でもうちょい出番があればまた違ったキャラ付けになったかもしれんが……こんな場所で言っても後の祭りか」
『ねーねー桂木~。あさみんと仲良いの? 何か楽しそうに喋ってたけど』
『んぁ? まぁ、悪くはないんじゃないか』
『へ~。頑張ってね桂木!』
『何をだ』
『え? アレ? じゃあかのんちゃんの方……?』
『……ああ、そういう事か』
「原作ではそれはもう色々とあったちひろだが、本作だと完全に外野だな。
あいつの相手はしたくないので僕としても非常にありがたい」
「軽音部に桂馬くんの恋人が居るっていうのは実は間違ってないんだよね。
流石はちひろさんだね!」
「当時の僕の発言にそんな意図は全く無かったがな。
結果的には真実になったな」
『おいちひろ』
『あ、やっと反応した。ようやく吐く気に……』
『お前、『ユピテルの姉妹』を知っているか?』
『ゆ、ゆぴ……何だって?』
『『ユピテルの姉妹』だ。その様子では知らないようだな』
『うん、全く心当たりは無いよ。それがどうかしたの?』
『……知らないなら構わん』
『一体なんなのさ……あれ? 桂木? また無視? もしも~し!』
「……あれ? 今気付いたけど、ちひろさんの事を名前で呼んでるね」
「ん? ああ、確かに。気付かなかった」
※
筆者も、と言うか筆者が今初めて気付きました。
わざわざ名字で呼ぶ事を省略するほどぞんざいに扱っていたという解釈が……少々厳しいだろうか?
「それはさておき、ちひろも完全に潰せたな。
万が一居たらそれはもう厄介な場所なんで安心したよ」
「苦手意識が完全に染み付いてるね……」
「ちひろだからなぁ……」
……昼休み……
『ん~、やっぱりオムそばパンは美味しいね』
『天界の熟練の料理人が作った料理と比べると少々見劣りしますが……人間界の食事としては群を抜いていますね』
『そう言えば、エルシィさんと一緒にここでお昼食べるのって初めてだよね』
『確かにそうですね。姫様か私のどちらかがアイドル活動をしているので学校に2人で居るというのはかなり珍しいです。
そう言えば、お仕事の方は大丈夫なのですか?』
『……うん。ちょっと長めの休暇を貰ったから』
『そうなのですか? 簡単に休みが取れるような仕事とは思えませんが……
こんな時にお休みを取れるなんて運が良かったですね』
『う、うん。運が良かったよ』
「天界に料理人なんて居るのかは知らんが、地獄には居るんだからきっと居る!
……とは筆者の弁だな」
「地獄と違って完全に描写されてないから食事なんて必要としてない可能性も十分有り得るんだよね……
まぁ、居る可能性も同じくらいあるけどさ」
「そういうコトだな。
さて、何気に珍しい3人での昼食風景だ。いや、アポロも居るんだが」
「朝食や夕食はちょくちょくあるんだけどね。昼は滅多に無いし、学校でとなると本当に初めてだったよ」
「……ところで気になったんだが、お前的にはエルシィの好感度はどうなってるんだ?
庇われたとかの強すぎるイベントを除けばあまり良い思い出は無い気がするんだが……」
「う、う~ん……良くない思い出も多いけど……それと同じくらいは……ああいや、半分くらいは……あれ、半分もあるかな?
……と、とにかく楽しい思い出もちゃんとあるよ!」
「……まぁ、仲が悪くないなら別にいいか」
……思考能力もポンコツのままなんだな。ちょっと安心した。
いや、待てよ? そもそも女神は全員どこかポンコツだったな。エルシィのそれも女神の伝統だったのか。
『桂木よ、何か今失礼な事を考えんかったか?』
『ん~? 何の事だ~?』
流石は神託を下す女神だ。カンが鋭いな。
そんな事を考えながら女神の中でも比較的まともなアポロへと向き直る。
「『あのエルシィさんが女神様!?』ってなると凄い違和感があるけど、『あのエルシィさんがめがみさま』ってなると違和感が完全に消し飛ぶね」
「もしや原作者はそこまで想定して書いていた……? いや、無いか」
「流石に無いんじゃないかなぁ……」
『よし、飯を食い終わった所で話を始めようか。
何の話だっけ?』
『えっと……あ、そうじゃ! お主どうして今朝は妾の所に来なかったのじゃ!!』
『何だ? 寂しかったのか?』
『そ、そんなわけが無いじゃろう!! ただ、その……せっかくお主に勝つ為に準備してたのに無駄になったから悲しいだけじゃ!』
『……それ、僕に言ってよかったのか?』
『…………あ』
やっぱりポンコツだな。
こいつのポンコツっぷりは他3名と違って僕に危害が及ぶ方向には行かないから凄く安心できるよ。
『女神の中では、やっぱりお前が一番好きだな』
僕の紛うこと無き本音を、ここに居る全員に聞こえるように、しみじみと、しかしはっきりと呟いた。
「そう言えばさ、女神は全員出揃ったけど、今でも一番はアポロさんなの?」
「どうだろうな。メルクリウスも色々と役に立ってくれてるからな。
ただ、時々変な事をするからそういう意味ではやはりアポロの方が信用できるな」
(変な事とは心外だな、我が宿主よ。
お前たちの仲が進展するようにちょっと手伝ってやっただけだろう)
「僕は一切頼んでないんだがな」
「私も時々嬉しくはあるけど……神様だよりっていうのもなんだが違うかなって」
(……全人類が歌姫のような思考を持っていてくれたら、神々ももっと楽できたろうにな)
『……その台詞、冗談で言っておるわけでは無さそうじゃな』
『ん? 分かるのか?』
『何となくそんな気がしただけじゃ。一昨日の薄っぺらい『愛してる』という台詞よりはずっと心に響いたからのぅ』
『そういうものか。流石は女神……なのか?』
『さあのぅ。妾にも分からぬ。
しかし……しっかりと響いたからこそ分かる事もある。
お主のその『好き』という言葉、そこに恋愛は含まれてはおらぬな?』
『……かもな』
「アポロはアレでも女神なんだなと実感できたよ。
どこかポンコツっぽいが、意外と察しが良い」
「この台詞は……別に要らないかな。
私はもっと愛が籠もった言葉が欲しいよ!」
「……とりあえず人間の中ではお前が一番好きだな」
「……それでも微妙に嬉しいから困るよ」
『昨日までの僕は多分焦っていたんだろう』
『そんな風には見えんかったのじゃが……』
『ああ。僕だって今気付いた事だ。エルシィの命……そしてそれと繋がっている僕達の命が脅かされている状況だったからな。
振り返ってみると、お前の攻略に関しては少々強引に進めようとしてしまっていた』
『強引……確かに強引ではあったのぅ。神が人に恋するなど……』
『いや、そこに関しては問題視していない。そんな話はゲームでいくらでもあるし、現に今のお前は僕の事を好きだと言っているじゃないか』
『す、好きというのはあくまでも人間性に関してじゃ! 恋愛的な意味では無いわい!』
『その辺の真偽は置いておくとして……僕が反省しているのは『強制的な恋愛』についてだ』
『強制的? ……確かに、ミネルヴァを救うための、妾の力が目当ての恋愛なぞ不可能じゃったな』
『いや、やろうと思えばそれ自体は割と何とかなるんだよ』
『む?』
「この辺のやりとりは私は初めて見るよ」
「僕の意図を察してお前がエルシィと一緒に離れてくれたからな。
あの時は助かったぞ」
「あの程度なら、いつでもオッケーだよ」
『許嫁ルート、強制された恋愛関係において一番マズいのはプレイヤーが攻略対象と敵対する事だ。
あくまでもプレイヤーとヒロインは恋愛を『強制される』側の被害者達であって、プレイヤーは決して『強制する』側に立ってはいけない。
それを崩した時点で……僕がお前に強制した時点でこのルートは破綻していたんだ。
これじゃあ妹の命を人質に関係を迫るだけの最低な奴じゃないか。
その妹の命を救うという大義名分もあったわけだが……それはそれでなおタチが悪い』
『いや、そこまで不快な思いをしたわけでは無いのじゃが……考えてみるとそういう事になるのぅ』
『ああ。だから……すまなかった』
『……お主でも謝る事はあるんじゃな』
『そりゃそうだ。僕を一体何だと思ってるんだ』
『そうじゃのぅ……絶対的に正しい神であろうとする人間の様……かの』
『それは決して間違いではない。僕は落とし神だからな』
『神の前で神を名乗るとは良い度胸じゃな』
『今のは褒められたと解釈しておこう』
『褒めとらんわい』
『そこはどうでもいい。重要なのはいくら僕が神であっても間違える時は間違えるという事。そしてそれを僕自身が知っている事だ。
ここ数ヶ月の間だけでも何度フォローしてもらった事か。その度に僕もまだまだだと思い知らされるよ』
『ん? お主ほどの者をふぉろーするとは……一体何者じゃ?』
『……まぁ、教えても大丈夫か。
エルシィ……ミネルヴァではない方の、僕のもう1人の協力者、中川かのんだよ』
「♪♪♪♪~~~~!」
「日本語を喋れ」
「いや~、桂馬くんもちゃんと私を意識してくれてたんだね!」
「相棒としてはな」
「うんうん。安易に恋愛がどうこうとか言わない辺りやっぱり桂馬くんだよ!
あ~、何か幸せ~」
「……放っとくか」
『協力者……か。一蓮托生というわけじゃな。
言葉から感じる雰囲気は軽いのに、とても重い関係だったのじゃな』
『……かもな』
『……お主は……あやつの事をどう思っておるんじゃ?』
『どうと言われてもな……』
『じゃあ質問を変えるが……お主はあやつの事が好きなのかや?』
『何か割と最近似たような質問を受けた記憶があるな……
好きか嫌いかという極端な2択であれば間違いなく好きだと言える。
ただ、恋愛的な意味で好きになった事は一度も無い』
『……そうか』
『どうした? 何か不満そうに見えるが』
『何でもないのじゃ』
「天理から受けた質問とモロ被りしてるな」
「同じ手を2回も使うのはどうかとも思ったけど、流れでこうなったから仕方ない。
っていうのは筆者さんの言葉だね」
「単純に攻略ってだけじゃなくて女神復活のきっかけが被るとかいう微妙に美しくない事になってるんだよなぁ……
……まぁ、女神なんて所詮は脇役だしな!」
「そうだね!」
『アポロ……? アポロ?』
(……麻美か。何じゃ?)
『こっちの台詞だよ。今のアポロ、泣いてるように見えたよ』
(? そちらからは顔は見えぬはずじゃが)
『そんな気がするくらいの感情が伝わってきたって意味だよ。
まとまらないぐちゃぐちゃした感情だけど、泣きそうな事は伝わってきてる』
(バカを言うでない。どうして妾が泣かねばならぬのじゃ)
『どうしてって……私もあんまりハッキリした事は言えないけど、きっとショックを受けたんじゃないかな。
桂馬君は完璧に見えるけど、その桂馬君だって誰かの助けを借りる事がある。
一緒に支え合う人間が居るんだって』
(それは……確かに驚いたが……それがどうして妾が泣く事になるんじゃ?)
『……私にもよく分かってない。けど、私はそう感じたから。
アポロもきっとそうなんじゃないかなって』
(…………)
「……こいつら、こんな会話してたのか。当時の僕は全く気付かなかったぞ」
(それは当然だろう。一つの肉体の中で済まされている念話だ。
我々が使っているものと違って傍受も不可能だな)
「そういう問題でもないと思うけど……まぁ、気付けないよねぇ……」
(……麻美よ。お主は桂木と恋人になる事を諦めた時、こんな気持ちを抱いておったのか?)
『え? うぅん……どうだろう。私はそもそも桂馬君が好きだったのかもよく分かってないから。
今のアポロの気持ちを感じ取る事はできてるけど、共感はできないと思う』
(……そうか。参考になったのじゃ。
妾は……自分で思っていたよりも桂木の事が好きだったのじゃな)
『そうだね。中途半端な私よりも、ずっと好きだったよね』
(……そうじゃな)
『私は……私は今の関係で満足してる。でも、アポロはきっと違うよね?』
(うむ!)
『それじゃあ、頑張ってね。精一杯応援してるから』
「……互換フラグかこれ。
いや、微妙に違うか」
「稼いでおいた好感度がちゃんとした好感度になったって感じかな?
アポロさんが危機感を抱いたから恋愛をしようとし始めたね」
「非攻略対象キャラが攻略対象キャラになった感じだな。
システム的な意味でようやくフラグが立ったようだ」
『の、のぅ桂木よ。ちょっとしたおまじないをしてみぬか?』
『おまじないだと? それはどういう効果だ。いつ発動する』
『は、発動? おまじないはおまじないじゃが……』
『だからその効果を訊いてるんだ。大ダメージを受けてもHP1で耐えられるとか、敵から得られるお金が1.5倍になるとか』
『い、いや、その、ちょっと良い事が起こるというだけのおまじないじゃよ』
『フッ、所詮は
『そのくらい良いではないか! いいからやるのじゃ!』
『はいはい、分かった分かった。で、一体何をするんだ?』
「一気にゲームっぽくなったね……」
「具体的に数値で示せないなら価値などない!
と言うのは流石に言いすぎだが、やはりバフの数値化はしておかないとな。
そのバフの価値がどれだけ高いか、あるいは低いかを知っておく事は非常に重要だ」
「まぁ、言いたいことは何となく分かるけどね」
『っっ!? お、お前っ!? まさかっ!?』
『はっはっはっ、思慮の女神からの口づけじゃ! きっとご利益があるぞよ!』
『きっとって何だよきっとって!! と言うか唐突に重要イベントをこなすなよ!
こういうのはもっと伏線を張ってだな……』
『そんなの知らぬ。桂木の唇は妾が奪ってやったぞ!』
『あ、おい待てっ!!』
「何故だろう。こうやって見直してもモノローグが無かったらただの悪ふざけに見えなくもないな」
「そんな事より桂馬くん! おまじないやってみない!
ほら、私の好感度が自乗される効果があるよ!!」
「何倍にする気だよ!? 怖ぇよ!!」
(……自乗だと好感度が1未満だと逆に減るが……歌姫ならそんな心配は無いか)
……一方その頃 地獄……
『増員の成果は確実に上がっており、前年比では230%以上の伸びが……』
『お~い、ハクア? 大丈夫か?』
『え? シャリィ?』
『何だか暗い顔をしていたぞ?』
『……別に。ただ、連絡を聞くだけっていうのも退屈だなって』
『あまりそういう事を言うな。上の人だってこの退屈な話を頑張って考えてるんだろうから』
『退屈である事は否定しないのね……』
「始業式とか終業式の校長先生の話を彷彿させる場面だね……」
「筆者も完全にそのノリで書いているな。
本当に話が上手い奴なら必要な連絡事項を簡潔に伝えられるんだろうが、わざわざただの下っ端への報告会でそんな手間暇かけた事はせんわな」
「そういう問題なのかな……? ああ、うん、頑張れば短くできるだろうって所には同意するけどさ」
『……にしても、人増えたわね。
前の報告会と比べて倍くらいになってるわよね?』
『極東地区の地区長がやたらと増員されてるからな』
『…………』
桂木だったらこういう時、『妙な事が重なるならそれは確実に裏で繋がっている。よく見る展開だ。ゲームで』とか言いそうね。
桂木の仮説では女神はあの地に集められていて、実際に4人見つかってる。
それを探す為の増員なのだとしたら……その命令を発した上層部は信用できない。
とは言っても、この駆け魂隊はアルマゲマキナの終戦のすぐ後から普通に存在していた。脱走した旧悪魔の魂を狩る存在として。
だから駆け魂の……旧悪魔の味方なんて有り得ない。
……なんて言ったら『絶対的な味方だと思ってたら実はラスボスとか、よくある展開じゃないか。ゲームで』って言われそうなのよね。
って、アレ? 何で私は桂木からの反論を的確に予測してるの?
「中々分かってるじゃないか」
「ゲームだと本当に良くあるし、実際にそうだから困り物だよね……」
『ハクア、何を買ってるんだ?』
『うちの
桂木は晩ご飯の時に甘い物が苦手って言ってたから……この辺でいいか。
エルシィの好みは昔と変わってないならこれで良さそう。女神になっても味覚は変わってなかったっぽいから多分大丈夫。
あとは……一応世話になってるから私の協力者にも買っておきましょう。好みなんてさっぱり分からないから適当に勘で。
「ハクアの協力者か。きっと白馬の王子様みたいな奴に違い無い!」
「そんな話前にもした気がするね……
あのヒトの好みかぁ……乳酸菌飲料でも買ってくればいいんじゃないかな」
「地獄に乳酸菌は……そのものは居なくても似たようなのなら居るかもな。
人間に有益とは到底思えないが」
「……そうだね」
私が受付で名乗ると同時に顔を隠した3人の悪魔に囲まれていた。
『っ!? な、何!?』
『ハクア・ド・ロット・ヘルミニウム殿。公安部です』
『なっ、公安!? どういう事!?』
『あなたに公務法30条違反の告発がありました。ご同行をお願いいたします』
『30条……服務違反!? どうして!? 私は何も……』
『これは逮捕ではありません。事実確認が目的なのでご安心を』
「アッサリ捕まったな。いやまぁ、逃げようがないし逃げたら逆に面倒になってたから最適解なんだが」
「原作だと無理矢理引きずられていってたね。
本作だと一応自分の足で歩いて行ってるけど、これに特に理由は無いみたい。
強いて言うなら……筆者さんが面倒臭がった結果だね」
「費用対効果が釣り合わないイベントはサクサク飛ばしていく悪癖があるからな」
「久しぶりに出たね。筆者さんの悪癖シリーズ。
って言うか、それは果たして悪癖なの……?」
「……ケースバイケースだな」
……再び人間界……
『よーし! 今日もやるぞぉ!!』
『はい、精一杯頑張らせて頂きます』
『……あれ? 結? エリーの声真似した?』
『い、いえ……わざわざそんな事しませんよ』
『……え、エリー。もう一回行くぞ。
今日もやるぞ!!』
『え? はい。精一杯頑張らせて頂きます』
『エリーが壊れた!! 誰か、衛生兵!!』
『あ、あの……どうしてそこまで大騒ぎされるのでしょうか?』
『お前の口調が明らかにおかしいからだよ!!
どうしたの!? 何か悪い物でも食べた!? それともあのアホ兄貴に何かされたの!?』
「わ~、エルシィさんが壊れた」
「文字だけでは伝わりにくいと言うか伝わらないが、きっと姿勢とか動作もキビキビしてたんだろうな」
「なんたって女神様だもんねー」
「そうだなー」
結論から言うと、エルシィの偽物疑惑は数分で晴れた。
『さて、張り切って参りましょう』
ギィィィン!!!!
『ちょ、エリー! 音量大きすぎ!!』
『うわっ、す、すみません。えっと、最小にして……』
ギャィィィィィィン!!!!!!!!
『ちょ、更に大きくなってる!!』
『す、すみません!!』
~~演奏終了後~~
『~~♪ 良い調子です』
『……おい、エリー』
『どうかしましたか?』
『……どうして! 何かこう……エリーっぽくなってるんだ!!
ここ数日はまともな感じの演奏だったじゃないか!!』
『あ、あの、私っぽい演奏とは……?』
『何かこう……エリーっぽい感じだよ! なあ皆!!』
『そ、そうだね……エリーっぽい感じだったね』
『何て言って良いか分からないけど……エリーっぽい感じだった』
『エリーさんっぽい感じという表現が一番しっくり来ますね』
『何なんですか! 私っぽいって!!』
「エルシィっぽいとは一体何なのか」
「哲学だね……」
「意味は何となく分かるが、言語化するのは難しいな」
……再びの地獄 独房……
『は~い。久しぶり』
『あ、ど、どうもです!』
『ども~。お父さん元気~?』
『は、はい! レオリアの方にはいつも良くして頂いてて……』
『あ~、いーのいーの。
それより、中に居るのとちょっと話せる?』
『どうぞどうぞ! ご遠慮無く!』
『素直な子は好きよ~。あ、私が来たことはナイショね』
「とっ捕まったハクアの所にノーラがやってきた場面だな。
こういう圧力が簡単にまかり通ってる時点でロクな世界じゃない事がよく分かるな」
「流石に言いすぎな気がしなくもないけど……でも確かに権力のゴリ押しが通じちゃう世界には行きたくないね」
「ハクアの拘束とかは一応手続きに則ってるみたいだから完全な無秩序というわけではないようだが……今の日本の方が100倍は平和なのは間違い無いだろうな」
『ノーラ? どうしてこんな所に』
『ちょっと待ちなさい。防音するから。
……これでおっけー。
で、何でここにって? それはこっちの台詞よ。お前一体何をやらかしたのよ』
『……服務違反……らしいけど』
『フワッとしてるわねぇ……
まぁ、アレでしょ。どうせ室長に正統悪魔社の事でも報告したんでしょ?』
『え? 違うわよ?』
『……え? 違うの? クソ真面目なお前なら室長にバカ正直に報告してそうだと思ったけど』
『……も、勿論そんな事してないわよ!』
「この後のハクアのモノローグでも言っていたが、本作の場合はわざわざ室長に報告する意味が無いからな」
「明らかに黒幕だもんね。あのヒトもとい悪魔」
「本作の状況ならハクアでも報告の必要が無い事くらいは理解してくれるだろうし、ヴィンテージが目を光らせてる可能性もあるからデメリットの方が多い事をしっかりと理解してくれるだろうと判断したようだ。
それでも拘束された理由は……原作通りだな」
『……ノーラ、私を連れて脱出する事ってできる?』
『ハァ? 何寝言を言ってるのよ。無理に決まってるでしょ。
それに、私は正統悪魔社に付く事にしたから』
『……はぁっ!? ど、どういう事よ!?』
『だってぇ、正統悪魔社に協力した方がどう考えてもおトクじゃない。
ただのゴロツキ集団じゃなくて上層部とのコネもあるみたいだしぃ』
『だ、だからって……昨日は何か凄く怒ってたじゃないの!!』
『個人の感情で利益を蹴るほど私はバカじゃないわ。
さ~ってと、私は色々と手を回してお前たちとは無関係だったって事にするから。
ま、せいぜい頑張んなさい』
『そんなっ!! くっ、一瞬でもお前を信じた私がバカだったわ!』
『ホッホッホッ。負け犬の遠吠えね。
この後のアナタなどうなるのかしらね~。拷問紛いの尋問とかが待ってるんでしょうね。キャー怖い。
自白したらアウトなのは勿論、反抗的な態度を取るだけで反逆罪に問われるかも。そうなったらジ・エンドね。
ま、
「原作のノーラでもこれくらいのアドバイスはしてくれるんじゃないだろうか? とは筆者の弁だな」
「そのくらいの優しさ、と言うか機転はあるよね。ノーラさん」
「正確な事は原作者しか分からんけどな。
まぁそういうわけで、本作では無駄に凝った台詞にしてみたわけだ」
……ハクアが台詞を読み解いた後……
……え? 何で言葉の裏の意味を読むのに慣れてるかって?
だって、桂木と中川の会話って主語とかその他諸々が毎回省略されてるのよ! そりゃあ深読みの技術が身につくわよ!!
って言うかあいつらアレでただの協力者だって言い張るのよ!? あんなに通じ合ってるただの協力者が居てたまるもんですか!!
もういっその事結婚でもしなさいって話よ!!
「……ハクアさんは是非とも結婚式に呼んであげないと!!」
「いや、むしろ呼ばないつもりだったのか?」
「あんまり深くは考えてなかったけど……確かに普通に呼ぶね」
「……さて、話を戻すか。
原作では何か知らんうちにハクアに恋愛フラグが立っていたが、本作では木っ端微塵に粉砕されている。
ハクア編で立ちかけた恋愛フラグも詰問する事で粉砕し、それ以降もかのんが側にいて仲良くやってたおかげでフラグを立てる隙など無かったらしい」
「将来のライバル候補を未然に減らす……流石は私だね!」
「筆者としてもフラグが乱立する展開はなるべく避けたかったらしいからな。
メインヒロインが決まっている出来レースで無駄に希望を持たせるような真似はしたくないとか何とか。
それでも女神編は話の都合上フラグを立てざるを得なかったが、それ以外では全力で回避する方向に進めたらしい」
「で、出来レース……う~ん、まぁいいんだけど……」
……人間界 放課後……
『やっと帰ってきたか。待ちわびたぞよ』
『アポロ? どうしてここに?』
『ちょっと用事があってのぅ。ひとまず上がらせてはくれぬか?』
『ああ、構わん。鍵を開けるからちょっと避けてくれ』
『うむ』
「アポロさん、一体いつから待ってたんだろう?」
「軽音部の活動を見守ってから帰ってきてるから、放課後にすぐに来たなら結構待って……
……いや、麻美も茶道部だし、舞校祭も近いからそっちの活動やってたか」
「意外と待たせてなかったっぽいね」
『今から妾はミネルヴァと協力して神託の為の占術世界を構築する』
『占術世界?』
『未来を知る為の仮初の世界の事じゃ。
説明が難しいが……まぁ、行けば分かるはずじゃよ』
『……まあいいだろう。念のため訊いておくが、危険は無いんだな?』
『無いのじゃ。あったとしても所詮は仮初じゃ。全く問題ないぞよ』
『分かった。じゃあやってみてくれ』
『では、皆で手を繋いで輪を作るのじゃ。
あ、ミネルヴァとは直接手を繋がせてもらうのじゃ』
『という事は……エルシィはそっち、かのんはこっちだ』
『そうなるみたいだね』
『了解です』
『では、始めよう』
「かなり細かい話だが、手を繋いだ順番は アポロ・エルシィ・かのん・僕 となっている。
エルシィと僕は直接接触していない」
「……確かに文章から読み取れるね。
最初にエルシィさんとアポロさんが対角線上に居て、私とエルシィさんが位置を入れ替えたならそうなるよ」
「時計回りか反時計周りかは……関係ないな。接触の有無が重要だから」
「……もしかして、ミネルヴァさんと手を繋いでたら女神の宿主が分かった可能性が……?」
「どうだろうな。潜伏してる女神に互助の力が通じるのかどうかは未知数だ。
まぁ、筆者も積極的に避けたわけではなく話の流れからそうなってたというだけの話なんだがな」
『よし、接続成功じゃな』
『お姉様との共同作業は300年振りですが、上手くいったようで何よりです』
『うわっ!? 落ち……ない? うぅぅ……何か怖いよ』
『下を見下ろす為の足場じゃから透明なのは我慢して欲しいのじゃ。
安心せい。この魔方陣から出ても落ちたりはせぬし、さっきも言ったようにあくまでも仮初の世界じゃから死んでも大丈夫なのじゃ』
『仮想現実によるシミュレーションみたいなものって事か?
ゲームみたいな空間に入るのは僕も初めてだな』
『妾の能力をゲームに例えるのは何か嫌じゃが……あながち間違いとも言いきれんのぅ』
「……お前、屋上から飛び降りた事もあったよな?」
「自分から飛ぶのと突然飛ばされるのでは大違いだよ。
原作では空中に大量の鐘が浮いてたみたいだけど、本作だと足場だけだね。
アポロさんは祈祷につきっきりって訳じゃなかったからこういう風にしたみたい」
「あくまでも『占術』の為の世界だな」
三百年の時を経て六柱の女神は運命の地へと舞い降りる
冥界より来たる互助の女神が舞い降りるは人間の神と姫の身許。其の者が存在する場所こそが運命の集結点となる
『純真』の女神は十年の時を経て帰還する
『思慮』の女神は邂逅を果たす
『互助』の女神は地に伏せ、運命が動き出す
『創造』の女神は猛りと共に顕現す
『勇気』の女神は疑念の先に輝きを取り戻す
『叡智』の女神は始まりの刻より神姫の傍らにて眠る
六柱の女神が顕現せし時、運命の地を襲う大いなる災厄は振り払われるであろう
心せよ。答えを未来に問うなかれ。心せよ。答えは汝の過去にあり。答えは汝の心の内にあり
あらゆる可能性を疑い、意識の隙間を埋めよ。最後の答えはそこにある
「筆者が頑張って考えた中二心溢れる神託だ」
「こうやって振り返ってみると最後の2行はメルクリウスさんの事なんだね。
『汝の心の内にあり』ってかなり直球なヒントだし」
「文字通りの意味で心の中に居たからな」
「あと、『叡智』の後に続く『神姫』って言葉が私たち2人じゃなくて私だけを指すっていう解釈もできるね。
筆者さんとしてはどっちの解釈でも大丈夫らしいよ」
「もっと分かりやすく伝えてほしかった気もするな。いやまぁ、こんな所で答えが出たらアウトだってのは理解しているが」
……某所にて……
『おーい歩美! 一緒に帰ろうぜー!
今日は近くのコンビニで新しい肉まんが出るから一緒に買い食いしよー』
『ちひろったら、また肉まんなの? よく飽きないね』
(中略)
『そーいえばさ、桂木の奴がさ』
『えっ、ど、どうかしたの?』
『? 歩美こそどうかしたの? 何か挙動不審だけど』
『そ、そんな事無いわよ? それで?』
『あ~、うん。何か『何とかの姉妹』って知ってるかって訊いてきたんだよ』
『姉妹? どういう事?』
『いや、知ってるか知らないかだけ聞いたらすぐに話を止めちゃったんだよ。
何て言ってたんだっけかなぁ……あ、思い出した。『ユピテルの姉妹』だ』
『……えっ?』
『『ユピテルの姉妹』だよ。何だったんだろうね』
『…………どういう……こと……? 何で、桂木が……?』
『歩美? どうかしたか?』
『……ごめん、ちょっと、今日はもう帰る』
『え? おーい!
……行っちゃった。何だったんだろう?』
「……結果的に助かったんだが、それでも言わせてもらおう。
ちひろテメェ!!」
「う~ん……これくらいだったら予想できてもおかしくはなかったね。
気を抜いてた桂馬くんの落ち度だよ」
「うぐっ、そうなるか……
まあいい。結果的には助かったからな!」
「コレが無かったらあそこまで短期決戦にはならなかっただろうね……」
「これにて思慮の女神編は終了だ」
「次回は勇気の女神編『『勇気』の女神は疑念の先に輝きを取り戻す』です!
ではまた来週~」