もしエル キャラコメンタリー!   作:天星

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忍耐の歌姫編 『叡智』の女神は始まりの刻より神姫の傍らにて眠る

「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!

 第36回キャラコメンタリー始めます!」

 

「忍耐の歌姫編だ。

 執筆開始時の予定ではメルクリウスの攻略は原作同様にクライマックスで行うつもりだったようだが……紆余曲折あって比較的余裕を持って攻略する事になったな。

 ある意味では最終章みたいなものだ。じっくり語っていくとしようか」

 

「それでは、VTRスタート!」

 

 

 

 

 『ここにいらっしゃったんですね、神様』

 『…………ん? ああ、エルシィか。

  何か用か?』

 『もうしばらくしたら前夜祭が始まるのでお知らせに来ただけです』

 『……もうそんな時間か。気付かなかった』

 『時間も忘れて何をしていらっしゃったのですか? ゲーム……ではないようですけど』

 『そんなもん決まってるだろ。メルクリウスの居場所を考えてたんだよ』

 『メルクリウスですか……居場所は分かったのですか?』

 『いや、全く。

  ……ああ、せっかくだからちょっと手伝ってくれ。少し煮詰まってたんだ』

 『お手伝いですか? なるほど、私の知性の出番というわけですね。お任せ下さい!』

 『……あーそーだなー』

 

 

 

「……桂馬くん、トチ狂った?」

 

「声に出して情報をまとめるというのは意外と有効だ。

 それ以外にも、相手に教えるという行為は物事をより掘り下げて考える事を意味する。

 相手がバグ魔のエルシィなら騒がしいという欠点があるが、ミネルヴァなら割と大人しいから意外と適任だったりする。

 まぁ、ルナとかの方が大人しいが」

 

「会話が成立する相手にやった方が一応効果は大きいのかな? でも、う~ん……」

 

 

 

 『女神メルクリウスの宿主の最有力候補は中川だ。しかしながら…………』

 

 『……あの、ちょっとよく分からなかったのですけど』

 『ん? ややこしい所は殆ど無かったはずだが……』

 『いえ、ややこしいとかではなく……神様が挙げている最大の問題点は……『姫様の記憶が戻っていない事』……ですよね?』

 『ああ。その通りだ。ちゃんと分かってるじゃないか』

 『いや、分かるんですけど……だからこそ何でそんなに悩んでるかが分からないんです』

 『ちょっと待て、こっちが理解できん。どういう意味だ?』

 

 

「……なるほど。こーいう流れでアレがバレたんだね」

 

「ここのエルシィは地味に知力ブーストがかかってる気がしないでもないな。

 まぁ、助かったからいいが」

 

 

 

 『だって、姫様ってそもそも記憶操作なんて、されてないじゃないですか』

 

 

 

「……度肝を抜かれたよ。ホント。

 まさか最初から仕込んでるとはな」

 

「どーだ参ったか!」

 

「ああ。全くだ」

 

「……さてと、ここに筆者さんからのメモがあるけど、私の記憶バレに関しては当初は別の案だったらしいよ。

 エルシィさんがバラすのは予備の案だったみたい」

 

「……そんな調子でよく書けたな」

 

「一応この予備の案が使えるように知っててもおかしくないような言動にしてたみたいだね。

 エルシィさんが私の記憶に関して明言する事は一切無かったはずだよ。

 強いて言うのであれば……エルシィさんに桂馬くんに対する恋愛フラグが立ってない事が伏線だね。

 私が普通に仲良くしてたから、自然と押しのけてたみたい」

 

「それ伏線だったのか。筆者の面倒臭がりじゃなくて。

 まあいい。元の案はどんな感じだったんだ?」

 

「桂馬くんがほぼ自力で気付くルートだったみたいだよ。

 連載当初は原作と同じような展開で進むと仮定してたから、舞校祭1日目の夜に攻略対象が拉致されるイベントもしっかりやる予定だったみたい。

 その中で、天理さんだけじゃなく私も襲われなかった。さて、何故でしょう?」

 

「……ノーラによって報告された天理は無事だった。

 となるとお前が無事なら誰か別の人物によって報告されていたか……あるいはそもそも報告がされていない。

 報告がされていないという事は、記憶の操作もされていない、と」

 

「そういうコトだね」

 

「実際、本作ではお前の攻略は一切報告されていないからな。

 駆け魂の数の帳尻合わせをするのも面倒だし、記憶操作も面倒だから」

 

「そうらしいね。

 結局本作では色んな理由から使わなかった……と言うか使えなかったけどね。

 ハクアさんが割と穏便に地獄から帰還したりしたから」

 

「……そう言えばそっから漏れたんだったなぁ……

 ったく、ハクアめ」

 

「街中がヴィンテージだらけになった事自体はハクアさんのせいではない……ハズ。

 あそこってノーラさんの地区だし」

 

「……まぁ、それもそうか」

 

 

 

 

 『あの……もしかしてご存知無かったですか?』

 『……ああ。全く知らなかったよ』

 『でも……どうしてご存知なかったんですか?

  神様なら誰かに言われずとも察しそうなものですが』

 『理由は…………2つある。

  まず、中川……いや、かのんが言っていたからだ。

  攻略が終わった直後に、記憶が曖昧だと』

 

 

 

「お前が吐いた、たった一つの嘘だったな。

 たった一つだけ、だからこそ強烈に刺さった」

 

「嘘を隠す方法で一番の方法はそもそも疑わせない事だね」

 

「全くだな」

 

 

 

 『もう1つの理由は何ですか?』

 『…………僕自身が、考えようとしなかった。

  いや、考えたくなかったんだろう。だからその可能性を無意識のうちに避けていたんだ』

 

  あの時のかのんと今のかのん。僕の中ではこの2人は別人だった。

  そして僕は、今のかのんとの関係性を心地よく感じていたのだろう。

  攻略とは関係ない、対等な相手とのやりとりを。

  そして、だからこそ『あの時のかのん』の事は忘れようとしていたのだろう。

  かのんを『攻略した相手』として思い出したくはなかったし、かのんに思い出してほしくもなかった。

  それが……今回の結果に繋がった。

 

 

 

「へ~。こんな事考えてたんだね」

 

「まぁ、な」

 

「昔の私の事を忘れ去ろうとしてたっていうのはちょっと気に食わないけど、気持ちは分からないでもないかな。

 攻略とは関係のない信頼できる関係。それが凄く新鮮だったんだろうね」

 

「……かもな」

 

 

 

 『……かのんと、話さなきゃならない。

  エルシィ、携帯を貸してくれ』

 『神様は持って……いらっしゃらないんでしたね。

  はい、どうぞ』

 

  使い慣れない携帯の電話帳からかのんの名を探す。

  『か行』を探すが見あたらない。

  続けて『な行』を探すがそれでも見あたらない。

  数秒ほど考えてから『は行』を捜して『姫様』という名前の番号を発見した。

  コールボタンを押して呼び出し音を聞く事数秒。聞きなれた声が電話の向こうから聞こえた。

 

 

「携帯にその名前で登録されてたんだね……」

 

「エルシィが携帯を手に入れたのはお前の偽名が決まる前だったからな。

 決まった後だったら『西原』か『まろん』になってたかもしれん。

 あと、どうでもいい事だが、『かのん』と『中川』と『姫様』では都合の良い事に50音順になっている。

 電話帳を上から調べると自然とこの流れになるから書きやすかったとか何とか」

 

 

 

 『もしもし? エルシィさんどうかしたの?』

 『エルシィじゃない。僕だ』

 『桂馬くん? どうかしたの?』

 『……なぁ、お前は……()()()なのか?』

 

 

「……桂馬くん、悪気は全くないんだろうけどちょっと文句言わせて。

 電話でいきなりコレを言われるのは心臓に悪すぎるよ!!」

 

「あ~、スマン。少々配慮が足りなかったか。

 とりあえず呼んで、直接言うのが正解だったか?」

 

「う~ん……それでも文句は出そう。

 えっと…………うん、どうやっても文句出るね。何て言うかゴメン」

 

「……根本の原因は一応そっちにあるのか? あるのか」

 

 

 

 

 『……どうして、分かっちゃったのかなぁ……』

 『じゃあ、やっぱり記憶があるのか!?』

 『その通り、だよ。完璧に隠してた……とまではいかなくても十分隠せてたと思ったんだけどね』

 『お前、今どこに居るんだ? 今からそっちに向かう』

 『その必要は無いよ。私がそっちに行く』

 『いや、しかし……』

 『どこに、居るの?』

 『……屋上だ』

 『そっか。丁度いい場所だね。

  私と、桂馬くんが初めて会った場所だ』

 『……そうだな』

 『待っててね。10分で行くから』

 『ああ。待ってる』

 

 

 

「屋上にもいくつかあるから僕達が初めて会った場所だとすぐ分かるとか突っ込んではいけない」

 

「いや、それはアレだよ。乙女の直感的な」

 

「まぁ、実際合ってたからいいんだけどな。

 思えば、無意識のうちにその場所に辿り着いてたのかもな。

 出会いの印象だけはかなり深いから」

 

「スタンガン……いや、スタンガンさんのおかげだね!

 これからも大事にしてあげなくちゃ!」

 

「全力で否定したいんだが否定できない」

 

 

 

 

  ……イリスの歌姫の物語……

 

「カットで」

 

「ちょっと!?」

 

「だってな、これって回想だろ?

 これまでのキャラコメで十分だろうが!!」

 

「うぐっ、確かにそうだけどさ……」

 

「……まぁ、ちょっとだけコメントしておくとしよう。

 当時の後書きでも述べたが、『イリスの歌姫』という言葉には複数の意味が篭められている。

 まず、花菖蒲(Japanese water iris)の花言葉である『忍耐』。これがメインの意味だな。

 筆者は称号を考えるに当たってまず『花言葉 忍耐』でググったらしい。『忍耐』こそがお前に最も相応しい言葉だろう、と」

 

「流石は筆者さん、よく分かってるね!」

 

「で、アイリスという言葉をイリスと読み替えた。

 そして、今度は『イリス』という言葉を調べたら『虹の女神』だという情報が出てきた。

 『七色の虹』というのは演技力がブーストされているお前にはピッタリだな。

 あと、単純に『女神(イリス)の歌姫』つまり、女神の関係者という意味でもピッタリだ。

 そんな感じで3重の意味が込められていたな。

 ……まぁ、1つの意味を篭めたら2つくっついてきただけとも言えるが」

 

「流石にそれはしょうがないんじゃないかな……こんな短い称号に複数の意味を計算尽くで入れるのは不可能に近いと思うよ」

 

「まぁ、そうだな」

 

 

 

 

 『……お前、言ってたよな? 記憶が曖昧だって』

 『うん、言った。よく覚えてるよ』

 『どうしてそんな嘘を言ったんだ?』

 『あの時、恋愛の記憶を抱えた私が側に居るって事になったら、桂馬くんは絶対に気を遣うでしょう?

  だから、記憶は無くなった事にするのが一番良いって、そう思ったんだ』

 『……かもしれないな。だが、お前はそれで良かったのか?』

 『……辛い時もあった。けど、私にとってもベストな選択肢だったと思ってる。

  攻略対象としての私じゃない、私自身を桂馬くんに見せる事ができたから』

 

 

 

「もしもだけど、私が嘘を吐かなかったらどうなってたんだろう?」

 

「最初から記憶があると分かっていた場合の話か……

 多分、最後の女神の居場所に気付けずにバッドエンドを迎える事になってたな」

 

「ちょっと端折り過ぎじゃないかな……」

 

「そうだな……まずはお前をマンションに送り返してただろうな。

 そしてお前と僕との接触の機会が激減する。

 それによって重要な諸々のイベントが消滅して……少なくとも僕に勝てる程に成長するのはまず不可能だろうな」

 

「そっか……そりゃ追い出されるよね。

 良かった。嘘吐いて良かったよ」

 

 

 

 

 『……じゃあ、質問させてくれ。

  お前の中に、女神は居るのか?』

 『……その答えは最初から全く変わらないよ。

  私の中には、多分女神は居ない』

 『でも、断定ではないんだよな? 記憶はあるんだから』

 『その通りだよ。これは私の主観に過ぎない。

  だから……私の中に女神が居たとしても全然不思議じゃないね。

  相手が『叡智の女神』なら尚更ね』

 『……分かった。

  それじゃあ僕は……お前の攻略を始めよう』

 

 

 

 

「こうやって土壇場で私がクロ濃厚になるのは連載開始時から決めてたみたいだね。

 流れは決まってたからスムーズに書けたらしいよ」

 

「没案だとヴィンテージの集団襲撃後にこうなってたんだよな。

 恐ろしく詰まったスケジュールだったんだな」

 

「私たちの間に今更時間は要らないね。5分でじゅーぶんだよ」

 

 

 

 

  何か無いだろうか? 私にできる事が。

  今からでも別の最後の宿主を探すとか? いや、流石に無理がある。

  桂馬くんが散々捜して見つからなかったのだ。それなのに私が今から見つけられるとは思えない。

  見つけられるとしたら……この分野で私が桂馬くんに勝てる要素があるとしたら……………………

 

  ………………あれ?

 

 『……はははっ』

 

  そうか。そういう事なんだね。

  推理は繋がった。この推理は、全てをひっくり返す一手になる。

  やっと理解したよ。これこそが私がここに居る本当の意味なんだ。

 

 『あっはっはっはっはっ!!』

 『お、おい、どうしたかのん? 大丈夫か?』

 

 

 

 

「そして土壇場で私がひっくり返すのも連載開始時から決めてたみたいだよ。

 桂馬くんが協力者に選ばれた理由が女神にあるのなら、私が選ばれた意味は、最後の女神を攻略する事だってね」

 

「……オープニングのドクロウ室長がそこまで考えていたかは不明だがな」

 

「う~ん、確かにちょっと怪しいけど……私たちの視点では分からないからセーフだよ!!」

 

「……かもな」

 

  ※

 過去編に関しては『原作と似たような事があった』というフワッとした仮定で進めているので微妙な齟齬が発生したりしなかったり……

 一応本作の連載開始時には『桂馬に女神を攻略させる。協力者はエルシィ』という知識をドクロウ室長が持っていたという設定で進めています。

 ぶっちゃけた話をするとドクロウ室長はかのんに桂馬の攻略をさせるなんて事は考えていませんでした。

 ただ、原作でも『ドクロウが全て計算尽くで画策した』と言うよりも『成功した未来から導かれた』という話だったので、『偶然』かのんが協力者に選ばれて役割を得たのは必然と言えるでしょう。

 

 

 

  笑いが止まらない。嬉しさが止まらない。

  だって……私はまだ、諦めずに済むんだから。

  それじゃあ、始めよう。

  台詞なんて考えるまでもない。私が言うべき事は決まってる。

 

 『桂馬くん……いや、桂木くん。私と、ゲームをしよう』

 

 

 

「ここでゲームに絡めるのは……流石に連載当初は決まってなかったみたいだね」

 

「僕とのゲームに強烈な重みができたのは連載中の、ちひろ編での話だからな」

 

「うん。そうだね。

 だから、ちひろ編が終わった頃にはこの辺の流れも考えてたみたいだよ。

 私が桂馬くんに打ち勝った時、攻略は達成されるだろうってね」

 

「……ノーコメント」

 

「う~ん、ここで同意が得られれば攻略完了の言質が取れたんだけどなぁ……」

 

「分かってるなら次行くぞ」

 

「は~い」

 

 

 

 

 『ゲームのルールは、簡単。『先に女神を見つけた方が勝ち』」

 『……ほぅ?』

 

 『ちょっと遠回りしたけど、ゲームのルールはシンプル。

  今から発表する私の推理を桂馬くんが信じるなら私の勝ち。そうでないなら、私の負け。

  さぁ、どうする? 受けてくれる?』

 

 

 

「このルール設定は計算尽く……ではないんだろうな」

 

「うん。とにかく女神探しをゲームに落とし込む事しか考えてなかったよ。

 桂馬くんに言われるまで『フザケたルールだ』なんて一切考えつかなかったよ」

 

 

 

 

 『ルールに異存は無い。来いよ、()()!』

 『っ! う、うん!』

 

 

 

「ちゃんと意図を察して私の名前を呼んでくれた時は凄く嬉しかったよ。

 もし私に女神が居たら復活するくらいには」

 

「攻略対象の『かのん』と相棒の『中川』では立場がかなり異なってくるな」

 

「攻略対象だと立場は下……いや、下って言い方もちょっとおかしいけど、やっぱり下だよね。

 でも、相棒なら対等だ。

 桂馬くんは同じ高さで私と対決してくれたんだね」

 

「フン、ゲームというものはフェアじゃなければ意味が無い。それだけだ」

 

 

 

 

 『情報を私なりにまとめると……

  『駆け魂の宿主は子供を産める身体である必要がある』

  『宿主が子供を産めないと分かれば駆け魂は去っていく』

  『女神の宿主は子供が産めなくても問題は無い』

  ……これ、反論はある?』

 『…………いや、無い。

  だが……まさか、お前……』

 『気付いた? ヒントを出す必要すら無い最後の宿主候補。

  『叡智』の女神は始まりの刻より神姫の傍らにて眠る。

  私が候補に入れるなら……もう1人もその資格はあるよね?』

 『……ロジックに矛盾は見られないな』

 『それじゃ、私の推理を言わせてもらうよ。

  桂木桂馬くん。君こそが最後の女神の宿主だよ』

 

 

 

「……ところで疑問なんだけどさ」

 

「どうした?」

 

「結局、桂馬くんに駆け魂って居たのかな?

 女神のみを押し込まれたっていうケースも考えられるけど」

 

「筆者としてはどっちでも全く構わないらしいが……まぁ、一応居たんじゃないかなとの事だ。

 心に穴を空ける機械があるんだから男子に駆け魂一匹押し込むくらい楽勝だろう、と」

 

「そう言えばあったね、そんな装置」

 

  ※

 アレが男子にも効くのかは不明。

 

 

 

 

 『……だがしかし、その推理には存在するべきある重要な要素が欠けている』

 『それは……勿論分かってるよ。この推理には……』

 『『証拠が足りない』』

 

 

 

「本当に痕跡は一切無かったわけだが……これはお前の意図なのか?」

 

(……ん? 私か。

 ああ。人間同士のやりとり……イベントは自分が参加するよりも横から眺めている方が楽しい。

 だから、なるべく気配を隠していた。存在がバレたら傍観者ではいられなくなるからな)

 

「ホントイイ性格してるね……」

 

 

 

 『……分かってるじゃないか。それじゃあ、証拠を頼む。勿論用意してあるんだろ?』

 『何言ってるの桂馬くん。そんなものあるわけないじゃん』

 『……は? いや、待て待て、無いのか!?』

 『そんなものがあったら仮想宿主の桂馬くんがとっくに見つけてるでしょ。むしろ私が訊きたいよ。証拠っぽいものは無いのかって』

 『そんなものがあったらとっくに言ってるよ』

 『じゃあ、無いね♪』

 

 『……そうか、そういう事か。

  確かに証拠なんて要らない。そもそもお前が宿主だという仮定にも証拠なんて無いからな。宿主でない証拠が無いというだけであって』

 『そう、この推理はあくまでも可能性を提示したに過ぎない。

  最後の宿主は私でほぼ決まりだった状況をイーブンに戻したに過ぎない。

  ……その上で、もう一度訊くよ?

  桂馬くんは……私の推理を、信じる?』

 

 

 

「確かにお前の言う通り真っ平らの状態ではある。一応な。

 しかしなぁ……ああ、くそっ!」

 

「何を言われようと私の勝利は揺るがないよ!」

 

「いや、ルールに同意したのは僕なんだから今更ケチ付ける気は無い。

 無いが……ああくそっ!!」

 

 

 

 『……ふざけるなよ』

 『えっ? ふ、ふざけてなんかいないよ!』

 『状況がイーブンだと? それを信じるかだと? こんな……こんなのっ、ふざけるなよ!!』

 『……ごめん桂馬くん。ちょっと席を外し……』

 『こんなの勝ち目が無いだろうが! ふざけるなよ!!』

 『…………えっ?』

 『ああくそっ、勝負が決する条件をもっと詰めるべきだった。

  あのな、僕はな、ずっと前から決めてるんだよ。お前を信じるって。

  あからさまに破綻した推理ならまだしも、いや、破綻してたとしてもただ切り捨てずに再考くらいはする。

  そして、特に目立った矛盾すら無いなら……信じるに決まってるだろ』

 

 

 

 

「桂馬くん!!」

 

「うわっ、いきなり抱きつくな暑苦しい!」

 

「だって、桂馬くんが桂馬くんが!!」

 

「分かった分かった。お前の主張は分かったから落ち着け」

 

「♪~~~~」

 

「……離れる様子は無さそうだな。

 はぁ……コメントするか。

 お前にはずっと助けられてきたからな。結編然り、ちひろ編然り。

 後は……失敗して助けられたっていう経験はその辺だけか」

 

「あれ? 意外と最初の方だね」

 

「順番で言うなら5番目と6番目の駆け魂だな。

 ゲームの勝者はこの時点で決まっていたと言っても過言ではなさそうだ」

 

「ホントにずっと前だったんだね……

 そこから今までの私の頑張りは一体……?」

 

「あくまでも強いきっかけがそこだったという話だし、お前もずっと成長を続けていたはずだ。

 無駄な事など何一つ無かったさ」

 

「……そっか。そうだよね。

 ……ありがと、桂馬くん」

 

 

 

 『け、桂馬くん……』

 『何を泣いてるんだ。もっと勝ち誇れ。

  お前の勝ちだよ……()()()

 

  ふと、初めて名前を呼ばれたあの時を思い出した。

  あの時の私は、嬉しさと寂しさを感じていた。終わってしまう寂しさを。

  だけど、今はただひたすら嬉しいだけだ。

  ははっ、ヘンだよ。嬉しいはずなのに、涙が止まらない。

 

 

「……ホント、嬉しそうに泣いてるな」

 

「だって嬉しかったんだもん!」

 

「ん~……コメントしておくか。

 お前のモノローグの最後の部分、実は元ネタがある」

 

「えっ、そうだったの?」

 

「そこまで珍しい表現ではないから探せば何人か言っているかもしれないが、筆者はあるゲームのワンシーンをイメージしながら書いていたようだ。

 そのゲームは筆者が初めてプレイしたギャルゲーであり、件の台詞を発したのは筆者が最初に攻略したヒロインのエンディングの台詞らしい」

 

  ※

 一般人基準のギャルゲーです。FF10みたいなのは含みません。

 

「う~ん……ちょっと反応に困るね」

 

「ついでに言うと、同作の中では筆者の一番のお気に入りのヒロインだ」

 

「それなら良い事だね! きっと!」

 

「あと、記憶に頼って書いていたから正確に一言一句同じというわけでも無いようだ。

 まぁ、丸パクよりはずっと良いだろう」

 

 

 

 

 『さてと。それじゃあ答え合わせといこうか。

  勝敗には関係ないが、純粋に気になる』

 『そうだね。

  ……万が一どっちにも居なかったらどうしよう』

 『そんときはそんときだ。

  おいメルクリウス。聞こえてるんだろう? そろそろ出てきてくれ』

 

 『……まぁ、いいだろう』

 

 『ユピテルの姉妹は愛の力で蘇る。

  恋愛が一番の糧となるが、それだけには留まらない。我ら姉妹がかつて絆の力を糧としたように。

  喜ぶがいい。我が宿主よ。お前の『信頼』は『恋愛』に並び立った』

 

 『初めまして、我が宿主、そして歌姫よ。

  我が名はメルクリウス。叡智を司る女神だ』

 

 

 

(ようやく私の登場か。少し感慨深いな)

 

「ホント長かったな……筆者が仕掛けた最後の仕込みだったな」

 

「例の女神当ての企画では1人だけ正答者が居たみたいだね。

 あと、これの数話前の感想ではちらほらと予想してた人が居たみたい」

 

「筆者も気持ち悪い笑みを浮かべながら返信していたようだな」

 

  ※

 当時の感想量は今までに比べてメチャクチャ多かったです。

 あと、感想返信もメッチャ楽しかったです!

 

 

 

 『いつもの女神は鏡越しに会話していたが、お前は何で外に出てるんだ?』

 『簡単な分体を創造しただけだ。と言っても、さっきできるようになったばっかりだがな』

 『……何でわざわざそんな事を?』

 『だって、私は女神だぞ? 男の身体って何か嫌じゃないか』

 『……理屈は分からんでもないな』

 

 

「そう言えば最初はこんな感じのボヤけた奴だったな」

 

(分体は割と自由にいじれるから結構便利だ。

 安定した肉体があるというのもそれはそれで便利だがな)

 

「……そういうもんなのか」

 

「そう言えば、女神の皆はこの後どうするの?

 ずっと憑依してるわけでもないだろうし……いつかは転生するの?」

 

(まぁ、そうなるな。

 次に生まれ変わるなら人間になりたいな。女神だと魔力が使えなくてイライラする)

 

「そんな簡単に選べるものなのか?

 と言うか、ただの人間だと魔力が作れないからそれはそれでキツいんじゃないか?」

 

(頑張れば転生先を操作する事は容易だ。魔力精製も方法が皆無というわけではない。

 ……ああ、そうだ。どうせならお前たちがサッサと子供を作ってくれ。そこに便乗して転生するのが一番楽そうだ)

 

「とんでもない事を簡単そうに言うなよ!!」

 

「そうだよ!! 子供を作るとなると色々と大変なんだから!

 岡田さんに報告して産休を取ったりとか、子供用の衣類とか寝具とかを用意したりとか、

 ホント色々と大変なんだから!!」

 

「いやに具体的だなオイ」

 

  ※

 アイドルに産休が存在するのだろうか……?

 

 

 

 『あ、そうだ。どのくらいまで復活してるの?』

 『つい先ほど、所謂『翼持ち』くらいまでは復活した』

 『……ついでに訊くけど、その前はどれくらいまで復活してたの?』

 『ハイロゥが出る程度だ。

  うちの宿主のゲームに対する愛情は無尽蔵だが……女神には相性が悪かったのか、それとも何か別の要因があるのか、その程度しか復活できなかったようだ』

 

 

 

「そう言えばさ、頭のリングの正式名称って何?」

 

「ディアナは『リング』と呼んでいたな。

 それ以外で呼んでいる奴は……原作では多分居ない。

 ただ、アニメ版ではハクアが『ハイロゥ』と呼んでいる場面が一応ある」

 

  ※

 第3期オープニングテーマの終幕部では歌詞に『ハイロゥ・リング』とある。(オープニングの担当はハクアの中の人)

 『リング』だと何かショボいので本作では『ハイロゥ』という言葉を使っている。

 

 

 

 『そうだ、かのん……ありがとな』

 『えっ? どうしたの突然』

 『メルクリウスを自力で見つけるのは僕には不可能だった。

  お前が居てくれたおかげだ』

 『……桂馬くんがお礼を言った……?』

 『僕だって礼くらい言うぞ。僕を一体何だと思ってるんだ!』

 『うそうそ、冗談だよ。

  そう言えば、ずっと言いたくて言えなかった事があるんだ。聞いてもらえるかな?』

 『どうした改まって』

 『私はつい最近まで『恋愛の記憶を失ってた』っていう設定だったから言えなかった。

  でも、今なら気兼ねなく言える』

 

 

「『桂馬くん、大好きだよ』」

 

「絶妙にハモらせてきたな」

 

「うん。で、桂馬くんの返答は?」

 

「……1つ、質問させてくれ。

 お前はどうして僕の事が好きなんだ?」

 

「いや、むしろ好きにならない理由が無いんだけど……

 えっと……何というか……桂馬くんの居ない人生なんて考えられないよ!」

 

「それは答えになってない気がするが……まぁ、いいか。

 そういう事なら、僕も同じだな」

 

「…………はひ?」

 

「お前が居ない人生なんて酷くつまらなそうだ。

 ずっと一緒に居てくれ。かのん」

 

「…………」

 

「……お~い、かのん?」

 

(嬉しさのあまり気絶しているようだな)

 

「ちょっ、オイ!? 大丈夫か!?」

 

 

 

  ……数分後……

 

 

「う~ん……あ、あれ?」

 

「かのん! 大丈夫か?」

 

「あ……桂馬くん。

 何だかね、私、凄く良い夢見てたんだ。

 桂馬くんがプロポーズみたいな事を言ってくれるような夢。

 正夢にしてくれてもいいよ!」

 

「……コレは素なのか? それともボケてるのか?」

 

(恐らく素だ)

 

「……そうか。じゃあ次行くか」

 

「え、何? どういう事? 桂馬くん!?」

 

 

 

 

 『私が本気を出せば桂馬くんの攻略なんてラクショーだよ!』

 『ほぅ? 言うじゃないか。何をするつもりだ?』

 『そうだね、とりあえず……

  ……前夜祭でも一緒に回る?』

 『……そう言えばそんな時間だったな

  そうだな。せっかくだから見て回るか。

  お前はどの格好で行く気だ?』

 『えっと……エルシィさんの格好が一番無難だと思うけど……』

 『それだと私が回れなくなるんですけど?』

 『……あえて錯覚魔法を使わずに……』

 『どう考えても大騒ぎになるな』

 『となると消去法でまろんちゃんの姿だね。前夜祭って部外者入れたっけ?』

 『……制服姿ならバレないんじゃないか? 万が一バレたらエルシィから借りたって設定で』

 『よし、それで行こう』

 

 

 

(そりゃ楽勝だろうな。もう既に攻略は完了していたも同然だ)

 

「何を言ってるんだ。そんなわけが無いだろう」

 

「そうだよね。ラクショーとは言ったけどそこまでじゃないよ」

 

(……本人たちは気付いていないようだな。

 まぁ、いいか。その方が面白そうだし)

 

 

 

 『あ! やっと見つけた。この私を放っぽってどこほっつき歩いてたのよ!!』

 『美生か。バイトはいいのか?』

 『その辺は抜かりないわ舞校祭とその前後のシフトは空けてきたのよ』

 『そうか、なら気兼ねなく一緒に回ろう……と言いたい所だが、残念ながら先約がある』

 

 

 

「何か聞き覚えのある台詞だね」

 

「そりゃお前が声当てしたヒロインの台詞だからな」

 

「え? …………あっ、あの子の台詞か!」

 

  ※

 かのん編でサラッと出てきたツンデレヒロインのオマージュ。

 何となく思い出したので使ってみたり。

 

 

 

 『ようやく見つけたぞ桂木よ! 妾から逃げおおせるとでもアイタッ』

 『このアホ女神が。こんな人ごみで表に出てきて何やってやがるんだ』

 『少しくらい良いではないか!』

 

 

「もうちょい危機感というものを持っていて欲しかったんだが」

 

「アポロさんだからなぁ……

 一応翼まで復活してたし、いきなり殺されるような事は無い……はず?」

 

「どうだかなぁ……」

 

 

 

 『む? そっちのお主はウルカヌス姉様の宿主ではないか。2日振りじゃな」

 『……ねぇ桂馬、確か女神って狙われてるのよね?

  大丈夫なのコレ?』

 『大丈夫じゃないな』

 『大丈夫じゃないね』

 『大丈夫じゃないです』

 『何じゃお前ら揃いも揃って!』

 『御託は要らん。さっさと麻美に代われ』

 『むぅぅ、妾は女神なのに蔑ろにしおってからに』

 

  女神なんてありふれてるからな。

  リアルアイドルの方がまだレア度が高い。知り合いに2人しか居ないから3倍のレア度だな

 

 

「エルシィにすら同意されるという」

 

「女神なんてありふれてるって、中々凄い言葉だよね……

 そして私は一応桂馬くんの中ではレアキャラ扱いされてるのかな?」

 

「まぁ、属性がレアである事は確かだが、存在は身近だからレアではないな」

 

「これは……喜ぶべきかな? やった!」

 

 

 

 『お、桂木じゃん! って、一体何があったの?』

 『何がとは?』

 『いや、だって……どうして沢山の女の子と一緒に居るの?』

 『……成り行きだ』

 『一体どんな成り行きですか』

 

 

「ちひろと結まで出てきたな」

 

「明らかに悪目立ちしてたから、その場に居たちひろさん達に気付かれるのは道理ではあるね」

 

「そんなに悪目立ちしてたか。

 だが、僕に話しかけてくるのがちひろくらいだからあまり意味は無いか」

 

「……確かに居ないね。人通りの少ない所だったらリョーくんとかに話しかけられそうだけど」

 

「あんなパセリ、今なら楽勝だから全く問題ないな」

 

 

 

 

「……これで終わりのようだな」

 

「最終回ってわけじゃないけど、筆者さんが最終回でもいいやとか言ってた章が終わったね」

 

「コレ書くためだけに延々と話を続けてきたと言っても過言ではないな。

 まぁ、これで投げっぱなしというのもアレなんでしっかりキリの良い所までは描き切ったようだが」

 

「さてと、次は……投稿の章分けでは叡智の女神編の後編って感じだね。

 名付けるとしたら……暗躍編かな?」

 

「リューネが出てきたり、ハクアが隠密してたりしてた辺りか。妥当な名前だな」

 

「それでは、次回は『暗躍編』になります!

 また来週~」

 

「……と、お別れする前に残念なお知らせがある」

 

「え?」

 

「実はだな……ストックが尽きたようだ」

 

「ええっ!?」

 

「一応明日は時間があるから頑張って書くとの事だが、来週までに仕上げられる保証など全くない」

 

「そ、それじゃあ……来週に……また会えるといいなぁ……」

 

「全くだな。

 実際に間に合ったかどうかは来週の更新の有無で判断してくれ。

 間に合わなかったら更に1週間後に出すそうだ」

 

「で、では、また次回!」

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