「はいどうも皆さんこんにちは! かのんです!
第38回キャラコメンタリー始めます!」
「女神編"終幕"だ。
最終回になるだろうな」
「……最後まで、頑張ろうか。
それじゃ、VTRスタート!」
『……こっちの料理はハクアが作ったのか?』
『え? そうだけど……よく分かったわね』
『かのんの味付けの癖は大体把握してるからな。後は消去法だ』
『……お前、味付けの傾向なんて気にしてたのね。
食べられるなら何でもいいんじゃないかと思ってたわ』
『それも間違っちゃいない。エルシィの料理かどっかの甘味ラーメン以外は特に気にせず食う』
『甘味ラーメン? どんなゲテモノよそれ……』
『ホントだよな。どうしてあんな発想に至ったんだろうな。
それはさておき、かのんの料理、と言うか弁当は結構な頻度で食べるからそんくらいは気にせずとも気付く。それだけだ』
『どんな頻度で食べてんのよ……』
「☆☆☆っ!」
「日本語を喋れ」
「私のお弁当を結構な頻度で食べる。
これはもうプロポーズと言っても過言じゃないね!!」
「過言だ」
4人揃って家を出て、まず天理の家へと向かう。
玄関のインターホンを鳴らすと足音が聞こえてくる。
『……そろそろ来る気がしてたよ。今日は……大所帯だね』
『確かにな。ここに来る時はいつも誰かと一緒だったが、この人数で来るのは初めてだ』
『私としてはもっと高い頻度で1人で来てほしいのですが』
『前向きに検討しておこう』
「私がたまに使う『機会があれば是非~』と同じ意味の回答だね」
「本作では全く使ってなかったし原作でも1回しか聞いたこと無いぞそれ。
まぁ、確かに意味はそうなんだが」
「筆者さんの中ではもう本当に物語が終わってる感じだね。
天理さんが少し可哀想になってくるよ。私が言えた事じゃないけど」
『……かのん、じゃなくてまろんでいいんだよな?
一つ訊ねたい事があるんだが』
『ん? なあに~?』
『……どうして手を握ってくるんだ?』
『握ってるだなんてそんな。ただちょっと繋いでるだけだよ♪』
『いや、軽く振りほどこうとしても一切離れていかないのは『繋いでいる』ではなく『握っている』という表現の方が正しいだろう』
『つまり、桂馬くんが振りほどこうとしなければ万事解決だね!』
『その解法はどうなんだ? ゲームの限定版だけをプレイして満足しているかのような違和感を感じるんだが』
『どんな例えなのそれ!?』
『…………掃除をしていて大きな家具の隙間を見なかった事にして満足しているかのような感じだな』
『その例えならよく理解できるよ。確かにそうだね……』
『……納得はしても手を離す気は無さそうだな』
『うん!』
「かのんがぐいぐい来るなぁ……」
「嘘を吐く必要が無くなった私を阻むものはもう何もないからね!!
遠慮なく行くよ!!!」
「……その行動力を単純に感心すべきなのか、それともコレを今まで押さえこんでいた事に感心すべきなのか……」
「今までの私もこれからの私も全部同じ私だよ。
まとめて好きになってくれたら嬉しいな」
「……善処しよう」
『……桂木さん。どういうつもりでしょうか?』
『ん? ディアナか。どういう意味だ?』
『その人との距離感の事です!!
従妹とはいえ……いや、従妹ですら無いんですよね!?
あなたには天理という許嫁が居るというのに……どういうつもりですか!!』
『いや、許嫁ちゃうから』
『どちらかと言うと許嫁は私の方だね』
『……どちらかと言うとな』
『どういう意味ですか!!
今まで黙っていましたがもう限界です。そこの方との関係を洗いざらい吐いて……』
ディアナが台詞を言い切る前に、動いた人物が居た。
天理が、僕のもう片方の手、と言うか腕に抱きついてきたのだ。
『んなっ、何してる! 離せ!』
『……やだ。離さない!』
「天理は自分から積極的に動くタイプではないが……こんだけ見せつけられたら行動するんじゃないかなとの事だ」
「過去編のメインヒロインと言っても過言じゃない人だもんね。
度胸だけは目を見張るものがあるよ」
『こんな目立つ状態で、部外者の格好をした奴を2人も連れて入るのは流石に無理だ。
お前たち、手を離してくれないか?』
『うぅん……正論だね。仕方ないか』
『…………』
かのんは納得しながら手を離し、天理も無言で手を離した。
その直後、天理の身体が一瞬ガクッと沈み、すぐに元に戻った。
『……天理は気を失ってしまったようですね』
『おいおい、大丈夫か?』
『問題ありません。桂木さんとの長時間の接触で緊張し過ぎただけです。
手を離した瞬間に緊張の糸が切れてしまったようですね』
『限界を越えてまで抱きつこうとするなよ……』
「執念だな」
「意地だね。私も見習いたいくらいだよ」
「……お前が限界を越えるまで頑張ったら一体どうなるんだ?
見てみたいような気もするが……」
「え、ホント? よ~し、頑張っちゃうよ!」
「……やっぱり止めといてくれ」
ハクア達が透明化で姿を消し、残ったのは僕とエルシィだけだ。
それじゃ、女神を回収していこう。麻美と美生と歩美だな。
……軽音部 部室……
『重要な時に世話になっている部長と副部長と会計の方々がこの部屋を使いたいと仰るなら構いませんが……私たちが居るとは考えなかったのですか?』
『居る可能性は考えてはいたが、居るならどうせ歩美も呼ぶ事になるんでここでいいかなと』
『女神だの地獄だの、訳の分からない事に悩まされるのは鬱陶しいです。早く解決して下さいね』
『鬱陶しいというのは賛成だ。祭りが始まる前に……というのは流石に無理だが、可能な限り早く解決して気兼ねなく祭りに参加するとしよう』
「結さんが完全に巻き込まれてるね。あとちひろさんも」
「そうは言ってもここ以上に密談に適した場所なんて思いつかなかった。
軽音部の連中には靴一足以上の貸しがあるからこの機会に取り立てておこう」
「靴かぁ……そう言えばそんな事もあったね。
今も使ってるの?」
「ああ。歩美が選んだ靴なだけあってかなり便利だ。
遠征には欠かせないアイテムになっている」
「……私も普段遣いができる何かを送るべきだろうか? う~ん……
……あ、そうだ! 私を送ろう!」
「そんな名案を思いついたみたいに言われてもだな」
『まず、簡潔に言わせてもらおう。
女神が6人全員揃った。
悪魔の本拠地ももう分かってるからもうちょっとしたら殴り込みに行くぞ
で、女神たちに訊きたいんだが、今すぐ殴り込みに行くのと夜まで待って夜襲するの、どっちがいい?』
『桂木、そんな漠然と言われても簡単には決められない。
どちらの方が良いかなんて場合によるとしか言いようがない。
まず……場所はどこなんだ?』
『確かに、その辺も説明しないとな。
うちの近くの海の『一本岩』で全員理解できるか?』
『一本岩? ……歩美の記憶にちゃんとあるようだ。
…………遮蔽の無い海の上か。であれば、夜行くのは逆に危なくなりそうだ』
『……ああ、そうか、光ってたら逆に目立つよな』
『そういう事だ。日が照っている正午に行くのが一番だろう』
「マルスさんの申し訳程度の軍神っぽさだね」
「原作ではただの脳筋だった気がするが、軍神を名乗るからにはこれくらいの事はやってくれるだろう。
……と、筆者が震え声で言っていた」
「……原作だと『なんか強そう(リューネさんに瞬殺される)』で終わってたからね……
活躍と言えば……せいぜいリョーくんを吹っ飛ばした事くらいかな?」
「あとハクアを撃退してたな。何故か都合良く傷を一切付けずに」
「ご都合主義と言ってしまえばそれまでだけど……実は軍神の直感で傷付けちゃダメだと判断していた……?」
「妙に尖ったスキルだな」
『……どっから話すべきかな。
そうだな……美生、今お前が一番知りたい事って何だ?』
『そりゃもう色々と訊きたい事はあるけど、一番は……そこの従妹の事ね。
一体何なのその子!!』
『まぁ、そこだよなぁ……』
「どやぁ!」
「絵が無いと分かり辛いが現在進行形でくっついている最中だ。
不完全燃焼で終わるよりは大炎上させた方がずっとマシなんである意味サポートだが……」
「桂馬くんの攻略はもう既に始まってるからね。
自重する気は全くないよ!」
『名前は西原まろん。僕の従妹。
3月3日生まれの16歳で僕と同年代。
親の都合で今現在は僕の家に居候して美里東高校に通っている。
……彼女の『設定』はこんな感じだったな』
『せ、設定? いや、ちょっと待ちなさい。居候ってどういう事よ!?』
『ああ、そうか。美生はそこすら知らなかったか』
「そう言えばそんな設定だったね。よくスラスラと出てくるね」
「こーいう細かい設定は伏線が仕込まれている事が多いからな。
この程度を暗記できなければギャルゲーマーは名乗れん」
「ほ、ホントかなぁ……?」
『居候自体は実在するんだよ。料理が得意な女子がな』
『……ちょっと待って、その居候ってのは従妹じゃないのよね?』
『ああ。血縁的には赤の他人だ』
『どういう事よ!? 親戚ならまだしも、そういうのじゃない女子と一緒に住んでるって事よね!?』
『待って待って! それも気になるけど、結局そこの従妹……っぽい人は一体何なの!?』
(かのん、やれ)
(おっけ~)
『よくぞ訊いてくれました。
ある時はスーパーアイドル。
ある時は平凡なベーシスト。
ある時は桂馬くんの家の居候。
そしてその正体は……!』
ここでようやく錯覚魔法と解いたようだ。理力と魔力が伝わってきた。
歩美や美生といった知らなかった連中が驚いた顔をしている。
『初めまして……じゃない人も多いけど、初めまして。
桂馬くんの許嫁こと中川かのんです!』
「お前、ノリノリだな……」
「何となくノリでやったっていう面もあるけど……とりあえず堂々と宣言して牽制してみたよ。
桂馬くんを諦めないなら皆は恋敵だからね」
「そんな殺伐とした事を考えてたのか」
「ヴィンテージとかよりもそっちの方がよっぽど重要だから。私にとっては」
「尤もだな」
『えっとだな……とても一言じゃ言い表せないような深い事情があって一時的に許嫁になっていたのは事実だ。
だが、現在はそんな事は全く無い。許嫁というのはコイツの戯言だから気にしないでくれ』
『間違った説明があったら即座に指摘しようと思ったけど、残念ながら全部事実だね。
改めまして、元・許嫁の中川かのんです! 宜しくお願いします!』
『も、元? それだったら別に……
って、いやいや、良くないですよ!! 何なのですかあなたは!!』
『か、かのんちゃんが許嫁ってどういう事なの桂木!?』
『……桂馬君、私ですら知らない情報なんだけど……飛ばしすぎてない?』
「元・許嫁。
つまり、既に結婚して奥さんになったって事だね!」
「違うからな? 今は置いておくとしても当時は絶対に結婚してなかったからな?」
「う~ん……それならタイムマシンで過去に戻るしかないね」
「何故そうなる」
ダァン!!!!
『皆さん。少し落ち着いてください。桂木さんの耳は2つしか無いのです。そんないっぺんに話していては埒が明きませんよ?』
『だったらどうしろと言うのですか!!』
『……ではルールを決めましょう。
質問は1人ずつ順番にする事。ああ、女神と宿主は合わせて1人としておきましょう。
質問はなるべく簡潔にする事。
桂木さんは決して嘘を吐かない事。
答えたくない事であれば無回答でも構いませんが、その場合は再質問を受け付ける事。
これでいかがでしょうか?』
「15人の同時進行なんて無理だと察した筆者が策を凝らした結果だな」
「桂馬くんだって流石にいっぺんに答えるのは無理だもんね。
結さんが居てくれて助かったね」
「全くだな」
『じゃあ歩美、質問は?』
『……質問って言うかルール確認なんだけど、いい?』
『それが質問か?』
『違うわよ!!』
『ハハッ、冗談だ。で、何だ? ルール確認であればノーカウントで構わんぞ』
『それじゃあ……この質問の順番って何周するの?』
『時間の許す限り、全員が満足するまでだろうな。
質問は1回こっきりという事はまず無いだろうから安心してくれ』
『2周目以降の順番ってどうなるの?』
『……偶数周目は逆にするか。
お前は次の周は最後な』
『分かった。じゃあ、質問。
桂木……あんたに好きな人は居る?
一応言っておくけど、ゲームのキャラは除いて。この現実世界で、好きな人は居る?』
『答えは『NO』だ。
今現在、現実世界の住人で僕が恋愛感情を抱いている相手は存在していない』
『……分かった。ありがと』
「そう言えば原作でも歩美さんの質問を受け付けてたね」
「そう言えばそうだな。ルール設定自体は特に意識していなかったはずだが、この辺のやりとりは原作を微妙に意識しているな」
「原作ではルール確認すら受け付けてなかったね。
ヴィンテージから逃げ回ってる最中だから仕方ないと言えば仕方ないけど」
「状況が状況なもんだから『私の事が好きか』ではなく『そもそも好きな人が居るのか』という質問になっているな」
「……どうせ当時はどうこうとか言われるんだけど私のアイデンティティでもあるから一応言っておくよ。
桂馬くんの嘘つき!!」
「はいはい」
「あれ? 言い訳すらされなくなった……?」
「いや、だって、お前がもう言ったからな」
『じゃあ次、麻美』
『……えっ、あ、私もいいの?』
『ああ。特に無いならパスでもいいが、どうする?』
『……じゃあ、私もルールの確認。
質問の相手って桂馬君だけじゃなくてかのんさんでもいいの?』
『そうだな……まあ良いんじゃないか?』
『私は構わないよ。嘘偽り無く、誠心誠意答えるよ』
『分かった。じゃあ質問します。
かのんさんが桂馬君の許嫁を自称しているのは何で?』
『そこかぁ……最低限だけ答える事もできるけど誤解を招きそうだね。
結さん! ちょっと黒板借りるよ!』
『どうぞご自由に。後で消してくださいね』
「……当時はちゃんと真面目に答えていたが、質問ゲームじゃなかったらはっちゃけた回答をしていそうだな」
「な、ななな何の事かな~」
『結、何かあるか?』
『私も対象だったのですか!? 何も考えてませんよ』
『じゃあ後回しって事で。次のターンまでに考えるか、もしくはパスしてくれ』
『……一応考えておきます』
『小阪ちひろ。貴様だ』
『私も質問して良かったのね……考えてないって言うか色々とわけ分かんなくて情報をまとめてる最中だから結と同じように後回しでいい?』
『構わん』
「本人達は気付いていないが、『駆け魂狩り』という意味ではガッツリ当事者だからな。
一応平等にターンを回したが……あまり意味は無かったか」
「知らない事を質問とかしようが無いもんねぇ……」
『ハクア、何かあるか?』
『お前に対する質問があったら昨日の夜に言ってるわよ』
『それもそうだな。じゃあパスで……』
『ちょ、ちょっと待って! ちょっと気になったんだけど……』
割り込んできたのは先ほど質問を後回しにしたちひろだった。
何か考えついたのだろうか?
『どうした?』
『最初から自然な感じで堂々と居たから訊くのを忘れてたけど、そのヒトって誰?』
「当事者だという自覚が無いからこそ、こういうある意味どうでもいい質問をしてくれるのは助かるな」
「ど、どうでも……う~ん、微妙に間違ってないから困るね」
『よし、じゃあハクアの質問枠でそっちに答えてもらおう。
ハクア、自己紹介頼む』
『自己紹介か。ん~…………
……まず、私の名前は『ハクア・ド・ロット・ヘルミニウム』よ。
皆からはハクアって呼ばれてるわ』
『が、外国の方? 日本語お上手ですね』
『え、分かってくれる? 結構苦労したのよこれ』
『コホン。私の立場としては、駆け魂隊の地区長……もとい、元地区長ね。
ザックリと言うとエルシィの上司みたいな立場だったわ。と言っても仕事内容はエルシィと大して変わらないけど』
『エリーと同じ? って言うことは、桂木みたいな人と一緒に女の子を恋に落とす仕事を……』
『違うわよ! コイツと一緒にしないで!』
『ひっ! ご、ごめんなさい』
『あ……こっちこそごめん。事情を把握してなかったらそりゃそういう感想になるわよね。
『恋愛』を使うのはあくまでも桂木の得意分野。私の
「……つい忘れそうになるが、ハクアは巨大な鎌を肩に担いでいる状態だ。
ちひろが微妙に距離を取ったり、凄まれただけで怯えるのも無理は無いな」
「えっ、この時出しっぱなしだったの!?
羽衣さんに仕舞ってたとかじゃなくて?」
「駆け魂を探してる最中に普通に鎌を担ぎながら歩いてたくらいだからな……
多分本人にはアレが危険物だという自覚は無い」
「た、確かに……」
「お前のスタンガンと同じ……いや、何でもない」
『……天理。お前のターンだ』
『あっ、じゃあ……』
『では私から。あなたと、そこの中川さんは今現在同居しているのですよね?』
『それは質問……ではなく確認だな。その通りだ』
『どういう事なのですか! どうしてそんな事になっているのですか!!
肉親でもない男女が同じ屋根の下で過ごすなど、は、はしたないです!!』
「女神様がナチュラルに質問権を奪い取るという」
「だってディアナだしな。
筆者からはある意味エルシィと同レベルのポンコツと言われた」
「それは流石に言いすぎだと思うけど……まぁ、ディアナさんだもんね」
『これで一周だな。
美生、質問あるか?』
『質問、質問ね……
言いたい事はいくらでもあるけど、1つ質問するのであれば……
……桂馬が私にくれた言葉は、全部ウソだったのよね?』
『それが質問か。
……全てが嘘だったというわけではない。
しかし、お前が今一番知りたいであろう事、『僕がお前を好きか』という事であれば、答えはNOだ』
『……そっか。そうよね。
最初の質問の答えで分かりきってた事だわ』
『一応悪かったとは思っている。だが、反省する気は無い。
あの時はお前を騙し通すのが最善だった。後悔はしていない』
「美生さん、強くなったね」
「攻略編では父親の死を受け入れて、それを背負って前に進むという方向で解決したからな。
そういう方向性で成長した美生をイメージしたらしい。
答えを覆す事はできない。それを理解した上で進むだろう、と」
「是非とも桂馬くんにも見習ってほしい姿勢だね!
私の事が大好きだっていう事実を受け入れて堂々と宣言して欲しいよ!」
「勘弁してくれ」
『嘘を本当にしちゃえば、万事解決って事よね』
『……それはつまり、この僕を攻略すると、そう言っているのか?』
『攻略? 攻略って言うと……そういう意味よね? その通りよ!』
「こんな事を言っているが、美生がこの後何をどう頑張ったのかは筆者は全く考えていないようだ。
ただ、簡単には諦めないだろうな」
「……本作が続いていたら血で血を洗う戦いになっていた可能性も……?」
「一応有り得るのが怖いな」
『……そんな事を言った物好きはお前で2人目だ。
ま、せいぜい頑張れ』
『当然よ! って、2人目? 1人目は誰?』
『それはもう明確に質問だな。次のターンを待て』
『むぐぐぐぐ……あ、そうだ。私が最後だったから次は私が最初よね!』
『いや、結とちひろを飛ばしてるからまず2人に話を……』
『勿論パスですよ。私が美生の味方をしないわけが無いでしょう』
『私も気になるからこんな所で中断しないでよ! 一体誰なの!!』
『……分かった。じゃあ再び美生のターンという事で』
『言うまでもない気がするが……』
『1人目っていうのは勿論私だよ。桂馬くんの事は誰にも譲る気は無いよ!』
『……だそうだ』
『いや、譲る気は無いって言ってもそもそもあんたのものでもないでしょ』
『うぐっ、痛い所を突いてくるね……
そうなんだよね。結局は桂馬くんの返事次第。
私は他の人に比べて有利な立場に居るとは思うけど、確実に勝てるわけでもないんだよね』
『そもそも僕が
お前たちももっと有意義な事に時間を割いたらどうだ?』
『そこまで言うの? そんな事言われたらなおさらやる気が出てきたわ。
絶対に見返してやるんだから!!』
『へぇ、気が合うね。私も絶対に降りないよ!』
『……もう好きにしてくれ』
「お前と美生は意外と気が合うんじゃないか、というのはある読者からのコメントだったな」
「へ~、そうなんだ」
「原作ではお前たちには全く絡みが無かったから真相は不明だがな。
お互いに肩書きに萎縮せず、逆に媚びる事も無い」
「う~ん、確かに萎縮はしないね。
没落令嬢じゃなくて本物のご令嬢でも……いや、少しは影響出るかも」
「結相手に萎縮しないなら大丈夫だと思うが」
「攻略の時は何というか『世間知らずのお嬢様』って感じだったからそこまででもないけど、今の結さんは色々と凄いからねぇ……」
「……そういうもんか」
『ちょっと待った! 何で2人で盛り上がってるの。私だって桂木の事が、そ、その……す、好きなんだからね!』
『えええええっっ!? 歩美までぇ!?
あれ? でも、桂木が言ってたアレは嘘だったって事だよね? でも歩美は桂木が好きで……えええええっ!?』
『妾の事を忘れてもらっては困るのじゃ!
桂木は妾のものじゃ!』
『だそうです。あ、私は別にいいから。桂馬君本人にも他の人達にも勝てる気がしないし』
「わ~、桂馬くん人気者だね~」
「はぁ……勘弁してくれ」
「筆者さんとしてもメインヒロインは私って決まってたから、決まってたから! ちょっと憂鬱な気持ちで書いてたみたいだね」
「2回も言うな。分かってるから」
『4名もの女子からの告白ですか。酷い有様ですね。
桂木さん。一体どう収拾を付ける気ですか?』
『さぁなぁ。こんな奴放っといてくれればいいのにな。この物好き共め』
『そう自分を卑下するものではありませんよ。
複数の女子の心を弄ぶのは最低の一言に尽きますが、一応悪かったという自覚はあるのでしょう?
そういう事であれば目的の為に進んで泥をかぶる事ができる人間であるという評価もできます』
『買いかぶりすぎだ。僕はただ効率が良い選択肢を選んだだけだ』
『そうでしょうか? まあいいでしょう。
私個人としては美生を幸せにしてほしいです。
あなたと結ばれれば幸せに……少なくとも不幸になる事は無いでしょう』
『おい、何で言い直した』
『……許嫁とはよく言ったものですね。
結婚の目的は決して相思相愛の恋愛感情だけではないのですから』
『? どういう意味だ』
『私の口からはこれ以上は言えません。
私から言える事は……ハッキリと答えを出してほしいという事です』
『……肝に命じておこう』
「結さんが一番客観的に物事を見てる気がする」
「隙あらば美生の味方をするが、本人は努めて中立を保っているようだ。
少なくとも女神に関しては当事者ではないからこその一歩引いた視点でよく見えているようだな」
「本当に許嫁が居てもおかしくない結さんから許嫁に関してコメントを貰ったね。
この時は『政略結婚』的な意味を考えて『恋愛感情が最優先じゃない』って言ってるみたいだね」
「身も蓋もない言い方をすれば『結婚した方が都合が良いから結婚する』という事だな。
流石は本物のお嬢様だ」
『……桂馬君。次は私の番だよね?』
『そうなるな』
『それじゃあ……手、出してくれるかな?』
『別に構わんが……』
天理に向かって手を差し出す。
差し出されたその手を、天理が両手で包み込んだ。
『な、何だ一体……』
『…………………………』
天理は目を瞑って黙っている。
他の皆もその雰囲気に気圧されたのか固唾を飲んで見守っている。
そんな居心地の悪い時間が数十秒ほど過ぎて、天理は目を開いた。
『……そっか。分かった。ありがとう』
『ああ……一体何だったんだ?』
『……後で教えるよ。
ちょっと席を外すね』
『あ、おい!』
「『女子との接触』だけで僕が身体を強張らせた事を感じ取り、その上でかのんの時はそんな反応はしていなかった事に気付いて絶望した場面だ。
……解説が無いと意味不明な場面だな」
「朝の登校シーンでも桂馬くんの声が微妙に震えてたし、今のもちょっと震えてるけど……これだけで理解しちゃうっていうのは流石は天理さんなのかな。
私でも気付けなかったのに」
「お前に対しては無反応だからな。気付けないのも当たり前だ」
『ちひろ、何かあるか?』
『え、私の番? えっとそれじゃあ……
あ、そうだ。さっき何か『恋愛を使って攻略』とか言ってたよね。しかも7人も。
その7人って一体誰なの?』
『……順番に言うのであれば……
・歩美
・かのん
・麻美
・栞
・スミレ
・月夜
・天理
以上になるな』
『……んんっ? 何か聞き覚えのある名前が多数あった気がするんだけど!?』
『より具体的に言うなら……
・そこに居る高原歩美
・ここに居る中川かのん
・そこに居る吉野麻美
・うちの学校の図書委員、汐宮栞
・他校生の上本スミレ
・うちの学校の天文部部長、九条月夜
・さっきまでそこに居た鮎川天理
以上だ』
『ほぼ全部知ってる名前っ!?
え、ちょ、マジで? 歩美とかのんちゃんとあさみんに加えて、汐宮さんに九条さんに店長まで!?
さっきの、その……鮎川さん? 以外は全員有名人じゃん!!』
『……栞と月夜はまだうちの学校所属だからまだいいとして、スミレも分かるのか』
『トーゼンだよ! 最近人気の激甘ラーメン店の店長さんの事だよね!?』
『あいつ有名になったなぁ……』
「スミレの名前を出してちひろに伝わるっていう。
ちひろなら流行とか珍しいものには目敏いだろうとの事だ」
「それよりも桂馬くん! 大事な所があるよ!
ほら、私の名前を呼んだ所のちょっと前!」
「……解説したかったら自分でやれ」
「え~、しょうがないなぁ~。
歩美さんと麻美さんは『そこに居る』なのに私だけは『ここに居る』だね!
一文字しか違わないけど大事な事だよ!!
これにはある読者さんも目敏く反応してくれたけど、とっても嬉しかったよ!」
『結、何か質問あるか?』
『ふむ……では、その駆け魂に取り憑かれた場合の具体的な悪影響を教えていただけますか?
放っておくとロクな事にならないのは察する事ができますが、もしそうでないのならあなたの行動は看過できないものになります』
『尤もな意見だ。
女神と対を成す駆け魂は負の感情を糧とする。
その糧を生み出す為に心のスキマをより広げていく。
その結果、精神的にかなり不安定になり、突拍子もない行動を取るようになる。
例えば……どっかの陸上部員は大会を仮病でドタキャンしようとしたりとかな』
『うぐっ!』
『? 何の話ですか?』
『き、気にしないで!』
『……ああ、はい。気にしないでおきます』
「結さんが全てを悟った優しい表情をしてるね」
「そら気付くわな。歩美が陸上部員だとか駆け魂が居ただとかの予備知識が無くても気付けるだろう」
『駆け魂……肉体を失った悪魔は再び肉体を得ようとする。
肉体を得て転生する事こそが駆け魂の最終目的だ。過程の悪影響はついでに過ぎない』
『……どういう意味でしょうか?』
『肉体を得る為の方法、それはある意味かなり簡単な方法だ。
誰かの子供として産まれ直す。ただそれだけだ』
『……そういう事ですか。
ある種の奇跡の御技を起こすのが神の子ではなく悪魔というのはとんだ皮肉ですね』
『女神も……天界人もやろうと思えば似たような事はできるらしいけどな』
「駆け魂の転生メカニズムは原作では明言されてなかったんで本作では独自に解釈してみた。
……で、真相はどうなんだ、メルクリウス」
(転生の方法にも複数ある。駆け魂がどうやってるのかは知らん。以上だ)
「上手いこと誤魔化したね……」
『……少し休憩するとしようか。ちょっと散歩してくる。
かのん、何か用事があればメールか何かで連絡してくれ』
『ん、分かった。行ってらっしゃい』
『はい。それじゃあ……質問ゲームを続けようか?
知識面の話なら桂馬くんに答えられる事であれば私でも大体答えられると思うけど』
『そんな台詞が自然と出てくるのですか……これはまた……』
『? どうかしたの結さん』
『……いえ、何でもありません。私は構いませんよ。次はどなたでしたっけ?』
『結さんの質問が終わって、その前は……麻美さんだね。何か質問ある?』
『えっ、うーん…………パス。
あっ、違う。アポロにパス』
『というわけで妾からの質問じゃ。正直に答えてもらうぞよ』
「ああ、僕が部屋を出た後も結局続けてたんだな」
「うん。私でも大体答えられるからね」
「……『僕が好きな人は誰か』とか訊かれたらどう答える」
「そんなの私に決まってるじゃん! って応えるよ♪」
「オイコラ」
「あはは、冗談だよ。
流石に桂馬くんの心情に関する質問はパスしてたよ。推測はできるけど正確に答える事はできないから」
『それでは質問じゃ! お主は桂木の事をどう思っておるのじゃ?』
『? 世界で一番大好きな人だよ?』
『っ!? お、お主、よくそんな事を真顔で言えるのぅ……』
『? だって、事実だし』
『そういう問題ではないわい!
ぐぬぬぬぬ……だ、だがしかし! 本人の前ならば簡単には言えぬはず……』
『? 昨日同じような事を桂馬くんに言ったけど』
『ぐはっ!!』
『というわけで妾からの質問じゃ。正直に答えてもらうぞよ』
「お前……よくそんな事を平然と言えるな」
「ここで躊躇いを見せたら他の人に付け入る隙を与える事になるからね。
無理をした……ってほどじゃないけど、頑張って努めて冷静に返したよ」
「何だと? これって素じゃなくて作ってたのか!?」
「うん。桂馬くん本人に言うんだったら大丈夫だけど、他の人の居る所で告白するのはちょっと勇気が要るよ」
「普通逆では……いや、お前らしいか」
『次は歩美さんのターンだね。
ってあれ? どうしたの?』
『……あ、ううん、何でも無い。大丈夫』
『う〜ん……分かった。どうする? 桂馬くんが戻ってくるまで保留でもいいけど』
『……大丈夫。かのんちゃんに質問。
そこの青山さんとかもだけど、恋愛を使わないで駆け魂を追い出した人も居るんだよね?
その人たちは誰なの? 青山さん1人って事も無いわよね?』
『ん〜……分かった。
ついでだから全員を時系列順に並べてみるよ』
「私の告白に恐れ戦いてるみたいだね!」
「アイドルが恋敵というのは相当キツいだろうな。
フツーに考えたらどう考えても勝ち目が無い」
「……私、アイドルで良かった!」
「そんな事を真顔で言われてもな」
・高原歩美
・中川かのん
・吉野麻美
・汐宮栞
✓五位堂結
✓小阪ちひろ
✓榛原七香
・上本スミレ
・九条月夜
✓長瀬純
・鮎川天理
✓おばあちゃん
✓生駒みなみ
✓青山美生
✓春日楠
✓春日檜
『以上! 計16名が攻略対象者だよ。
説明するまでもないと思うけど、チェックマークを付けた人が恋愛を使わなかった人達だよ』
「これは読者から指摘された事だが……
5番目に五位堂結を、
9番目に九条月夜をそれぞれ攻略している。地味な奇跡だな。
ランダム抽選が始まったのは麻美以降、栞からなんでこの並びは純然たる偶然だ」
「……やっぱり抽選用トランプに何か取り憑いてる……?」
「筆者が修学旅行のお土産に買っただけの金ピカである事以外は何の変哲もないトランプなんだがな」
「へ~……えっ?」
(もしもし、かのん! 聞こえてるか!)
『わひゃっ!』
『どうしたのかのんちゃん』
『だ、大丈夫。何でもない』
突然響いてきた声の正体は桂馬くんの念話だ。
今までは同じ部屋の中でしか使ってなかったけど、契約の首輪の機能を乗っ取って通話してるから通信距離はほぼ無限だ。
突然話されるのはビックリするから止めてほしいけどね……
(どうしたの突然?)
(女神たち全員に戦闘準備させて旧校舎裏まで来てくれ。大至急!)
(っ!! 分かった!!)
どうやら只事ではないらしい。急がないと。
『皆! 戦う準備を整えて私に付いてきて!』
『どうしたのだ? 敵襲か!?』
『分かんない。今、桂馬くんから急いで来てくれっていう通信が入ってきた。
とにかく急いで!』
流石は軍神と言うべきか、真っ先に動いたのはマルスさんだ。
私の言葉に即座に反応して立ち上がっていた。
「マルスの取ってつけた軍神っぽさその2だな」
「単純な判断の早さだから原作でもこれくらいありそうだけどね」
「ああ。そして変な誤解とかして突っ走りそうだな」
「……そ、そうだね……」
『場所はどこだ?』
『旧校舎裏!』
『分かった。先に行っている! 皆もすぐに来てくれ!!』
そう言ってガラッと窓を開けてベランダを越えて飛び降りていった。
私が念話を聞きながらナビゲートするつもりだったんだけど……まあいいか。近くまで行けばきっと分かるはずだ。
「ベランダか……確かに早いな」
「え? ……あ、そう言えばベランダから出るって普通じゃなかったね」
「…………おい」
「だ、だって、その方が便利じゃん! 早いんだもん!!」
『ちょっ!? 歩美……じゃない人!? 大丈夫!?』
『問題ないのじゃ。翼まで復活しておるなら普通に飛べるからのぅ。
さ、麻美、妾たちも続くとしよう』
『うん……お願いね、アポロ』
アポロさんも続いて窓から飛び降りていった。
「……そうか、アポロも飛べたっけな」
「翼が復活してから飛べるようになったみたいだね」
目撃者が居ない事を願いながら私も窓へと向かう。
……が、それを止める声がかかった。
『ちょ、ちょっと待ってくれない?』
『? 美生さんどうかしたの?』
『行きたいのはやまやまなんだけど……』
『……済まないが、手頃な人形を持ってないだろうか?
美生の家には丁度良いものが無かったのだ』
『……美生さん、それはどうなの……』
『だってしょうがないじゃない! 人形なんて買うお金が無いわよ!
ウルカヌスが喜ぶような人形はどれもこれもバカ高いし!
アレを買ってたらオムそばパンがいくつ買えるのって話よ!!!』
『オムそばパンか。それじゃあ仕方ないね』
『納得するのか!?』
流石に冗談だよ。3割くらいは。
「う~んお金かぁ……そういう意味では美生さんとウルカヌスさんは相性悪いね」
「いやいや、ちょっと待て」
「月夜さんが持ってるルナとかも結構高そうだし、アレに似たものとなると……え? 桂馬君どうかした?」
「オムそばパンが絡むなら仕方ないというのが冗談だというのはいい。
だが、冗談が3割ってどういう事だよ。残りは何だ」
「え、本気だけど?」
「…………そうか」
『あ、そうだ。エルシィさん』
『何でしょうか?』
『羽衣さんを使えば人形も作れるんじゃない?
理力で動く羽衣さんだし凄いのが作れそう』
『なるほど。一理あります。
デザインはどうしましょうか?』
『前に月夜という娘が持っていたあの人形、あれはかなり使い勝手が良かった。
できればあれと同じものが良い』
『月夜さんに怒られそうだなぁ……言葉遣いはできるだけ気をつけてね』
『……善処する』
「理力で自在に形を変える羽衣と物体に魂を吹き込むウルカヌスの能力の相性は結構良いのかもな」
「と言うか羽衣さんの便利っぷりは異常だよ。ドクロウさんに頼んで私の分含めて全員分欲しいくらいだね!」
「……お前も使うのか」
「うん。高い所に手が届かない時とか地味に便利なんだよ!」
「……何というか、平和だな」
『なるべく早く帰ってきて下さいね。
ステージ本番に向けてもう少し練習したいので』
『……うん。分かった。
さっさと片付けて、日常に戻ってくるよ』
『では、行ってらっしゃいませ。
ご武運を』
「ここに居る連中は女神たちを除いて『世界を救いたい』だなんて高尚な意気込みは持ってない。
まぁ、そもそも事情をあまり把握してない奴も居るからそいつらにちゃんと説明してやれば正義感に燃える奴は居るだろうが」
「私にとって、私たちにとっては大切なのは日常であってその邪魔になるから蹴散らすってだけだもんね。
ヴィンテージめ、私と桂馬くんのラブラブな時間を奪った罪は万死に値するよ!」
「ラブラブて、お前なぁ……」
(……おい桂木、姉さま方はともかく私を除くな。
私はお前たちを観察してれば満足だ)
「それはそれでどうかと思うぞ?」
『大丈夫なんかな、かのんちゃん達』
『さぁ? 分かりませんよ。
ですが、私達にできるのはただ祈る事くらいです。
今は信じて待ちましょう』
『……それもそっか。
それじゃ、練習やろっか。人が殆ど居ないけど』
『そうですね。そうしましょう』
『丁度良かったです。ここの部分がどうしても上手く弾けなくて練習したかったのですよ』
『ああ、ここですか。この部分はコツがあって……』
『『ん?』』
「……そう言えば出発してなかったお前」
「エルシィさんは最後の方でもやっぱりエルシィさんだね。
なんだか逆に安心するよ」
『どうかしましたか、お2人とも』
『……エリーさん。あなた女神持ちでしょう。
と言うか女神でしょう! さっさと行って下さい!』
『あ、そ、そうでした! 行ってきます!!』
そう言ってエリーさんは慌ただしくベランダから飛び降り……
ガッ
『あれ、足が引っかかってっ、わぁ〜〜〜〜〜…………』
ドサッ
『……ホントに大丈夫なんかな?』
『た、多分……?』
「……一般人に心配される女神、か」
「け、怪我は無かったみたいだから……うん」
時は少し遡る。
部室を飛び出した天理は人気の無い所で物思いに耽っていた。
『……そろそろ戻ろうかな。桂馬君にも心配かけちゃうし』
『桂木さん相手であれば少し心配をかけるくらいの方が丁度良さそうですが』
『そうかなぁ……だとしても戻るよ』
『そうですか。ところで一つ訊ねたいのですが……』
『どうしたの?』
『……ここ、どこでしょう?』
『えっ?』
改めて言うまでもない事だが、天理はここの生徒ではない。
土地勘など、全く無い。
「天理らしくもないな。こんな所で道に迷うとは」
「それだけショックだったんだろうね」
『見てらんないわね。この程度で道に迷うなんて』
『えっ? えっと……ハクアさん。どうしてここに……』
『女神持ちを単独行動させて、もし襲撃でもあったら目も当てられないから。
一応ずっと見守らせてもらったわ』
『そ、そうだったんだ……』
『それより、もう戻るんでしょ? 私に着いてきなさい!』
『う、うん……』
天理は自信満々なハクアの後に着いていく。
道を知っていそうな知り合いがすぐ近くに居てくれた事は天理にとっては一応救いではあった。
……しかし、忘れてはいけない。
……その知り合いは、重度の方向音痴だという事を。
「えっ、ハクアさんって方向音痴だったんだ……」
「原作でも校舎内で迷っていたな。
そして4コマでは方向オンチと明言されている。
その後は忘れ去られたのか単純に発揮しなかったのかは不明だが一切出てきていないが、純然たる公式設定だな」
「知らない学校で迷うっていうのは……まぁ、分からなくもないかな」
「方向音痴なら僕の家に辿り着くのも不可能な気がしなくもないが……努力家なハクアだから何とか頑張ったんだろう。きっと」
『……部室には一体いつ頃着くのですか?』
『も、もう少しよ!』
『それと同じ台詞を30分ほど前にも聞いた気がするのですが』
『そ、そうだったかしら?』
『……道に迷いましたよね?』
『それは……その……』
『迷いましたね? いえ、断言しましょう。
あなたは道に迷ってます』
『うぐぐぐ……そ、そうよ! 迷ってるわよ! 悪い!?』
『別に悪くはないでしょう。変に隠そうとしなければ』
『…………ご、ごめんなさい。
途中から『アレッ』ってなったんだけど、中々言い出せなくて……』
『まあいいでしょう。それでは、誰か通りかかったら部室の場所を訊ねてみましょう。
誰も場所を知らないようなら、誰か呼びましょう。一応桂木さんのメールアドレスは把握しているので』
『私もエルシィなら呼べるわね。
……二次災害になりそうだけど』
『……あのミネルヴァなら否定できないのが何とも言えませんね』
『ふ、ふたりとも、流石にエルシィさんに失礼じゃないかな……
あの人ってここの生徒だよ?』
『そう言えばそうだったわね……まあいいわ。
もうちょっと歩いてみましょう』
「流石のエルシィでもこの学校で迷う事は無い……と信じたいが、断言できない自分が居る」
「奇遇だね。私もだよ。
普段この学校で普通に過ごしてるんだから有り得ないはずなんだけど……エルシィさんだからなぁ……」
しかし、彼女たちがバッタリ遭遇したのは、道を教えてくれるような優しい人間ではなかった。
と言うより、人間ですらなかった。
彼女は相変わらず怪我をし続けているのか、体の所々に包帯を巻いている。
左手には舞校祭の模擬店で買ったたこ焼きのパックを、右手には爪楊枝を持ってたこ焼きを頬張っている。
そんな少女が、すぐそこに居た。
『……特に探してなかったんだけど、見つけちゃった。
こんな所で何してるの? 昨日の侵入者さん』
「何でラスボスがこんな所で呑気に散歩してんだよ」
「リューネさんは決してラスボスではないけど……ゲームだったらクソゲー間違い無しだろうね」
「本人が言っている通り、本当に意識せずにバッタリ出くわしたらしい。
あと、『昨日の侵入者』と断定的に言っているが、実は語られていない裏設定があったりする」
「え? 単純に防犯カメラ見てたから知ってたとかじゃないの?」
「それだとすぐに身元がバレるからな。
一応、データ化できないような微妙な魔力の痕跡をリューネが覚えていて、ハクアの気配がそれに近かったからカマをかけてみたというのが真相だったりする」
「えっ、断定してなかったの!?」
「ああ。まぁ、リューネだから戦える相手なら別人でも全く気にしないだろうしな。
テキトーな確認で十分だったんだろう」
「……良い意味で適当なのがなんだかなぁ……」
同年代の悪魔の中で学業・実技の両方でトップの成績で学校を卒業したハクア、
『純真』の称号を受け継ぎ、固有の能力は持たないがバランスがとれた能力を持つディアナ。
そんな優秀な2人が協力して戦った場合、どういう結果になるだろうか?
答えは……
『あれ? こんなもん? お前たち2人よりもリミュエル1人の方が強かったね』
血みどろだが2本の足でしっかりと立っているリューネと、所々血を流して地面に膝を付いている2人。
ハッキリ言って、惨敗であった。
知識はあっても本物の戦いの経験、本気の殺意をぶつけられるような経験には乏しいハクア。
経験はあっても、少し強化しただけの人間の肉体で戦わざるを得ないディアナ。
こんな有様で裏世界の狂人に勝つ事は不可能だった。
「うわぁ……リューネさんどんだけ強いの。
って言うかリミュエルさんも異常って事だよね」
「原作でもマルスを瞬殺して戦闘をカットされてるくらいだからな。
そのマルスよりも多分弱いディアナにハクアが協力したくらいでは結果は変わらんだろうな」
「……でも、一応手傷は負わせてるんだね。一応」
「……リューネだからな。あいつ傷とか気にし無さそうだし」
(ぐっ……こいつ……強い)
(何とかして……皆と連絡を……)
2人の小声での会話もリューネはしっかりと聞き取れたようだ。
『う~ん、放置して呼ばせてみるのも面白そうだけど、流石に天界人っぽいのが複数はちょっとマズそう。
というわけで、死んで』
リューネがカッターを振り上げる。
彼女が殺せないのはあくまでも一般人のみ。その枠に収まらない2人であれば遠慮なく殺害する事が可能だ。
……邪魔さえ入らなければ。
『生成、圧縮、回転、射出』
物陰からリューネに向かって何かが飛び出し、そのまま小さな風穴を開けた。
『痛っ! 一体誰?』
リューネの呼びかけを受けて、物陰から1人の男子……桂馬が姿を現した。
『フン、もうちょっと大物感溢れる反応が欲しいんだがな。
そうじゃないと名乗り甲斐が無い。そもそも名乗る気も無いが』
『人間……にしては妙な気配だね。魔力でもないって事は……理力ってやつ?」
『答える義務は無いな』
「わ~、きゃ~! 桂馬くんカッコいい!!」
「僕はただのゲーマーであって戦闘は本職じゃないんだがな……」
「ここって確か私を呼んだ直後くらいの場面だよね。
ハクアさん達が危なくなったから得意じゃないのにわざわざ出てきて時間を稼いでるんだよね。
流石は桂馬くん、大好きだよ!」
「……別に大した事じゃないさ。この魔法だって借り物だしな」
「そんなの関係ないよ。こういう時に危険を顧みずに動けた事こそが重要だよ!」
「……そうか。ならそういう事にしておこう」
『天界人……女神……まさかこんな近くに2人も居るなんて。
もしかして、旧地獄を封印してたっていう姉妹6人全員居るの?』
『さぁどうだろうな。僕を捕まえれば分かるかも知れんぞ?』
『………………』
リューネはしばし無言になる。
そして、唐突に飛び立った。
『逃すか!!』
桂馬は最初の奇襲と同じように空気の弾丸を飛ばす魔法を行使する。
しかし、残念ながら命中する事無くリューネは去って行った。
「できればもうちょい引き伸ばしたかったんだが……まぁ、全力で逃げられたら仕方ないな」
「リューネさんはどれだけ状況を把握してたんだろう?」
「見通しているようであまり把握していなかったようだ。
僕の態度から『何となくヤバそう』という雰囲気を感じ取って逃げ出したという設定のようだ。
で、逃げ出した後で多分こういう状況なんだろうと推測してたらしい」
「歴戦の悪魔の勘って事かな? ちょっと羨ましいよ」
「こんな事を羨むんじゃない」
『……追ってこない、か。臆病なのか慎重なのか。まあどっちでもいいけど。
女神の姉妹が全員復活してるならヴィンテージの連中の勝ち目は薄そうだ。
はぁ、やってらんないよ。折角お仕事を頑張ったってのに。
コロシアイは好きだけど別に死にたいわけじゃないんだよね。
まぁ、この計画が潰れた所でお偉いさん方はまた別の計画を練るでしょ。
面白い計画を立てるのに期待しよっか』
「引き続きリューネのターンだな。
こんな時に戦場とは離れた場所でのんびりしていたようだ」
「ホントマイペースだね。ある意味悪魔らしいけど」
『……こんな所で何をしている』
『……それはこっちのセリフだよ、リミュエル。
あ~、今は戦いたい気分じゃなんだよね。見逃してくんない?』
『戯言を、何故私が見逃してやらねばならぬ』
『面倒だなぁ。って言うかホント何でこんな所に居るの。
グレダ東砦はあっちだよ』
『心配するな。既に私の部下が向かっている。
私がわざわざ出向く必要も無かろう』
『うわっ、ヴィンテージの奴らどんだけ下に見られてんの』
『無論、私が出向いた方が確実に勝利できるだろうが……
お前のような狂人を野放しにするリスクの方がずっと高いじゃろう』
『放っといてくれりゃいいのに。
はぁ、まあいいか。あっちの戦いが終わるまでお喋りでもしようよ。
どうせ突っ込んでくる気は無いんでしょ?』
『…………』
「ここでリミュエルがリューネと遭遇したのも偶然のようだ。
リミュエルの方は戦う気満々のようだが、リューネはそうでもないようだ」
「さっきから偶然が多いね……」
「ご都合主義だな。
まぁ、矛盾しているわけでもないから別にいいだろう」
『うわ~、ピカピカしてるね。
女神の力ってのは凄いねホント』
『…………』
『お、あの大岩がスパッと切れた。
ああでも私でも頑張ればあれくらいはできるか。面倒だけど』
『…………』
『……何か喋ってくんないかな。これじゃ私がイタい人みたいじゃん』
『…………』
『……あ、そろそろ終わりっぽいね。
あれが伝説の封印術……の、簡易版か。
地獄の方の封印と比べるとお粗末なもんだけど、破るのには結構手間がかかりそう。どう思う?』
『…………』
『ホントに喋る気無いんだね。まあいいや。
そろそろ私は帰るから、その辺のトラップの後処理頼んだよ~』
「凄く、対照的だね」
「リミュエルは変人ではあるが職務に対しては忠実だろうと判断したようだ。
敵と喋る必要が無いなら一切喋らないだろう。うっかり変な事漏らしたら大変だし」
「それもそうだね」
「反面、リューネはかなりいいかげんのようだな」
……その後……
『ひとまずは解決した。今後もまた何かトラブルに巻き込まれそうな気はするが、しばらくは大丈夫だろう。
気兼ねなく舞校祭を楽しむといい』
『しばらく……ですか。
女神というのはもしや疫病神なのでは……』
『ハッハッハッ、どうだろうなー』
「間違ってないから困るんだよね……」
「全くだな」
『桂馬くん。終わった後の事を考えるのはいいけど、まだ舞校祭……と言うより質問ゲームは終わってないよ』
『……ああ、そうだったな。僕が行った後はどうしてたんだ? 進めてたのか?』
『うん。歩美さん3周目で桂馬くんが戻ってくるまで保留中だったよ。
ね、歩美さん』
『そう言えばそうだった……気がする。あの後すぐに飛び出したからあんまり覚えてないけど』
『じゃあ、質問。
桂木は、私の事をどう思ってる?』
『……ふむ、
普段は温厚だが、怒らせると極めて凶暴。その足技は打ち所が悪ければ普通に病院送りになる』
『ちょっと?』
『根っこの部分はかなり単純な性格をしており、勉強も苦手な脳筋タイプだ』
『蹴られたいの? 蹴られたいのよね!? そうならさっさと言いなさい!』
『……だが、最近蹴られた事は無かったな。
単純なように見えて、しっかりと考えるべき場面ではちゃんと頭を働かせている。
友達の問題、例えばちひろが絡むような事であれば何度も蹴られてたんじゃないかと思うが、自分に関する問題であればしっかりと自制できている。というかそもそもそこまで怒らない。
結論としては、『良くも悪くも単純、純粋で、友達思いの良いヤツ』って所か』
『えっ、そ、そう……?』
「いーなー歩美さん、褒めてもらえて」
「この辺は原作も参考にしながら書いたようだ。
あと、筆者の印象としては『取り乱した時に蹴りつける』という事はそこそこあるが、『怒った時に蹴りつける』というのはあまり無い気がするとの事だ。
そしてその珍しい怒りの蹴りはほぼちひろ関係しか無いんじゃないか、と。
その辺の印象が僕のコメントにも繋がっている」
「いーなー。ホントいーなー」
「……じゃ、次行こう」
「ちょっと! スルーしないで!!」
『桂木ったら、そこまで言うなら歩美と付き合えばいいのに』
『それとこれとは話が別だ。次行くぞ。麻美かアポロ』
『では、妾の事はどう思っておるのじゃ?』
『露骨に歩美の質問をパクってきたな。
と言うか、お前に対する評価は少し前にも言った気がするんだが?』
『……そう言えばそうじゃったな。
うぅむ……仕方あるまい。ひとまず訊ねたい事はもう無いのじゃ』
『じゃあ次は……結だったな』
『私も特には……ああ、一つありました。
あなたは美生の事はどう思っていますか?』
『ちょっ、結!?』
『美生、どうせ質問する気だったでしょう? ならば早い方が良いではありませんか』
『いやまあそうだけど……分かったわ。桂木、お願い』
『いいだろう。美生か……
そうだな、大人になったな』
『……どういう意味かしら? 皮肉? 私に対する当てつけ?』
『ん? ああ、別にお前の身長が低い事に関する皮肉ではない』
『どう考えてもおちょくってるでしょうが!!』
『まあ聞け。僕が言っているのは外見ではなく中身に対してだ。
最初に会った時は、我侭な子供だった。
だが今では、事実を受け入れられる強さを得ている。
事実を受け入れて、その上で自分に何ができるのか、何をすべきなのか考えて実行する力を持っている。
だから、『大人になった』と言わせてもらった。外見はともかくな』
『最後のは余計よ!
……でも、褒められて悪い気はしないわね。ありがと』
「何だかんだ言って皆褒めてるね。
桂馬くんだったら遠慮して貶さないって事も無いだろうから紛れもない本音なんだろうね」
「そうなるな。まぁ、仮にも僕達が攻略をして心のスキマを塞いでやった連中だ。
褒められるくらい成長しててくれないと困るという話だ」
「……自信過剰なセリフに見せて遠回しに私の事を褒めているの?」
「いや、割と直球で褒めてるつもりなんだが」
「え~、ちょっと分かりにくかったよ」
「そうか。まぁいいか」
「良くないよ!」
『うわっ、もうこんな時間!? 模擬店の方行かないと!』
『あっ、ホントだ。結局あんまり練習できてない……』
『模擬店か。そう言えばうちのクラスって何やるんだ?』
『桂木……もうちょいクラスに興味持ってくれ。
うちのクラスの企画はオープンカフェだよ。お茶とかコーヒーとか出す感じの』
『へぇ、面白そう。私も参加したいけど……』
『かのんちゃんが参加したら売り上げアップは間違い無いけど……う~ん……』
『……接客じゃなくて調理場の方なら……?』
『本格的な料理店じゃないから調理場専属にしなきゃならんほど忙しくは無いし、存在がバレた時点で大変な事になりそう』
『……大人しくお客さんとして参加するよ。変装して』
『……そだな。すまんね、かのんちゃん』
『ううん、大丈夫。見てるだけでもきっと楽しいから』
『……中川さん。少々お話があります。残っていただけますか?』
『え? うん。いいよ。
あれ? そう言えば結さんのクラスは何やってるの?』
『たこ焼き屋だったはずです。多数決で決まりました。
私も多少はお手伝いをしますが、まだ担当の時間ではないので』
『そうなんだ。後で行ってみよ』
「お前が接客なんてやったら人が増えすぎて確実にパンクするな」
「お客さんが全然来ないよりはずっと良いんだろうけど……流石に迷惑がかかりすぎるね。大人しくしておいたよ」
「……さて、それは置いておくとして、
最後から2番目の結の台詞は無駄にネタが仕込んである。
結のクラスはたこ焼き屋をやっているとの事だが、実はリューネが頬張ってたたこ焼きはここの店の物だ」
「……素朴な疑問だけど、他にたこ焼き屋さんは無かったの?」
「同じのを売ってる店が複数あるのもアレなんで舞校祭の運営委員が上手いこと調整していると聞いたことがあるな。
だから同じ店は無い」
「へ~」
「あと、結がサラッと『多数決で決めた』と言っている。
これは『ねじの人々』のネタだ。そっちでも学園祭の出し物を多数決で決めてたこ焼き屋をやっていた。
その後、多数決というシステムについて考察されていたな」
「……ちなみに、どういう話だったの?」
「多数決の本来の意義は『最大多数の最大幸福』……つまり、より多くの人が望む選択をするという事だが、実際には『コレが良い!』というポジティブな意見ではなく『なんでもいい』というネガティブな意見が多数を占めてしまう。『面倒くさいからたこ焼き屋でいいや』みたいな感じで。
そうなってしまったとき、多数決は著しく劣化する。
だからこそ、漠然とした空気に押し流されずに自分が望む選択を主張する事が大事だ。
……そんな感じだったな」
『それで、どうしたの? 私に何か用事?』
『はい、2点ほど。
まず1点目。私たち軽音部は後夜祭でライブを行う事になっています』
『うん。勿論知ってるよ』
『これはあくまで提案なのですが、そのライブ、参加してみたいと思いませんか?』
『えっ? そんな事して大丈夫なの?』
『勿論部員の皆さんには後で許可を取りますが、恐らくは問題ないでしょう。
中川さんと他の皆さんで仲が悪いわけではないようですし、中川さん自身も何度か練習に参加しているでしょう?
問題なく合わせられるはずです』
『でも、エルシィさんの代わりしかやった事ないんだけど……』
『全く同じように演奏して頂いて大丈夫ですよ。エリーさんの演奏は時折原型が分からなくなりそうになる演奏なので。
原型そのままの演奏が入った方がむしろ良いでしょう』
『……エルシィさん……』
「こんな話をしてたのか」
「私を参加させるのは筆者さんのただの思いつきだったみたいだよ。
無理なく参加させる為にエルシィさんの演奏が凄い事になってるね」
「……エルシィは一周回って天才なのか?」
「…………さぁ?」
『それで、もう1つは?』
『桂木さんの事です。
あなたは桂木さんの事を好いていらっしゃるのですよね?』
『うん。その通りだよ』
『……桂木さんと結婚したいですか?』
『当然だよ!』
『迷い無く言いきりましたね。少しは躊躇うかと思ったのですが……
何はともあれ、中途半端な気持ちではないのなら構いません。
私からのお願いです。どうか美生を解放してあげてください』
『……と言うと?』
『あなたたちが結婚でもすれば美生も諦めがつくでしょう。
今すぐに結婚というのは不可能ですが、早めに決着を着けてください』
『いいの? そうなると美生さんは……』
『どうせほぼ勝ち目はありません。それなら無駄に引き伸ばすのは逆に辛くなるだけです』
『でも、桂馬くん自身は私の事は……』
『恋愛ではないのでしょう。しかし、結婚において恋愛は必須条件ではありません。
隣に居て苦痛を感じない事。それが第一の条件でしょう。
どんなに仲が良くとも、誰かがずっと隣に居るという事に人は苦痛を覚えるものです。
しかし、彼にとってはあなたが彼の隣に居ることは苦痛などではなくむしろ当然の認識である。
そんな風に私には見えましたよ』
『…………』
『あくまでも、私の個人的な意見です。
どう捉えるかはお任せします。ですが、早めの決着をお願いします』
『…………分かった。ありがとう、結さん』
『別にお礼を言う必要はありません。美生の為ですから』
「この辺は結さんによる解説だね。
やっぱり私と桂馬くんは運命の赤い糸で結ばれてるんだね!」
「結ばれている事は認めん事も無いが、運命ではないだろう。
一緒に居るべきだと判断した僕達の意志なんだから」
「お~、良い事言うね、桂馬くん♪」
……少し遡って天理視点……
「カット」
「えっ、いいの!?」
「これも解説だからな。しかも内容が結と被ってる」
「いやまぁそうだけど……最後の天理さんの出番が……」
……その後……
『私は桂馬くんの偽の恋人になってあげる。
その代わり、私とゲームをしよう』
『ゲーム……ルールは?』
『このゲームは、桂馬くんが私に対価を払うゲーム。
私を十分に幸せにする事ができたら、桂馬くんの勝ちだよ』
『……そのルールだと幸せにならなかったらお前の勝ちなのか?』
『それは流石にちょっとおかしいね。
じゃあ、幸せになったら私も勝ちって事で』
『おいおい、ゲームになってないぞ。両方勝つか両方負けるかしか無いだろそれ』
『対戦型ゲームじゃなくて協力型のゲームって事でいいじゃん。
さぁどうする? このゲーム、受けてくれる?』
「この辺、僕に指摘されてルールを微妙に変えたりしているが……計算尽くじゃなくて意外とアドリブなのか?」
「うん。まずゲームしようっていうのがあって、大筋を組んで、後は完全にアドリブだよ」
「アドリブでよくここまで言えたもんだな」
「言いたいことは『ゲームしよう』ってだけだから。最初に全部言ってるからむしろアドリブの方が楽だったよ」
「……そういうものか」
手が差し出される。
この手を取れば、その瞬間からゲームが始まるんだろう。
ルールに不備は見られない。前回のゲームと違って不意打ちで負けるという事も無さそうだ。
ならば、答えは1つ。
しっかりと、手を握り返して立ち上がった。
『足引っ張るなよ、相棒』
『そっちこそ。一緒に頑張ろう』
The End
「これで、終わりか」
「そうだね。ホント長かったよ」
「……なぁ、かのん」
「何? 桂馬くん」
「……僕とのゲームは楽しいか?」
「勿論だよ。最高に楽しい!」
「そうか。なら良かった。
これからも、一緒にゲームしてくれ」
「うん。勿論だよ」
「……さて、そろそろ締めるとするか。
ここまで付き合ってくれた読者諸君。本当に感謝する」
「それでは、ご縁があればまた会いましょう!
……って、言いたい所なんだけど……」
「ん? どうした?」
「筆者さんには続編案があるってちょくちょく口にしてたのは覚えてるよね?」
「ああ。当然だ」
「だけど、書く気力は無いみたい。
でも、完全に無かったことにするのも勿体ない。
だから、この場で大筋だけ書いてみるみたいだよ」
「……そんな中途半端な事をするくらいならしっかり書けという話だが……」
「流石に無理だってさ♪
それじゃ、説明しちゃうよ。
続編案を一言で説明すると、『私が原作の世界に迷い込む話』だよ。
何かの拍子に原作終了後の世界に私が迷い込んで、色々頑張って元の世界に戻ってくる話」
「所々フワッとしてるな」
「導入の『迷い込む』っていう理論はなんとかそれっぽくこじつけられたけど、『帰ってくる』方の理論が上手いこと組めなくて断念しちゃったみたい」
「……ちなみに、どんな理論だ?」
「えっと……こんな感じ」
※
本作の世界と原作の世界は分岐した並列世界と解釈できる。(本作ではミネルヴァが早々に封印から追い出されてるので、最低でも300年以上前に分岐してる)
しかし、どちらも『最終的に女神が助かった』という世界であり、それぞれの世界は比較的近い位置に存在している。
そんな状態で原作の桂馬が過去改変(正確には過去誘導?)をやった為、近くにあったこっちの世界が何か巻き込まれた。
そしてなんやかんやあって2つの世界がごっちゃになり、より存在確率の高い世界である原作の世界に統合された。
「……こんな感じみたいだよ」
「所々雑だな」
「それっぽい理屈が組みあがれば十分だからね」
「……ところで、原作の世界が優先されるならお前も普通に上書きされそうだが、その辺の理屈はどうなんだ?」
「それは勿論、愛の力で耐えたよ!」
「オイ」
「いや、半分は冗談だけど半分は本気だよ。
私の中の魔力とか理力とかの影響で上手いこと逃れたみたいだね。
この力は純粋にこっちの世界だけで生まれたものだから。だから置き換えも起こらずに私に留まりつづけた。
私の感情から生まれた力が私を支えた。ほら、それっぽいでしょう?」
「……まぁ、それっぽくはあるか」
「というわけでやや怪しい所はあるけど導入はできた。
……じゃあ、どうやって帰るの、コレ?」
「この理屈だと元の世界消えてるよな……」
「世界を作る所から始めなきゃいけないね。どこの神様かな?」
「……で、どうする気だ? 途中までは組んであるんだろ?」
「うん。この問題を解決する為に筆者さんは過去改変のメカニズムを色々と考えたみたいだよ。深く理解すれば屁理屈もこねやすくなるし、導入の方も別案が浮かぶかもしれないからね。
その結果、神のみの世界では恐らく3つの理論で過去改変が行われているって考えたみたい」
「そんな多かったのかアレ」
「まず分かりやすいものから説明するよ。
1つ目は『ドラえもん理論』。
これはタイムマシンとかを使って本人が物理的に時空間を移動して色々やる理論だね。
原作が原作だからコメディーっぽい感じでそれっぽくまとまってるけど、『親殺しのパラドックス』とかをやらかしたらどうなるのか、凄く気になるね」
「実際に時空の歪みがどうたらこうたらで問題が発生したりしてるからな……」
「原作では過去編のエルシィさんがこれに該当するんじゃないかって。
あと、原作者さんの作成した天理さんbotのツイッターでは『10年前に洞窟で大人の桂馬くんを見た』っていうコメントがあったりするから見えない所で使っててもおかしくはないね」
「『使っていてもおかしくはない』レベルの存在か。
まぁ、考察する分にはその程度で十分だな」
「続いて……これは知らない人が居るかもなぁ……
えっと、『シュタインズゲート理論』、略して『シュタゲ理論』だね」
「過去に情報だけを、あるいは意識だけを送る事で世界を改変する理論だな。
原作では悲劇を回避しようと試行を繰り返していたが……まぁ、これ以上はちょっと控えておこう。ネタバレになるからな」
「過去編の桂馬くんは子供の身体に自分の意識だけを送っていたわけだから、やってる事は近いと思うよ。
ダイバージェンスとか世界線とかのキーワードが原作には出てこないんで微妙に違うかもしれないけど……考察の参考にはなるね」
「最後に、『YU-NO理論』。
……筆者さんが打ち辛いって文句言ってるから『ユーノ理論』って言っておくよ。
シュタゲよりもマイナーな気がする作品だね」
「特定の時空間座標にセーブポイント……もとい、宝玉を設置し、任意のタイミングでその地点に帰還する。
『同じ時刻の別の並列世界』とかにもポンポン飛ぶ事が可能な代物だ。
あと、シュタゲ理論と違って手持ちのアイテムを引き継げる事もポイントだな」
「これは過去編におけるドクロウさんの宝玉の事だね。
原作と比べて色々と違う所もあるけど……ほぼコレの事だと思うよ」
「さて、出揃ったな。
それで、どうする気だ?」
「……どうやら、この辺で力尽きたみたいでさ。これらの理論をどう生かそうかとかは全く考えてないみたいだよ」
「オイオイ……」
「一応考えたのは、300年前に移動して、原作の世界と本作の世界を強く分岐させる……とかだけど、世界の分岐の作り方なんて私にはちょっと分からなかったし、それやろうとすると『ドラえもん理論』を使った過去改変だからパラレルワールド発生しないし……
こんな感じで色々と問題が出てくる上に、実際に小説化しようとしたらさっきやった無駄に長い説明を無理なく入れなきゃいけないし……
……そんな感じで諦めたみたい」
「実際には理論の理解は必要ないとしても、帰り方の模索をする段階でその説明を避けるのは不自然か。
しかもこれ、僕がそこそこ非協力的な状態でやるって事だよな?」
「うん。そこら辺はいくらでもこじつけられるだろうけど……こじつけが必要って時点でちょっと大変だね」
「……これ以外にも無数に問題がありそうだな」
「もし今後画期的な案が閃けば書くかもしれないけど……多分、年号が変わるくらいの時間が経たないと無理なんじゃないかな♪」
「つい最近令和になったばかりなんだがな……」
「というわけで、今度こそこれで終わりだよ。
皆さん、長い間お付き合いありがとうございました!」
「また会う事が……あるかは分からんが、その時は宜しくな」
「それでは、ご縁があればまたお会いしましょう!」
これにて終了です。お付き合いありがとうございました。