私が霧島です   作:アサルトゲーマー

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 比叡出ないからむしゃくしゃして書いた。
 今は公開している。


1 ドッキドキ☆深海棲艦はバイドの香り

 綺麗な星空、新鮮な空気、そして見渡す限りの水平線!

 

 

 私、霧島は今海のド真ん中でボッチをしている。ちなみに私が霧島だというのは月明かりを頼りに水面に映る自分の顔を見たから分かっただけである。

 本来の私はしがないOLなどをやっていた。私はとにかくゲームが好きだ。クソゲー、神ゲー、有名ゲー、マイナーゲーに至るまでいろいろやった。艦これも当然やっている。

 昨日の晩は艦これをしながらうとうとしていたのできっとディスプレイの前で寝落ちしているはずだ。で、起きてみたら海のど真ん中で自分が霧島。まるで意味がわからんぞ!

 まあ夢なんてそんなモンだよねと自分をなだめながらすることもないのでチャプチャプと二時間くらい海面を漂っていると朝焼けが見え始める。

 このとき手で太陽光を防いだ時に手が白い事に気が付いた。妙だとおもって肩とか足とかついでに服の中まで見ちゃったりしたが、全部白い。

 で、振り返って自分の艤装を見てみるとなんかゴテゴテしたイ級とかの顔っぽい謎の砲が付いている。

 

 これ深海棲艦化してませんかねぇ…。

 

 

 

──────────

 

 

 

 霧島轟沈。

 

 

 事の起こりは数日前の沖ノ島海域におけるあ号艦隊決戦にあった。

 此方の戦力、『第一艦隊』は金剛型戦艦4隻。対して其方の戦力は旗艦を含む戦艦ル級4隻に駆逐艦ニ級2隻。

 その戦いは熾烈を極め夜戦にまでもつれ込み、大きな被害を出しながら第一艦隊はなんとか勝利をもぎ取った。金剛と榛名は大破、比叡は中破。そして霧島は沈没。

 第一艦隊は敵旗艦撃破という戦果に見合う代償を支払わされていたのだ。

 

 

 その翌日。

 提督より休養を言い渡された金剛姉妹はいつもの場所で、いつものようにお茶とお菓子を用意して、いつもの場所に座っていた。末の妹を欠いた三人で。

 

「あの時に霧島ちゃんの手を取れていたら…」

 

 声の主は比叡。紅茶には口も付けず、顔に手を当てて嗚咽を漏らしていた。

 霧島が沈む時に動けたのは比叡のみだった。その時に霧島を救えなかったことを悔いているのだ。

 金剛と榛名は顔を合わせて掛ける言葉を選んだ。だが、掛ける言葉が見つからない。金剛と榛名も被弾を減らしていれば霧島を救えていたのかもしれないのだ。気にするなとは口が裂けても言えなかった。

 誰も口を開こうとはしない。せっかくの紅茶も、誰も飲まないまま冷めてしまった。

 冷えた紅茶に気が付いた金剛が口を付ける。いい茶葉を使っているはずなのに随分と不味いと感じた。これでは折角のティータイムもただのお葬式である。

 

 お葬式。

 

 この言葉が金剛にインスピレーションを与えた。

 

「…そうデス!キリシマは沈んだけど、死んだわけじゃないヨ!」

 

 椅子を倒さんばかりに金剛が立ちあがる。

 

「ヒエイ、ハルナ!思い出すネ!沈んだ艦娘が化けて出てくる事があるハナシ!」

 

 金剛の言葉に比叡と榛名が顔を上げた。

 

「お姉さま、それって…深海棲艦ですか?」

「聞いたことがあります。深海棲艦を撃破すると稀に艦娘が解放されるって」

「YES!だから…」

 

 金剛が大きく右腕を振り上げ。

 

「キリシマを連れ戻して、楽しいティータイムにするデース!」

 

 そう宣言した。 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 どこまで行っても海。海。海…。目印は太陽程度しかなく、どっちが陸かは分かったもんじゃない。とりあえず適当に東に向かって進んでいる。

 せっかく艦娘になったんだからと背中に背負った砲を動かしたり、加減速を繰り返したりしてクルーズを楽しんでいた。

 意外なことにこの艤装、素早く動く。おまけに精度もあり、まるで手が四本増えたみたいに簡単に動く。あと砲台は狙ったとこ…と言うよりは自分が見ている方に砲身が向く事がわかった。まるでクロスヘアの無いFPSのようだ。ちなみに意識すれば砲身は色んな方向に向く。

 好奇心に負けて一発撃ってみたが、反動が凄かった。コイツが35.6cm連装砲か…。

 

 で、一発砲撃してから一時間。私はなんかイ級っぽい駆逐艦ズに囲まれています。音でも聞きつけたのか?

 囲まれたといっても敵意は無く、ただ単に集まったという感じだ。深海棲艦はスタンド使いのごとく引かれあうのだろう。

 

 しかしイ級、地味にかわいい…?

 いや、かわいくない。

 歯茎が微妙に…ラブリー?

 いやいや、キモい。

 

 なんだこれ、私混乱してんのか。それとも深海棲艦化した影響?うーん、わからん。

 じーっとイ級ズを見つめることしばらく。私のレーダーっぽい何かに機影が移った。説明は難しいが、たぶん『私にも敵が見える!』状態…だと思う。てか艦娘にそんな機能あったんだね。

 機影の見えたほうに視線を移すと3隻の艦娘が見えた。近づくにつれて輪郭がはっきりしてくる。その顔は私がよく知っていて、初対面の人物だった。

 比叡を先頭に据えた魚鱗と言われる三角形の編成をした金剛と榛名だ。なんかかなり複雑そうな顔をしている。

 そりゃそうだよね。自分達の妹が敵側に寝返ったみたいなもんだもん。いや、どっちかというとゾンビか?

 てか、こっちに主砲向けないでくれませんかね。ほらほらイ級ズもそんな威嚇しないで。被害真っ先に受けるの多分私なんだから。

 ほーら比叡さん。こっちに敵意ありませんからその砲をこっちに向けないでねー。すっげー怖いから。降伏宣言しますから。

 とどけバーニング降伏宣言!

 

「ゥ…ァ……」

 

 ざんねん!わたしのせいたいは おわってしまっている!!

 声出ねぇじゃん!どーすんのこれ!

 …あ!そういや自分の向いてるほうに砲口向くんだった!じゃあ比叡見てるってことは比叡狙ってるってことじゃん!あと声でないならホールドアップすればいいじゃん!解☆決!

 よーし、そうと決まれば手をあげるか。ほーら敵意はないよー、怖くない怖くない。ステイステーイ。

 

 ドォーン!

 

 手を上げると共に響く砲撃音。あれ?

 

「イーッ!」

 

 イ級さん何やってるんですか!止めてくださいよ本当に!あれ砲撃の合図じゃなくて降伏の合図だから!

 向こうの比叡さんズは展開して迎撃態勢に入ってしまった。あーもうめちゃくちゃだよ。

 もうだめだ、こうなったら全員適当にボッコボコにして大人しくしたあとボディーランゲージでなんとか会話してやる!覚悟しろよイ級ズ&お姉さまズ!

 

 …ん?今お姉さまって考えた?

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 比叡を旗艦とした霧島捜索隊は幸か不幸か、捜索を開始して間もなく目標を発見した。…6隻の深海棲艦と共に。

 

「霧島ちゃん…」

 

 比叡はぐっと握り拳を作る。沈む寸前に触れた霧島の手の感触が鮮明に思い起こされた。

 

「ヒエイ、分かってるとは思うんデスけど…」

「はい、お姉さま。霧島ちゃんをボッコボコにして正気を取り戻させるんですよね?」

「…まあ、OKネ」

 

 比叡の微妙な回答に金剛は苦笑いをしながら肯定した。間を置かずに榛名が報告をする。

 

「霧島、こっちに気が付いたみたいです」

「…撃ってこないデスよ?」

「こっちをじっと見てます」

 

 比叡と金剛が陣形を整えて霧島の方を見る。深海棲艦らしく砲口はこちらに向いてはいるが、撃つような気配は見られない。

 こんな事態は金剛姉妹にとって想定外だった。深海棲艦というものは一も二も無く攻撃してくるのが常識だ。だが今の霧島はギラつく双眸でこちらを見ているだけ。

 比叡を先頭にして霧島の前に並ぶ。霧島を旗艦にすえた輪陣の形で駆逐艦イ級が並び威嚇をしているが、霧島に従っているのか何も行動を起こさない。

 全員が向かい合う。榛名が霧島に声を掛けようとして、霧島が口を開いた。

 

「ゥ…ァ……」

 

 出てきたのは掠れた声。その声はまるで助けを求めているように聞こえた。

 霧島の手が上がる。それを合図にして、敵イ級は行動を開始した。

 比叡が真っ先に反応する。

 

「敵攻撃来るよ!機動回避!」

 

 号令を合図にして三人が展開する。比叡が主力に取り付き他の二人が露払いをする常套手段、突撃陣形だ。本来霧島を足して複縦陣のような形から変則単横陣に展開するのだが、霧島が居ないことでその陣形は精彩を欠いていた。

 

「きゃあっ!被弾!?」

 

 榛名が被弾。いくら金剛型と言っても一人あたりの敵は3隻、苦戦は必至だった。金剛は被弾と行かないまでも至近弾をしきりにもらい、冷や汗を流す。

 比叡は霧島を見据える。霧島の姿は先ほどの助けを求める軟弱な姿勢ではなく、戦意を満身に滾らせたように佇んでいた。

 

「霧島ちゃん」

「……ゥ」

 

 比叡の呼びかけに霧島は反応した。その瞳は爛々としている。

 不意に霧島が水面を蹴り、横に動いた。同時に駆逐艦とは比較にならないような大きな砲撃音が響く。

 

「危なっ…!」

 

 比叡は間一髪で回避に成功する。そして反撃に主砲をお見舞いした。

 しかし相手も機動戦艦。初動を奪われた上に不規則な起動回避を行う霧島に簡単に当たるはずもなく、接近を許してしまう。

 霧島の35.6cm連装砲が振り上げられた。

 

「ガァァァッ!」

「しまっ──ッ!」

 

 霧島の連装砲が目前に迫る。比叡は砲撃が来るものだと思い、サイドステップを踏んだ。

 だがそれを読んでいた霧島の右の連装砲が接近する勢いのまま比叡の艤装に衝突した。衝突というよりは殴りつけたと表現する方が正しいだろう。

 バランスを崩した比叡に左の連装砲が再び叩きつけられる。殴りつけられた勢いのまま比叡は霧島から距離を離す。霧島はそれ以上追撃は行わなかった。

 比叡が距離を置きながら被害を確認する。金剛の被害は軽微だが榛名が小破、自身の連装砲も砲身が歪んでしまっている。しかし敵は霧島を含め二隻。

 

 ──勝てる!

 

 比叡がそう確信した。その瞬間、後ろから砲塔を向けるイ級の姿があった。

 イ級のおぞましい叫び声が木霊する

 

「…えっ?」

 

 比叡が情けない声を出しながら振り返る。そこには二隻分の距離も開かずにイ級が砲口を向けていた。

 とっさに目を瞑る。そして衝撃が比叡を襲った。

 

 だが、その衝撃は爆風程度の、致命には到底至らないもの。恐る恐る目を開けると、恨めしそうに沈んでいくイ級の姿が見えた。

 

「ど、どうして」

 

 比叡が金剛を見る。驚いたような顔で霧島を見つめている。次に榛名を見る。信じられないものを見たような顔で霧島を見つめている。

 霧島を見る。その連装砲の先からは硝煙が上っている。その砲口は自分、そして今沈んだイ級の方を向いていた。

 もう一隻のイ級が固まった榛名の方に砲撃を加えようとする。だが、素早く反応した霧島の砲撃であっけなく沈んだ。

 比叡は混乱した。こんな事は本来起こるはずが無いのだ。深海棲艦と化した艦娘は他の深海棲艦を仲間のように扱う。だが霧島はどうだ。一切の躊躇もなく沈めてしまったではないか。

 

 ふぅ、と息を付き霧島が眼鏡を仕舞う。比叡はこの仕草を知っている。何せ一番一緒にいる事の多かった妹の事だ。

 

「喧嘩をしよう」

 

 比叡には確かにそう聞こえた。二人は静かに歩み寄る。お互いに相手を殴るために。

 体格の差のない姉妹故に、お互いがお互いのリーチの間に入るのは同時だった。比叡は再び拳を握る。悔しさからではなく、ただ純粋に殴るために。

 

 二人の拳が同時に相手の頬にめり込んだ。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 気分はACVだ。やっぱ軽量二脚のとっつき特攻は回避命だから嫌でも上手くなっちゃうよね、ウン。

 ドヒャアドヒャアと脳内SEをかけながら比叡をとっつく。くらえ約36cm右連装砲パンチ!

 LRとかだったら多段ヒットしてるだろうけど現実(?)はそんな仕様なんてないので約36cm左連装砲フックで追撃。こうかは(おそらく)ばつぐんだ!

 比叡を殴り飛ばして辺りを確認する。金剛と榛名は駆逐艦ズを相手取っていたようでイ級は二隻しか残っていなかった。

 その一隻が比叡の後ろに忍びよる。この時私の頭の中で何かが弾けたような気がした。

 

 比叡、至近、砲撃、撃沈。

 

 一瞬で完成した方程式を吹き飛ばすように湧き上がる衝動のまま連装砲を放つ。その砲弾はイ級の艦首に命中して一撃で葬り去った。

 もう一隻のイ級が榛名を狙う。

 先ほどの衝動が、さらに大きくなって私の脳を揺らす。

 

(お姉さま!危ない!)

 

 それは心の叫びだった。私は照準を滑らせてイ級を穿つ。それは私がFPSでヘタクソなスナイパーをやっているときより100倍は様になっていた。

 とっさに飛び出したワード、『お姉さま』。

 これが私が『ある事』を思い出すきっかけになった。

 

 私。いや霧島?

 

 いまいち境界は分からないが私は『お姉さま』達を知っている!

 

 金剛姉さまがルー大柴みたいなエセっぽい英語を使うのは艦隊のムードを保つためだ。実は日本語も英語もペラペラなのに。

 榛名姉さまが頑張り屋なのは勝手にライバル視している末の妹である私に弱い所を見せたくないからだ。

 そして比叡。

 比叡は私の無二の相棒だ。最も多くの戦場を共にした姉妹。お互いの事は完璧といえるほど理解しあっている。視線でお互いが言いたいことが分かるほどに。

 そうか、私たちに言葉なんて必要なかった。ただ闇雲に言葉を話そうとしていた自分が滑稽だ。ただ一緒に居て、気に入らなかったら喧嘩して、二人して提督に叱られる。これが私たちなんだ。

 私は眼鏡を外す。これは私が本気になった合図。

 

ヶ…………ョ…(ケンカをしよう)

 

 掠れた声でも、比叡には伝わった筈だ。

 お互いに歩み寄って、挨拶の一撃。私の愛するお姉さま(相棒)は一歩も引かない。流石比叡だ、なんともないぜ。

 別に比叡が気に入らないから殴っているのではない。ただ、お互いに分かりあうのがこれが一番なのだ。

 

 私の拳が比叡のわき腹にめり込む。比叡のボディーブローが突き刺さる。

 こんな大ゲンカ、いつ以来だろうか。少し懐かしく思う。

 

「返ってきて!霧島ちゃん!」

 

 涙声ながらも力強い声。

 私の拳が比叡の頬を打つ。比叡の膝が鳩尾に突き刺さる。

 

「鎮守府の皆が!貴女の帰りを望んでいるの!」

 

 私の肘が比叡の肩にめり込む。比叡の裏拳が脇腹に叩きつけられる。

 お互いに渾身の一撃を決めていく。特に決まりごとは無い。あえて言うなら二人のポリシーだろうか。

 

「私の隣はっ!」

 

 私は拳を振り上げる。

 

「霧島ちゃんじゃないとダメなのっ!」

 

 私の拳が止まった。私が比叡の口から一番聞きたかった言葉が聞けたのだ。これほど嬉しいことは無い。

 あまりに突然の幸福な出来事に当初の目的──全員ボコって話を聞かせる──など完全に失念してしまった。

 拳が空中をさまよっている内に比叡の拳が私のこめかみに決まった。脳を揺さぶられた私はふら付いて、水の上で器用に膝をつく。

 頭がぐわんぐわんする。膝だけではなく、全身で倒れ込もうとしたところで比叡に手を取られた。その手はしっかり握られていて、ちょっと痛い。

 比叡が私を引き寄せて抱きしめる。突然の事に私は何もできず、されるがままだ。

 

「今度は離さない」

 

 その言葉が私の心に響いた。

 比叡、その台詞はかっこ良すぎるよ。不死身のプライス大尉みたいだ。

 

 感動した一瞬、私の体の表面から白い何かが剥がれ落ち始めた。




・ざんねん!わたしの~
 シャドウゲイトとかいうクソゲで一番よく目にするセリフ。ファミコンソフトのAVGでありながら死にざまのポエムは実に40種類にのぼる。

・AC
 ロボゲーの金字塔であるアーマードコアの略称。スピード感の溢れる戦闘とカスタムが豊富な機体と絶対になくならないバグが人気のヒケツ。
     三穴

・プライス大尉
 CoD4~MW3で登場する不死身のヒゲメン。セリフがいちいちカッコよくてライフル一本でヘリを撃墜してしまう猛者。
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